(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の信号伝送媒体の端末部分が挿入される絶縁ハウジングと、その絶縁ハウジングの内部に挿入される信号伝送媒体の端末部分を略不動状態に保持するロック機構と、を備え、
前記信号伝送媒体の厚み方向における両側表面の少なくとも一方に、当該信号伝送媒体の幅方向に並列するように配線パターンが設けられ、それらの配線パターンが電気的に接続される構成になされた電気コネクタにおいて、
前記ロック機構が、前記信号伝送媒体の端末部分に取り付けられたロック係合部材と、その信号伝送媒体側のロック係合部材に嵌合可能となるように前記絶縁ハウジングに設けられたロック係止部材と、を有し、
前記ロック係合部材が、前記信号伝送媒体の両側表面の一方であって当該信号伝送媒体の厚み方向において前記ロック係止部材から離れた側の表面に取り付けられたものであって、
前記ロック係合部材には、前記信号伝送媒体が前記絶縁ハウジング内に挿入された際に前記ロック係止部材に嵌合するように弾性変位するロック部が設けられ、
前記ロック部が、前記信号伝送媒体の前記幅方向における両端縁から前記幅方向に離れた位置に配置され、かつ当該ロック部は、前記ロック係止部材に向かって前記厚み方向に突出するように形成されていることを特徴とする電気コネクタ。
【背景技術】
【0002】
一般に、種々の電気機器等において、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)や、フレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等の各種信号伝送媒体を電気的に接続するための手段として種々の電気コネクタが広く用いられている。例えば、下記の特許文献1のように印刷配線基板上に実装されて使用される電気コネクタでは、FPCやFFC等からなる信号伝送媒体が、絶縁ハウジング(インシュレータ)の前端側開口部から内部に挿入され、その後にアクチュエータ(接続操作手段)が、作業者の操作力でコネクタ前方側又は後方側の接続作用位置に向かって押し倒されるように回動される。これによって、信号伝送媒体の端末部分に設けられた係合部にロック部材の一部が落ち込んで係合状態になされ、信号伝送媒体の端末部分がロック部材により略不動状態に保持される構成になされている。
【0003】
このように、アクチュエータを備えた電気コネクタは、接続解除位置と接続作用位置との間でアクチュエータを回動操作することによってロック部材の係合・離脱を操作する構成になされているが、信号伝送媒体(FPC,FFC等)の挿入作業とは別個にアクチュエータを操作する必要があるために作業効率が問題となる場合がある。そのため、例えば下記の特許文献2及び3のように、絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体に対してロック部材の一部が乗り上げるようにして弾性変位し、その後に信号伝送媒体の係合部にロック部材の一部が落ち込んで係合が行われるように構成された、いわゆるワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタが従来から開発されている。このようなワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタを用いれば、電気コネクタの内部の所定位置まで信号伝送媒体を挿入するだけで、信号伝送媒体が略不動状態に保持されることとなり、作業効率の向上が図られる。
【0004】
しかしながら、従来の電気コネクタに採用されているワンアクションオートロック機構においては、上述したように信号伝送媒体(FPC,FFC等)を電気コネクタに挿入するだけでロックが行われる利点がある一方、係止ロック部の係合状態を解除するためのロック解除操作部の構成が複雑化する傾向があり、また解除の操作に手間が掛かるとともに、使用耐久性に問題を生じるおそれもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、簡易な構成で、ロック解除操作部の操作性及び使用耐久性を向上させることができるようにした電気コネクタ及び電気コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明では、所定の信号伝送媒体の端末部分が挿入される絶縁ハウジングと、その絶縁ハウジングの内部に挿入される信号伝送媒体の端末部分を略不動状態に保持するロック機構と、を備え
、前記信号伝送媒体の厚み方向における両側表面の少なくとも一方に、当該信号伝送媒体の幅方向に並列するように配線パターンが設けられ、それらの配線パターンが電気的に接続される構成になされた電気コネクタにおいて、前記ロック機構が、前記信号伝送媒体の端末部分に取り付けられたロック係合部材と、その信号伝送媒体側のロック係合部材に嵌合可能となるように前記絶縁ハウジングに設けられたロック係止部材と、を有
し、前記ロック係合部材が、前記信号伝送媒体の両側表面の一方であって当該信号伝送媒体の厚み方向において前記ロック係止部材から離れた側の表面に取り付けられたものであって、前記ロック係合部材には、前記信号伝送媒体が前記絶縁ハウジング内に挿入された際に前記ロック係止部材に嵌合するように弾性変位するロック部が設けられ
、前記ロック部が、前記信号伝送媒体の前記幅方向における両端縁から前記幅方向に離れた位置に配置され、かつ当該ロック部は、前記ロック係止部材に向かって前記厚み方向に突出するように形成された構成になされている。
【0008】
このような構成を有する本発明によれば、従来、電気コネクタ側に設けられていたロック機構の一部であるロック係合部材が信号伝送媒体側に配置されるため、その分、電気コネクタ側の構造が簡易化されて、小型化或いは低背化が容易に実現可能となるとともに、信号伝送媒体側に取り付けられたロック係合部材によって信号伝送媒体の補強が行われることから、電気的な接続性及び使用上の耐久性が向上される。
【0009】
また、本発明においては、前記ロック係合部材が、前記ロック部を弾性変位可能に支持する弾性アームを有していることが望ましい。さらに、前記ロック係止部材が、前記絶縁ハウジングに形成された段部を含んでいることが望ましい。
【0010】
このような構成を有する本発明によれば、ロック係合部材及びロック係止部材の構成が簡易化される。
【0011】
また、本発明における前記ロック機構は、前記ロック部に当接して当該ロック部の嵌合状態を解除するロック解除操作部を有し、そのロック解除操作部が、前記信号伝送媒体が前記絶縁ハウジング内に挿入された際における前記ロック部の弾性変位に連動して移動されるように構成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成を有する本発明によれば、信号伝送媒体の挿入動作が、ロック解除操作部の移動を介して目視で確認されることとなり、信号伝送媒体の挿入動作の完了が容易に確認される。
【0013】
また、本発明における前記ロック係合部材は、前記信号伝送媒体の端末部分に形成された取付固定穴
に係合するように前記ロック部に設けられたフック部
を有していることが望ましい。
【0014】
このような構成を有する本発明によれば、信号伝送媒体の端末部分に対するロック係合部材の取り付けが、フック部の引っ掛け動作により容易に行われる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタ及び電気コネクタ装置は、信号伝送媒体の端末部分に取り付けたロック係合部材が、電気コネクタ側のロック係止部材に嵌合可能となるように構成したものであって、信号伝送媒体が絶縁ハウジング内に挿入された際にロック係止部材に嵌合するように弾性変位するロック部を、ロック係合部材のロック部材に設けたことによって、従来、電気コネクタ側に設けられていたロック機構の一部であるロック係合部材を信号伝送媒体側に配置し、電気コネクタ側の構造を簡易化して小型化或いは低背化を容易に実現可能とするとともに、信号伝送媒体側に取り付けたロック係合部材によって信号伝送媒体の補強を行うことにより電気的な接続性及び使用上の耐久性を向上させたものであるから、簡易な構成で、電気コネクタの信頼性を低廉かつ大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体の電気接続を行うべく配線基板上に実装して使用される電気コネクタに本発明を適用した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
[電気コネクタの全体構成について]
まず、
図1〜
図10に示されている本発明の第1実施形態にかかる電気コネクタ10は、いわゆるノン・ジフ(NON-ZIF)タイプのワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタからなるものであって、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を、絶縁ハウジング11の前端縁部(
図5の左端縁部)に設けられた媒体挿入口11aを通して絶縁ハウジング11の内部の所定位置まで挿入した際に、信号伝送媒体Fのロックが自動的に行われる構成になされたものである。
【0019】
[絶縁ハウジングについて]
このとき、前記絶縁ハウジング11は、細長状に延在する中空枠体状の絶縁部材から形成されているが、その絶縁ハウジング11における長手の横幅方向を、以下において「コネクタ長手方向」と呼び、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を挿入又は離脱させる方向を「コネクタ前後方向」と呼ぶこととする。
【0020】
その絶縁ハウジング11の前端縁部分(
図5左端縁部分)には、上述したようにフレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体Fの端末部分が挿入される媒体挿入口11aが、コネクタ長手方向に沿って細長状をなすように設けられている。また、コネクタ長手方向において前記媒体挿入口11aの両側外方部分には、後述するロック機構RMの一部を構成するロック係止部材RM1が配置されている。
【0021】
さらに、絶縁ハウジング11の後端側部分(
図5の右端縁部分)、すなわち上述した媒体挿入口11aのコネクタ前後方向における反対側部分には、導電コンタクト12等を装着するための部品取付口11bが、同じくコネクタ長手方向に沿って細長状をなすように設けられている。
【0022】
[導電コンタクトについて]
導電コンタクト12は、適宜の形状をなす薄板状金属製部材により形成されていて、それら複数体の導電コンタクト12が、絶縁ハウジング11の後端側の部品取付口11bから前方側(
図5の左方側)に向かって挿入されており、絶縁ハウジング11の内部において複数体の導電コンタクト12が、コネクタ長手方向に適宜の間隔をなして多極状に配置されている。これらの導電コンタクト12の各々は、信号伝送用又はグランド接続用のいずれかとして、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路に対して半田接合により実装された状態で使用される。
【0023】
すなわち、上述した各導電コンタクト12の配置位置は、媒体挿入口11aを通して絶縁ハウジング11の内部側に挿入される信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに設けられた配線パターンFaに対応した設定になされている。信号伝送媒体Fに設けられた配線パターンFaは、信号伝送用導電路(信号線パッド)又はシールド用導電路(シールド線パッド)を含む接続端子部を適宜のピッチ間隔で配置したものである。
【0024】
ここで、各導電コンタクト12の構成を具体的に説明しておくと、それらの各導電コンタクト12は、信号伝送媒体Fの挿脱方向(
図5の左右方向)であるコネクタ前後方向に沿って延在する固定ビーム12aと可動ビーム12bとを有している。その固定ビーム12a及び可動ビーム12bは、絶縁ハウジング11のコネクタ後端部に上下方向に延在するように配置された連結支柱部12cの下端位置及び上端位置のそれぞれからコネクタ前方側(
図5の左方側)に向かって略平行に突出している。
【0025】
そのうちの固定ビーム12aは、絶縁ハウジング11を形成している底面板の内壁面に沿って延在しており、絶縁ハウジング11に略不動状態となるように固定されている。また、その固定ビーム12aと反対側に位置する連結支柱12cの後方側下方位置には、基板接続部12dがコネクタ後方側(
図5の右方側)に向かって延出するように連設されている。この基板接続部12dは、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された信号伝送用導電路(信号線パッド)又はシールド用導電路(シールド線パッド)に半田接続されるように形成されている。
【0026】
また、可動ビーム12bは、上述した連結支柱12cの前方側上端位置からコネクタ前方側(
図5の左方側)に向かって片持ち状をなすように突出しており、連結支柱12cとの連接部分又はその近傍を中心として、
図5の紙面内において上下の方向に揺動する構成になされている。
【0027】
このような可動ビーム12bにおける前端側延出部分(
図5の左端側部分)には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに形成された信号伝送用導電路(信号線パッド)又はシールド用導電路(シールド線パッド)のいずれかに対応して端子接触凸部12eが図示下向きの突形状をなすように設けられている。この導電コンタクト12に設けられた端子接触凸部12eは、上述したように信号伝送媒体Fが絶縁ハウジング11の内部に挿入されて来た際に、当該信号伝送媒体Fに設けられた配線パターンFa上に乗り上げる配置関係になされており、信号伝送媒体Fが所定の最終位置まで挿入されたときに、可動ビーム12bの弾性力によって端子接触凸部12eが配線パターンFa上に圧接され、電気的に接続された状態に維持されるようになっている。
【0028】
[ロック機構について]
本実施形態にかかる電気コネクタ10は、前述したようにワンアクションオートロック機構を備えたものであるが、そのロック機構RMは、絶縁ハウジング11側に配置されたロック係止部材RM1と、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分に取り付けられたロック係合部材RM2とからなる。
【0029】
そのうちのロック係合部材RM2は、薄板状の金属板から形成されたロック部材Fbを有しており、そのロック部材Fbが、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分における下面側に密着するように取り付けられている。すなわち、このロック部材Fbを構成する金属板の所定位置には、一対のフック部Fc,Fcが切り起こすようにして形成されているとともに、それらのフック部Fc,Fcに対応するようにして、信号伝送媒体Fの幅方向両側領域に一対の取付固定穴Fd,Fdが貫通形成されている。そして、ロック部材Fb側に設けられたフック部Fc,Fcを、信号伝送媒体F側に設けられた取付固定穴Fd,Fdに対して下方側から引っ掛けるように挿入することによって、信号伝送媒体Fの下面側にロック部材Fbが重合された状態で固定されるようになっている。なお、信号伝送媒体F側に設けられた取付固定穴Fdは切り欠き形状であっても良い。
【0030】
また、ロック部材Fbと信号伝送媒体Fとの別の固定方法として、ロック部材Fbのフック部Fcにおける水平方向の折り曲げを行わずに、上方に延びた突出片の状態のロック部材Fbを形成しておき、その上方向への突出片からなるロック部材Fbを、信号伝送媒体Fの取付固定穴Fdに下方側から貫通させるように挿入した後、当該取付固定穴Fdから上方に突出するロック部材Fbの突出片を水平方向に折り曲げて信号伝送媒体Fを押圧することで固定することも可能である。
【0031】
このようにして信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分にロック部材Fbが取り付けられた状態においては、信号伝送媒体Fの幅方向両端縁からロック部材Fbの両側部分が外方に張り出す配置関係となっており、そのロック部材Fbの両側張り出し部分に、後述するロック部Fe,Feが弾性変位可能に設けられている。また、ロック部材Fbの両側張り出し部分に対応して、上述した媒体挿入口11aの幅方向(コネクタ長手方向)両側部分には、細幅のロック挿入穴11c,11cが形成されている。それらの各ロック挿入穴11cは、媒体挿入口11aに連通した状態で設けられている。
【0032】
そして、上述した信号伝送媒体Fとロック部材Fbとの重合部分が、媒体挿入口11aから絶縁ハウジング11の奥側に向かって延在する媒体挿入通路に沿って内方に挿入されていくと同時に、ロック部材Fbの両側張り出し部分が、ロック挿入穴11c,11cから絶縁ハウジング11の奥側に向かって延在するロック挿入通路に沿って内方に挿入される構成になされている。
【0033】
また、上述したロック部材Fbの両側張り出し部分には、鍵形状をなすように形成されたロック部Fe,Feが、可撓性の弾性アームFf,Ffを介して設けられている。各弾性アームFfは、上述したロック部材Fbの両側張り出し部分の一部をコネクタ前後方向に細長状に切り欠くことにより形成されたものであって、ロック部材Fbの前方側部分からコネクタ後方側に向かって片持ち状をなすように延出している。そして、そのような片持ち構造を有することによって当該弾性アームFfは、上下方向に弾性的に揺動可能な構成になされている。
【0034】
このような構成からなる各弾性アームFfの延出方向(コネクタ後方)の先端部分に上述したロック部Feが設けられているが、そのロック部Feは、弾性アームFfの先端部分を、上方に突出する山形状に折り曲げ形成された一体構造になされている。この弾性アームFfと一体的に形成されたロック部Feは、上述したように弾性アームFfの揺動と同時に上下方向に弾性変位する構成になされていて、より具体的には、特に
図9に示されているように、弾性アームFfから略直角上方に立ち上がる段差係合面Fe1と、その段差係合面Fe1の頂部から斜め後方に延出する傾斜案内面Fe2とを有している。
【0035】
一方、このようなロック部Feに設けられた段差係合面Fe1及び傾斜案内面Fe2に対応して、上述した絶縁ハウジング11の内部には、同じくロック機構の一部であるロック係止部材RM1を構成するように段差係止面11d及び傾斜案内面11eが設けられている。このロック係止部材RM1として絶縁ハウジング11に設けられた段差係止面11d及び傾斜案内面11eは、前述したロック挿入穴11cから後方に延びているロック挿入通路の上面側に形成されている。
【0036】
すなわち、まず傾斜案内面11eは、上述したロック係合部材RM2を構成するロック部Feの傾斜案内面Fe2に対応して設けられたものであって、上述したロック挿入穴11cから延びるロック挿入通路の前方側領域に形成された傾斜面で構成されている。より具体的には、その傾斜案内面11eは、ロック挿入通路の上面を形成している絶縁ハウジング11の壁面を、コネクタ後方側(
図5の右方側)に向かって斜め下方に緩やかに傾斜させることにより形成されている。
【0037】
そして、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの挿入が開始された初期の段階で、信号伝送媒体F側にロック係合部材RM2として設けられたロック部Feが、ロック係止部材RM1として絶縁ハウジング11に設けられた傾斜案内面11eにコネクタ前方側から当接する。それによって、弾性アームFfの弾性復帰力に抗してロック部Feが下方側に押し付けられるように弾性変位しながら、信号伝送媒体Fの挿入が行われるようになっている。
【0038】
また、同じくロック係止部材RM1を構成するように絶縁ハウジング11に設けられた段差係止面11dは、ロック係合部材RM2としてのロック部Feの段差係合面Fe1に対応して設けられたものであって、後述するロック解除アーム11gを形成するスリット穴11fの立壁面により形成されている。
【0039】
すなわち、前述したロック挿入通路を形成している絶縁ハウジング11の上側壁部には、前記傾斜案内面11eからコネクタ後方側にやや離れた位置に、スリット穴11fが上下方向に貫通するように形成されている。そのスリット穴11fは、絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向両端部分に、平面略コの字状に延在するように一対設けられており、それらの各スリット穴11fの内方側に、ロック解除アーム11gが上下方向に揺動自在に配置されている。ロック解除アーム11gについては後段で詳細に説明するが、特に
図6に示されているように、上述したスリット穴11fを構成している平面略コの字状の立壁面うち、コネクタ前方側の立壁面によって、上述した段差係止面11dが、ロック挿入通路の上壁面から略直角上方に延出するように形成されている。
【0040】
そして、電気コネクタ10に対する信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの挿入が最終位置まで行われて、上述したロック係合部材RM2を構成しているロック部Feの段差係合面Fe1が、ロック係止部材RM1を構成している絶縁ハウジング11の段差係止面11dを通過すると、それと同時に、例えば
図9に示されているように、ロック部Feの段差係合面Fe1が、当該ロック部Feを支持している弾性アームFfの弾性復帰力によって段差係止面11dに沿って上方側に押し上げられるように弾性変位する。その結果、ロック部Feの段差係合面Fe1は、絶縁ハウジング11の段差係止面11dに対してコネクタ後方側から当接した状態となり、それによって信号伝送媒体Fがコネクタ前後方向にロックされた状態となる。
【0041】
一方、上述したようにロック係止部材RM1の各スリット穴11fは、ロック解除アーム11gを取り囲むようにして、絶縁ハウジング11の上壁部を上下方向に貫通するように形成されているが、それらの各スリット穴11fの内方側に配置されたロック解除アーム11gの各々は、コネクタ長手方向の両端部分に互いに対向するように配置されている。それらの各ロック解除アーム11gは、絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向の両端部分からコネクタ内方側に向かって片持ち状に延在しており、コネクタ長手方向の両端部分を支点として上下方向に弾性的に揺動可能な構成になされている。
【0042】
また、それらの各ロック解除アーム11gの延出方向(コネクタ内方)における先端部分には、当該ロック解除アーム11gから上下両方向に突出するロック解除操作部11hが設けられている。このロック解除アーム11gと一体的に設けられたロック解除操作部11hは、ロック解除アーム11gの揺動とともに上下方向に弾性変位する構成になされている。このロック解除操作部11hは、特に
図9に示されているように、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの挿入が完了された際、すなわちロック状態にあるロック部Feの上方位置に配置される関係になされている。
【0043】
また、そのロック解除操作部11hの上端部分には、略水平方向に張り出すフランジ状部11iが形成されており、そのフランジ状部11iが、上述したスリット穴11fを上方側から覆うように延在している。このフランジ状部11iは、ロック解除操作部11hの操作が行われない状態において、絶縁ハウジング11の上面から上方にやや離間した状態に維持されているが、作業者によってロック解除操作部11hが下方に押し込まれると、当該ロック解除操作部11hのフランジ状部11iが、絶縁ハウジング11の上面に当接し、それによってロック解除アーム11gの下方向への移動が規制されるようになっている。
【0044】
特に、
図9に示された信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fのロック状態から、ロック解除操作部11hが下方に押し込まれた場合には、
図10に示されているように、ロック解除操作部11hの下端面が、上述した弾性アームFfの弾性復帰力に抗してロック部Feの段差係合面Fe1を下方に押し下げることとなり、それによって、ロック部Feの段差係合面Fe1が、絶縁ハウジング11側の段差係止面11dから離脱し、信号伝送媒体Fのロック状態が開放されて、当該信号伝送媒体Fが抜去可能の状態に移行される。
【0045】
このように本実施形態によれば、従来、電気コネクタ側に設けられていたロック機構のロック部Feを含むロック係合部材RM2が、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F側に配置される構造になされているため、その分、電気コネクタ10の構造が簡易化されており、小型化或いは低背化が容易に実現可能となる。また、信号伝送媒体F側に取り付けられたロック係合部材RM2のロック部材Fbによって、信号伝送媒体Fの補強が行われることから、電気的な接続性及び使用上の耐久性が向上される。
【0046】
特に、本実施形態においては、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分に対するロック部材Fbの取り付けが、信号伝送媒体Fに形成された取付固定穴Fcに対するフック部Fcの引っ掛け動作により容易に行われるようになっている。
【0047】
さらに、本実施形態にかかるロック係合部材RM2においては、片持ち状部材からなる弾性アームFfの先端部分にロック部Feが設けられていることから、ロック部Feを弾性変位可能に支持する構造が簡易化される。
【0048】
一方、上述した第1の実施形態と同一の構成部材に対して同一の符号を付した
図11〜
図13にかかる第2の実施形態においては、ロック解除操作部11h’の高さ位置が異ならされている。より具体的には、ロック解除操作部11h’の上端部分から略水平方向に張り出すフランジ状部11i’が、信号伝送媒体Fの挿入が行われる前の初期状態において絶縁ハウジング11の上面に略当接した状態に維持されている。
【0049】
このような第2実施形態においても、上述した第1の実施形態とほぼ同様な作用効果が得られる。すなわち、電気コネクタ10に対する信号伝送媒体Fの挿入が最終位置まで行われると、ロック部Feを支持している弾性アームFfの弾性復帰力によってロック部Feが上方側に移動し、それによってロック部Feの段差係合面Fe1が、絶縁ハウジング11側の段差係止面11dに当接して信号伝送媒体Fがロック状態に維持される。
【0050】
このとき、特に本実施形態においては、ロック部Feの上昇とともにロック解除操作部11h’も上方に移動されるため、そのロック解除操作部11h’の上方移動を介して信号伝送媒体Fの挿入動作の完了が上方側から目視で容易かつ確実に確認される。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0052】
例えば、上述した各実施形態では、電気コネクタに固定される信号伝送媒体として、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)、及びフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)を採用しているが、その他の信号伝送用媒体等を用いた場合に対しても本発明は同様に適用することができる。
【0053】
さらに、上述した実施形態にかかる電気コネクタには、同一形状の導電コンタクトが用いられているが、異なる形状の導電コンタクトを交互に配置した構造であっても本発明は同様に適用することが可能である。