特許第5790545号(P5790545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790545
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】触媒診断装置及び触媒診断方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20150917BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20150917BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20150917BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   F01N3/20 C
   F01N3/08 A
   F01N3/24 E
   F01N3/24 R
   B01D53/94 280
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-48310(P2012-48310)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-181526(P2013-181526A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】恒川 希代香
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−016974(JP,A)
【文献】 特開2005−240729(JP,A)
【文献】 特開2003−083042(JP,A)
【文献】 特開2012−241594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/08
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に介装され、排気中の排気成分を吸着及び脱離する吸着成分と前記排気成分に対する酸化性能を有する触媒物質とが担持された酸化触媒と、
前記酸化触媒の上流及び下流の酸素濃度差を演算する演算手段と、
前記酸化触媒の温度が異なる状態で前記演算手段にて演算された複数の前記酸素濃度差を比較することで、前記酸化触媒の劣化判定を行う判定手段と、を備えた
ことを特徴とする、触媒診断装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記酸化触媒の温度が、前記吸着成分から前記排気成分が脱離を開始する脱離開始温度以上、かつ、前記酸化触媒で前記排気成分の酸化が開始される酸化開始温度以下の範囲内にあるときに、前記劣化判定を行う
ことを特徴とする、請求項1記載の触媒診断装置。
【請求項3】
前記判定手段は、複数の前記酸素濃度差の相違量が小さいほど、前記酸化触媒の劣化が進行したと判定する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の触媒診断装置。
【請求項4】
前記酸化触媒の温度が前記脱離開始温度未満であるときに、前記演算手段で演算された前記酸素濃度差が小さいほど、前記酸化触媒が劣化した可能性があると仮判定する仮判定手段を備える
ことを特徴とする、請求項3記載の触媒診断装置。
【請求項5】
前記判定手段が、前記仮判定手段による前記仮判定の結果に応じて、複数の前記酸素濃度差の相違量に対する前記酸化触媒の劣化の進行判定を変更する
ことを特徴とする、請求項4記載の触媒診断装置。
【請求項6】
前記酸化触媒の温度を取得する温度取得手段を備え、
前記判定手段が、前記温度取得手段で取得された前記温度に基づき、前記酸化触媒の温度が異なる状態を判別する
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の触媒診断装置。
【請求項7】
エンジンの排気通路に介装され、排気中の排気成分を吸着及び脱離する吸着成分と前記排気成分に対する酸化性能を有する触媒とが担持された酸化触媒の劣化判定を行う触媒診断方法であって、
前記酸化触媒の温度が第一温度であるときに、前記酸化触媒の上流及び下流の酸素濃度差を第一酸素濃度差として演算し、
前記酸化触媒の温度が前記第一温度よりも高い第二温度であるときに、前記酸化触媒の上流及び下流の酸素濃度差を第二酸素濃度差として演算し、
前記第一酸素濃度差と前記第二酸素濃度差とを比較することで前記酸化触媒の劣化判定を行う
ことを特徴とする、触媒診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気通路に介装される酸化触媒の劣化を診断する診断装置及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの排気通路には、排気に含まれる成分を除去するための触媒装置が介装されている。この触媒装置としては、担体に触媒成分(例えば貴金属や遷移金属等の触媒金属)が担持されて排気中の成分(例えば炭化水素や一酸化炭素等)に対して酸化性能を有する酸化触媒や、排気に含まれる粒子状物質を捕集して除去するフィルタ等が広く使用されている。このような触媒装置のうち酸化触媒は、担体に担持された触媒成分が活性する温度に昇温されることでその機能(酸化性能)を発揮するため、エンジンの排気温度が低く触媒温度が十分高くない状態では、酸化触媒による排気の浄化効果が十分に得られない。特に、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて排気温度が低いため、酸化触媒の温度が低い状態が長く続いてしまう。
【0003】
そのため、一般的に酸化触媒には、低温状態において排気中の炭化水素(HC)を吸着する成分(例えば、ゼオライトやアルミナ等)が含まれている(例えば、特許文献1)。このような成分を含んだ酸化触媒は、HCトラップ触媒や吸着酸化触媒等とも呼ばれ、触媒温度が低温であっても排気中のHCを吸着して排気を浄化することができる。また、触媒温度が高温になれば、吸着されたHCは酸化触媒から脱離され、触媒物質によって酸化されて除去される。
【0004】
このような酸化触媒を含む触媒装置は、使用により徐々に劣化して排気浄化性能が低下してしまうため、排気性能を常に適切に維持するためには触媒装置の劣化の度合いを正しく診断することが要求される。なお、酸化性能とHCの吸着脱離性能とを兼ね備える酸化触媒の劣化を診断する手法としては、例えば特許文献2,3等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−82003号公報
【特許文献2】特開2006−118358号公報
【特許文献3】特許第4466451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、酸化性能とHCの吸着脱離性能とを兼ね備えた酸化触媒の劣化を診断する場合は、触媒物質の劣化により酸化性能が低下しているのか、あるいは吸着成分の劣化により吸着脱離性能が低下しているのかを適切に判断することが必要である。しかしながら、吸着成分は触媒温度が低温の状態でHCを吸着するものであるため、上記の特許文献2のように、酸化触媒の温度変化をモニタする手法では、このような酸化触媒の劣化診断には対応することができない。また、上記の特許文献3のように、触媒の劣化を診断するための特別な制御を実施すれば劣化診断は可能であるが、より簡素に劣化の有無を判定したいという要望がある。
【0007】
本件はこのような課題に鑑み案出されたもので、酸化性能及び吸着脱離性能を備えた酸化触媒の劣化の有無を判定できるようにした、触媒診断装置及び触媒診断方法を提供することを目的とする。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ここで開示する触媒診断装置は、エンジンの排気通路に介装され、排気中の排気成分を吸着及び脱離する吸着成分と前記排気成分に対する酸化性能を有する触媒物質とが担持された酸化触媒と、前記酸化触媒の上流及び下流の酸素濃度差を演算する演算手段と、前記酸化触媒の温度が異なる状態で前記演算手段にて演算された複数の前記酸素濃度差を比較することで、前記酸化触媒の劣化判定を行う判定手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
(2)前記判定手段は、前記酸化触媒の温度が、前記吸着成分から前記排気成分が脱離を開始する脱離開始温度以上、かつ、前記酸化触媒で前記排気成分の酸化が開始される酸化開始温度以下の範囲内にあるときに、前記劣化判定を行うことが好ましい。
(3)また、前記判定手段は、複数の前記酸素濃度差の相違量が小さいほど、前記酸化触媒の劣化が進行したと判定することが好ましい。
【0010】
(4)このとき、前記酸化触媒の温度が前記脱離開始温度未満であるときに、前記演算手段で演算された前記酸素濃度差が小さいほど、前記酸化触媒が劣化した可能性があると仮判定する仮判定手段を備えることが好ましい。
(5)さらに、前記判定手段が、前記仮判定手段による前記仮判定の結果に応じて、複数の前記酸素濃度差の相違量に対する前記酸化触媒の劣化の進行判定を変更することが好ましい。
【0011】
(6)また、前記酸化触媒の温度を取得する温度取得手段を備え、前記判定手段が、前記温度取得手段で取得された前記温度に基づき、前記酸化触媒の温度が異なる状態を判別することが好ましい。なお、前記温度取得手段とは、例えば前記酸化触媒の触媒温度を検出するセンサであってもよく、前記酸化触媒の上流及び下流のうち少なくとも一方の排気温度を検出するセンサであってもよい。あるいは、前記エンジンの運転状態や環境条件(温度,湿度,気圧など)に基づいて、前記酸化触媒の温度を推定する電子制御装置であってもよい。
【0012】
(7)ここで開示する触媒診断方法は、エンジンの排気通路に介装され、排気中の排気成分を吸着及び脱離する吸着成分と前記排気成分に対する酸化性能を有する触媒とが担持された酸化触媒の劣化判定を行う触媒診断方法であって、前記酸化触媒の温度が第一温度であるときに、前記酸化触媒の上流及び下流の酸素濃度差を第一酸素濃度差として演算し、前記酸化触媒の温度が前記第一温度よりも高い第二温度であるときに、前記酸化触媒の上流及び下流の酸素濃度差を第二酸素濃度差として演算し、前記第一酸素濃度差と前記第二酸素濃度差とを比較することで前記酸化触媒の劣化判定を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
開示の触媒診断装置及び触媒診断方法によれば、触媒温度が異なる二つの状態での酸素濃度差を比較することにより、触媒温度に対する酸化性能又は吸着脱離性能の変化を観察することができる。これにより、酸化性能又は吸着脱離性能の低下に伴う酸化触媒の劣化の有無を判定することができ、酸化触媒の浄化性能を適切に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る触媒診断装置の構成を模式的に示す図である。
図2】本触媒診断装置により劣化判定される酸化触媒の温度と各性能との関係をモデル化したものであり、(a)は酸化触媒の温度に対するゼオライトのHC吸着率、(b)は酸化触媒の温度に対する触媒成分のHC酸化性能、(c)は図2(a)及び(b)から導かれる酸化触媒の温度に対する浄化効率を示す。
図3】本触媒診断装置で実施される劣化判定の内容を示すメインフローである。
図4図3のサブフローであり、仮劣化判定の内容を示すフローR1である。
図5図3のサブフローであり、酸化触媒のゼオライトの劣化を判定するためのフローであって、(a)がフローR2A、(b)がフローR2Bである。
図6図3のサブフローであり、酸化触媒の触媒貴金属の劣化を判定するためのフローR4である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0016】
[1.装置構成]
[1−1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態の触媒診断装置は、車両に搭載されたディーゼルエンジン(エンジン)10に適用される。図1には、エンジン10に設けられる複数のシリンダ11のうちの一つを示すが、他のシリンダ11も同様の構成である。エンジン10のシリンダ11内には、上下方向に往復摺動するピストン12が設けられる。ピストン12は、コネクティングロッド13を介してクランクシャフト14に接続される。ピストン12は、その頂面に燃焼室となるキャビティ12aが形成されている。
【0017】
シリンダ11上部のシリンダヘッド15には、燃料噴射用のインジェクタ16が設けられる。インジェクタ16は、その先端部がシリンダ11の筒内空間に突出して設けられ、シリンダ11内に直接燃料を噴射する。インジェクタ16から噴射される燃料の噴射方向は、ピストン12のキャビティ12aに向かう方向に設定される。また、インジェクタ16の基端部には燃料配管16aが接続され、この燃料配管16aから加圧された燃料がインジェクタ16に供給される。
【0018】
インジェクタ16からの燃料噴射量及び燃料噴射のタイミングは、後述するエンジンECU(エンジン制御装置)3で制御される。例えば、エンジンECU1からインジェクタ16に制御パルス信号(噴射信号)が伝達されると、その制御パルス信号の大きさ(駆動パルス幅)に対応する期間だけ、インジェクタ16の噴射口が開放される。これにより、燃料噴射量は制御パルス信号の大きさに応じた量となり、噴射タイミングは制御パルス信号が伝達された時刻に対応したものとなる。
【0019】
シリンダヘッド15には、シリンダ11の筒内空間と連通する吸気ポート17及び排気ポート18が設けられ、これらの各ポート17,18を開閉するための吸気弁19及び排気弁20が設けられる。吸気ポート17には、図示しないエアフローセンサやエアクリーナ,スロットルバルブ等を備えた吸気通路21が接続され、排気ポート18には排気通路22が接続される。
【0020】
また、このエンジン10の吸排気系には、排気圧を利用してシリンダ11内に吸気を過給するターボチャージャ(過給機)23が設けられる。ターボチャージャ23は、吸気通路21と排気通路22との両方にまたがって介装された過給機である。ターボチャージャ23は、排気通路22内の排気圧でタービン23aを回転させ、その回転力を利用してコンプレッサ(図示略)を駆動することにより、吸気通路21側の吸気を圧縮してエンジン10への過給を行う。
【0021】
排気通路22には、ターボチャージャ23のタービン23aよりも下流側に排気を浄化するための触媒装置30が介装される。触媒装置30は、円筒状のケーシング内に、例えば円柱状や角柱状といった柱状に形成された酸化触媒31が、ケーシングの内周面に対して図示しないサポート材を介して固定されて内蔵されたものである。
【0022】
本実施形態では、酸化触媒31は円柱状であって、円柱の軸方向(図1の上側から下側へ向かう方向)に排気を流通させるように形成されている場合について説明する。なお、この酸化触媒31の排気下流側に、排気中の粒子状物質を捕集して除去するフィルタや、排気中の窒素酸化物(NOx)を除去するためのNOxトラップ触媒等(いずれも図示略)がさらに設けられていてもよい。
【0023】
酸化触媒31の直上流には、酸化触媒31に流入する直前の排気の温度を検出する上流温度センサ24aと、酸素濃度を検出する上流酸素濃度センサ25aとが設けられる。また、酸化触媒31の直下流には、酸化触媒31から流出した直後の排気の温度を検出する下流温度センサ24bと、酸素濃度を検出する下流酸素濃度センサ25bとが設けられる。
【0024】
以下、上流温度センサ24aで検出された排気温度のことを入口温度TINと呼び、下流温度センサ24bで検出された排気温度のことを出口温度TOUTと呼ぶ。また、上流酸素濃度センサ25aで検出された酸素濃度のことを入口濃度CINと呼び、下流酸素濃度センサ25bで検出された酸素濃度のことを出口濃度COUTと呼ぶ。これらのセンサ24a,24b,25a及び25bで検出された入口温度TIN,出口温度TOUT,入口濃度CIN及び出口濃度COUTの各情報は、エンジンECU1に伝達される。
【0025】
エンジン10のクランクシャフト14の近傍には、エンジン回転速度Neを検出する回転速度センサ26が設けられる。また、車両1の任意の位置には、車速Vを検出する車速センサ27と、アクセルペダルの踏み込み操作量に対応するアクセル開度θAPSを検出するアクセル開度センサ(APS)28とが設けられる。これらのセンサ25〜28で検出されるエンジン回転速度Ne,車速V,アクセル開度θAPSの情報はエンジン10の運転状態を推定するために用いられるものであり、随時エンジンECU1に伝達される。
【0026】
車両の運転席近傍には、エンジンECU1の出力装置として機能するモニタ29が設けられる。モニタ29は、後述のエンジンECU1に設けられた報知制御部4によって制御され、酸化触媒31の劣化判定の結果をドライバに報知する必要があるときに、その判定結果が画面表示される。なお、モニタ29の位置はドライバが視認可能な位置であればよく、例えばナビゲーション装置の画面と併用されていてもよい。
【0027】
[1−2.酸化触媒]
酸化触媒31は、排気中の成分(排気成分)に対する酸化性能を持った触媒(DOC;Diesel Oxidation Catalyst)であり、金属やセラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持させたものである。ここでは、触媒物質として、排気中の成分に対して酸化性能を有する白金(Pt)やパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が用いられている場合について説明する。また、酸化触媒31で酸化される排気中の成分としては、一酸化窒素(NO)や炭化水素(HC),一酸化炭素(CO)等が挙げられる。例えば、NOが酸化触媒31で酸化されると二酸化窒素(NO2)が生成される。
【0028】
本触媒装置30に内蔵される酸化触媒31は、上記の触媒物質に加え、排気中のHCを吸着及び脱離するHC吸着成分(吸着成分)が担体に担持されて構成された吸着酸化触媒である。このHC吸着成分としては、例えばゼオライトやアルミナ、パラジウム等の多孔質体が用いられる。ここでは、HCの吸着率が高いゼオライトが担持されている場合について説明する。
【0029】
図2(a)〜(c)は、いずれも酸化触媒31を低温状態から昇温させた場合の担体温度(触媒温度)Tと各性能との関係をモデル化したものである。図2(a)は、担体温度に対するゼオライトのHC吸着率の変化を示すグラフであり、実線はゼオライトが劣化していない健全な状態、破線はゼオライトが劣化した状態をそれぞれ示す。図2(a)に示すように、ゼオライトは担体温度Tが低温のときに排気中のHCを多く吸着し、温度が上昇するにつれて吸着するHC量が低下すると共に、吸着したHCを脱離する。
【0030】
具体的には、担体温度Tが低温状態から第一所定温度T1に達するまでの温度範囲内(T<T1)では、HCの吸着のみが行われるためHC吸着率が最も高い。以下、この温度範囲(T<T1)を第一領域R1という。ゼオライトは、担体温度Tが第一所定温度T1以上になるとHCの吸着に加え、吸着したHCを脱離し始める。この第一所定温度T1はゼオライトからHCが脱離を開始する脱離開始温度である。また、ゼオライトは、担体温度Tがある温度Tに達するとHCを吸着せずに吸着したHCの脱離のみを行う。
【0031】
つまり、担体温度Tが第一所定温度T1以上かつ温度T未満の温度範囲(T1≦T<T)では、ゼオライトのHC吸着率は徐々に低下し(グラフは右下がりとなり)、担体温度Tがこの温度T以上(すなわち、T≦T)になると、HC吸着率は最も低い値に収束する。なお、この温度Tは、後述する第三所定温度T3と略同等かやや低い温度であり、図2(a)ではやや低い状態を例示しているが、ここでは第三所定温度T3と同じ温度として以下の説明をする。
【0032】
このような特性を有するゼオライトは、劣化が進行するほどHC吸着率が低下する。つまり、図2(a)に示すように、同じ担体温度Tであっても、劣化したゼオライト(破線のグラフ)の方が健全なゼオライト(実線のグラフ)よりも吸着できるHC量が少なくなる。これは、図2(a)中の白抜き矢印で示すように、担体温度Tが第一所定温度T1未満において(すなわち、第一領域R1において)、特に顕著な差として現れる。
【0033】
また、図2(b)は、酸化触媒31の担体温度に対する触媒貴金属のHC酸化性能の変化を示すグラフであり、実線は触媒貴金属が劣化していない健全な状態、破線は触媒貴金属が劣化した状態をそれぞれ示す。図2(b)に示すように、触媒貴金属は、担体温度Tが低温のときは排気中のHCを酸化(燃焼)することができず、担体温度Tがある程度上昇するとHCを燃焼し始め、高温になるほどHCを多く燃焼する。
【0034】
具体的には、担体温度Tが低温状態から第二所定温度T2に達するまでの温度範囲内(T<T2)では、触媒貴金属の酸化性能が発揮されず、HCは酸化(燃焼)されないため触媒貴金属のHC酸化性能は最も低い。担体温度Tが第二所定温度T2以上(T2≦T)になると、触媒貴金属が活性し始めてHCが徐々に酸化され、触媒貴金属のHC酸化性能は徐々に上昇する(グラフが右上がりとなる)。
【0035】
さらに担体温度Tが第三所定温度T3以上(T3≦T)になると、触媒貴金属は十分活性されて排気中のHCが多く燃焼されるため、この温度範囲ではHC酸化性能が最も高い。なお、第二所定温度T2は、酸化触媒31に担持された触媒貴金属においてHCの酸化が開始される酸化開始温度であり、第三所定温度T3は、触媒貴金属による酸化が飽和する(サチュレートされた)温度である。また、以下、第三所定温度T3以上の温度範囲(T3≦T)を第四領域R4という。
【0036】
このような特性を有する触媒貴金属は、劣化が進行するほどHC酸化性能が低下する。つまり、図2(b)に示すように、同じ担体温度Tであっても、劣化した触媒貴金属(破線のグラフ)の方が健全な触媒貴金属(実線のグラフ)よりも酸化できるHC量が少なくなる。これは、図2(b)中の黒矢印で示すように、担体温度Tが第三所定温度T3以上において(すなわち、第四領域R4において)、特に顕著な差として現れる。
【0037】
また、図2(c)は、図2(a)及び(b)から導かれる酸化触媒31の担体温度Tに対する浄化効率を示すグラフであり、実線はゼオライト及び触媒貴金属が共に劣化していない健全な状態、破線はゼオライトのみが劣化した状態、一点鎖線はゼオライト及び触媒貴金属が共に劣化した状態をそれぞれ示す。つまり、図2(c)の実線は、(a)の実線と(b)の実線とを併せたものであり、図2(c)の破線は、(a)の破線と(b)の実線とを併せたものであり、図2(c)の一点鎖線は、(a)の破線と(b)の破線とを併せたものである。
【0038】
図2(a)〜(c)に示すように、第一領域R1ではゼオライトは機能するが触媒貴金属は機能しないため、ゼオライトが排気中のHCを吸着することで排気を浄化する。つまり、第一領域R1の浄化効率は、図2(a)のゼオライトのHC吸着率に対応する。これにより、図2(c)に示す浄化効率は、第一領域R1では、ゼオライトが劣化した状態を示す破線及び一点鎖線のグラフの方が、ゼオライトが健全な状態を示す実線のグラフに比べて低くなる。
【0039】
また、担体温度が第一所定温度T1以上かつ第二所定温度T2未満(T1≦T<T2)の場合は、触媒貴金属によるHCの酸化は未だ開始されないため、この温度範囲においても酸化触媒31の浄化効率はゼオライトのHC吸着率に対応する。そのため、この温度範囲では、ゼオライトのHC吸着率の低下に伴い浄化効率は低下する。なお、このとき、ゼオライトが劣化した状態を示す破線及び一点鎖線のグラフは、実線のグラフに比べて、担体温度Tの上昇に伴う浄化効率の低下量(低下勾配)が小さい。
【0040】
これは、ゼオライトが劣化している場合は、担体温度Tが第一所定温度T1未満であっても、ゼオライトがHCをあまり吸着できないためである。つまり、ゼオライトが劣化している場合は第一所定温度T1以上に昇温されても、もともと浄化効率が低いため、浄化効率の低下量は小さく、担体温度Tが変化しても、浄化効率の大きな変化は見られない。これに対して、ゼオライトが健全な場合は、実線で示すように、担体温度の上昇に伴い浄化効率が大きく低下する。以下、この温度範囲(すなわちT1≦T<T2)を第二領域R2という。
【0041】
また、担体温度Tが第二所定温度T2以上かつ第三所定温度T3未満(T2≦T<T3)の場合は、ゼオライトのHC吸着率は低下し続け収束に向かう一方、触媒貴金属のHC酸化性能が第二所定温度T2から上昇し始め増大する。そのため、この温度範囲では、ゼオライトの劣化によるHC吸着率の低下よりも、触媒貴金属の劣化によるHC酸化性能の向上の方が酸化触媒全体の浄化効率に与える影響が大きい。
【0042】
つまり、この温度範囲(T2≦T<T3)における酸化触媒の浄化効率は、ゼオライト及び触媒貴金属の劣化にかかわらず温度上昇に伴って増大する。このうち特に、触媒貴金属が健全な状態を示す実線及び破線のグラフの方が、触媒貴金属が劣化した状態を示す一点鎖線のグラフよりも傾き(浄化効率の増大量)が大きい。以下、この温度範囲(すなわちT2≦T<T3)を第三領域R3という。
【0043】
また、第四領域R4では、ゼオライトはHCを脱離するのみであってHCを吸着しないため、触媒貴金属によって排気中のHCが酸化(燃焼)されることで排気が浄化される。つまり、第四領域R4の浄化効率は、図2(b)の触媒貴金属のHC酸化性能に対応する。これにより、図2(c)に示す浄化効率は、第四領域R4では、触媒貴金属が劣化した状態を示す一点鎖線のグラフの方が、触媒貴金属が健全な状態を示す実線及び破線のグラフに比べて低くなる。
【0044】
[2.制御構成]
エンジンECU1は、いずれも各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUでの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート、制御時間をカウントするタイマ等を備えたコンピュータである。エンジンECU1の入力側には、上流温度センサ24a,下流温度センサ24b,上流酸素濃度センサ25a,下流酸素濃度センサ25b,回転速度センサ26,車速センサ27及びアクセル開度センサ28が接続される。
【0045】
一方、エンジンECU1の出力側には、エンジン10及びモニタ29が接続され、エンジン10の各シリンダ11に供給される空気量,燃料噴射量,各シリンダ11の点火時期等及びモニタ表示が制御される。以下、エンジンECU1で実施される制御のうち、酸化触媒31の劣化判定について説明する。なお、ここではエンジンECU1に劣化判定を実施するための機能要素が設けられており、エンジンECU1において劣化判定が実施される例を説明するが、車両に搭載される電子制御装置のうちいずれかに設けられていればよい。
【0046】
エンジンECU1は、酸化触媒31の劣化判定の準備計算をする演算部2としての機能要素と、酸化触媒31の劣化判定を実施する劣化判定部3としての機能要素と、劣化判定部3による判定結果をドライバに対して報知する報知制御部4としての機能要素とを有する。
また、演算部2には、酸化触媒31の担体温度Tを演算する温度演算部2aと、酸化触媒31の上流及び下流の酸素濃度差ΔCを演算する濃度差演算部2bとが機能要素として設けられている。
【0047】
温度演算部(温度取得手段)2aは、上流温度センサ24a及び下流温度センサ24bで検出された入口温度TIN及び出口温度TOUTに基づいて、酸化触媒31の担体温度Tを演算するものである。この演算手法としては、例えば、排気温度と酸化触媒31の担体温度Tとの関係を示すマップを予め記憶しておき、入口温度TIN及び出口温度TOUTから排気温度の平均値TAVEを演算して、この平均値TAVEとマップとから担体温度Tを演算する。ここで演算された担体温度Tの情報は、劣化判定部3に伝達される。
【0048】
濃度差演算部2bは、上流酸素濃度センサ25a及び下流酸素濃度センサ25bで検出された入口濃度CIN及び出口濃度COUTに基づいて、酸化触媒31の上流及び下流の酸素濃度差ΔCを演算するものである。ここでは酸素濃度差ΔCは、以下の式(1)により演算される。
ΔC=CIN−COUT ・・・(1)
ここで演算された酸素濃度差ΔCの情報は、劣化判定部3に伝達される。
【0049】
劣化判定部3は、酸化触媒31が劣化しているか否かを判定するものである。劣化判定部3には、酸化触媒31に担持されたゼオライトの仮劣化判定を実施する仮判定部3aと、ゼオライトの劣化判定を実施する第一判定部3bと、触媒貴金属の劣化判定を実施する第二判定部3cとが、機能要素して設けられる。
【0050】
仮判定部(仮判定手段)3aは、担体温度Tが第一領域R1(すなわちT<T1)である場合に、第一判定部3bによる劣化判定の前に、仮の劣化判定を実施するものである。具体的には、仮判定部3aは、担体温度Tが第一領域R1である場合に、その担体温度Tでの酸素濃度差ΔCを取得し、この酸素濃度差ΔCと第一所定値C1とを比較する。仮判定部3aは、酸素濃度差ΔCが第一所定値C1以上のときにゼオライトは健全である(劣化していない)と仮判定する。一方、仮判定部3aは、酸素濃度差ΔCが第一所定値C1未満のときにゼオライトは劣化している可能性があると判定する。
【0051】
ゼオライトの仮劣化判定において、酸素濃度差ΔCを用いる理由について説明する。酸化触媒31に担持されたゼオライトは、劣化するほどHC吸着率が低下するめ、ゼオライトが劣化するほど酸化触媒31の下流側の排気中に含まれるHC量は減少しない(HC量はあまり減らない)。そのため、ゼオライトが劣化するほど、酸化触媒31の上流側の酸素濃度と下流側の酸素濃度との差(酸素濃度差)ΔCが相対的に小さくなる。つまり、酸素濃度差ΔCの大きさをある閾値(これを第一所定値C1とする)と比較することで、ゼオライトの仮劣化を判定することができる。
【0052】
このように、酸化触媒31の上下流の酸素濃度差ΔCを用いることでHC量の変化を観察することは、ゼオライトの仮劣化判定に限られず、ゼオライトの劣化判定や後述する触媒貴金属の劣化判定においても同様に行うことができる。つまり、酸化触媒31に担持されたゼオライトや触媒貴金属が劣化するほど、排気中のHC吸着率やHC酸化性能は低くなるため、酸素濃度差ΔCは、ゼオライトや触媒貴金属が劣化するほど相対的に低くなる。
【0053】
したがって、酸化触媒31の劣化判定には、酸化触媒31の上流及び下流の酸素濃度差ΔCを用いることができる。なお、図2(c)の縦軸の浄化効率は、酸素濃度差ΔCに対応する。これは、酸化触媒31の浄化効率が高いということは排気中のHCを効率的に除去できることを意味し、HCの減少量が大きいということは排気中の酸素濃度差ΔCは相対的に高くなるからである。
【0054】
ただし、ゼオライトの仮劣化判定において、すでにゼオライトに多くのHCが吸着している場合は、ゼオライトの劣化にかかわらず(ゼオライトが劣化していなくても)HC吸着率が低下する。そのため、担体温度Tが第一領域R1である場合に酸素濃度差ΔCと第一所定値C1とを比較した結果、酸素濃度差ΔCが第一所定値C1未満のときは、ゼオライトは劣化している可能性があると仮判定する。仮判定部3aの判定結果は、第一判定部3bに伝達される。
【0055】
第一判定部(判定手段)3bは、担体温度Tが第二領域R2(すなわちT1≦T<T2)である場合に、ゼオライトが本当に劣化しているか否かを判定するものである。具体的には、第一判定部3bは、担体温度Tが第二領域R2である場合に、酸化触媒31の担体温度Tが異なる状態での酸素濃度差ΔCをそれぞれ濃度差演算部2bから取得し、二つの酸素濃度差ΔCの相違量dCを第二所定値(所定値)C2と比較する。第一判定部3bは、二つの酸素濃度差ΔCの相違量dCが第二所定値C2以上のときにゼオライトは健全である(劣化していない)と判定し、相違量dCが第二所定値C2未満のときにゼオライトは劣化していると判定する。
【0056】
これは、上記したように担体温度Tが第二領域R2である場合、温度上昇に伴う浄化効率の低下量(すなわち、酸素濃度差ΔCの低下量)はゼオライトが劣化しているほど小さくなるためである。つまり、ゼオライトが健全であれば浄化効率の低下量は大きく、ゼオライトが劣化していれば低下量は小さいため、この低下量をある閾値(これを第二所定値C2とする)と比較し、第二所定値C2に満たない場合は劣化していると判定する。
【0057】
また、第一判定部3bは、仮判定部3aからゼオライトが劣化している可能性があるという判定結果を受けた場合は、ゼオライトが劣化しているか否かを判定する閾値としての第二所定値C2を変更(補正)し、補正第二所定値C2′とする(すなわち、C2<C2′)。なお、ここでは、仮劣化判定において劣化の可能性があると判定された場合に、補正第二所定値C2′を第二所定値C2よりも大きく変更する。これにより、劣化の進行度合いが比較的小さいときも「劣化している」という判定に含めることができ、第一判定部3bでの劣化か否かの判定基準をより厳しくし、判定精度を向上させることができる。第一判定部3bの判定結果は、報知制御部4に伝達される。
【0058】
第二判定部3cは、担体温度Tが第四領域R4(すなわちT3≦T)である場合に、触媒貴金属が劣化しているか否かを判定するものである。具体的には、第二判定部3cは、担体温度Tが第四領域R4である場合に、その担体温度Tでの酸素濃度差ΔCを取得し、この酸素濃度差ΔCと第三所定値C3とを比較する。第二判定部3cは、酸素濃度差ΔCが第三所定値C3以上のときに触媒貴金属は健全である(劣化していない)と判定し、酸素濃度差ΔCが第三所定値C3未満のときに触媒貴金属は劣化していると判定する。
【0059】
これは、上記したように、第四領域R4での浄化効率(すなわち、酸素濃度差ΔC)は触媒貴金属の状態に依存し、触媒貴金属が健全であれば浄化効率は高く、触媒貴金属が劣化していれば浄化効率は低くなるからである。したがって、第四領域R4では、同じ担体温度Tにおける酸素濃度差ΔCをある閾値(これを第三所定値C3とする)と比較し、第三所定値C3に満たない場合は劣化していると判定する。第二判定部3cの判定結果は、報知制御部4に伝達される。
【0060】
なお、第二判定部3cが第三領域R3(すなわちT2≦T<T3)において触媒貴金属の劣化判定を実施しない理由は、この第三領域R3では、ゼオライトのHC吸着率と触媒貴金属のHC酸化性能とが個々に変化するため、他の領域R1,R2及びR4のように酸素濃度差ΔCからゼオライト及び触媒貴金属のいずれが劣化しているのかを判断するのは困難なためである。また、第二判定部3cによる劣化判定が終了される条件(終了条件)としては、例えば担体温度Tが第三所定温度T3よりも高い所定温度に達することや、劣化判定を所定回数実行したこと等がある。
【0061】
報知制御部4は、第一判定部3b及び第二判定部3cの判定結果を受け、これらの判定結果をドライバに報知する必要があるか否かを判断し、必要があると判断したときにモニタ29に報知内容を画像表示するものである。報知制御部4は、第一判定部3bによりゼオライトが劣化していると判定された場合、第二判定部3cにより触媒貴金属が劣化していると判定された場合、及び、第一判定部3b及び第二判定部3cによりゼオライト及び触媒貴金属が劣化していると判定された場合に、報知する必要があると判定する。
【0062】
[3.フローチャート]
次に、図3図6を用いてエンジンECU1で実行される劣化判定の判定手順の例を説明する。図3は、酸化触媒31の担体温度Tに応じて実行するサブフローを選択するメインフローであり、図4図6図3のサブフローである。これらのフローチャートに示される一連の制御は、予め設定された所定周期で繰り返し実施される。
【0063】
[3−1.第一領域R1
図3に示すメインフローは、エンジン10の始動が開始されると実行されるものであり、特に冷態始動時であればゼオライトについての劣化判定が可能である。
ステップS10では、温度演算部2aで酸化触媒31の担体温度Tが演算される。ステップS20では、この担体温度Tが第一所定温度T1未満であるか否かが判定される。このステップでは、担体温度Tが第一領域R1であるか否かが判断される。担体温度Tが第一所定温度T1未満であれば、図4に示すフローR1へ進む(ステップS30)。
【0064】
図4のフローR1は、担体温度Tが第一領域R1である場合に実行される仮劣化判定の内容を例示したものである。ステップT10では、ステップS10で取得された担体温度Tにおける酸素濃度差ΔCを濃度差演算部2bで演算して取得する。ステップT20では、この酸素濃度差ΔCが第一所定値C1未満か否かが判定される。このステップでは、酸化触媒31に担持されたゼオライトが劣化している可能性があるか否かが判断される。
【0065】
酸素濃度差ΔCが第一所定値C1未満のときはステップT30へ進み、第一所定値C1以上のときはステップT35へ進む。ステップT30では、ステップT20からYESルートに進んだ回数がカウントされ、ステップT35では、ステップT20からNOルートに進んだ回数がカウントされる。そして、ステップT40では、ステップT30のカウントXがステップT35のカウントY以上であるか否かが判定される。
【0066】
ここで、これらステップT30,T35,T40について説明すると、担体温度Tが第一所定温度T1未満の場合はフローR1が繰り返し実行され、その都度ステップT20の判定が実行される。そのため、これらのステップT30,T35,T40において、「ゼオライトが劣化している可能性がある(ステップT20のYESルート)」と判定された回数が「ゼオライトは健全である(ステップT20のNOルート)」と判定された回数以上であれば、「ゼオライトは劣化している可能性がある」と判定している。
【0067】
ステップT40において、ゼオライトが劣化している可能性があると判定されると、ステップT50において、「ゼオライト仮劣化」と判定されてフラグF1がF1=1に設定される。一方、ステップT40においてゼオライトは健全であると判定されると、ステップT55においてフラグF1がF1=0に設定される。つまり、フラグF1は、ゼオライトが劣化している可能性があるか否かをチェックするための変数である。ステップT50又はT55においてフラグF1が設定されたら、メインフローへリターンされる(ステップT60)。そして、担体温度Tが第一所定温度T1以上になるまで、フローR1が繰り返し実行される。
【0068】
[3−2.第二領域R2
図3のメインフローにおいて、担体温度Tが第一所定温度T1以上になったら、ステップS20のNOルートからステップS40へ進む。ここでは、フラグG1がG1=0であるか否かが判定される。このフラグG1は、フローR2Aが実行されたか否かをチェックするための変数である。フラグG1=0はフローR2Aが実行されていないことを意味し、フラグG1=1はフローR2Aが実行されたことを意味する。メインフローが実行されてから最初にステップS40へ進んだときは、フラグG1はG1=0に設定されており、ステップS50へ進む。ステップS50では、フローR1で用いたカウント(変数)X,Yがゼロリセットされ、フローR2Aへ進む(ステップS60)。
【0069】
図5(a)のフローR2A及び図5(b)のフローR2Bは、担体温度Tが第二領域R2である場合に実行されるゼオライトの劣化判定の内容を例示したものである。図5(a)に示すように、ステップV10では、この制御周期のステップS10で取得した担体温度TをT2′(第一温度)として記憶する。続くステップV20では、担体温度TがT2′のときの酸素濃度差ΔCを取得し、ステップV30において取得した酸素濃度差ΔCをΔC2′(第一酸素濃度差)として記憶する。次いで、ステップV40ではフラグG1がG1=1に設定され、ステップV50においてタイマaによる計測が開始される。そして、ステップV60において、メインフローへリターンされる。
【0070】
メインフローのステップS40では、前の制御周期でフラグG1がG1=1に設定されているため、NOルートからステップS70へ進む。つまり、フローR2Aは一度だけ(フラグG1がG1=0のときだけ)実行される。ステップS70では、タイマaの計測時間が所定時間t1以上経過したか否かが判定され、所定時間t1以上になるまでメインフローのステップS10,S20,S40及びS70が繰り返し実行される。
【0071】
タイマaの計測時間が所定時間t1以上になったら、ステップS80において担体温度TがフローR2AのステップV10で記憶した温度T2′以上かつ第二所定温度T2未満であるか否かが判定される。このステップでは、担体温度Tが第二領域R2であるか否かが判断される。担体温度Tが第二領域R2であれば、図5(b)のフローR2Bへ進む(ステップS90)。なお、所定時間t1は、一般的なエンジン10の冷態始動時において、酸化触媒31の担体温度Tが第二所定温度T2に達すると考えられる時間よりも短い時間に予め設定されている。
【0072】
図5(b)に示すように、ステップW10では、この制御周期のステップS10で取得した担体温度T(第二温度)における酸素濃度差ΔCが取得され、ステップW20において、この酸素濃度差ΔCがΔC2(第二酸素濃度差)として記憶される。続くステップW30では、ステップV30で記憶した酸素濃度差ΔC2′から前のステップW20で記憶した酸素濃度差ΔC2を減算して、酸化触媒31の担体温度Tが異なる状態での酸素濃度差ΔCの相違量dCを算出する。
【0073】
ステップW40では、フローR1においてゼオライトが劣化している可能性があると判定されたか否かについて、フラグF1によって判定する。ゼオライトが健全である(フラグF1=0)と判定されていた場合は、ステップW50において第二所定値C2をそのままの値(第二所定値C2)として設定する。一方、ゼオライトが劣化している可能性がある(フラグF1=1)と判定されていた場合は、ステップW55において第二所定値C2を補正第二所定値C2′として設定する。
【0074】
ステップW60では、ステップW30で算出した相違量dCがステップW50又はW55で設定した第二所定値C2未満であるか否かが判定される。このステップでは、ゼオライトが本当に劣化しているのか否かが判断される。酸素濃度差ΔCが第二所定値C2未満のときはステップW70へ進み、第二所定値C2以上のときはステップW75へ進む。ステップW70では、ステップW60からYESルートに進んだ回数がカウントされ、ステップW75では、ステップW60からNOルートに進んだ回数がカウントされる。そして、ステップW80では、ステップW70のカウントXがステップW75のカウントY以上であるか否かが判定される。これらステップW70,W75,W80は、フローR1のステップT30,T35,T40と同様であるため、説明は省略する。
【0075】
ステップW80において、ゼオライトが劣化していると判定されると(すなわち、X≧Y)、ステップW90において、「ゼオライト劣化」と判定されてフラグF2がF2=1に設定される。一方、ステップW80においてゼオライトは健全であると判定されると(すなわち、X<Y)、ステップW95においてフラグF2がF2=0に設定される。つまり、フラグF2は、ゼオライトが劣化しているか否かをチェックするための変数である。ステップW90又はW95においてフラグF2が設定されたら、メインフローへリターンされる(ステップW100)。そして、担体温度Tが第二所定温度T2以上になるまで、フローR2Bが繰り返し実行される。
【0076】
[3−3.第三領域R3
図3のメインフローにおいて、担体温度Tが第二所定温度T2以上になったら、ステップS80のNOルートからステップS100へ進む。ステップS100では、担体温度Tが第二所定温度T2以上かつ第三所定温度T3未満であるか否かが判定される。このステップでは、担体温度Tが第三領域R3であるか否かが判定される。担体温度Tが第三領域R3の場合は、酸化触媒31の劣化判定を実施することができないため、メインフローがリターンされる。そして、担体温度Tが第三所定温度T3以上になるまで、メインフローのステップS10,S20,S40,S70,S80及びS100が繰り返し実行される。
【0077】
[3−4.第四領域R4
図3のメインフローにおいて、担体温度Tが第三所定温度T3以上になったら、ステップS110においてフラグG2がG2=0であるか否かが判定される。このフラグG2は、タイマbの計測時間が所定時間t2を経過したか否かをチェックするための変数である。フラグG2=0は所定時間t2を経過していないことを意味し、フラグG2=1は所定時間t2が経過したことを意味する。メインフローが実行されてから最初にステップS110へ進んだときは、フラグG2はG2=0に設定され、続くステップS120では、タイマbの計測が開始される。そして、ステップS130ではフローR2Bで用いたカウント(変数)X,Yがゼロリセットされ、次いでステップS140ではフラグG2がG2=1に設定される。
【0078】
ステップS150では、タイマbの計測時間が所定時間t2以上経過したか否かが判定され、所定時間t2未満であればメインフローがリターンされる。次制御周期では、ステップS110においてNOルートへ進むため、ステップS150の判定でYESルートに進むまでメインフローのS10,S20,S40,S70,S80,S100,S110及びS150が繰り返し実行される。なお、所定時間t2は、担体温度Tをより高めて、浄化効率を一定の状態にするための待ち時間であり、予め設定されている。
【0079】
タイマbの計測時間が所定時間t2以上になると、ステップS150のYESルートから、図6に示すフローR4へ進む(ステップS160)。図6のフローR4は、担体温度Tが第四領域R4である場合に実行される触媒貴金属の劣化判定の内容を例示するものである。図6に示すように、ステップX10では、この制御周期のステップS10で取得された担体温度Tにおける酸素濃度差ΔCを取得する。続くステップX20では、この酸素濃度差ΔCが第三所定値C3未満であるか否かが判定される。このステップでは、酸化触媒31に担持された触媒貴金属が劣化しているか否かが判断される。
【0080】
酸素濃度差ΔCが第三所定値C3未満のときはステップX30へ進み、第三所定値C3以上のときはステップX35へ進む。ステップX30では、ステップX20からYESルートに進んだ回数がカウントされ、ステップX35では、ステップX20からNOルートに進んだ回数がカウントされる。そして、ステップX40では、ステップX30のカウントXがステップX35のカウントY以上であるか否かが判定される。つまり、これらステップX30,X35,X40は、フローR1のステップT30,T35,T40と同様である。
【0081】
ステップX40において、触媒貴金属が劣化していると判定されると(すなわち、X≧Y)、ステップX50において、「触媒貴金属劣化」と判定されてフラグF3がF3=1に設定される。一方、ステップX40においてゼオライトは健全であると判定されると(すなわち、X<Y)、ステップX55においてフラグF3がF3=0に設定される。つまり、フラグF3は、触媒貴金属が劣化しているか否かをチェックするための変数である。
【0082】
ステップX50又はX55においてフラグF3が設定されたら、ステップX60において劣化判定の終了条件が成立したか否かが判定される。ここでは、終了条件は担体温度Tが第三所定温度T3よりも高い所定温度に達することである。終了条件が不成立のときは、メインフローへリターンされ(ステップX70)、フローR4が繰り返し実行される。一方、終了条件が成立したら、ステップX80へ進んでフラグF2がF2=1又はフラグF3がF3=1であるか否かが判定される。
【0083】
フラグF2又はF3の少なくとも一方が1に設定されていれば、ステップX90へ進み、ドライバに対して酸化触媒31が劣化していることを報知すると共に、ゼオライト及び触媒貴金属のいずれが劣化しているのか、又は双方が劣化していることを報知する。ステップX80の判定でNOルートへ進んだ場合又はステップX90において報知が終了した場合は、ステップX100において判定結果を示すフラグF1,F2,F3をゼロリセットし、ステップX110において劣化判定で用いた変数X,Y及びフラグG1及びG2をゼロリセットし、最後にタイマa,bを停止してリセットして、劣化判定を終了する。
【0084】
[4.効果]
したがって、本実施形態に係る触媒診断装置によれば、担体温度Tが異なる二つの状態での酸素濃度差ΔCを比較することにより、担体温度Tに対する触媒貴金属による酸化性能又はゼオライトによる吸着脱離性能の変化を観察することができる。これにより、酸化性能又は吸着脱離性能の低下に伴う酸化触媒31の劣化の有無を判定することができ、酸化触媒31の浄化性能を適切に診断することができる。
【0085】
また、劣化判定を実施する温度範囲を定めることで、判定精度を向上させることができ、酸化触媒31の浄化性能を適切に診断することができる。特に、酸化触媒31の劣化には、ゼオライトの劣化と触媒貴金属の劣化とがあるが、上記の温度範囲の設定により触媒貴金属の劣化の影響を取り除いた判定を実施することができ、ゼオライトの劣化判定性を高めることができる。つまり、酸化触媒31の劣化の要因(ゼオライトが劣化しているのか、触媒貴金属が劣化しているのか、或いは双方が劣化しているのか)を区別することができる。
【0086】
また、ゼオライトでの吸着及び脱離反応が弱まると、温度上昇に対する酸素濃度差ΔCの相違量dC、すなわち図2(a)のグラフの勾配が小さくなる。このような特性を利用することで、酸化触媒31のゼオライトが劣化したか否かを精度よく判定することができ、酸化触媒31の浄化性能を適切に診断することができる。
【0087】
また、判定と仮判定とを併用することで、酸化触媒31のゼオライトが劣化したか否かを精度よく判定することができ、酸化触媒31の浄化性能を適切に診断することができる。
また、仮判定の結果に応じて判定閾値である第二所定値C2を変更することで、酸化触媒31のゼオライトが劣化したか否かを精度よく判定することができ、酸化触媒31の浄化性能を適切に診断することができる。
【0088】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上記実施形態では、第一判定部3bが、第二領域R2内の異なる二つの担体温度Tにおける酸素濃度差ΔCの相違量dCと第二所定値C2とを比較してゼオライトの劣化判定を実施しているが、異なる二つの担体温度Tは、第二領域R2内でなくてもよい。つまり、第一領域R1内の担体温度Tにおける酸素濃度差ΔC(=ΔC2′)と第二領域R2内の担体温度Tにおける酸素濃度差ΔC(=ΔC2)との相違量dC(=ΔC2′−ΔC2)を第二所定値C2と比較して、ゼオライトの劣化判定を実施してもよい。この場合であっても、上記と同様精度よくゼオライトの劣化判定を実施することができる。
【0089】
また、第一判定部3bは、ゼオライトの劣化判定において、閾値としての第二所定値C2を設けず、酸化触媒31の担体温度Tが異なるときに取得された酸素濃度差ΔCの相違量dCが小さいほどゼオライトの劣化が進行していると判定してもよい。つまり、ゼオライトが劣化しているか否かの判定だけでなく、ゼオライトの劣化度合いを判定するように構成されていてもよい。このような構成により、ゼオライトの劣化の進行度合いを定量的に判定することができ、酸化触媒31の浄化性能を精度よく把握することができる。
【0090】
上記実施形態では、仮判定部3aは、酸素濃度差ΔCが第一所定値C1未満であればゼオライトは劣化している可能性があると判定しているが、酸素濃度差ΔCが小さいほどゼオライトが劣化した可能性がある(可能性が高い)と判定してもよい。つまり、ゼオライトが劣化している可能性があるか否かの判定だけでなく、ゼオライトの仮の劣化度合いを判定するように構成してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、酸化触媒31の上流側にも上流温度センサ24a及び上流酸素濃度センサ25aが配置されているが、上流側のセンサを省略してもよい。この場合、温度演算部2aにより下流温度センサ24bで検出された出口温度TOUTに基づいて、酸化触媒31の担体温度Tを演算するように構成すればよい。この演算手法としては、例えば予め排気流量と出口温度TOUTと担体温度Tとの関係をマップ化しておいてもよく、排気流量と出口温度TOUTとから担体温度Tを算出する演算式を予め記憶しておいてもよい。
【0092】
また、濃度差演算部2bが、エンジン10の運転状態に基づいて酸化触媒31に流入する排気の酸素濃度(排気酸素濃度)を演算し、下流酸素濃度センサ25bで検出された出口濃度COUTとの差ΔCを求めてもよい。このような構成により、上流側のセンサを省略することが可能なため、構成を簡素にすることができる。また、一般的な車両の排気系には、触媒の下流側に温度センサ及び酸素濃度センサが設けられているため、これらを用いて劣化判定を行うことで、新たなセンサを設ける必要がなく、コスト増を抑制することができる。なお、ここでいう酸素濃度センサは、空燃比が理論空燃比よりも高いか低いかを検出するO2センサであってもよく、より高精度な空燃比センサ(全領域空燃比センサ)であってもよい。また、酸素濃度センサ25a,25bの代わりに、空燃比センサを用いてもよい。
【0093】
また、エンジン10の運転状態に基づいて酸化触媒31に流入する排気温度TINを推定し、この排気温度TINから酸化触媒31の担体温度Tを演算してもよい。また、エンジン10の運転状態に基づいて担体温度Tを直接演算する構成としてもよい。この場合、排気温度を検出する温度センサは不要である。なお、温度センサが設けられていない場合であっても、例えばエンジン10が始動してからの経過時間が1分のときの酸素濃度差と5分のときの酸素濃度差とを取得して比較することによっても、上記したものと同様の劣化判定が可能である。これは、エンジン10の始動後の温度は通常同じように上昇するものと考え、予め試験,実験を通して第一所定温度T1程度になる時間と、第二領域R2内の温度になる時間などを求めておけばよい。
【0094】
また、第一判定部3bが、仮判定部3aからゼオライトが劣化している可能性があるという判定結果を受けた場合に、補正第二所定値C2′を第二所定値C2よりも小さく変更してもよい。これにより、劣化の進行度合いがある程度大きくならないと「劣化している」という判定には含まれないことになるため、仮判定部3aの判定結果を尊重し、第一判定部3bでの劣化か否かの判定基準を甘めに設定することができる。
【0095】
また、上記したフローR1において、ステップT30,T35,T40は必須ではなく、例えばフローR1を一度だけ実行する場合はこれらのステップは不要である。また、フローR1を繰り返し実行する場合でも、判定結果を逐次上書きしていくような構成とする場合も不要である。また、フローR1のステップT40において、カウントXとカウントYとを比較するのではなく、カウントXが所定の回数以上になったらゼオライトは劣化している可能性があると判定してもよい。この場合はステップT40のみ変更し、他のステップは上記したフローR1と同様でよい。また、フローR2B及びフローR4においても同様である。
【0096】
また、メインフローにおいて、ステップS150の待ち時間である所定時間t2をゼロとしてもよい。言い換えると、ステップS150を省略し、担体温度Tが第三所定温度T3以上になったら(ステップS100からYESルートに進んだら)、フローR4へ進む構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、図2(a)に示すゼオライトのHC吸着率の説明において、温度Txと第三所定温度T3とを略同じ温度として説明したが、例えば温度Txが図2(a)に示すように第三所定温度T3よりもやや低い温度である場合は、担体温度TがTx以上であれば触媒貴金属の劣化判定が可能となる。そのため、この場合は、メインフローのステップS100の温度T3に代えてTxとすることができる。
【0097】
また、上記実施形態では触媒の劣化判定を実施するための演算部2,判定部3及び報知制御4がいずれもエンジンECU1の機能要素として設けられているが、車両に搭載される電子制御装置のうちのいずれかに設けられていればよい。また、ドライバに対する報知手法は上記したものに限られず、例えばスピーカを設けて音声により報知してもよい。なお、報知手段を省略して、判定結果をエンジンECU1の内部の記憶装置に記録するような制御構成としてもよい。つまり、車両の定期点検時にエンジンECU1から抽出されるダイアグ情報の中に、触媒の劣化判定に係る情報を埋め込んでおいてもよい。このような制御構成により、車両の整備性を高めることができる。
【0098】
なお、本劣化診断装置は、自動車やトラック等の様々な車両に搭載された酸化触媒に適用可能であり、さらに車両に搭載されるエンジン用の酸化触媒に限られない。また、ディーゼルエンジンに限られず、ガソリンエンジン用の酸化触媒にも適用可能である。また、エンジン10の具体的な構成は特に限定されない。
【符号の説明】
【0099】
1 エンジンECU(電子制御装置)
2 演算部
2a 温度演算部(温度取得手段)
2b 濃度差演算部(演算手段)
3 劣化判定部
3a 仮判定部(仮判定手段)
3b 第一判定部(判定手段)
3c 第二判定部
4 報知制御部
10 ディーゼルエンジン(エンジン)
22 排気通路
24a 上流温度センサ
24b 下流温度センサ(温度センサ)
25a 上流酸素濃度センサ
25b 下流酸素濃度センサ(酸素濃度センサ)
30 触媒装置
31 酸化触媒
ΔC 酸素濃度差
ΔC2′ 第一酸素濃度差
ΔC2 第二酸素濃度差
dC 相違量
1 第一所定温度(脱離開始温度)
2 第二所定温度(酸化開始温度)
2 第二所定値(所定値)
図1
図2
図3
図4
図5
図6