特許第5790655号(P5790655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790655
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】フッ素ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20150917BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150917BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20150917BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   C08L27/12
   C08K3/04
   C08K5/14
   C08K5/3477
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-530721(P2012-530721)
(86)(22)【出願日】2011年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2011069230
(87)【国際公開番号】WO2012026554
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2012年11月16日
(31)【優先権主張番号】61/377,017
(32)【優先日】2010年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 大助
(72)【発明者】
【氏名】植田 豊
(72)【発明者】
【氏名】北市 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】福岡 昌二
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−055050(JP,A)
【文献】 特開平08−277347(JP,A)
【文献】 特開2010−100777(JP,A)
【文献】 特開2005−067279(JP,A)
【文献】 特表2006−513304(JP,A)
【文献】 米国特許第06232390(US,B1)
【文献】 特開昭56−086948(JP,A)
【文献】 特表2013−514438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物架橋可能なフッ素ゴム(A)100質量部あたり、カーボンブラック(B)5〜50質量部、過酸化物架橋系架橋剤(C)0.01〜10質量部、および低自己重合性架橋促進剤(D)0.01〜1.0質量部を含み、
カーボンブラック(B)は、窒素吸着比表面積(NSA)が10〜180m/gであって、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が40〜180ml/100gであるカーボンブラックであり、
低自己重合性架橋促進剤(D)は、トリメタリルイソシアヌレート、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、マレイミド、N−フェニレンマレイミド及びN,N’−フェニレンビスマレイミドからなる群より選択される少なくとも1種であるフッ素ゴム組成物。
【請求項2】
フッ素ゴム(A)が、フッ化ビニリデン系共重合体ゴム、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体ゴム、またはテトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体ゴムである請求項記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項3】
低自己重合性架橋促進剤(D)が、トリメタリルイソシアヌレートである請求項1又は2記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項4】
ラバープロセスアナライザ(RPA)による動的粘弾性試験(測定周波数:1Hz、測定温度:100℃)において、未架橋時の動的歪み1%時の剪断弾性率G’(1%)および動的歪み100%時の剪断弾性率G’(100%)の差δG’(G’(1%)−G’(100%))が、120kPa以上3,000kPa以下である請求項1〜のいずれか1項に記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のフッ素ゴム組成物を架橋して得られるフッ素ゴム架橋物。
【請求項6】
動的粘弾性試験(測定温度:160℃、引張歪み:1%、初期加重:157cN、周波数:10Hz)において、損失弾性率E”が、400kPa以上6000kPa以下である請求項記載のフッ素ゴム架橋物。
【請求項7】
動的粘弾性試験(測定温度:160℃、引張歪み:1%、初期加重:157cN、周波数:10Hz)において、貯蔵弾性率E’が1500kPa以上20000kPa以下である請求項5又は6記載のフッ素ゴム架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、本明細書において全体にわたって参照として組み込まれた2010年8月25日出願の米国仮特許出願第61/377,017号の35U.S.C.§119(e)に基づく利益を請求する。
【0002】
本発明は、高温時の機械物性に優れた架橋物を与えるフッ素ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
フッ素ゴムは耐薬品性、耐油性、耐熱性に優れて、高温において良好な耐圧縮永久歪み性を有することが知られているが、高温時の機械物性、たとえば熱時強度、熱時伸びなどの向上が近年望まれており、たとえば100℃を超える高温環境下でフッ素ゴム架橋物を使用する場合、耐熱性だけではなく、高温時の機械特性にも優れた耐久性に富むことが求められる。
【0004】
たとえば、圧縮永久歪み改善の観点からは、特許文献1に示されるような組成物が提案されているが、室温伸びが小さいので、熱時伸びについては更に小さくなると予想される。また、熱時伸びの改善としては、特許文献2に示されているが、更に苛酷な使用環境下では耐えうるような物性ではない。高温時強度の改善例としては、特許文献3に示されているように、フッ素ゴムと含フッ素熱可塑性エラストマーの組合せが例示されているが、室温伸びが小さいので、熱時伸びについては更に小さくなると予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−55050号公報
【特許文献2】特開2008−184496公報
【特許文献3】特開平06−25500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐熱性だけではなく、高温時の機械物性にも優れた架橋物を与えるフッ素ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、過酸化物架橋可能なフッ素ゴム(A)100質量部あたり、カーボンブラック(B)5〜50質量部、過酸化物架橋系架橋剤(C)0.01〜10質量部、および低自己重合性架橋促進剤(D)2.5質量部以下を含むフッ素ゴム組成物に関する。
【0008】
カーボンブラック(B)としては、窒素吸着比表面積(NSA)が5〜180m/gであって、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が40〜180ml/100gであるカーボンブラックが好ましい。
【0009】
フッ素ゴム(A)としては、フッ化ビニリデン系共重合体ゴム、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体ゴム、またはテトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体ゴムが、耐熱性(耐熱老化性)、耐油性が良好な点から好ましい。
【0010】
低自己重合性架橋促進剤(D)としては、トリメタリルイソシアヌレートであることが好ましい。
【0011】
低自己重合性架橋促進剤(D)は、フッ素ゴム(A)100質量部あたり2.0質量部以下含まれることが好ましい。
【0012】
また、本発明のフッ素ゴム組成物は、ラバープロセスアナライザ(RPA)による動的粘弾性試験(測定周波数:1Hz、測定温度:100℃)において、未架橋時の動的歪み1%時の剪断弾性率G’(1%)および動的歪み100%時の剪断弾性率G’(100%)の差δG’(G’(1%)−G’(100%))が、120kPa以上3,000kPa以下である組成物であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、過酸化物架橋系架橋剤(C)および低自己重合性架橋促進剤(D)を配合した形態で本発明のフッ素ゴム組成物を架橋成形して得られるフッ素ゴム架橋物にも関する。
【0014】
このフッ素ゴム架橋物は、動的粘弾性試験(測定温度:160℃、引張歪み:1%、初期加重:157cN、周波数:10Hz)において、損失弾性率E”が、400kPa以上6000kPa以下であることが好ましい。
【0015】
また、更に動的粘弾性試験(測定温度:160℃、引張歪み:1%、初期加重:157cN、周波数:10Hz)において、貯蔵弾性率E’が1500kPa以上20000kPa以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐熱性だけではなく、高温時の機械物性にも優れた架橋物を与えるフッ素ゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のゴム組成物は、過酸化物架橋可能なフッ素ゴム(A)100質量部あたり、カーボンブラック(B)5〜50質量部、過酸化物架橋系架橋剤(C)0.01〜10質量部、および低自己重合性架橋促進剤(D)2.5質量部以下を含む。
【0018】
以下、各要件について説明する。
【0019】
(A)過酸化物架橋可能なフッ素ゴム
本発明におけるフッ素ゴム(A)は過酸化物架橋可能なフッ素ゴムであればよく、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)および式(1):
CF=CF−R (1)
(式中、Rは−CFまたは−OR(Rは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(たとえばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)など)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0020】
別の観点からは、フッ素ゴム(A)としては、非パーフルオロフッ素ゴムおよびパーフルオロフッ素ゴムが好ましい。
【0021】
非パーフルオロフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、またはフルオロホスファゼン系フッ素ゴムなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。これらの中でも、VdF系フッ素ゴム、TFE/Pr系ゴム、TFE/Pr/VdF系ゴムが、耐熱老化性、耐油性が良好な点からより好適である。
【0022】
上記VdF系ゴムは、VdF繰り返し単位が、VdF繰り返し単位とその他の共単量体に由来する繰り返し単位との合計モル数の20モル%以上、90モル%以下が好ましく、40モル%以上、85モル%以下であることがより好ましい。更に好ましい下限は45モル%、特に好ましい下限は50モル%であり、更に好ましい上限は80モル%である。
【0023】
そして、上記VdF系ゴムにおける共単量体としてはVdFと共重合可能であれば特に限定されず、たとえば、TFE、HFP、PAVE、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、一般式(2)
CH=CFR (2)
(式中、Rは炭素数1〜12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基)で表される含フッ素単量体などのフッ素含有単量体;エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル等のフッ素非含有単量体、架橋性基(キュアサイト)を与える単量体、および反応性乳化剤などが挙げられ、これらの単量体や化合物のなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
前記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましく、特にPMVEが好ましい。
【0025】
また、前記PAVEとして、式:CF=CFOCFOR
(式中、Rは炭素数1〜6の直鎖または分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖または分岐状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるパーフルオロビニルエーテルを用いてもよく、CF=CFOCFOCF3 、CF=CFOCFOCFCF3 、または、CF=CFOCFOCFCFOCF を用いることが好ましい。
【0026】
上記式(2)で表される含フッ素単量体としては、Rが直鎖のフルオロアルキル基である単量体が好ましく、Rが直鎖のパーフルオロアルキル基である単量体がより好ましい。Rの炭素数は1〜6であることが好ましい。上記式(2)で表される含フッ素単量体としては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFCFなどが挙げられ、なかでも、CH=CFCFで示される2,3,3,3−テトラフルオロプロピレンが好ましい。
【0027】
上記VdF系ゴムとしては、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/プロピレン(Pr)共重合体、VdF/エチレン(Et)/HFP共重合体及びVdF/式(2)で表される含フッ素単量体の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましく、また、VdF以外の他の共単量体として、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種の共単量体を有するものであることがより好ましい。このなかでも、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体の共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体及びVdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましく、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体の共重合体及びVdF/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体がより好ましく、VdF/HFP共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体の共重合体及びVdF/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が特に好ましい。
【0028】
VdF/HFP共重合体は、VdF/HFPの組成が、(45〜85)/(55〜15)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは(60〜80)/(40〜20)(モル%)である。
【0029】
VdF/TFE/HFP共重合体は、VdF/TFE/HFPの組成が(30〜80)/(4〜35)/(10〜35)(モル%)のものが好ましい。
【0030】
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEの組成が(65〜90)/(35〜10)(モル%)のものが好ましい。
【0031】
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEの組成が(40〜80)/(3〜40)/(15〜35)(モル%)のものが好ましい。
【0032】
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEの組成が(65〜90)/(3〜25)/(3〜25)(モル%)のものが好ましい。
【0033】
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合としては、VdF/HFP/TFE/PAVEの組成が(40〜90)/(0〜25)/(0〜40)/(3〜35)(モル%)のものが好ましく、(40〜80)/(3〜25)/(3〜40)/(3〜25)(モル%)のものがより好ましい。
【0034】
VdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)系共重合体としては、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が85/15〜20/80であり、VdFおよび含フッ素単量体(2)以外の他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%のものが好ましく、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が80/20〜20/80であることがより好ましい。またVdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が85/15〜50/50であり、VdFおよび含フッ素単量体(2)以外他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%であるものも好ましい。VdFおよび含フッ素単量体(2)以外の他の単量体としては、TFE、HFP、PMVE、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、PPVE、CTFE、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル、架橋性基を与える単量体、および反応性乳化剤などの上記VdFの共単量体として例示した単量体が好ましく、なかでもPMVE、CTFE、HFP、TFEであることがより好ましい。
【0035】
TFE/プロピレン(Pr)系フッ素ゴムとは、TFE45〜70モル%、プロピレン(Pr)55〜30モル%からなる含フッ素共重合体をいう。これら2成分に加えて、特定の第3成分(たとえばPAVE)を0〜40モル%含んでいてもよい。
【0036】
エチレン(Et)/HFP共重合体としては、Et/HFPの組成が、(35〜80)/(65〜20)(モル%)であることが好ましく、(40〜75)/(60〜25)(モル%)がより好ましい。
【0037】
Et/HFP/TFE共重合体は、Et/HFP/TFEの組成が、(35〜75)/(25〜50)/(0〜15)(モル%)であることが好ましく、(45〜75)/(25〜45)/(0〜10)(モル%)がより好ましい。
【0038】
パーフルオロフッ素ゴムとしては、TFE/PAVEからなるものなどが挙げられる。TFE/PAVEの組成は、(50〜90)/(50〜10)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは、(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは、(55〜75)/(45〜25)(モル%)である。
【0039】
この場合のPAVEとしては、たとえばPMVE、PPVEなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0040】
また、フッ素ゴム(A)は数平均分子量Mn5000〜500000のものが好ましく、10000〜500000のものが更に好ましく、特に20000〜500000のものが好ましい。
【0041】
過酸化物架橋系に好適なフッ素ゴム(A)としては、上記のようにTFE単位、VdF単位または式(1)の含フッ素単量体単位を少なくとも含むパーフルオロフッ素ゴムおよび非パーフルオロフッ素ゴムのいずれもが使用できるが、特にVdF系ゴム、TFE/Pr系ゴムが好ましい。
【0042】
以上説明した非パーフルオロフッ素ゴムおよびパーフルオロフッ素ゴムは、乳化重合、懸濁重合、溶液重合などの常法により製造することができる。特にヨウ素(臭素)移動重合として知られるヨウ素(臭素)化合物を使用した重合法によれば、分子量分布が狭いフッ素ゴムを製造できる。
【0043】
また、たとえばフッ素ゴム組成物の粘度を低くしたい場合などでは、上記のフッ素ゴム(A)に他のフッ素ゴムをブレンドしてもよい。他のフッ素ゴムとしては、低分子量液状フッ素ゴム(数平均分子量1000以上)、数平均分子量が10000程度の低分子量フッ素ゴム、更には数平均分子量が100000〜200000程度のフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0044】
また、前記非パーフルオロフッ素ゴムやパーフルオロフッ素ゴムとして例示したものは主単量体の構成であり、過酸化物架橋性基を与える単量体を共重合したものも好適に用いることができる。過酸化物架橋性基を与える単量体としては、製造法に応じて適切な架橋性基を導入できるものであればよく、たとえばヨウ素原子、臭素原子、炭素−炭素二重結合などを含む公知の重合性化合物、連鎖移動剤などが挙げられる。
【0045】
好ましい架橋性基を与える単量体としては、
式(3):
CY12=CY21 (3)
(式中、Y1、Y2はフッ素原子、水素原子または−CH3;Rは1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく、芳香環を有していてもよい、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基;X1はヨウ素原子または臭素原子)
で示される化合物が挙げられる。具体的には、たとえば、式(4):
CY12=CY2f3CHR1−X1 (4)
(式中、Y1、Y2、X1は前記同様であり、Rf3は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基、すなわち水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素オキシアルキレン基、または水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素ポリオキシアルキレン基;R1は水素原子またはメチル基)
で示されるヨウ素含有モノマー、臭素含有モノマー、一般式(5)〜(22):
CY42=CY4(CF2n−X1 (5)
(式中、Y4は、同一又は異なり、水素原子またはフッ素原子、nは1〜8の整数)
CF2=CFCF2f4−X1 (6)
(式中、
【化1】
であり、nは0〜5の整数)
CF2=CFCF2(OCF(CF3)CF2m
(OCH2CF2CF2nOCH2CF2−X1 (7)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数)
CF2=CFCF2(OCH2CF2CF2m
(OCF(CF3)CF2nOCF(CF3)−X1 (8)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))mO(CF2n−X1 (9)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜8の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))m−X1 (10)
(式中、mは1〜5の整数)
CF2=CFOCF2(CF(CF3)OCF2nCF(−X1)CF3 (11)
(式中、nは1〜4の整数)
CF2=CFO(CF2nOCF(CF3)−X1 (12)
(式中、nは2〜5の整数)
CF2=CFO(CF2n−(C64)−X1 (13)
(式中、nは1〜6の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF(CF3)−X1 (14)
(式中、nは1〜2の整数)
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−X1 (15)
(式中、nは0〜5の整数)、
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2n−X1 (16)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数)
CH2=CFCF2OCF(CF3)OCF(CF3)−X1 (17)
CH2=CFCF2OCH2CF2−X1 (18)
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)mCF2CF(CF3)−X1 (19)
(式中、mは0以上の整数)
CF2=CFOCF(CF3)CF2O(CF2n−X1 (20)
(式中、nは1以上の整数)
CF2=CFOCF2OCF2CF(CF3)OCF2−X1 (21)
CH2=CH−(CF2n1 (22)
(式中、nは2〜8の整数)
(一般式(5)〜(22)中、X1は前記と同様)
で表されるヨウ素含有モノマー、臭素含有モノマーなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
【0046】
式(4)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしては、一般式(23):
【化2】
(式中、mは1〜5の整数であり、nは0〜3の整数)
で表されるヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルが好ましく挙げられ、より具体的には、
【化3】
などが挙げられるが、これらの中でも、ICH2CF2CF2OCF=CF2が好ましい。
【0047】
式(5)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、ICF2CF2CF=CH2、I(CF2CF22CF=CH2が好ましく挙げられる。
【0048】
式(9)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、I(CF2CF22OCF=CF2が好ましく挙げられる。
【0049】
式(22)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、CH2=CHCF2CF2I、I(CF2CF22CH=CH2が好ましく挙げられる。
【0050】
また、式:RC=CR−Z−CR=CR
(式中、R、R、R、R、RおよびRは同じかまたは異なり、いずれもH、または炭素数1〜5のアルキル基;Zは、直鎖状もしくは分岐状の、酸素原子を含んでいてもよい、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された炭素数1〜18のアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基)で示されるビスオレフィン化合物も架橋性基を与える単量体として好ましい。なお、本明細書において、「(パー)フルオロポリオキシアルキレン基」とは、「フルオロポリオキシアルキレン基又はパーフルオロポリオキシアルキレン基」を意味する。
【0051】
Zは好ましくは炭素数4〜12の(パー)フルオロアルキレン基であり、R、R、R、R、RおよびRは好ましくは水素原子である。
【0052】
Zが(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である場合、式:
−(Q)−CFO−(CFCFO)−(CFO)−CF−(Q)
(式中、Qは炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数2〜10のオキシアルキレン基であり、pは0または1であり、m及びnはm/n比が0.2〜5となり且つ該(パー)フルオロポリオキシアルキレン基の分子量が500〜10000、好ましくは1000〜4000の範囲となるような整数である。)で表される(パー)フルオロポリオキシアルキレン基であることが好ましい。この式において、Qは好ましくは、−CHOCH−及び−CHO(CHCHO)CH−(s=1〜3)の中から選ばれる。
【0053】
好ましいビスオレフィンは、
CH=CH−(CF−CH=CH
CH=CH−(CF−CH=CH
式:CH=CH−Z−CH=CH
(式中、Zは−CHOCH−CFO−(CFCFO)−(CFO)−CF−CHOCH−(m/nは0.5))
などが挙げられる。
【0054】
なかでも、CH=CH−(CF−CH=CHで示される3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-ドデカフルオロ−1,9−デカジエンが好ましい。
【0055】
本発明で採用する過酸化物架橋系により架橋する場合、特に架橋点に炭素−炭素結合を有している場合は、架橋点に炭素−酸素結合を有するポリオール架橋系および炭素−窒素二重結合を有するポリアミン架橋系に比べて、耐薬品性および耐スチーム性に優れているという特徴がある。
【0056】
また、架橋性の観点から、過酸化物架橋可能なフッ素ゴム(A)としては、架橋点としてヨウ素原子および/または臭素原子を含むフッ素ゴムが好ましい。ヨウ素原子および/または臭素原子の含有量としては、0.001〜10質量%、更には0.01〜5質量%、特に0.01〜3質量%が好ましい。
【0057】
また、加工性の観点から、フッ素ゴム(A)は100℃におけるムーニー粘度が20〜200、更には30〜180の範囲にあることが好ましい。ムーニー粘度は、ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定する。
【0058】
(B)カーボンブラック
本発明のフッ素ゴム組成物において、カーボンブラック(B)は、フッ素ゴム(A)と、更に過酸化物架橋系架橋剤(C)および低自己重合性架橋促進剤(D)を配合した形態で架橋成形することにより、耐熱性だけではなく、高温時の機械物性にも優れたフッ素ゴム架橋物を与えるものであれば限定されない。
【0059】
そうしたカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられ、具体的にはたとえば、SAF−HS(NSA:142m/g、DBP:130ml/100g)、SAF(NSA:142m/g、DBP:115ml/100g)、N234(NSA:126m/g、DBP:125ml/100g)、ISAF(NSA:119m/g、DBP:114ml/100g)、ISAF−LS(NSA:106m/g、DBP:75ml/100g)、ISAF−HS(NSA:99m/g、DBP:129ml/100g)、N339(NSA:93m/g、DBP:119ml/100g)、HAF−LS(NSA:84m/g、DBP:75ml/100g)、HAS−HS(NSA:82m/g、DBP:126ml/100g)、HAF(NSA:79m/g、DBP:101ml/100g)、N351(NSA:74m/g、DBP:127ml/100g)、LI−HAF(NSA:74m/g、DBP:101ml/100g)、MAF−HS(NSA:56m/g、DBP:158ml/100g)、MAF(NSA:49m/g、DBP:133ml/100g)、FEF−HS(NSA:42m/g、DBP:160ml/100g)、FEF(NSA:42m/g、DBP:115ml/100g)、SRF−HS(NSA:32m/g、DBP:140ml/100g)、SRF−HS(NSA:29m/g、DBP:152ml/100g)、GPF(NSA:27m/g、DBP:87ml/100g)、SRF(NSA:27m/g、DBP:68ml/100g)、SRF−LS(NSA:23m/g、DBP:51ml/100g)、FT(NSA:19m/g、DBP:42ml/100g)、MT(NSA:8m/g、DBP:43ml/100g)などが挙げられる。これらのカーボンブラックは単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0060】
なかでも、カーボンブラックの好ましいものとしては、窒素吸着比表面積(NSA)が5〜180m/gであって、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が40〜180ml/100gであるカーボンブラックが挙げられる。なお、カーボンブラックとして、NSAやDBPの値の高いものを用いるときは、前述した損失弾性率E”や貯蔵弾性率E’の値が高くなる。
【0061】
窒素吸着比表面積(NSA)が5m/gよりも小さくなると、ゴムに配合した場合の機械物性が低下する傾向にあり、この観点から、窒素吸着比表面積(NSA)は10m/g以上が好ましく、20m/g以上がより好ましく、25m/g以上が特に好ましい。上限は、一般的に入手しやすい観点から180m/gが好ましい。
【0062】
ジブチルフタレート(DBP)吸油量が40ml/100gよりも小さくなると、ゴムに配合した場合の機械物性が低下する傾向にあり、この観点から、50ml/100g以上、更には60ml/100g以上、特には80ml/100g以上が好ましい。上限は一般的に入手しやすい観点から、175ml/100g、更には170ml/100gが好ましい。
【0063】
カーボンブラック(B)の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して5〜50質量部が好ましい。カーボンブラック(B)が多くなりすぎると機械物性が低下する傾向にあり、また、少なくなりすぎると機械物性が低下する傾向にある。更に好ましい配合量は、物性バランスが良好な点から、フッ素ゴム(A)100質量部に対して6質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、物性バランスが良好な点から49質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。
【0064】
本発明の組成物は、フッ素ゴム(A)とカーボンブラック(B)からなるフッ素ゴム組成物の予備混練物に、更に架橋剤(C)および低自己重合性架橋促進剤(D)が配合されている。
【0065】
架橋剤(C)および低自己重合性架橋促進剤(D)は、架橋するフッ素ゴム(A)の種類(たとえば共重合組成、架橋性基の有無や種類など)、得られる架橋物の具体的用途や使用形態、そのほか混練条件などに応じて、適宜選択することができる。
【0066】
(C)過酸化物架橋系の架橋剤
過酸化物架橋系の架橋剤(C)としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る過酸化物であればよく、具体的には、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−m−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどの有機過酸化物を挙げることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン又は2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
【0067】
過酸化物架橋系架橋剤(C)の配合量としては、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜9質量部である。過酸化物架橋系架橋剤が、0.01質量部未満であると、フッ素ゴム(A)の架橋が充分に進行せず、10質量部を超えると、物性のバランスが低下する。
【0068】
(D)低自己重合性架橋促進剤
本発明において、低自己重合性架橋促進剤(D)は、過酸化物架橋系において、架橋促進剤としてよく知られているトリアリルイソシアヌレート(TAIC)とは異なり、自己重合性が低い化合物をいう。このような自己重合性の低い架橋促進剤(D)を用いることで、高温時の機械物性にも優れ、かつ、高温時の疲労特性(たとえば繰返し使用における耐疲労性)を備えた架橋物を得ることができる。
【0069】
低自己重合性架橋促進剤(D)としては、たとえば、
【化4】
で示されるトリメタリルイソシアヌレート(TMAIC)、
【化5】
で示されるp−キノンジオキシム(p-quinonedioxime)、
【化6】
で示されるp,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム(p,p’-dibenzoylquinonedioxime)、
【化7】
で示されるマレイミド、
【化8】
で示されるN−フェニレンマレイミド、
【化9】
で示されるN,N’−フェニレンビスマレイミドなどが挙げられる。
【0070】
好ましい低自己重合性架橋促進剤(D)は、トリメタリルイソシアヌレート(TMAIC)である。
【0071】
低自己重合性架橋促進剤(D)の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、2.5質量部以下、好ましくは、2.0質量部以下、より好ましくは、1.5質量部以下、更に好ましくは、1.5質量部未満、特に好ましくは、1.0質量部以下である。下限はアンダーキュアの防止の観点から好ましくは0.01質量部である。架橋促進剤(D)が2.5質量部を超えると、高温時の疲労特性が低下する。
【0072】
なお、従来公知の架橋促進剤や共架橋剤、たとえばTAICなどは、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、1.5質量部未満、好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.8質量部以下であれば、併用してもよい。
【0073】
本発明のフッ素ゴム組成物には、必要に応じて通常のゴム配合物、たとえば充填材、加工助剤、可塑剤、着色剤、接着助剤、受酸剤、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤のほか、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンなどの他の重合体などを本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0074】
充填材としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;合成ハイドロタルサイト;二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅などの金属硫化物;ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填材、ポリテトラフルオロエチレン、マイカ、シリカ、セライト、クレーなどが例示できる。また、受酸剤として、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられ、これらの単独または2種以上を適宜配合してもよい。これらは、後述する混練方法で、どの工程で添加するかは任意であるが、密閉式混練機やロール練り機でフッ素ゴムとカーボンブラックを混練する際に添加するのが好ましい。
【0075】
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチルなどの高級脂肪酸エステル;カルナバワックス、セレシンワックスなどの石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどのポリグリコール;ワセリン、パラフィンなどの脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ロジン、(ハロゲン化)ジアルキルアミン、界面活性剤、スルホン化合物、フッ素系助剤、有機アミン化合物などが例示できる。
【0076】
なかでも有機アミン化合物や受酸剤は、フッ素ゴム(A)とカーボンブラック(B)を密閉式混練機やロール練り機で混練する際に共存させることにより、補強性が向上する点から好ましい配合剤である。混練は、最高温度Tmが80℃〜220℃となるように行うことが好ましい(つまり、混練時の混練物の最高温度Tm80℃〜220℃とし、その温度で排出する条件にて混練することが好ましい。以下同様)。
【0077】
有機アミン化合物としては、RNHで示される1級アミン、RNHで示される2級アミン、RNで示される3級アミンが好ましく挙げられる。R、R、Rは同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜50のアルキル基が好ましく、アルキル基は官能基としてベンゼン環を含んでいてもよいし、二重結合、共役二重結合を含んでいてもよい。なお、アルキル基は直鎖型であってもよいし、分岐型でもあってもよい。
【0078】
1級アミンとしては、たとえばココナッツアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、17−フェニル−ヘプタデシルアミン、オクタデカ−7,11−ジエニルアミン、オクタデカ−7.9−ジエニルアミン、オクタデック−9−エニルアミン、7−メチル−オクタデック−7−エニルアミンなどが挙げられ、2級アミンとしては、たとえばジステアリルアミンなどが、3級アミンとしては、たとえばジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミンなどが挙げられる。なかでも炭素数が20個程度のアミン、特に1級アミンが入手の容易性や補強性が増大する点から好ましい。
【0079】
有機アミン化合物の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。有機アミン化合物が多くなりすぎると混練しにくくなる傾向にあり、また、少なくなりすぎると補強性が低下する傾向にある。更に好ましい配合量は、補強性の観点から、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.1質量部以上であり、補強性の観点と混練しやすさの観点から4質量部以下である。受酸剤としては、先述したもののうち、たとえば、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、ハイドロタルサイトなどが、補強性の観点から好ましく、特に酸化亜鉛が好ましい。
【0080】
受酸剤の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましい。受酸剤が多くなりすぎると物性が低下する傾向にあり、また、少なくなりすぎると補強性が低下する傾向にある。更に好ましい配合量は、補強性の観点から、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.1質量部以上であり、物性の観点と混練しやすさの観点から8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0081】
フッ素ゴム組成物の調製方法は、通常のゴム練り方法にしたがって行うことができる。より具体的には、つぎの各方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0082】
(1)密閉式混練機にフッ素ゴム(A)とカーボンブラック(B)、要すれば有機アミン化合物および/または受酸剤を所定量投入し、ローターの平均剪断速度を50〜1000(1/秒)、好ましくは100〜1000(1/秒)、更に好ましくは200〜1000(1/秒)に調整して、混練の最高温度Tmが80〜220℃(好ましくは120〜200℃)となる条件で混練する方法。なお、密閉式混練機には、加圧ニーダーやバンバリーミキサー、一軸混練機、二軸混練機などが挙げられる。
【0083】
(2)ロール練り機にフッ素ゴム(A)とカーボンブラック(B)、要すれば有機アミン化合物および/または受酸剤を所定量投入し、ローターの平均剪断速度を50(1/秒)以上、混練の最高温度Tmが80〜220℃(好ましくは120〜200℃)となる条件で混練する方法。
【0084】
上記(1)、(2)の方法で得られるフッ素ゴム組成物は架橋剤や架橋促進剤などを含んでいない。また、上記(1)、(2)の方法の混練を複数回行ってもよい。複数回行う場合、2回目以降の混練条件は、混練の最高温度Tmを140℃以下とする以外は上記(1)、(2)の方法と同じ条件でよい。
【0085】
本発明で用いる架橋性のフッ素ゴム組成物の調製法の1つは、たとえば、上記(1)、(2)の方法で得られた、あるいは上記(1)、(2)の方法を複数回繰り返して得られたフッ素ゴム組成物に、更に架橋剤(C)および低自己重合性架橋促進剤(D)を配合し混練する方法である。
【0086】
架橋剤(C)と架橋促進剤(D)は同時に配合し混練してもよいし、まず架橋促進剤(D)を配合混練し、ついで架橋剤(C)を配合混練してもよい。架橋剤(C)と架橋促進剤(D)の混練条件は、混練の最高温度Tmが130℃以下であるほかは、上記(1)、(2)の方法と同じ条件でよい。
【0087】
架橋性のフッ素ゴム組成物の別の調製法は、たとえばロール練り機にフッ素ゴム(A)とカーボンブラック(B)、架橋剤(C)および低自己重合性架橋促進剤(D)を適切な順序で所定量投入し、ローターの平均剪断速度を50(1/秒)以上、混練の最高温度Tmが130℃以下の条件で混練する方法が挙げられる。
【0088】
本発明の好ましいゴム組成物は、ラバープロセスアナライザによる動的粘弾性試験(測定周波数:1Hz、測定温度:100℃)において、未架橋時の動的歪み1%時の剪断弾性率G’(1%)および動的歪み100%時の剪断弾性率G’(100%)の差δG’(G’(1%)−G’(100%))が、120kPa以上3,000kPa以下である。なお、前述の予備混練(上記(1)、(2)の混練など)を行う場合は、得られた予備混練物が前記差δG’を有することがより好ましい。
【0089】
差δG’は、ゴム組成物の補強性という性質を評価する指標として用い、ラバープロセスアナライザによる動的粘弾性試験で測定算出される。
【0090】
差δG’が120kPa以上3,000kPa以下の範囲にあるフッ素ゴム組成物は、常態物性および高温時の機械物性、高温時の疲労特性などの点で有利である。
【0091】
差δG’は、常態物性および高温時の機械物性、高温時の疲労特性などが良好な点から、好ましくは150kPa以上、更には160kPa以上であり、常態物性および高温時の機械物性、高温時の疲労特性などが良好な点から、好ましくは2800kPa以下、更に好ましくは2500kPa以下である。
【0092】
架橋剤(C)および低自己重合性架橋促進剤(D)を配合する前のフッ素ゴム組成物において、差δG’は上記の範囲に入っていることが好ましい。また、上記差δG’の範囲は、架橋剤(C)および低自己重合性架橋促進剤(D)を配合したフッ素ゴム組成物においても満たされていることが好ましい。
【0093】
なお、良好なカーボンゲルネットワーク補強構造を形成させて、後述する特定の差δG’を有するフッ素ゴム組成物や、後述する特定の損失弾性率E” や貯蔵弾性率E’を有する架橋物を得るという観点からは、50(1/秒)以上の平均剪断速度にて混練を行うことが望ましい。
【0094】
平均剪断速度(1/秒)は、つぎの式により算出される。
平均剪断速度(1/秒)=(π×D×R)/(60(秒)×c)
(式中、
D:ローター径またはロール径(cm)
R:回転速度(rpm)
c:チップクリアランス(cm。ローターとケーシングとの間隙の距離、またはロール同士の間隙の距離)
【0095】
本発明のフッ素ゴム組成物の架橋法は、適宜選択すればよいが、たとえば押出法やプレス法、射出法などの通常の架橋方法を採用することができる。また、ホースなどの管状に架橋する場合は、架橋缶などを用いた架橋方法等が採用される。また、押出成形、巻蒸し成形などの成形方法を採用することもできる。また、架橋物の使用目的によって二次架橋が必要な場合は、更にオーブン架橋を施してもよい。
【0096】
得られるフッ素ゴム架橋物はまた、動的粘弾性試験(測定モード:引張、チャック間距離:20mm、測定周波数:10Hz、初期加重:157cN、測定温度:160℃)において、引張歪み1%時の損失弾性率E”が、400kPa以上6000kPa以下であるとき、常態物性および高温時の機械物性などに特に優れたものとなる。
【0097】
損失弾性率E”が上記範囲であるとき、常態物性および高温時の機械物性などに特に優れたものとなる。下限としては好ましくは420kPa以上、より好ましくは430kPa以上であり、上限としては好ましくは5900kPa以下、より好ましくは5800kPa以下である。
【0098】
また、得られるフッ素ゴム架橋物は、動的粘弾性試験(測定モード:引張、チャック間距離:20mm、測定温度:160℃、引張歪み:1%、初期加重:157cN、周波数:10Hz)において、貯蔵弾性率E’が1500kPa以上20000kPa以下であることが、高温時の機械物性の向上の点から更に好ましい。下限としては、好ましくは1600kPa、より好ましくは1800kPaであり、上限としては、好ましくは19000kPa、より好ましくは18000kPaである。
【0099】
また、フッ素ゴム架橋物は、160℃において、100〜700%、更には110%以上、特に120%以上、また680%以下、特に650%以下の引張破断伸びを有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0100】
また、フッ素ゴム架橋物は、160℃において、1MPa以上、更には1.5MPa以上、特に2MPa以上、また30MPa以下、特に28MPa以下の引張破断強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。引張破断強度および引張破断伸びは、JIS−K6251に準じて、6号ダンベルを用いて測定する。
【0101】
また、フッ素ゴム架橋物は、160℃において、3〜30kN/m、更には4kN/m以上、特に5kN/m以上、また29kN/m以下、特に28kN/m以下の引裂き強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0102】
また、フッ素ゴム架橋物は、200℃において、100〜700%、更には110%以上、特に120%以上、また680%以下、特に650%以下の引張破断伸びを有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0103】
また、フッ素ゴム架橋物は、200℃において、1〜30MPa、更には1.5MPa以上、特に2MPa以上、また29MPa以下、特に28MPa以下の引張破断強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0104】
また、フッ素ゴム架橋物は、200℃において、3〜30kN/m、更には4kN/m以上、特に5kN/m以上、また29kN/m以下、特に28kN/m以下の引裂き強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0105】
本発明のフッ素ゴム架橋物は、種々の用途に利用できるが、特にたとえばつぎのような各種の用途に好適に使用できる。
【0106】
(1)ホース
ホースとしては、本発明のフッ素ゴム組成物を架橋成形して得られるフッ素ゴム架橋物のみからなる単層構造のホースであってもよいし、他の層との積層構造の多層ホースであってもよい。
【0107】
単層構造のホースとしては、たとえば排気ガスホース、EGRホース、ターボチャージャーホース、燃料ホース、ブレーキホース、オイルホースなどが例示できる。
【0108】
多層構造のホースとしても、たとえば排気ガスホース、EGRホース、ターボチャージャーホース、燃料ホース、ブレーキホース、オイルホースなどが例示できる。
【0109】
ターボシステムはディーゼルエンジンに多く装備され、エンジンからの排気ガスをタービンに送って回転させることによりタービンに連結されているコンプレッサーを動かし、エンジンに供給する空気の圧縮比を高め、出力を向上させるシステムである。エンジンの排気ガスを利用し、かつ高出力を得るこのターボシステムは、エンジンの小型化、自動車の低燃費化および排気ガスのクリーン化にも繋がる。
【0110】
ターボチャージャーホースは、圧縮空気をエンジンに送り込むためのホースとしてターボシステムに用いられている。狭いエンジンルームの空間を有効活用するためには、可撓性や柔軟性に優れたゴム製のホースが有利であり、典型的には、耐熱老化性や耐油性に優れたゴム(特にフッ素ゴム)層を内層とし、シリコーンゴムやアクリルゴムを外層とする多層構造のホースが採用されている。しかし、エンジンルームなどのエンジン周りは高温に曝されており、しかも振動も加えられる過酷な環境にあり、耐熱老化性だけでなく、高温時の機械特性が優れたものが必要になっている。
【0111】
ホースは、単層および多層構造のゴム層として、本発明のフッ素ゴム組成物を架橋成形して得られる架橋フッ素ゴム層を用いることにより、これらの要求特性を高い水準で満たすものであり、優れた特性を有するターボチャージャーホースを提供することができる。
【0112】
ターボチャージャーホース以外の多層構造のホースにおいて、他の材料からなる層としては、他のゴムからなる層や熱可塑性樹脂からなる層、各種繊維補強層、金属箔層などが挙げられる。
【0113】
他のゴムとしては、耐薬品性や柔軟性が特に要求される場合は、アクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはその水素添加ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、EPDMおよびアクリルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるゴムが好ましく、アクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはその水素添加ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムからなることがより好ましい。
【0114】
また、熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂が好ましく、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0115】
また、多層構造のホースを作製する場合、必要に応じて表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、接着を可能とする処理方法であれば、その種類は特に制限されるものではなく、例えばプラズマ放電処理やコロナ放電処理等の放電処理、湿式法の金属ナトリウム/ナフタレン液処理などが挙げられる。また、表面処理としてプライマー処理も好適である。プライマー処理は常法に準じて行うことができる。プライマー処理を施す場合、表面処理を行っていないフッ素ゴムの表面を処理することもできるが、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、金属ナトリウム/ナフタレン液処理などを予め施したうえで、更にプライマー処理すると、より効果的である。
【0116】
本発明の架橋物を用いるホースは、そのほか以下に示す分野で好適に用いることができる。
【0117】
半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体製造関連分野では、高温環境に曝されるCVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、排気装置などのホースに用いることができる。
【0118】
自動車分野では、エンジンならびに自動変速機の周辺装置に用いることができ、ターボチャージャーホースのほか、EGRホース、排気ガスホース、燃料ホース、オイルホース、ブレーキホースなどとして用いることができる。
【0119】
そのほか、航空機分野、ロケット分野および船舶分野、化学プラント分野、分析・理化学機分野、食品プラント機器分野、原子力プラント機器分野などのホースにも用いることができる。
【0120】
(2)シール材
シール材としては、以下に示す分野で好適に用いることができる。
【0121】
たとえば、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、滑剤・冷却系、燃料系、吸気・排気系;駆動系のトランスミッション系;シャーシのステアリング系;ブレーキ系;電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品などの、耐熱性・耐油性・燃料油耐性・エンジン冷却用不凍液耐性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型および接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシールなど)などのシール材などが挙げられる。
【0122】
自動車用エンジンのエンジン本体に用いられるシール材としては、特に限定されないが、たとえば、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、Oリング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール材などが挙げられる。
【0123】
自動車用エンジンの主運動系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなどが挙げられる。
【0124】
自動車用エンジンの動弁系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、エンジンバルブのバルブステムオイルシール、バタフライバルブのバルブシートなどが挙げられる。
【0125】
自動車用エンジンの滑剤・冷却系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、エンジンオイルクーラーのシールガスケットなどが挙げられる。
【0126】
自動車用エンジン燃料系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、燃料ポンプのオイルシール、燃料タンクのフィラーシール、タンクパッキンなど、燃料チューブのコネクターOリンクなど、燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターOリングなど、キャブレターのフランジガスケットなど、EGRのシール材などが挙げられる。
【0127】
自動車用エンジンの吸気・排気系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキン、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージのタービンシャフトシールなどが挙げられる。
【0128】
自動車用のトランスミッション系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、Oリング、パッキンなど、オートマチックトランスミッションのOリング、パッキン類などが挙げられる。
【0129】
自動車用のブレーキ系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、オイルシール、Oリング、パッキンなど、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)など、キャリパーシール、ブーツ類などが挙げられる。
【0130】
自動車用の装備電装品に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、カーエアコンのOリング、パッキンなどが挙げられる。
【0131】
シール材としては、特にセンサー用シール材(ブッシュ)に適し、更には酸素センサー用シール材、酸化窒素センサー用シール材、酸化硫黄センサー用シール材などに適する。Oリングは角リングであってもよい。
【0132】
自動車分野以外の用途としては、特に限定されず、航空機分野、ロケット分野、船舶分野、油田掘削分野(たとえばパッカーシール、MWD用シール、LWD用シール等)、プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野、現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野、分析・理化学機分野、食品プラント機器分野、原子力プラント機器分野、鉄板加工設備等の鉄鋼分野、一般工業分野、電気分野、燃料電池分野、電子部品分野、現場施工型の成形などの分野で広く用いることができる。
【0133】
たとえば、船舶、航空機などの輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチームまたは耐候用のパッキン、Oリング、その他のシール材;油田掘削における同様のパッキン、Oリング、シール材;化学プラントにおける同様のパッキン、Oリング、シール材;食品プラント機器および食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、Oリング、シール材;原子力プラント機器における同様のパッキン、Oリング、シール材;一般工業部品における同様のパッキン、Oリング、シール材などが挙げられる。
【0134】
(3)ベルト
本発明のフッ素ゴム架橋物は、以下に示すベルトに好適に用いることができる。
【0135】
動力伝達ベルト(平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、歯付きベルトなどを含む)や搬送用ベルト(コンベアベルト)のベルト材に用いることができる。また、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体製造関連分野では、高温環境に曝されるCVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、排気装置などのベルト材に用いることができる。
【0136】
平ベルトとしては、たとえば農業用機械、工作機械、工業用機械などのエンジン周りなど各種高温となる部位に使用される平ベルトが挙げられる。コンベアベルトとしては、たとえば石炭、砕石、土砂、鉱石、木材チップなどのバラ物や粒状物を高温環境下で搬送するためのコンベアベルトや、高炉などの製鉄所などで使用されるコンベヤベルト、精密機器組立工場、食品工場などで、高温環境下に曝される用途におけるコンベアベルトが挙げられる。VベルトおよびVリブドベルトとしては、たとえば農業用機械、一般機器(OA機器、印刷機械、業務用乾燥機など)、自動車用などのVベルト、Vリブドベルトが挙げられる。歯付きベルトとしては、たとえば搬送ロボットの伝動ベルト、食品機械、工作機械の伝動ベルトなどの歯付きベルトが挙げられ、自動車用、OA機器、医療用、印刷機械などで使用される歯付きベルト挙げられる。特に、自動車用歯付きベルトとしては、タイミングベルトが挙げられる。
【0137】
なお、多層構造のベルト材において、他の材料からなる層としては、他のゴムからなる層や熱可塑性樹脂からなる層、各種繊維補強層、帆布、金属箔層などが挙げられる。
【0138】
他のゴムとしては、耐薬品性や柔軟性が特に要求される場合は、アクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはその水素添加ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、EPDMおよびアクリルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるゴムが好ましく、アクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはその水素添加ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムからなることがより好ましい。
【0139】
また、熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂が好ましく、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0140】
また、多層構造のベルト材を作製する場合、必要に応じて表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、接着を可能とする処理方法であれば、その種類は特に制限されるものではなく、例えばプラズマ放電処理やコロナ放電処理等の放電処理、湿式法の金属ナトリウム/ナフタレン液処理などが挙げられる。また、表面処理としてプライマー処理も好適である。プライマー処理は常法に準じて行うことができる。プライマー処理を施す場合、表面処理を行っていないフッ素ゴムの表面を処理することもできるが、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、金属ナトリウム/ナフタレン液処理などを予め施したうえで、更にプライマー処理すると、より効果的である。
【0141】
(4)防振ゴム
本発明のフッ素ゴム架橋物は、防振ゴムにおける単層および多層構造のゴム層として用いることにより、防振ゴムへの要求特性を高い水準で満たすものであり、優れた特性を有する自動車用防振ゴムを提供することができる。
【0142】
自動車用防振ゴム以外の多層構造の防振ゴムにおいて、他の材料からなる層としては、他のゴムからなる層や熱可塑性樹脂からなる層、各種繊維補強層、金属箔層などが挙げられる。
【0143】
他のゴムとしては、耐薬品性や柔軟性が特に要求される場合は、アクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはその水素添加ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、EPDMおよびアクリルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるゴムが好ましく、アクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはその水素添加ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムからなることがより好ましい。
【0144】
また、熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂が好ましく、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0145】
また、多層構造の防振ゴムを作製する場合、必要に応じて表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、接着を可能とする処理方法であれば、その種類は特に制限されるものではなく、例えばプラズマ放電処理やコロナ放電処理等の放電処理、湿式法の金属ナトリウム/ナフタレン液処理などが挙げられる。また、表面処理としてプライマー処理も好適である。プライマー処理は常法に準じて行うことができる。プライマー処理を施す場合、表面処理を行っていないフッ素ゴムの表面を処理することもできるが、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、金属ナトリウム/ナフタレン液処理などを予め施したうえで、更にプライマー処理すると、より効果的である。
【0146】
(5)ダイヤフラム
本発明のフッ素ゴム架橋物は、以下に示すダイヤフラムに好適に用いることができる。
【0147】
例えば、自動車エンジンの用途としては、耐熱性、耐酸化性、耐燃料性、低ガス透過性などが求められる、燃料系、排気系、ブレーキ系、駆動系、点火系などのダイヤフラムが挙げられる。
【0148】
自動車エンジンの燃料系に用いられるダイヤフラムとしては、例えば燃料ポンプ用ダイヤフラム、キャブレター用ダイヤフラム、プレッシャレギュレータ用ダイヤフラム、パルセーションダンパー用ダイヤフラム、ORVR用ダイヤフラム、キャニスター用ダイヤフラム、オートフューエルコック用ダイヤフラムなどが挙げられる。
【0149】
自動車エンジンの排気系に用いられるダイヤフラムとしては、例えばウェイストゲート用ダイヤフラム、アクチュエータ用ダイヤフラム、EGR用ダイヤフラムなどが挙げられる。
自動車エンジンのブレーキ系に用いられるダイヤフラムとしては、例えばエアーブレーキ用ダイヤフラムなどが挙げられる。
自動車エンジンの駆動系に用いられるダイヤフラムとしては、例えばオイルプレッシャー用ダイヤフラムなどが挙げられる。
自動車エンジンの点火系に用いられるダイヤフラムとしては、例えばディストリビューター用ダイヤフラムなどが挙げられる。
【0150】
自動車エンジン以外の用途としては、耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐スチーム性、低ガス透過性などが求められる、一般ポンプ用ダイヤフラム、バルブ用ダイヤフラム、フィルタープレス用ダイヤフラム、ブロワー用ダイヤフラム、空調用機器用ダイヤフラム、制御機器用ダイヤフラム、給水用ダイヤフラム、給湯用の熱水を送液するポンプなどに用いられるダイヤフラム、高温蒸気用ダイヤフラム、半導体装置用ダイヤフラム(例えば製造工程などで使用される薬液移送用ダイヤフラム)、食品加工処理装置用ダイヤフラム、液体貯蔵タンク用ダイヤフラム、圧力スイッチ用ダイヤフラム、石油探索・石油掘削用途で用いられるダイヤフラム(例えば石油掘削ビットなどの潤滑油供給用ダイヤフラム)、ガス瞬間湯沸かし器やガスメーター等のガス器具用ダイヤフラム、アキュムレーター用ダイヤフラム、サスペンションなどの空気ばね用ダイヤフラム、船舶用のスクリューフィダー用ダイヤフラム、医療用の人工心臓用ダイヤフラムなどが挙げられる。
【実施例】
【0151】
つぎに本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0152】
本発明で採用した各種の物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0153】
(1)動的粘弾性試験
(A)未架橋時動的粘弾性測定(剪断弾性率G’)
動的歪み1%時の剪断弾性率G’(1%)及び動的歪み100%時の剪断弾性率G’(100%)の差δG’の測定方法
アルファテクノロジーズ社製のラバープロセスアナライザ(型式:RPA2000)を用いて、100℃、1Hzで動的粘弾性を測定する。
(B)架橋物の動的粘弾性測定(貯蔵弾性率E’および損失弾性率E”)
測定装置:アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置DVA−220
測定条件
試験片: 幅3mm×厚さ2mmサイズの長方体の架橋済みゴム
測定モード:引張
チャック間距離:20mm
測定温度:160℃
引張歪み:1%
初期加重:157cN
周波数:10Hz
【0154】
(2)引張破断強度、引張破断伸び
試験機は、オリエンテック社製のRTA−1T、(株)島津製作所製のAG−Iを用いる。JIS−K6251に準じ、チャック間50mmに設定、引張速度500mm/min、6号ダンベルを用いて引張破断強度、引張破断伸びを測定する。測定温度は、25℃、160℃とする。
【0155】
(3)高温引張繰り返し試験
試験機は(株)島津製作所製のAG−Iを用いる。引張条件は、JIS−K6251に準じ、6号ダンベルを用い、チャック間を50mmに、チャック移動速度を500mm/minに設定する。温調は160℃とする。300%伸張を繰り返し、破断までのサイクル数を測定した。
【0156】
(4)ムーニー粘度(ML1+10(100℃))
ムーニー粘度は、ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定した。測定温度は100℃である。
【0157】
実施例および比較例では、つぎのフッ素ゴム、カーボンブラック、過酸化物架橋剤および自己重合性架橋促進剤を使用した。
【0158】
(フッ素ゴムA1)
82Lのステンレススチール製のオートクレーブに純水44L、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONHの50%水溶液を8.8g、F(CFCOONHの50%水溶液176gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換した。230rpmで攪拌しながら80℃に昇温した後、初期槽内モノマー組成をVdF/HFP=50/50モル%、1.52MPaとなるようにモノマーを圧入した。ついでAPS1.0gを220mlの純水に溶解した重合開始剤溶液を窒素ガスで圧入し、反応を開始した。重合の進行に伴い内圧が1.42MPaに降下した時点で追加モノマーであるVdF/HFP=78/22モル%の混合モノマーを内圧が1.52MPaとなるまで圧入した。このとき、ジヨウ素化合物I(CFIの73gを圧入した。昇圧、降圧を繰り返しつつ、3時間ごとにAPSの1.0g/純水220ml水溶液を窒素ガスで圧入して、重合反応を継続した。混合モノマーを14000g追加した時点で、未反応モノマーを放出し、オートクレーブを冷却して、固形分濃度23.1質量%のフッ素ゴムのディスパージョンを得た。このフッ素ゴムをNMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/HFP=78/22(モル%)であり、ムーニー粘度(ML1+10(100℃))は55であった。このフッ素ゴムをフッ素ゴムA1とする。
【0159】
(フッ素ゴムA2)
初期槽内モノマーをVdF/TFE/HFP=19/11/70モル%に、追加モノマーをVdF/TFE/HFP=51/20/29モル%に、F(CFCOONHの50%水溶液をF(CFCOONHの50%水溶液に、ジヨウ素化合物I(CFIを45gに変更し、また、混合モノマーを630g追加した時点でICHCFCFOCF=CFを74g追加したほかは、フッ素ゴムA1の製造方法と同様に重合して、固形分濃度23.2質量%のディスパージョンを得た。このフッ素ゴムの共重合組成はVdF/TFE/HFP=52/22/26(モル%)であり、ムーニー粘度(ML1+10(100℃)は80であった。このフッ素ゴムをフッ素ゴムA2とする。
【0160】
(カーボンブラック)
(B1):ISAFカーボンブラック シースト6(東海カーボン(株)製)(NSA=119 m/g、DBP吸油量=114ml/100g)
【0161】
(過酸化物架橋剤)
(C1):パーヘキサ25B(日油(株)製)
【0162】
(自己重合性架橋促進剤)
(D1)トリメタリルイソシアヌレート(TMAIC)(日本化成(株)製)
(D2)トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成(株)製)
(D3)N,N’−フェニレンビスマレイミド(シグマアルドリッチ社製)
【0163】
(加工助剤)
(E1)ステアリルアミン(ファーミン86T)(花王(株)製)
【0164】
(受酸剤)
(F1)酸化亜鉛(一種)(堺化学工業(株)製)
【0165】
実施例1
混練機(トーシン(株)製のTD35 100MB、ローター直径:30cm、チップクリアランス:0.1cm)を用いて、フロントローター回転数:29rpm、バックローター回転数:24rpmの混練条件で、フッ素ゴム(A1)100質量部にカーボンブラック(B1)20質量部、ステアリルアミン(E1)0.5質量部、酸化亜鉛(F1)1.0質量部を混練し、フッ素ゴムプレコンパウンド(A)を調製した。なお、排出された混練物の最高温度は168℃であった。
【0166】
得られたフッ素ゴムプレコンパウンド(A)について、ラバープロセスアナライザ(RPA2000)を用いて、動的粘弾性試験を実施したところ、差δG’は591kPaであった。
【0167】
得られたフッ素ゴムプレコンパウンド(A)121.5質量部に、8インチオープンロール(関西ロール(株)製)を用いて、フロントロール回転数21rpm、バックロール回転数19rpm、ロール間隙0.1cm混練条件で、過酸化物架橋剤パーヘキサ25B(C1)1.0質量部、低自己重合性架橋促進剤 TMAIC(D1)0.58質量部、加工助剤 ステアリルアミン(E1)0.5質量部を混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は71℃であった。
【0168】
参考例1
実施例1において、低自己重合性架橋促進剤としてTMAIC(D1)からTAIC(D2)に、架橋促進剤の含有量を0.58質量部から0.5質量部に変えた他は実施例1と同じ条件で混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は73℃であった。
【0169】
実施例1および参考例1でそれぞれ調製したフッ素ゴムフルコンパウンドを160℃で60分間プレスして架橋を行い、架橋物として厚さ2mmのシート状試験片を作製した。
【0170】
得られた架橋試験片について、25℃における引張破断強度、引張破断伸びを測定した。また、160℃における引張破断強度、引張破断伸びを測定し、また高温繰り返し試験を行った。結果を表1に示す。
【0171】
更に得られた架橋物の動的粘弾性測定を行った。結果を表1に示す。
【0172】
実施例2
実施例1において、低自己重合性架橋促進剤としてTMAIC(D1)の含有量を0.58質量部から0.9質量部に変えた他は実施例1と同じ条件で混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調整した。なお、排出された混練物の最高温度は72℃であった。実施例1と同様な条件で架橋シートを作製し、各種物性測定を行った。結果を表1に示す。
【0173】
実施例3
混練機(トーシン(株)製のTD35 100MB、ローター直径:30cm、チップクリアランス:0.1cm)を用いて、フロントローター回転数:29rpm、バックローター回転数:24rpmの混練条件で、フッ素ゴム(A1)100質量部にカーボンブラック(B1)25質量部、ステアリルアミン(E1)0.5質量部、酸化亜鉛(F1)1.0質量部を混練し、フッ素ゴムプレコンパウンド(B)を調製した。なお、排出された混練物の最高温度は174℃であった。
【0174】
得られたフッ素ゴムプレコンパウンド(B)について、ラバープロセスアナライザ(RPA2000)を用いて、動的粘弾性試験を実施したところ、差δG’は990kPaであった。
【0175】
得られたフッ素ゴムプレコンパウンド(B)126.5質量部に、8インチオープンロール(関西ロール(株)製)を用いて、フロントロール回転数21rpm、バックロール回転数19rpm、ロール間隙0.1cm混練条件で、過酸化物架橋剤パーヘキサ25B(C1)1.5質量部、低自己重合性架橋促進剤 TMAIC(D1)0.58質量部、加工助剤 ステアリルアミン(E1)0.5質量部を混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は76℃であった。
実施例1と同様な条件で架橋シートを作製し、各種物性測定を行った。結果を表1に示す。
【0176】
実施例4
混練機(トーシン(株)製のTD35 100MB、ローター直径:30cm、チップクリアランス:0.1cm)を用いて、フロントローター回転数:29rpm、バックローター回転数:24rpmの混練条件で、フッ素ゴム(A2)100質量部にカーボンブラック(B1)20質量部、ステアリルアミン(E1)0.5質量部、酸化亜鉛(F1)1.0質量部を混練し、フッ素ゴムプレコンパウンド(C)を調製した。なお、排出された混練物の最高温度は170℃であった。
【0177】
得られたフッ素ゴムプレコンパウンド(C)について、ラバープロセスアナライザ(RPA2000)を用いて、動的粘弾性試験を実施したところ、差δG’は621kPaであった。
【0178】
得られたフッ素ゴムプレコンパウンド(C)121.5質量部に、8インチオープンロール(関西ロール(株)製)を用いて、フロントロール回転数21rpm、バックロール回転数19rpm、ロール間隙0.1cm混練条件で、過酸化物架橋剤パーヘキサ25B(C1)0.5質量部、低自己重合性架橋促進剤 TMAIC(D1)0.3質量部、加工助剤 ステアリルアミン(E1)0.5質量部を混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は71℃であった。
実施例1と同様な条件で架橋シートを作製し、各種物性測定を行った。結果を表1に示す。
【0179】
実施例5
実施例1において、低自己重合性架橋促進剤としてTMAIC(D1)からN,N’−フェニレンビスマレイミド(D3)へ、架橋促進剤の含有量を0.58質量部から0.9質量部に、架橋剤の含有量を1.0質量部から4.0質量部に夫々変えた他は実施例1と同じ条件で混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は65℃であった。実施例1と同様な条件で架橋シートを作製し、各種物性測定を行った。結果を表1に示す。
【0180】
比較例1
実施例1において、低自己重合性架橋促進剤としてTMAIC(D1)の含有量を0.58質量部から3.0質量部に変えた他は実施例1と同じ条件で混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調整した。なお、排出された混練物の最高温度は71℃であった。実施例1と同様な条件で架橋シートを作製したが、アンダーキュアとなり、架橋シートを得ることができなかった。
【0181】
【表1】