(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の携帯端末を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る携帯端末10の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、携帯端末10は、当該携帯端末10の全体的制御を司るCPU(Central Processing Unit)11と、書換え可能な不揮発性メモリであるフラッシュメモリ20と、書換え可能な揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)30とを備えている。
【0016】
フラッシュメモリ20には、OS(オペレーティングシステム)などのシステムプログラムが格納された格納領域22と、そのシステムプログラムを読出すためのコンピュータプログラムであるローダが格納された格納領域21とが設けられている。本実施形態では、フラッシュメモリ20として、例えばEEPROM (Erasable Programmable Rom) が採用されている。
【0017】
RAM30には、ローダによりフラッシュメモリ20から読出され、展開されたシステムプログラムを格納するためのワーク領域31が設けられている。CPU11は、RAM30のワーク領域31に格納されたシステムプログラムに従って、情報の読取りなど、種々のアプリケーションプログラムを実行する。このRAM30は、揮発性メモリであるため、通常、その記憶情報が保持可能となる電圧(以下、RAM保持可能電圧Vaという)よりも高い電圧が供給されている。なお、本実施形態では、RAM保持可能電圧Vaが2.4VであるRAM30が採用されている。
【0018】
また、携帯端末10は、リアルタイムクロック(以下、RTCと略す)12と、メインバッテリ15と、サブバッテリ17と、電源回路16と、電源キー13と、液晶表示器18とを備えている。メインバッテリ15は、端末本体に対して着脱可能であって、装着時にCPU11およびRTC12等が動作するための動作電力、RAM30の格納データを保持するための保持電力などを供給するように構成されている。また、本実施形態では、メインバッテリ15を充電する場合には、このメインバッテリ15を端末本体から取り外して図略の充電器に装着することで、当該メインバッテリ15に対する充電が開始されるように構成されている。
【0019】
サブバッテリ17は、メインバッテリ15が端末本体に装着されているときに当該メインバッテリ15によって充電され、メインバッテリ15が端末本体から取り外される未装着状態であるときに、RTC12へ動作電力を供給し、RAM30へ保持電力を供給する。なお、メインバッテリ15は、特許請求の範囲に記載の「主電源」の一例に相当し、サブバッテリ17は、特許請求の範囲に記載の「副電源」の一例に相当し得る。
【0020】
RTC12は、現在の日付時刻を計時する機能を有するもので、メインバッテリ15の未装着状態であっても、サブバッテリ17の電圧(以下、サブバッテリ電圧Vsという)が動作可能な電圧(以下、RTC動作可能電圧Vbという)以上であれば、その計時動作が継続される。なお、本実施形態では、RTC12は、そのRTC動作可能電圧VbがRAM保持可能電圧Vaよりも低くなるように設定されている。また、RTC12は、特許請求の範囲に記載の「計時手段」の一例に相当し得る。
【0021】
メインバッテリ15は、電源キー13の電源オン操作に応じて立上がり、電源回路16へ電力(DC)を供給する。電源回路16は、メインバッテリ15から供給された直流電圧を所定の電圧(例えば5V)に変換し、このように変換された電力を動作電力としてCPU11、RTC12、液晶表示器18、フラッシュメモリ20およびRAM30へ供給する。
【0022】
液晶表示器18は、CPU11等により表示制御されて、後述する報知情報などの所定の情報を表示可能に構成されている。なお、液晶表示器18は、特許請求の範囲に記載の「報知手段」の一例に相当し得る。
【0023】
ここで、本実施形態に係る携帯端末10のCPU11にて実施されるRAM異常検出処理について、
図2を用いて説明する。
図2は、サブバッテリ電圧VsとRAM保持可能電圧VaおよびRTC動作可能電圧Vbとの関係を示す図である。
図2に示すように、メインバッテリ15が未装着であることからサブバッテリ17によるRAM30やRTC12への電力供給が継続すると、この継続時間に応じてサブバッテリ17のサブバッテリ電圧Vsが徐々に低下する。そして、サブバッテリ電圧VsがRAM保持可能電圧Vaよりも低くなる前にメインバッテリ15が端末本体に装着されると(
図2の時刻t1参照)、メインバッテリ15によるサブバッテリ17の充電が開始され、サブバッテリ電圧Vsが上昇する。
【0024】
一方、メインバッテリ15の未装着継続時間が長くなり、サブバッテリ電圧VsがRAM保持可能電圧Vaよりも低くなると(
図2の時刻t2参照)、RAM30がその記憶情報を保持できなくなり、記憶情報がビット単位で徐々に不特定に壊れ始めてしまう。
【0025】
そこで、本実施形態に係る携帯端末10では、
図2に示すように、RTC12のRTC動作可能電圧VbがRAM保持可能電圧Vaよりも低いことから、RTC12を利用してサブバッテリ電圧Vsを推定し、この推定されたサブバッテリ電圧VsがRAM保持可能電圧Va未満であるか否かに応じて、RAM30の異常を検出するRAM異常検出処理を実施する。
【0026】
以下、RAM30の異常を検出するRAM異常検出処理について、
図3および
図4を用いて説明する。
図3および
図4は、第1実施形態におけるRAM異常検証処理の流れを例示するフローチャートである。
まず、電源キー13がオン操作されることで当該携帯端末10が電源オン状態になると、
図3のステップS101にて、フラグFLGがFLG=Trueに設定されているか否かについて判定される。ここで、フラグFLGは、電源オフ状態時にメインバッテリ15が取り外されている否かを判断するためのフラグであり、FLG=Trueは、電源オフ状態時にメインバッテリ15が取り外されていたことを示し、FLG=Falseは、電源オフ状態時にメインバッテリ15が取り外されていないことを示す。
【0027】
ここで、後述するようにフラグFLGがFLG=Trueに設定されていない場合には、ステップS101にてNoと判定されて、ステップS103にて、フラグFLGがFLG=Falseに設定される。この場合には、RAM30が正常であるとして、ステップS105にて、通常のメイン処理、例えば、上述した情報の読取りなどの処理が実施される。そして、電源キー13がオフ操作されて電源オフ状態になるか、メインバッテリ15が取り外されるまで、ステップS105にてメイン処理が継続されてステップS107およびステップS109にてNoとの判定が繰り返される。
【0028】
このような繰り返し判定中に、電源キー13がオフ操作されることで当該携帯端末10が電源オフ状態になると、ステップS107にてYesと判定される。その後、メインバッテリ15が取り外されるか、再び電源キー13がオン操作されて電源オン状態になるまで、ステップS111およびステップS113にてNoとの判定が繰り返される。
【0029】
そして、充電器を用いたメインバッテリ15の充電を開始するために当該メインバッテリ15が端末本体から取り外されたことが検出されると(S111でYes)、ステップS115において、フラグFLGがFLG=Trueに設定される。なお、メインバッテリ15の取り外しの検出は、メインバッテリ15から電源回路16への電力供給の有無に応じて検出される。
【0030】
次に、ステップS117において、取外時刻取得処理がなされる。この処理では、RTC12にて計時されている現在の日付時刻が、メインバッテリ15を取り外した取外時刻T1として取得される。このように取得された取外時刻T1は、フラッシュメモリ20に記憶される。
【0031】
続いて、ステップS119において、充電時間算出処理がなされる。この処理では、フラッシュメモリ20に記憶されたメインバッテリ15を装着した装着時刻T2(後述する)からステップS117にて取得した取外時刻T1までの時間を充電時間ΔTa(=T1−T2)として算出する。なお、充電時間ΔTaは、特許請求の範囲に記載の「装着継続時間」の一例に相当し得る。
【0032】
そして、ステップS121にて充電終了時電圧推定処理がなされる。この処理では、ステップS119にて算出した充電時間ΔTaに基づいて、取外時刻T1でのサブバッテリ電圧Vsが充電終了時電圧Vs1として推定される。ここで、充電終了時電圧Vs1の具体的な推定方法について、
図5および
図6を用いて説明する。
図5は、メインバッテリ装着時におけるサブバッテリ電圧Vsの時間変化の一例を示す図である。
図6は、充電開始時電圧Vs2ごとの充電時間ΔTaと充電終了時電圧Vs1との関係を示す図表であり、
図6(A)は充電開始時電圧Vs2が0Vの場合を示し、
図6(B)は充電開始時電圧Vs2が2.5Vの場合を示し、
図6(C)は充電開始時電圧Vs2が2.6Vの場合を示し、
図6(D)は充電開始時電圧Vs2が2.7Vの場合を示す。
【0033】
図5は実験結果をまとめたものであり、この
図5からわかるように、メインバッテリ15の装着時間に応じてサブバッテリ電圧Vsが上昇するため、充電開始時のサブバッテリ電圧(以下、充電開始時電圧Vs2という)と充電時間ΔTaとにより、充電終了時電圧Vs1を推定することができる。そこで、本実施形態では、
図5に示すサブバッテリ電圧Vsの時間変化を基準に、充電開始時電圧Vs2を0V、2.5V、2.6V、2.7Vとしたときの充電時間ΔTaと充電終了時電圧Vs1との関係をそれぞれ
図6(A)〜(D)に示すように関連付けて、予めフラッシュメモリ20に記憶している。そして、後述するようにフラッシュメモリ20に記憶される充電開始時電圧Vs2と算出される充電時間ΔTaとから、充電終了時電圧Vs1が推定されて、フラッシュメモリ20に記憶される。
【0034】
具体的には、例えば、充電開始時電圧Vs2が0Vであり、充電時間ΔTaが0.5hであれば、
図6(A)に基づいて、充電終了時電圧Vs1は、2.5Vと推定される。また、例えば、充電開始時電圧Vs2が2.5Vであり、充電時間ΔTaが0.5hであれば、
図6(B)に基づいて、充電終了時電圧Vs1は、2.6Vと推定される。また、例えば、充電開始時電圧Vs2が2.6Vであり、充電時間ΔTaが3.0hであれば、
図6(C)に基づいて、充電終了時電圧Vs1は、2.7Vと推定される。また、例えば、充電開始時電圧Vs2が2.7Vであり、充電時間ΔTaが5.0hであれば、
図6(D)に基づいて、充電終了時電圧Vs1は、2.8Vと推定される。
なお、ステップS121および後述するステップS133を実行するCPU11は、特許請求の範囲に記載の「電圧推定手段」の一例に相当し得る。
【0035】
また、上述したステップS107およびステップS109でのNoとの繰り返し判定中に、電源キー13がオフ操作されることなくメインバッテリ15が取り外されると、ステップS109にてYesと判定されて、上述したステップS115以降の処理がなされる。また、上述したステップS111およびステップS113でのNoとの繰り返し判定中に、電源キー13がオン操作されると、ステップS113にてYesと判定されて、上述したステップS105以降の処理がなされる。
【0036】
上述したステップS101において、ステップS115にてFLG=Trueに設定されていることから、電源オン状態にフラグFLGがFLG=Trueである場合には(S101でYes)、
図4のステップS123において、装着時刻取得処理がなされる。この処理では、取り外されていたメインバッテリ15が装着された後に電源キー13がオン操作されることで当該携帯端末10が電源オン状態になったとして、RTC12にて計時されている現在の日付時刻がメインバッテリ15を装着した装着時刻T2として取得される。このように取得された装着時刻T2は、フラッシュメモリ20に記憶される。
【0037】
続いて、ステップS125において、RTC12が停止状態であるか否かについて判定される。ここで、RTC12が停止していない場合には、サブバッテリ電圧VsがRTC動作可能電圧Vb未満になっていないとして、ステップS125にてNoと判定される。
【0038】
そして、ステップS127において、使用時間算出処理がなされる。この処理では、ステップS117にてフラッシュメモリ20に記憶された取外時刻T1からステップS123にて取得した装着時刻T2までの時間、すなわち、メインバッテリ15の未装着状態時にサブバッテリ17によりRAM30に保持電力が供給されていた時間を、使用時間ΔTb(=T2−T1)として算出する。なお、使用時間ΔTbは、特許請求の範囲に記載の「未装着継続時間」の一例に相当し得る。
【0039】
次に、ステップS129において、取外時刻T1でのサブバッテリ電圧Vsを基準に、RAM30の記憶情報が保持な時間である保持可能時間ΔTcを推定する保持可能時間推定処理がなされる。ここで、保持可能時間ΔTcの具体的な推定方法について、
図7および
図8を用いて説明する。
図7は、メインバッテリ未装着時におけるサブバッテリ電圧Vsの時間変化の一例を示す図である。
図8は、充電終了時電圧Vs1とその電圧でのRAM保持可能時間ΔTcとの関係を示す図表である。
【0040】
図7は実験結果をまとめたものであり、この
図7からわかるように、メインバッテリ15の未装着時間に応じてサブバッテリ電圧Vsが低下するため、充電終了時電圧Vs1に基づいて、取外時刻T1からサブバッテリ電圧VsがRAM保持可能電圧Va未満になるまでの時間、すなわち保持可能時間ΔTcを推定することができる。そこで、本実施形態では、
図7に示すサブバッテリ電圧Vsの時間変化を基準に、充電終了時電圧Vs1を2.5V未満、2.5V以上2.6V未満、2.6V以上2.7V未満、2.7V以上2.8V未満、2.8V以上と区分したときの保持可能時間ΔTcを
図8に示すように関連付けて、予めフラッシュメモリ20に記憶している。
【0041】
そのため、例えば、充電終了時電圧Vs1が2.5V未満であれば、保持可能時間ΔTcは0hと推定される。また、充電終了時電圧Vs1が2.5Vであれば、保持可能時間ΔTcは60hと推定される。また、充電終了時電圧Vs1が2.6Vであれば、保持可能時間ΔTcは100hと推定される。また、充電終了時電圧Vs1が2.7Vであれば、保持可能時間ΔTcは110hと推定される。また、充電終了時電圧Vs1が2.8Vであれば、保持可能時間ΔTcは120hと推定される。
なお、ステップS129を実行するCPU11は、特許請求の範囲に記載の「保持可能時間推定手段」の一例に相当し得る。
【0042】
このように保持可能時間ΔTcが推定されると、ステップS131において、RAM30の記憶情報が正常に保持されているか否かを判断するために、使用時間ΔTbが保持可能時間ΔTcよりも長いか否かについて判定される。ここで、使用時間ΔTb>保持可能時間ΔTcでなければ、サブバッテリ電圧VsがRAM保持可能電圧Va未満になっていないことから、ステップS131にてNoと判定される。なお、ステップS131を実行するCPU11は、特許請求の範囲に記載の「異常検出手段」の一例に相当し得る。
【0043】
続いて、ステップS133にて充電開始時電圧推定処理がなされる。この処理では、ステップS127にて算出した使用時間ΔTbに基づいて、充電開始時のサブバッテリ電圧Vsとして充電開始時電圧Vs2が推定される。ここで、充電開始時電圧Vs2の具体的な推定方法について、
図9を用いて説明する。
図9は、充電終了時電圧Vs1ごとの使用時間ΔTbと充電開始時電圧Vs2との関係を示す図表であり、
図9(A)は充電終了時電圧Vs1が2.8Vの場合を示し、
図9(B)は充電終了時電圧Vs1が2.7Vの場合を示し、
図9(C)は充電終了時電圧Vs1が2.6Vの場合を示し、
図9(D)は充電終了時電圧Vs1が2.5Vの場合を示す。
【0044】
本実施形態では、
図7に示すサブバッテリ電圧Vsの時間変化を基準に、充電終了時電圧Vs1を2.8V、2.7V、2.6V、2.5Vとしたときの使用時間ΔTbと充電開始時電圧Vs2との関係をそれぞれ
図9(A)〜(D)に示すように関連付けて、予めフラッシュメモリ20に記憶している。そして、上述したようにフラッシュメモリ20に記憶される充電終了時電圧Vs1と算出される使用時間ΔTbとから、充電開始時電圧Vs2が推定されて、フラッシュメモリ20に記憶される。
【0045】
具体的には、例えば、充電終了時電圧Vs1が2.8Vであり、使用時間ΔTbが10h未満であれば、
図9(A)に基づいて、充電開始時電圧Vs2は、2.7Vと推定される。また、例えば、充電終了時電圧Vs1が2.7Vであり、使用時間ΔTbが10h未満であれば、
図9(B)に基づいて、充電開始時電圧Vs2は、2.6Vと推定される。また、例えば、充電終了時電圧Vs1が2.6Vであり、使用時間ΔTbが40h未満であれば、
図9(C)に基づいて、充電開始時電圧Vs2は、2.5Vと推定される。また、例えば、充電終了時電圧Vs1が2.5Vであれば、
図9(D)に基づいて、使用時間ΔTbにかかわらず、充電開始時電圧Vs2は、0Vと推定される。
そして、このようにステップS133にて充電開始時電圧Vs2が推定されると、上述した
図3のステップS105以降の処理がなされることとなる。
【0046】
一方、メインバッテリ15が装着されていない時間が長くなったために、サブバッテリ電圧VsがRTC動作可能電圧Vb未満になり、RTC12が停止している場合には、ステップS125にてYesと判定される。また、RTC12が稼働しているものの、メインバッテリ15が未装着でありサブバッテリ電圧Vsが低下しているために、使用時間ΔTbが保持可能時間ΔTcよりも長くなる場合には、ステップS131にてYesと判定される。
【0047】
上述のようにステップS125またはステップS131にてYesと判定されると、サブバッテリ電圧VsがRAM保持可能電圧Va未満であり、RAM30がその記憶情報を正常に保持できない異常な状態であると判断できる。このため、ステップS135にてフラッシュメモリ20に記憶される充電開始時電圧Vs2が0Vとして記憶される。
【0048】
次に、ステップS137にてRAM初期化処理がなされ、RAM30の記憶情報が消去された後に、必要な情報、例えば上述した展開されたシステムプログラムがフラッシュメモリ20から読み出されて当該RAM30に記憶される。続いて、ステップS139にて報知処理がなされ、電力不足に起因するRAM30の異常を回避するための処理が実施された旨が、液晶表示器18に報知情報として表示されて報知される。そして、このように報知情報が表示(報知)されると、上述した
図3のステップS105以降の処理がなされることとなる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る携帯端末10では、RTC12により計時される充電時間ΔTaおよび使用時間ΔTbに基づいて、サブバッテリ17の充電終了時電圧Vs1および充電開始時電圧Vs2などのサブバッテリ電圧Vsが推定される。そして、取外時刻T1での充電終了時電圧Vs1とRAM保持可能電圧Vaとに基づいて、RAM30の記憶情報が保持されるRAM保持可能時間ΔTcが推定される。そして、使用時間ΔTbがRAM保持可能時間ΔTcよりも長くなる場合に、RAM30の記憶情報の異常が検出される。
【0050】
このように、メインバッテリ15の装着継続時間および未装着継続時間、すなわち、副電源に対する充電時間ΔTaや使用時間ΔTbが分かるため、サブバッテリ電圧VsをRTC12により計時される取外時刻T1および装着時刻T2等に基づいて推定することができる。特に、RTC12は、RAM保持可能電圧Vaよりも低い電圧でも動作可能であるため、サブバッテリ電圧VsがRAM保持可能電圧Va以上となる場合、すなわち、RAM30の記憶情報が異常であると判定されない場合であれば、確実に充電時間ΔTa、使用時間ΔTbおよび取外時刻T1を計時することができる。
したがって、サブバッテリ17のサブバッテリ電圧Vsを計測するための専用の回路を設けることなく、RAM30に記憶される記憶情報の異常を検出することができる。
【0051】
また、ステップS131にてRAM30が異常であることが判定(検出)されると、液晶表示器18によりその旨(報知情報)が表示されることで報知される。これにより、この報知を受けた使用者は、メインバッテリ15の未装着によるサブバッテリ17の電圧降下に起因してRAM30の記憶情報の異常が想定されたことを認識するので、使用者に対してメインバッテリ15を装着する等のRAM30の記憶情報の異常を防止するための処置を促すことができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の携帯端末を具現化した第2実施形態について、
図10〜
図12を用いて説明する。
図10は、第2実施形態におけるRAM異常検証処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
図11は、充放電回数と放電深度との関係を示す図である。
図12は、充放電回数と放電深度との関係を示す図表である。
【0053】
本第2実施形態に係る携帯端末10では、サブバッテリ17の充放電回数が増加するほど保持可能時間ΔTcを短く推定する点が、上記第1実施形態に係る携帯端末と異なる。したがって、第1実施形態の携帯端末と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
以下、本第2実施形態におけるCPU11によるRAM異常検証処理について、
図3および
図10のフローチャートを用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、電源キー13が電源オン操作されたときにフラグFLGがFLG=Trueに設定されていることから
図3のステップS101にてYesと判定されると、
図10のステップS123にて装着時刻取得処理がなされて装着時刻T2が取得される。
【0055】
次に、ステップS125にてRTC12が停止状態であるか否かについて判定され、サブバッテリ電圧VsがRTC動作可能電圧Vb未満になり、RTC12が停止している場合には、ステップS125にてYesと判定される。続いて、ステップS201にて、充放電回数を示すC1がインクリメント(C1=C1+1)される。これにより、RTC12が停止状態となるごとに、すなわち、サブバッテリ電圧VsがRTC動作可能電圧Vb未満になるようにサブバッテリ17が放電してしまうと、充放電回数を示すC1がインクリメントされることとなる。そして、上述したステップS135以降の処理がなされる。
【0056】
一方、サブバッテリ電圧VsがRTC動作可能電圧Vb未満になっていないことから、RTC12が停止していない場合には、ステップS125にてNoと判定されて、ステップS127にて使用時間ΔTbが算出される。
【0057】
次に、ステップS203において、放電深度推定処理がなされる。この処理では、上記ステップS201にてインクリメントされる充放電回数C1に応じて、サブバッテリ17の放電深度が推定される。ここで、放電深度の具体的な推定方法について、
図11および
図12を用いて説明する。
【0058】
図11は実験結果をまとめたものであり、この
図11からわかるように、充放電回数C1が増加するほど放電深度が低下する。そこで、本実施形態では、
図11に示す放電深度の変化を基準に、充放電回数C1を0〜49回、50〜99回、100〜169回、170〜399回、400〜1599回、1600回以上と区分したときの放電深度を
図12に示すように関連付けて、予めフラッシュメモリ20に記憶している。
【0059】
そのため、例えば、充放電回数C1が50回であれば、放電深度は70%と推定される。また、充放電回数C1が100回であれば、放電深度は50%と推定される。また、充放電回数C1が170回であれば、放電深度は30%と推定される。また、充放電回数C1が400回であれば、放電深度は10%と推定される。なお、充放電回数C1が1600回以上になると、サブバッテリ17が充放電不能に劣化しているとして、放電深度は0%と推定される。
【0060】
このように放電深度が推定されると、ステップS205にて保持可能時間推定処理がなされる。この処理では、上述したステップS129における処理とは異なり、取外時刻T1でのサブバッテリ電圧Vsを基準に仮の保持可能時間ΔTcを推定した後に、この仮の保持可能時間ΔTcに上記放電深度を乗算することで、充放電回数C1が増加するほど短くなるように保持可能時間ΔTcを推定する。
【0061】
例えば、取外時刻T1でのサブバッテリ電圧Vsが2.7Vと推定されることから、
図8に基づいて、仮の保持可能時間ΔTcが110hと推定されるとき、充放電回数C1が80回であることから放電深度が70%と推定されると、保持可能時間ΔTcは77h(110h×70%)として推定される。これにより、充放電回数C1が反映されて、より正確な保持可能時間ΔTcを推定することができる。
【0062】
そして、ステップS131において、ステップS127にて算出された使用時間ΔTbとステップS205にて推定された保持可能時間ΔTcとを比較して、RAM30の記憶情報が正常に保持されているか否かを判断する。
【0063】
このように、本実施形態では、保持可能時間ΔTcを、サブバッテリ17の充放電回数C1が増加するほど短くなるように推定するため、充放電回数C1が増加することによるサブバッテリ17の劣化度合いが考慮された保持可能時間ΔTcが推定される。これにより、保持可能時間ΔTcの推定精度を向上させることができる。
【0064】
なお、充放電回数C1のインクリメント(C1=C1+1)処理は、サブバッテリ電圧VsがRTC動作可能電圧Vb未満になるようにサブバッテリ17が放電する場合に実施することに限らず、保持可能時間ΔTcの推定精度をさらに向上させるため、例えば、使用時間ΔTbが所定時間を経過した場合(一部放電時)にもインクリメント処理を実施してもよい。
【0065】
[第3実施形態]
次に、本発明の携帯端末を具現化した第3実施形態について、
図13および
図14を用いて説明する。
図13および
図14は、第3実施形態におけるRAM異常検証処理の流れを例示するフローチャートである。
本第3実施形態に係る携帯端末10では、サブバッテリ電圧VsがRAM保持可能電圧Vaに近くなるとRAM30の記憶情報をバックアップする点が、上記第1実施形態に係る携帯端末と異なる。したがって、第1実施形態の携帯端末と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
以下、本第3実施形態におけるCPU11によるRAM異常検証処理について、
図13および
図14のフローチャートを用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、電源キー13が電源オン操作されたときにフラグFLGがFLG=Trueに設定されていないことから、
図13のステップS101にてNoと判定されると、ステップS103以降の処理がなされる。
【0067】
そして、ステップS121にて充電終了時電圧推定処理がなされて充電終了時電圧Vs1が推定されると、ステップS301において、充電終了時電圧Vs1が所定の電圧閾値Vt以下であるか否かについて判定される。なお、所定の電圧閾値Vtは、RAM保持可能電圧Vaも高い値であって、本実施形態では、例えば、2.5Vに設定されている。
【0068】
ここで、充電終了時電圧Vs1が所定の電圧閾値Vt以下である場合、すなわち、さらにサブバッテリ電圧Vsが低下することでRAM30の記憶情報が異常となる可能性が生じる場合には、ステップS301にてYesと判定されて、ステップS303においてバックアップ処理がなされる。この処理では、RAM30に記憶された記憶情報がフラッシュメモリ20にバックアップされる。なお、充電終了時電圧Vs1が所定の電圧閾値Vt以下でない場合には、上記バックアップ処理を実施することなく、RAM異常検出処理を終了する。
【0069】
一方、電源キー13が電源オン操作されたときにフラグFLGがFLG=Trueに設定されていることから
図13のステップS101にてYesと判定されると、
図14のステップS123以降の処理がなされる。そして、ステップS135にて充電開始時電圧Vs2が0Vに設定されると、ステップS305において、RAM30の記憶情報がバックアップされているか否かについて判定される。ここで、上記ステップS303にてRAM30の記憶情報がバックアップされている場合には(S305でYes)、ステップS307にて記憶情報書換処理がなされ、RAM30の記憶情報がフラッシュメモリ20にバックアップされていた記憶情報に書き換えられる。なお、RAM30の記憶情報がバックアップされていない場合には(S305でNo)、上記ステップS137以降の処理がなされる。
【0070】
このように、本実施形態では、さらにサブバッテリ電圧Vsが低下することでRAM30の記憶情報が異常となる可能性が生じる場合(S125でYesまたはS131でYes)には、RAM30に記憶された記憶情報がフラッシュメモリ20にバックアップされるので、RAM30の記憶情報が異常となることを抑制することができる。
【0071】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上記ステップS139における報知処理では、上述した報知情報が液晶表示器18に表示されて視覚的に報知されることに限らず、例えば、ブザー等の鳴動により聴覚的に報知されてもよいし、ランプの点滅など、他の報知手段により上述した報知情報を報知してもよい。
【0072】
(2)ステップS121における充電終了時電圧推定処理では、
図6(A)〜(D)のように充電終了時電圧Vs1を推定することに限らず、異なる区分で充電終了時電圧Vs1を推定してもよいし、例えば、
図5から求められる充電時間ΔTaと充電終了時電圧Vs1との関係式に基づいて、充電終了時電圧Vs1を推定してもよい。
また、ステップS129における保持可能時間推定処理では、
図8のように保持可能時間ΔTcを推定することに限らず、異なる区分で保持可能時間ΔTcを推定してもよいし、例えば、
図7から求められる充電終了時電圧Vs1と保持可能時間ΔTcとの関係式に基づいて、保持可能時間ΔTcを推定してもよい。
また、ステップS133における充電開始時電圧推定処理では、
図9(A)〜(D)のように充電開始時電圧Vs2を推定することに限らず、異なる区分で充電開始時電圧Vs2を推定してもよいし、例えば、
図7から求められる使用時間ΔTbと充電開始時電圧Vs2との関係式に基づいて、充電開始時電圧Vs2を推定してもよい。