【実施例】
【0010】
図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図であり、
図2は、バイパス管を設けたロータリ圧縮機を模式的に示す側面図であり、
図3は、バイパス管を設けたロータリ圧縮機を模式的に示す上面図であり、
図4は、バイパス管の取付構造を示す
図3の部分拡大図であり、
図5は、バイパス管内のオイルの流れを示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の筐体10の下部に配置された冷媒圧縮部12と、筐体10の上部に配置され、回転軸15を介して冷媒圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0012】
モータ11のステータ111は、筐体10の内周面に固定されている。モータ11のロータ112は、ステータ111の中央部に配置され、モータ11と冷媒圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に固定されている。ロータ112には、冷媒圧縮部12で圧縮されて筐体10の上部へ吐出される冷媒ガスを通すガス孔112aが設けられている。
【0013】
筐体10の天部には、モータ11のステータ巻線の電源接続端子116を固定する電源端子台115が、天部の内側から外側に嵌入されて気密に固定されている。電源端子台115には、複数(3本)の電源接続端子116が貫通して固定されている。電源接続端子116と電源端子台115との間は、絶縁シール材(例えば、ガラス)により絶縁シールされている。
【0014】
モータ11が作動して回転軸15が回転すると、冷媒圧縮部12は、アキュムレータ25及び低圧連絡管31を介して、冷凍サイクルの低圧側から連続的に冷媒ガスを吸入して圧縮し、筐体10内及び吐出管107を通して外部(冷凍サイクルの高圧側)へ吐出する。
【0015】
次に、実施例のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、筐体10内のモータ11の上方空間10aと下方空間10bとを連通するバイパス管33を、筐体10の外部に設けている。
図2及び
図3に示すように、ロータリ圧縮機1は、バイパス管33の下部接続部33bを、上部接続部33aに対して周方向に角度αずらして筐体10に取付け、バイパス管33を、鉛直線(鉛直方向)10cに対して角度θ傾斜させている。なお、
図2及び
図3に示すように、バイパス管33を、筐体10の外周に添うように湾曲させているが、バイパス管33が筐体10の外周から離れている場合は、湾曲させずに直線状としてもよい。
【0016】
バイパス管33の傾斜角度θが小さいと、オイルがバイパス管33の垂直断面下側に集まらず、
図6に示したように、バイパス管33の内部のオイルがバイパス管33を塞ぎやすくなる。オイルがバイパス管33を塞いでしまった場合、モータ11の上方空間10aと下方空間10bの圧力差によってオイルに上昇方向の力が作用するので、オイルが流下するのを阻害し、バイパス管33の機能を発揮することができない。また、傾斜角θが大きいと、オイルがバイパス管33内を流下する力が弱くなり、オイルを速やかに戻すことができない。バイパス管33の機能を発揮させるために、傾斜角θを、30°≦θ≦60°の範囲とすることが望ましい。
【0017】
また、バイパス管33の下部接続部33bが、冷媒圧縮部12のオイル面高さよりも低い位置に接続されていると、下部接続部33bの開口部がオイルで塞がれ、モータ11の上方空間10aと下方空間10bの圧力差によってオイルに上昇方向の力が作用するので、バイパス管33内のオイルが流下するのを阻害する。それ故、バイパス管33の下部接続部33bは、オイル面の高さよりも高い位置に接続することが望ましい。
【0018】
通常、オイル面の高さは、冷媒圧縮部12の冷媒ガス吐出口12aよりも低い位置としている。これは、冷媒ガス吐出口12aがオイルで塞がれると、吐出抵抗が増大し、圧縮機効率が低下するためである。それ故、バイパス管33の下部接続部33bの接続位置は、冷媒圧縮部12の冷媒ガス吐出口12aの高さ以上の高さとするのが望ましい。
【0019】
図3に示すように、バイパス管33の下部接続部33bを、上部接続部33aに対して周方向に角度αずらして筐体10に取付けているので、バイパス管33を筐体10に組付けるとき、バイパス管33の上下で筐体10の取付孔への挿入方向が異なり、バイパス管33を挿入しにくい、という問題がある。
【0020】
この問題を解決するため、
図4に示すように、筐体10とバイパス管33の上下の接合部には、夫々L形継手34が配置され、夫々のL形継手34のバイパス管挿入部34aが互いに平行になるように、夫々のL形継手34の曲げ角度が設定され、バイパス管33は、上部接続部33aと下部接続部33bとが平行となるようにコ字形に形成され、バイパス管33の上部接続部33a及び下部接続部33bが夫々のL形継手34のバイパス管挿入部34aに平行に挿入され接合される。
【0021】
次に、
図1及び
図5を参照して実施例のロータリ圧縮機1の動作について説明する。筐体10内には、およそ第2シリンダ121Tの高さまでオイルが封入されている。回転軸15には、中心部を貫通する給油縦孔(図示せず)が設けられるとともに、給油縦孔と連通する給油横孔(図示せず)が設けられている。給油横孔は、夫々下軸受部161S、第1、第2環状ピストン125S、125T及び上軸受部161Tに対応させて複数設けられている。また、下軸受部161S及び上軸受部161T、又は、これに対応する回転軸15の部位には、給油横孔に連通する油溝(図示せず)を設けている。
【0022】
給油縦穴内には、羽根(図示せず)を挿入し、回転軸15の回転とともに回転する羽根によりオイルに遠心力を与えて給油性能を向上させ、特に、オイル面より高い位置に位置する上軸受部161Tを確実に潤滑するようにしている。
【0023】
以上説明した給油機構155Aにより、筐体10の下部に貯留されたオイルは、回転軸15の下端から汲み上げられ、下軸受部161S、第1、第2ピストン125S、125T及び上軸受部161Tを潤滑する。各部を潤滑した後のオイルは、第1、第2の圧縮部12S、12Tを区画する部品同士の微小隙間から第1、第2シリンダ121S、121T内に入って摺動部分の潤滑と微小隙間の圧力シールを行うが、オイルの大半は、上軸受部161Tの油溝上端と下軸受部161Sの油溝下端から排出される。
【0024】
ロータ112には、冷媒圧縮部12の冷媒ガス吐出口12aから吐出されたモータ11の下方の冷媒ガスをモータ11の上方の吐出管107側へ通す断面が長孔状のガス孔112aが設けられている。また、円板の中央部に円筒部を有するオイル分離板119が、ロータ112上に固定されている。
【0025】
モータ11の下部に位置する冷媒圧縮部12で圧縮された冷媒ガスは、ロータ112のガス孔112a、ステータ111とロータ112の隙間及びステータ111の巻線の隙間を上昇して、吐出管107からロータリ圧縮機1外に吐出される。冷媒圧縮部12を潤滑するオイルの一部は、冷媒ガスとともにガス孔112a及び前記の隙間を上昇し、オイル分離板119に衝突し、ロータ112の回転によって遠心分離され、筐体10の内壁に付着し、重力によってステータ111の上部に溜まる。
【0026】
ステータ111の上部に溜まったオイルは、ステータ111の外周部の切欠き部(図示せず)及びバイパス管33を流下し、モータ11の下方空間10bに落下し、筐体10の下部に戻る。このとき、
図5に示すように、バイパス管33を傾斜させているので、オイルに働く重力により、バイパス管33内の断面下部にオイルが集まり、バイパス管33内のオイルがバイパス管を塞ぎ難く、モータ11の上方空間10aと下方空間10bの圧力差によってオイルに上昇方向の力が作用しないので、バイパス管33を通してモータ11の上方空間10aから下方空間10bへオイルを確実に且つ速やかに流下させることができる。