特許第5790580号(P5790580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5790580-電子部品収容ケース 図000002
  • 特許5790580-電子部品収容ケース 図000003
  • 特許5790580-電子部品収容ケース 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790580
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】電子部品収容ケース
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/06 20060101AFI20150917BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20150917BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H05K5/06 E
   H05K5/02 L
   B60R16/02 610B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-92943(P2012-92943)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-222796(P2013-222796A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】アンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都築 治幸
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−208948(JP,A)
【文献】 実開平03−064247(JP,U)
【文献】 特開2009−070909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/06
B60R 16/02
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(1)を収容するケース本体(21、22)と、前記ケース本体に形成された呼吸穴(212)と、防水性および透湿性を有し、水が付着しない状態では空気が流通可能であり、一方、水が付着した状態では空気が流通しない素材からなり前記呼吸穴を覆うフィルタ(23)とを備え
さらに、前記フィルタは、一端側に開口部を有し、他端側が閉塞されたチューブであり、前記一端側が前記呼吸穴を覆うようにして前記ケース本体に固定されており、
前記チューブは、その中心軸方向と平行に延びる形状であることを特徴とする電子部品収容ケース。
【請求項2】
前記フィルタは、前記ケース本体の内部空間(25)に配置され、前記内部空間と外部空間の圧力差が所定値以下のときには前記他端側が平たく潰れた形状になっていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品収容ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収容するケース本体に呼吸穴が形成された電子部品収容ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品収容ケースは、電子部品を収容するケース本体に呼吸穴を形成し、シート状のフィルタにて呼吸穴を覆っている。このフィルタは、ケースの内部空間と外部空間との間に圧力差が発生した場合、空気を流通させて圧力差をなくすように作用する。また、フィルタは、防水性を有し、ケース内への水の浸入を防止するようになっている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−189215号公報
【特許文献2】特開2008−78506号公報
【特許文献3】特開2009−6808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ケースが被水または水没してフィルタに水が付着した場合、空気が流通できなくなり、ケース内外の圧力差をなくすことができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、フィルタに水が付着した場合でも、ケース内外の圧力差をなくすことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電子部品(1)を収容するケース本体(21、22)と、ケース本体に形成された呼吸穴(212)と、防水性および透湿性を有し、水が付着しない状態では空気が流通可能であり、一方、水が付着した状態では空気が流通しない素材からなり呼吸穴を覆うフィルタ(23)とを備え
さらに、フィルタは、一端側に開口部を有し、他端側が閉塞されたチューブであり、一端側が呼吸穴を覆うようにしてケース本体に固定されており、
チューブは、その中心軸方向と平行に延びる形状であることを特徴とする。
【0007】
これによると、フィルタはチューブであるため、フィルタに水が付着した状態でケース内外の圧力差が発生した場合には、フィルタが容易に変形して、すなわち、ケース内の容積が変化して、ケース内外の圧力差をなくすことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電子部品収容ケースにおいて、フィルタは、ケース本体の内部空間(25)に配置され、内部空間と外部空間の圧力差が所定値以下のときには他端側が平たく潰れた形状になっていることを特徴とする。
【0009】
これによると、フィルタに水が付着した状態でケース内が負圧になった場合には、つぶれていた部分が膨らんでケース内外の圧力差をなくすことができる。
【0010】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品収容ケースを備えるECUの断面図である。
図2図1のフィルタの斜視図である。
図3図1のECUの他の作動状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、ECU(Electric Control Unit)は、電子部品としてのプリント基板1と、プリント基板1を収容する電子部品収容ケース2を備えている。また、ECUには、ハーネス側コネクタ3が接続されるようになっている。なお、このECUは、走行車両(図示せず)の車室内における床面に配置される。
【0014】
プリント基板1は、配線パターンを有する基板11に、マイコン、パワートランジスタ、抵抗、コンデンサ等の回路素子(図示せず)が実装されるとともに、ターミナル12が実装されて、車載された各種機器(図示せず)の作動を制御するものである。
【0015】
ハーネス側コネクタ3は、有底筒状のコネクタハウジング31、コネクタハウジング31の底部を貫通するリード線32、コネクタハウジング31内に配置されてリード線32と接合されたターミナル33、およびコネクタハウジング31とリード線32との間をシールする封止部材34にて構成されている。
【0016】
電子部品収容ケース2は、第1ケース本体21、第2ケース本体22、フィルタ23、およびOリング24を備えている。
【0017】
第1ケース本体21および第2ケース本体22は、例えば樹脂よりなる。第1ケース本体21は有底筒状であり、第1ケース本体21の開口部側に第2ケース本体22が接着にて接合されている。そして、第1ケース本体21と第2ケース本体22とによって内部に内部空間25が形成され、この内部空間25にプリント基板1が収容されている。
【0018】
第1ケース本体21には、内部空間25内に向かって突出する円筒状のケース筒部211が一体に形成されている。そして、このケース筒部211内に、内部空間25と外部空間とを連通させる呼吸穴212が形成されている。
【0019】
第2ケース本体22には、ハーネス側コネクタ3が嵌合されるケース側コネクタ221が形成されている。そして、ケース側コネクタ221内にOリング24が配置されており、このOリング24によりハーネス側コネクタ3とケース側コネクタ221との間がシールされている。
【0020】
図1図2に示すように、フィルタ23は、防水性および透湿性を有する素材からなり、一端側に開口部を有し他端側が閉塞されたチューブになっている。そして、このフィルタ23は、内部空間25と外部空間の圧力差が所定値以下の定常状態時には、他端側が平たく潰れた形状になっている。より詳細には、フィルタ23の長手方向中間部よりも一端側(すなわち開口部側)まで、平たく潰れた形状になっている。
【0021】
フィルタ23は、内部空間25に配置され、フィルタ23の一端側がケース筒部211の外側に嵌められ、それらは接着にて接合されている。換言すると、フィルタ23は、その一端側が呼吸穴212を覆うようにして第1ケース本体21に固定されている。
【0022】
上記構成において、フィルタ23に水が付着していない状態で、且つ、内部空間25または外部空間の空気温度が変化することによって内部空間25または外部空間の気圧が変化した場合には、フィルタ23および呼吸穴212を介して空気が流通して、内部空間25と外部空間の圧力差がなくなる。
【0023】
ところで、車室の床面が浸水してECUが被水した場合、その被水によって内部空間25の空気温度が低下して内部空間25の気圧が低下するとともに、フィルタ23に水が付着する状況が発生する。この状況下では、図3に示すように、フィルタ23における平たく潰れていた部位が圧力差によって円筒状に膨らみ、内部空間25の容積が減少して内部空間25の圧力が上昇し、内部空間25と外部空間の圧力差がなくなる。
【0024】
本実施形態によると、フィルタ23に水が付着した状態でも、フィルタ23が変形して内部空間25と外部空間の圧力差をなくすことができる。
【0025】
また、フィルタ23は、フィルタ23に水が付着し且つ圧力差が発生した場合のみ変形し、フィルタ23に水が付着していない場合は変形しないため、フィルタ23の素材の疲労破壊の虞もない。
【0026】
(他の実施形態)
上記実施形態では、フィルタ23を内部空間25に配置したが、フィルタ23は外部空間に配置してもよい。この場合には、フィルタ23は、内部空間25と外部空間の圧力差が所定値以下の定常状態時に円筒状になっている。そして、フィルタ23に水が付着した状態で内部空間25の気圧が低下した場合には、フィルタ23は円筒状から平たく潰れた形状に萎み、内部空間25の容積が減少して内部空間25の圧力が上昇し、内部空間25と外部空間の圧力差がなくなる。
【0027】
また、上記実施形態では、本発明の電子部品収容ケースを、車室内の床面に配置されるECUに適用したが、本発明の電子部品収容ケースは、車両のエンジンルームに配置されるECUにも適用することができる。
【0028】
さらに、上記実施形態では、本発明の電子部品収容ケースを、車両用ECUに適用したが、本発明の電子部品収容ケースは、車両以外に用いられるECUにも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 プリント基板(電子部品)
21 第1ケース本体
22 第2ケース本体
23 フィルタ
212 呼吸穴
図1
図2
図3