特許第5790613号(P5790613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790613
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ガラスラン
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/04 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   B60J1/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-211753(P2012-211753)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-65394(P2014-65394A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】各務 敏史
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 弘志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 好広
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−280419(JP,A)
【文献】 特開2011−111106(JP,A)
【文献】 特開2011−126466(JP,A)
【文献】 特開2011−131621(JP,A)
【文献】 特開2012−111403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底部と、前記基底部に対して交差する方向に延びる相対する一対の車内側側壁部及び車外側側壁部とを具備する断面略コ字状の本体部と、
前記車内側側壁部及び前記車外側側壁部の略先端から前記本体部の内側に向けて延びる車内側シールリップ及び車外側シールリップとを備え、
ドアのベルトラインよりも上方に設けられるフレーム対応部に関しては、
前記車内側側壁部及び前記車外側側壁部の略先端から前記本体部の外側に向けて延びる車内側意匠リップ及び車外側意匠リップを備え、
ドアフレームの内周に沿って設けられた互いに対向する車内側フランジ部及び車外側フランジ部の間に前記本体部が押し込まれ、前記車内側側壁部と前記車内側意匠リップとで前記車内側フランジ部を挟み、前記車外側側壁部と前記車外側意匠リップとで前記車外側フランジ部を挟むことで、ドアフレームの内周に沿って取着されるガラスランであって、
ドアガラスの上縁部に対応して設けられるガラスラン上辺部に関しては、
前記基底部と前記車内側側壁部との端部間を連結する車内側連結部と、
前記基底部と前記車外側側壁部との端部間を連結する車外側連結部とを備え、
前記車内側連結部及び前記車外側連結部は、
前記車内側側壁部及び前記車外側側壁部のドアフレーム外周側端部からそれぞれ前記本体部の外周側に延出し、前記各側壁部よりも薄肉の第1連結辺部と、
前記第1連結辺部の先端部から前記基底部側、かつ、前記本体部内周側に延出する第2連結辺部と、
前記第2連結辺部の先端部から前記本体部外周側に延出し、前記基底部の端部に連結される第3連結辺部とを備えていることを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
前記第1連結辺部と前記第2連結辺部との連結部位における厚みは、前記第2連結辺部と前記第3連結辺部との連結部位における厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のガラスラン。
【請求項3】
ガラスラン上辺部の前記基底部がドアガラスによって押圧されていない状態において、前記基底部の前記本体部外周側面と、前記車内側連結部の前記第1連結辺部と前記第2連結辺部との連結部位と、前記車外側連結部の前記第1連結辺部と前記第2連結辺部との連結部位とが、仮想の同一直線上にほぼ位置することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスラン。
【請求項4】
前記第3連結辺部は前記第1連結辺部よりも厚肉に構成され、
前記車内側連結部及び前記車外側連結部のうち少なくとも一方に関し、前記第2連結辺部と前記第3連結辺部との連結部位は、ガラスラン上辺部の前記基底部がドアガラスによって押圧されていない状態では、ドアガラスの昇降方向に対して交差する方向において対応する前記側壁部と略当接していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のドアには、ドアフレームの内周に沿ってガラスランが設けられている。ガラスランは、その長手方向に直交する断面方向から見ると、基底部と、該基底部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部とを具備する断面略コ字形の本体部を備えるとともに、両側壁部の先端からそれぞれ本体部の内側に向けて延びる車内側シールリップ及び車外側シールリップを備えている。上記ガラスランは、前記本体部がドアフレームの内周に沿って設けられた取付部に取着され、両シールリップによって、昇降するドアガラスの内外面の周縁部が挟まれるようにしてシールされる。
【0003】
また、従来、一般的な取付部は、ドアフレームを構成するアウタパネルの端縁で構成される車外側フランジ部と、インナパネルの端縁で構成される車内側フランジ部と、車外側フランジ部と車内側フランジ部との間に設けられる断面略コ字状のチャンネル部材とを備えている。これに対し、近年、軽量化及び低コスト化を図るべく、チャンネル部材が省略されたものも見受けられる。このようなドア(所謂プレスドア)に取付けられるガラスランは、車内側側壁部及び車外側側壁部の先端から本体部の外側に延びる車内側意匠リップ及び車外側意匠リップを備えている。そして、本体部が一対のフランジ部の間に押込まれ、車内側意匠リップと車内側側壁部とで車内側フランジ部が挟み込まれるとともに、車外側意匠リップと車外側側壁部とで車外側フランジ部が挟み込まれることで、ガラスランが取付部に取付けられている(例えば、特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4145233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ドアに関しては、チャンネル部材でガラスランの基底部を支持することができないため、ドアガラスが上昇して窓部が閉鎖される際に、ガラスランの上辺部の基底部がドアガラスに突き上げられ、上方に変位してしまうおそれがある。この場合、一対の側壁部についても追従して上方に変位してしまい、これに伴って、一対の意匠リップがそれぞれフランジ部から離間するようにして変形(口開き)してしまうおそれがある。この場合、外観品質の低下等を招くことが懸念される。
【0006】
本発明は、上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、ドア窓部を閉鎖した際の意匠リップの変形を防止することのできるガラスランを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.基底部と、前記基底部に対して交差する方向に延びる相対する一対の車内側側壁部及び車外側側壁部とを具備する断面略コ字状の本体部と、
前記車内側側壁部及び前記車外側側壁部の略先端から前記本体部の内側に向けて延びる車内側シールリップ及び車外側シールリップとを備え、
ドアのベルトラインよりも上方に設けられるフレーム対応部に関しては、
前記車内側側壁部及び前記車外側側壁部の略先端から前記本体部の外側に向けて延びる車内側意匠リップ及び車外側意匠リップを備え、
ドアフレームの内周に沿って設けられた互いに対向する車内側フランジ部及び車外側フランジ部の間に前記本体部が押し込まれ、前記車内側側壁部と前記車内側意匠リップとで前記車内側フランジ部を挟み、前記車外側側壁部と前記車外側意匠リップとで前記車外側フランジ部を挟むことで、ドアフレームの内周に沿って取着されるガラスランであって、
ドアガラスの上縁部に対応して設けられるガラスラン上辺部に関しては、
前記基底部と前記車内側側壁部との端部間を連結する車内側連結部と、
前記基底部と前記車外側側壁部との端部間を連結する車外側連結部とを備え、
前記車内側連結部及び前記車外側連結部は、
前記車内側側壁部及び前記車外側側壁部のドアフレーム外周側端部からそれぞれ前記本体部の外周側に延出し、前記各側壁部よりも薄肉の第1連結辺部と、
前記第1連結辺部の先端部から前記基底部側、かつ、前記本体部内周側に延出する第2連結辺部と、
前記第2連結辺部の先端部から前記本体部外周側に延出し、前記基底部の端部に連結される第3連結辺部とを備えていることを特徴とするガラスラン。
【0009】
手段1によれば、ドアガラスでドア窓部を閉鎖した場合に、ガラスラン上辺部の基底部がドアガラスによって押し上げられたとしても、車内側連結部及び車外側連結部が追従的に上方に伸長するようにして変形することとなる。このため、基底部の変位に起因する応力が車内側側壁部及び車外側側壁部に対してほとんど及ばないようにすることができる。従って、ドアガラスによって押し上げられた基底部とともに一対の側壁部が上方に引っ張られて上方に変位してしまうことに起因して、一対の意匠リップが本体部の外方に広がるようにして変形(口開き)してしまうといった懸念を払拭することができる。結果として、ドア窓部の閉鎖時等において、意匠リップがフランジ部から離間してしまうことを防止することができ、外観品質の向上を図ることができる。
【0010】
特に、本手段によれば、車内側及び車外側の両方に同様の連結部が設けられているため、車内側意匠リップ及び車外側意匠リップの両方に関して上記作用効果が奏されることとなる。さらに、例えば、連結部が車内側又は車外側のどちらか一方だけに設けられている場合に比べ、ドアガラスによって基底部が押圧された際に、傾倒した基底部によってドアガラスが車内側又は車外側に不要に変位させられてしまうといった事態を回避することができる。
【0011】
また、本手段では、第1連結辺部は、側壁部から本体部の外周側に延出している。このため、ガラスラン上辺部の基底部が上方に相対変位する際に、第1連結辺部を側方に開くように傾倒させつつ、連結部を上方に伸長変形させる(第2連結辺部をドアフレーム外周側に向けて傾倒させる)ことができる。すなわち、例えば、第1連結辺部が本体部内周側に延出している場合には、連結部を上方に伸長変形させようとしても、連結部の左右方向への変位を許容するような余地がないことから、第1連結辺部や第3連結辺部を無理やりに中間部位から屈曲変形させない限り、連結部を上方に伸長させることができない。これでは、連結辺部への負担が大きく、連結辺部が破れてしまうおそれがある。さらには、伸長変形したとしても、ドアガラスが基底部から離間して、ドアガラスからの応力が解除されたにもかかわらず、自身の弾性力では伸長変形前の元の断面形状に戻れないようになってしまうことが懸念される。この点、本手段のように、第1連結辺部を側壁部から本体部外周側に延出させ、連結部を伸長変形させる際に、連結辺部の中間部位を屈曲させることなく、連結部位においてスムースに展開させる構成を採用することにより、上記不具合を払拭することができる。
【0012】
さらに、例えば、連結部が第1連結辺部及び第2連結辺部のみで構成される場合において、各連結辺部が短過ぎる場合、伸縮変形量が小さくなり、ドアガラスによってガラスラン上辺部の基底部が押し上げられた場合に、連結部の変形許容量を超えてしまい、側壁部が上方に変位してしまったり、連結部が損傷したりするおそれがある。その一方で、各連結辺部が長過ぎる場合、本体部の断面形状を維持し難くなってしまうことが懸念される。
【0013】
この点、第1連結辺部及び第2連結辺部だけでなく、第3連結辺部をも備えることで、各連結辺部が長過ぎてしまうことを回避しつつ、第1連結辺部及び第2連結辺部の損傷等を防止することができる。また、基底部をよりフレキシブルに変位可能にすることができる。すなわち、ドアガラスが基底部に対してイレギュラーな当たり方(例えば、搭乗者がドアガラスを押圧した状態でドアガラスが閉鎖される等)をしても十分に対処することができる。
【0014】
手段2.前記第1連結辺部と前記第2連結辺部との連結部位における厚みは、前記第2連結辺部と前記第3連結辺部との連結部位における厚みよりも薄いことを特徴とする手段1に記載のガラスラン。
【0015】
手段2によれば、第2連結辺部と第3連結辺部との連結部位よりも、第1連結辺部と第2連結辺部との連結部位をより積極的に変形させることができる。これにより、連結部を上方に伸長変形させる際に、第1連結辺部をよりスムースに側方に開くようにして変形させ、第2連結辺部をドアフレーム外周側に向けてよりスムースに傾倒変形させることができる。
【0016】
手段3.ガラスラン上辺部の前記基底部がドアガラスによって押圧されていない状態において、前記基底部の前記本体部外周側面と、前記車内側連結部の前記第1連結辺部と前記第2連結辺部との連結部位と、前記車外側連結部の前記第1連結辺部と前記第2連結辺部との連結部位とが、仮想の同一直線上にほぼ位置することを特徴とする手段1又は2に記載のガラスラン。
【0017】
手段3によれば、例えば、左右の連結部の第1連結辺部と第2連結辺部との連結部位が、基底部よりも大幅に本体部外周側に突出位置している場合に比べ、本体部の断面形状を維持し易くすることができる。さらに、第1連結辺部及び第2連結辺部がガラスランとは別の部材に当接してしまって、連結部の変形動作等に支障を来してしまうといった事態を回避することができる。また、例えば、基底部が、左右の連結部の第1連結辺部と第2連結辺部との連結部位よりも大幅に本体部外周側に突出位置している場合に比べ、基底部が側壁部から上方に離間し過ぎてしまうといった事態を回避しつつ、連結部の各連結辺部の長さを十分に確保することができる。
【0018】
手段4.前記第3連結辺部は前記第1連結辺部よりも厚肉に構成され、
前記車内側連結部及び前記車外側連結部のうち少なくとも一方に関し、前記第2連結辺部と前記第3連結辺部との連結部位は、ガラスラン上辺部の前記基底部がドアガラスによって押圧されていない状態では、ドアガラスの昇降方向に対して交差する方向において対応する前記側壁部と略当接していることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のガラスラン。
【0019】
手段4によれば、ドアガラスの昇降方向に対して交差する方向(左右方向)における基底部の位置ずれを抑制することができる。その一方で、側壁部の基端部側が本体部内周側に傾倒することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ドアの概略構成を示す正面模式図である。
図2図1のJ−J線断面図である。
図3】ドアガラスが窓部閉鎖時の正規位置にある状態のガラスランを示す断面図である。
図4】基底部がドアガラスによって突上げられた状態にあるガラスランを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、自動車のドア用開口部に開閉可能に設けられるフロントドア(以下、単に「ドア1」と称する)には、ドア1の窓部Wを開閉する昇降可能なドアガラスGと、当該ドアガラスGの外周形状に対応して設けられ、ドアガラスGの昇降を案内するとともに、窓部Wを画定するドアフレーム2とドアガラスGの周縁部との間をシールするガラスラン4とが設けられている。
【0022】
ガラスラン4は、ドアガラスGの上縁部に対応する押出成形部5、ドアガラスGの前後の縦縁部に対応する押出成形部6、7と、押出成形部5−6、5−7の端末部同士を接続する型成形部8、9とを備えている。各押出成形部5〜7は、図示しない押出成形機によりほぼ直線状に形成される。型成形部8、9は、2つの押出成形部5−6、5−7が所定の角度をなした状態で相互に接続されるように図示しない金型装置にて接続成形される。そして、ドアフレーム2の内周に沿って形成されるサッシュ部DS、及びサッシュ部DSの前後の縦辺部を下方に延長するようにしてドアパネル3内に設けられたチャンネル部DCに当該ガラスラン4が取付けられている。本実施形態におけるガラスラン4は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)により構成されている。
【0023】
図2に示すように、押出成形部5が取付けられるサッシュ部DSは、ドアフレーム2等を構成するインナパネル31、及び、アウタパネル32の端部をそれぞれ窓部Wの内周側(図2では下側)に折り曲げることで形成された車内側フランジ部33、及び、車外側フランジ部34によって構成されている。すなわち、サッシュ部DSは、車内側フランジ部33及び車外側フランジ部34間に略コ字状のチャンネル部材を介在させない構成(チャンネルレス構造)となっている。これにより、軽量化及びコストの削減等が図られている。
【0024】
一方、押出成形部5は、断面略コ字状をなし、ドアフレーム2内周側に開口する向きでサッシュ部DSに嵌め込まれる本体部11と、本体部11の開口側端縁から本体部11の内側に延出する車内側シールリップ12及び車外側シールリップ13と、本体部11の開口側端縁から本体部11の外側に延出する車内側意匠リップ14及び車外側意匠リップ15とを備えている。そして、本体部11を車内側フランジ部33と車外側フランジ部34との間に嵌め込むことで、車内側フランジ部33が車内側側壁部18と車内側意匠リップ14とで挟み込まれるとともに、車外側フランジ部34が車外側側壁部19と車外側意匠リップ15とで挟み込まれる。これにより、押出成形部5がサッシュ部DSに取付けられている。さらに、ドアガラスGにより窓部Wが閉鎖された状態においては、車内側シールリップ12がドアガラスGの車内側面に圧接され、車外側シールリップ13がドアガラスGの車外側面に圧接される。これにより、ドアガラスGの車内側及び車外側がそれぞれシールされるようになっている。
【0025】
また、本実施形態の本体部11は、基底部17と、基底部17に対して交差する方向に延びる相対する一対の車内側側壁部18及び車外側側壁部19と、基底部17の車内側端縁と車内側側壁部18のドアフレーム2外周側端縁との間を連結する車内側連結部22と、基底部17の車外側端縁と車外側側壁部19のドアフレーム2外周側端縁との間を連結する車外側連結部23とを備えている。
【0026】
車内側連結部22は、車内側側壁部18のドアフレーム2外周側端縁(上縁部)から本体部11の外周側(上方)に延出する第1連結辺部22aと、第1連結辺部22aの先端部から基底部17側(車外側)、かつ、本体部11内周側(下方)に延出する第2連結辺部22bと、第2連結辺部22bの先端部から本体部11外周側(上方かつ車外側)に延出し、基底部17の車内側端縁に連結される第3連結辺部22cとを備えている。また、車外側連結部23についても、車外側側壁部19のドアフレーム2外周側端縁(上縁部)から本体部11の外周側(上方)に延出する第1連結辺部23aと、第1連結辺部23aの先端部から基底部17側(車内側)、かつ、本体部11内周側(下方)に延出する第2連結辺部23bと、第2連結辺部23bの先端部から本体部11外周側(上方かつ車内側)に延出し、基底部17の車外側端縁に連結される第3連結辺部23cとを備えている。
【0027】
また、車内側連結部22において、第1連結辺部22aと第2連結辺部22bとの連結部位における厚みは、第2連結辺部22bと第3連結辺部22cとの連結部位における厚みよりも薄く構成されている。さらに、車外側連結部23において、第1連結辺部23aと第2連結辺部23bとの連結部位における厚みは、第2連結辺部23bと第3連結辺部23cとの連結部位における厚みよりも薄く構成されている。加えて、第3連結辺部22c、23cは、対応する第1連結辺部22a、23aよりも厚肉に構成されており、本実施形態では、基底部17とほぼ同じ厚みを有している。
【0028】
また、車内側連結部22の第1連結辺部22aは、車内側側壁部18よりも薄肉に構成されるとともに、車内側側壁部18のドアフレーム2外周側端面のうち車内側部位から延出している。一方、車外側連結部23の第1連結辺部23aは、車外側側壁部19よりも薄肉に構成されるとともに、車外側側壁部19のドアフレーム2外周側端面のうち車外側部位から延出している。さらに、車内側側壁部18のドアフレーム2外周側端面は、車内側に向けて上方傾斜して延びている。一方、車外側側壁部19のドアフレーム2外周側端面は、車外側に向けて上方傾斜して延びている。
【0029】
本実施形態では、図2に示すように、押出成形部5の基底部17がドアガラスGによって押圧されていない状態では、車内側側壁部18のドアフレーム2外周側端面と、車内側連結部22の第2連結辺部22bと第3連結辺部22cとの連結部位とが、ドアガラスGの昇降方向に対して交差する方向(左右方向)において略当接している。また、車外側の部位に関しては、車外側側壁部19のドアフレーム2外周側端面と、車外側連結部23の第2連結辺部23bと第3連結辺部23cとの連結部位とが、ドアガラスGの昇降方向に対して交差する方向(左右方向)において対向している。さらに、押出成形部5の基底部17がドアガラスGによって押圧されていない状態において、基底部17の本体部11外周側面(上面)と、車内側連結部22の第1連結辺部22aと第2連結辺部22bとの連結部位と、車外側連結部23の第1連結辺部23aと第2連結辺部23bとの連結部位とが、仮想の同一直線X上にほぼ位置するように構成されている。
【0030】
加えて、本体部11の内側には、車内側連結部22の第2連結辺部22bと第3連結辺部22cとの連結部位から車外側に延出する内リップ25が設けられている。当該内リップ25は、基底部17の内側面のうちドアガラスGと当接する部位を覆うようにして設けられている。図3に示すように、内リップ25は、窓部Wを閉鎖したドアガラスGによって押し上げられると、基底部17との間に中空部を形成するようにして、車外側連結部23の第2連結辺部23bと第3連結辺部23cとの連結部位と当接するようになっている。このように内リップ25が設けられることによって、遮音性やシール性の向上を図ることができる。
【0031】
また、ドアガラスGが比較的勢いよく上昇して窓部Wが閉鎖される際には、ドアガラスGの上縁部が内リップ25に衝突する。この場合、図4に示すように、基底部17がドアガラスGによって内リップ25を介して上方に押し上げられるとともに、基底部17の上方への変位に伴って、車内側連結部22及び車外側連結部23が追従的に上方に伸長変形する。このため、車内側側壁部18及び車外側側壁部19には、基底部17が上方に変位したことに起因する応力、すなわち、上方に持ち上げられるような力がほとんど作用しないようになっている。
【0032】
特に、本実施形態の車内側連結部22及び車外側連結部23は、折り畳まれるようにして設けられている第1連結辺部22a、23a、第2連結辺部22b、23b、及び、第3連結辺部22c、23cが展開するようにして伸長変形する。より具体的には、第1連結辺部22a、23aが側方に開くようにして傾倒変位しつつ、第1連結辺部22a、23aと第2連結辺部22b、23bとのなす角度を広げるようにして、第2連結辺部22b、23bがドアフレーム2外周側に向けて傾倒変位する。これにより、第1連結辺部22a、23a、第2連結辺部22b、23b、及び、第3連結辺部22c、23cが各中間位置において屈曲されたり、基底部17が左右に変位したりすることなく、連結部22、23を比較的スムースに上方に伸長させ、側壁部18、19には影響が及ばないように、基底部17を比較的スムースに上方に変位させることができる。
【0033】
また、第2連結辺部22bと第3連結辺部22cとの連結部位や第3連結辺部22cについては、比較的厚肉であるため、第1連結辺部22aや第2連結辺部22bの第1連結辺部22aとの連結部位に比べると変形し難いが、少なくとも基底部17が比較的大きく上方に変位させられ、第1連結辺部22aや第2連結辺部22bの第1連結辺部22aとの連結部位における緊張がある程度高まった場合等には、追従的に変形する。これにより、第1連結辺部22aや第2連結辺部22bの第1連結辺部22aとの連結部位へ過大な負担がかかることを防止することができ、第1連結辺部22aや第2連結辺部22bの第1連結辺部22aとの連結部位が損傷する等のおそれを防止することができる。
【0034】
尚、図2に示すように、サッシュ部DSには、押出成形部5の基底部17上面と対向する位置において、インナパネル31が折り曲げられることで形成された取付壁部36が設けられている。取付壁部36のドアフレーム2外周側面には図示しないドアウエザストリップが(例えば、クリップで)取付けられている。
【0035】
一方、取付壁部36のドアフレーム2内周側面には、ドアガラスGが上昇して窓部Wが閉鎖された際に、ドアガラスGの上縁部で押圧される押出成形部5の基底部17を支持して、基底部17のそれ以上の上方への変位を規制するストッパ部材38(図1参照)が取付けられている。すなわち、ストッパ部材38は、取付壁部36と押出成形部5の基底部17との間の空間に設置されており、本実施形態では、押出成形部5の前後2箇所に対応して設けられている。
【0036】
通常、ストッパ部材38は、押出成形部5の基底部17上面に対して近接配置されており、上昇するドアガラスGによって押出成形部5の基底部17が若干上方に持ち上げられると、かかる基底部17上面がストッパ部材38によって支持され、ドアガラスGのそれ以上の上方への変位が規制されることとなる。しかしながら、サッシュ部DS、インナパネル31、及び、ガラスラン4の製造誤差や取付誤差等が生じ、ストッパ部材38が正規の位置よりも上方に位置ずれして設けられた場合には、窓部Wの閉時にドアガラスGに押圧されて基底部17が比較的大きく上方に変位してしまうことが懸念される。この点、上記のように車内側連結部22及び車外側連結部23を備えることによって、基底部17の上方への変位の影響が側壁部18、19に及ぶことを防止することができ、たとえ基底部17が上方に変位したとしても、意匠リップ14、15が側方に開くようにして変形してしまうといった事態を回避することができる。
【0037】
尚、押出成形部6、7、型成形部8、9についても、基本的に押出成形部5と同様の断面形状をなし、本体部11及びシールリップ12、13等を備えている。但し、ガラスラン4のうち、ベルトライン10(図1参照)よりも上方に位置するドアサッシュDSに取付けられる部位(フレーム対応部)に関しては意匠リップ14、15が設けられているが、ベルトライン10の下方に延設されているチャンネル部DCに取付けられる部位(パネル対応部)に関しては、チャンネル部DCが断面略コ字状のチャンネル部材を具備することから意匠リップ14、15が省略されている。また、押出成形部6、7、型成形部8、9に関しては、連結部22、23や内リップ25が省略されている。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ドアガラスGで窓部Wを閉鎖した場合に、ガラスラン4の上辺部を構成する押出成形部5の基底部17がドアガラスGによって押し上げられたとしても、車内側連結部22及び車外側連結部23が追従的に上方に伸長するようにして変形することから、基底部17の変位に起因する応力が車内側側壁部18及び車外側側壁部19に対してほとんど及ばないようにすることができる。従って、ドアガラスGによって押し上げられた基底部17とともに一対の側壁部18、19が上方に引っ張られて上方に変位してしまうことに起因して、一対の意匠リップ14、15が本体部11の外方に広がるようにして変形(口開き)してしまうといった懸念を払拭することができる。結果として、窓部Wの閉鎖時等において、意匠リップ14、15がフランジ部33、34から離間してしまうことを防止することができ、外観品質の向上を図ることができる。
【0039】
特に、本実施形態によれば、車内側及び車外側の両方に同様の連結部22、23が設けられているため、車内側意匠リップ14及び車外側意匠リップ15の両方に関して上記作用効果が奏されることとなる。さらに、例えば、車内側連結部22又は車外側連結部23のどちらか一方だけが設けられる場合に比べ、ドアガラスGによって基底部17が押圧された際に、傾倒変位した基底部17によってドアガラスGが車内側又は車外側に不要に変位させられてしまうといった事態を回避することができる。
【0040】
また、本実施形態では、第1連結辺部22a、23aは、側壁部18、19から本体部11の外周側に延出している。このため、押出成形部5の基底部17が上方に相対変位する際に、第1連結辺部22a、23aを側方に開くように傾倒させつつ(チャンネル部材がないことから第1連結辺部22a、23aが外側に開くスペースは十分にある)、連結部22、23を上方に伸長変形させる(第2連結辺部22b、23bをドアフレーム2外周側に向けて傾倒させる)ことができる。すなわち、例えば、第1連結辺部22a、23aが本体部11内周側に延出している場合には、連結部22、23を上方に伸長変形させようとしても、連結部22、23の左右方向への変位を許容するような余地がないことから、第1連結辺部22a、23aや第3連結辺部22c、23cを無理やりに中間部位から屈曲変形させない限り、連結部22、23を上方に伸長させることができない。これでは、連結辺部22a、23a、22c、23cへの負担が大きく、連結辺部22a、23a、22c、23cが破れてしまうおそれがある。さらには、伸長変形したとしても、ドアガラスGが基底部17から離間して、ドアガラスGからの応力が解除されたにもかかわらず、自身の弾性力では伸長変形前の元の断面形状に戻れないようになってしまうことが懸念される。この点、本実施形態のように、第1連結辺部22a、23aを側壁部18、19から本体部11外周側に延出させ、連結部22、23を伸長変形させる際に、連結辺部22a、23a、22b、23b、22c、23cの中間部位を屈曲させることなく、連結部位においてスムースに展開させる構成を採用することにより、上記不具合を払拭することができる。
【0041】
さらに、例えば、連結部22、23が第1連結辺部22a、23a、及び、第2連結辺部22b、23bのみで構成される場合において、各連結辺部22a、23a、22b、23bが短過ぎる場合、伸縮変形量が小さくなり、ドアガラスGによって押出成形部5の基底部17が押し上げられた場合に、連結部22、23の変形許容量を超えてしまい、側壁部18、19が上方に変位してしまったり、連結部22、23が損傷したりするおそれがある。その一方で、各連結辺部22a、23a、22b、23bが長過ぎる場合、本体部11の断面形状を維持し難くなってしまうことが懸念される。
【0042】
この点、第3連結辺部22c、23cをも備えることで、各連結辺部22a、23a、22b、23b、22c、23cが長過ぎてしまうことを回避しつつ、第1連結辺部22a、23a、及び、第2連結辺部22b、23bの損傷等を防止することができる。また、基底部17をよりフレキシブルに変位可能にすることができる。すなわち、ドアガラスGが基底部17に対してイレギュラーな当たり方(例えば、搭乗者がドアガラスGを押圧した状態でドアガラスGが閉鎖される等)をしても十分に対処することができる。
【0043】
また、本実施形態では、第1連結辺部22a、23aと第2連結辺部22b、23bとの連結部位における厚みは、第2連結辺部22b、23bと第3連結辺部22c、23cとの連結部位における厚みよりも薄くなっている。このため、第2連結辺部22b、23bと第3連結辺部22c、23cとの連結部位よりも、第1連結辺部22a、23aと第2連結辺部22b、23bとの連結部位をより積極的に変形させることができる。これにより、連結部22、23を上方に伸長変形させる際に、第1連結辺部22a、23aをよりスムースに側方に開くようにして変形させ、第2連結辺部22b、23bをドアフレーム2外周側に向けてよりスムースに傾倒変形させることができる。
【0044】
加えて、第3連結辺部22c、23cは第1連結辺部22a、23aよりも厚肉に構成され、車内側連結部22の第2連結辺部22bと第3連結辺部22cとの連結部位は、押出成形部5の基底部17がドアガラスGによって押圧されていない状態では、ドアガラスGの昇降方向に対して交差する方向において車内側側壁部18と略当接している。このため、ドアガラスGの昇降方向に対して交差する方向(左右方向)における基底部17の位置ずれを抑制することができる。その一方で、車内側側壁部18の基端部側が本体部11内周側に傾倒することを抑制することができる。
【0045】
また、第1連結辺部22a、23aは対応する側壁部18、19よりも薄肉に構成されるとともに、側壁部18、19のドアフレーム2外周側端面のうち左右方向(ドア1の厚み方向)における本体部11外周側部位から延出している。さらに、側壁部18、19のドアフレーム2外周側端面はドアガラスGの昇降方向に対して交差する方向に傾斜して延び、押出成形部5の基底部17がドアガラスGによって押圧されていない状態で、車内側側壁部18の端面と、車内側連結部22の第2連結辺部22bと第3連結辺部22cとの連結部位とが、ドアガラスG昇降方向に対して交差する方向において略当接している。並びに、車外側の部位に関しても、車外側側壁部19の端面と、車外側連結部23の第2連結辺部23bと第3連結辺部23cとの連結部位とが、ドアガラスG昇降方向に対して交差する方向において対向している。このため、連結部22、23を包含する本体部11をよりコンパクトにまとめることができる。
【0046】
また、押出成形部5の基底部17がドアガラスGによって押圧されていない状態において、基底部17の上面と、車内側連結部22の第1連結辺部22aと第2連結辺部22bとの連結部位と、車外側連結部23の第1連結辺部23aと第2連結辺部23bとの連結部位とが、仮想の同一直線X上にほぼ位置するように構成されている。このため、例えば、左右の連結部22、23の第1連結辺部22a、23aと第2連結辺部22b、23bとの連結部位が、基底部17よりも大幅に本体部11外周側に突出位置している場合に比べ、本体部11の断面形状を維持し易くすることができる。さらに、第1連結辺部22a、23a及び第2連結辺部22b、23bがガラスラン4とは別の部材(例えば、ストッパ部材38)に当接してしまって、連結部22、23の変形動作等に支障を来してしまうといった事態を回避することができる。また、例えば、基底部17が、左右の連結部22、23の第1連結辺部22a、23aと第2連結辺部22b、23bとの連結部位よりも大幅に本体部11外周側に突出位置している場合に比べ、基底部17が側壁部18、19から上方に離間し過ぎてしまうといった事態を回避しつつ、連結部22、23の各連結辺部22a、23a、22b、23b、22c、23cの長さを十分に確保することができる。
【0047】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0048】
(a)上記実施形態ではガラスラン4をEPDMにより構成しているが、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の別の素材により構成してもよい。また、フロントドアのガラスラン4に具体化されているが、リアドア等のガラスランに適用してもよい。加えて、上記実施形態では、ガラスラン4を押出成形部と型成形部とにより構成しているが、全体を型成形体により構成してもよい。
【0049】
(b)上記実施形態では、取付壁部36の下面側に押出成形部5の上方への変位を規制するストッパ部材38が取付けられているが、別の構成を用いて押出成形部5の上方への変位を規制することとしてもよい。また、ストッパ部材38を省略することも可能である。
【0050】
(c)上記実施形態では、図2等に示すように、車内側側壁部18及び車内側シールリップ12が、車外側側壁部19及び車外側シールリップ13よりも大きく構成されたガラスラン4に具体化されているが、例えば、断面形状が略左右対称形状のガラスランに適用してもよい。また、内リップ25を省略することも可能である。加えて、上記実施形態において、型成形部8、9のうちドアガラスGの上縁部に対応する部位の少なくとも一部に対して連結部22、23や内リップ25を設けることとしてもよい。
【0051】
また、車外側連結部23の第2連結辺部23bと第3連結辺部23cとの連結部位は、押出成形部5の基底部17がドアガラスGによって押圧されていない状態では、ドアガラスGの昇降方向に対して交差する方向において車外側側壁部19と略当接していることとしてもよい。この場合、基底部17の車外側への位置ずれをより確実に防止することができるとともに、車外側側壁部19の本体部11内周側への傾倒変位をより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…ドア、2…ドアフレーム、4…ガラスラン、5〜7…押出成形部、11…本体部、12…車内側シールリップ、13…車外側シールリップ、14…車内側意匠リップ、15…車外側意匠リップ、17…基底部、18…車内側側壁部、19…車外側側壁部、22…車内側連結部、23…車外側連結部、22a,23a…第1連結辺部、22b,23b…第2連結辺部、22c,23c…第3連結辺部、33…車内側フランジ部、34…車外側フランジ部、DS…サッシュ部、G…ドアガラス、W…窓部、X…仮想直線。
図1
図2
図3
図4