(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明に係る熱交換器の実施形態は、以下に説明する実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0035】
本発明に係る熱交換器10は、R407C、R410A、R134a及びR32を含むHFC冷媒や、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を含むHFO冷媒等、熱交換中に相変化を起こす冷媒と、他の熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器であって、使用される冷媒として二酸化炭素(CO
2)冷媒を含まないものとする。なお、以下では、冷媒と熱交換を行う他の熱媒体として水が用いられる場合を例として記載しているが、当該他の熱媒体は水に限定されるものではない。
【0036】
(1)ヒートポンプ式給湯装置の構成
ヒートポンプ式給湯装置90は、
図1に示すように、温水熱源装置である冷凍装置91と、貯湯ユニット92とを備える。
【0037】
冷凍装置91は、冷媒を圧縮する圧縮機93と、冷媒と水との間で熱交換を行うための熱交換器10と、冷媒の減圧手段としての膨張弁94と、外気と冷媒との間で熱交換を行うための空気熱交換器95とを有している。そして、冷凍装置91側では、圧縮機93と熱交換器10と膨張弁94と空気熱交換器95とが接続されて、冷媒の循環する冷媒回路が構成されている。
【0038】
貯湯ユニット92は、貯湯タンク96と、水循環ポンプ97とを備える。そして、貯湯ユニット92側では、熱交換器10と貯湯タンク96と水循環ポンプ97とが接続されて、水の循環する水循環回路が構成されている。
【0039】
図2は、冷凍装置91の内部構造を示す模式図である。
図2において、断熱壁91cの右側区画が機械室91aであり、断熱壁91cの左側区画が送風機室91bである。機械室91aには、圧縮機93や膨張弁94が配置されている。送風機室91bには、モータ(図示省略)によって駆動されるファン98が配置されている。
【0040】
また、送風機室91bの下方には、断熱壁91dを隔てて熱交換器10が配置されている。そして、熱交換器10内にて、冷媒回路を循環する冷媒と、水循環回路を循環する水との間で熱交換が行われる。なお、
図2において、空気熱交換器95は、送風機室91bの左側と背面側に配置されている。
【0041】
(2)熱交換器の構成
図3は、熱交換器10の外観の一部を示す図である。
図4は、熱交換器10の概略構成図である。
図5は、
図3のV−V断面図である。
図6は、
図4のVI−VI断面図である。
【0042】
熱交換器10は、冷媒と水とを熱交換させる積層型のプレート式水熱交換器であって、複数の扁平管20と、複数の扁平多穴管40と、各扁平多穴管40の長手方向に交差する方向に延びる冷媒ヘッダ50と、を含んで構成される(
図3、
図4及び
図5参照)。また、各扁平管20は、扁平管20の両端部近傍に設けられており、冷媒ヘッダ50の延びる方向に沿って延びる連通部31,32で連通している。なお、本実施形態の熱交換器10は、15本の扁平管20と、16本の扁平多穴管40と、が交互に積層されている。ただし、これら積層される扁平管20や扁平多穴管40の数は、要求される性能などに応じて適宜選択されるものであり、扁平管20や扁平多穴管40の数が、本実施形態より多くてもよく、或いは、少なくてもよい。
【0043】
そして、扁平管20には水が流れ、扁平多穴管40には高圧の冷媒が流れる。このため、扁平多穴管40には、扁平管20よりも高い耐圧が要求される。したがって、扁平多穴管40の内部には、扁平多穴管40の長手方向に延びる複数の細かい冷媒流路41が設けられている。また、扁平多穴管40は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅合金、ステンレスなどで形成されている。なお、細い複数の冷媒流路41を有する扁平多穴管40の形成には、アルミニウム及びアルミニウム合金の引き抜き加工や押し出し加工が好適に用いられる。
【0044】
一方で、内部に水が流れる扁平管20には、高い耐食性が要求される。このため、扁平管20は、ステンレス鋼や銅合金で形成されていることが好ましい。また、扁平管20をアルミニウムやアルミニウム合金から作ることもできるが、この場合には、水の流路21となる内面にアルマイト加工や樹脂加工コーティングなどの防食処理を施すことが好ましい。なお、1本の扁平管20は、金属板(例えば、ステンレス鋼等)のプレス加工により成形された対となる金属プレートが重ね合わされて、その外周縁がロウ付け又は溶接によって接合されることで構成されている。また、扁平管20を構成する金属プレートには、伝熱促進のためのディンプルやシェブロンが形成されていてもよい。
【0045】
さらに、扁平管20、扁平多穴管40及び冷媒ヘッダ50が水平方向に沿って延びるように配置された状態の熱交換器10を示す図である
図4において、熱交換器10への水の入口部分37を含む側の連通部32は扁平管20の右端部近傍に配置されており、熱交換器10からの水の出口部分38を含む側の連通部31は扁平管20の左端部近傍に配置されている。入口部分37及び出口部分38には、それぞれ入口側コック80及び出口側コック81が設けられている。また、連通部31,32の入口部分37及び出口部分38には、配管などと接続される出入口ポート36が設けられている(
図3参照)。
【0046】
また、連通部31,32は、
図4に示すように、仕切部33a,33b,33c,33dによって、それぞれの内部空間が3つの空間に仕切られている。より詳しくは、連通部31には、仕切部33a,33bが設けられており、仕切部33a,33bが、連通部31を、第1空間31a、第2空間31b及び第3空間31cに仕切っている。また、連通部32には、仕切部33c,33dが設けられており、仕切部33c,33dが、連通部32を、第1空間32a、第2空間32b及び第3空間32cに仕切っている。このため、連通部31は、第1空間31aを構成する第1部分34a、第2空間31bを構成する第2部分34b、及び、第3空間31cを構成する第3部分34cを含んでいることになる。また、連通部32は、第1空間32aを構成する第1部分35a、第2空間32bを構成する第2部分35b、及び、第3空間32cを構成する第3部分35cを含んでいることになる。
【0047】
このような構成により、
図4において、扁平管20の側では、水は、連通部32の入口部分37から第3部分35cに入り、3本の扁平管20に分岐してその中を右から左に向かって流れ、連通部31の第3部分34cで合流する。合流した水は、第3部分34cから、3本の扁平管20に分岐してその中を左から右に向かって流れ、連通部32の第2部分35bで合流する。そして、合流した水は、第2部分35bから、3本の扁平管20に分岐してその中を右から左に向かって流れ、連通部31の第2部分34bで合流する。合流した水は、第2部分34bから、3本の扁平管20に分岐してその中を左から右に向かって流れ、連通部32の第1部分35aで合流する。そして、合流した水は、第1部分35aから、3本の扁平管20に分岐してその中を右から左に向かって流れ、連通部31の第1部分34aで合流して、連通部32の出口部分38を経て熱交換器10から流出するようになっている。なお、水は、扁平管20の中を流れる間に、扁平多穴管40の冷媒から与えられる熱で加熱される。
【0048】
また、冷媒ヘッダ50は、直線状に延びる扁平多穴管40の長手方向の両端部に配置されている。なお、以下より、扁平管20、扁平多穴管40及び冷媒ヘッダ50が水平方向に沿って延びるように配置された状態の熱交換器10を示す
図4において、扁平多穴管40の右端部に配置される冷媒ヘッダを符号51で表し、左端部に配置される冷媒ヘッダを符号52で表すものとする。
【0049】
冷媒ヘッダ51,52には、
図4に示すように、その内部空間を3つの空間に仕切る仕切板53a,53b,53c,53dが設けられている。より詳しくは、仕切板53a,53b,53c,53dは、冷媒ヘッダ51,52の延びる方向と交差する方向に延びている。そして、仕切板53c,53dは、冷媒ヘッダ51を、第1空間51a、第2空間51b及び第3空間51cに仕切っている。また、仕切板53a,53bは、冷媒ヘッダ52を、第1空間52a、第2空間52b及び第3空間52cに仕切っている。このため、冷媒ヘッダ51は、第1空間51aを構成する第1ヘッダ部54a、第2空間51bを構成する第2ヘッダ部54b、第3空間51cを構成する第3ヘッダ部54cを含んでいることになる。また、冷媒ヘッダ52は、第1空間52aを構成する第1ヘッダ部55a、第2空間52bを構成する第2ヘッダ部55b、第3空間52cを構成する第3ヘッダ部55cを含んでいることになる。
【0050】
このように、
図4において、扁平多穴管40の側では、冷媒は、冷媒ヘッダ52の入口部分57から第1ヘッダ部55aに入り、4本の扁平多穴管40に分岐してその中を左から右に向かって流れ、冷媒ヘッダ51の第1ヘッダ部54aで合流する。合流した冷媒は、第1ヘッダ部54aから、3本の扁平多穴管40に分岐してその中を右から左に向かって流れ、冷媒ヘッダ52の第2ヘッダ部55bで合流する。そして、合流した冷媒は、第2ヘッダ部55bから、3本の扁平多穴管40に分岐してその中を左から右に向かって流れ、冷媒ヘッダ51の第2ヘッダ部54bで合流する。合流した冷媒は、第2ヘッダ部54bから、3本の扁平多穴管40に分岐してその中を右から左に向かって流れ、冷媒ヘッダ52の第3ヘッダ部55cで合流する。そして、合流した冷媒は、第3ヘッダ部55cから、3本の扁平多穴管40に分岐してその中を左から右に向かって流れ、冷媒ヘッダ51の第3ヘッダ部54cで合流して、冷媒ヘッダ51の出口部分58を経て熱交換器10から流出するようになっている。なお、冷媒は、扁平多穴管40の中を流れる間に、扁平管20の水に熱を奪われて冷却される。
【0051】
なお、ここでは、連通部31,32及び冷媒ヘッダ51,52が、それぞれ、3つの空間に仕切られているが、仕切られる空間の数はこれに限定されない。また、連通部31,32及び冷媒ヘッダ51,52の内部空間が仕切られていなくてもよい。
【0052】
また、この熱交換器10は、冷媒ヘッダ50に複数の扁平多穴管40が嵌め込まれてロウ付け又は溶接によって接合されて構成された扁平多穴管40及び冷媒ヘッダ50の組立体に、扁平管20が積み重ねられながらロウ付け又は溶接によって接合されることで構成された扁平管20の組立体が嵌め込まれ、扁平管20と扁平多穴管40とが交互に積層された状態で、扁平管20と扁平多穴管40との接合部分が、ロウ付け又は溶接によって接合されることによって構成されている。このとき、連通部31,32の仕切部33a,33b,33c,33dについては、熱伝導率が低下しないように、ロウ付け等が行われないようにすることが好ましい。
【0053】
(3)熱交換器の設置状態
図7は、熱交換器10を冷媒ヘッダ50及び扁平多穴管40が水平方向に沿って延びるように配置された状態で設置したときに、冷媒ヘッダ50をその長手方向に沿って切断した場合の断面図である。
図8A(a)は、熱交換器10を冷媒ヘッダ50及び扁平多穴管40が水平方向に沿って延びるように配置された状態で設置したときに、冷媒ヘッダ50をその長手方向に直交する方向に沿って切断した場合の断面図である。
図8A(b)は、熱交換器10を冷媒ヘッダ50及び扁平多穴管40が水平方向に沿って延びるように配置された状態で設置したときに、冷媒ヘッダ50をその長手方向に沿って切断した場合の断面図である。なお、ここでいう冷媒ヘッダ50が水平方向に沿って延びるように配置されるとは、冷媒ヘッダ50が、水平面に対して全く傾いていないものから水平面に対して±15°程度傾いて配置されているものまで含まれる。
【0054】
本実施形態では、熱交換器10は、冷媒ヘッダ50及び扁平多穴管40が水平方向に沿って延びるように配置された状態で(水平面に対して全く傾斜していない状態で)冷凍装置91内に設置されている。すなわち、
図4は、本実施形態の設置手段で設置した状態の熱交換器10を上方から見た状態を示している。そして、冷媒ヘッダ50及び扁平多穴管40が水平方向に沿って延びるように配置されることで、扁平多穴管40に複数(本実施形態では、12本)形成されている冷媒流路41は、
図7に示すように、鉛直方向に沿って並ぶように配置されることになる。なお、ここでいう冷媒流路41が鉛直方向に沿って並ぶように配置されるとは、複数の冷媒流路41が、鉛直面に対して全く傾いていないものから鉛直面に対して±15°程度傾いて配置されているものまで含まれる。熱交換器10をこのように設置することで、ガス冷媒が凝縮して液冷媒へと相変化して液冷媒が発生しても、液冷媒は、重力により、
図8Aに示すように、冷媒ヘッダ50の下部に溜まるため、鉛直方向に沿って並ぶ冷媒流路41のうち下部に位置する冷媒流路41から輸送されることになり、冷媒ヘッダ50内での液冷媒の滞留を抑制することができる。
【0055】
また、
図8Bに示すように、本実施形態では、熱交換器10が設置された状態において、冷媒ヘッダ50内部の下面50aと扁平多穴管40の下端40aとの間には、隙間Sがある。このように、冷媒ヘッダ50に扁平多穴管40が嵌め込まれた状態で、冷媒ヘッダ50内部の下面50aと扁平多穴管40の下端40aとの間に隙間Sを設けることで、冷媒ヘッダ50の下部に液冷媒を溜めるための空間を確保することができる。したがって、該空間に液冷媒が溜まり、液面が上昇すると、鉛直方向に沿って並ぶ冷媒流路41のうちの最下部に位置する冷媒流路41から液冷媒を排除することができる。
【0056】
(4)特徴
(4−1)
図9は、本実施形態の熱交換器10と同様の構成の熱交換器を、冷媒ヘッダ50が鉛直方向(上下方向)に沿って延びるように配置され、扁平多穴管40が水平方向に沿って延びるように配置された状態で設置した状態を示す図である。
図10は、
図9に示す状態に設置された熱交換器において、ガス冷媒が凝縮して液冷媒が生じた場合に、冷媒ヘッダ50内部に液冷媒が溜まっている状態を示す図である。
図11は、
図9に示す状態に設置された熱交換器の各地点(A−F)における冷媒及び水の温度分布を予測した図である。なお、以下では、
図9に示す状態、すなわち、冷媒ヘッダ50が鉛直方向に沿って延びるように配置されており、扁平多穴管40が水平方向に沿って延びるように配置された状態で設置された熱交換器を、符号510で表している。また、
図11において、A地点とは、
図9における第1ヘッダ部55a、第1部分34aのことであり、B地点とは、
図9における第1ヘッダ部54a、第1部分35aのことであり、C地点とは、
図9における第2ヘッダ部55b、第2部分34bのことであり、D地点とは、
図9における第2ヘッダ部54b、第2部分35bのことであり、E地点とは、
図9における第3ヘッダ部55c、第3部分34cのことであり、F地点とは、
図9における第3ヘッダ部54c、第3部分35cのことである。
【0057】
複数の扁平多穴管40と複数の扁平管20とが交互に積層されて構成された熱交換器510において、扁平多穴管40の冷媒流路41を流れる冷媒として熱交換中に相変化を起こす冷媒が用いられる場合、
図9に示すように、冷媒ヘッダ51,52が鉛直方向に沿って延びるように配置されていると、凝縮時に発生した液冷媒は、重力により、冷媒ヘッダ51,52に設けられている第1空間51a,52a、第2空間51b,52b及び第3空間51c,52cの下部にそれぞれ滞留する(
図10参照)。そうすると、冷媒ヘッダ50に接続されている複数の扁平多穴管40のうち各空間51a,52a,51b,52b,51c,52cの下部に位置する扁平多穴管40の全ての冷媒流路41が、液冷媒で埋没してしまう。この場合、当該扁平多穴管40での熱交換量が低下することで、熱交換器510全体の性能が低下してしまう。
【0058】
そこで、本実施形態では、熱交換器10が冷凍装置91に設置されたとき、冷媒ヘッダ50は、水平方向に沿って延びるように配置されている。このため、
図9に示されるように、冷媒ヘッダが鉛直方向に沿って延びるように配置されている場合と比較して、冷媒凝縮時に発生した液冷媒が冷媒ヘッダ50内部に溜まったとしても、溜まった液冷媒の液面高さを低くすることができる。したがって、この熱交換器10では、
図10に示されるように、所定の扁平多穴管40の全ての冷媒流路41が液冷媒で埋没するおそれを低減することができ、この結果、扁平多穴管40における冷媒の偏流を抑制することができる。
【0059】
これによって、熱交換器10の性能低下を抑制することができている。
【0060】
(4−2)
ところで、本実施形態と同様の構成の熱交換器が冷凍装置に設置されたときに、扁平多穴管が鉛直方向に沿って延びるように配置されている場合、凝縮した液冷媒を重力に逆らって上昇させる必要が生じる。
【0061】
本実施形態では、熱交換器10が冷凍装置91内に設置されたとき、扁平多穴管40が、水平方向に沿って延びるように配置されている。このように、扁平多穴管40を水平方向に沿って延びるように配置することで、扁平多穴管が鉛直方向に沿って延びるように配置されている場合のように液冷媒を重力に逆らって上昇させる必要がなくなるため、扁平多穴管が鉛直方向に沿って延びるように配置されるよりも、圧力損失の増加を抑制することができている。
【0062】
(4−3)
本実施形態では、熱交換器10が冷凍装置91内に設置されたとき、扁平多穴管40に形成されている複数の冷媒流路41は、鉛直方向に沿って並ぶように配置されている。このため、ガス冷媒が凝縮して液冷媒が発生しても、当該液冷媒は、鉛直方向に沿って並ぶ複数の冷媒流路41のうち下方に位置する冷媒流路41から輸送されることになる。
【0063】
これによって、冷媒ヘッダ50内部での液冷媒の滞留を抑制することができている。
【0064】
ところで、鉛直方向に沿って並ぶ複数の冷媒流路41のうち下方に位置する冷媒流路41を液冷媒が流れる場合であっても、液冷媒と水との温度差は小さくなるが、扁平多穴管40の母材として熱伝導性の高いアルミニウムを用いることで、当該温度差減少の軽減を図ることができるため、熱交換量の低下に与える影響を小さくすることができる。
【0065】
(5)変形例
(5−1)変形例A
図12は、熱交換器を、冷媒ヘッダ50が水平方向に沿って延びるように配置され、扁平多穴管40が鉛直方向に沿って延びるように配置された状態で設置した状態を示す図である。
図13(a)は、
図12に示す状態の熱交換器の冷媒ヘッダ52を、その長手方向に直交する方向に沿って切断した場合の断面図である。
図13(b)は、
図12に示す状態の熱交換器の冷媒ヘッダ52をその長手方向に沿って切断した場合の断面図である。
図14(a)は、
図12に示す状態の熱交換器の冷媒ヘッダ51を、その長手方向に直交する方向に沿って切断した場合の断面図である。
図14(b)は、
図12に示す状態の熱交換器の冷媒ヘッダ51を、その長手方向に沿って切断した場合の断面図である。
【0066】
上記実施形態では、熱交換器10が冷凍装置91内に設置されたときには、冷媒ヘッダ50及び扁平多穴管40が水平方向に沿って延びるように配置されている。
【0067】
これに代えて、熱交換器が冷凍装置内に設置されたときに、冷媒ヘッダが水平方向に沿って延びるように配置されているのであれば、扁平多穴管は水平方向に沿って延びるように配置されていなくてもよい。
【0068】
例えば、
図12に示すように、熱交換器が冷凍装置内に設置されたときに、冷媒ヘッダ50が水平方向に沿って延びるように配置されており、扁平多穴管40が鉛直方向に沿って延びるように配置されていてもよい。なお、以下の説明では、
図12に示す状態、すなわち、冷媒ヘッダ50が水平方向に沿って延びるように配置されており、扁平多穴管40が鉛直方向に沿って延びるように配置された状態で設置された熱交換器を、符号110で表している。また、
図12に示す熱交換器110は、上記実施形態の熱交換器10と同様の構成であるため、熱交換器110を構成する各部品については、上記実施形態と同様の符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0069】
熱交換器110では、冷媒ヘッダ50のうち、冷媒ヘッダ52が上方に配置され、冷媒ヘッダ51が下方に配置されることになる。そして、上記実施形態と同様に複数のパスに分かれている扁平多穴管40の側では、冷媒は、冷媒ヘッダ52の第1ヘッダ部55aに入り、4本の扁平多穴管40に分岐してその中を上から下に向かって流れ、冷媒ヘッダ51の第1ヘッダ部54aで合流する。合流した冷媒は、第1ヘッダ部54aから、3本の扁平多穴管40に分岐してその中を下から上に向かって流れ、冷媒ヘッダ52の第2ヘッダ部55bで合流する。そして、合流した冷媒は、第2ヘッダ部55bから、3本の扁平多穴管40に分岐してその中を上から下に向かって流れ、冷媒ヘッダ51の第2ヘッダ部54bで合流する。合流した冷媒は、第2ヘッダ部54bから、3本の扁平多穴管40に分岐してその中を下から上に向かって流れ、冷媒ヘッダ52の第3ヘッダ部55cで合流する。そして、合流した冷媒は、第3ヘッダ部55cから、3本の扁平多穴管40に分岐してその中を上から下に向かって流れ、冷媒ヘッダ51の第3ヘッダ部54cで合流して、熱交換器110から流出する。
【0070】
このような構成により、この熱交換器110では、冷媒ヘッダ50が水平方向に沿って延びるように配置されているため、
図9に示されるように、冷媒ヘッダ50が鉛直方向に沿って延びるように配置されている場合と比較して、ガス冷媒が凝縮して液冷媒が冷媒ヘッダ50内部に溜まったとしても、溜まった液冷媒の液面高さを低くすることができる。このため、所定の扁平多穴管40の全ての冷媒流路41が液冷媒で埋没するおそれを低減することができ、この結果、扁平多穴管40における冷媒の偏流を抑制することができる。
【0071】
これによって、熱交換器110の性能低下を抑制することができている。
【0072】
また、扁平多穴管40が鉛直方向に沿って延びるように配置されることで、
図12に示すように、各扁平多穴管40の高さが均等になる。このため、
図13に示されるように、冷媒ヘッダ52内部に液冷媒が滞留しても、各扁平多穴管40の入口(冷媒流路41端面)と液冷媒の液面とが略平行になり、液冷媒が各扁平多穴管40に均等に分配されやすくなる。この結果、冷媒の偏流を抑制することができる。
【0073】
ただし、扁平多穴管40が鉛直方向に沿って延びるように配置されていることで、凝縮した液冷媒は重力に逆らって上昇する必要があり、上昇時における冷媒の圧力損失が増大する。そうすると、凝縮温度が低下して、冷媒と水との温度差が小さくなることで、熱交換量が小さくなってしまう。また、
図14に示すように、下方に配置される冷媒ヘッダ51内に液冷媒が滞留することで、充填する冷媒量が増える可能性がある。したがって、熱交換器が冷凍装置に設置される際には、扁平多穴管40が、鉛直方向に沿って延びるように配置されるより、水平方向に沿って延びるように配置されるほうが好ましい。
【0074】
(5−2)変形例B
上記実施形態では、
図8Bに示すように、冷媒ヘッダ50はその長手方向に直交する方向に切断した断面が楕円形状を呈しており、熱交換器10が設置された状態において冷媒ヘッダ50内部の下面50aと扁平多穴管40の下端40aとの間には隙間Sができるように、扁平多穴管40が冷媒ヘッダ50に嵌め込まれている。
【0075】
しかしながら、熱交換器10が設置された状態において、冷媒ヘッダ50内部の下面50aと扁平多穴管40の下端40aとの間に隙間Sを設けることができるのであれば、冷媒ヘッダ50の形状はこれに限定されない。
【0076】
例えば、冷媒ヘッダが、その長手方向に直交する方向に切断した断面が半円形状を呈していてもよい。具体的には、
図15に示すように、冷媒ヘッダ150が、扁平多穴管40の嵌め込まれる方向に向かって突出するように湾曲していてもよく、
図16に示すように、冷媒ヘッダ250が、扁平多穴管40の嵌め込まれる方向とは反対方向に向かって突出するように湾曲していてもよい。このように、その長手方向に直交する方向に切断した断面が半円形状を呈する冷媒ヘッダ150,250であっても、冷媒ヘッダ150,250内部の下面150a,250aと扁平多穴管40の下端40aとの間に隙間Sを設けることで、冷媒ヘッダ150,250の下部空間に液冷媒を溜めることができる。
【0077】
また、熱交換器10が設置された状態において、冷媒ヘッダ50の長手方向に直交する方向に切断した断面形状が、その上下方向において異なる形状であってもよい。例えば、
図17に示すように、冷媒ヘッダ350が、接着板351と、スペーサ352と、側板353と、を有する積層型ヘッダである場合には、側板353の一部が外方へ突出するように構成されていてもよい。冷媒ヘッダ350において側板353の突出している部分353aが下方に位置するように熱交換器10が設置されることで、液冷媒を溜めるための空間を大きくとることができる。
【0078】
さらに、
図18に示すように、冷媒ヘッダ50の長手方向に直交する方向に切断した断面形状が上下対称であっても、冷媒ヘッダ50内部の下面50aと扁平多穴管40の下端40aとの間の隙間Sが大きくなるように、扁平多穴管40が冷媒ヘッダ50に対して偏芯して嵌め込まれていてもよい。
【0079】
このように、冷媒ヘッダ50,150,250,350内部の下面50a,150a,250a,350aと扁平多穴管40の下端40aとの間に隙間Sが形成されるように扁平多穴管40を冷媒ヘッダ50,150,250,350に嵌め込むことで、冷媒ヘッダ50,150,250,350内に液冷媒を溜めるための空間を確保することができる。このように、冷媒ヘッダ50,150,250,350内に液冷媒を溜めるための空間があることで、熱交換器10の動作時には該空間に液冷媒が溜まっていき、液面が鉛直方向に沿って並ぶ冷媒流路41のうちの最下部に位置する冷媒流路41に達することで、最下部に位置する冷媒流路41から液冷媒を排除することができる。
【0080】
(5−3)変形例C
上記実施形態及び各変形例では、扁平多穴管40に形成されている複数の冷媒流路41は、全て同一である。このため、各冷媒流路41の流路断面の面積は、全て同一である。
【0081】
これに代えて、
図19に示すように、扁平多穴管440に形成されている複数の冷媒流路441において、端部に位置する冷媒流路441a,441cの流路断面が、他の冷媒流路441bの流路断面よりも大きくなるように設けられていてもよい。この場合、熱交換器10を設置したときに、鉛直方向(重力方向)に並ぶ複数の冷媒流路441のうち最も下方に位置する最下段冷媒流路441aの流路断面の面積が、最下段冷媒流路441aよりも上方に位置する上段冷媒流路441bの流路断面の面積よりも大きくなるため、各冷媒流路441の流路断面の面積が全て同一である場合と比較して、最下段冷媒流路441aにおける流路抵抗を小さくすることができ、この結果、冷媒ヘッダ350内に溜まった液冷媒をスムーズに流すことができる。この結果、熱交換器10における熱交換効率を向上させることができる。
【0082】
さらに、
図19に示すように、扁平多穴管440に形成されている複数の冷媒流路441において、端部に位置する冷媒流路441a,441c以外の冷媒流路441bを構成する面に、伝熱促進用の溝442が形成されていてもよい。すなわち、扁平多穴管440に形成されている複数の冷媒流路441において、端部に位置する冷媒流路441a,441cを構成する面にのみ、伝熱促進用の溝442が形成されていなくてもよい。これにより、端部に位置する冷媒流路441a,441cを構成する面にも伝熱促進用の溝442が形成されている場合と比較して、最下段冷媒流路441aにおける流路抵抗を小さくすることができるため、冷媒ヘッダ350内に溜まった液冷媒をスムーズに流すことができる。この結果、熱交換器10における熱交換効率を向上させることができる。
【0083】
なお、本変形例の扁平多穴管440は、上記実施形態だけでなく、他の変形例に係る熱交換器に対しても適用することができる。また、本変形例の扁平多穴管440は、上記変形例Bのように液冷媒を溜めるための空間が大きくなるように構成された冷媒ヘッダに適用されることで、熱交換器10における熱交換効率をさらに向上させることができる。
【0084】
(5−4)変形例D
図20は、変形例Dに係る熱交換器10の設置状態を説明するための概略図であって、熱交換器10を冷媒ヘッダ51側から見た図である。
図21は、
図20に示す状態の冷媒ヘッダ51の断面図である。
図22は、変形例Dに係る熱交換器10の設置状態を説明するための概略図である。なお、
図22の斜線部分は、伝熱部39を示している。
【0085】
冷凍装置91のメンテナンスを行う場合や、冬期において冷凍装置91を長期間使用しない場合には、凍結防止のために、熱交換器10の水抜きをすることが好ましい。なお、熱交換器10の水抜きとは、具体的には、扁平管20の連通部31,32の入口部分37に設けられている入口側コック80と、出口部分38に設けられている出口側コック81とを開き、熱交換器10内の水を外へ排出する作業を意味している。
【0086】
ここで、熱交換器10の水抜きを行う場合、入口部分37側、又は出口部分38側のいずれか一方が、他方よりも下方、すなわち低い位置にあるほうが、熱交換機10内の水を外へ排出しやすい。
【0087】
そこで、連通部31,32において入口部分37側又は出口部分38側のいずれか一方の端部が他方の端部よりも下方になるように、熱交換器10を水平面に対して所定角度(0°〜±15°の範囲内)だけ傾斜させて、冷凍装置91内に設置してもよい。
【0088】
例えば、入口部分37がある側の連通部31,32のそれぞれの端部が、出口部分38がある側の連通部31,32のそれぞれの端部よりも下方に位置するように、熱交換器10を水平面に対して10°傾けて設置した場合(
図20参照)、連通部31,32が水平面に対して全く傾斜していない状態で熱交換器10を設置しているよりも、入口側コック80側から熱交換器10内の水を排出しやすくすることができる。
【0089】
また、入口部分37がある側の連通部31,32のそれぞれの端部が、出口部分38がある側の連通部31,32のそれぞれの端部よりも下方に位置するように、熱交換器10を水平面に対して10°傾けて設置した場合、出口部分58がある側の冷媒ヘッダ51,52のそれぞれの端部が、入口部分57がある側の冷媒ヘッダ51,52のそれぞれの端部よりも下方に位置することになる(
図20及び
図21参照)。ここで、熱交換器10が凝縮器として機能する場合、入口部分57から入ったガス冷媒は、熱交換によってガス冷媒から液冷媒に相変化し、出口部分58からは主に液冷媒が流出することになる。このように、凝縮器として機能する熱交換器10において、出口部分58がある側の冷媒ヘッダ51,52のそれぞれの端部が、入口部分57がある側の冷媒ヘッダ51,52のそれぞれの端部よりも下方に位置するように熱交換器10が設置されることで、冷媒ヘッダ51,52が水平面に対して全く傾斜していない状態で熱交換器10が設置されているよりも、出口部分58から液冷媒が流出しやすくなるため、熱交換器10内に液冷媒が溜まり込むおそれを低減することができる。
【0090】
さらに、
図22に示すように、扁平管20において連通部31,32以外の部分であって扁平多穴管40と接触している部分39(以下、伝熱部という)が連通部31,32よりも上方に配置されるように、熱交換器10が設置されている場合には、伝熱部39が連通部31,32よりも下方に配置されるように熱交換器10が設置されている場合と比較して、伝熱部39に水が溜まり込み難くなるため、熱交換器10内に溜まった水が排出されやすくなる。これにより、熱交換器10の水抜き作業を簡易にすることができる。
【0091】
(5−5)変形例E
上記実施形態及び上記変形例では、熱交換器が凝縮器としてのみ機能している場合を例として説明しているが、これに限定されず、本発明の熱交換器が凝縮器及び蒸発器として機能してもよい。