(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外部振動によって、複数のエレクトレットからなるエレクトレット群と複数の電極からなる電極群が、相対移動方向に変位することで振動発電を行う振動発電素子であって、
前記エレクトレット群と前記電極群を収容する筐体部と、
前記エレクトレット群と前記電極群のうち一方が設けられるとともに、前記筐体部側に固定される固定部材と、
前記エレクトレット群と前記電極群のうち他方が設けられるとともに、前記固定部材に対して対向した状態を保ったまま、外部振動により相対移動が可能となるように前記筐体部内に収容される可動部材と、
前記エレクトレット群と前記電極群との間の間隙を規定するように、前記筐体部内の底面に対して前記可動部材を相対移動可能に支持する第一支持部と、
前記筐体部内の底面とともに前記相対移動方向を規定する前記筐体部の側方内壁面に対して、前記可動部材を相対移動可能となるように支持する第二支持部と、
前記筐体部内の側方内壁面に対して前記可動部材を付勢し、相対移動時において前記第二支持部による該可動部材の支持状態を保持する支持保持部と、
を備える、振動発電素子。
前記第二支持部による前記可動部材の支持が行われる前記側方内壁面を、前記振動発電素子の設置面を基準として下方に配置させるように前記筐体部を傾斜させる傾斜部を、更に備え、
前記支持保持部は、前記傾斜部によって前記筐体部を傾斜させることで、前記可動部材の自重により該可動部材を前記側方内壁面に対して付勢する、
請求項1に記載の振動発電素子。
前記振動発電に関連する、前記エレクトレット群に含まれる複数のエレクトレットと前記電極群に含まれる複数の電極との重なり面積が最大となるように、前記相対移動方向を規定する前記側方内壁面の形状に基づいて、該エレクトレット群における該複数のエレクトレットの並びと、該電極群における該複数の電極の並びとが決定される、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の振動発電素子。
前記可動部材は、前記相対移動方向に沿って該可動部材が変位した際に、前記筐体部の内壁面であって該可動部材の該相対移動方向に位置する移動方向内壁面と接触する接触部を、該移動方向内壁面に対向する該可動部材の幅における中央部位に有する、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の振動発電素子。
外部振動によって、複数のエレクトレットからなるエレクトレット群と複数の電極からなる電極群が、相対移動方向に変位することで振動発電を行う振動発電素子の組立方法であって、
前記エレクトレット群と前記電極群を収容する筐体部の外部から、該エレクトレット群と該電極群のうち一方が設けられた固定部材を、該エレクトレット群又は該電極群が該筐体部の内部を向く状態で該筐体部内に挿入する工程と、
前記挿入の方向に沿って前記筐体部内の底面に対して所定の高さを有する位置に位置決めされた前記筐体部側の突起部に、前記固定部材を突き当てた状態で、該固定部材を該筐体部に固定する工程と、
前記エレクトレット群と前記電極群のうち他方が設けられた可動部材を支持し、該エレクトレット群と該電極群との間の間隙を規定する第一支持部を、前記筐体部の内部の底面上に配置する工程と、
前記可動部材に設けられた前記エレクトレット群又は前記電極群が前記固定部材側を向くように、前記可動部材を前記第一支持部材の上に配置する工程と、
前記筐体部内の底面とともに前記相対移動方向を規定する前記筐体部の側方内壁面と、前記可動部材との間に、該可動部材を相対移動可能となるように支持する第二支持部を配置し、該筐体部内の側方内壁面に対して該可動部材を、該第二支持部によって支持された状態で付勢する工程と、
を含む、振動発電素子の組立方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エレクトレットと電極とを対向させた状態で相対的に移動させることで発電を行う場合、エレクトレットの並びに対する電極の並びの相対的な角度ずれ、すなわちアジマスが大きくなると、実質的なエレクトレットと電極の重なり面積が低下するため、外部振動による発電効率が低下してしまう。たとえ、固定部材および可動部材にエレクトレットや電極が適切に配置されていたとしても、可動部材の相対移動方向が、固定部材に設けられた電極等の並びに対してずれてしまうと、結果として、振動発電のための相対移動においてアジマスが大きくなってしまう。
【0006】
そこで、従来技術に示すように、エレクトレット等の並びと相対移動方向のずれが生じないように、可動部材と固定部材の間の空隙に支持用の鋼球を配置する構成や、一方向に延在する溝に支持用の鋼球を配置する構成を採用することができる。しかし、従来技術に示す構成では、上記空隙を規定する可動部材や固定部材の寸法精度、上記溝の幅を規定する寸法精度等によって、相対移動におけるエレクトレットの並びと電極の並びとの間のアジマスを十分に補正することが難しい。また、上記空隙や溝を形成する必要があるため、振動発電素子の製造が煩雑なものとなる。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、エレクトレットと電極とを対向させた状態で相対的に移動させることで発電を行う振動発電素子において、エレクトレットの並びと電極の並びとのずれ(アジマス)を可及的に低減する構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、上記課題を解決するために、エレクトレットと電極とを対向させた
状態で相対的に移動させることで発電を行う振動発電素子において、可動部材と固定部材とを上下方向に支持する第一支持部に加えて、可動部材と固定部材との相対移動方向に沿って延在する筐体部の側方内壁面を利用して可動部材を支持する第二支持部を採用するとともに、第二支持部による支持を維持するために可動部材を側方内壁面に付勢する構成を採用した。このように素子の筐体部の内壁面を利用して相対移動に関する可動部材の支持を行うことで、簡便な構成により、エレクトレットの並びと電極の並びとのアジマスを可及的に低減することが可能となる。
【0009】
そこで、詳細には、本発明は、外部振動によって、複数のエレクトレットからなるエレクトレット群と複数の電極からなる電極群が、相対移動方向に変位することで振動発電を行う振動発電素子であって、前記エレクトレット群と前記電極群を収容する筐体部と、前記エレクトレット群と前記電極群のうち一方が設けられるとともに、前記筐体部側に固定される固定部材と、前記エレクトレット群と前記電極群のうち他方が設けられるとともに、前記固定部材に対して対向した状態を保ったまま、外部振動により相対移動が可能となるように前記筐体部内に収容される可動部材と、前記エレクトレット群と前記電極群との間の間隙を規定するように、前記筐体部内の底面に対して前記可動部材を相対移動可能に支持する第一支持部と、前記筐体部内の底面とともに前記相対移動方向を規定する前記筐体部の側方内壁面に対して、前記可動部材を相対移動可能となるように支持する第二支持部と、前記筐体部内の側方内壁面に対して前記可動部材を付勢し、相対移動時において前記第二支持部による該可動部材の支持状態を保持する支持保持部と、を備える。
【0010】
本発明に係る振動発電素子では、エレクトレット群と電極群とが相対移動方向に外部振動によって変位することで、振動発電が行われる。ここで、エレクトレット群と電極群のうち何れかが固定部材に配置され、他方が可動部材に配置される。これらの両部材は、筐体部の内部に収容されるが、固定部材が、筐体部に対して固定される一方で、可動部材は、固定部材に対して相対移動可能となるように配置されることで、上記のエレクトレット群と電極群の振動発電のための相対移動が実現される。
【0011】
ここで、振動発電素子の発電特性を決定する大きな要因として、エレクトレット群と電極群との間の間隙距離(以下、単に「間隙距離」という場合もある)と、固定部材と可動部材との相対移動におけるエレクトレットの並びと電極の並びとの角度ずれ(以下、単に「アジマス」という場合もある)が挙げられる。そこで、本発明に係る振動発電素子では、間隙距離については、第一支持部によって可動部材が筐体部内の底面に対して支持されることで、振動発電に好適な間隙距離が規定される構成となっている。なお、当該底面は、固定部材および可動部材が筐体部内に収容されたときに、これらの部材の自重が主に掛かる筐体部内の壁面の一つである。したがって、第一支持部による可動部材の支持については、常に、可動部材の自重の少なくとも一部が第一支持部を介して底面に掛かった状態となっている。
【0012】
また、アジマスについては、上記底面とは別の筐体部の内壁面であって、可動部材の相対移動方向を当該底面とともに規定する側方内壁面に対して、第二支持部によって可動部材が支持されるとともに、支持保持部によって可動部材を側方内壁面に対して付勢することで、第二支持部による支持状態が保持される。この結果、固定部材に対する可動部材の相対移動は、筐体部内の底面と側方内壁面によって規定される方向(相対移動方向)とされるとともに、各面に対して可動部材を介して何らかの荷重(底面に対しては可動部材の自重の少なくとも一部、側方内壁面に対しては付勢力)が掛けられた状態が形成されることになる。したがって、可動部材は、底面および側方内壁面を確実に追従しこれらの面をガイドとして、固定部材に対して相対移動することが可能となり、以て、間隙距離の適切な維持とアジマス増加の抑制が実現される。
【0013】
また、筐体部内の底面および側方内壁面は、ともに筐体部の内壁面の一部であることから、可動部材の相対移動に関するガイド機構を形成するにあたり、特別な構成を設ける必要がない。そのため、振動発電素子の構成をより簡便なものとでき、そのため振動発電素子の製造も容易となる。
【0014】
ここで、上記の振動発電素子において、前記第二支持部による前記可動部材の支持が行われる前記側方内壁面を、前記振動発電素子の設置面を基準として下方に配置させるように前記筐体部を傾斜させる傾斜部を、更に備えるように構成してもよい。そして、前記支持保持部は、前記傾斜部によって前記筐体部を傾斜させることで、前記可動部材の自重により該可動部材を前記側方内壁面に対して付勢するように構成してもよい。
【0015】
このように振動発電素子が傾斜部を備えることで、側方内壁面が下方に来るように筐体部を傾斜させ、可動部材の自重を第一支持部側だけでなく、第二支持部側にも配分することが可能となる。その結果、可動部材の自重を効率的に利用することで、可動部材を、底面および側方内壁面に確実に追従させ、アジマスを抑制しつつ固定部材に対して相対移動させることが可能となる。なお、傾斜部による筐体部の傾斜について、可動部材の自重により筐体部内の底面および側方内壁面に作用する力が、可動部材の相対移動に適した荷重となる範囲である限り、その傾斜角度は特に限定されない。
【0016】
また、支持保持部による接触状態の保持に関して、別の形態も採用できる。例えば、上記の振動発電素子が、前記可動部材と前記筐体部との間に設けられた複数の弾性部材を、更に備える場合には、前記支持保持部は、前記複数の弾性部材によって前記可動部材に対して生じる弾性力の合力により、該可動部材を前記側方内壁面に対して付勢するように構成してもよい。すなわち、第二支持部による可動部材の支持状態を保持するために、複数の弾性部材を利用するものである。この場合、特に、可動部材が相対移動を行っている間、複数の弾性部材による付勢力が、常に、可動部材を側方内壁面に対して押圧する力となるのが好ましい。
【0017】
また、上記のように複数の弾性部材を利用して可動部材に付勢力を作用させる場合、前記複数の弾性部材が、前記可動部材に対して一箇所の連結部を介して連結されるのが好ましい。仮に複数箇所の連結部を介して複数の弾性部材が可動部材に対して連結されると、その連結部の位置や各弾性部材の弾性力の大きさ等に応じて、可動部材に対して発電のための相対移動とは異なる相対移動である、可動部材の回転を生み出す回転力(モーメント)が作用しやすくなる。可動部材に回転力が作用すると、振動発電のための相対移動を阻害することになるため、発電効率の低下が避けられない。そこで、上記のように複数の弾性部材の連結部を一箇所とすることで、可動部材の回転による発電効率の低下を回避することが可能となる。
【0018】
また、支持保持部による接触状態の保持に関して、更に別の形態も採用できる。例えば、前記支持保持部は、前記可動部材と前記側方内壁面との間に両者を接近させるように作用する所定の物理力により、該可動部材を該側方内壁面に対して付勢するように構成してもよい。所定の物理力とは、磁力、静電引力、物理的圧力、遠心力等が例示でき、可動部材の相対移動が阻害されない限りにおいて、様々な物理力を採用することができる。
【0019】
ここで、上述までの振動発電素子において、前記振動発電に関連する、前記エレクトレット群に含まれる複数のエレクトレットと前記電極群に含まれる複数の電極との重なり面積が最大となるように、前記相対移動方向を規定する前記側方内壁面の形状に基づいて、該エレクトレット群における該複数のエレクトレットの並びと、該電極群における該複数の電極の並びとが決定されてもよい。振動発電素子の発電効率は、複数のエレクトレットと複数の電極との重なり面積が最大となる場合、最も好ましくは、複数のエレクトレット
の並びと複数の電極の並びとが一致し、アジマスが零となる場合、最大となる。そこで、相対移動方向を規定する側方内壁面の形状に基づいて、複数のエレクトレットの並びと電極の並びを決定することで、可及的に良好な発電効率を実現することが可能となる。特に、本発明に係る振動発電素子では、筐体部内の底面と側方内壁面に確実に追従した可動部材の相対移動が行われることから、上記のようにエレクトレットの並びと電極の並びが決定されることで、発電効率の更なる向上が期待される。
【0020】
また、上述までの振動発電素子において、前記可動部材は、前記相対移動方向に沿って該可動部材が変位した際に、前記筐体部の内壁面であって該可動部材の該相対移動方向に位置する移動方向内壁面と接触する接触部を、該移動方向内壁面に対向する該可動部材の幅における中央部位に有するように構成してもよい。このように、接触部を可動部材の幅の中央部位に配置することで、仮に外部振動の結果、可動部材が最大振幅まで変位し移動方向内壁面に接触した場合に生じる可動部材の回転力について、可動部材の回転中心と回転力の作用点、すなわち接触部と移動方向内壁面の接触位置との距離を短くでき、以て、可動部材に作用する回転力を可及的に小さくすることができる。この結果、回転力による発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0021】
また、上述までの振動発電素子において、前記第一支持部は、前記筐体部内の底面と前記可動部材との間に挟まれて配置される第一回転部材によって、該可動部材を転がり支持し、前記第二支持部は、前記側方内壁面と前記可動部材との間に挟まれて配置される第二回転部材によって、該可動部材を転がり支持するように構成してもよい。このように第一支持部における転がり支持と、第二支持部における転がり支持部とを独立した回転部材で構成することで、各回転部材でのすべりを可及的に抑制することが可能となる。なお、回転部材としては、鋼球や円柱状の部材等が利用できる。
【0022】
また、各支持部での転がり支持を、鋼球を利用することで差動すべりが生じにくい構成とし、可動部材と固定部材との間の相対移動においてすべり摩擦を原理的に排除することができる。例えば、第二支持部による支持を以下のように構成することで、すべり摩擦の排除が期待できる。
(1)上述までの振動発電素子において、前記第二回転部材が球形状を有する鋼球である場合、前記支持保持部による支持状態の保持が行われている状態において、前記鋼球は、該鋼球の落下方向に対向する方向から該鋼球を支持する第一接触点と、該鋼球に対して前記第一方向とは反対側に位置する第二接触点を介して前記可動部材と接触するとともに、第三接触点を介して前記側方内壁面と接触し、そして、前記第一接触点、前記第二接触点、前記第三接触点を結んで形成される仮想三角形は、該第三接触点を頂点とする二等辺三角形としてもよい。
(2)上述までの振動発電素子において、前記第二回転部材は、球形状を有する鋼球である場合、前記支持保持部による支持状態の保持が行われている状態において、前記鋼球は、該鋼球の落下方向に対向する方向から該鋼球を支持する第一接触点を介して前記可動部材と接触するとともに、第二接触点を介して前記側方内壁面と接触し、そして、前記第一接触点、前記第二接触点を結ぶ仮想直線は、該鋼球の中心を通過するように構成されてもよい。
【0023】
また、本発明を振動発電素子の組立方法の観点から捉えることも可能である。その場合、本発明は、外部振動によって、複数のエレクトレットからなるエレクトレット群と複数の電極からなる電極群が、相対移動方向に変位することで振動発電を行う振動発電素子の組立方法であって、前記エレクトレット群と前記電極群を収容する筐体部の外部から、該エレクトレット群と該電極群のうち一方が設けられた固定部材を、該エレクトレット群又は該電極群が該筐体部の内部を向く状態で該筐体部内に挿入する工程と、前記挿入の方向に沿って前記筐体部内の底面に対して所定の高さを有する位置に位置決めされた前記筐体
部側の突起部に、前記固定部材を突き当てた状態で、該固定部材を該筐体部に固定する工程と、前記エレクトレット群と前記電極群のうち他方が設けられた可動部材を支持し、該エレクトレット群と該電極群との間の間隙を規定する第一支持部を、前記筐体部の内部の底面上に配置する工程と、前記可動部材に設けられた前記エレクトレット群又は前記電極群が前記固定部材側を向くように、前記可動部材を前記第一支持部材の上に配置する工程と、前記筐体部内の底面とともに前記相対移動方向を規定する前記筐体部の側方内壁面と、前記可動部材との間に、該可動部材を相対移動可能となるように支持する第二支持部を配置し、該筐体部内の側方内壁面に対して該可動部材を、該第二支持部によって支持された状態で付勢する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0024】
エレクトレットと電極とを対向させた状態で相対的に移動させることで発電を行う振動発電素子において、エレクトレットの並びと電極の並びとのずれ(アジマス)を可及的に低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態に係る振動発電素子について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明に係る振動発電素子10の概略構成、特に、外部振動による振動発電を行う可動部材1と固定部材5のそれぞれに設けられたエレクトレット群1aおよび電極群5aの構成を示す。なお、
図1においては、エレクトレットおよび電極が並べられる方向であって、固定部材5に対する可動部材1の相対移動方向をX方向、可動部材1と固定部材が対向する方向をZ方向、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とする。そして、
図1は振動発電素子10をZX平面で切断したときの断面図である。
【0028】
振動発電素子10において、可動部材1及び固定部材5は、後述する
図2等に示す筐体11の内部に収納される。可動部材1と、固定部材5は、互いに対向した状態を保ったまま、相対的に移動可能に構成されており、当該相対移動を可能とする可動部材1の支持構造については後述する。また、固定部材5は筐体11に固定されている。これに対して、可動部材1は、その両端がそれぞれバネ14によって筺体11につながれているため(
図2等を参照)、可動部材1そのものは、外部振動によって筐体11に固定された固定部材5に対して相対的に往復運動(振動)するように構成されている。
【0029】
なお、可動部材1と固定部材5は、互いに対向した状態で、かつ互いに平行な状態を保ったまま、つまり対向する面の間隔が一定の状態を保ったまま、相対的に移動可能に構成されている。これにより、可動部材1側のエレクトレット2の作用によって固定部材5側の一対の電極6、7に電気信号を生成することが可能となる。この電気信号の生成原理については従来技術であることから、本明細書ではその詳細な説明は割愛する。また、可動部材1と固定部材5との間の間隔を保持する構成、すなわち両者の円滑な相対移動を維持するための構成については後述する。
【0030】
ここで、可動部材1側の構造について説明する。可動部材1は、可動基板1b上に、エレクトレット群1aが形成されている。このエレクトレット群1aは、可動部材1における固定部材5との対向面側に設けられ、それぞれ導電体上に形成された複数のエレクトレット2と、いずれも接地されていない複数のガード電極4を含む。そして、固定部材5に対する可動部材1の相対移動方向(X方向)に沿って、エレクトレット2とガード電極4が交互に並ぶように配置されている。この複数のエレクトレット2と複数のガード電極4はそれぞれ櫛状に形成され、それぞれのエレクトレット2と、それぞれのガード電極4が入れ子状に配置されているが、上記のとおり、
図1はZX断面図であるため、エレクトレット2とガード電極4が交互に配置されているように図示される。本実施形態においては、エレクトレット2はマイナスの電荷を半永久的に保持するように構成されている。
【0031】
なお、ガード電極4については、本実施形態では上記の通り接地させない構成を採用しているが、それに代えて接地させる構成を採用してもよい。
【0032】
次に、固定部材5側の構造について説明する。固定部材5は、固定基板5b上に、電極群5aが形成されている。この電極群5aは、固定部材5における可動部材1との対向面側に設けられ、一対の電極(第一電極6と第二電極7)を一組とする小電極群を複数組み含む。
【0033】
このように構成される振動発電素子10では、外部振動による複数のエレクトレット2を有する可動部材1の固定部材5に対する相対的な位置変動に起因して、電極6、7間に当該相対的位置変動(振動)に応じた起電力が生じ、発電が行われる。そして、発電された電力は整流器20によって整流され、振動発電素子10の出力となる。
【実施例1】
【0034】
図2、
図3A、
図3Bに第一の実施例に係る振動発電素子10の概略構成を示す。
図2は、振動発電素子10の上面図(XY平面における上面図)であり、
図3Aは、
図2におけるA−A断面図(ZY平面における断面図)、
図3Bは、
図2におけるB−B断面図(ZX平面における断面図)である。ただし、
図2は、筐体11の上面11cが外され、その内部が上方より可視化された状態を表している。これらの図からも分かるように、電極群5aおよび固定基板5bを含む固定部材5と、エレクトレット群1aおよび可動基板1bを含む可動部材1は、振動発電素子10の筐体11に収容されている。当該筐体11は、略直方体の形状を有し、上面11cと底面11b、可動部材1の相対移動方向であるX方向に延在する一組の側面11aと、当該相対移動方向に直交する側面であってY方向に
延在する一組の側面11dを有する。
【0035】
そして、
図3Aに示すように、固定部材5は、電極群5aが上方(筐体11の内側)を向くようにして、筐体11の底面11bに固定されている。一方で、このように筐体11に固定された固定部材5に対して、可動部材1は支持用鋼球12を介して該固定部材5に対して相対移動が可能となるように支持されており、当該支持が、本発明に係る第一支持部による可動部材1の支持に相当する。具体的には、
図3A、
図3Bに示すように、可動部材1のエレクトレット群1a側と底面11bの内壁面との間に、可動部材1を支持可能な個数の支持用鋼球12が配置される。すなわち、底面11bの内壁面上に配置された複数の支持用鋼球12の上に、更に可動部材1が配置される構成となっている。このように可動部材が支持用鋼球12で支持された状態で、可動部材1側のエレクトレット群1aと、固定部材5の電極群5aとの間の間隔距離が、振動発電に適した所定の距離に規定される。
【0036】
また、可動部材1については、固定部材5に対する相対移動において、固定部材5側に設けられた電極6、7の並びと、可動部材1側に設けられたエレクトレット2の並びとの間のアジマスを低減させるための更なる支持構造が採用されている。具体的には、可動部材1と側面11aの内壁面との間に更なる支持用鋼球13が配置されている。なお、この支持用鋼球13は、下方に落下しないように可動部材1側の構成により支持されているが、その詳細な構成については後述する。側面11aの内壁面と対向する、可動基板1bの側面の両端に端部側突起1dと、当該可動基板1bの側面の中央部分に中央突起1cが設置され、端部側突起1dと中央突起1cとの間に、支持用鋼球13が配置可能な支持用溝1eが形成される。したがって、
図2に示すように、可動部材1の左右それぞれに2つずつ、支持用溝1eが形成され、それぞれに支持用鋼球13が配置される。このように可動部材1の側方において、筐体11の内壁面との間に支持用鋼球13を配置させることで、固定部材5に対する可動部材1の相対移動方向に沿った移動を円滑に行わせることが可能となる。そして、当該支持が、本発明に係る第二支持部による可動部材1の支持に相当する。
【0037】
更に、可動部材1のXY平面における概ね中央部分に設けられた接続部15を介して、可動部材1と筐体11の2つの側面11dのそれぞれとの間にバネ14が配置されている。
図2に示す状態では、バネ14は側面11dの概ね中央部分に接続され、各バネ14による弾性力は、相対移動方向(X方向)に作用するように配置されている。バネ14の弾性力により、外部振動を受けた可動部材1は筐体11内で往復運動を行い、効率的な振動発電が実現される。
【0038】
このように、本実施例に係る振動発電素子10では、可動部材1については、支持用鋼球12による底面11bに対する支持と、支持用鋼球13による側面11aに対する支持が独立して行われていることになる。この両支持が存在することで、幾何学的条件により相対移動方向が一義的に決定されることになり、固定部材5に対する可動部材1の相対移動を安定して行うことができる。
【0039】
ここで、支持用鋼球12による底面11bに対する支持については、可動部材1の自重の少なくとも一部が支持用鋼球12に掛かるため、底面11bの内壁面に対する支持用鋼球12の追従性は上記相対移動が行われる間において高く維持される。一方で、支持用鋼球13による側面11aに対する支持については、
図2等に示すように振動発電素子10がXY平面に水平に配置される場合には、原理的には、支持用鋼球13を側面11aの内壁面に押し付ける力が作用しないため、当該内壁面に対する支持用鋼球13の追従性は、上記相対移動が行われる間において必ずしも高く維持されるとは限らない。そして、その追従性が低下すると、可動部材1の相対移動のぶれを生じさせるため、相対移動における
電極6、7の並びとエレクトレット2との間のアジマスを増大させる可能性がある。
【0040】
そこで、本発明に係る振動発電素子10においては、支持用鋼球13による側面11aに対する支持において、支持用鋼球13を側面11aの内壁面に押し付ける力を作用させるために、
図4に示す構成を採用する。
図4は、振動発電素子10の配置をZY平面で表わした図である。可動部材1は、紙面に対して垂直方向(X方向)に相対移動する。
図4に示す構成では、振動発電素子10全体がZY平面において傾斜された状態に維持される。具体的には、振動発電素子10が、Y方向に対して傾斜角θで傾斜された斜面を有する傾斜装置16の当該斜面上に、固定装置17を介して固定される。
【0041】
この結果、振動発電素子10は振動発電を行う際には、
図4に示すようにZY平面において傾斜状態が維持されることになる。この場合、可動部材1の自重Fgは、底面11bの内壁面に垂直な分力Fg1と、側面11aの内壁面に垂直な分力Fg2とに分かれて、それぞれの支持用鋼球12、13を介して、それぞれの内壁面に対して作用する。そのため、可動部材1の相対移動が行われる間において、底面11bの内壁面に対する支持用鋼球12の追従性は高く維持されつつ、側面11aの内壁面に対する支持用鋼球13の追従性も高く維持される。したがって、支持用鋼球13を介して可動部材1を側面11aの内壁面に付勢する、振動発電素子10の傾斜状態での設置が、本発明に係る支持保持部に相当する。この結果、可動部材1の相対移動方向が、底面11bの内壁面と側面11の内壁面11aによって一義的に規定されることになるため、可動部材1の相対移動における上記アジマスの増加を抑制することができ、以て、振動発電素子10の振動効率の低下を回避することができる。
【0042】
<振動発電素子10の組立について>
ここで、
図5A〜
図5Fに基づいて振動発電素子10の組み立て方法について説明する。なお、本発明に係る振動発電素子10の組み立ては、以下に示す組み立て方法に限られないが、下記の組み立て方法は、可動部材1の相対移動時のアジマスを抑制する構成を容易に形成する方法として極めて有用なものである。なお、
図5A〜
図5Fの各図において、上段は上面図(XY上面図)であり、下段は断面図(ZY断面図)である。
(工程1)
図5Aに示すように、固定基板5b上に電極群5aを配置することで、固定部材5を形成する。電極群5aの固定基板5bへの固定は、接着剤による接着やカシメやネジ留め等の物理的な固定方法が利用できる。また、電極群5aを固定基板5bに対して正確に位置決めするために、固定基板5b側に位置決め用の突起等を設け、当該突起等に電極群5aを接触させたうえで固定基板5bに固定してもよい。また、電極群5aを固定するためのジグを利用してもよい。
【0043】
(工程2)
次に、
図5Bに示すように、工程1で作成した固定部材5を、電極群5aが筐体11の内部を向くように、筐体11の底面11b側から挿入する。このとき、筐体11の四隅には高さ位置決め用の突起部11eが設けられている。この突起部11eの下面110は、筐体11の底面11bの内壁面111に対して正確に高さ寸法が規定されている。更に、筐体11には、
図5Bにおける横方向(Y方向)の、筐体11に対する固定部材5の位置を決めるための位置決め突起部11fが設けられている。そして、位置決め突起部11fによって横方向の位置決めが行われながら底面11b側から筐体11内に挿入された固定部材5は、突起部11eの下面110に突き当たった状態で、底面11に対して固定される。この固定部材5の固定には、接着剤による接着やカシメやネジ留め等の物理的な固定方法が利用できる。
【0044】
(工程3)
次に、
図5Cに示すように、可動基板1b上にエレクトレット群1aを配置することで、可動部材1を形成する。エレクトレット群1aの可動基板1bへの固定は、接着剤による接着やカシメやネジ留め等の物理的な固定方法が利用できる。また、エレクトレット群1aを可動基板1bに対して正確に位置決めするために、可動基板1b側に位置決め用の突起等を設け、当該突起等にエレクトレット群1aを接触させたうえで可動基板1bに固定してもよい。また、エレクトレット群1aを固定するためのジグを利用してもよい。また、上述したように可動基板1bと側面11aの内壁面との間に支持用鋼球13を配置させるために、エレクトレット群1aの可動基板1bへの固定により支持用溝1eが形成される。
【0045】
(工程4)
次に、
図5Dに示すように、工程2で固定部材5が固定された筐体11において、底面11bの内壁面111上に、支持用鋼球12を配置する。この内壁面111は、固定部材5の固定により、固定部材5の側面と、筐体11の側面11aとの間に位置する。なお、
図5Dは、可動部材1を安定して支持するために4個の支持用鋼球12を配置した状態を示している。
【0046】
(工程5)
次に、
図5Eに示すように、工程4で配置された4個の支持用鋼球12の上に、工程3で作成した可動部材1を載せる。これにより、可動部材1上のエレクトレット群1bの表面は、底面11bの内壁面111を基準として支持用鋼球12の直径分だけ上方に位置することになる。一方で、固定部材5上の電極群5aの表面については、内壁面111を基準に高さが定められた突起部11eの下面110に当該表面が突き当てられることでその高さが決定される。したがって、エレクトレット群1bの表面の高さと、固定部材5上の電極群5aの表面の高さは、ともに内壁面111が基準とされることから、工程5において可動部材1を支持用鋼球12上に載せるだけで、可動部材1と固定部材5の間隔距離を正確に規定することが可能となる。
【0047】
(工程6)
最後に、
図5Fに示すように、工程5で支持用鋼球12上に配置された可動部材1の支持用溝1eに、支持用鋼球13を置くとともに、可動部材1の中央部分に設けられた連結部15を介して可動部材1と筐体11の側面11dとを連結し、上面11cで蓋をすることで筐体11内に可動部材1等を収容する。
【0048】
このように組み立てられた振動発電素子10を、
図4に示す傾斜装置16上に側面11aが下方にくるように設置することで、支持用鋼球13による支持状態を良好に維持することが可能となる。また、上記組み立て方法では、筐体11の内壁面(底面11bの内壁面と、側面11aの内壁面)を利用して支持用鋼球12、13を配置する構成であるため、比較的容易に組み立てを行い得る。
【実施例2】
【0049】
支持用鋼球13による側面11aに対する支持において、支持用鋼球13を側面11aの内壁面に押し付ける力を作用させる構成について、
図6に第二の実施例を示す。本実施例では、連結部15を介して可動部材1に対して連結されている2つのバネ14について、当該バネ14の筐体11側の連結箇所を、上記実施例1の連結箇所、すなわち側面11dの中央部分よりも、押し付け力を作用させる側面11a側に距離ΔLだけ寄った位置としている。この結果、可動部材1がバネ14から受ける弾性力Fk1の方向が、実施例1における方向(概ね相対移動方向)よりも側面11a側を向くことになる。そして、バネ14からの弾性力の合力Fk2が、側面11aに向かって発生し、当該合力が、支持用鋼球13を側面11aの内壁面に押し付ける力として機能することになる。これにより、可
動部材1の相対移動方向が、底面11bの内壁面と側面11の内壁面11aによって一義的に規定されることになるため、可動部材1の相対移動におけるアジマスの増加を抑制することができ、以て、振動発電素子10の振動効率の低下を回避することができる。したがって、支持用鋼球13を介して可動部材1を側面11aの内壁面に付勢する2つのバネ14が、本発明に係る支持保持部に相当する。
【0050】
また
図6に示す構成では、2つのバネ14が1箇所の連結部15を介して可動部材1に連結されることから、複数箇所の連結部でバネ14が連結される場合と比べて、可動部材1に回転力を作用させにくくなる。相対移動方向に相対移動を行う可動部材1に回転運動が生じると振動発電のための相対移動を阻害することになるため、上記連結構成は発電効率の低下を抑制するのに有用である。
【実施例3】
【0051】
ここで、
図7に基づいて、固定部材5における電極群5aに含まれる電極の並びに関する第三の実施例について説明する。筐体11を製造するにあたり、支持用鋼球13を押し付ける側面の厚さが薄くなるほど、その側面自体が湾曲しやすくなる。
図7は、当該側面の湾曲の程度を誇張して記載したものであり、上記までの実施例と区別するために当該湾曲側面の参照番号を11Aとしている。このように湾曲した側面11Aに対して支持用鋼球13を押し付けた状態で可動部材1の相対移動を行っても、ある程度のアジマスの低減は期待できるが、そもそも側面11Aの湾曲に起因したアジマスを排除することは困難である。
【0052】
そこで、固定部材5の電極群5aにおける電極6、7の並びを、側面11Aの湾曲に応じて調整することで、側面11Aの湾曲に起因したアジマスも排除することが可能となる。例えば、
図7に示すように、側面11Aが、その中央部分が内側に膨らむように湾曲している場合には、電極6、7が、側面11Aの内壁面に対して垂直になるように電極群5aを形成する。したがって、
図7に示す例では、電極群5a上の電極間隔が、図の左側(側面11A側)の方が右側よりも狭くなるように、各電極が配置される。
【0053】
このように固定部材5を構成するとともに、支持用鋼球13を側面11Aの内壁面に押し付けることで、仮に側面11Aが湾曲していたとしても、可動部材1の相対移動におけるアジマスの増加を抑制することができ、以て、振動発電素子10の振動効率の低下を可及的に回避することができる。
【実施例4】
【0054】
ここで、
図8に基づいて、本発明に係る振動発電素子10の第四の実施例について説明する。
図8に示す振動発電素子10においては、可動部材1のY方向での中央部分に、可動部材1の相対移動方向に位置する側面11d側に突出した突起部18が設けられている。そして、可動部材1が外部振動により大きく振動した場合、この突起部18が側面11dの内壁面に接触するように構成されている。
【0055】
したがって、可動部材1の振幅が大きくなった場合は、可動部材1は、突起部18に対応する側面11dの内壁面の箇所、すなわち当該内壁面の概ね中央部分に対して接触することになる。このように側面11dと可動部材1の接触箇所が中央部分に近い箇所であるほど、その接触箇所と可動部材1の回転中心との距離を短くすることができるため、接触時に可動部材1に対して作用する回転力を軽減することができる。その結果、振動発電素子10の発電効率の低下を抑制することができる。
【実施例5】
【0056】
ここで、
図9A〜
図9Cに基づいて、支持用鋼球13を介した可動部材1の支持状態に
ついて説明する。
図9A〜
図9Cは、当該支持状態を概略的に記載した図であり、特に、
図9Aは、上述までの実施例に示したように、支持用溝1e内に配置された支持用鋼球13による支持状態を開示している。ここで、
図9Aに示す支持状態では、支持用鋼球13と可動部材1が点P1と点Q1とで接触するとともに、支持用鋼球13と側面11aの内壁面とは点P2で接触する構成となっており、そして、接触点P1、Q1における支持用鋼球13の転がり半径が異なるため差動すべりが生じやすい。例えば、点P1では転がり摩擦が発生するが、点P2ではすべり摩擦が発生するため、支持用鋼球13による支持に関して耐摩耗性の低下や、可動部材1の加速度性能の低下等が懸念される。
【0057】
そこで、支持用鋼球13を介した可動部材1の支持状態に関し、
図9Bに示す支持構成を採用することもできる。当該構成では、支持用溝1eにおいて、支持用鋼球13が下方に落下しないように、突出した斜面1gによって支えられるとともに(その際の支持用鋼球13と斜面1gの接触箇所は点P4となる)、斜面1gの上方に設けられた半球面状の突起部1fに対して支持用鋼球13が接触する。このとき、支持用鋼球13と突起部1fとは点P5で接触するとともに、支持用鋼球13と側面11aの内壁面とは点P6で接触する。そして、点P4、点P5、点P6の相関については、点P6を頂点とする二等辺三角形が形成されるように、斜面1g、突起部1fの大きさ、形状が設計される。その結果、点P4と点P5における支持用鋼球13の転がり半径を同じにでき、以て差動すべりの発生を抑制することができる。
【0058】
また、支持用鋼球13における差動すべりの発生を抑制する構成として、
図9Cに示す構成も採用できる。当該構成では、支持用溝1eにおいて、支持用鋼球13が下方に落下しないように、斜面1hによって支えられ、このとき支持用鋼球13は点P7で斜面1hと接触する。そして、当該斜面1hと平行な斜面11a1が、側面11aの内壁面側に形成され、支持用鋼球13は、この斜面11a1に対して点P8を介して接触する。
図9Cに示す構成では、支持用鋼球13は、点P7と点P8のみで接触し、これらの、点P7と点P8の関係については、点P7と点P8を結ぶ線が、支持用鋼球13の中心を通るように、斜面1h、11a1の形状が設計される。その結果、支持用鋼球13における差動すべりの発生を抑制できる。
【実施例6】
【0059】
ここで、可動部材1と固定部材5の円滑な相対移動を実現するためには、支持用溝1eにおいて支持用鋼球13が、溝1eの両端(中央突起1c、端部側突起1d)と接触しないのが好ましい。したがって、支持用溝1eの長さ(相対移動方向の長さ)は、支持用鋼球13の直径に、可動部材1の最大振幅を加えた長さ以上であるのが好ましい。なお、可動部材1の最大振幅は、想定される外部振動によって可動部材1が相対移動を行うときの振幅の最大値であり、例えば、可動部材1が±2mmで相対移動(振動)する場合には、その最大振幅2mmとなる。