(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の板状部材を重ねて接合した所定形状のワークの当該重ね部にシーラーを塗布するシーラー塗布作業の作業性を、少なくとも演算部、操作部及び表示部を備えるコンピュータを用いて、実際のシーラー塗布作業に先立ち予め検証する、シーラー塗布作業の事前検証方法であって、
上記ワークの3次元データと、当該ワークの重ね部に塗布されるシーラーの3次元データと、を用意し、
上記操作部が操作されることに応じて、上記演算部が、上記ワークの3次元データと、上記シーラーの3次元データとを合成して、上記表示部に表示された当該ワーク上にシーラー塗布ラインを設定する塗布ライン設定工程と、
上記操作部が操作されることに応じて、上記演算部が、3次元座標を有する測定ポイントを、上記シーラー塗布ライン上に所定の等間隔で設定する測定ポイント設定工程と、
上記操作部が操作されることに応じて、上記演算部が、上記測定ポイントに基づいて、上記シーラー塗布ラインを一筆書き状に1回で充填塗布されるシーラー毎に分割した複数の塗布パスを生成する塗布パス生成工程と、
上記演算部が、上記各塗布パスの上記各測定ポイントにおける、重ねて接合された板状部材間の板間隙及びシール棚寸法を算出する算出工程と、
上記演算部が、上記算出された板間隙及びシール棚寸法と基準値とを比較して、上記各測定ポイントで合格か不合格かを判定する判定工程と、
上記操作部が操作されることに応じて、上記演算部が、予め設定されたシーラー形状を上記各測定ポイントに配置して、シーラーが塗布された状態を作成する塗布状態作成工程と、
上記演算部が、上記塗布状態作成工程で作成されたシーラーにおける、上記判定工程において又は検証者によって不合格と判定された領域を、色識別可能に着色して上記表示部に表示するとともに、上記操作部の操作で入力された作業上の注意事項を上記表示部に表示する検証結果表示工程と、を含み、
一方の板状部材が重ねて接合される他方の板状部材には、一方の板状部材の端縁よりも一方側に位置してシーラーが乗る突出部位と、当該端縁よりも他方側に位置して一方の板状部材と重なる重合部位とがあり、
上記算出工程では、
上記演算部が、各測定ポイントに対応する、重ねて接合された一方の板状部材の端縁を挟んだ両側に、基準値だけ離して円柱モデルを設定し、
一方の板状部材の端縁よりも一方側では、上記突出部位と上記円柱モデルとが干渉している場合、上記突出部位のシール棚寸法を上記基準値以上であると判定する一方、上記突出部位と上記円柱モデルとが干渉していない場合、上記突出部位と上記円柱モデルとが干渉するまで上記円柱モデルを他方側に移動させて、一方の板状部材の端縁と上記円柱モデルの円周上の点との最短距離を上記突出部位のシール棚寸法として算出し、
一方の板状部材の端縁よりも他方側では、上記重合部位と上記円柱モデルとが干渉している場合、上記重合部位のシール棚寸法を上記基準値以上であると判定する一方、上記重合部位と上記円柱モデルとが干渉していない場合、上記重合部位と上記円柱モデルとが干渉するまで上記円柱モデルを一方側に移動させて、一方の板状部材の端縁と上記円柱モデルの円周上の点との最短距離を上記重合部位のシール棚寸法として算出し、
上記判定工程では、上記演算部は、上記突出部位のシール棚寸法及び上記重合部位のシール棚寸法が、いずれも上記基準値以上のときに合格と判定することを特徴とするシーラー塗布作業の事前検証方法。
複数の板状部材を重ねて接合した所定形状のワークの当該重ね部にシーラーを塗布するシーラー塗布作業の作業性を、実際のシーラー塗布作業に先立ち予め検証する、シーラー塗布作業の事前検証システムであって、
3次元データを画像として表示可能な表示部と、
上記ワークの3次元データと、上記シーラーの3次元データとを合成して、上記表示部に表示された当該ワーク上にシーラー塗布ラインを設定する塗布ライン設定手段と、
3次元座標を有する測定ポイントを、上記シーラー塗布ライン上に所定の等間隔で設定する測定ポイント設定手段と、
上記測定ポイントに基づいて、上記シーラー塗布ラインを一筆書き状に1回で充填塗布されるシーラー毎に分割した複数の塗布パスを生成する塗布パス生成手段と、
上記各塗布パスの上記各測定ポイントにおける、重ねて接合された板状部材間の板間隙及びシール棚寸法を算出する計算手段と、
上記算出された板間隙及びシール棚寸法と基準値とを比較して、上記各測定ポイントについて合格か不合格かを判定する判定手段と、
予め設定されたシーラー形状を上記各測定ポイントに配置して、シーラーが塗布された状態を作成する塗布状態作成手段と、
上記塗布状態作成手段によって作成されたシーラーにおける、上記判定手段又は検証者によって不合格と判定された領域を色識別可能に着色して上記表示部に表示するとともに、検証者によって入力された作業上の注意事項を上記表示部に表示する検証結果表示手段と、を備え、
一方の板状部材が重ねて接合される他方の板状部材には、一方の板状部材の端縁よりも一方側に位置してシーラーが乗る突出部位と、当該端縁よりも他方側に位置して一方の板状部材と重なる重合部位とがあり、
上記計算手段は、
各測定ポイントに対応する、重ねて接合された一方の板状部材の端縁を挟んだ両側に、基準値だけ離して円柱モデルを設定し、
一方の板状部材の端縁よりも一方側では、上記突出部位と上記円柱モデルとが干渉している場合、上記突出部位のシール棚寸法を上記基準値以上であると判定する一方、上記突出部位と上記円柱モデルとが干渉していない場合、上記突出部位と上記円柱モデルとが干渉するまで上記円柱モデルを他方側に移動させて、一方の板状部材の端縁と上記円柱モデルの円周上の点との最短距離を上記突出部位のシール棚寸法として算出し、
一方の板状部材の端縁よりも他方側では、上記重合部位と上記円柱モデルとが干渉している場合、上記重合部位のシール棚寸法を上記基準値以上であると判定する一方、上記重合部位と上記円柱モデルとが干渉していない場合、上記重合部位と上記円柱モデルとが干渉するまで上記円柱モデルを一方側に移動させて、一方の板状部材の端縁と上記円柱モデルの円周上の点との最短距離を上記重合部位のシール棚寸法として算出し、
上記判定手段は、上記突出部位のシール棚寸法及び上記重合部位のシール棚寸法が、いずれも上記基準値以上のときに合格と判定することを特徴とするシーラー塗布作業の事前検証システム。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るシステムを示すブロック図である。このシステム100は、複数の使用者が使用できるようになっており、使用者群の範囲は、例えば、1つの企業全体、1つの事業所全体、1部門全体、複数の企業全体、複数の事業所全体、複数の部門全体であってもよい。以下、説明の便宜のため、技術本部と複数の技術部門と工場部門とを有する会社を対象として説明する。
【0030】
システム100は、
図1に示すように、技術本部で共有される机上検証サーバ3と、当該机上検証サーバ3と接続されるとともに、事前検証の際に用いられる検証データが保存されている机上検証データベース5と、全社で共有される図面データを保存するための図面サーバ7と、当該図面サーバ7に接続されていて、全社で共有される図面データが保存されている図面データベース9と、机上検証サーバ3及び図面サーバ7に接続されていて、図面データを検証ツールで読み込めるように変換するためのデータ変換サーバ13と、机上検証サーバ3及び図面サーバ7に接続されていて、検証ツールを用いた事前検証を実施するための机上検証クライアント15と、複数の技術部門で共有する工程図システム用サーバである工程図サーバ17と、工程図サーバ17に接続されていて、工程図クライアント23,25で用いられるデータが保存されている工程図データベース19と、各技術部門で工程図作成に用いられる、工程図サーバ17及び図面サーバ7に接続された複数の工程図クライアント23と、工程図サーバ17に接続された複数の配布先(工場部門)の工程図クライアント25と、を備えている。
【0031】
−事前検証システム−
図2は、本発明の実施形態に係る事前検証システムを示す概念図である。この事前検証システム1は、複数の板状部材を重ねて接合した所定形状のワーク(本実施形態では、車両の車体27である)の当該重ね部47(
図10参照)にシーラーを塗布するシーラー塗布作業の作業性を、実際のシーラー塗布作業に先立ち予め検証するシステムである。事前検証システム1は、
図2に示すように、検証者によって操作される操作部11と、事前検証に用いるデータを記憶する記憶部21と、3次元データを画像として表示可能な表示部31と、各種の設定や算出や判定等を行う演算部41と、を有している。そうして、演算部41は、
図2に示すように、データ変換部41a、塗布ライン設定部41b、測定ポイント設定部41c、塗布パス生成部41d、第1計算部41e、第2計算部41f、第1判定部41g、第2判定部41h、塗布状態作成部41i、検証結果表示部41j及び動画作成部41kを有している。
【0032】
本実施形態では、データ変換サーバ13及び机上検証クライアント15のキーボードやマウス等の入力機器が操作部11に対応し、机上検証データベース5、図面サーバ7及び図面データベース9が記憶部21に対応し、データ変換サーバ13及び机上検証クライアント15のモニター等が表示部31に対応し、机上検証サーバ3、データ変換サーバ13及び机上検証クライアント15が演算部41に対応している。これにより、かかる事前検証システム1全体が、本発明でいうところの「少なくとも演算部、操作部及び表示部を備えるコンピュータ」に対応している。
【0033】
この事前検証システム1では、机上検証(データ管理)ツールとして、例えば、市販のProcess Designer(シーメンスPLM製)と、机上検証(3D検証)ツールとして、例えば、市販のProcess Simulate(シーメンスPLM製)が用いられている。このProcess Designer及びProcess Simulateには、ユーザによるプランニング用アプリケーションやエンジニアリング用アプリケーション開発のためのオープンAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)機能が備えられており、これにより、事前検証システム1では、シーラー塗布作業の事前検証のために開発された様々なアプリケーションを用いることが可能となっている。
【0034】
上記データ変換部41aは、3次元CADデータとして作成された車体データやシールデータを、机上検証(3D検証)ツールで扱えるようなデータ形式に変換して記憶部21に登録するように構成されており、本実施形態ではデータ変換サーバ13が当該データ変換部41aに対応している。より詳しくは、データ変換サーバ13(データ変換部41a)は、図面サーバ7を経由して図面データベース9(記憶部21)から読み込まれて、当該データ変換サーバ13に保存された車体データやシールデータを、検証者による当該データ変換サーバ13(操作部11)の操作に応じて起動されたデータ変換プログラムを用いて、机上検証ツールで扱えるようなデータ形式に変換して、机上検証データベース5(記憶部21)に登録するようになっている。
【0035】
なお、長いシールデータを一括して扱うのは、容量が大きくなりすぎる等不便なので、シールデータは、シール要領図の中で奇数または偶数の「チャンク名称」がついた複数のチャンク(データのまとまり)で作成されている。このシールデータを机上検証ツールで扱えるようなデータ形式に変換する際には、例えば直線状のシールデータは同じグループにするといった一定のルールに従って、1つのチャンクのシールデータを複数のグループ(仮のパス)に分けて変換するようにしている(例えば、
図4に示すシーラー29が1つのグループ)。ここで、「チャンク名称」とは、シール要領図を、部位と作業方向(室内側または室外側)によって分割した際の名前であり、これにより、後述するように、予め設定された形状のシーラー(以下、シーラー実体形状57ともいう)を各測定ポイント35に配置する際に、その配置方向を特定することが可能となっている。この場合、奇数のチャンク名称は室内シールを表すので、シーラー実体形状57を上向きに発生させる一方、偶数のチャンク名称は、室外シールを表すので、シーラー実体形状57を下向きに発生させる。また、データ変換サーバ13は、データ変換プログラムが組み込まれていることを除けば、机上検証クライアント15と同じ機能を有しているので、机上検証クライアント15としても用いることができる。
【0036】
上記塗布ライン設定部(塗布ライン設定手段)41bは、車体27の3次元データと、シーラー29の3次元データとを合成して、表示部31に表示された車体27上にシーラー塗布ライン33を設定するように構成されている。より詳しくは、この塗布ライン設定部41bは、机上検証データベース5(記憶部21)から机上検証(データ管理)ツールに設けられたスタディホルダ(データを三次元画面上で合成するためのホルダ)に割り付けられたデータのうち、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって指定された、
図3に示す車体27の3次元データと、
図4に示すシーラー29の3次元データとを机上検証(3D検証)ツールにより合成し、
図5に示すように、机上検証クライアント15のモニター(表示部31)に表示された車体27の三次元画像上にシーラー塗布ライン33を設定するようになっている。
【0037】
上記測定ポイント設定部(測定ポイント設定手段)41cは、3次元座標を有する測定ポイント35を、シーラー塗布ライン33上に所定の等間隔で設定するように構成されている。より詳しくは、この測定ポイント設定部41cは、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって入力された「測定ポイント35の発生間隔値」に基づき、
図6に示すように、3次元座標を有する測定ポイント35を、1つのグループ(仮のパス)を形成しているシーラー塗布ライン33上に等間隔で発生させるようになっている。なお、
図6では、図を見易くするために、代表的な測定ポイント35のみを表示している。
【0038】
ところで、3次元画像上の点は、シーラー塗布ライン33上に乗っているように見えても、方向を変えて見るとずれた位置にあることが多いことから、検証者の目視チェックによってシーラー塗布ライン33上に測定ポイント35を作成するのは難しく、正確な測定ポイント35を作成するのに多くの時間がかかる。これに対し、この測定ポイント設定部41cによれば、多くの測定ポイント35を短時間で作成することができることから、大幅な工数削減が可能となる。また、多くの測定ポイント35が短時間で作成できるので、その測定ポイント35を、後述する板間隙やシール棚寸法の測定点としてのみならず、シーラー実体形状を発生させる点としても利用することができる。
【0039】
上記塗布パス生成部(塗布パス生成手段)41dは、測定ポイント35に基づいて、シーラー塗布ライン33を一筆書き状に1回で充填塗布されるシーラー毎に分割した、複数の塗布パスを生成するように構成されている。より詳しくは、塗布パス生成部41dは、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって、編集する仮のパス及び当該仮のパスにおける分割位置の測定ポイント35が入力されると、かかる入力された測定ポイント35に基づいて、仮のパスを分割して、新たな塗布パスを生成するようになっている。また、パスを結合する際は、対象のパスを結合する順に選択し、新たな塗布パスを生成するようになっている。
【0040】
例えば、
図6のシーラー塗布ライン33が、測定ポイント35aで分割された、第1の仮のパス33a及び第2の仮のパス33bによって形成されていると仮定した場合、検証者が、測定ポイント35aと測定ポイント35bとの間の部位が一筆書き状に1回で充填塗布され、且つ、測定ポイント35bと測定ポイント35cとの間の部位が一筆書き状に1回で充填塗布されると判断すると、検証者は、机上検証クライアント15の操作によって、第1の仮のパスを選択する。そうして、検証者が、分割位置として測定ポイント35bと測定ポイント35cとを入力すると、第1の仮のパス33aが分割されて、
図7に示すように、新たに3つの塗布パス33A,33B,33Cが生成される。また、検証者が、第2の仮のパス33bと新たな塗布パス33Aとを選択し、結合を入力すると、新たな塗布パス33Dが生成される。
【0041】
このように、取り込んだ全てのシーラー塗布ライン33上に測定ポイント35を発生させ、それら測定ポイント35に基づいて、一筆書き状に1回で充填塗布される塗布パスを短時間で作成することによって、動的検証時間が大幅に短縮できるとともに、実際の充填作業を意識した上で板間隙やシール棚寸法の検証を行うことによって、問題点と対応策を検討することが可能となる。
【0042】
上記第1計算部41eは、各塗布パスの測定ポイント35における、重ねて接合された板状部材間の板間隙、具体的には、板状部材間の最短距離Cmin及び垂線距離Cv(一方の板状部材の面の垂線方向における板状部材間の距離)を算出するように構成されている。より詳しくは、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって、検証対象となる板状部材が選択されると、第1計算部41eが、登録されている当該板状部材に関する情報(板厚、板厚方向など)を取得する。なお、当該板状部材に関する情報が未登録の場合には、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって、板状部材に関する情報を設定する。
【0043】
そうして、第1計算部41eはかかる情報に基づいて板状部材間の板間隙を算出するのであるが、
図8(a)の測定ポイント35fや
図8(b)の測定ポイント35h,35jでは、板状部材間の最短距離Cminと垂線距離Cvとが等しいことから、第1計算部41eが板状部材間の板間隙を特定するのは容易である一方、
図8(a)の測定ポイント35e,35gや
図8(b)の測定ポイント35iでは、板状部材間の最短距離Cminと垂線距離Cvとが異なることから、いずれが適切な板状部材間の板間隙であるかを第1計算部41eが特定するのは困難である。そこで、第1計算部41eは、板状部材間の最短距離Cmin及び垂線距離Cvの両方を測定し、どちらを板間隙の値とすべきかを検証者に判断させるようになっている。なお、垂線距離Cvを算出する場合には、
図8(c)に示すように、一方の板状部材37の面から、垂線方向に連なる球モデル43を作成していき、かかる球モデル43と他方の板状部材39とが干渉した位置で、板状部材37,39間の距離を算出する。
【0044】
ところで、実際の板状部材が厚みを有しているのに対し、データ上の板状部材は厚みを持っていないことから、板状部材間の板間隙を算出する際には、板厚を加味して板間隙を算出する必要がある。そこで、第1計算部41eは、板状部材に関する情報に基づき、以下の4つのパターンに分けて、板厚を加味した板間隙を算出するように構成されている。
【0045】
第1のパターンは、
図9(a)に示すように、板厚taの板状部材(A)37の板厚方向が隙間に対して内向きで、且つ、板厚tbの板状部材(B)39の板厚方向が隙間に対して内向きの場合である。この場合には、
最短距離Cmin又は垂線距離Cv=仮の板間隙D−板厚ta−板厚tb
という式に従って、板状部材間の最短距離Cmin及び垂線距離Cvが算出される。ここで、仮の板間隙Dとは、板状部材の厚みを考慮することなく、算出された最短距離又は垂線距離を意味する。なお、
図9(a)に示す例では、仮の板間隙D=板厚ta+板厚tbなので、板間隙は0となる。
【0046】
第2のパターンは、
図9(b)に示すように、板厚taの板状部材(A)37の板厚方向が隙間に対して外向きで、且つ、板厚tbの板状部材(B)39の板厚方向が隙間に対して外向きの場合である。この場合には、
最短距離Cmin又は垂線距離Cv=仮の板間隙D
という式に従って、板状部材間の最短距離Cmin及び垂線距離Cvが算出される。
【0047】
第3のパターンは、
図9(c)に示すように、板厚taの板状部材(A)37の板厚方向が隙間に対して内向きで、且つ、板厚tbの板状部材(B)39の板厚方向が隙間に対して外向きの場合である。この場合には、
最短距離Cmin又は垂線距離Cv=仮の板間隙D−板厚ta
という式に従って、板状部材間の最短距離Cmin及び垂線距離Cvが算出される。
【0048】
第4のパターンは、
図9(d)に示すように、板厚taの板状部材(A)37の板厚方向が隙間に対して外向きで、且つ、板厚tbの板状部材(B)39の板厚方向が隙間に対して内向きの場合である。この場合には、
最短距離Cmin又は垂線距離Cv=仮の板間隙D−板厚tb
という式に従って、板状部材間の最短距離Cmin及び垂線距離Cvが算出される。
【0049】
上記第2計算部41fは、各塗布パスの測定ポイント35におけるシール棚寸法を算出するように構成されている。より詳しくは、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって、検証対象となる板状部材が選択されると、第2計算部41fが、登録されている当該板状部材に関する情報を取得する。なお、検証者による板状部材の選択操作は、板状部材間の板間隙を算出する際の選択操作と兼用させることが可能である。
【0050】
そうして、検証者による机上検証クライアント15の操作によって、シール棚寸法の合否判定基準であるNG基準Bsが入力されると、第2計算部41fは、測定ポイント35に対応する、重ねて接合された一方の板状部材37の端縁37aを挟んだ両側に、所定距離だけ離して円柱モデル45を設定し、当該円柱モデル45と他方の板状部材39とを干渉させることによりシール棚寸法を算出するようになっている。すなわち、
図10(a)に示すように、車体27を構成する板状部材(A)37と板状部材(B)39との重ね部47にシーラー塗布ライン33が設定されている場合には、第2計算部41fは、測定ポイント35における板状部材(A)37の端縁37aの面(エッジ)に対して垂直な方向であるY方向を定義する。また、シーラー塗布ライン33が設定されていることから、塗布進行方向が決まるので、第2計算部41fは、かかる塗布進行方向をX方向として定義する。そうして、Y方向とX方向とが定義されることによって、これらと直交するZ方向が定義される。
【0051】
このように、X方向、Y方向及びZ方向が定義されると、第2計算部41fは、
図10(b)に示すように、測定ポイント35における板状部材(A)37の端縁37aの面(エッジ)から、Y方向に±NG基準Bsだけ離れた位置に、Z方向に延びる円柱モデル45を作成する。なお、「NG基準Bsだけ離れた」とは、測定ポイント35における板状部材(A)37の端縁37aと円柱モデル45の中心軸との距離ではなく、測定ポイント35における板状部材(A)37の端縁37aと円柱モデル45の円周上の点との最短距離を意味する。
【0052】
このように、測定ポイント35に対応する板状部材の端縁37aの両側、すなわち、端縁37aの面から、Y方向に±NG基準Bsだけ離れた位置に円柱モデル45を作成するのは、以下の理由による。すなわち、板状部材(A)37が接合される板状部材(B)39には、端縁37aよりもY方向+側に位置してシーラー33が乗る突出部位39aと、端縁37aよりもY方向−側に位置して板状部材(A)37と重なっている重合部位39bとがあるところ、重合部位39bにはシーラー33が乗っていないので、シール棚寸法の測定は不要に思われるが、板状部材間の板間隙が広い場合には、重合部位39bもNG基準Bs以上のシール棚寸法を有していないと、シーラー33が板間隙から落ちてしまうおそれがあるからである。
【0053】
そうして、第2計算部41fは、例えば
図10(b)に示すように、端縁37aよりもY方向−側では、板状部材(B)39と円柱モデル45とが干渉していることから、シール棚はNG基準Bs以上であると判定し、シール棚寸法は算出しない。一方、端縁37aよりもY方向+側では、板状部材(B)39と円柱モデル45とが干渉していないことから、
図10(c)に示すように、板状部材(B)39と円柱モデル45とが干渉するまで円柱モデル45をY方向−側まで移動させて、板状部材(B)39と円柱モデル45とが干渉すると、測定ポイント35における板状部材(A)37の端縁37aと円柱モデル45の円周上の点との最短距離を、突出部位39aのシール棚寸法B
1として算出する。
【0054】
以上により、第1計算部41e及び第2計算部41fが、本発明でいうところの、各測定ポイントにおける、重ねて接合された板状部材間の板間隙及びシール棚寸法を算出する計算手段に対応している。
【0055】
上記第1判定部41gは、算出された板間隙と基準値とを比較して、各測定ポイント35毎に合格か不合格かを判定するように構成されている。より詳しくは、第1判定部41gは、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって入力されたNG基準値Csと、第1計算部41eによって算出された板状部材間の最短距離Cminとを比較して、最短距離CminがNG基準値Csを超えている場合には、不合格と判定する。一方、最短距離CminがNG基準値Cs以下の場合には、NG基準値Csと、第1計算部41eによって算出された板状部材間の垂線距離Cvとを比較して、垂線距離CvがNG基準値Csを超えている場合には、最短距離Cminと垂線距離Cvのいずれを採用すべきかの判断を検証者に委ねるべく「要確認」と判定する。すなわち、第1判定部41gは、各測定ポイント35における板状部材間の最短距離Cmin及び垂線距離Cvが共に、NG基準値Cs以下のときに合格と判定するようになっている。
【0056】
上記第2判定部41hは、
図11(a)に示すように、突出部位39aにおけるシール棚寸法B
1及び重合部位39bにおけるシール棚寸法B
2のいずれもが、NG基準値Bs以上のときに合格と判定するように構成されている。すなわち、この第2判定部41hは、
図11(b)に示すように、シール棚寸法B
1及びB
2のいずれもがNG基準値Bsより小さい場合のみならず、
図11(c)に示すように、シール棚寸法B
1のみがNG基準値Bsより小さい場合や、
図11(d)に示すように、シール棚寸法B
2のみがNG基準値Bsより小さい場合にも不合格と判定するように構成されている。
【0057】
また、この第2判定部41hは、
図12(a)に示すように、突出部位39aの端縁(エッジ)までシール棚寸法B
1がNG基準値Bsに満たない場合のみならず、
図12(b)に示すように、R部の存在によりシール棚寸法B
1がNG基準値Bsに満たない場合、また、
図12(c)に示すように、段差の存在によりシール棚寸法B
1がNG基準値Bsに満たない場合、さらに、
図12(d)に示すように、板状部材(C)49の突合せによりシール棚寸法B
1がNG基準値Bsに満たない場合にも不合格と判定するように構成されている。
【0058】
以上により、第1判定部41g及び第2判定部41hが、本発明でいうところの、算出された板間隙及びシール棚寸法と基準値とを比較して、各測定ポイント35毎に合格か不合格かを判定する判定手段に対応している。なお、第1判定部41gは、ある測定ポイント35bを不合格と判定したときには、
図13に示すように、机上検証クライアント15のモニター(表示部31)に表示された車体27の三次元画像上における当該測定ポイント35bに着色された(例えば赤い)球モデル53を表示する一方、第2判定部41hは、ある測定ポイント35bを不合格と判定したときには、
図13に示すように、机上検証クライアント15のモニターに表示された車体27の三次元画像上における当該測定ポイント35bに着色された(例えばオレンジ色の)円柱モデル55を表示するようになっている。これにより、検証者は、動的検証を行う際に不合格箇所を簡単に確認できる。
【0059】
上記塗布状態作成部(塗布状態作成手段)41iは、予め設定されたシーラー形状(シーラー実体形状)を各測定ポイントに配置して、シーラーが塗布された状態を作成するように構成されている。より詳しくは、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって、検証した塗布パス33Dが選択されるとともに、当該塗布状態作成部41iに登録された複数のシーラー実体形状の中から、配置されるシーラー実体形状が選択されると、塗布状態作成部41iは、
図5に示したような単なる線ではなく、
図14に示すように、シーラー実体形状57を各測定ポイントに配置するようになっている。
【0060】
ここで、シーラー実体形状57が充填方向側にのみ厚みを有しているのに対し、データ上のシーラーは
図10(a)に示すように、車体27を構成する板状部材(A)37と板状部材(B)39との重ね部47のエッジを中心線とするパイプ形状となっていることから、シーラー実体形状57を上向きに配置するか又は下向きに配置するかを塗布状態作成部41iが特定するのは困難であるとも思われるが、上述の如く、各塗布パスは指定された「チャンク名称」を有しているので、シーラー実体形状を各測定ポイントに配置する際に、その配置方向を特定することが可能となっている。そうして、奇数のチャンク名称は室内シールを表すので、塗布パス33Dが奇数のチャンク名称を有していれば、塗布状態作成部41iは、
図14に示すように、シーラー実体形状57を上向きに発生させる。
【0061】
上記検証結果表示部(検証結果表示手段)41jは、塗布状態作成部41iによって作成されたシーラー実体形状57における、第1判定部41g及び第2判定部41hによって不合格と判定された領域を、色識別可能に着色して表示部31に表示するとともに、板間隙やシール棚検証及び動的検証の際に検証者によって入力された作業上の注意事項65を表示部31に表示するように構成されている。より詳しくは、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって、塗布状態作成部41iによって作成されたシーラー実体形状57が選択されるとともに、検証結果表示命令が入力されると、検証結果表示部41jは、
図15に示すように、第1判定部41g又は検証者によって板間隙が不合格と判定された測定ポイント35bにおける(例えば灰色に着色された)シーラー実体形状59を、(例えば赤色に)着色して表示するとともに、第2判定部41h又は検証者によってシール棚寸法が不合格と判定された測定ポイント35bにおけるシーラー実体形状63を、(例えばオレンジ色に)着色して表示するようになっている。また、検証結果表示部41jは、検証者による机上検証クライアント15(操作部11)の操作によって、板間隙やシール棚検証及び動的検証の際に入力された、例えば「始点と終点を集めて確実に隙間を埋めること」といった注意事項65を測定ポイントの近傍に表示するようになっている。
【0062】
このように、シーラー実体形状57が作成され、不合格と判定された領域が色識別可能に着色されて表示され、且つ、作業上の注意事項65が表示された画像データは、机上検証データベース5に保存される。
【0063】
上記動画作成部(動画作成手段)41kは、検証結果表示部41jにより作成された画像データに基づき、各塗布パスにおけるシーラーの塗布手順に従って、塗布ガン(図示せず)による塗布作業状態を連続的に表示しながら、当該塗布ガン(ガン先)の動きに合わせて、シーラー実体形状(シーラーが塗布された状態)、色識別可能に着色された領域、及び、注意事項を表示する動画を作成するように構成されている。
【0064】
このように、塗布ガンのガン先が各測定ポイントを通過するタイミングに合わせてシーラー実体形状57や注意事項65等を表示させることで、実際の作業をイメージしながら作業手順やシーラーの継ぎ位置などを正確に理解できる、動画を使った作業訓練が可能となる。なお、かかる動画も、机上検証データベース5に保存される。
【0065】
−事前検証方法−
図16は、本実施形態に係る作業フローを示す図である。以下、この作業フローに沿って、複数の板状部材を重ねて接合した所定形状のワークの当該重ね部47にシーラーを塗布するシーラー塗布作業の作業性を、上記事前検証システム1を用いて、実際のシーラー塗布作業に先立ち予め検証する、シーラー塗布作業の事前検証方法について説明する。
【0066】
ステップS1では、シーラー塗布作業の対象となる車体27の形状に基づき、シール部位を決定し、シーラー29の3次元CADデータを作成し、図面データベース9に保存する。
【0067】
ステップS2では、3次元CADデータとして作成された車体データやシールデータを、机上検証ツールで扱えるようなデータ形式に変換して登録する。より詳しくは、先ず、データ変換サーバ13又は机上検証クライアント15から、図面サーバ7を経由して、図面データベース9(記憶部21)に検証対象となる車体27やシール29の3次元CADデータを要求し、
図3及び
図4に示すように、車体27やシール29の三次元図をデータ変換サーバ13又は机上検証クライアント15の表示部31に表示し、表示された車体27やシール29の3次元CADデータをデータ変換サーバ13又は机上検証クライアント15に保存する(なお、3次元CADデータを机上検証クライアント15に保存した場合には、かかる3次元CADデータをデータ変換サーバ13に移動する)。
【0068】
次いで、データ変換サーバ13(データ変換部41a)に組み込まれたデータ変換プログラムを起動し、データ変換サーバ13に保存された車体27やシール29の3次元CADデータを、机上検証ツールで扱えるようなデータ形式に変換して、机上検証データベース5(記憶部21)に登録する。このとき、シールデータについては、偶数又は奇数のチャンク名称を指定して変換する。これにより、車体27の3次元データと、当該車体27の重ね部47に塗布されるシーラーの3次元データとが用意される。
【0069】
ステップS3では、先ず、机上検証クライアント15(操作部11)を操作して、机上検証データベース5(記憶部21)に登録された車体27及びシーラーの3次元データを、机上検証(データ管理)ツールに設けられたスタディホルダに割り付ける。次いで、スタディホルダに割り付けられたデータの中から、検証対象となる車体27及びシーラー29の3次元データを、机上検証クライアント15の操作によって指定した後、机上検証(3D検証)ツールを起動して、車体27の3次元データとシーラーの3次元データと合成し、
図5に示すように、机上検証クライアント15のモニター(表示部31)に表示された車体27の三次元画像上にシーラー塗布ライン33を設定する。これにより、ステップS3が、コンピュータの操作部11が操作されることに応じて、コンピュータの演算部41が、ワークの3次元データと、シーラーの3次元データとを合成して、表示部31に表示された当該ワーク上にシーラー塗布ライン33を設定する塗布ライン設定工程に対応する。
【0070】
ステップS4では、先ず、机上検証クライアント15(操作部11)を操作して、測定ポイント35の発生間隔値を入力する。そうすると、
図6に示すように、入力された測定ポイント35の発生間隔の値に基づき、3次元座標を有する測定ポイント35が、1つのグループ(仮のパス)を形成しているシーラー塗布ライン33上に等間隔で発生する。これにより、ステップS4が、コンピュータの操作部11が操作されることに応じて、コンピュータの演算部41が、シーラー塗布ライン33上に所定の等間隔で、3次元座標を有する測定ポイント35を設定する測定ポイント設定工程に対応する。
【0071】
ステップS5では、先ず、検証者が、一筆書き状に1回で充填塗布されるシーラーからなる塗布パスを生成すべく、仮のパスにおける分割位置及び結合位置を決定する。そうして、机上検証クライアント15(操作部11)を操作して、編集する仮のパス及び当該仮のパスにおける分割位置の測定ポイント35b,35cを入力、又は、結合対象のパス33bと33A入力すると、塗布パス生成部41dが、かかる入力された測定ポイント35b,35cに基づいて、
図7に示すように、仮のパスを分割して新たな塗布パス33B,33Cを、仮のパス33bと33Aを結合して33Dを生成する。これにより、ステップS5が、コンピュータの操作部11が操作されることに応じて、コンピュータの演算部41が、測定ポイント35に基づいて、シーラー塗布ライン33を一筆書き状に1回で充填塗布されるシーラー毎に分割した複数の塗布パスを生成する塗布パス生成工程に対応する。
【0072】
ステップS6は、
図17に示す板状部材間の板間隙の算出及び判定に係る作業フローと、
図18に示すシール棚寸法の算出及び判定に係る作業フローとで構成されている。
【0073】
先ず、板状部材間の板間隙の算出及び判定に係る作業フローにおけるステップSA1では、検証者が机上検証クライアント15(操作部11)を操作して、検証したい塗布パスを選択し、その塗布パスの検証対象となる板状部材を選択する。次いで、ステップSA2では、第1計算部41eが、登録されている板状部材に関する情報を取得する。
【0074】
次のステップSA3では、検証者が机上検証クライアント15を操作して、板間隙の合格又は不合格を判定する際の基準となるNG基準Csを設定する。次いで、ステップSA4では、検証者が机上検証クライアント15を操作して、選択された板状部材における検証対象となる測定ポイント35を設定する。なお、1つの塗布パスの全測定ポイント35において検証を行うことも可能だが、無駄な検証を省くべく、検証対象となる測定ポイント35を限定して実施するようにしている。
【0075】
次のステップSA5では、第1計算部41eが、板厚を加味しつつ、板状部材間の最短距離Cminを算出する。次いで、ステップSA6では、第1計算部41eが、板厚を加味しつつ、板状部材間の垂線距離Cvを算出する。
【0076】
次のステップSA7では、第1判定部41gが、NG基準値Csと最短距離Cminとを比較して、最短距離CminがNG基準値Cs以下であるか否かを判定する。このステップSA7の判定がNOの場合、すなわち、最短距離CminがNG基準値Csを超えている場合には、ステップSA11に進み、第1判定部41gが「NG判定」を行う。
【0077】
一方、ステップSA7の判定がYESの場合には、ステップSA8に進み、第1判定部41gが、NG基準値Csと垂線距離Cvとを比較して、垂線距離CvがNG基準値Cs以下であるか否かを判定する。このステップSA8の判定がNOの場合、すなわち、垂線距離CvがNG基準値Csを超えている場合には、ステップSA10に進み、第1判定部41gが「要確認」と判定する。
【0078】
一方、ステップSA8の判定がYESの場合には、すなわち、最短距離Cmin及び垂線距離Cvが共にNG基準値Cs以下の場合には、ステップSA9に進み、第1判定部41gが「OK判定」を行う。
【0079】
これに対し、シール棚寸法の算出及び判定に係る作業フローにおけるステップSB1では、検証者が机上検証クライアント15(操作部11)を操作して、検証したい塗布パスを選択し、その塗布パスの検証対象となる板状部材を選択する。次いで、ステップSB2では、第2計算部41fが、登録されている板状部材に関する情報を取得する。
【0080】
次のステップSB3では、検証者が机上検証クライアント15を操作して、シール棚寸法の合格又は不合格を判定する際の基準となるNG基準Bsを設定する。次いで、ステップSB4では、検証者が机上検証クライアント15を操作して、選択された板状部材における検証対象となる測定ポイント35を設定する。
【0081】
次のステップSB5では、第2計算部41fが、突出部位39aにおけるシール棚寸法B
1を算出する。次いで、ステップSB6では、第2計算部41fが、重合部位39bにおけるシール棚寸法B
2を算出する。
【0082】
次のステップSB7では、第2判定部41hが、NG基準値Bsとシール棚寸法B
1とを比較して、シール棚寸法B
1がNG基準値Bs以上であるか否かを判定する。このステップSB7の判定がNOの場合、すなわち、シール棚寸法B
1がNG基準値Bs未満の場合には、ステップSB10に進み、第2判定部41hが「NG判定」を行う。
【0083】
一方、ステップSB7の判定がYESの場合には、ステップSB8に進み、第2判定部41hが、NG基準値Bsとシール棚寸法B
2とを比較して、シール棚寸法B
2がNG基準値Bs以上であるか否かを判定する。このステップSB8の判定がNOの場合、すなわち、シール棚寸法B
2がNG基準値Bs未満の場合には、ステップSB10に進み、第2判定部41hが「NG判定」を行う。
【0084】
一方、ステップSB8の判定がYESの場合には、すなわち、シール棚寸法B
1及びB
2が共にNG基準値Bs以上の場合には、ステップSB9に進み、第2判定部41hが「OK判定」を行う。
【0085】
これらにより、ステップS6が、コンピュータの演算部41が、各塗布パスの各測定ポイント35における、重ねて接合された板状部材間の板間隙及びシール棚寸法を算出する算出工程と、コンピュータの演算部41が、算出された板間隙及びシール棚寸法と基準値とを比較して、各測定ポイント35毎に合格か不合格かを判定する判定工程と、に対応する。
【0086】
なお、第1判定部41gは、設定された測定ポイント35を不合格と判定したときには、
図13に示すように、机上検証クライアント15のモニターに表示された車体27の三次元画像上における当該測定ポイント35に着色された球モデル53を表示する一方、第2判定部41hは、設定された測定ポイント35を不合格と判定したときには、
図13に示すように、机上検証クライアント15のモニターに表示された車体27の三次元画像上における当該測定ポイント35に着色された円柱モデル55を表示する。
【0087】
ステップS7では、検証者が、ステップS6で算出された最短距離Cmin、垂線距離Cv、シール棚寸法B
1及びB
2、机上検証クライアント15のモニターに表示された車体27の三次元画像、並びに、そこに表示された着色された球モデル53及び円柱モデル55や図示しない人間モデル、塗布ガン、設備などの情報を用いて、シーラー塗布作業の作業性や作業手順を確認しつつ、「要確認」と判定された測定ポイント35において最短距離Cminと垂線距離Cvのいずれを採用するかを決定したり、「NG判定」がなされた測定ポイント35における注意事項65等を机上検証クライアント15を操作して書き込む。
【0088】
ステップS8では、検証者が、机上検証クライアント15(操作部11)を操作して、検証した塗布パス33Dを選択するとともに、塗布状態作成部41iを用いて配置するシーラー実体形状を選択する。そうすると、塗布状態作成部41iが、シーラー実体形状57を各測定ポイントに配置することにより、
図14に示すように、シーラーが塗布された状態が作成される。これにより、ステップS8が、コンピュータの操作部11が操作されることに応じて、コンピュータの演算部41が、予め設定されたシーラー形状57を各測定ポイント35に配置して、シーラーが塗布された状態を作成する塗布状態作成工程に対応する。
【0089】
ステップS9では、検証者が、机上検証クライアント15(操作部11)を操作して、ステップS8で作成したシーラー実体形状57を選択するとともに、ステップS6及びステップS7で検証した検証結果を反映させるべく、実行命令を入力する。そうすると、検証結果表示部41jが、
図15に示すように、板間隙が不合格と判定された測定ポイント35bにおけるシーラー実体形状59を着色して表示し、且つ、シール棚寸法が不合格と判定された測定ポイント35bにおけるシーラー実体形状63を着色して表示するとともに、板間隙、シール棚検証や動的検証の際に検証者によって入力された注意事項65を測定ポイントの近傍に表示する。そうして、かかる画像データを、机上検証データベース5に保存する。これにより、ステップS9が、コンピュータの演算部41が、塗布状態作成工程で作成されたシーラーにおける、判定工程において又は検証者によって不合格と判定された領域を、色識別可能に着色して表示部31に表示するとともに、操作部11の操作で入力された作業上の注意事項65を表示部31に表示する検証結果表示工程に対応する。
【0090】
ステップS10では、ステップS9で作成された画像データを用いて、作業手順と注意事項等が表示される動画を作成する。そうして、かかる動画データを、机上検証データベース5に保存する。これにより、ステップS10が、コンピュータの演算部41が、各塗布パスにおけるシーラーの塗布手順に従って、塗布ガンによる塗布作業状態を連続的に表示しながら、当該塗布ガンの動きに合わせて、シーラーが塗布された状態、色識別可能に着色された領域59,63、及び、注意事項65を表示する動画を作成する動画作成工程に対応する。
【0091】
ステップS11では、工程図クライアント23を操作して、ステップS9で作成された画像データに基づいて工程図を生成するとともに、ステップS10で作成された動画データをかかる工程図に添付し、工程図データベース19に保存する。作成された工程図は、複数の担当者により承認された後、工程図クライアント25に配布される。
【0092】
ステップS12では、配布先(工場部門)の工程図クライアント25を操作して、ステップS11で作成された工程図及びこれに添付された動画を用いて、作業訓練を行う。
【0093】
−効果−
本実施形態によれば、測定ポイント設定部41cが測定ポイント35をシーラー塗布ライン33上に所定の等間隔で設定するので、検証者が表示部31に表示されたワークの三次元画像を目視チェックすることによって測定ポイント35を設定する必要がなくなることから、検証時間を短縮することができる。
【0094】
また、塗布パス生成部41dが、測定ポイント35に基づいて、シーラー塗布ライン33を一筆書き状に1回で充填塗布されるシーラー毎に分割した塗布パスを生成するので、実際の作業に即した事前検証を容易に行うことができる。
【0095】
さらに、第1計算部41e、第2計算部41f、第1判定部41g及び第2判定部41hが、各測定ポイント35における、板状部材間の板間隙及びシール棚寸法を算出し且つ合格か不合格かを判定するので、検証者による検証の前に、問題点のある箇所を絞り込むことができる。
【0096】
また、塗布状態作成部41iが、シーラーが塗布された状態を作成し、且つ、不合格と判定された領域を色識別可能に着色して表示部31に表示するとともに、作業上の注意事項65を表示部31に表示するので、事前検証結果が適切に反映された工程図等を容易に作成することができる。
【0097】
以上により、シーラー塗布作業の作業性を、短時間且つ高い精度で、事前に検証することができる。これにより、かかる検証結果に基づいて訓練を受けた作業者が適切に塗布作業を行えるので、シーラー塗布の品質を向上させることができる。
【0098】
さらに、動画作成部41kが、検証結果表示部41jにより作成された画像データに基づき、各塗布パスにおけるシーラーの塗布手順に従って、塗布ガンによる塗布作業状態を連続的に表示しながら、ガン先の動きに合わせて、シーラー実体形状、色識別可能に着色された領域、及び、注意事項を表示する動画を作成することから、かかる動画を用いて、作業訓練を行うことができる。これにより、作業者は、実際のシーラー塗布作業に先立ち正確なイメージトレーニングを行えるので、シーラー塗布の品質を向上させることができる。また、上記動画は、ロボットによる塗布作業において、ロボットのオフラインティーチング処理に用いてシーラー塗布の品質を向上させることができる。
【0099】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0100】
上記実施形態では、事前検証システム1全体を「少なくとも演算部、操作部及び表示部を備えるコンピュータ」に対応させたが、これに限らず、例えば、単一のパーソナルコンピュータを「少なくとも演算部、操作部及び表示部を備えるコンピュータ」に対応させてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、動画を作成したが、必ずしも動画を作成する必要はない。
【0102】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。