特許第5790667号(P5790667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790667
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】圧電スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20150917BHJP
   H01L 41/08 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
   H04R17/00
   !H01L41/08
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-556907(P2012-556907)
(86)(22)【出願日】2012年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2012052810
(87)【国際公開番号】WO2012108448
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2013年7月16日
(31)【優先権主張番号】特願2011-25528(P2011-25528)
(32)【優先日】2011年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正道
(72)【発明者】
【氏名】河村 秀樹
【審査官】 武田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/144964(WO,A1)
【文献】 特開2004−364334(JP,A)
【文献】 特開2004−266643(JP,A)
【文献】 特開2009−272978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
H01L 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性を有する高分子シートと、該高分子シートの対向する両主面に形成され前記高分子シートに電界を印加するための電極と、を備えた圧電スピーカであって、
高分子シートに形成される電極のパターンによって、単一の音響駆動信号でそれぞれが個別に振動する複数の個別圧電素子が形成されており、
前記個別圧電素子は、電界の印加方向が逆になる複数の電極パターンを前記高分子シートの主面に形成することで構成され、
隣り合う個別圧電素子における電界の印加方向が同じ電極パターン同士は、これらの電極パターンが形成される面において接続されている、
圧電スピーカ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電スピーカであって、
前記複数の個別圧電素子が形成された二枚の高分子シートと、平板状のベース部材と、を備え、
前記主面に直交する方向から見て、前記二枚の高分子シートに形成された各個別圧電素子が略一致するように、前記二枚の高分子シートが前記ベース部材を狭持するように配設されている、圧電スピーカ。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電スピーカであって、
前記二枚の高分子シートにおけるベース部材と反対側の面に、前記個別圧電素子を構成する電極を覆う形状の保護シートが配設されている、圧電スピーカ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の圧電スピーカであって、
前記ベース部材を保持するとともに前記音響駆動信号で振動する保持部材と、
該保持部材に対して前記音響駆動信号の特定音域成分を印加する駆動手段と、を備えた、圧電スピーカ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の圧電スピーカであって、
前記個別圧電素子の電極は、前記高分子シートの延伸方向に沿った第一分割線と、該第一分割線に直交する第二分割線により四分割されており、
分割された各電極は、前記個別圧電素子の中心側に配置される内周側電極と、前記個別圧電素子の外周辺に配置される外周側電極とに、さらに二分割されている、圧電スピーカ。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電スピーカであって、
前記複数の個別圧電素子のうち、少なくとも一つの個別圧電素子の前記内周側電極および前記外周側電極の形状が、他の個別圧電素子の前記内周側電極および前記外周側電極の形状と異なる、圧電スピーカ。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電スピーカであって、
前記複数の個別圧電素子のうち、少なくとも一つの個別圧電素子の前記内周側電極と前記外周側電極との面積比が、他の個別圧電素子の前記内周側電極と前記外周側電極との面積比と異なる、圧電スピーカ。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の圧電スピーカであって、
前記内周側電極と前記外周側電極とを分割する分割線は、アステロイド曲線である、圧電スピーカ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の圧電スピーカであって、
前記高分子シートはL型ポリ乳酸を主成分とする、圧電スピーカ。
【請求項10】
請求項9に記載の圧電スピーカであって、
前記電極は透光性電極であり、且つ該透光性電極の屈折率と前記高分子シートの屈折率とが略同じである、圧電スピーカ。
【請求項11】
請求項10に記載の圧電スピーカであって、
前記透光性電極は、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛および酸化亜鉛の少なくとも一種を主成分として形成されている、圧電スピーカ。
【請求項12】
請求項10に記載の圧電スピーカであって、
前記透光性電極は、ポリチオフェンおよびポリアニリンの少なくとも一種を主成分として形成されている、圧電スピーカ。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の圧電スピーカであって、
前記個別圧電素子は、前記高分子シートに対して、少なくとも長手方向に4個、短手方向に2個で配列されている、圧電スピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電性を有する高分子シートを用いて形成される圧電スピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電性を有する高分子シートを用いた略平板状の圧電スピーカが各種考案されている。圧電性を有する高分子シートを用いた圧電スピーカは、例えば、特許文献1に記載のフレキシブルスピーカのように、圧電性を有する高分子シートと、当該圧電性を有する高分子シートの両面に形成された対向電極を備える。対向電極に電圧を印加すると、圧電性を有する高分子シートに電界が作用し、圧電性を有する高分子シートが歪む。この歪みを利用することで発音させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−272978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に示すような圧電性を有する高分子シートを用いた圧電スピーカでは、圧電性を有する高分子シートの放音面を湾曲させることで、効率良く放音させているが、圧電性を有する高分子シートの放音面を平面状にすると、音圧が低下しがちである。なお、ここで、放音面が平面状とは、放音面すなわち圧電性を有する高分子シートの主面が二次元的な広がりを有するだけの形状である。すなわち、一般的な立体スピーカに用いられているコーン型、ドーム型およびホーン型のような三次元的な広がりを有する形状ではない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、放音面が平面状であっても、従来よりも高い音圧で放音できる圧電スピーカを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、圧電性を有する高分子シートと、該高分子シートの対向する両主面に形成され高分子シートに電界を印加するための電極と、を備えた圧電スピーカに関する。この圧電スピーカでは、高分子シートに形成される電極のパターンによって、単一の音響駆動信号でそれぞれが個別に振動する複数の個別圧電素子が形成されている。個別圧電素子は、電界の印加方向が逆になる複数の電極パターンを高分子シートの主面に形成することで構成されている。隣り合う個別圧電素子における電界の印加方向が同じ電極パターン同士は、これらの電極パターンが形成される面において接続されている。
【0007】
この構成では、単一の高分子シートを用いて、それぞれが個別に振動する個別圧電素子が複数形成される。これら複数の個別圧電素子を用いて単一の音響駆動信号による略同期放音を行うことで、同じ面積、同じ駆動信号レベルであれば、図8(C)に示すように、高分子シートの全面に広がる単一の個別圧電素子を形成する場合よりも、音圧レベルが向上する。また、周波数特性、特に約1000Hz以上の可聴域での周波数特性が改善される。
【0008】
また、この発明の圧電スピーカでは、次の構成であることが好ましい。圧電スピーカは、複数の個別圧電素子が形成された二枚の高分子シートと、平板状のベース部材と、を備える。そして、この圧電スピーカでは、主面に直交する方向から見て二枚の高分子シートに形成された各個別圧電素子が略一致するように、当該二枚の高分子シートがベース部材を狭持するように配設されている。
【0009】
この構成では、より音圧レベルを向上させて、周波数特性を改善できる。
【0010】
また、この発明の圧電スピーカでは、二枚の高分子シートにおけるベース部材と反対側の面に、個別圧電素子を構成する電極を覆う形状の保護シートが配設されている、ことが好ましい。
【0011】
この構成では、電極すなわち個別圧電素子を、外部環境や外部からの衝撃等から保護できるとともに、各個別圧電素子から放音される音の共振ピークを鈍らせて、より平滑な周波数特性にすることができる。
【0012】
また、この発明の圧電スピーカでは、ベース部材を保持するとともに駆動信号で振動する保持部材と、保持部材に対して駆動信号の特定音域成分を印加する駆動手段と、を備えることが好ましい。
【0013】
この構成では、保持部材の振動により、二枚の高分子シートとベース部材からなる積層板が振動して放音する。これにより、放音される音の特定音域成分(例えば数Hzから数十Hzの低音域成分)が増強され、より優れた周波数特性を実現できる。
【0014】
また、この発明の圧電スピーカでは、次の構成であることが好ましい。個別圧電素子の電極は、高分子シートの延伸方向に沿った第一分割線と、該第一分割線に直交する第二分割線により四分割されている。さらに、分割された各電極は、個別圧電素子の中心側に配置される内周側電極と、個別圧電素子の外周辺に配置される外周側電極とに、さらに二分割されている
この構成では、個別圧電素子が内周側と外周側とにさらに二分割され、より音圧レベルの周波数特性が改善される。
【0015】
また、この発明の圧電スピーカでは、次のような構成であってもよい。
・複数の個別圧電素子のうち、少なくとも一つの個別圧電素子の内周側電極および外周側電極の形状が、他の個別圧電素子の内周側電極および外周側電極の形状と異なる。
【0016】
・複数の個別圧電素子のうち、少なくとも一つの個別圧電素子の内周側電極と外周側電極との面積比が、他の個別圧電素子の内周側電極と外周側電極との面積比と異なる。
【0017】
・内周側電極と外周側電極とを分割する分割線は、アステロイド曲線である。
【0018】
これらの構成を用いることで、同じ面積の高分子シートを用いて、同じ駆動信号を用いても、より多様な周波数特性を実現することができる。
【0019】
また、この発明の圧電スピーカでは、高分子シートはL型ポリ乳酸を主成分にしていることが好ましい。
【0020】
この構成では、他の高分子シートよりも、圧電性に優れ、且つ地球環境保護の観点からも優れる圧電スピーカを実現できる。さらに、他の材質を透光性にして透光性スピーカを形成する場合に、他の高分子シートよりも透光性に優れる。
【0021】
また、この発明の圧電スピーカでは、電極は透光性電極であり、且つ該透光性電極の屈折率と高分子シートの屈折率とが略同じであることが好ましい。
【0022】
この構成では透光性スピーカを実現できる。
【0023】
また、この発明の圧電スピーカでは、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛および酸化亜鉛の少なくとも一種を主成分として透光性電極を形成することが好ましい。
【0024】
この構成では、高分子シートに形成する透光性電極を、従来の透光性電極の製造方法によって容易に形成できる。
【0025】
また、この発明の圧電スピーカでは、透光性電極をポリチオフェンおよびポリアニリンの少なくとも一種を主成分として形成することが好ましい。
【0026】
この構成では、高分子シートを搬送しながら透光性電極を形成できる。
【0027】
また、この発明の圧電スピーカでは、個別圧電素子は高分子シートに対して少なくとも長手方向に4個、短手方向に2個で配列されていることが好ましい。
【0028】
この構成のように、個別圧電素子を8個以上配列して形成することで、所望の周波数特性を、より容易に実現できる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、放音面が平面状であっても、従来よりも高い音圧で放音する平面型の圧電スピーカを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の実施形態に係る圧電スピーカ10の構成を示す分解斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る圧電スピーカ10の構成を示す部分側面断面図である。
図3】高分子シート210の圧電性を説明するための図である。
図4】第1圧電スピーカ201を電極パターン211側から見た平面図、および個別圧電素子単位を説明するための平面図である。
図5】個別圧電素子を構成する基本電極パターンEA0の電極パターン図、および印加電界パターンの一例を示す図である。
図6】個別圧電素子Pe11に対して、図5(B)に示すような電界分布で電界を印加した場合の変形挙動を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る圧電スピーカ10に対する音響信号の供給構成を示す図である。
図8】第1の実施形態の構成による音圧レベル−周波数特性を示す図、第1の実施形態の構成と同じ面積の高分子シートの全面を用いて単独の個別圧電素子を形成した場合の音圧レベル−周波数特性を示す図、および第1の実施形態の構成と単独の個別圧電素子の音圧レベル−周波数特性の比較図である。
図9】第2の実施形態に係る圧電スピーカの電極パターンを簡略化して記載した平面図である。
図10】第2の実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図である。
図11】第3の実施形態に係る圧電スピーカの第1圧電スピーカ201Bを電極パターン211B側から見た平面図、および本実施形態での個別圧電素子単位を説明するための平面図である。
図12】第3の実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図である。
図13】第4の実施形態に係る圧電スピーカの電極パターンを簡略化して記載した平面図である。
図14】第4の実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図である。
図15】第5の実施形態に係る圧電スピーカの電極パターンを簡略化して記載した平面図、および本実施形態の圧電スピーカの個別圧電素子の電極パターンを示す図である。
図16】第5の実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図である。
図17】第6の実施形態に係る圧電スピーカの第1圧電スピーカ201Eを電極パターン211B側から見た平面図、および本実施形態での個別圧電素子単位を説明するための平面図である。
図18】第6の実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図、および本実施形態と第1の実施形態と単独の個別圧電素子の場合での音圧レベル−周波数特性を比較した図である。
図19】第7の実施形態に係る圧電スピーカの電極パターンを簡略化して記載した平面図である。
図20】第8の実施形態に係る圧電スピーカに対する音響信号の供給構成を示す図である。
図21】第9の実施形態に係る圧電スピーカ装置の外観斜視図である。
図22】第9の実施形態に係る圧電スピーカ装置の上面図である。
図23】第9の実施形態に係る圧電スピーカ装置に対する音響駆動信号の供給構成を示す図である。
図24】3.1チャネルサラウンドを実現する場合の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の第1の実施形態に係る圧電スピーカについて、図を参照して説明する。図1は本実施形態に係る圧電スピーカ10の構成を示す分解斜視図である。図2は本実施形態に係る圧電スピーカ10の構成を示す部分側面断面図である。なお、図1図2では、第1、第2圧電スピーカ201,202の圧電性の高分子シート210,220に電界印加するための音響駆動信号を入力する引き回し電極については、図示を省略している。また、図2では、各層を接着する接着剤等は図示を省略している。
【0032】
圧電スピーカ10は、平板状のベース部材100を備える。ベース部材100は、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂によって形成されている。なお、ベース部材100は、PMMAに限らず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)であってもよい。PETやPMMAを用いた場合、透光性を所定レベル以上確保できるので好ましい。例えば、これらの材質を用いれば、透光率を約80%以上にすることができる。また、ベース部材100の厚みは約0.05mmから約1.0mmであるとよいが、仕様に応じて適宜変更することもできる。
【0033】
ベース部材100の一方主面(図1図2における上面)には、第1圧電スピーカ201が配設されている。また、ベース部材100の他方主面(図1図2における下面)には、第2圧電スピーカ202が配設されている。
【0034】
詳細な電極パターンの構造は後述するが、第1圧電スピーカ201と第2圧電スピーカ202は、同じ構造からなる平面型透光性スピーカである。概略的には、第1圧電スピーカ201は、高分子シート210の一方主面に電極パターン211が形成され、他方主面に電極パターン211と同じ形状の電極パターン212が形成されたものである。同様に、第2圧電スピーカ202は、高分子シート220の一方主面に電極パターン221が形成され、他方主面に電極パターン221と同じ形状の電極パターン222が形成されたものである。これら電極パターン211,212,221,222を介して、後述する電界印加パターンで、高分子シート210,220に電界を印加することで、当該高分子シート210,220は、主面に直交する方向へ振動し、スピーカとして機能する。
【0035】
高分子シート210,220は、L型ポリ乳酸(PLLA)からなり、延伸方向を長手方向にして切り出したものである。高分子シート210,220は、他のキラル高分子からなる有機圧電性シートを用いてもよいが、平面型透光性スピーカを形成する場合には、PLLAを用いることが望ましい。
【0036】
各電極パターン211,212,221,222は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛および酸化亜鉛(ZnO)の少なくとも一種を主成分として形成されている。各電極パターン211,212,221,222はポリチオフェンを主成分とする有機電極で形成してもよい。
【0037】
この際、各電極パターン211,212,221,222を形成する材質は、自身の透光率が高く(例えば、上述の80%以上であり)、高分子シート210,220との境界面での反射率が極低い(例えば数%未満)もの、すなわち高分子シート210,220と略同じ屈折率の材質を選択し、上述の各材質を用いれば、PLLAからなる高分子シート210,220と積層構造にしても、上述の透光率を有する平面型透光性スピーカを実現できる。
【0038】
第1圧電スピーカ201と第2圧電スピーカ202は、ベース部材100に対して、面対称となるように、すなわちそれぞれの個別圧電素子がベース部材100の主面に直交する方向から見て略一致するように、配設されている。なお、個別圧電素子の詳しい構成に関しては後述する。
【0039】
第1圧電スピーカ201のベース部材100と反対側の主面には、保護シート301が配設されている。保護シート301は、第1圧電スピーカ201の個別圧電素子群を覆う形状に形成されている。保護シート301は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、これに類するエラストマー系材質のいずれかを用いて形成されている。
【0040】
第2圧電スピーカ202のベース部材100と反対側の主面には、保護シート302が配設されている。保護シート302は、第2圧電スピーカ202の個別圧電素子群を覆う形状に形成されている。保護シート302は、保護シート301と同様に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、これに類するエラストマー系材質のいずれかを用いて形成されている。
【0041】
なお、これら保護シート301,302は省略することも可能であるが、設置することにより、次の点で有用である。
(1)第1圧電スピーカ201および第2圧電スピーカ202を、熱、水分等の外部環境から保護することができるとともに、使用者による接触等の外部からの衝撃からも保護することができる。
【0042】
(2)第1圧電スピーカ201および第2圧電スピーカ202が駆動信号により放音する際に、鋭い共振ピークが発生する(図8等参照)が、保護シート301,302が緩衝材となり、共振ピークが鈍る。これにより、より平滑化された周波数特性の音を放音することができる。
【0043】
以上のような構成より、第1圧電スピーカ201と第2圧電スピーカ202とで、主面に直交する方向から見て同じ位置に形成された電極間に印加する電界が逆になるようにすることで、所謂バイモルフ構造からなる平面型で透光性の圧電スピーカが形成される。
【0044】
次に、より具体的な第1圧電スピーカ201および第2圧電スピーカ202の構成について説明する。なお、上述のように、第1圧電スピーカ201および第2圧電スピーカ202は同じ構造であるので、以下では、第1圧電スピーカ201を例に具体的な構成の説明を行う。
【0045】
上述のように、第1圧電スピーカ201は、高分子シート210と、当該高分子シート210の両主面に対称に形成された電極パターン211,212からなる。
【0046】
高分子シート210は、電界が印加されると図3に示すような挙動を示す。図3は、高分子シート210の圧電性を説明するための図である。なお、図3での変形量は、説明のため誇張して記載している。
【0047】
高分子シート210を形成する一軸延伸されたL型ポリ乳酸(PLLA)シートは、圧電性を有し、シートの延伸方向を3軸、これと直交するシートの膜厚方向を1軸、1軸と3軸双方に直交する方向を2軸と定義したとき、圧電歪み定数としてd14,d25のテンソル成分を有する。図3では、シンボル900で示される方向を延伸方向である3軸方向とし、シンボル901で示される紙面の表面から裏側に向く方向を電界印加方向である1軸方向とする。このような状況では、d14によるズリ弾性の影響で、正方形状のPLLAのシート210Nは、対角線910Aと略一致する方向に伸び、対角線910Aに直交する対角線910Bと略一致する方向に縮むように変形し、図3のシート形状210Tのような菱形に変形する。
【0048】
このような圧電特性を有するPLLAのシートの延伸方向が長手方向となるように矩形状に切り出すことで、高分子シート210が形成される。
【0049】
次に、電極パターン211と電極パターン212について説明する。電極パターン211および電極パターン212は、同じ電極パターン形状であるので、電極パターン211のみを具体的に説明し、必要に応じて電極パターン212についても説明する。図4(A)は第1圧電スピーカ210を電極パターン211側から見た平面図であり、図4(B)は個別圧電素子単位を説明するための平面図である。図5(A)は個別圧電素子を構成する基本電極パターンEA0の電極パターン図であり、図5(B)は印加電界パターンの一例を示す図である。なお、以下では、必要な場合を除き、分割される各電極間を接続する接続パターンについては具体的な説明を省略する。
【0050】
電極パターン211は、基本電極パターンEA0が複数個配列形成されてなる。例えば、本実施形態の例では、高分子シート210の一方主面に対して、当該高分子シート210の主面の長手方向(延伸方向)に沿って基本電極パターンEA0を四個並べ、主面の短手方向に沿って基本電極パターンEA0を二個並べた二次元配列構成からなる。電極パターン212も、電極パターン211と同様に、4×2の配列パターンで配列された基本電極パターンからなる。
【0051】
このような電極パターン211,212を、各基本電極パターンEA0が互いに略対向するように、高分子シート210の両主面に形成する。これにより、電極パターン211,212の対向する各基本電極パターンEA0と、これら基本電極パターンEA0によって挟まれる高分子シート210の部分領域とで、それぞれに個別圧電素子Pe11−Pe14,Pe21−Pe24が形成される。この結果、図4に示すように、単一の高分子シート210の略全面に亘って、二次元配列された(本実施形態では4×2=8個の)個別圧電素子Pe11−Pe14,Pe21−Pe24が構成される。
【0052】
この際、各個別圧電素子Pe11−Pe14,Pe21−Pe24は、延伸方向(シンボル900の方向)に平行な分割線Lw1と、延伸方向(シンボル900の方向)に直交する分割線Lp1,Lp2,Lp3によって、分割されている。なお、本発明で言う分割線とは、単に電極を複数の領域に区分するものではなく、電気的機構的にも分割する溝(電極非形成部)を示す。
【0053】
基本電極パターンEA0は、図5に示すように、外形形状が平面視して矩形とされており、延伸方向(シンボル900の方向)に平行な分割線L1と、延伸方向に直交する分割線L2とにより、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域の四つの領域に分割される。分割線L1と分割線L2は、矩形状の基本電極パターンEA0の略中心(重心)を交点とするように、形成されている。ここでは、基本電極パターンEA0を略正方形として描いたが、長方形としても構わない。基本電極パターンEA0の形状は、圧電スピーカの外形の縦横比および基本電極パターンの構成数を鑑みて最適となるように構成すればよい。
【0054】
第1領域と第2領域は分割線L1を介して対称に位置し、第3領域と第4領域も分割線L1を介して対称に位置する。第1領域と第4領域は分割線L2を介して対称に位置し、第2領域と第4領域も分割線L2を介して対称に位置する。
【0055】
第1領域は、分割線L1と分割線L2に対して略45°で交わる分割線L11で分割された内周側電極Ei1と外周側電極Eo1とから構成される。この際、分割線L1と分割線L2との交点側が内周側電極Ei1となり、平面視した形状が三角形状である。一方、分割線L1と分割線L2との交点から離間する側が外周側電極Eo1となり、平面視した形状が五角形状である。本実施形態では、外周側電極Eo1が内周側電極Ei1よりも広くなるように形成されている。
【0056】
第2領域は、分割線L1と分割線L2に対して略45°で交わり、分割線L11に略直交する分割線L22で分割された内周側電極Ei2と外周側電極Eo2とから構成される。分割線L1と分割線L2との交点側が内周側電極Ei2となり、分割線L1と分割線L2との交点から離間する側が外周側電極Eo2となる。
【0057】
第3領域は、分割線L1と分割線L2に対して略45°で交わり、分割線L22に略直交し、分割線L11に平行な分割線L33で分割された内周側電極Ei3と外周側電極Eo3とから構成される。分割線L1と分割線L2との交点側が内周側電極Ei3となり、分割線L1と分割線L2との交点から離間する側が外周側電極Eo3となる。
【0058】
第4領域は、分割線L1と分割線L2に対して略45°で交わり、分割線L11に略直交し、分割線L22に平行な分割線L44で分割された内周側電極Ei4と外周側電極Eo4とから構成される。分割線L1と分割線L2との交点側が内周側電極Ei4となり、分割線L1と分割線L2との交点から離間する側が外周側電極Eo4となる。
【0059】
このように、内周側電極Ei1,Ei2,Ei3,Ei4は、分割線L1と分割線L2との交点を回転対称基準として90°回転対称形に形成されており、外周側電極Eo1,Eo2,Eo3,Eo4も、分割線L1と分割線L2との交点を回転対称基準として90°回転対称形に形成されている。尚、三角形状の内周側電極Ei1,Ei2,Ei3,Ei4と五角形状の外周側電極Eo1,Eo2,Eo3,Eo4のそれぞれの面積比は、シートの厚みや圧電定数によって最適に設計されるべき設計事項である。
【0060】
このような構成において、上述の各基本電極パターンEA0が互いに略対向するように電極パターン211,212を配設するということは、より具体的に言い換えれば、電極パターン211の基本電極パターンEA0と電極パターン212の基本電極パターンEA0の上述の内周側電極Ei1,Ei2,Ei3,Ei4および外周側電極Eo1,Eo2,Eo3,Eo4が、主面に直交する方向から見て略一致するように、配設されていることを示している。
【0061】
このような構成の基本電極パターンEA0に、図5(B)に示すパターンで電界を印加する。図5(B)において、シンボル901は紙面の表面から裏側へ向かう電界を示し、シンボル902は紙面の裏面から表側へ向かう電界を示す。
【0062】
具体的には、第1領域および第3領域の外周側電極Eo1,Eo3、第2領域および第4領域の内周側電極Ei2,Ei4に、シンボル901で示す電界を発生する電圧を印加する。同時に、第1領域および第3領域の内周側電極Ei1,Ei3、第2領域および第4領域の外周側電極Eo2,Eo4に、シンボル902で示す電界を発生する電圧を印加する。これにより、各領域を分割する内周側電極の部分と外周側電極の部分とで、逆方向の電界が印加され、分割線L1,L2を基準にして反転対称な電界が印加される。
【0063】
図6は、個別圧電素子Pe11に対して、図5(B)に示すような電界分布で電界を印加した場合の変形挙動を示す図である。図6において、濃色(黒色)に近づくほど変位が少なく、淡色(白色)に近づくほど変位が大きくなることを示している。また、図6は長方形の個別圧電素子を示しているが、正方形であっても同様の挙動となる。
【0064】
図6に示すように、図5(B)のパターンからなる電界が印加されることで、個別圧電素子Pe11は、各領域の中心すなわち、分割線L1と分割線L2との交点で最も変位量が大きく、外周に向かって徐々に変位量が小さくなる。
【0065】
あるタイミングで図5(B)に示すパターンの電界を印加し、別のタイミングで図5(B)に示すパターンと逆の電界を印加する。このような電界印加方向の変化を繰り返すことで、個別圧電素子Pe11は、主面に直交する方向に沿って振動する。これにより、個別圧電素子Pe11は、発音(放音)が可能になる。
【0066】
なお、図5(A)に示すように、第1領域の外周側電極Eo1と第4領域の内周側電極Ei4とを接続電極Ec4で接続し、第2領域の外周側電極Eo2と第1領域の内周側電極Ei1とを接続電極Ec1で接続し、第3領域の外周側電極Eo3と第2領域の内周側電極Ei2とを接続電極Ec2で接続し、第4領域の外周側電極Eo4と第3領域の内周側電極Ei3とを接続電極Ec3で接続し、第1領域の内周側電極Ei1と第3領域の内周側電極Ei3とを接続電極Ec5で接続することで、所望とする電界印加パターンを実現しながら、外部から内周側電極Ei1,Ei2,Ei3,Ei4へ直接接続する接続電極パターンを省略でき、構造を簡素化することができる。この際、接続電極Ec1,Ec2,Ec3,Ec4,Ec5は、幅および長さが極短い形状で形成されているので、個別圧電素子の振動には影響を与えない。
【0067】
このような構成からなる個別圧電素子Pe11−Pe14,Pe21−Pe24に対して、図7のような配線パターンで音響駆動信号を印加する。図7は、本実施形態の圧電スピーカ10に対する音響駆動信号の供給構成を示す図である。
【0068】
圧電スピーカ10の個別圧電素子Pe11の外周側電極Eo1、個別圧電素子Pe21の外周側電極Eo1,Eo3、個別圧電素子Pe22の外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe23,Pe24,Pe14の外周側電極Eo3は、接続配線パターン15を介して音源11に接続されている。
【0069】
圧電スピーカ10の個別圧電素子Pe11,Pe21,Pe22,Pe23の外周側電極Eo2、個別圧電素子Pe24の外周側電極Eo2,Eo4、個別圧電素子Pe14の外周側電極Eo4は、接続配線パターン14を介して音源11に接続されている。
【0070】
ここで、符号を図示していないが、個別圧電素子Pe21の外周側電極Eo1は個別圧電素子Pe11の外周側電極Eo3と接続されており、当該個別圧電素子Pe11の外周側電極Eo3は個別圧電素子Pe12の外周側電極Eo1に接続されている。
【0071】
個別圧電素子Pe21の外周側電極Eo3は個別圧電素子Pe22の外周側電極Eo1に接続され、個別圧電素子Pe22の外周側電極Eo1は個別圧電素子Pe12の外周側電極Eo3に接続されている。
【0072】
個別圧電素子Pe21の外周側電極Eo4は個別圧電素子Pe12の外周側電極Eo2に接続されている。
【0073】
個別圧電素子Pe24の外周側電極Eo2は個別圧電素子Pe23の外周側電極Eo4に接続され、個別圧電素子Pe23の外周側電極Eo3は個別圧電素子Pe13の外周側電極Eo2に接続されている。
【0074】
個別圧電素子Pe24の外周側電極Eo4は個別圧電素子Pe14の外周側電極Eo2に接続され、個別圧電素子Pe14の外周側電極Eo2は個別圧電素子Pe13の外周側電極Eo4に接続されている。
【0075】
音源11は単一の音響信号から振幅が常に反転する関係となる第1音響駆動信号と第2音響駆動信号を生成する。音源11は第1音響駆動信号を、接続配線パターン14を介して接続配線パターン14に接続された各電極に供給する。音源11は、第2音響駆動信号を、接続配線パターン15を介して接続配線パターン15に接続された各電極に供給する。
【0076】
このような音響駆動信号の印加制御を行うことで、各個別圧電素子Pe11−Pe14,Pe21−Pe24が略同期して動作し、圧電スピーカ10の正面方向へ放音する。図8(A)は本実施形態の構成による音圧レベル−周波数特性を示す図であり、図8(B)は本実施形態の構成と同じ面積の高分子シートの全面を用いて単独の個別圧電素子を形成した場合の音圧レベル−周波数特性を示す。図8(C)は本実施形態の構成と単独の個別圧電素子の音圧レベル−周波数特性の比較図である。なお、図8は、ベース部材100の厚みを0.075mmとし、高分子シート上の電極パターンの形成外形を延伸方向に160mm、延伸方向に直交する方向に90mmとし、高分子シートの厚みを0.05mmとしたバイモルフ形状の場合で、駆動電圧は288Vp−p、音圧の測定点を圧電スピーカ10の正面方向に1mm離間した位置とした場合の有限要素法によるシミュレーション結果である。また、図8において、細線が保護シートの無い場合での特性であり、太線が保護シートを装着した状態での特性を示す。
【0077】
図8に示すように、本実施形態の構成を用いることで、同面積で単独の個別圧電素子を形成する場合と比較して、音圧レベルを向上させることができる。特に、人の聴音感度が高い1000Hz以上での音圧レベルを向上させることができる。さらに、本実施形態の構成では共振ピークが増加するため、保護膜による緩衝後の特性が、同面積で単独の個別圧電素子を形成する場合と比較して平坦な特性となる。
【0078】
以上のように、本実施形態に示すような高分子シートに複数の個別圧電素子を形成する構成を用いることで、規定された面積において、高い音圧の圧電スピーカを構成することができる。また、音圧レベル−周波数特性に優れる圧電スピーカを構成することができる。
【0079】
次に、第2の実施形態に係る圧電スピーカについて図を参照して説明する。図9は第2の実施形態に係る圧電スピーカの電極パターンを簡略化して記載した平面図である。なお、図中のハッチングは、各個別圧電素子を識別しやすくするために行ったものであり、全体が所定の透光性を有することは、第1の実施形態と同じである。
【0080】
以下では、バイモルフ形状の圧電スピーカにおける第1圧電スピーカ201Aのみを説明するが、ベース部材100を介して対向する第2圧電スピーカも第1圧電スピーカ201Aと同じ構造である。
【0081】
本実施形態の第1圧電スピーカ201Aは、第1の実施形態に示した第1圧電スピーカ201が4×2=8個の個別圧電素子から構成されたのに対して、5×3=15個の個別圧電素子から構成されている。すなわち、高分子シートに対する電極パターンの外形形状を同じ状態とし、各個別圧電素子Pe11A−Pe15A,Pe21A−Pe25A,Pe31A−Pe35Aの形状を、第1の実施形態のPe11−Pe14,Pe21−Pe24よりも小さくし、個別圧電素子数を増加させたものである。
【0082】
図10は本実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図である。図10のように、配列する個別圧電素子数をさらに増加させることで、共振ピークを増加させることができ、周波数特性の平坦性を向上させることができる。また、保護シートの緩衝効果も伴って、さらに周波数特性を改善することができる。
【0083】
次に、第3の実施形態に係る圧電スピーカについて図を参照して説明する。図11(A)は第3の実施形態に係る圧電スピーカの第1圧電スピーカ201Bを電極パターン211B側から見た平面図であり、図11(B)は本実施形態での個別圧電素子単位を説明するための平面図である。なお、図中のハッチングは、各個別圧電素子を識別しやすくするために行ったものであり、全体が所定の透光性を有することは、第1、第2の実施形態と同じである。
【0084】
以下では、バイモルフ形状の圧電スピーカにおける第1圧電スピーカ201Bのみを説明するが、ベース部材を介して対向する第2圧電スピーカも第1圧電スピーカ201Bと同じ構造である。
【0085】
本実施形態の第1圧電スピーカ201Bは、第1の実施形態に示した圧電スピーカ201に対して、隣接する2×2個の個別圧電素子の形成領域の中央に、さらに別の個別圧電素子を形成したものである。
【0086】
具体的には、個別圧電素子Pe11Bの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe21Bの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe22Bの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe12Bの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe31を形成する。
【0087】
この際、個別圧電素子Pe11Bの外周側電極Eo3の内周側電極Ei3と反対側の領域を分割線により分割して、個別圧電素子Pe31Bの内周側電極Eic1を形成する。個別圧電素子Pe21Bの外周側電極Eo4の内周側電極Ei4と反対側の領域を分割線により分割して、個別圧電素子Pe31の内周側電極Eic2を形成する。個別圧電素子Pe22Bの外周側電極Eo1の内周側電極Ei1と反対側の領域を分割線により分割して、個別圧電素子Pe31の内周側電極Eic3を形成する。個別圧電素子Pe12Bの外周側電極Eo2の内周側電極Ei2と反対側の領域を分割線により分割して、個別圧電素子Pe31の内周側電極Eic4を形成する。
【0088】
同様に、個別圧電素子Pe12Bの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe22Bの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe23Bの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe13Bの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe32を形成する。
【0089】
個別圧電素子Pe13Bの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe23Bの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe24Bの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe14Bの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe33を形成する。
【0090】
このような構成とすることで、第1の実施形態の圧電スピーカと同じ電極形成領域の外形面積で内周側電極の面積を保ちながら、個別圧電素子数を、11個に増加することができる。
【0091】
図12は本実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図である。本実施形態の構成を用いることで、図12のように、特に1000Hz以上の高音域での共振ピークを増加させることができ、この音域での音圧レベル−周波数特性の平坦性を向上させることができる。
【0092】
次に、第4の実施形態に係る圧電スピーカについて図を参照して説明する。図13は第4の実施形態に係る圧電スピーカの電極パターンを簡略化して記載した平面図である。なお、図中のハッチングは、各個別圧電素子を識別しやすくするために行ったものであり、全体が所定の透光性を有することは、上述の実施形態と同じである。
【0093】
以下では、バイモルフ形状の圧電スピーカにおける第1圧電スピーカ201Cのみを説明するが、ベース部材100を介して対向する第2圧電スピーカも第1圧電スピーカ201Cと同じ構造である。
【0094】
本実施形態の圧電スピーカは、上述の第2の実施形態に係る5×3=15個の個別圧電素子から構成される圧電スピーカに対して、第3の実施形態に係る構成を適用したものである。
【0095】
具体的には、個別圧電素子Pe11Cの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe21Cの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe22Cの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe12Cの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe311を形成する。
【0096】
個別圧電素子Pe12Cの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe22Cの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe23Cの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe13Cの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe312を形成する。
【0097】
個別圧電素子Pe13Cの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe23Cの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe24Cの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe14Cの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe313を形成する。
【0098】
個別圧電素子Pe14Cの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe24Cの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe25Cの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe15Cの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe314を形成する。
【0099】
個別圧電素子Pe21Cの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe31Cの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe32Cの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe22Cの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe321を形成する。
【0100】
個別圧電素子Pe22Cの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe32Cの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe33Cの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe23Cの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe322を形成する。
【0101】
個別圧電素子Pe23Cの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe33Cの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe34Cの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe24Cの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe323を形成する。
【0102】
個別圧電素子Pe24Cの外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe34Cの外周側電極Eo4、個別圧電素子Pe35Cの外周側電極Eo1、および個別圧電素子Pe25Cの外周側電極Eo2の中心位置を新たな中心とする個別圧電素子Pe324を形成する。
【0103】
このような構成とすることで、第3の実施形態の圧電スピーカと同じ電極形成領域の外形面積で内周側電極の面積を保ちながら、個別圧電素子数を、23個に増加することができる。
【0104】
図14は本実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図である。本実施形態の構成を用いることで、図14のように、特に1000Hz以下の低音域での音圧レベル−周波数特性の平坦性を向上させることができる。
【0105】
次に、第5の実施形態に係る圧電スピーカについて図を参照して説明する。図15(A)は第5の実施形態に係る圧電スピーカの電極パターンを簡略化して記載した平面図であり、図15(B)は本実施形態の圧電スピーカの個別圧電素子の電極パターンを示す図である。なお、図15(A)中のハッチングは、各個別圧電素子を識別しやすくするために行ったものであり、全体が所定の透光性を有することは、上述の実施形態と同じである。
【0106】
以下では、バイモルフ形状の圧電スピーカにおける第1圧電スピーカ201Dのみを説明するが、ベース部材100を介して対向する第2圧電スピーカも第1圧電スピーカ201Dと同じ構造である。
【0107】
本実施形態の圧電スピーカは、第1の実施形態に示した圧電スピーカに対して、各領域の内周側電極と外周側電極とを分割する分割線をアステロイド曲線で形成したものであり、他の構成は同じである。この際、アステロイド曲線は、主面側から見て個別圧電素子Pe11D−Pe14D,Pe21D−Pe24Dの中心側に膨らんで湾曲するように、設定されている。
【0108】
図16は本実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図である。本実施形態の構成を用いることで、図16のように、上述の直線状の分割線を用いた場合と比較して、大きく周波数特性が変化している。特に500Hzから1000Hzまでの音域での音圧レベルが向上し、当該帯域での音圧レベル−周波数特性を改善することができる。このように、個別圧電素子内での内周側電極と外周側電極との分割形状を変化させることで、同じ外形形状の圧電スピーカであっても、音圧レベル−周波数特性を変化させることができる。
【0109】
次に、第6の実施形態に係る圧電スピーカについて図を参照して説明する。図17(A)は第6の実施形態に係る圧電スピーカの第1圧電スピーカ201Eを電極パターン211B側から見た平面図であり、図17(B)は本実施形態での個別圧電素子単位を説明するための平面図である。
【0110】
本実施形態の圧電スピーカは、配列する個別圧電素子数は第1の実施形態の圧電スピーカと同じであるが、複数種類の電極パターンからなる個別圧電素子を組み合わせたものである。具体的には、延伸方向の両端に配置される個別圧電素子Pe11E,Pe21E,Pe14E,Pe24Eは第一の形状であり、個別圧電素子Pe12E,Pe22E,Pe13E,Pe23Eは第一の形状とは別の第二の形状である。個別圧電素子Pe11E,Pe21E,Pe14E,Pe24Eと個別圧電素子Pe12E,Pe22E,Pe13E,Pe23Eでは、内周側電極と外周側電極との面積比が異なる。
【0111】
すなわち、個別圧電素子Pe12E,Pe22E,Pe13E,Pe23Eの内周側電極Ei11と外周側電極Eo11との面積比S(Ei11)/S(Eo11)に対して、個別圧電素子Pe12E,Pe22E,Pe13E,Pe23Eの内周側電極Ei21と外周側電極Eo21との面積比S(Ei21)/S(Eo21)が小さくなるように、電極パターンが形成されている。
【0112】
図18(A)は本実施形態に係る圧電スピーカの構成による音圧レベル−周波数特性を示す図であり、図18(B)は本実施形態と第1の実施形態と単独の個別圧電素子の場合での音圧レベル−周波数特性を比較した図である。本実施形態の構成を用いることで、高音域での周波数特性の平坦性をさらに向上させることができる。
【0113】
次に、第7の実施形態に係る圧電スピーカについて図を参照して説明する。図19は第7の実施形態に係る圧電スピーカの電極パターンを簡略化して記載した平面図である。なお、図中のハッチングは、各個別圧電素子を識別しやすくするために行ったものであり、全体が所定の透光性を有することは、上述の各実施形態と同じである。
【0114】
以下では、バイモルフ形状の圧電スピーカにおける第1圧電スピーカ201Fのみを説明するが、ベース部材100を介して対向する第2圧電スピーカも第1圧電スピーカ201Fと同じ構造である。
【0115】
図19に示すように、本実施形態の圧電スピーカは、上述の面積比の異なる個別圧電素子の組合せと、アステロイド曲線からなる分割線によって形成される個別圧電素子とを組み合わせたものである。
【0116】
具体的には、延伸方向の両端に位置する個別圧電素子は、素子内の分割線が直線状であり、内周側電極と外周側電極との面積比が異なる個別圧電素子Pe11F,Pe21Fの組と、個別圧電素子Pe14F,Pe24Fの組から構成される。また、延伸方向の中央に位置する四個の個別圧電素子Pe12,Pe21,Pe13,Pe23は、素子内の分割線がアステロイド曲線で形成された個別圧電素子である。
【0117】
このような組合せであっても、上述のように、組合せに応じた所望の音圧レベル−周波数特性を実現することができる。
【0118】
なお、上述の各実施形態で示した個別圧電素子の組合せは、一例であり、単一の音響信号が複数の個別圧電素子に同期して供給される構成であれば、本願の作用効果を得ることでき、所望とする音圧レベル−周波数特性の平面型透光性スピーカを実現することができる。
【0119】
次に、第8の実施形態に係る圧電スピーカについて図を参照して説明する。図20は第8の実施形態に係る圧電スピーカに対する音響信号の供給構成を示す図である。
【0120】
上述の各実施形態では、圧電スピーカ全体に対して、単一チャンネルの音響信号を供給する場合を示したが、本実施形態では、ステレオ音響信号を供給する場合について示す。
【0121】
なお、圧電スピーカの構成は第1の実施形態と同じであるので、音響信号の供給系の構成のみを説明する。
【0122】
圧電スピーカの個別圧電素子Pe11の外周側電極Eo1、個別圧電素子Pe21の外周側電極Eo1,Eo3、個別圧電素子Pe22の外周側電極Eo3は、接続配線パターン15Rを介して音源11Aに接続されている。圧電スピーカの個別圧電素子Pe23,Pe24,Pe14の外周側電極Eo3は、接続配線パターン15Lを介して音源11Aに接続されている。
【0123】
圧電スピーカ10の個別圧電素子Pe11,Pe21,Pe22の外周側電極Eo2は、接続配線パターン14Rを介して音源11Aに接続されている。圧電スピーカ10の個別圧電素子Pe23の外周側電極Eo2、個別圧電素子Pe24の外周側電極Eo2,Eo4、個別圧電素子Pe14の外周側電極Eo4は、接続配線パターン14Lを介して音源11Aに接続されている。
【0124】
音源11Aはステレオ音響信号を構成するRチャンネル音響信号から振幅が常に反転する関係となる第1Rch音響駆動信号RNと第2Rch音響駆動信号RRを生成する。音源11はステレオ音響信号を構成するLチャンネル音響信号から振幅が常に反転する関係となる第1Lch音響駆動信号LNと第2Lch音響駆動信号LRを生成する。
【0125】
音源11Aは第1Rch音響駆動信号RNを、接続配線パターン14Rを介して接続配線パターン14Rに接続された各電極に供給する。音源11は、第2Rch音響駆動信号RRを、接続配線パターン15Rを介して接続配線パターン15Rに接続された各電極に供給する。
【0126】
音源11Aは第1Lch音響駆動信号LNを、接続配線パターン14Lを介して接続配線パターン14Lに接続された各電極に供給する。音源11は、第2Lch音響駆動信号LRを、接続配線パターン15Lを介して接続配線パターン15Lに接続された各電極に供給する。
【0127】
このような構成とすることで、各チャンネルの音響信号に対して、それぞれ複数の個別圧電素子が接続されるので、上述のような音圧レベル−周波数特性を、ステレオ音声に対しても実現することができる。
【0128】
次に、第9の実施形態に係る圧電スピーカ装置について図を参照して説明する。図21は第9の実施形態に係る圧電スピーカ装置の外観斜視図であり、図21(A)が保持部材20R,20Lを駆動していない状態を示し、図21(B)が保持部材20R,20Lを駆動した状態を示している。図22は本実施形態に係る圧電スピーカ装置の上面図であり、図22(A)が保持部材20R,20Lを駆動していない状態を示し、図22(B)が保持部材20R,20Lを駆動した状態を示している。
【0129】
図21に示すように、本実施形態の圧電スピーカ装置は、上述の各実施形態で示した平面型で透光性の圧電スピーカ10の対向する両端に、柱状の保持部材20R,20Lを備え付けたものである。圧電スピーカ10は、これら保持部材20R,20Lによって、放音面が略水平方向に向くように保持される。
【0130】
保持部材20R,20Lは、供給される音響駆動信号により駆動するアクチュエータの機能を備えている。例えば、コイルと磁石の組合せにより電磁誘導で振動する構造からなる。なお、保持部材20R,20Lは、圧電や電歪、磁歪等の素子、超音波モータ等であってもよい。
【0131】
保持部材20R,20Lは、音響駆動信号により、圧電スピーカ10に対して反対の方向に振動するように設置されている。すなわち、或タイミングでは、図21(B),図22(B)のシンボル910R,910Lに示すように、保持部材20R,20Lが圧電スピーカ10を中心側に押す。また、別のタイミングでは、保持部材20R,20Lが定位置に戻る。このような動作の繰り返しにより、圧電スピーカ10は、保持部材20R,20Lに供給された音響駆動信号に応じて振動し、図21(B)、図22(B)のシンボル920に示すように、圧電スピーカ10の主面に直交する方向に沿って放音する。この際、図21図22に示すシンボル920と反対側の方向にも放音されるが、当該圧電スピーカ装置を、例えば、ディスプレイの画面上に配置し、ディスプレイ側を密閉空間にすることで、シンボル920と反対側の方向の音は、外部へは放音されない。
【0132】
このような構成の圧電スピーカ装置に対して、図23に示すように音響駆動信号を供給する。図23は第9の実施形態に係る圧電スピーカ装置に対する音響駆動信号の供給構成を示す図である。
【0133】
圧電スピーカ10の個別圧電素子Pe11の外周側電極Eo1、個別圧電素子Pe21の外周側電極Eo1,Eo3、個別圧電素子Pe22の外周側電極Eo3、個別圧電素子Pe23,Pe24,Pe14の外周側電極Eo3は、接続配線パターン15、アンプ16PRを介して音源11に接続されている。
【0134】
圧電スピーカ10の個別圧電素子Pe11,Pe21,Pe22,Pe23の外周側電極Eo2、個別圧電素子Pe24の外周側電極Eo2,Eo4、個別圧電素子Pe14の外周側電極Eo4は、接続配線パターン14、アンプ16PNを介して音源11に接続されている。
【0135】
保持部材20R,20Lは、接続配線パターン17、アンプ16Eを介して音源11に接続されている。
【0136】
音源11Bは、コンテンツ入力記憶部111およびデジタル演算器112を備える。コンテンツ入力記憶部111は、音楽コンテンツデータが記憶されたフラッシュメモリ等の記憶媒体、CD等の音楽記録媒体を再生する再生装置、外部からの音楽コンテンツをストリーミング再生する装置等からなる。
【0137】
デジタル演算器112は、コンテンツ入力記憶部111からの音楽コンテンツをデコードして音楽データを生成し、当該音楽データから圧電スピーカ用の音響駆動信号すなわち上述の第1音響駆動信号および第2音響駆動信号を生成する。また、デジタル演算器112は、デコードした音楽データの高音域成分を抑圧し、主として低音域成分で構成される保持部材用音響駆動信号を生成する。
【0138】
アンプ16PNは、第1音響駆動信号を増幅し、接続配線パターン14に接続された圧電スピーカ10の各電極に供給する。アンプ16PRは、第2音響駆動信号を増幅し、接続配線パターン15に接続された圧電スピーカ10の各電極に供給する。
【0139】
アンプ16Eは、保持部材用音響駆動信号を増幅し、接続配線パターン17に接続された保持部材20R,20Lに供給する。
【0140】
このような音響駆動信号の供給を行うことで、圧電スピーカ10は上述の各実施形態と同様の音圧レベル−周波数特性で放音する。同時に、保持部材20R,20Lによって、機構的に圧電スピーカ10全面が振動することで、保持部材用音響駆動信号の主成分である低音域も、放音される。特に、機構的な圧電スピーカ10全面での振動は、高音域では供給する音響駆動信号に追随させにくいが、低音域では十分に追随可能であり、有効である。また、放音面積を大きくすることができるので、効果的に低音域の音圧を高くすることができる。
【0141】
これにより、上述の各実施形態で比較的音圧の低かった低音域の音圧も、向上させることができる。すなわち、低音域から高音域まで、より平坦な音圧レベルの周波数特性を実現することができる。
【0142】
なお、このような保持部材に対して、バス音声を供給するようにすれば、2.1チャンネルサラウンドや、3.1チャンネルサラウンドを実現することもできる。図24は、3.1チャネルサラウンドを実現する場合の配線図である。図24では、図23と同様に、第1の実施形態に示した圧電スピーカ10を用いている。また、基本的な接続構成は、上述の第8、第9の実施形態に類似するので、詳細な説明は省略する。
【0143】
図24に示すように、音源11Bのデジタル演算器では、3.1chの音楽コンテンツ(映像コンテンツの音声も同様である。)から、Lチャンネル用音響駆動信号、Rチャンネル用音響駆動信号、Cチャンネル用音響駆動信号およびバス音響信号を生成する。
【0144】
Lチャンネル用音響駆動信号の第1Lチャンネル用音響駆動信号および第2Lチャンネル用音響駆動信号は、アンプ16PLN,16PLRで増幅されて、個別圧電素子Pe14,Pe24から供給される。
【0145】
Rチャンネル用音響駆動信号の第1Rチャンネル用音響駆動信号および第2Rチャンネル用音響駆動信号は、アンプ16PRN,16PRRで増幅されて、個別圧電素子Pe11,Pe21から供給される。
【0146】
Cチャンネル用音響駆動信号の第1Lチャンネル用音響駆動信号および第2Lチャンネル用音響駆動信号は、アンプ16PCN,16PCRで増幅されて、個別圧電素子Pe22,Pe23から供給される。
【0147】
バス音響駆動信号はアンプ16Eで増幅されて、保持部材20R,20Lに供給される。
【0148】
このような音響駆動信号の供給構成を用いることで、個別圧電素子Pe11,Pe21は主としてRチャンネル音声を放音し、個別圧電素子Pe14,24は主としてLチャンネル音声を放音する。また、個別圧電素子Pe12,Pe22,Pe13,Pe23は主としてCチャンネル音声を放音する。そして、圧電スピーカ10の全体としてバス音響信号を放音する。
【0149】
このように、図24の構成を用いれば、圧電スピーカ装置の各要素の特徴を活かしつつ、3.1chサラウンドを容易に実現することができる。
【0150】
なお、図24では、個別圧電素子Pe11,Pe21,Pe12,Pe22が接続されているので、個別圧電素子Pe11,Pe21からCチャンネル音声を補助的に放音させ、個別圧電素子Pe12,Pe22からRチャンネル音声を補助的に放音させることもできる。同様に、個別圧電素子Pe13,Pe23,Pe14,Pe24が接続されているので、個別圧電素子Pe14,Pe24からCチャンネル音声を補助的に放音させ、個別圧電素子Pe13,Pe23からLチャンネル音声を補助的に放音させることもできる。これにより、さらに複雑な音圧レベル−周波数特性を実現できる。
【0151】
この際、当然に、個別圧電素子Pe12,Pe22と、個別圧電素子Pe12,Pe22,Pe13,Pe23と、個別圧電素子Pe14,Pe24とをそれぞれ独立に駆動させてもよい。
【0152】
また、上述の図23図24では、第1の実施形態の圧電スピーカ10を用いた例を示したが、当然に他の実施形態の圧電スピーカを用いてもよい。このように、上述の各実施形態の構成を適宜組み合わせることで、音圧レベルが高く、所望とする音圧レベル−周波数特性を実現する平面型透光性スピーカを構成することができる。
【0153】
また、上述の各実施形態では、平面型透光性スピーカを例に示したが、他の材質を用いた平面型スピーカに対しても同様に、高い音圧レベルで、所望とする音圧レベル−周波数特性を実現することができる。
【0154】
また、上述の各実施形態では、圧電スピーカをバイモルフ構造で実現する例を示したが、ユニモルフ構造であっても、同様の作用効果を得ることが可能である。また、高分子シートの両面に同じ電極パターンを形成する例を示したが、放音面と反対側の面の電極をグランド電極にすることもできる。
【符号の説明】
【0155】
10:圧電スピーカ、11,11A,11B:音源、14,15,14R,14L,15R,15L,17:接続配線パターン、16PN,16PR,16E−アンプ、20R,20L:保持部材、
100:ベース部材、201:第1圧電スピーカ、202:第2圧電スピーカ、210,220:高分子シート、211,212,221,222:電極パターン、301,302:保護シート、
EA0:基本電極パターン、Ei1,Ei2,Ei3,Ei4:内周側電極、Eo1,Eo2,Eo3,Eo4:外周側電極、
Pe11−Pe14,Pe21−Pe24、Pe11A−Pe15A,Pe21A−Pe25A,Pe31A−Pe35A、Pe11B−Pe14B,Pe21B−Pe24B、Pe31,Pe32,Pe33、Pe11C−Pe15C,Pe21C−Pe25C,Pe31C−Pe35C、Pe311,Pe312,Pe313,Pe314,Pe321,Pe322,Pe323,Pe324、Pe11D−Pe14D,Pe21D−Pe24D、Pe11E−Pe14E,Pe21E−Pe24E、Pe11F−Pe14F,Pe21F−Pe24F、:個別圧電素子
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