特許第5790541号(P5790541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

特許5790541シートのスプライス装置及びスプライス方法
<>
  • 特許5790541-シートのスプライス装置及びスプライス方法 図000002
  • 特許5790541-シートのスプライス装置及びスプライス方法 図000003
  • 特許5790541-シートのスプライス装置及びスプライス方法 図000004
  • 特許5790541-シートのスプライス装置及びスプライス方法 図000005
  • 特許5790541-シートのスプライス装置及びスプライス方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790541
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】シートのスプライス装置及びスプライス方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 19/18 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   B65H19/18
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-37465(P2012-37465)
(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公開番号】特開2013-173574(P2013-173574A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(74)【代理人】
【識別番号】100177699
【弁理士】
【氏名又は名称】野津 万梨子
(72)【発明者】
【氏名】越智 守
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−298162(JP,A)
【文献】 特開2000−159400(JP,A)
【文献】 特開昭57−142815(JP,A)
【文献】 実開昭55−52682(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H19/00−19/30、21/00−21/02
B29C65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシートが繰り出される第1の原反ロール(1a)と,
第2のシートが繰り出される第2の原反ロール(1b)と,
前記第1のシート及び前記第2のシートのうちの一方のシートに対して,他方のシートを接合し,シート継ぎを行うスプライス手段(2)と,
を備えたスプライス装置であって,
前記スプライス手段(2)は,
第1の接合部(20a)と,
前記第1の接合部(20a)と対向する位置に設けられた第2の接合部(20b)と,を有し,
前記第1の接合部(20a)と前記第2の接合部(20b)とによって前記第1のシート及び前記第2のシートの両シートを挟み込んだ状態で,当該両シートに対し熱を付与することにより,当該両シートを溶着させるものであり,
前記第1の接合部(20a)及び前記第2の接合部(20b)の両方又はいずれか一方は,
前記第1の接合部(20a)と前記第2の接合部(20b)の間で前記両シートを挟み込んだ状態において,前記両シートに対して熱を付与する接合領域(21)と,
前記接合領域(21)の周囲に設けられ,前記両シートに当接する方向に,前記接合領域(21)よりも突出した位置まで進行可能であり,かつ,少なくとも前記接合領域(21)と同じ位置まで退行可能であるフード部(22)と,
前記フード部(22)を前記両シートに当接する方向に付勢する付勢部(23)を含む
スプライス装置。
【請求項2】
前記第1の接合部に形成された接合領域(21)は,複数の凸部(24)を有し,
前記複数の凸部(24)は,前記第1のシート及び前記第2のシートの両シートの進行方向に沿って,複数列をなすように形成されている
請求項1に記載のスプライス装置。
【請求項3】
前記複数の凸部(24)は,
前記第1のシート及び前記第2のシートの両シートの進行方向と直交する方向に沿って,複数行をなすように形成されている
請求項2に記載のスプライス装置。
【請求項4】
前記第1の原反ロール(1a)に巻回された前記第1のシート,及び前記第2の原反ロール(1b)巻回された前記第2のシートの残量を検出する残量検出部(11)を,さらに有し,
前記残量検出部(11)が,前記第1のシート及び前記第2のシートのうちの使用中のシートの残量が所定量以下となったことを検出したときに,前記第1の接合部(20a)及び前記第2の接合部(20b)の両方又はいずれか一方を前記第1のシート及び前記第2のシートの両シートを挟み込む方向に移動させる往復駆動機構を駆動させ,
前記往復駆動機構の稼働後,前記両シートに対し熱を付与できるよう前記第1の接合部(20a)及び前記第2の接合部(20b)を稼働させる
請求項1から請求項3のいずれかに記載のスプライス装置。
【請求項5】
第1の原反ロール(1a)から繰り出された第1のシートと第2の原反ロール(1b)から繰り出される第2のシートのうちの使用中のシートに対して,未使用のシートを接合して,シート継ぎを行うスプライス方法であって,
第1の接合部(20a)と第2の接合部(20b)によって,前記第1のシート及び前記第2のシートの両シートを挟み込んだ状態で,当該両シートに対し熱を付与することにより当該両シートを溶着させるスプライス工程を行い,
前記スプライス工程においては,
前記両シートに対して熱を付与する第1の接合部(20a)及び第2の接合部(20b)の両方又はいずれか一方における接合領域(21)の周囲に設けられたフード部(22)を,前記両シートに当接する方向に,前記接合領域(21)よりも突出した位置まで進行させる工程と,
前記フード部(22)が進行している状態で,前記第1の接合部(20a)と前記第2の接合部(20b)によって,前記両シートを挟み込む工程と,
前記フード部(22)を,少なくとも前記接合領域(21)と同じ位置まで退行させる工程と,
前記第1の接合部(20a)と前記第2の接合部(20b)によって前記両シートに対し熱を付与する工程を行う
スプライス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,不織布やプラスチックなどのシート継ぎに用いられるスプライス装置及びスプライス方法に関するものである。具体的に説明すると,本発明は,2つのシートを継ぐ際に,熱溶着や超音波溶着によって両シートを接合するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば,使い捨ておむつの製造ラインにおいては,原反ロールからシートを繰り出して搬送し,そのシートに接着剤を塗工したり,適切な大きさに裁断したりする加工作業が行われる。このようなシートを加工した物品の製造業においては,物品を連続して大量に生産するため,使用中の原反ロールに巻回されているシートの残量がなくなった場合又は少なくなった場合に,未使用の原反ロールに巻回されているシートを,その使用中のシートに接合してシートを継ぐ作業が行われる。
【0003】
このようなシートを継ぐ作業には,従来から,スプライス装置が用いられている。スプライス装置は,使用中のシートの終端部と未使用のシートの始端部とを接合し,シートを連続的に搬送可能にする。従来のスプライス装置は,使用中のシートと未使用のシートを接合するにあたり,粘着テープが用いていた(特許文献1)。例えば,特許文献1に記載のスプライス装置は,使用中の原反ロールから巻き出した先行するシートの末端と,接続用のシートの先端を突き合わせ状態にして,その突き合わせ部の表裏両面に粘着テープを貼着することとしている。
【0004】
ただし,使用中のシートと未使用のシートの接合に粘着テープを用いたスプライス装置には,種々の問題がある。例えば,シートの接合に粘着テープを使用すると,接合されたシートの厚みが増すこととなる。このため,例えば,接合されたシートを対向する2つローラによって挟み込んで搬送するような場合,粘着テープの貼付により厚みが増した箇所をローラで挟み込むと,ローラに衝撃が加わり損傷を招く恐れがあった。また,粘着テープをシート間に貼着させたままにしておくと,シート間から粘着テープの粘着剤がはみ出て他のシートに接着してしまい,搬送機や加工機にエラーが生じて停止してしまうという恐れがある。また,粘着テープを用いたスプライス装置では,粘着テープを必要な幅と長さに切断し,接続用のシートの先端に取り付けるという作業が必要になる。さらに,例えば使い捨ておむつの製造工程において,粘着テープは本体的には不要な異物である。このため,例えば製造の成果物である使い捨ておむつに粘着テープが混入したり不良品を発生させてしまう恐れがある。また,おむつの製造過程において粘着テープの破片がおむつの一部に付着していないかどうかを確認する作業が必要となり,生産効率の低下を招いていた。
【0005】
この点,上記粘着テープを用いたスプライス装置の問題を解決するための一案として,使用中のシートと未使用のシートの接合に,超音波溶着や熱溶着を行うことが提案されている(特許文献2)。このように,超音波溶着や熱溶着を利用して,シートを接合することにより,従来技術のように,粘着テープを使用する必要がなくなる。このため,接合されたシートの厚みが増すことを回避でき,搬送ローラの損傷を防ぐことができる。また,シートの接合に粘着テープを使用しないため,接合したシートが他のシートに接着するという事態を防止できる。また,粘着テープを必要な幅と長さに切断し接続用のシートの先端に取り付けるという作業が不要になる。さらに,粘着テープが異物として製造成果物に混入する恐れがなくなるため,良品出荷率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−040615号公報
【特許文献2】特開2005−298162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし,特許文献2のように,シートの接合を超音波溶着や熱溶着で行う技術には種々のメリットがあるものの,超音波溶着や熱溶着によってシートを接合する技術には,シートに熱を付与するための溶着装置にシートの溶解した部分が付着したまま剥離しなくなるという課題が残るものであった。すなわち,溶着装置の熱付与面にシートが接着したままになると,シートが搬送方向に張引されたときに,シートに大きな張力が掛かり,シート自体が破損又は破断してしまう事態を招く。また,シートが溶着装置の熱付与面に接着されたままになると,シートが必要以上に加熱されてしまい,シートの溶融が進むこととなる。その結果,シートを接合させることが目的の溶着装置によって,シートを切断してしまうという恐れがあった。例えばスプライス装置により接合したシートが破断すると,人手によって改めてシートの継ぎ作業を行わなければならず,生産効率を大きく低下させることとなっていた。
【0008】
このため,現在は,超音波溶着や熱溶着によってシートの接合を行った後に,シートが損傷したり切断してしまう事態を防止するために,シートを溶着装置の熱付与面から迅速に剥離させることができるスプライス装置及びスプライス方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで,本発明の発明者は,上記の従来発明の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果,シートに熱を付与して接合する接合領域の周囲にフード部を設け,フード部を両シートに当接する方向に付勢しておくことにより,両シートが溶着した後,フード部によって,両シートを溶着装置から迅速に剥離させることができるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。
具体的に
説明すると,本発明は,以下の構成を有する。
【0010】
本発明の第1の側面は,スプライス装置に関するものである。
本発明のスプライス装置は,第1の原反ロール1aと,第2の原反ロール1bと,スプライス手段2を備えている。
第1の原反ロール1aは,第1のシートが繰り出す。
第2の原反ロール1bは,第2のシートを繰り出す。
スプライス手段2は,第1のシート及び第2のシートのうちの一方のシートに対して,他方のシートを接合し,シート継ぎを行う。
スプライス手段2は,第1の接合部20aと,第1の接合部20aと対向する位置に設けられた第2の接合部20bとを有する。
そして,スプライス手段2は,第1の接合部20aと第2の接合部20bとによって第1のシート及び第2のシートの両シートを挟み込んだ状態で,当該両シートに対し熱を付与することにより,当該両シートを溶着させる。
ここで,第1の接合部20a及び第2の接合部20bの両方又はいずれか一方は,接合領域21と,フード部22と,付勢部23を有している。
接合領域21は,第1の接合部20a及び第2の接合部20bとの間で両シートを挟み込んだ状態において,両シートに対して熱を付与することのできる領域である。
フード部22は,接合領域21の周囲に設けられている。また,フード部22は,両シートに当接する方向に,接合領域21よりも突出した位置まで進行可能である。さらに,フード部22は,少なくとも前記接合領域21と同じ位置まで退行可能である。
そして,付勢部23は,フード部22をシートに当接する方向に付勢している。
【0011】
上記構成のように,本発明のスプライス装置は,超音波溶着や熱溶着によって第1のシート及び第2のシートに対して熱を付与して,両シートを接合するものである。そして,本発明のスプライス装置は,シートに熱を付与する接合領域21の周囲にフード部22を有しており,このフード部22は付勢部23によって両シートに当接する方向に付勢されているため,両シートが溶着した後,フード部22によって両シートを接合領域21から迅速に剥離させることができる。このため,本発明によれば,シートの溶解した部分が接合領域21に付着したまま解離しなくなるという問題を解決できる。すなわち,本発明によれば,接合されたシート自体が,破損又は破断する事態を防止できる。さらに,本発明によれば,シートに対して必要な時間だけ熱を付与することができるため,シートが必要以上に加熱されて破断してしまうような事態を回避できる。
【0012】
本発明のスプライス装置において,第1の接合部に形成された接合領域21は,複数の凸部24を有することが好ましい。
そして,複数の凸部24は,第1のシート及び第2のシートの両シートの進行方向に沿って,複数列をなすように形成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成のように,第1の接合部20aの接合領域21に形成された複数の凸部24は,第2の接合部20bとの間でシートを挟持する。このため,複数の凸部24のパターンが,シートの接合パターンとなる。このように,接合領域21に複数の凸部24を形成することにより,溶着されたシートが接合領域21に付着しにくくなる。また,シートの接合パターンを,進行方向に沿って複数列形成されたパターンとすることにより,シートの幅方向に接合パターンが連結しなくなるため,接合されたシートが搬送過程において破断しにくくなる。
【0014】
本発明のスプライス装置において,複数の凸部24は,さらに,第1のシート及び第2のシートの両シートの進行方向と直交する方向(幅方向)に沿って,複数行をなすように形成されていることが好ましい。すなわち,複数の凸部24は,接合領域21に,複数行かつ複数列のパターンで形成されていることが好ましい。
【0015】
上記構成のように,複数の凸部24を複数行かつ複数列のパターンで形成することにより,各凸部24の間に,シートの進行方向及びその幅方向に隙間が生じるようになる。このため,例えば複数の凸部24がドット状となる。このように,例えば,接合領域21にドット状の凸部24を複数形成することにより,溶着されたシートが接合領域21からより剥離し易くなる。さらに,複数の凸部24をドッド状とすることにより,凸部24のパターンが,シートの幅方向に連結しなくなるため,接合されたシートが,その搬送過程においてより破断しにくくなる。
【0016】
本発明のスプライス装置は,残量検出部11を,さらに有することが好ましい。残量検出部11は,第1の原反ロール1aに巻回された第1のシート,及び第1の第2の原反ロール1bの巻回された第2のシートの残量を検出することができる。
この場合において,本発明のスプライス装置は,残量検出部11が,第1のシート及び第2のシートのうちの使用中のシートの残量が所定量以下となったことを検出したときに,第1の接合部20a及び第2の接合部20bの両方又はいずれ一方を第1のシート及び第2のシートの両シートを挟み込む方向に移動させる往復駆動機構を駆動させることが好ましい。そして,この往復駆動機構が駆動した後に,両シートに対し熱を付与できるよう第1の接合部20a及び第2の接合部20bを稼働するものであることが好ましい。
【0017】
通常のシートの搬送機において,シートの継ぎ作業が行われる頻度はそれ程高くはなく,シート継ぎ作業を行わない時間帯が長く存在する。このため,例えば,シート継ぎ作業を行わない時間帯においても,第1の接合部20a及び第2の接合部20bからなる熱溶着装置や超音波溶着装置に電力を供給して稼働しておくこととすると,電力を無駄に消費してしまう。そこで,本発明のスプライス装置は,残量検出部11によって使用中のシートの残量が所定量以下となったことを検知し,往復駆動機構により第1の接合部20a及び/又は第2の接合部20bの移動が開始した後に,熱溶着装置や超音波溶着装置に電力を供給するよう制御を行うことにより,エネルギー効率の向上を図ることができる。
【0018】
本発明の第2の側面は,スプライス方法である。本発明のスプライス方法は,基本的に,上記第1の側面に係るスプライス装置によって実行される。
すなわち,本発明のスプライス方法は,第1の原反ロール1aから繰り出された第1のシートと第2の原反ロール1bから繰り出される第2のシートのうちの使用中のシートに対して未使用のシートを接合して,シート継ぎを行う。
このシートの接合の工程は,第1の接合部20aと第2の接合部20bによって,第1のシート及び第2のシートの両シートを挟み込んだ状態で,当該両シートに対し熱を付与することにより当該両シートを溶着させるスプライス工程である。
そして,スプライス工程においては,
両シートに対して熱を付与する前記第1の接合部20aの接合領域21の周囲に設けられたフード部22を,両シートに当接する方向に,接合領域21よりも突出した位置まで進行させる工程と,
フード部22が進行している状態で,第1の接合部20aと第2の接合部20bによって,前記両シートを挟み込む工程と,
フード部22を,少なくとも接合領域21と同じ位置まで退行させる工程と,
第1の接合部20aと第2の接合部20bによって両シートに対し熱を付与する工程を行う
【0019】
上記工程によれば,シートが溶着接合した後,フード部22によって両シートを接合領域21から迅速に剥離させることができるため,シートの溶解した部分が接合領域21に付着したまま解離しなくなるという問題を解決できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は,超音波溶着や熱溶着によって第1のシート及び第2のシートに対して熱を付与して,両シートを接合するものである。そして,本発明は,シートに熱を付与する接合領域21の周囲にフード部22を有しており,このフード部22は両シートに当接する方向に付勢されているため,両シートが溶着した後,フード部22によって両シートを接合領域21から迅速に剥離させることができる。従って,本発明によれば,接合されたシート自体が,破損又は破断する事態を防止できる。さらに,本発明によれば,シートに対して必要な時間だけ熱を付与することができるため,シートが必要以上に加熱される事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は,本発明の第1の実施形態に係るスプライス装置の全体構成を例示したブロック図である。
図2図2は,スプライス手段の具体的構成と動作例を示す拡大断面図である。
図3図3は,スプライス手段の接合パターンの例を示す図である。
図4図4は,本発明の第2の実施形態を説明するための説明図である。図4(a)は,第1の接合部20aの断面形状を示している。また,図4(b)は,図4(a)に示されたY−Y´線における断面図を示している。
図5図5は,本発明の第3の実施形態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0023】
(1.スプライス装置の第1の実施形態)
図1は,第1の実施形態に係るスプライス装置100の全体構成の例を示すブロック図である。図1に示されるように,スプライス装置100は,第1の原反ロール1aと,第2の原反ロール2aと,スプライス手段2と,切断手段3と,テンション制御手段4と,搬送手段5を備えている。
第1の原反ロール1aは,第1のシート10aを巻回している。
第2の原反ロール1bは,第2のシート10bを巻回している。
搬送手段5は,第1の原反ロール1a及び第2の原反ロール1bのそれぞれの下流側に設けられており,各原反ロール1a,1bから第1のシート10aと第2のシート10bを引き出し,所定の速度で走行させる。
切断手段3は,搬送手段5の下流側に設けられており,シート継ぎを行い使用中のシートを未使用のシートに切替える際に,使用中のシートを切断する。
スプライス手段2は,切断手段3の下流側に設けられており,各原反ロール1a,1bから繰り出された第1のシート10aと第2のシート10bを接合する。
テンション制御手段4は,スプライス手段2の下流側に設けられており,走行するシートが弛まないように張力(テンション)を制御する。
また,スプライス装置100は,複数箇所にガイドローラ6を有している。適所に配置されたガイドローラ6は,搬送手段5により引き出された第1のシート10a,第2のシート10b,及び両シートの接合体の走行をガイドする。
【0024】
(1−1.原反ロール)
第1の原反ロール1a及び第2の原反ロール1bは,回転軸を有し,この回転軸の巻芯に,それぞれ第1のシート10a及び第2のシート10bが巻きつけられてロール状に形成されている。第1の原反ロール1a及び第2の原反ロール1bは,互いに接触しない程度に離間してブラケット12により支持されている。各原反ロール1a,1bを支持するブラケット12は,エアブレーキを備えており,各原反ロール1a,1bから繰り出される第1のシート10a及び第2のシート10bを所定の速度で走行させるためのブレーキ機能を有する。なお,図2に示されるように,第1の原反ロール1a及び第2の原反ロール1bの回転方向は同一の方向であることが好ましいが,両原反ロール1a,1bの方向は互いに逆の方向であってもよい。
【0025】
第1の原反ロール1aに巻回された第1のシート10a,及び第2の原反ロール1bに巻回された第2のシート10bは,それぞれ,熱可塑性を有するシート体である。熱可塑性シート体の例は,不織布やプラスチックシートである。不織布は,例えば低密度ポリエチレン樹脂,エチレン酢酸ビニル樹脂,合成ゴム,共重合ポリアミド樹脂,又は共重合ポリエステル樹脂のような熱可塑性樹脂の繊維を布状に編み込んだものを用いることが好ましい。不織布は,例えばスパンボンド法,SMS法,SMMS法,エアスルー法,及びエアレイド法のいずれの方法を用いて形成したものであってもよい。このような不織布は,例えば使い捨ておむつを形成する各種シート体として用いられる。
【0026】
各原反ロール1a,1bを支持するブラケット12には,残量検出部11が設けられていることが好ましい。残量検出部11は,各原反ロール1a,1bに巻回されたた第1のシート10a及び第2のシート10bの残量を検出するものである。残量検出部11の例は,光センサである。光センサは,発光部と受光部とを有しており,例えば各原反ロール1a,1bの巻芯から5mmの位置に設けられている。光センサは,発光部からの検出光が受光部で検出されたとき,使用する巻回部を切り換えるための検出信号を出力する。ただし,残量検出部11は,シートの残量を検出できるものであれば光センサに限定されず,例えば,レーザセンサ,エリアセンサ,超音波センサ等の各種センサを用いることができる。また,残量検出部11により検出するシート残量は特に限定されず,用途に応じて適宜設定可能である。
【0027】
(1−2.搬送手段)
搬送手段5は,第1及び第2の原反ロール1a,1bの下流に位置しており,ガイドローラ6を介して,第1及び第2のシート10a,10bを引き出して搬送する。搬送ローラ5は,図示しない駆動モータによって回転駆動される駆動ローラ50と,駆動ローラ50と対向する位置に設けられたニップローラ51により構成される。搬送手段5は,駆動ローラ50とニップローラ51との間で,第1のシート10a又は第2のシート10bを挟持して走行させる。駆動ローラ50は,所定速度で回転駆動するように制御されており,第1のシート10a又は第2のシート10bを,所定速度で装置下流側へと送出する。
【0028】
(1−3.切断手段)
切断手段3は,搬送手段5の下流側に位置し,第1のシート10aを切断可能な第1のカッタ30aと,第2のシート10bを切断可能な第2のカッタ30bを有する。すなわち,第1のカッタ30aは,第1のシート10aの送給ラインに沿うような位置に設けられている。また,第2のカッタ30bは,第2のシート10bの送給ラインに沿うような位置に設けられている。第1のカッタ30aは,例えばエアシリンダのような第1のカッタ駆動機構31aに接続されており進退可能となっている。第1のカッタ30aは,第1のシート10aを切断するときに,第1のカッタ駆動機構31aによって,第1のシート10aに近接する方向に進行させられる。同様に,第2のカッタ30bも,例えばエアシリンダのような第2のカッタ駆動機構31bに接続されており,第2のシート10bを切断するとき,第2のシート10bに近接する方向に進行させられる。
【0029】
(1−4.スプライス手段)
スプライス手段2は,切断手段3付近の下流に位置し,第1の原反ロール1aから繰り出された第1のシート10aと,第2の原反ロール1bから繰り出された第2のシート10bとに対して熱を付与して,両シートを接合する。スプライス手段2の例は,熱溶着装置及び超音波溶着装置である。熱溶着装置は,熱源を有するヒートシール部と,受け部との間で第1のシート10aと第2のシート10bを挟持して,ヒートシール部から発生する熱によって,両シート10a,10bを溶融させて接合する装置である。また,超音波溶着装置は,超音波振動するソニックホーン部と,受け部との間で第1のシート10aと第2のシート10bを挟持して,ソニックホーン部の超音波振動によって両シート10a,10bに摩擦熱を付与し,両シート10a,10bを溶融させて接合する装置である。これらの熱溶着装置及び超音波振動装置の構成は,適宜公知の構成を採用することができる。
【0030】
図1に示されるように,スプライス手段2は,第1のシート10aの供給ラインに沿うような位置に設けられた第1の接合部20aと,第2のシート10bの供給ラインに沿うような位置に設けられた第2の接合部20bとを備えている。第1の接合部20aと第2の接合部20bは,互いに対向した位置に設けられている。第1の接合部20aは,例えばエアシリンダのような第1の往復駆動機構25aに接続されており,第2の接合部20bに近接する方向に,進退可能となっている。同様に,第2の接合部20bは,例えばエアシリンダのような第2の往復駆動機構25bに接続されており,第1の接合部20aに近接する方向に,進退可能となっている。第1の接合部20a及び第2の接合部20bは,第1の往復駆動機構25a及び第2の往復駆動機構25bによって,互いに近接する方向に移動させられる。これにより,第1の接合部20a及び第2の接合部20bは,その間に第1のシート10aと第2のシート10bを挟持する。第1の接合部20a及び第2の接合部20bは,両シート10a,10bを挟持した状態で,両シート10a,10aに対し熱を付与する。例えば,スプライス手段2として熱溶着装置が適用される場合,第1の接合部20a及び第2の接合部20bのいずれか一方が上記ヒートシール部として機能し,他方が受け部として機能する。この場合,加熱されたヒートシール部と受け部との間に両シート10a,10aを挟持して,シートを溶融させて接合する。また,スプライス手段2として熱溶着装置が適用される場合,第1の接合部20a及び第2の接合部20bのいずれか一方がソニックホーン部として機能し,他方が受け部として機能する。この場合,超音波振動するソニックホーンと受け部との間に両シート10a,10aを挟持し,両シート10a,10bに摩擦熱を発生させ,シートを溶融させて接合する。
【0031】
図2は,第1の実施形態に係るスプライス手段2の各部構成の例を示した拡大断面図である。図2に示されるように,第1の接合部20aは,第2の接合部20bとの間でシートを接合する接合領域21を有するパターンブロック27と,フード部22と,付勢部23と,これらの部材が収納されるハウジング28を有している。またスプライス手段2は,保持部29を有していてもよい。なお,本実施の形態では,第1の接合部20aにパターンブロック27が設けられる例について説明するが,パターンブロック27は第1の接合部20aではなく,第2の接合部20bに設けられるものであってもよい。
【0032】
パターンブロック27は,接合領域21に複数の凸部24が形成されており,この複数の凸部24が,第2の接合部20bとの間で第1及び第2のシート10a,10bを挟持する。例えば,スプライス手段2として熱溶着装置を適用する場合,このパターンブロック27を加熱してヒートシール部と機能させてもよい。また,パターンブロック27は,熱溶着装置の受け部として機能するものであってもよい。また,プライス手段20として超音波溶着装置を適用する場合,このパターンブロック27を超音波振動させてソニックホーン部として機能させることもできる。さらに,このパターンブロック27は,ソニックホーン部の受け部とさせることもできる。パターンブロック27は,例えば剛性の高い金属材料により形成されることが好ましい。
【0033】
フード部22は,接合領域21の周囲に立設されている。フード部22には,シートに接する側の端部とは反対側に突起部221が形成されている。フード部22の突起部221が,パターンブロック27の周囲のハウジング28に形成されたスライド溝281に沿って,ハウジング28に形成されたフランジ282に当接する位置までスライドする。これにより,フード部22は,第2の接合部20bと当接する方向に進退可能になっている。すなわち,フード部22は,シートに接する方向に,接合領域21の凸部24よりも突出した位置まで進行可能である。また,フード部22は,少なくとも接合領域21の凸部24と同じ位置,若しくは接合領域21の凸部24を突出しない位置まで退行可能である。
【0034】
付勢部23は,ハウジング28に形成されたスライド溝281に配設され,ハウジングの内面段部283とフード部22の突起部221の間に介装されている。付勢部23は,例えばコイルばねのような弾性体で形成されており,フード部22を第2の接合部20bに近接する方向に付勢する。付勢部23は,フード部22に圧力が掛かっていない状態において,フード部22の先端が接合領域21の凸部24よりも突出した位置となるように,フード部22を付勢している。一方,付勢部23は,フード部22に一定の圧力が掛かると,フード部22の先端が接合領域21の凸部24よりも突出しない位置となるまで,圧縮される。付勢部23は,一の部材によりフード部22を付勢するものであってもよいし,複数の部材によりフード部22を付勢するものであってもよい。
【0035】
保持部29は,第1のシート10aを保持して,継ぎ作業を行う際に,第1のシート10aが揺動することを防止する。保持部29は,例えば外気を吸気できる吸気構造で構成され第1のシート10aを吸着するものであってもよい。
【0036】
第2の接合部20bは,上記第1の接合部20aとの間で,第1のシート10a及び第2のシート10bを挟持して,両シートに熱を付与できる構成であればよく,その具体的構成は限定されない。例えば,第1の接合部20aのパターンブロック27を加熱してヒートシール部と機能させる場合,第2の接合部20bの当接面は受け部として機能させればよい。第1のシート10aのパターンブロック27を,熱溶着装置の受け部として機能させる場合,第2の接合部20bは,熱源を有するヒートシール部として機能させればよい。また,第1の接合部20aのパターンブロック27を超音波振動させてソニックホーン部として機能させる場合,第2の接合部20bの当接面は受け部として機能させればよい。さらに,第1の接合部20aのパターンブロック27を超音波溶着装置の受け部とする場合,第2の接合部20bは,超音波振動するソニックホーン部として機能させればよい。また,図2に示されるように,第2の接合部20bは,第2のシート10bを保持するための保持部29を有することが好ましい。
【0037】
図3は,パターンブロックの接合領域21に形成された凸部24のパターンの例を示している。図3の各図に示されるように,パターンブロックの接合領域21の周囲には,接合領域21を囲う形状のフード部22が配置されている。
図3の各図において,図3の矢印Bで示された方向(図の上下方向)はシートの進行方向に一致し,図3の両矢印Cで示された方向(図の左右方向)はシートの幅方向に一致している。
【0038】
図3(a)は,パターンブロックの接合領域21に,シートの幅方向に延びる線状の凸部24が,複数行で形成された例を示している。図3(a)に示されるように,線状の凸部24を複数行で形成することにより,第1のシート10aと第2のシート10bの接合状態が強固になるため,両シートが搬送中に剥離するといった事態を回避できる。
【0039】
図3(b)は,パターンブロックの接合領域21に,シートの流れ方向に沿って延びる線状の凸部24が,複数列で形成された例を示している。すなわち,複数の線状の凸部24は,シートの流れ方向と平行に形成される。図3(b)に示されるように,線状の凸部24を複数列で形成することにより,例えば図3(a)に示されたパターンと比較し,シートの幅方向に接合パターンが連続しなくなる。図3(a)に示されたパターンのように,シートの幅方向に接合パターンが連続すると,シートを溶着させた後に,シートが接合パターンに沿って破断しやすくなるが,図3(b)のパターンでは,このような事態を回避できる。従って,図3(b)の接合パターンによれば,第1のシート10aと第2のシート10bがシートの搬送中に破断する事態を回避できる。
【0040】
図3(c)は,円形のドット状の凸部24が,シートの幅方向に沿って複数行で形成され,かつ,シートの進行方向に沿って複数列で形成したパターンを示している。例えば,図3(c)に示された例では,円形のドット状の凸部24が,シートの幅方向に沿って4行に並び,かつ,シートの進行方向に沿って6列で形成されている。図3(c)に示されたパターンでは,複数の凸部24が,シートの進行方向及び幅方向に所定間隔空けて形成された円形のドット状となっている。このため,例えば図3(a)や(b)に示されたパターンと比較し,シートと凸部24の接触面積が少なくなるため,接合後のシートがパターンブロックから剥離し易くなる。さらに,複数の凸部24のパターンが,シートの幅方向に連結するものではないため,例えば接合されたシートが,その搬送過程において,接合部に沿って破断するような事態を防止できる。
【0041】
図3(d)は,十字形の凸部24が,シートの幅方向に沿って複数行で形成され,かつ,シートの進行方向に沿って複数列で形成されたパターンを示している。このように,十字形の凸部24を複数個設けることにより,各接合点において,シートの進行方向及び幅方向に多少の長さのある接合を達成しつつ,凸部24とシートの接触面積を少なくすることができる。すなわち,各接合点において,シートの進行方向及び幅方向に多少の長さをもって接合することにより,シート同士の接合が強固になる。また,凸部24を十字形にすることにより,例えば図3(c)に示された円形のドッド状の凸部24と比較し,凸部24とシートの接触面積が少なくなるため,接合後のシートがパターンブロックから剥離し易くなる。
【0042】
図3(e)は,矩形に形成された接合領域21の周縁に沿って枠状の凸部24aを形成し,その枠状の凸部24aの内方の領域に,十字形の凸部24bを複数行かつ複数列で形成したパターンを示している。
通常,図3(e)に示されるように,枠状の凸部24aを形成してシート同士を接合するとシート同士の接合状態は強固になるものの,接合されたシートがパターンブロックに接着して剥離しにくくなる恐れがある。この点,本発明は,上記した通り,パターンブロックの接合領域21の周囲に,シートとパターンブロックを剥離させるためのフード部22が設けられている。このため,枠状の凸部24aを形成してシート同士を接合しても,フード部22によって確実にシートとパターンブロックを剥離することができるため,接合されたシートがパターンブロックに接着するという問題を解決しつつ,シート同士の強固な接合を達成できる。なお,図3(e)に示されるように,枠状の凸部24aの内方領域に,十字形の凸部24bを複数形成する態様は好ましい態様であるが,必ずしも枠状の凸部24aの内方領域に十字形の凸部24bを形成する必要はない。
【0043】
(1−5.テンション制御手段)
テンション制御手段4は,スプライス手段2の下流側に設けられ,走行するシート体のテンションを制御するテンションローラ40と,一端部にテンションローラ40が取り付けられた回動アーム41とを有する。テンション制御手段4は,図1における矢印Aの方向に回動アーム41を回動させることによって,テンションローラ40を移動させ,走行する第1のシート10aと第2のシート10bが弛まないように,テンションを一定に保持する。
ただし,テンション制御装置4を設ける位置は,本実施形態に示された位置(スプライス手段2の下流側)に限定されるものではない。例えば,テンション制御装置4は,第1及び第2の原反ロール1a,1bの下流に位置する搬送ローラ6と駆動手段5の間に位置するものであってもよい。
【0044】
(2.スプライス装置の第2の実施形態)
図4は,本発明の第2の実施形態に係るスプライス装置を説明するための説明図である。図4(a)は,第1の接合部20aの断面形状を示している。また,図4(b)は,図4(a)に示されたY−Y´線における断面図である。
【0045】
第2の実施形態において,図4(a)及び(b)に示されるように,第1の接合部20aは,第2の接合部20bとの間でシートを接合する接合領域21を有するパターンブロック27を複数有している。すなわち,第2の実施形態では,接合領域21が複数箇所に形成される。複数の接合領域21のそれぞれには,十字型の凸部24が複数形成されており,この複数の凸部24が,第2の接合部20bとの間で第1及び第2のシート10a,10bを挟持する。そして,フード部22が,複数の接合領域21のそれぞれの周囲に立設するように形成されている。すなわち,フード部22は,複数の接合領域21のそれぞれの周囲に立設する立設部222と,この立設部222の根本端に連結された基底部223を備える。立設部222は,複数の接合領域21のそれぞれ周囲を囲う形状となっており,複数の接合領域21の間にも立設されている。また,フード部22の基底部223には,突起部221が形成されており,基底部223の突起部221は,ハウジング28に形成されたスライド溝281に沿って,フランジ282に当接する位置までスライドする。これにより,フード部22は,立設部222の先端が,シートに接する方向に,接合領域21の凸部24よりも突出した位置となるまで進行可能になっている。また,フード部22は,立設部222の先端が,少なくとも接合領域21の凸部24と同じ位置,若しくは接合領域21の凸部24を突出しない位置まで退行可能となっている。
【0046】
付勢部23は,ハウジング28とフード部22の基底部223の間に介装されている。付勢部23は,例えばコイルばねのような弾性体で形成されており,フード部22の基底部223を付勢し,立設部222の先端が,シートに近接する方向に付勢する。付勢部23は,フード部22に圧力が掛かっていない状態において,フード部22の立設部222の先端が接合領域21の凸部24よりも突出した位置となるように,基底部223を付勢している。一方,付勢部23は,フード部22に対して一定の圧力が掛かると,フード部22の立設部222の先端が接合領域21の凸部24よりも突出しない位置となるまで,圧縮される。付勢部23は,一の部材によりフード部22の基底部223を付勢するものであってもよいし,複数の部材によりフード部22の基底部223を付勢するものであってもよい。
【0047】
上記構成のように,フード部22の立設部222が,複数の接合領域の21のそれぞれの周囲に位置するようにすることで,シートを溶着接合した後,フード部22によって両シートを接合領域21からより迅速に剥離させることができるため,シートの溶解した部分が接合領域21に付着したまま解離しなくなるという問題を解決できる。
【0048】
なお,第2の実施形態では,複数の接合領域21の対し,一のフード部22を設ける例を説明したが,その他,例えば,複数の接合領域21に対し,複数のフード部22を設けることとしてもよい。
【0049】
(3.スプライス装置の第3の実施形態)
図5は,本発明の第3の実施形態を示す断面図である。
図5に示されるように,本発明の第3の実施形態では,第1の接合部20a及び第2の接合部20bの両方に,フード部22a,22bと,フード部22a,22bを付勢する付勢部23a,23bが設けられている。すなわち,第1の接合部20aにおいては,第1の接合領域21aの周囲に第1のフード部22aが形成され,この第1のフード部22aが第1の付勢部23aによって第2の接合部20bと当接する方向に付勢されている。他方,第2の接合部20bにおいては,第1の接合部20aの第1の接合領域21aが当接する第2の接合領域21bの周囲に,第2のフード部22bが立設されており,この第2のフード部22bが第2の付勢部23bによって第1の接合部20aと当接する方向に付勢されている。このように,フード部及び付勢部は,第1の接合部20aの第1の接合領域の周囲だけでなく,第2の接合部20bの第2の接合領域の周囲に設けることとしてもよい。
【0050】
なお,本発明は,必ずしも,フード部及び付勢部が,パターンブロック27を有する第1の接合部20aに形成される形態に限定されるものではない。例えば,パターンブロック27を第2の接合部20bに設けた場合には,本発明は,パターンブロック27が設けられていない第1の接合部20aに,フード部及び付勢部を形成する形態であってもよい。すなわち,フード部及び付勢部は,第1の接合部20a及び第2の接合部20bの両方に設けられるものであってもよいし,いずれか一方のみに設けられるものであってもよい。
【0051】
(4.スプライス方法)
続いて,上記スプライス装置100により実行されるスプライス方法について説明する。なお,ここでは,説明の便宜上に,使用中の第1のシート10aに対して,未使用の第2のシート10bを接合する方法について説明する。
【0052】
第1の原反ロール1aに巻回されている第1のシート10aの残量が十分な状態において,第1のシート10aは,搬送手段5によって引き出され,テンション制御部4により張力が制御されながら走行し,スプライス装置100下流の製造ラインに送給されている。このとき,第1のカッタ30a,第2のカッタ30b,第1の接合部20a,及び第2の接合部20bは,それぞれ,第1のシート10a及び第2のシート10bと離間したまま,駆動が停止している。また,第2のシート10bは,その始端部が第2の接合部20bの保持部29により吸引保持されている。
【0053】
ここで,第1の原反ロール1aに巻回されている第1のシート10aの残量が所定量以下となったとき,残量検出部11は,その状態を検出する。残量検出部11により第1のシート10aの残量が所定量以下となったことが検出されると,搬送手段5の駆動ローラ50は,第1のシート10aの搬送を停止させる。
【0054】
第1のシート10aの搬送が停止すると,スプライス手段2によってスプライス工程が行われる。ここで,図2には,スプライス工程におけるスプライス手段2の動作例が示されている。
【0055】
図2(a)に示されるように,通常の状態において,第1の接合部20aのフード部22は付勢部23により付勢されており,フード部22の先端は,パターンブロック27の凸部24の先端よりも突出した位置にある。
【0056】
残量検出部11により第1のシート10aの残量が所定量以下となったことが検出されると,図2(b)に示されるように,第1の接合部20aと第2の接合部20bは,それぞれ,第1の往復駆動機構25aと第2の往復駆動機構25bにより,互いに近接する方向に移動する。そして,第1の往復駆動機構25aと第2の往復駆動機構25bの移動が開始し始めると,スプライス手段2に電力が供給される。例えばスプライス手段2として熱溶着装置が利用される場合,ヒートシール部の熱源が起動し,ヒートシール部が加熱される。また例えばスプライス手段として超音波溶着装置が利用される場合,ソニックホーン部の超音波振動が開始される。
【0057】
第1の接合部20aと第2の接合部20bの間の距離が近づくと,まず,第1の接合部20aのフード部22の先端が,第1のシート10aに接触する。そして,第1の接合部20aと第2の接合部20bの間の距離が近づくにつれて,フード部22は付勢部23を圧縮しながら相対的に退行し,第1の接合部20aのハウジング28が相対的に進行することとなって,最終的に,第1の接合部20aにおけるパターンブロック27の凸部24の先端と,第2の接合部20bの当接面との間に,第1及び第2のシート10a,10bが挟持される。これにより,第1及び第2のシート10a,10bに対して熱が付与され,両シート10a,10bが溶融して接合する。
【0058】
その後,図2(c)に示されるように,第1の接合部20a及び第2の接合部20bにより,接合に十分な時間(例えば1秒〜5秒)第1及び第2のシート10a,10bに対して熱を付与した後,第1の接合部20aと第2の接合部20bは,それぞれ,第1の往復駆動機構25aと第2の往復駆動機構25bにより,離間する方向に移動される。すると,まず,第1の接合部20aの付勢部23の圧縮が開放されて,再び,フード部22が第1のシート10aに当接する方向に進行する。このため,フード部22によって,パターンブロック27の凸部24の先端と第1のシート10aの接着が剥離される。
【0059】
その後,第1のシート10aと第2のシート10bの接合が完了すると,スプライス手段2の上流側に位置する切断手段3の第1のカッタ30aが,第1のカッタ駆動機構31aによって,第1のシート10aの当接する方向に移動し,第1のシート10aを切断する。これにより,第2のシート10bを第1のシート10aに継ぐ工程が完了する。
【0060】
第2のシート10bを第1のシート10aに継ぐ工程が完了すると,搬送手段5は第2の原反ロール1bから第2のシート10bを引き出し,第2のシート10bを走行させる。
第2のシート10bの始端部は,第1のシート10aに継がれており,第1のシート10aの残部と共に,装置下流側へ搬送される。このため,第1のシート10aの供給が終了された後に,連続して第2のシート10bが,製造ラインに供給されるようになる。
【0061】
以上のように,本発明は,第1のシート10aと第2のシート10bの接合に粘着テープを使用せず,両シート10a,10bを熱溶着や超音波溶着により接合するものであるため,接合されたシートの厚みが増すことを回避でき,搬送ローラの損傷を防ぐことができる。また,シートの接合に粘着テープを使用しないため,接合したシートが他のシートに接着するという事態を防止できる。また,粘着テープを必要な幅と長さに切断し接続用のシートの先端に取り付けるという作業が不要になる。さらに,粘着テープが異物として製造成果物に混入する恐れがなくなるため,良品出荷率を向上させることができる。
【0062】
また,例えば熱溶着によりシートを接合するとシートの溶解した部分が装置に付着したまま剥離しなくなる恐れがあるが,本発明では,シートに熱を付与して接合する接合領域21の周囲にフード部22を設けているため,フード部22によって,接合後のシートを装置から迅速に剥離させることができる。
【0063】
以上,本発明の好ましい実施形態について説明を行ったが,本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,上記実施形態から当業者が自明な範囲で適宜修正変更をおこなうことができる。
例えば,フード部22は,必ずしも,接合領域21の周囲全体を囲うように設けられている必要はなく,例えば,接合領域21の周囲において,フード部22の一部は間欠しているものであってもよい。すなわち,フード部22は,接合領域21の周囲において,全体的又は部分的に設けられていればよい。
また,例えば,フード部22は,接合領域21のシートの流れ方向に直交する辺に沿ってのみ設けられるものであってもよい。すなわち,フード部22は,接合領域21のシートの流れ方向の辺に沿って必ずしも設けられる必要はない。
【0064】
また,上記実施形態においては,第1の接合部20a及び第2の接合部20bが互いに近接する方向に移動する例を説明したが,第1の接合部20a及び第2の接合部20bは,いずれか一方が他方に近接するように移動することとしてもよい。すなわち,本発明は上記実施例には限定されず,結果として,第1の接合部20aと第2の接合部20bの間に,第1のシート10a及び第2のシート10bを挟持できる構成であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は,不織布やプラスチックなどのシート継ぎに用いられるスプライス装置及びスプライス方法に関するものである。このため,本発明は,シート部材を用いた製品の製造産業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0066】
1a 第1の原反ロール
1b 第2の原反ロール
2 スプライス手段
3 切断手段
4 テンション制御手段
5 搬送手段
6 ガイドローラ
10a 第1のシート
10b 第2のシート
11 残量検出部
12 ブラケット
20a 第1の接合部
20b 第2の接合部
21 接合領域
22 フード部
23 付勢部
24 凸部
25a 第1の往復駆動機構
25b 第2の往復駆動機構
27 パターンブロック
28 ハウジング
29 保持部
30a 第1のカッタ
30b 第2のカッタ
31a 第1のカッタ駆動機構
31b 第2のカッタ駆動機構
40 テンションローラ
41 回動アーム
50 駆動ローラ
51 ニップローラ
100 スプライス装置
図1
図2
図3
図4
図5