(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のスイッチング電源装置においては、トランスの第2の駆動巻線と時定数回路とでハイサイドのFETを駆動するように構成されている。しかし、PFCコンバータを構成する場合、又は、PFCコンバータを兼ねたDC−DCコンバータを構成する場合、力率改善のために入力電圧の変動に応じてローサイドのFETをオンオフさせる必要がある。この場合、特許文献1のスイッチング電源装置では、ハイサイドのFETのオン時間は時定数回路でほぼ固定されているため、ハイサイドのFETのオン時間も変化させることに対応することは困難である。一方、FETを効率よく駆動するために、ハイサイドスイッチング制御回路をドライバICで構成し、ローサイドのオンオフに応じてハイサイドのFETを制御することも可能であるが、この場合、低コスト化の妨げとなる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、コストの高騰を防ぎ、かつ、入力電圧の変動に応じて、二つのスイッチング素子を効率よくスイッチング制御することができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスイッチング電源装置は、入力電圧が入力される電源入力部と、磁気的に結合された1次巻線、2次巻線及び駆動巻線を備えたトランスと、前記1次巻線に直列接続され、前記入力電圧を断続的に前記1次巻線に印加するようにオンオフするローサイドスイッチング素子と、閉ループを形成するよう前記1次巻線に接続された、共振キャパシタ、共振インダクタ及びハイサイドスイッチング素子と、前記ローサイドスイッチング素子をスイッチング制御する第1制御回路と、前記駆動巻線に生じる電圧に応じてハイサイドスイッチング素子をスイッチング制御する第2制御回路と、を備えたスイッチング電源装置において、前記第2制御回路は、前記駆動巻線と前記ハイサイドスイッチング素子の制御端子との間に接続され、前記ローサイドスイッチング素子のオン期間に充電される第1のキャパシタと、前記第1のキャパシタと前記駆動巻線との接続点に接続された第2のキャパシタと、前記ハイサイドスイッチング素子及び前記第1のキャパシタの接続点と、前記第2のキャパシタとの間に接続され、前記ローサイドスイッチング素子のオフ期間に、前記駆動巻線と前記第1のキャパシタとの電圧に基づいて前記第2のキャパシタを充電する充電回路と、前記ハイサイドスイッチング素子の制御端子に接続され、前記第2のキャパシタの充電電圧がしきい値を超えたときに前記ハイサイドスイッチング素子をターンオフするターンオフ回路と、前記ハイサイドスイッチング素子及び前記駆動巻線の接続点と、前記第2のキャパシタとの間に接続され、前記ローサイドスイッチング素子のオン期間に、前記第2のキャパシタに充電された電圧を放電する放電回路と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成では、ローサイドスイッチング素子を第1制御回路でスイッチング制御し、ハイサイドスイッチング素子を第2制御回路でスイッチング制御する。第2制御回路は、ローサイドスイッチング素子のオン期間に充電される第1のキャパシタの充電電圧を、駆動巻線に誘起される電圧に加算して、ハイサイドスイッチング素子をターンオンする。このとき、充電回路により第2のキャパシタは充電される。駆動巻線の極性が反転すると、放電回路は第2のキャパシタを放電して、ターンオフ回路はハイサイドスイッチング素子をターンオフする。
【0009】
このように、本発明のスイッチング電源装置は、二つのスイッチング素子を、デッドタイムを挟んで相補的にオンオフさせることができる。このため、二つのスイッチング素子が同時オンとなることを防止でき、アーム短絡やスイッチング素子の破損などを防止できる。また、入力電圧の変化に応じて第2のキャパシタが充放電されるため、入力電圧の変動に対してハイサイドスイッチング素子のオン時間を変化させることが可能となる。さらに、入力電圧が変化してもハイサイドスイッチング素子及びローサイドスイッチング素子をゼロ電圧スイッチング動作させることができるため、低ノイズかつ高効率動作が可能となる。
【0010】
前記電源入力部は交流入力電圧を入力し、前記スイッチング電源装置は、前記交流入力電圧を全波整流する整流回路を備え、前記第1制御回路は、前記整流回路により全波整流された電圧に応じた制御電圧を検出し、前記制御電圧に基づいて前記ローサイドスイッチング素子をスイッチング制御する構成でもよい。
【0011】
この構成では、交流入力電圧に係る制御電圧によりローサイドスイッチング素子をスイッチング制御することで、力率改善動作を行える。
【0012】
前記共振インダクタは前記トランスの漏れインダクタンスであることが好ましい。
【0013】
この構成では、別部品としてのインダクタを必要としないため、部品点数の減少が可能となる。
【0014】
前記充電回路は、前記第2のキャパシタに充電する充電電流値を設定する第1の定電圧素子を有し、前記放電回路は、前記第2のキャパシタを放電する放電電流値を設定する第2の定電圧素子を有する構成が好ましい。
【0015】
この構成では、第2のキャパシタに対する充放電量をさらに調整することができるため、少ない部品点数かつ安価な部品によって、高効率な動作が可能となる。また、トランスの巻線仕様が変わり駆動巻線に発生する電圧が変化しても、定電圧素子により第2のキャパシタに対する充放電量を調整できるため、最適な設計が可能となる。
【0016】
前記放電回路は、並列接続された第3のキャパシタ及び整流素子を有してもよい。
【0017】
この構成では、第2のキャパシタの放電量を瞬時に増加させることができるため、ハイサイドスイッチング素子のオン時間の変化幅の制御が可能となる。
【0018】
前記放電回路は、前記第1のキャパシタ及び前記ハイサイドスイッチング素子の接続点と、前記第2のキャパシタとの間に接続され、前記第1のキャパシタと共に、前記第2のキャパシタに充電された電圧を放電してもよい。
【0019】
この構成では、第1のキャパシタの充電量によって、放電回路にかかる電圧を小さくすることができるため、放電回路の素子の耐圧低減や損失低減が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、入力電圧の変動に対してハイサイドスイッチング素子のオン時間を変化させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
図1は実施形態1に係るスイッチング電源装置の回路図である。本実施形態に係るスイッチング電源装置101は、トランスTによる電圧変換、及び力率改善動作を同時に行う、所謂1コンバータ方式を採用した装置である。
【0023】
スイッチング電源装置101の入力端子Pi−Pi間には、ダイオード11,12,13,14からなるダイオードブリッジ回路(本発明の整流回路)、及びフィルタコンデンサ15が接続されている。ダイオードブリッジ回路には交流入力電源1が接続され、ダイオードブリッジ回路は、交流入力電源1からの交流入力電圧を全波整流する。以下、整流後の電圧を入力電圧Viという。スイッチング電源装置101の出力端子Po(+)−Po(−)間には不図示の負荷が接続され、スイッチング電源装置101は負荷へ所定の直流電圧Voを出力する。
【0024】
トランスTの1次巻線np及びローサイドスイッチング素子Q1は直列に接続されて、第1の直列回路が構成されている。ローサイドスイッチング素子Q1はn型FETであり、ドレイン端子がトランスTの1次巻線npに接続され、ソース端子がグランドラインに接続されている。
【0025】
トランスTの1次巻線npの両端には、ハイサイドスイッチング素子Q2と共振キャパシタCrと共振インダクタLrが直列に接続された第2の直列回路が構成されている。ハイサイドスイッチング素子Q2はn型FETであり、ソース端子がローサイドスイッチング素子Q1と1次巻線npとの接続点に接続されている。なお、共振インダクタLrは、トランスTの漏れインダクタンスであり、共振キャパシタCrとで共振回路を形成している。この共振インダクタLrは、トランスTとは別の部品としてのインダクタであってもよい。
【0026】
トランスTの2次巻線nsには、ダイオードDo及びキャパシタCoからなる半波整流平滑回路が構成されている。この整流平滑回路は2次巻線nsから出力される交流電圧を整流平滑して、出力端子Po(+)−Po(−)へ出力する。
【0027】
トランスTは、1次側にローサイド駆動巻線nb1とハイサイド駆動巻線nb2を備えている。ローサイド駆動巻線nb1には、ローサイドスイッチング素子Q1をスイッチング制御するローサイド制御回路(本発明の第1制御回路)81が接続されている。ローサイド制御回路81とローサイド駆動巻線nb1との間には、ダイオードDb及びキャパシタCbによる整流平滑回路が接続されていて、整流平滑回路によって得られる直流電圧がローサイド制御回路81に電源電圧として供給される。
【0028】
また、ローサイド制御回路81は、ローサイドスイッチング素子Q1のゲート端子(本発明の制御端子)に対して制御電圧を出力し、ローサイドスイッチング素子Q1をオンオフ制御する。ローサイド制御回路81によるローサイドスイッチング素子Q1のスイッチング制御を具体的に説明すると、ローサイド制御回路81及び出力端子Po(+),Po(−)の間には帰還回路が接続されていて、ローサイド制御回路81には、出力電圧Voに応じたフィードバック電圧Vfbが入力される。なお、
図1では簡易的に帰還の経路のみを一本の線(Feed back)で表している。例えば、フォトカプラやパルストランスなどの絶縁手段を用いてフィードバックすることができる。前記帰還回路は、具体的には出力端子Po(+)−Po(−)間の電圧の分圧値と基準電圧との比較によって帰還信号を発生し、絶縁状態でローサイド制御回路81へフィードバック電圧Vfbを入力する。
【0029】
また、ローサイド制御回路81には入力電圧Viが入力される。
図1では、簡略化しているが、具体的には、ローサイド制御回路81には入力電圧Viの波形をモニタする検出電圧Visが入力される。
【0030】
ローサイド制御回路81は、ローサイド駆動巻線nb1によりトランスTの電圧極性の反転を検出したとき、ローサイドスイッチング素子Q1をターンオンするための制御電圧を出力する。その後、ローサイド制御回路81は、フィードバック電圧Vfb及び抵抗分圧電圧Visに応じて、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間を制御する。より詳しくは、ローサイド制御回路81は、フィードバック電圧Vfbと抵抗分圧電圧Visとを乗算器で掛け合わせ、一つの制御電圧を生成する。ローサイド制御回路81は、生成した制御電圧をローサイドスイッチング素子Q1のゲート端子に印加して、ローサイドスイッチング素子Q1を所定時間だけオンする。
【0031】
トランスTのハイサイド駆動巻線nb2の第1端は、ローサイドスイッチング素子Q1とハイサイドスイッチング素子Q2との接続点(ハイサイドスイッチング素子Q2のソース端子)に接続されている。ハイサイド駆動巻線nb2の第2端は、ハイサイド制御回路(本発明の第2制御回路)61を介してハイサイドスイッチング素子Q2のゲート端子に接続されている。
【0032】
ハイサイドスイッチング素子Q2のゲート・ソース間には抵抗Rgsが接続されている。この抵抗Rgsは、ハイサイドスイッチング素子Q2のゲート・ソース間に加わる電圧値を調整し、又は、ハイサイドスイッチング素子Q2のゲート・ソース間の要領に蓄積された残留電荷を放電するように設けられている。
【0033】
ハイサイド制御回路61は、ハイサイド駆動巻線nb2の第1端とハイサイドスイッチング素子Q2のゲート端子との間に接続されたキャパシタ(本発明の第1のキャパシタ)C1と抵抗R3との直列回路を備えている。また、ハイサイド制御回路61は、ハイサイドスイッチング素子Q2のゲート・ソース間に接続されたトランジスタ(本発明のターンオフ回路)Q3を備えている。トランジスタQ3のコレクタ端子はハイサイドスイッチング素子Q2のゲート端子に接続され、エミッタ端子はハイサイドスイッチング素子Q2のソース端子に接続されている。
【0034】
トランジスタQ3のベース・エミッタ間には、キャパシタ(本発明の第2のキャパシタ)C2が接続されている。キャパシタC2は、キャパシタC1に接続された後述の充電回路及び放電回路により充放電される。キャパシタC2が充電回路により充電され、充電電圧がトランジスタQ3のベース・エミッタ間電圧のしきい値に達した場合、トランジスタQ3はターンオンされる。また、キャパシタC2が放電回路により放電され、充電電圧がトランジスタQ3のベース・エミッタ間電圧のしきい値を下回った場合、トランジスタQ3はターンオフされる。すなわち、トランジスタQ3は、キャパシタC2の充電電圧に応じてオンオフ動作する。
【0035】
前記充電回路は、ダイオードD1と抵抗R1とツェナーダイオード(本発明の第1の定電圧素子)Dz1との直列回路で構成される。スイッチング電源装置101においては、ダイオードD1のアノード端子がキャパシタC1及び抵抗R3の接続点に接続され、カソード端子が抵抗R1を介してツェナーダイオードDz1のカソードに接続されている。ツェナーダイオードDz1のアノード端子はキャパシタC2に接続されている。つまり、ダイオードD1とツェナーダイオードDz1とは整流方向が逆向きである。この直列回路により、ハイサイド駆動巻線nb2に誘起された電圧、及びキャパシタC1に充電された電圧を基にしてキャパシタC2に充電電流(充電電流値)が流れ、キャパシタC2は充電される。以下、充電電流が流れる方向を正方向という。ハイサイド駆動巻線nb2に誘起される電圧に応じたツェナーダイオードDz1のツェナー電圧を定めることで、キャパシタC2への充電を安定して行えるようにしている。
【0036】
前記放電回路は、ダイオードD2と抵抗R2とツェナーダイオード(本発明の第2の定電圧素子)Dz2との直列回路で構成される。スイッチング電源装置101においては、ダイオードD2のアノード端子が、抵抗R2を介してキャパシタC2に接続され、カソード端子が、ツェナーダイオードDz2のカソード端子に接続されている。ツェナーダイオードDz2のアノード端子がキャパシタC1及びハイサイド駆動巻線nb2の接続点に接続されている。つまりダイオードD2とツェナーダイオードDz2は整流方向が逆向きである。また前述の充電回路のダイオードD1と放電回路のダイオードD2とは、キャパシタC2に対して逆向きに接続されている。この直列回路により、ハイサイド駆動巻線nb2に誘起された電圧により、キャパシタC2には負方向に放電電流(放電電流値)が流れ、キャパシタC2は放電される。ハイサイド駆動巻線nb2に誘起される電圧に応じてツェナーダイオードDz2のツェナー電圧を定めることで、キャパシタC2の放電を安定して行えるようにしている。
【0037】
以下に、スイッチング電源装置101の動作について説明する。
図2はスイッチング電源装置101の各要部における動作波形を示す図である。
図2では、Vq1dsは、ローサイドスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧、iq1dはドレイン電流を示す。Vq2dsは、ハイサイドスイッチング素子Q2のドレイン−ソース間電圧、iq2dはドレイン電流を示す。VsはトランスTの2次側のダイオードDoの電圧、isはダイオードDoに流れる電流を示す。
【0038】
本回路の起動後のスイッチング動作は、1スイッチング周期Tsにおいて、主に時刻t1〜t5の4つの動作状態に分けることができる。まず、起動時(発振開始時)について説明し、次に各状態における動作を示す。
【0039】
(Q1ターンオン)
ローサイド駆動巻線nb1によりローサイド制御回路81がトランスTの電圧極性反転を検出したとき、ローサイド制御回路81は、ローサイドスイッチング素子Q1のゲート端子に電圧を印加する。これにより、ローサイドスイッチング素子Q1はターンオンする。
【0040】
(状態1)t1〜t2
状態1では、ローサイドスイッチング素子Q1はオン状態であり、入力電圧VinがトランスTの1次巻線npに印加され、1次巻線電流が直線的に増加し、トランスTに励磁エネルギーが蓄えられる。ローサイドスイッチング素子Q1のドレイン電流iq1dの波形は、直線的に増加する1次巻線電流である。また、ローサイドスイッチング素子Q1はオン状態であるので、ローサイドスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧Vq1dsは零となる。2次側では、ダイオードDoに逆バイアスがかかる方向に、トランスTの2次巻線nsに電圧が誘起される。
【0041】
この時、トランスTのハイサイド駆動巻線nb2に入力電圧Viに応じた電圧が誘起される。この電圧により、抵抗Rgs→抵抗R3→キャパシタC1→ハイサイド駆動巻線nb2の経路で電流Aが流れ、キャパシタC1が充電される。同時に、キャパシタC2→抵抗R2→ダイオードD2→ツェナーダイオードDz2→ハイサイド駆動巻線nb2の経路で、キャパシタC2には負方向に放電電流Bが流れ、キャパシタC2は放電される。
【0042】
ローサイド制御回路81は、フィードバック電圧Vfb及び抵抗分圧電圧Visから、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間を制御し、ローサイドスイッチング素子Q1を時刻t2でターンオフする。これにより、状態1から状態2に遷移する。
【0043】
(状態2)t2〜t3
ローサイドスイッチング素子Q1がターンオフすると、トランスTの1次巻線npに流れていた電流が、ハイサイドスイッチング素子Q2のボディーダイオード(不図示)を通ることで、共振キャパシタCrは充電される。このとき、共振インダクタLr及び共振キャパシタCrは共振する。この共振により、状態2でのローサイドスイッチング素子Q1の電圧Vq2ds及びドレイン電流iq2dの立下りは、共振による正弦波の一部となる。また、状態2でのローサイドスイッチング素子Q1の電圧Vq1dsの立ち上がり、及びドレイン電流iq1dの立下りは、ローサイドスイッチング素子Q1の寄生容量と1次巻線npとの共振による正弦波の一部となる。
【0044】
また、時刻t2でローサイドスイッチング素子Q1がターンオフすると、ハイサイド駆動巻線nb2に誘起された電圧に、キャパシタC1の充電電圧が加算され、キャパシタC1→抵抗R3の経路で電流Cが流れ、ローサイドスイッチング素子Q1のターンオフより少し遅れてハイサイドスイッチング素子Q2のゲート端子に電圧が印加される。このときハイサイドスイッチング素子Q2のドレイン電流iq2dは負電流であり、ボディーダイオード(不図示)に電流が流れている。これにより、零電圧スイッチング(ZVS)動作で、ハイサイドスイッチング素子Q2が時刻t3でターンオンする。同時に、ダイオードD1→抵抗R1→ツェナーダイオードDz1の経路で正方向に充電電流Dが流れ、キャパシタC2が充電される。このときに流れる充電電流Dは、キャパシタC1の充電電圧に応じて変化する。
【0045】
2次側ではダイオードDoの両端電圧Vsが順バイアスとなり、ダイオードDoが導通する。この電圧Vsの立ち下がり部分の曲線は、ダイオードDoの寄生容量と2次巻線nsとの共振による正弦波の一部である。
【0046】
(状態3)t3〜t4
状態3では、ハイサイドスイッチング素子Q2が導通し、共振インダクタLrと共振キャパシタCrが共振を始める。この期間において共振キャパシタCrの充電電荷は放電される。この時、2次側ではダイオードDoが導通し、トランスTに蓄えられた励磁エネルギーと、共振キャパシタCrに蓄えられた静電エネルギーが2次巻線nsから放出され、整流平滑回路を介して出力端子Po(+)−Po(−)から出力される。
【0047】
この時、ハイサイドスイッチング素子Q2のドレイン電流iq2dの波形は、共振インダクタLrと共振キャパシタCrによる共振電流の波形となる。このとき、トランスTの励磁エネルギーが2次側に伝達され、励磁電流imは直線的に減少する。したがって、2次側のダイオードDoに流れる電流isは、共振電流iqd2に対し、直線的に減少する励磁電流imを引いた値と相似形となる。このため、電流isは、零電流から比較的急峻に立ち上がり、正弦波状の曲線を有する波形となって、電流変化率が零となるピーク点に達した後、零電流に向かって下降する。トランスTの励磁電流imが0となると、ダイオードDoはオフし、2次側電流isが0となる。
【0048】
また、1次側では、充電されたキャパシタC2の充電電圧が、トランジスタQ3のベース・エミッタ間電圧のしきい値に達したとき、トランジスタQ3がターンオンする。この結果、ハイサイドスイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧が略ゼロとなり、時刻t4でハイサイドスイッチング素子Q2が零電流付近でターンオフし、零電流スイッチング(ZCS)動作が行われる。ハイサイドスイッチング素子Q2がターンオフすると、2次側のダイオードDoに逆バイアス電圧が掛かり、トランスTの巻線電圧が反転しはじめる。
【0049】
ここで、出力端子に接続される負荷により、励磁電流imが0になるタイミングとハイサイドスイッチング素子Q2がターンオフされるタイミングが異なる。すなわち、負荷が軽い場合には、励磁電流imが0になってからハイサイドスイッチング素子Q2がターンオフされダイオードDoに逆電圧が掛かるが、重負荷の場合は、ハイサイドスイッチング素子Q2がターンオフされてから励磁電流imが0となり、ダイオードDoに逆電圧が掛かる。すなわち、いずれの負荷条件においても、ハイサイドスイッチング素子Q2とダイオードDoとがともにオフとなる時刻t4でダイオードDoに逆電圧が掛かり、状態4に移行する。
【0050】
このように、状態3におけるハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間は、充電電流Dによって決まる。例えば、キャパシタC1の充電電圧が高い場合、充電電流Dは大きくなり、キャパシタC2の充電電圧がトランジスタQ3のベース・エミッタ間電圧のしきい値に達するまでの時間は短くなり、ハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間は短くなる。キャパシタC1の充電電圧は、入力電圧Vi及びローサイドスイッチング素子Q1のオン時間によって決まる。ローサイド制御回路81は、入力電圧Viが高い場合、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間を短くし、入力電圧Viが低い場合、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間を長くする。このように、入力電圧Viの変動に応じてローサイドスイッチング素子Q1のオン時間が調整され、それに応じてハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間が制御される。
【0051】
(状態4)t4〜t5
状態4では、ローサイドスイッチング素子Q1のボディーダイオードが導通し、ローサイドスイッチング素子Q1には負方向に電流iqd1が流れる。この時、ローサイド駆動巻線nb1によりトランスTの電圧極性反転を検出したローサイド制御回路81により、時刻t4から少し遅延してローサイドスイッチング素子Q1のゲート端子に電圧が印加され、時刻t5でローサイドスイッチング素子Q1がターンオンされる。このように、零電圧スイッチング動作が行われて状態4が終了する。
【0052】
1スイッチング周期Ts当たり、以上のような動作を行って、次のスイッチング周期も同様の動作を行い、以降この動作を繰り返す。
【0053】
以上の動作によって、ローサイドスイッチング素子Q1がオンされている期間にトランスTの1次巻線npに励磁エネルギーが蓄えられるとともに、キャパシタCrに静電エネルギーが蓄えられる。ローサイドスイッチング素子Q1がオフされると、これらの励磁エネルギーと静電エネルギーがトランスTの2次側に放出されることになるため、ローサイドスイッチング素子Q1のオン期間に励磁エネルギーのみが蓄えられて、ローサイドスイッチング素子Q1のオフ期間にこの励磁エネルギーを放出する装置と比較して、電流ピーク値を低減でき、導通損失を低減できる利点がある。
【0054】
また、ハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間は、キャパシタC2の充電電圧、すなわち、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間に応じて決まる。また、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間は、ローサイド制御回路81により入力電圧Viに応じて決められる。したがって、スイッチング電源装置101は、入力電圧Viが変動した場合であっても、ハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間を適正に制御することができ、力率改善を行える。
【0055】
さらに、ローサイドスイッチング素子Q1のスイッチング制御に起因するキャパシタC2の放電する放電回路にツェナーダイオードDz2を用いることで、抵抗のみを用いた場合と比べて、入力電圧Viの変動幅に対するキャパシタC2の放電電流Bの変化幅を大きくとることが可能となり、キャパシタC2の放電時間の変化幅を大きくとることが可能となる。したがって、より大きな入力電圧Viの変動に対しても対応することが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態に係るスイッチング電源装置101は、PFCコンバータに限らず、DC−DCコンバータにも適用できる。
図3は直流入力電源を用いた場合のスイッチング電源装置の回路図である。
図3に示すスイッチング電源装置101Aの入力端子Pi(+)−Pi(−)間には、直流入力電源1Aが接続されている。
図3は、ダイオードブリッジ回路を備えていない点で
図1と相違する。他の回路は
図1と同様であるため説明は省略する。
【0057】
<実施形態2>
図4は実施形態2に係るスイッチング電源装置の回路図である。本実施形態に係るスイッチング電源装置102は、放電回路においてダイオードD2にキャパシタ(本発明の第3のキャパシタ)Csを並列接続した点で、実施形態1と相違する。キャパシタCsは、例えば100pFの小さい容量を有していて、ハイサイド駆動巻線nb2に誘起された電圧によりキャパシタC2が充電されるとき、キャパシタCsも同時に充電される。
【0058】
ハイサイド駆動巻線nb2の電圧極性が反転しキャパシタC2が放電されるとき、並列接続したキャパシタCsを介しての放電が加わり、放電量が増加するため、キャパシタC2の電荷を速やかに放電させることができ、ハイサイドスイッチング素子Q2の制御可能なオン時間幅を長くできる。
【0059】
(実施形態3)
図5は、実施形態3に係るスイッチング電源装置の回路図である。本実施形態に係るスイッチング電源装置103は、キャパシタC1の位置が実施形態1と相違する。具体的には、充電回路及び放電回路は、抵抗R3及びキャパシタC1の接続点に接続されている。すなわち、放電回路は、キャパシタC1と共にキャパシタC2の充電電圧を放電する構成となる。この構成により、放電回路にかかる印加電圧は、キャパシタC1に充電される電圧分だけ小さくなる。この結果、放電回路の抵抗R2、ダイオードD2及びツェナーダイオードDz2等の素子の耐圧低減や損失低減が可能となる。
【0060】
(実施形態4)
図6は、実施形態4に係るスイッチング電源装置の回路図である。本実施形態に係るスイッチング電源装置104は、実施形態2のキャパシタCsを備え、キャパシタC1の位置が実施形態3で説明した位置に接続されている。この構成により、キャパシタC2の放電量を瞬時に増加させることができ、トランジスタQ3のターンオフからターンオンされるまでの時間、すなわち、ハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間の変化幅の制御が可能となる。また、放電回路にかかる印加電圧は、キャパシタC1に充電される電圧分だけ小さくなる。この結果、放電回路の抵抗R2、ダイオードD2及びツェナーダイオードDz2等の素子の耐圧低減や損失低減が可能となる。
【0061】
なお、スイッチング電源装置の具体的構成などは、適宜設計変更可能であり、上述の実施形態に記載された作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、上述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。