特許第5790199号(P5790199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790199
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】スタッドレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20150917BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   B60C11/12 A
   B60C11/03 300A
   B60C11/12 C
   B60C11/12 B
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-141464(P2011-141464)
(22)【出願日】2011年6月27日
(65)【公開番号】特開2013-6549(P2013-6549A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】甲田 啓
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−316517(JP,A)
【文献】 特開2004−058936(JP,A)
【文献】 特表2008−502526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
11/12
11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部の表面にタイヤ周方向に延びる複数の縦溝と該縦溝に交差する複数の横溝とにより多数のブロックを形成すると共に、該ブロックの表面にタイヤ周方向に間隔をおいて該ブロックを区画する横溝に対して略平行に延びる複数のサイプを形成し、該サイプの両壁面に互いに対向して隆起する複数の突起を形成したスタッドレスタイヤにおいて、
前記突起を、前記サイプの幅方向断面におけるサイプ壁面からの最大断面高さがサイプ幅の50%以上で、かつ該突起の頂点位置が該突起の底面の中間点よりもブロックの表面側に位置し、かつ該突起の頂点からサイプ底部側に向けて該突起の断面高さが低くなるように形成し
前記突起の総数をブロックのタイヤ周方向長さの30%に相当する前後端側の領域において、その他の領域よりも多く形成したスタッドレスタイヤ。
【請求項2】
前記突起の頂点位置を、該突起の底面よりもブロックの表面側に位置させた請求項1に記載のスタッドレスタイヤ。
【請求項3】
前記トレッド部の表面から見た前記突起の投影面積が、サイプの投影面積の70%以上を占める請求項1又は2に記載のスタッドレスタイヤ。
【請求項4】
前記突起の総数を、サイプ深さの50%を基準にして、ブロックの表面側において多く形成した請求項1、2又は3に記載のスタッドレスタイヤ。
【請求項5】
前記突起の総体積を、サイプ深さの50%を基準にして、ブロックの表面側においてサイプの底部側の1.3〜5.0倍にした請求項1、2又は3に記載のスタッドレスタイヤ。
【請求項6】
前記突起の総数を、ブロック幅の50%に相当する幅方向中央領域において多く形成した請求項1〜5のいずれか1項に記載のスタッドレスタイヤ。
【請求項7】
前記突起の総体積を、ブロック幅の50%に相当する幅方向中央領域において幅方向両端領域の1.3〜5.0倍にした請求項1〜5のいずれか1項に記載のスタッドレスタイヤ。
【請求項8】
前記サイプの平面形状をジグザグ状又は波状に形成した請求項1〜のいずれか1項に記載のスタッドレスタイヤ。
【請求項9】
前記サイプを深さ方向に屈曲部を有する3次元構造に形成した請求項1〜のいずれか1項に記載のスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドレスタイヤに関し、さらに詳しくは、雪上制動性能及び氷上制動性能をバランス良く向上させるようにしたスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、氷雪路面上を走行するスタッドレスタイヤでは、トレッドゴムに低硬度のゴムを使用したうえで、トレッド面に多数のブロックを形成し、これらブロックの表面に、図8(a)に例示するように、ブロック9を区画する横溝に対して略平行に延びる複数のサイプ10を形成して、これらサイプ10のエッジ効果により良好な運動性能を確保するようにしている。
【0003】
ところが、この種のタイヤでは、雪上路面を走行する際にサイプ10に雪が詰まって、雪上制動性能を低下させるという問題があった。この対策として、図8(b)に例示するように、サイプ10の両壁面に互いに対向して隆起する複数の突起11を形成し、この突起11の体積を確保することにより、サイプ10への雪詰まりを防止することが行われてきた。しかし、サイプ10の壁面に大きな突起11を形成すると、サイプ10の両壁面間の空隙が減少するため、氷上路面での水膜の吸い上げ除去効果が低減してしまい、特に0℃近辺での氷上制動性能が低下するという問題があった。
【0004】
従来、ブロックの倒れ込みを抑制して、氷上摩擦性能を向上させるために、サイプの両壁面に互いに対向して隆起する複数の突起を形成し、これら両壁面に形成した突起同士を互いに組み合うように配置したり(例えば、特許文献1参照)、サイプの両壁面に形成する突起の高さをトレッド面に近い側において高く、サイプの底面側に向けて低くなるようにした提案がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ところが、これらの提案では、氷上制動性能をある程度は向上させることができるものの、突起の断面形態をどのように設定するかによっては、氷上制動性能を低下させたり、雪上路面における制動性能を確保することが難しくなるという問題があり、氷雪路面上を走行するスタッドレスタイヤとしては、サイプの両壁面に形成する突起の断面形態をどのように設定するかについて、未だ改良の余地を残していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−177330号公報
【特許文献2】特開2009−126293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述する問題点を解消するもので、サイプの両壁面に形成する突起の断面形態を改善することによって、雪上制動性能及び氷上制動性能をバランス良く向上させるようにしたスタッドレスタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のスタッドレスタイヤは、トレッド部の表面にタイヤ周方向に延びる複数の縦溝と該縦溝に交差する複数の横溝とにより多数のブロックを形成すると共に、該ブロックの表面にタイヤ周方向に間隔をおいて該ブロックを区画する横溝に対して略平行に延びる複数のサイプを形成し、該サイプの両壁面に互いに対向して隆起する複数の突起を形成したスタッドレスタイヤにおいて、前記突起を、前記サイプの幅方向断面におけるサイプ壁面からの最大断面高さがサイプ幅の50%以上で、かつ該突起の頂点位置が該突起の底面の中間点よりもブロックの表面側に位置し、かつ該突起の頂点からサイプ底部側に向けて該突起の断面高さが低くなるように形成し
前記突起の総数をブロックのタイヤ周方向長さの30%に相当する前後端側の領域において、その他の領域よりも多く形成したことを特徴とする。
【0009】
さらに、上述する構成において、以下(1)〜(6)に記載するように構成することが好ましい。
(1)前記突起の頂点位置を、該突起の底面よりもブロックの表面側に位置させる。
(2)前記トレッド部の表面から見た前記突起の投影面積が、サイプの投影面積の70%以上を占めるようにする。
(3)前記突起の総数を、サイプ深さの50%を基準にして、ブロックの表面側において多く形成するか、又は前記突起の総体積を、サイプ深さの50%を基準にして、ブロックの表面側においてサイプの底部側の1.3〜5.0倍にする。
(4)前記突起の総数を、ブロック幅の50%に相当する幅方向中央領域において多く形成するか、又は前記突起の総体積を、ブロック幅の50%に相当する幅方向中央領域において幅方向両端領域の1.3〜5.0倍にする。
(5)前記サイプの平面形状をジグザグ状又は波状に形成する。
(6)前記サイプを深さ方向に屈曲部を有する3次元構造に形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブロックの表面に形成したサイプの両壁面に互いに対向して隆起する複数の突起を形成し、これら突起を、サイプ壁面からの最大断面高さがサイプ幅の50%以上で、かつ突起の頂点位置が突起の底面の中間点よりもブロックの表面側に位置するように形成したので、雪上路面における雪が突起のブロック表面側において押さえ込まれて、サイプの底面側に移動するのを効率的に阻止するため、雪詰まりの抑制に伴い雪上制動性能を向上させることができる。
【0011】
しかも、サイプ壁面からの断面高さを突起の頂点からサイプ底部側に向けて低くなるように形成したので、サイプの両壁面間における空隙が適正に確保されることにより、氷上路面における水膜の吸い上げ効果が助長されて、氷上制動性能を効率的に向上させることができる。
さらに、本発明では、上述する突起の総数をブロックのタイヤ周方向長さの30%に相当する前後端側の領域において、その他の領域よりも多く形成するようにしたので、踏み込み側及び蹴り出し側のブロック剛性がそれぞれ適正に確保されるため、氷雪上路面での制駆動性能を効率的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態によるスタッドレスタイヤの構造を示す断面図である。
図2図1のタイヤのトレッド部の表面に形成したブロックパターンの一例を例示する一部平面図である。
図3】(a)及び(b)は、それぞれ図2のトレッド部の表面からブロックを取り出して示す平面図である。
図4】(a)は図3(a)及び(b)のA−A矢視一部断面図で、(b)はサイプの壁面に形成した突起の形状を示す斜視図である。
図5】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の他の実施形態による図4(a)に相当する一部断面図である。
図6】本発明のさらに別の実施形態による図4(a)に相当する一部断面図である。
図7】(a)及び(b)は、それぞれ本発明のさらに別の実施形態による図3(a)に相当する平面図である。
図8】従来のスタッドレスタイヤにおけるサイプの形態を示す説明図で、(a)はブロックの平面図、(b)は(a)のB−B矢視一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成につき添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態によるスタッドレスタイヤの構造を示す断面図、図2は、図1のタイヤのトレッド部の表面に形成したブロックバターンの一例を例示する一部平面図である。
【0015】
図1において、本発明のスタッドレスタイヤ1は、左右一対のビード部2、2に埋設したビードコア3、3の周囲を、ビードコア3、3の外周に配置したビードフィラー4、4を挟み込んでタイヤ内側から外側に向けて折り返したカーカス層5を備えると共に、ビード部2、2に連なるトレッド部6の表面に、図2に例示するように、タイヤ周方向に延びる複数の縦溝7とこれら縦溝7に交差する複数の横溝8とにより多数のブロック9を形成すると共に、これらブロック9の表面に、図3(a)及び(b)に示すように、タイヤ周方向に間隔をおいてブロック9を区画する横溝8に対して略平行に延びる複数のサイプ10を形成し、図4(a)及び(b)に示すように、サイプ10の両壁面における深さ方向及び長手方向に、それぞれ互いに対向して隆起する複数の突起11を形成している。
【0016】
そして、本発明のスタッドレスタイヤ1では、上述する突起11を、図4(a)に示すように、サイプ10の幅方向断面におけるサイプ壁面からの最大断面高さhがサイプ幅wの50%以上となり、かつこれら突起11の頂点11tの位置が突起11の底面の中間点11cよりもブロック9の表面側に位置すると共に、突起11の断面高さが突起11の頂点11tからサイプ底部側に向けて低くなるように形成している。
【0017】
このように、突起11を、サイプ壁面からの最大断面高さhがサイプ幅wの50%以上で、かつ突起11の頂点11tの位置が突起11の底面の中間点11cよりもブロック9の表面側に位置するように形成したので、雪上路面における雪が突起11のブロック表面側において押さえ込まれて、サイプ10の底面側に移動するのを効率的に阻止するため、雪詰まりの抑制に伴い雪上制動性能を向上させることができる。
【0018】
しかも、サイプ壁面からの断面高さを突起11の頂点11tからサイプ底部側に向けて低くなるように形成したので、サイプ10の両壁面間における空隙が適正に確保されることにより、氷上路面における水膜の吸い上げ効果が助長されて、氷上制動性能を効率的に向上させることができる。
【0019】
ここで、突起11の最大断面高さhがサイプ幅wの50%未満になると、サイプ11への雪詰まりを十分に阻止することができなくなり、雪上制動性能の向上効果が不足することになる。なお、サイプ10の長手方向における突起11の長さx(図4(b)参照)は特に限定されるものではなく、タイヤの種類やブロック9の形態及び大きさに応じて適宜設定される。
【0020】
また,図3(a)及び(b)の実施形態では、サイプ10の平面形状を直線状に形成した場合を例示したが、本発明のスタッドレスタイヤ1では、これに限られることなく、後述するように、サイプ10の平面形状をジグザグ状又は波状に形成する場合がある。また、ブロック9の前後端における剛性を確保するために、ブロック9の前後端に位置するサイプ10、10の両側端末をブロック9内において終端させる場合がある。
【0021】
図5(a)及び(b)は、それぞれ本発明の他の実施形態による図4(a)に相当する一部断面図で、図5(a)は、突起11の頂点11tの位置を突起11の底面の中間点11cに近づけた場合を示し、図5(b)は、サイプ壁面からの断面高さを突起11の頂点11tからサイプ底部側に向けて段階的に低くなるように形成した場合を示している。なお、断面高さをサイプ底部側に向けて段階的に変化させる割合については、これに限られるものではない。
【0022】
図6は、本発明のさらに別の実施形態による図4(a)に相当する一部断面図で、本実施形態では、突起11の頂点11tを、突起11の底面よりもブロックの表面側に位置させている。これにより、雪上路面走行時における路面上の雪を突起11のブロック表面側において効率的に押さえ込むことができるため、雪上制動性能を一層確実に向上させることができる。
【0023】
本発明スタッドレスタイヤ1において、サイプ10の両壁面に形成する突起の数及び配置は、特に限定されるものではないが、好ましくは、トレッド部6の表面から見た突起11の投影面積が、サイプ10の投影面積の70%以上、好ましくは90%以下を占めるように調整するとよい。ここで、突起11の投影面積がサイプ10の投影面積の70%未満になると、サイプ10内への雪の侵入を阻止することが難しくなって、雪上制動性能の向上効果が不足することになり、90%超になると サイプ10の両壁面間における空隙が減少し過ぎるため、氷上路面走行時における水膜の吸い上げ効果が得られなくなって、氷上制動性能が不足することになる。
【0024】
さらに好ましくは、サイプ10の両壁面に形成する突起11の総数を、サイプ深さの50%を基準にして、ブロック9の表面側において多く形成するか、又は突起11の総体積を、サイプ深さの50%を基準にして、ブロック9の表面側においてサイプ10の底部側の1.3〜5.0倍、好ましくは1.7〜3.3倍となるように調整するとよい。これにより、雪上制動性能及び氷上制動性能をバランスよく向上させることができる。
【0025】
さらに好ましくは、サイプ10の両壁面に形成する突起11の総数を、ブロック幅の50%に相当する幅方向中央領域において多く形成するか、又は突起11の総体積を、ブロック幅の50%に相当する幅方向中央領域において幅方向両端領域の1.3〜5.0倍、好ましくは1.7〜3.3倍となるように調整するとよい。これにより、雪上制動性能及び氷上制動性能を一層バランスよく向上させることができる。
【0026】
本発明のスタッドレスタイヤ1において上述する突起11をブロック9の前後端側に位置するサイプ10において多く形成することが必要である。この場合において、さらにブロック9のタイヤ周方向長さの30%に相当する前後端の領域において、その他の領域におけるよりも多く形成することが必要である。これにより、踏み込み側及び蹴り出し側のブロック剛性がそれぞれ適正に確保されるため、氷雪上路面での制駆動性能を効率的に向上させることができる。
【0027】
本発明のスタッドレスタイヤ1では、サイプ10の平面形状は、特に限定されるものではないが、氷上路面における操縦安定性を良好に確保する観点から、サイプ10の平面形状を、図7(a)及び(b)に例示するように、ジグザグ状又は波状に形成するとよい。さらに好ましくは、サイプ10を深さ方向に屈曲部を有する3次元構造に形成するとよい。これにより、ブロック9のタイヤ周方向に対する剛性を高めることができるので、雪上路面での運動性能をさらに向上させることができる。
【0028】
なお、上述する3次元構造とは、サイプ10の深さ方向を2方向以上の異なる傾斜角度を有する曲面に形成し、サイプ10の両側面が互いに噛み合う凹部と凸部とを深さ方向に点在させるようにした構造をいう。
【0029】
上述するように、本発明のスタッドレスタイヤは、ブロックの表面に形成するサイプの両壁面に互いに対向する複数の突起を形成するに際して、この突起の断面形状を、サイプ壁面からの最大断面高さがサイプ幅の50%以上で、かつ突起の頂点位置が突起の底面の中間点よりもブロックの表面側に位置し、かつサイプ壁面からの断面高さを突起の頂点からサイプ底部側に向けて低くなるように形成することにより、雪上制動性能及び氷上制動性能をバランスよく向上させるもので、氷雪路面を走行する車両に対して幅広く適用することができる。
【実施例】
【0030】
タイヤサイズを195/65R15、タイヤの構造を図1、トレッドパターンを図2としたうえで、図2のタイヤ赤道線を挟んだ5本のブロック列における各ブロックに、幅1.0mm、深さ7.0mmのサイプを形成し、これら全てのサイプの両壁面に突起を形成して、サイプの平面形状、突起の断面形態、突起の最大断面高さ、サイプの深さ方向及び幅方向における突起の総体積比、トレッド面から見た突起の投影面積がサイプの投影面積に対して占める割合、3次元サイプの採用の有無、をそれぞれ表1のように異ならせて、従来タイヤ(従来例1、2)及び本発明タイヤ(実施例1〜9)を作製した。
【0031】
なお、表1において、サイプの深さ方向における突起の総体積比については、サイプ深さの50%を基準にして、トレッド表面側(サイプの開口側)とサイプの底面側との比を「開口側/底面側」と表示し、サイプの幅方向における突起の総体積比については、サイプ幅の50%に相当する中央領域とその両側の端部領域との比を「中央領域/両端領域」と表示した。また、トレッド面から見た突起の投影面積がサイプの投影面積に対して占める割合については、「突起の投影面積の比率」と表示した。
【0032】
これら11種類のスタッドレスタイヤについて、以下の試験方法により、雪上制動性能及び氷上制動性能を評価し、その結果を従来例1を100とする指数により表1に併記した。数値が大きいほど優れていることを示す。
【0033】
〔雪上制動性能の評価〕
各タイヤをリム(サイズ:15×6JJ)に組み込み、空気圧230kPaを充填して、国産のFF車両(排気量1500cc)の前後車輪に装着したうえで、平均の雪深さが50mmであるテストコースにて初速度40km/hrからの制動試験を行い、これによって得られた制動距離の逆数を以って雪上制動性能の評価とした。
【0034】
〔氷上制動性能の評価〕
上記車両を路面温度が−2〜0℃の氷結路面からなるテストコースにて初速度40km/hrからの制動試験を行い、これによって得られた制動距離の逆数を以って氷上制動性能の評価とした。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果より、本発明タイヤは、従来タイヤに比して、雪上制動性能及び氷上制動性能がバランスよく向上していることが判る。
【符号の説明】
【0037】
1 空気入りタイヤ
2 ビード部
3 ビードコア
4 ビードフィラー
5 カーカス層
6 トレッド部
7 縦溝
8 横溝
9 ブロック
10 サイプ
11 突起
11t 突起の頂点
11c 突起の底面の中間点
w サイプの幅
h 突起の最大断面高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8