(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予測手段は、前記検出された前記脆弱因子部間の距離と、荷重負荷方向を基準とした、前記検出された前記脆弱因子部間の方向の角度とに基づいて、前記き裂開始点の周辺から順に、前記検出された前記脆弱因子部を繰り返し選択することにより、き裂の進展を予測する請求項1記載のき裂進展予測装置。
前記予測手段は、前記き裂開始点又は前回選択された脆弱因子の周辺の前記脆弱因子部の各々について、前記検出された前記脆弱因子部間の距離と、前記検出された前記脆弱因子部間の方向の角度とに基づく評価値を算出し、前記評価値が最も高い前記脆弱因子部を選択することを繰り返し行って、前記き裂開始点の周辺から順に選択された前記脆弱因子部を結んだ線を、き裂の進展の予測結果とする請求項2記載のき裂進展予測装置。
前記予測手段によって予測された前記き裂上の、前記検出された前記脆弱因子部間の距離の平均に基づいて、前記対象物について、破壊に関する強度特性を予測する予測手段を更に含む請求項1〜請求項3の何れか1項記載のき裂進展予測装置。
【背景技術】
【0002】
材料の粘り強さ、材料中でき裂が発生しにくい性質、き裂が伝ぱしにくい性質を、靭性と言う。ASTM規格に準じて計測される靭性評価法としては、K
IC試験、J
IC試験、CTOD試験などの破壊靭性試験がある。より簡便迅速に評価する方法としては、定性的ではあるが、シャルピー衝撃試験がある。これらは、いずれも試験片の加工、破壊試験を行う必要がある。また、材料の特性向上の効率化を図るためには、破壊を想定したき裂進展予測や、材料組織からの特性予測が必要となる。
【0003】
ここで、対象部品の形状による三次元的な損傷を統計化したデータから損傷進展を予測する方法(特許文献1)や、対象部品への超音波を発振して、超音波特性から亀裂を検出する方法(特許文献2)が知られている。また、構造部材のき裂分布計測を元に予測計算し、多数のき裂が存在する構造部材の寿命を予知する方法が知られている(特許文献3)。これらの方法は、対象物の形状によるき裂に対して、破壊を伴った試験により、予測するものである。
【0004】
一方、破壊靭性値と平均粒子間距離とは相関があると言われている。Hahnらは、き裂先端に広がる大きな塑性域中に、特に高ひずみの特性域が存在することを指摘し、この特性域中に第2相粒子が入る時、き裂が発生するとしている(非特許文献1)。その時、破壊靭性値K
ICはヤング率Eと降状応力σ
Yと平均粒子間距離λとを用いて、K
IC=[2σ
YEλ]
1/2と表されるとしており、靭性値がλ
1/2に比例するとしている。また、第2相粒子の最近接距離や、壁間距離を用いても、破壊靭性値と同様な相関が得られる。しかし、これらの粒子間距離は、組織画像中の平均的な距離であるために、均質体以外の適用は難しく、加工方向による組織差を有する部材や不均質な組織を形成する部材では特性との関係を精度良く示すことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の靭性の評価法として、各種試験法が提唱されているが、いずれも試験片の加工、破壊試験により、靭性を評価している。そのため、材料の組織設計から靭性の評価までに多くの時間と労力が必要となる、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、破壊試験を伴わずに、破壊したときのき裂の進展を精度よく予測することができるき裂進展予測装置及びプログラムを提供することを第1の目的とする。
【0009】
また、破壊試験を伴わずに、破壊に関する強度特性を精度よく予測することができる強度特性予測装置及びプログラムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために第1の発明に係るき裂進展予測装置は、対象物の断面を撮像した組織画像から、前記対象物について予め定められた最も脆弱な因子を表わす脆弱因子部を検出する検出手段と、入力された荷重負荷方向と、前記検出された前記脆弱因子部間の距離及び方向とに基づいて、入力されたき裂開始点から、前記荷重負荷方向の荷重が負荷されることにより前記対象物が破壊されるときのき裂の進展を予測する予測手段と、を含んで構成されている。
【0011】
第2の発明に係るプログラムは、コンピュータを、対象物の断面を撮像した組織画像から、前記対象物について予め定められた最も脆弱な因子を表わす脆弱因子部を検出する検出手段、及び入力された荷重負荷方向と、前記検出された前記脆弱因子部間の距離及び方向とに基づいて、入力されたき裂開始点から、前記荷重負荷方向の荷重が負荷されることにより前記対象物が破壊されるときのき裂の進展を予測する予測手段として機能させるためのプログラムである。
【0012】
第1の発明及び第2の発明によれば、検出手段によって、対象物の断面を撮像した組織画像から、前記対象物について予め定められた最も脆弱な因子を表わす脆弱因子部を検出する。そして、予測手段によって、入力された荷重負荷方向と、前記検出された前記脆弱因子部間の距離及び方向とに基づいて、入力されたき裂開始点から、前記荷重負荷方向の荷重が負荷されることにより前記対象物が破壊されるときのき裂の進展を予測する。
【0013】
このように、対象物の断面を撮像した組織画像から検出される脆弱因子部と、入力される荷重負荷方向及びき裂開始点とから、対象物が破壊されるときのき裂の進展を予測することにより、破壊試験を伴わずに、破壊したときのき裂の進展を精度よく予測することができる。
【0014】
第1の発明に係る予測手段は、前記検出された前記脆弱因子部間の距離と、荷重負荷方向を基準とした、前記検出された前記脆弱因子部間の方向の角度とに基づいて、前記き裂開始点の周辺から順に、前記検出された前記脆弱因子部を繰り返し選択することにより、き裂の進展を予測するようにすることができる。
【0015】
第1の発明に係る予測手段は、前記き裂開始点又は前回選択された脆弱因子の周辺の前記脆弱因子部の各々について、前記検出された前記脆弱因子部間の距離と、前記検出された前記脆弱因子部間の方向の角度とに基づく評価値を算出し、前記評価値が最も高い前記脆弱因子部を選択することを繰り返し行って、前記き裂開始点の周辺から順に選択された前記脆弱因子部を結んだ線を、き裂の進展の予測結果とすることができる。
【0016】
第1の発明に係るき裂進展予測装置は、前記予測手段によって予測された前記き裂上の、前記検出された前記脆弱因子部間の距離の平均に基づいて、前記対象物について、破壊に関する強度特性を予測する予測手段を更に含むようにすることができる。
【0017】
第3の発明に係る強度特性予測装置は、対象物の断面を撮像した組織画像から、前記対象物について予め定められた最も脆弱な因子を表わす脆弱因子部を検出する検出手段と、荷重が負荷されることにより前記対象物が破壊されるときのき裂を予測し、あるいは、入力されたき裂を取得する取得手段と、き裂上の、前記検出された前記脆弱因子部間の距離の平均に基づいて、前記対象物について、破壊に関する強度特性を予測する予測手段と、を含んで構成されている。
【0018】
第4の発明に係るプログラムは、コンピュータを、対象物の断面を撮像した組織画像から、前記対象物について予め定められた最も脆弱な因子を表わす脆弱因子部を検出する検出手段、荷重が負荷されることにより前記対象物が破壊されるときのき裂を予測し、あるいは、入力されたき裂を取得する取得手段、及びき裂上の、前記検出された前記脆弱因子部間の距離の平均に基づいて、前記対象物について、破壊に関する強度特性を予測する予測手段として機能させるためのプログラムである。
【0019】
第3の発明及び第4の発明によれば、検出手段によって、対象物の断面を撮像した組織画像から、前記対象物について予め定められた最も脆弱な因子を表わす脆弱因子部を検出する。取得手段によって、荷重が負荷されることにより前記対象物が破壊されるときのき裂を予測し、あるいは、入力されたき裂を取得する。
【0020】
そして、予測手段によって、き裂上の、前記検出された前記脆弱因子部間の距離の平均に基づいて、前記対象物について、破壊に関する強度特性を予測する。
【0021】
このように、対象物の断面を撮像した組織画像から検出される脆弱因子部と、予測又は入力されたき裂とから求められる、き裂上の脆弱因子部間の距離の平均に基づいて、破壊に関する強度特性を予測することにより、破壊試験を伴わずに、破壊に関する強度特性を精度よく予測することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明のき裂進展予測装置及びプログラムによれば、対象物の断面を撮像した組織画像から検出される脆弱因子部と、入力される荷重負荷方向及びき裂開始点とから、対象物が破壊されるときのき裂の進展を予測することにより、破壊試験を伴わずに、破壊したときのき裂の進展を精度よく予測することができる、という効果が得られる。
【0023】
本発明の強度特性予測装置及びプログラムによれば、対象物の断面を撮像した組織画像から検出される脆弱因子部と、予測又は入力されたき裂とから求められる、き裂上の脆弱因子部間の距離の平均に基づいて、破壊に関する強度特性を予測することにより、破壊試験を伴わずに、破壊に関する強度特性を精度よく予測することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る強度特性予測装置10は、予測対象の材料断面を撮像して組織画像を生成する画像入力部12と、き裂開始点及び荷重負荷方向を示すパラメータを入力するためのパラメータ入力部14と、画像入力部12から得られる撮像画像と入力パラメータとに基づいて、き裂開始点からのき裂の進展を予測すると共に、破壊に関する強度特性を予測し出力部18により出力するコンピュータ16と、出力部18とを備えている。
【0027】
画像入力部12は、CCD等の固体撮像素子を使用したCCDカメラ等を備えた光学顕微鏡を使用することができ、CCDカメラで生成されたアナログ信号である画像信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(図示省略)、及びA/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)を備えている。
【0028】
例えば、
図2(A)、(B)に示すような、材料断面を表わす組織画像が得られる。なお、
図2(A)は、Si含有量が7%であるAl−Si系合金の鋳造材を表わしており、
図2(B)は、Si含有量が3%であるAl−Si系合金の押出材を表わしている。濃い灰色で示される粒子がSiであり、周囲の薄い灰色で示される部位がAlである。
【0029】
パラメータ入力部14では、ユーザが操作部(図示省略)を操作することにより、撮像画像で表わされる材料断面におけるき裂開始点及び当該材料断面の荷重負荷方向を示すパラメータが入力される。
【0030】
コンピュータ16は、強度特性予測装置10全体の制御を司るCPU、後述する強度特性予測処理ルーチンのプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。このような構成の場合には、各構成要素の機能を実現するためのプログラムをROMに記憶しておき、これをCPUが実行することによって、各機能が実現されるようにする。
【0031】
このコンピュータ16をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、上記
図1に示すように、画像入力部12によって得られた画像に対して、二値化処理を行う二値化処理部20と、二値化画像から、予測対象の材料について予め定められた脆弱因子を表わす領域を検出する脆弱因子検出部22と、脆弱因子の検出結果、並びに入力されたき裂開始点及び当該材料断面の荷重負荷方向に基づいて、き裂開始点からの材料断面のき裂の進展を予測するき裂進展予測部24と、脆弱因子の検出結果及びき裂の進展の予測結果に基づいて、材料の破壊に関する強度特性を予測する強度特性予測部26とを備えている。
【0032】
二値化処理部20は、
図3に示すような入力画像に対して、二値化を行う。二値化とは、位置(x,y)にある画像に着目した場合、その画素の輝度値I(x,y)が閾値εより大きい場合に1、小さい場合に0と置き換えられる手法である。二値化に用いる計算式を以下の(1)式に示す。
【0033】
【数1】
上記(1)式の計算をすべての画素に行うことで、予測対象の材料について予め定められた最も脆弱な因子(例えば、Alよりも脆弱なSi粒子)のみの領域を抽出することが可能となる。上記
図3に示す入力画像に対して、二値化を用いて得られた二値画像を
図4に示す。
【0034】
また、脆弱因子検出部22は、上記
図4に示すよう二値画像に対して、ラベリング処理を行う。ラベリングとは、二値化画像において、白の部分が連続した画素に同じ番号を割り振る処理のことを指す。そのようなラベリング処理を行うことで、すべての脆弱因子(Si粒子)の領域に対して、個々の粒子の位置や大きさや重心位置などの計算が可能となる。上記
図4に対してラベリング処理した結果を
図5に示す。本実施の形態では、縦・横・斜め方向に連続している部分を同じラベルにする8連結のラベリング手法を用いている。脆弱因子検出部22は、ラベリング処理した結果を、脆弱因子の領域の検出結果とする。なお、脆弱因子の領域が、脆弱因子部の一例である。
【0035】
なお、脆弱因子としてのSi粒子の検出に二値化とラベリング手法を例示したが、円形度などの形状特徴を用いてSi粒子を検出してもよい。
【0036】
ここで、本実施の形態においてき裂開始点からのき裂の進展を予測する原理について説明する。
【0037】
まず、シャルピー衝撃試験後の破面と直交する断面の組織画像を
図6に示す。上記
図6から、Alよりも脆弱なSi粒子を選択するようにき裂が進展していることがわかる。これをふまえて、材料に脆弱な組織因子を含む場合の、き裂進展予測モデルを用いて、き裂の進展を予測する。
【0038】
き裂進展予測部24は、脆弱因子検出部22で検出された個々のSi粒子の領域を選択することにより、仮想的に、入力された荷重負荷方向に荷重が負荷されて破壊されたときの、き裂開始点からのき裂を演算する。ここでは、パラメータとして入力されたき裂開始点と荷重負荷方向とを用いて、指定した組織画像上のき裂開始点からき裂の進展を演算する。
【0039】
き裂は、き裂開始点から、あるモデル式に基づいた評価値が一番高い画像上のSi粒子を選択するように進展すると定義した。そのモデル式は、破壊力学に基づき、脆弱因子間の距離rと、荷重負荷方向を基準とした、脆弱因子間を結んだ直線方向の角度θとに応じた変数を持つ、き裂先端の応力分布に基づくモデル式の適用が可能である。例えば、き裂変位の開口型における応力分布を示す以下の(2)式、(3)式を、ユークリッド距離によって合成した以下の(4)式を用いて、評価値σ
xyを計算する。
【0040】
【数2】
ここで、Kは応力拡大係数であるが、Kによってき裂進展は変わらないため、K=1として計算する。一義的に、上記(4)式と類似である正規分布を応用した、以下の(5)式で表されるモデル式を用いて評価値Eを計算してもよい。
【0041】
【数3】
上記(5)式では、脆弱因子間の距離rが近いほど高い評価値を示し、荷重負荷方向を基準とした、脆弱因子間を結んだ直線方向の角度θ(ラジアン)が小さいほど高い評価値を示すように設計している。
【0042】
また、破壊力学に基づけば、上記(2)式、(3)式、(4)式、(5)式は、a/w(a:き裂長さ、w:試験片幅)が0〜0.8の場合に適用とされているが、より高い精度を望む場合は、0.2〜0.5が望ましい。また、a/wが0.8より大きい場合は、上記(2)式、(3)式、(4)式、(5)式の解析の制度が低下し、本モデルによるき裂の進展予測は困難となる。
【0043】
き裂進展予測部24は、
図7に示すように、現在のき裂先端(き裂の開始点又は前回選択されたSi粒子)から、一定の距離内にあるすべてのSi粒子に対して、上記(4)式または(5)式に従って評価値を計算し、評価値が最も高いSi粒子を次のき裂先端として選択して、き裂を進展させる。また、評価値が最も高いSi粒子の評価値より、材料の端上の点に対する評価値の方が高い場合には、現在のき裂先端位置をき裂終了点として選択して、き裂の進展を終了する。順に選択されたSi粒子を結んだ線を、き裂の予測結果とする。
図5に対して、上記(5)式を用いて、き裂の進展の予測結果を演算した結果を
図8に示す。
【0044】
強度特性予測部26は、脆弱因子検出部22によって検出されたSi粒子の領域、及びき裂の進展の予測結果に基づいて、材料の破壊に関する強度特性を予測する。き裂上のSiの平均粒子間距離が、靭性値に影響を与える組織因子と考え、き裂上のSi粒子間距離を求める。ここでは、き裂進展予測部24で予測されたき裂を元にして、そのき裂上にあるSi粒子の平均粒子間距離を求める。き裂開始点からき裂終了点まで通過するn個のSi粒子の位置をS
nとして定義した場合、強度特性予測部26にて求める平均粒子間距離は、以下の(6)式に従って演算できる。
【0045】
【数4】
上記(6)式にて定義したき裂上の平均粒子間距離を、Al−Si系合金(3〜10%Si)の鋳造材、押出材の組織画像に対して求めた結果と、シャルピー試験による衝撃値との関係を
図9に示す。衝撃値は破壊に要したエネルギーであり、衝撃値が大きいほど高靭性である。
【0046】
上記
図9に示すように、き裂上の平均粒子間距離と衝撃値とに良い相関が認められたことから、き裂上粒子間距離を用いて、組織画像から、衝撃値を予測することが可能である。
【0047】
また、加工材では加工方向に第2相粒子が分散し、結晶粒が加工方向に扁平に伸張しているため、靭性、強度に方向依存性があると言われている。汎用Al合金での文献値(アルミニウム材料の基礎と工業技術、社団法人軽金属学会、(1985)、302)では、試験片を押出方向に採取した時に対し、直交方向の靭性値は2、3割低い。
図10に示すように、本実施の形態によれば、押出方向と直交方向との各々を荷重負荷方向とした場合におけるき裂の予測が可能である。これは、部品レベルでの材料組織からの靭性予測に大変有効である。
【0048】
次に、本実施の形態に係る強度特性予測装置10の作用について説明する。画像入力部12によって、予測対象の材料断面を表わす、光学顕微鏡を用いた画像が撮像されると、コンピュータ16によって、撮像画像が出力部18によりユーザに対して表示される。そして、ユーザは、パラメータ入力部14によって、撮像画像上のき裂開始点を入力すると共に、材料断面の荷重負荷方向を入力する。
【0049】
そして、コンピュータ16において、
図11に示す強度特性予測処理ルーチンが実行される。
【0050】
ステップ100で、画像入力部12で撮像された画像を取得する。次のステップ102において、上記ステップ100で取得した画像に対して、二値化処理を行い、二値画像を得る。ステップ104において、上記ステップ102で得られた二値画像に対して、ラベリング処理を行って、画像上の脆弱因子の領域を検出する。
【0051】
そして、ステップ106において、入力されたき裂開始点及び荷重負荷方向を取得する。ステップ108では、上記ステップ104で検出された画像上の脆弱因子の領域と、上記ステップ106で取得した画像上のき裂開始点及び荷重負荷方向とに基づいて、上記(4)式又は(5)式で計算される評価値に従って、当該荷重負荷方向に荷重が負荷されて破壊されたときの、き裂開始点からのき裂の進展を予測する。
【0052】
そして、ステップ110において、上記ステップ104で検出された画像上の脆弱因子の領域と、上記ステップ108で予測されたき裂開始点からのき裂とに基づいて、上記(6)式に従って、上記き裂上の脆弱因子間の距離の平均を算出する。次のステップ112では、上記ステップ110で算出されたき裂上の脆弱因子間の距離の平均を用いて、破壊に関する強度特性を予測し、出力部18により予測結果を出力して、強度特性予測処理ルーチンを終了する。
【0053】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る強度特性予測装置によれば、対象物の断面を撮像した組織画像から検出される脆弱因子の領域と、入力される断面の荷重負荷方向及びき裂開始点とから、対象物が破壊されるときの断面のき裂の進展を予測することにより、破壊試験を伴わずに、破壊したときのき裂の進展を精度よく予測することができる。
【0054】
また、対象物の断面を撮像した組織画像から検出される脆弱因子の領域と、予測された断面のき裂とから求められる、き裂上の脆弱因子間の距離の平均に基づいて、破壊に関する強度特性を予測することにより、破壊試験を伴わずに、破壊に関する強度特性を精度よく予測することができる。
【0055】
また、き裂先端の応力分布に基づくモデル式を用いて、材料組織の脆弱因子の領域を選択的に進展するき裂を描くことで、実際の応力負荷下でのき裂進展を精度良く予測することが可能となった。本モデルを用いて、き裂上の脆弱な組織因子を定量化すれば、破壊に関する強度特性と高い相関性が得られ、定量値から特性を予測することも可能となった。
【0056】
また、組織画像上で、き裂先端部から最近接に存在する脆弱な組織因子を順に選択していくと、荷重軸から外れたき裂進展経路をたどるが、応力分布に基づくモデル式を用いることで、荷重軸に沿ったき裂進展経路を描くことができる。
【0057】
また、組織に異方性のある材料についても、荷重負荷方向に応じたき裂進展予測ができる。
【0058】
また、破壊に関わる組織因子を抽出できることで、組織因子の解析精度が向上する。材料試験を行うことなく、材料の組織画像から材料特性を予測することで、材料開発の効率化を図ることができる。また、組織から材料試験用の試験片が採取できない部品や部位の特性を予測できる。
【0059】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
第2の実施の形態では、き裂情報を手入力するようにしている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0061】
図12に示すように、第2の実施の形態に係る強度特性予測装置210は、画像入力部12と、画像が表わす材料断面のき裂を示すき裂情報を入力するためのき裂入力部214と、画像入力部12から得られる撮像画像と入力されたき裂情報とに基づいて、破壊に関する強度特性を予測し出力部18により警報を出力するコンピュータ216と、出力部18とを備えている。
【0062】
き裂入力部214では、ユーザが、出力部18に表示された、材料断面を表わす撮像画像を見ながら、操作部を操作することにより、上記
図8に示すような、撮像画像で表わされる材料断面のき裂情報が入力される。
【0063】
コンピュータ216は、二値化処理部20と、脆弱因子検出部22と、入力された、画像上のき裂情報を受け付けるき裂受付部224と、脆弱因子の検出結果及びき裂情報に基づいて、材料の破壊に関する強度特性を予測する強度特性予測部26とを備えている。
【0064】
き裂受付部224は、上記
図3に示すような入力画像を出力部18により表示すると共に、き裂入力部214から入力された、画像が表わす材料断面のき裂情報を受け付ける。
【0065】
強度特性予測部26は、脆弱因子検出部22によって検出された脆弱因子の領域、及び入力されたき裂情報に基づいて、き裂上の脆弱因子間の平均距離を算出し、材料の破壊に関する強度特性を予測する。
【0066】
次に、第2の実施の形態に係る強度特性予測装置210の作用について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
画像入力部12によって、予測対象の材料断面を表わす、光学顕微鏡を用いた画像が撮像されると、コンピュータ216において、
図13に示す強度特性予測処理ルーチンが実行される。
【0068】
ステップ100で、画像入力部12で撮像された画像を取得する。次のステップ200では、上記ステップ100で取得された画像を出力部18により表示する。このとき、ユーザは、き裂入力部214によって、撮像画像が表わす材料断面のき裂を入力する。そして、コンピュータ216は、き裂入力部214から入力された、当該画像が表わす材料断面のき裂情報を受け付け、き裂情報を取得する。
【0069】
次のステップ102では、上記ステップ100で取得した画像に対して、二値化処理を行い、二値画像を得る。ステップ104において、上記ステップ102で得られた二値画像に対して、ラベリング処理を行って、画像上の脆弱因子の領域を検出する。
【0070】
そして、ステップ202では、上記ステップ104で検出された画像上の脆弱因子の領域と、上記ステップ200で取得したき裂とに基づいて、上記(6)式に従って、上記き裂上の脆弱因子間の距離の平均を算出する。次のステップ112では、上記ステップ202で算出されたき裂上の脆弱因子間の距離の平均を用いて、破壊に関する強度特性を予測し、出力部18により予測結果を出力して、強度特性予測処理ルーチンを終了する。
【0071】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る強度特性予測装置によれば、対象物の断面を撮像した組織画像から検出される脆弱因子の領域と、入力された断面のき裂とから求められる、き裂上の脆弱因子間の距離の平均に基づいて、破壊に関する強度特性を予測することにより、破壊試験を伴わずに、破壊に関する強度特性を精度よく予測することができる。
【0072】
ここで、比較例について説明する。Al−Si系合金の鋳造材の断面を撮像した画像に対して、画像解析ソフト「A像くん」(旭化成エンジニアリング製)で求めた粒子間距離(
図14)の平均と衝撃値との関係を求めた。また、Al−Si系合金の加工材の断面を撮像した画像に対しても、同様に、平均粒子間距離と衝撃値との関係を求めた。平均粒子間距離と衝撃値との関係を
図15に示す。押出材では距離が大きくなるほど、衝撃値が大きくなるが、鋳造材では距離が大きくなっても衝撃値が変化せず、粒子間距離と衝撃値とにあまり相関がみられない。これは、上記
図14に示すように、鋳造材では、Siの粒子間距離が短い部分と長い部分とが平均化されているためだと考えられる。
【0073】
上記
図9と上記
図15の比較から、上記の実施の形態で説明した強度特性の予測方法によれば、き裂進展を伴う破壊に影響する脆弱な組織因子を従来よりも精度良く解析できることがわかる。上記
図9のようなデータベースを作製すれば、これを元に、材料試験用の試験片が採取できない部品や部位の特性予測が可能となる。
【0074】
なお、上記の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、シャルピー衝撃試験におけるき裂進展を予測又は入力する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、その他の一軸負荷の破壊試験におけるき裂進展を予測又は入力するようにしてもよい。例えば、破壊靭性試験、応力腐食割れ試験、疲労き裂伝ぱ試験、クリープ試験、引張試験などが挙げられる。
【0075】
また、予測対象の材料が、Al−Si系合金である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の材料であってもよい。例えば、金属、セラミックス、高分子材料などを母材として、脆弱な組織因子(例えば、晶出物、分散粒子、介在物、欠陥など)が含まれる材料を、予測対象としてもよい。
【0076】
また、本実施の形態の強度特性予測装置の各部をコンピュータで実現した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、各部の機能を実現する複数のコンピュータ、または1つまたは複数の電子回路で構成するようにしてもよい。
【0077】
また、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムをCDROM等の記憶媒体に格納して提供することも可能である。