(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに対して反対側にある第1端面(12)および第2端面(14)と、該第1端面(12)と該第2端面(14)との間に延在する周側面(16)であって2つの側面部分(20、24)を有する周側面とを備え、該第1端面と該第2端面とを貫通するように延びる軸線(A)が定められる、歯切り用の切削インサートにおいて、
2つの曲線形状の第1切れ刃(30、32)であって、一方の第1切れ刃(30)は該第1端面(12)と該2つの側面部分のうちの一方の側面部分(20)との交差稜線部に沿って延在するようにかつ該一方の側面部分がすくい面として機能するように形成され、他方の第1切れ刃(32)は該第1端面(12)と該2つの側面部分のうちの他方の側面部分(24)との交差稜線部に沿って延在するようにかつ該他方の側面部分がすくい面として機能するように形成され、各第1切れ刃は、該第1端面と関連する側面部分との交差稜線部において、該軸線(A)に直交する方向に湾曲して形成されている、第1切れ刃(30、32)と、
2つの曲線形状の第2切れ刃(34、36)であって、一方の第2切れ刃(34)は該第2端面(14)と該2つの側面部分のうちの一方の側面部分(20)との交差稜線部に沿って延在するようにかつ該一方の側面部分がすくい面として機能するように形成され、他方の第2切れ刃(36)は該第2端面と該2つの側面部分のうちの他方の側面部分(24)との交差稜線部に沿って延在するようにかつ該他方の側面部分がすくい面として機能するように形成され、各第2切れ刃は、該第2端面と関連する側面部分との交差稜線部において、該軸線に直交する方向に湾曲して形成されている、第2切れ刃(34、36)と
を備え、
前記第1切れ刃(30、32)および前記第2切れ刃(34、36)は、それぞれ、インボリュート曲線形状を有するように形成されている、
切削インサート。
前記2つの側面部分のうちの共通の側面部分を介して関連付けられた第1切れ刃(30、32)および第2切れ刃(34、36)は、面対称であるように配置されている、請求項1または2に記載の切削インサート。
前記第1切れ刃(30、32)および前記第2切れ刃(34、36)は、それぞれ、第1曲線部分と第2曲線部分とを結合することで構成された凸状曲線形状を有するように、少なくとも部分的に形成され、前記第1曲線部分の曲率半径をR1とするとき、前記第2曲線部分の曲率半径R2は0.4R1以上、1.0R1未満の範囲にある、請求項4から6のいずれかに記載の切削インサート。
前記第1切れ刃(30、32)および前記第2切れ刃(34、36)は、それぞれ、第1曲線部分と第2曲線部分とを結合することで構成された凹状曲線形状を有するように、少なくとも部分的に形成され、前記第1曲線部分の曲率半径をR1とするとき、前記第2曲線部分の曲率半径R2は1.2R1以上、2.3R1未満の範囲にある、請求項4から6のいずれかに記載の切削インサート。
前記第1切れ刃(30、32)は前記軸線(A)に平行な方向において外方に張り出さないように形成されていて、前記第2切れ刃(34、36)は前記軸線(A)に平行な方向において外方に張り出さないように形成されている、請求項1から11のいずれかに記載の切削インサート。
回転軸線周りに回転するように構成された工具本体(52)のインサート取付座に、前記切削インサートは、該回転軸線に直交するように定められる平面に対して所定の傾きを有して、前記第1端面(12)または前記第2端面(14)を着座面として着脱自在に取り付けられる、
請求項1から13のいずれかに記載の切削インサート。
互いに対して反対側にある2つの側端面(54、56)を有する工具本体(52)を備え、該工具本体が回転軸線周りに回転するように構成された、歯切り用の回転切削工具において、
前記2つの側端面のうちの一方の側端面側において該工具本体に配設された第1インサート取付座であって、請求項1から13のいずれかに記載の切削インサートが取り付けられる第1インサート取付座(60a)と、
前記2つの側端面のうちの他方の側端面側において該工具本体に配設された第2インサート取付座であって、請求項1から13のいずれかに記載の切削インサートが取り付けられる第2インサート取付座(60b)と
を有し、
前記切削インサートの前記第1端面は前記第1インサート取付座の底壁面に当接するインサート着座面としての機能を有し、前記切削インサートの前記第2端面は前記第2インサート取付座の底壁面に当接するインサート着座面としての機能を有し、
前記回転軸線に直交するように延びる平面を定めるとき、前記第1インサート取付座(60a)の底壁面は、該平面に対して第1所定傾きを有して形成され、また、前記第2インサート取付座(60b)の底壁面は、該平面に対して第2所定傾きを有して形成されている、
回転切削工具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現在、歯切り用の切削インサートにおいては、インボリュート曲線形状を被削材に転写可能な切れ刃数を従来以上に増加させることが要望されている。なぜなら、切削インサートにインボリュート曲線形状の切れ刃を形成するには高い技術と精度が求められ、切削インサートの製造コストが増大し、結果として切削インサートの単価が高いのが現状であるからである。
【0007】
使用可能な切れ刃数を従来以上に増やす方策として、片面使用の特許文献1の切削インサートを両面使いの切削インサートに改良することが考えられる。このように改良した切削インサートでは、
図26および
図27に示されている切削インサート1の下面6側にも切れ刃が形成され、上面2だけでなく下面6も凸状形状を有する。この形態の切削インサートでは、上下面合わせて4つの切れ刃を使用することができる。しかしながら、この場合、インサート着座面となる上面および下面が両方ともインボリュート曲線にならった凸状曲面となってしまう。このような形状の切削インサートを工具本体に装着するためには、工具本体のインサート取付座の底壁面の形状をインボリュート曲線にならった凹状曲面としなければならない。しかし、エンドミルなどの切削工具でそのような凹状曲面をインサート取付座の底壁面に形成するには非常に大きな労力およびコストがかかってしまうので、そのようなインサート取付座は現実的ではない。また、仮にインサート取付座をそのように形成することを試みたとしても、そのような凹状曲面を工具本体のインサート取付座の底壁面に精度良く形成することが困難であることから、そのインサート取付座における切削インサートの取付安定性に課題が残るであろう。
【0008】
本発明は、上下面側のそれぞれに特定の曲線形状の切れ刃を有しつつも、取り付けられる対応するインサート取付座の底壁面が切れ刃の形状に対応した特定の湾曲面を有する必要がない、切削インサート、および、それが装着される切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、互いに対して反対側にある第1端面および第2端面と、該第1端面と該第2端面との間に延在する周側面であって2つの側面部分を有する周側面とを備え、該第1端面と該第2端面とを貫通するように延びる軸線が定められる、切削インサートにおいて、2つの曲線形状の第1切れ刃であって、一方の第1切れ刃は該第1端面と該2つの側面部分のうちの一方の側面部分との交差稜線部に沿って延在するようにかつ該一方の側面部分がすくい面として機能するように形成され、他方の第1切れ刃は該第1端面と該2つの側面部分のうちの他方の側面部分との交差稜線部に沿って延在するようにかつ該他方の側面部分がすくい面として機能するように形成され、各第1切れ刃は、該第1端面と関連する側面部分との交差稜線部において、該軸線に直交する方向に湾曲して形成されている、第1切れ刃と、2つの曲線形状の第2切れ刃であって、一方の第2切れ刃は該第2端面と該2つの側面部分のうちの一方の側面部分との交差稜線部に沿って延在するようにかつ該一方の側面部分がすくい面として機能するように形成され、他方の第2切れ刃は該第2端面と該2つの側面部分のうちの他方の側面部分との交差稜線部に沿って延在するようにかつ該他方の側面部分がすくい面として機能するように形成され、各第2切れ刃は、該第2端面と関連する側面部分との交差稜線部において、該軸線に直交する方向に湾曲して形成されている、第2切れ刃と、を備えた、切削インサートが提供される。
【0010】
かかる構成によれば、第1端面側に曲線形状の第1切れ刃が形成され、第2端面側に曲線形状の第2切れ刃が形成されることができる。そして、各第1切れ刃が第1端面と側面部分との交差稜線部において軸線に直交する方向に湾曲して形成され、かつ、各第2切れ刃が第2端面と側面部分との交差稜線部において軸線に直交する方向に湾曲して形成されるので、第1端面および第2端面の表面形状の設計の自由度は第1切れ刃および第2切れ刃の曲線形状に実質的に制限されない。したがって、例えば、第1端面および第2端面をそれぞれ平坦面とすることができる。よって、第1態様の切削インサートが取り付けられる対応するインサート取付座の底壁面は切れ刃の形状に適合した特定の湾曲面を有する必要がない。
【0011】
好ましくは、第1切れ刃は、該第1端面に対向する側から切削インサートをみたとき、所定の第1曲線形状を有するように形成され、第2切れ刃は、該第2端面に対向する側から該切削インサートをみたとき、所定の第2曲線形状を有するように形成されるとよい。好ましくは、2つの側面部分のうちの共通の側面部分を介して関連付けられた第1切れ刃および第2切れ刃は、面対称であるように配置されるとよい。
【0012】
第1切れ刃および第2切れ刃は、それぞれ、外方に突出するように凸状曲線形状に形成されることができる。あるいは、第1切れ刃および第2切れ刃は、それぞれ、内方に凹むように凹状曲線形状に形成されてもよい。
【0013】
好ましくは、第1切れ刃および第2切れ刃は、それぞれ、インボリュート曲線形状を有するように形成されるとよい。あるいは、第1切れ刃および第2切れ刃は、それぞれ、曲率の異なる複数の曲線部分が結合することで構成された曲線形状を有するように形成されるとよい。例えば、第1切れ刃および第2切れ刃が、それぞれ、第1曲線部分と第2曲線部分とを結合することで構成された凸状曲線形状を有するように、少なくとも部分的に形成される場合、第1曲線部分の曲率半径をR1とするとき、第2曲線部分の曲率半径R2は0.4R1以上、1.0R1未満の範囲にあるとよい。または、第1切れ刃および第2切れ刃が、それぞれ、第1曲線部分と第2曲線部分とを結合することで構成された凹状曲線形状を有するように、少なくとも部分的に形成される場合、第1曲線部分の曲率半径をR1とするとき、第2曲線部分の曲率半径R2は1.2R1以上、2.3R1未満の範囲にあるとよい。なお、第2曲線部分の長さは、第1曲線部分の長さよりも長いとよい。
【0014】
好ましくは、周側面には、凹部が形成されているとよい。
【0015】
さらに好ましくは、回転軸線周りに回転するように構成された工具本体のインサート取付座に、切削インサートは、該回転軸線に直交するように定められる平面に対して所定の傾きを有して、第1端面または第2端面を着座面として着脱自在に取り付けられる。
【0016】
本発明に第2態様によれば、互いに対して反対側にある2つの側端面を有する工具本体を備え、該工具本体が回転軸線周りに回転するように構成された、回転切削工具において、2つの側端面のうちの一方の側端面側において該工具本体に配設された第1インサート取付座であって、上記したような切削インサートが取り付けられる第1インサート取付座と、2つの側端面のうちの他方の側端面側において該工具本体に配設された第2インサート取付座であって、上記したような切削インサートが取り付けられる第2インサート取付座とを有し、切削インサートの第1端面は第1インサート取付座の底壁面に当接するインサート着座面としての機能を有し、切削インサートの第2端面は第2インサート取付座の底壁面に当接するインサート着座面としての機能を有し、回転軸線に直交するように延びる平面を定めるとき、第1インサート取付座の底壁面は、該平面に対して第1所定傾きを有して形成され、また、第2インサート取付座の底壁面は、該平面に対して第2所定傾きを有して形成されている、回転切削工具が提供される。
【0017】
切削インサートが、第1切れ刃および第2切れ刃がそれぞれ曲率の異なる複数の曲線部分が結合することで構成された曲線形状を有するように形成された切削インサートである場合、該切削インサートの各側面部分における第1切れ刃の1つの曲線部分と第2切れ刃の1つの曲線部分との間に延在する部分が当接面部分として機能し、第1インサート取付座の側壁面および第2インサート取付座の側壁面には、それぞれ、該当接部分に当接可能な凸状被当接部分が形成されているとよい。
【0018】
切削インサートの周側面に凹部が形成されている場合、第1インサート取付座の側壁面および第2インサート取付座の側壁面には、それぞれ、切削インサートのその凹部に係合可能な突出部が形成されているとよい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
これより、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明および図では、複数の実施形態等を通じて、同じまたは同様の構成要素に同じ符号を用い、それらの重複説明を省略する。
【0021】
本発明の第1実施形態に係る切削インサート10は、
図1から3に示されているように、略平板状をなしている。切削インサート10は、対向するつまり互いに対して反対側にある2つの端面12、14と、これら2つの端面12、14間に延在する周側面16とを備えている。切削インサート10には、2つの端面12、14間に延びてそれらを貫通する取付穴18が設けられていて、取付穴18は2つの端面12、14を貫通するように延びる中心軸線Aを有する。
【0022】
互いに対して反対側にある2つの端面12、14は、第1端面としての上面12と、第2端面としての下面14とからなる。この第1実施形態の切削インサート10では、上面12と下面14とは、中心軸線Aに直交する平面に対して実質的に面対称に形成され、略平行に形成されている。また、上面12および下面14の各々は、中心軸線A周りに回転対称に形成されている。ただし、本第1実施形態の切削インサート10では、上面および下面は実質的に平坦面とされていて、それぞれ後述するようにインサート着座面として機能するように構成されている。しかし、上面および下面は、特にその縁部を除く表面部分は、湾曲形状や凹凸形状など種々の形状を有してもよい。なお、上面および下面は逆であってもよく、これらのいずれが第1端面または第2端面とされてもよい。本明細書における「上」、「下」という用語は、説明を容易にするために便宜上用いられているに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0023】
本第1実施形態の切削インサート10では、上面12は、4つのコーナ部12cを有し、略長方形形状とみなされ得る。上面12は、互いに対して反対側にある1対の第1縁部としての1対の長辺部12aと、互いに対して反対側にある1対の第2縁部としての1対の短辺部12bとを有し、これら各縁部は対応するコーナ部を介して交互に連続している。なお、長辺部は短辺部よりも長い。長辺部12aはそれぞれ外方に突出するように凸状曲線形状に形成されていて、短辺部12bはそれぞれ真っ直ぐに延びるように形成されている。したがって、上面12は、平板面視にて、つまり上面12に対向する側から切削インサート10を見たとき、略長方形を基本として外方に膨らんだ形状をなしている。ただし、各長辺部12aは、中心軸線Aに直交するように定められる平面上に実質的に延在するように形成されていて、よって、軸線Aに直交するように定められる平面上で実質的に湾曲するように形成されている。
【0024】
下面14も、上面12と同様に、4つのコーナ部14cを有し、略長方形形状とみなされ得る。下面14は、互いに対して反対側にある1対の第1辺部としての1対の長辺部14aと、互いに対して反対側にある1対の第2辺部としての1対の短辺部14bとを有し、これら各辺部は対応するコーナ部を介して交互に連続している。長辺部14aはそれぞれ外方に突出するように凸状曲線形状に形成されていて、短辺部14bはそれぞれ真っ直ぐに延びるように形成されている。したがって、下面14は、平板面視にて、つまり下面14に対向する側から切削インサート10を見たとき、略長方形を基本として外方に膨らんだ形状をなしている。ただし、各長辺部14aは、中心軸線Aに直交するように定められる平面上に実質的に延在するように形成されていて、よって、軸線Aに直交するように定められる平面上で実質的に湾曲するように形成されている。
【0025】
この下面14は、上記したように、軸線Aに直交するように定められる平面に関して上面12と略面対称である。そして、上面12の長辺部12aを全体的に含むように中心軸線Aに平行に延びる仮想面を定めるとき、この面上に、切削インサート10の同じ側にある、下面14の長辺部14aが延在するように、上面12および下面14は互いに対して関係付けられている。
【0026】
このように上面12および下面14はそれぞれ略長方形形状を有するので、周側面16は4つの側面部分20、22、24、26を備え、これら側面部分は実質的に連続する。そして、切削インサート10では、これらの4つの側面部分の各々は、その大部分が中心軸線Aに実質的に平行に延在するように形成されている。4つの側面部分は、対向するつまり互いに対して反対側にある1対の第1側面部分20、24と、対向するつまり互いに対して反対側にある1対の第2側面部分22、26とからなる。第1側面部分20、24は、上面12の一方の長辺部12aと下面14のそれに対応する長辺部14aとの間に延在する。また、第2側面部分22、26は、上面12の一方の短辺部12bと下面14のそれに対応する短辺部14bとの間に延在する。なお、このように、切削インサート10では、第1側面部分は長辺部と関係付けられているので、以下長側面と称され得、第2側面部分は短辺部と関係付けられているので、以下短側面と称され得る。
【0027】
切削インサート10では、長辺部が外方に突出するように凸状曲線形状に形成されているので、長側面20、24は、外方に突出するように凸状湾曲面として形成されている。特に、長辺部および長側面は、その中央部付近が最も外方に突出するように形成されている。換言すると、上面12または下面14の1対の長辺部または長側面20、24間に延びると共に中心軸線Aを含むように延びる平面P1を定めるとき、長辺部12a、14aおよび長側面20、24は、その中央部付近で該平面P1から最も離れ、該中央部付近から離れるに連れて該平面P1に近くづくように、それぞれ形成されている。
【0028】
上面12および下面14の長辺部12a、14aは、それぞれ、全体に亘って、インボリュート曲線形状を有するように形成されている。上面12と周側面16、特に長側面20、24との交差稜線部に、切れ刃30、32が形成されている。下面側14でも同様に、下面14と周側面16、特に長側面20、24との交差稜線部に、切れ刃34、36が形成されている。上面12と周側面16との交差稜線部に形成される切れ刃30、32はそれぞれ第1切れ刃と称され得、下面14と周側面16との交差稜線部に形成される切れ刃34、36はそれぞれ第2切れ刃と称され得る。しかし、これら名称は逆であってもよい。ここでは第1切れ刃と第2切れ刃とは、一方が右勝手の切れ刃であり、他方が左勝手の切れ刃であるので、互いに対して面対称な形状を有することを除いて、実質的に同じ構成を有する。
【0029】
したがって、第1切れ刃30、32は、上面12と関連する長側面20、24との交差稜線部において、軸線Aに直交するように定められる平面P2に沿って延在し、軸線Aに直交する方向に湾曲して形成されている。特に、上面12に対向する側から切削インサート10をみたとき、第1切れ刃30、32は、それぞれ、インボリュート曲線形状としての所定の第1曲線形状を有するように形成されている。同様に、第2切れ刃34、36も、下面14と対応する長側面20、24との交差稜線部において、軸線Aに直交するように定められる平面P3に沿って延在し、軸線Aに直交する方向に湾曲して形成されている。特に、下面14に対向する側から切削インサート10をみたとき、第2切れ刃34、36は、インボリュート曲線形状としての所定の第2曲線形状を有するように形成されている。なお、本実施形態では、第1曲線形状と第2曲線形状とは同じであるまたは対称関係を有するが、異なってもよい。そして、軸線Aに平行な方向に延びる仮想面を該仮想面上に第1切れ刃30、32が延在するように定めるとき、第1切れ刃30、32に共通の長側面20、24を介して関連付けられた第2切れ刃34、36はこの仮想面上に実質的に延在する。
【0030】
以上の説明から理解できるように、切削インサート10は、インボリュート曲線形状を被削材に転写可能に構成されている。この切削インサートの使用により、歯車、特にインボリュート歯車などの歯が形成されることができる。なお、切削インサート10は、このような構成を有するので、後述するように、そのようなインボリュート曲線形状のような特定の曲線形状を被削材に転写するべく、工具本体のインサート取付座に、切削工具の工具本体の回転軸線に直交するように定められる平面に対して所定の傾きを有して、取り付けられる。
【0031】
以上述べたように、切削インサート10は、上下面のそれぞれに関して2つの切れ刃を有して形成されていて、全体で4つの切れ刃を有している。したがって、2つの切れ刃しか有さない特許文献1の切削インサートに比べて、切削インサート10は格段にコスト面で優れるであろう。そして、2つの第1切れ刃は中心軸線A周りに回転対称に形成され、2つの第2切れ刃は中心軸線A周りに回転対称に形成されている。したがって、切削インサート10は、割り出し可能な切削インサートである。
【0032】
また、インサート着座面となる上面12および下面14は共に平坦面であり、それらの表面形状(縁部を含まず)は切れ刃の特定の曲線形状に制限されず、インボリュート曲線形状に制限されない。よって、この切削インサート10が取り付けられることができる、工具本体のインサート取付座における底壁面は、インボリュート曲線形状またはそれに対応した形状を有する必要がない。
【0033】
この切削インサート10が着脱自在に装着された切削工具を次に
図4、5に示す。図示されている回転切削工具50は歯切りカッタであり、そこには複数の切削インサート10が装着されている。
【0034】
回転切削工具50の工具本体52は、略円板状の2つの側端面54、56と、それら側端面間を接続するように延在する外周面58と、から基本的に構成された環状形状をなしている。工具本体52の中心には回転軸線Oが定められ得、切削工具50の工具本体52は回転軸線O周りに回転されて用いられるように構成されている。
【0035】
環状の工具本体52の外周縁に沿って、第1実施形態の切削インサート10が装着されるインサート取付座60a、60bが両側端面に交互に互い違いに配設されている。一方のインサート取付座60aは、ここでは第1インサート取付座と称され得、第1切れ刃を使用するべく切削インサート10が取り付けられる。もう一方のインサート取付座60bは、ここでは、第2インサート取付座と称され得、第1インサート取付座が配設された側端面側とは異なる側端面側に配設されている。第2インサート取付座60bには、第2切れ刃を使用するべく切削インサート10が取り付けられる。
【0036】
また、第1実施形態の切削インサート10以外の切削インサート、ここでは2種類の切削インサート62、64が装着される2種類のインサート取付座も同様に設けられている。さらに、各インサート取付座の、工具回転方向K前方側には切りくずポケット66、68、70が配設されている。このような形態の歯切りカッタ50の各インサート取付座に、第1実施形態の切削インサートと他の切削インサートとがそれぞれ縦置きでネジ止めされている。
【0037】
本実施形態の歯切りカッタである回転切削工具50は、複数種類の切削インサートを組み合わせて歯切り加工を行うタイプの切削工具である。このタイプの歯切りカッタでは、歯溝の基端部(底部)付近を加工する切削インサート、歯溝の中央付近を加工する切削インサート、歯溝の頂縁部付近を加工する切削インサートなどの様々な種類の切削インサートを用いて歯切り加工が行われる。なお、切削工具50では、本第1実施形態の切削インサート10は、歯の中央付近(すなわち、インボリュート曲線形状をなしている部分)を加工するために用いられる。
【0038】
例えば、上面12側の切れ刃である第1切れ刃30が使用されるとき、切削インサート10は、その下面14が第1インサート取付座60aの底壁面と当接するように、また、その周側面のうちのその切れ刃と関係付けられていない長側面24および短側面22がインサート取付座の対応する側壁面に当接するように、インサート取付座60aに取り付けられる。このとき、上面12および外周側に位置する短側面26が逃げ面として機能し、該上面12との交差稜線部に沿って第1切れ刃30を有する長側面20がすくい面として機能する。
【0039】
一方、例えば、下面14側の切れ刃である第2切れ刃34が使用されるとき、切削インサート10は、その上面12がインサート取付座60bの底壁面と当接するように、また、周側面のうちのその切れ刃と離れた長側面24および短側面22がインサート取付座60bの対応する側壁面に当接するように、インサート取付座60bに取り付けられる。このとき、下面14および外周側に位置する短側面26が逃げ面として機能し、該下面14との交差稜線部に沿って第2切れ刃34を有する長側面20がすくい面として機能する。
【0040】
切削インサート10が取り付けられるインサート取付座60a、60bの底壁面は所定の傾きを有して形成されている。それを以下に
図6を参照しつつ説明する。ただし、2つのインサート取付座60a、60bは、互いに対して面対称に構成されている以外、実質的に同じ構成を有するので、以下で、一方のインサート取付座60aに関してのみ説明される。
【0041】
インサート取付座60aの底壁面60cは、工具回転方向Kに関して傾けられている。すなわち、1つのインサート取付座60aの底壁面60cにおいて、工具回転方向K側の部分ほど外側に位置するように、底壁面60cは形成されている。要するに、回転軸線Oに直交するように延びる平面を定めるとき、底壁面60cは、この平面に対して所定の傾きを有して形成されている。なお、
図5では、回転軸線Oに直交するように延びる平面として、回転軸線Oに直交すると共に両側端面54、56のそれぞれから略等距離の位置に延在するように定められる中央平面Mが表されている。そして、例えば、切削インサート10が取り付けられるインサート取付座60aにおける一つの断面を想定すると、この断面では、
図6に模式的に示すように、第1インサート取付座60aの底壁面60cは、回転軸線O方向における底壁面60cと中央平面Mとの距離dが工具回転方向K側に向かうほど長くなるように、傾いて形成されている。なお、
図6は、1つの第1インサート取付座60aの底壁面60cと中央平面Mとの関係を工具回転方向Kに対して模式的に表したものであり、第2インサート取付座60bの底壁面60bは、第1インサート取付座60aの底壁面60cと中央平面Mとの傾き(第1所定傾き)とは逆の傾き(第2所定傾き)を、中央平面Mに対して有する。
【0042】
したがって、例えば下面14を着座面として切削インサート10をインサート取付座60aに装着したとき、インボリュート曲線形状を有する第1切れ刃30、32が縁部に沿って形成されている工具回転方向前方側に位置する長側面(すなわち、切りくずポケット66に隣接する長側面)が工具本体52の側端面から斜めに立ち上がった状態で、切削インサートは傾いて配置される。切削工具50の部分拡大図である
図7からも、工具本体50の側端面54に対向する側から見て、切削インサート10の切りくずポケット66に隣接するまたは面する長側面の側面部分S1が目視できる程度に、切削インサート10が傾けられて配置されていることが理解される。このような配置で切削インサートが工具本体に位置決めされるので、確実にインボリュート曲線を被削材に転写することが可能となる。
【0043】
ただし、中央平面Mなどの回転軸線Oに直交するように定められる平面に対するそのような底壁面60cの傾きまたは傾き角は、被削材に形成されることが意図される切れ刃形状に応じて定められる。そして、過大な切削抵抗が生じることを防ぐべく、すくい角をある程度の範囲内にするように、そのような平面に対するそのような底壁面60cの傾きは定められる。
【0044】
上記第1実施形態では、
図1から
図3に示されているように、切削インサート10の上面12および下面14の長辺部同士を接続する側面部分20、24が、上面12および下面14に対して略直角に延在するように、切削インサートは構成された。しかし、側面部分20、24はこの形状に限定されず、切削インサート10の内方に凹んだ形状を有していてもよいし、反対に外方に突出した形状をしていてもよい。
【0045】
第1実施形態の切削インサートでは、平板面視における切削インサート10の外郭形状が基本的に略長方形であり、その長辺部がインボリュート曲線形状とされたが、このような曲線形状または湾曲形状に形成される辺部または縁部についてはこれに限定されない。すなわち、短辺部にそのような曲線形状が形成される形態も本発明は許容する。そして、この同一端面における長辺部と短辺部との長さの比率については、適宜変更することが可能である。したがって、平板面視において、切削インサートの外郭形状が略正方形となるような形態も可能である。その場合、長辺と短辺という区別はなく、対向する一組の辺部がそれぞれ曲線状に形成されることが可能である。このことに関してさらに言えば、曲線状に形成される辺部は対向するまたは互いに対して反対側にある一組の辺部であることが本発明の基本的な要素であり、もう一方の対向するまたは互いに対して反対側にある一組の辺部も曲線状に形成されていてもよい。すなわち、平板面視において略四角形の切削インサートの全ての辺部が曲線状に形成されている構成も可能である。このような形態の切削インサートの一例としての、第2実施形態の切削インサート10´が
図8に表されている。
【0046】
図8の切削インサート10´は、平板面視において、その外郭形状が略正方形となるように形成されている。そして、平板面視において略四角形の切削インサート10´の全ての縁部が曲線状に形成されている。なお、本発明は、上面または下面の全ての辺部が切れ刃として機能するように構成されることを排除しない。
【0047】
また、上記第1実施形態では、切削インサート10は、工具本体52のインサート取付座に、それぞれの対応する面が互いにしっかりと当接するように取り付けられた。しかし、切削インサートおよび工具本体の一方または両方に少なくとも1つの係合部を設けてもよい。このような係合部を備えた、本発明に係る第3実施形態が次に説明される。
【0048】
第3実施形態の切削インサート110および切削工具150が
図9から
図11に基づいて説明される。ただし、以下では、第3実施形態における上記第1実施形態との差異点に関して説明し、それらの共通事項の説明は省略される。
【0049】
図9、10に、切削インサート110が示されている。切削インサート110は、上記切削インサート10の構成に加えて、周側面16の長側面20、24に、切削インサート10の内方に陥没した凹部174をさらに備えている。この凹部174は、切削インサート110を工具本体52のインサート取付座60a、60bに着座させるときの係合部または拘束部として機能する。
【0050】
そして、
図11に示すように、この凹部174と係合可能な突出部176が、切削工具150の工具本体52のインサート取付座60aの側壁面60dに設けられている。なお、インサート取付座60aの、ねじ穴60eを有する底壁面60cに対して、側壁面60dは略直角をなし、ここでは側壁面60dから延びる突出部176は底壁面60cに略平行に突出する。
【0051】
切削インサート110が取り付けられるとき、切削インサート110の凹部174と工具本体52のインサート取付座60a、60bの突出部176とが嵌め合わされる。この係合構造または嵌合構造によって、切削インサート110は、工具本体52に、より強固に固定される。したがって、上記第1実施形態のように、切削インサートの側面部分の形状とインサート取付座の側壁面の形状とを略一致させることが必ずしも必要とされず、切削インサート110と切削工具150の工具本体52のインサート取付座との関係では、ある程度の切れ刃形状の変化が許容される。したがって、このような係合構造を採用することで、異なる形状の歯を形成するための異なる種類の切削インサートを、共通の工具本体に取り付けることが可能になる。
【0052】
なお、切削インサートに形成される凹部は、その位置および形状に関して、適宜変更されるとよい。例えば、凹部は、切削インサートのすくい面形状を考慮して形づくられるとよく、好ましくは、凹部は実質的に正のすくい角を形成することを助けるように、切削インサートの周側面に形成されるとよい。
【0053】
また、上記切削インサート10、10´、110に関しては、図示されてはいないが、すくい面としての側面部分20、24には、切りくず処理性の向上などを目的としてチップブレーカを形成することも可能である。チップブレーカの形状は、切削する被削材の種類や切削インサートの材種などの要素を考慮して、適宜決定することができる。また、切れ刃の強度向上を目的として、切れ刃または該切れ刃が形成される交差稜線部分にホーニングやランドを形成することも可能である。ホーニングやランドの形状に関しても、切削する被削材の種類や切削インサートの材種などの要素を考慮して、適宜決定することができる。
【0054】
上記切削インサート10、10´、110は、超硬合金、コーティングされた超硬合金、サーメット、セラミック、又はダイヤモンドあるいは立方晶窒化硼素を含有する超高圧焼結体といった硬質材料から作製されることができる。以下に説明される切削インサートでも同様である。なお、本発明に係る切削インサートはこれら材料から作られることに限定されず、種々の材料で作られることができる。
【0055】
上記第1から第3実施形態の切削インサート10、10´、110では、切れ刃は、関連する端面と周側面の関連する側面部分との交差稜線部にのみ実質的に延在するように形成された。しかし、本発明は、関連する端面と周側面の関連する側面部分との交差稜線部に沿って延在するように形成される切れ刃の他の態様を許容する。換言すると、切れ刃の少なくとも一部が関連する端面と関連する側面部分との交差稜線部に延在するように形成される、種々の切れ刃を、本発明は許容する。
【0056】
次に、本発明に係る第4実施形態について説明する。以下では、主に、第4実施形態における上記第1から第3実施形態との差異点に関して説明し、それらの共通事項の説明は特に述べない限り省略される。なお、以下に説明される第4実施形態でも、上記第1実施形態等と同様の変更が矛盾しない範囲で許容され、第4実施形態も第1実施形態等と同様の効果を奏し得る。
【0057】
第4実施形態の切削インサート210は、
図12から
図14に示されているように、上面12および下面14の形状が平板面視にて基本的に略平行四辺形状をなしており、上下面の各々の長辺部が切削インサート10と同様にインボリュート曲線形状を有するように形成されている。本実施形態においては、上面12および下面14の短辺部同士を接続する短側面22、26は、
図13から明らかなように、切削インサート210を長側面20、24側から見たときに、切削インサート210の外方に向かって凸状に突出した曲面状に形成されている。したがって、上面と短側面とは滑らかにつながり、下面と短側面とは滑らかにつながっている。
図12では、理解を助けるために、上面と短側面との境界が点線L1、L2で表されている。
【0058】
第4実施形態の切削インサート210でも、第1切れ刃30、32は、上面12と長側面20、24との交差稜線部において、軸線Aに直交するように定められる平面P2に沿って延在し、軸線Aに直交する方向に湾曲して形成されている。特に、上面12に対向する側から切削インサート210をみたとき、第1切れ刃30、32は、インボリュート曲線としての所定の第1曲線形状を有するように形成されている。同様に、第2切れ刃34、36も、下面14と長側面20、24との交差稜線部において、軸線Aに直交するように定められる平面P3に沿って延在し、軸線Aに直交する方向に湾曲して形成されている。特に、下面14に対向する側から切削インサート210をみたとき、第2切れ刃34、36は、インボリュート曲線としての所定の第2曲線形状を有するように形成されている。なお、本実施形態では、第1曲線形状と第2曲線形状とは同じであるまたは対称関係を有するが、異なってもよい。そして、軸線Aに平行な方向に延びる仮想面を該仮想面上に第1切れ刃30、32が延在するように定めるとき、第1切れ刃30、32に共通の長側面20、24を介して関連付けられた第2切れ刃34、36はこの仮想面上に実質的に延在する。
【0059】
このような切削インサート210では、平板面視にて長側面と短側面とがなす角度が鋭角または略直角となっているコーナ部(鋭角コーナ部)C近傍の交差稜線部に形成された切れ刃が歯車等の歯底の切削に使用される。したがって、長側面20、24と短側面22、26との交差稜線部のうち、鋭角コーナ部に隣接する交差稜線部290も切れ刃として機能する。
【0060】
なお、本実施形態のみならず、第1実施形態においても、このように短側面を凸状に形成してもよい。第4実施形態において、鋭角コーナ部の角度や鈍角コーナ部の角度は、被削材の種類や切削条件などを考慮し、適宜設定されてよい。
【0061】
図15、16に示されているのは、第4実施形態の切削インサート210が装着された回転切削工具250であり、これは歯切りカッタである。本実施形態の切削工具250は、前述の切削工具50とは異なり、工具本体52に第4実施形態の切削インサート210のみが装着されるタイプである。すなわち、切削工具250は、切削インサート210に形成された切れ刃のみによって歯の全体を加工することができるタイプとなっている。なお、このような切削インサート210も、上記切削インサート10と同様に、工具本体52のインサート取付座に所定の傾きで取り付けられる。
【0062】
本実施形態の切削工具250では、切削インサートの平板面視における鋭角のコーナ部近傍の切れ刃が切削に関与するように、切削インサート210が工具本体52に装着されている。すなわち、例えば、上面12が逃げ面で下面14が着座面として切削インサート210が工具本体52に着脱自在に取り付けられたとき、工具本体52の外周面側において、切削インサート210の鈍角コーナ部がインサート取付座の側壁面に接し、鋭角コーナ部が切りくずポケット側の開放空間に位置するように切削インサート210は構成されている。
【0063】
切削インサート210では、上面12側においては、上面と長側面との交差稜線部に沿って延在するように形成される第1切れ刃30、32は、その一部が上面と長側面との交差稜線部に延在することに加えて、長側面と短側面との交差稜線部にまで延在して形成されている。つまり、上面側では、上面12と長側面20との交差稜線部と、長側面20と短側面26との交差稜線部とが一連の切れ刃30として機能し、上面12と長側面24との交差稜線部と、長側面24と短側面22との交差稜線部とが一連の切れ刃32として機能する。本実施形態の切削工具250では1種類の切削インサート210で歯の基端部(底部)付近も切削できるように、第1実施形態の切削インサート10とは異なり、切削インサート210では、長側面20と短側面26との交差稜線部および長側面24と短側面22との交差稜線部も、切削に関与する切れ刃として機能する。下面14側の第2切れ刃34、36においても、同様の切れ刃構成がなされている。したがって、上面側の2つの切れ刃と下面側の2つの切れ刃との合わせて4つの切れ刃をインボリュート曲線形状を被削材に転写するために使用することが可能である。なお、本第4実施形態の切削インサート210では、平板面視において、長側面と短側面との交差稜線部にまで延在する切れ刃が、インボリュート曲線形状を有する。
【0064】
この第4実施形態の切削インサートは、切削が鋭角コーナ部に隣接した切れ刃で行われるため、第1実施形態の切削インサートと比較して、工具本体に取り付けられたときの切削インサートのすくい角を容易に大きくでき、さらには、刃先角を小さくすることが可能となる。したがって、切削抵抗を大幅に軽減することができるようになるため、切れ味を向上させ、切れ刃の破損を大きく抑制することが可能となる。したがって、第4実施形態の切削インサートは、特に、切削インサート1つあたりの切削抵抗が大きくなる1種類の切削インサートのみを使用する歯切りカッタに好適である。
【0065】
以上、第4実施形態を説明したが、第4実施形態の切削インサートにおいても、上記切削インサート110と同様に、上記凹部174をさらに備えることができる。切削インサート210の構成に加えて凹部174を備えた、第5実施形態の切削インサート310が
図17に示される。ただし、切削インサート310においても、凹部の形状および位置は任意に変更されることができる。この凹部は、上述の如く対応するインサート取付座の突出部が嵌まり込むように構成され、これにより切削インサート310はよりしっかりと工具本体に固定されることができる。
【0066】
上記説明した第1から第5実施形態等の切削インサート10、10´、110、210、310において、切れ刃の曲線形状は、インボリュート曲線形状とした。しかし、切れ刃の曲線形状は、2種類の曲率を有する2種類の曲線部分が結合することで構成される曲線形状とすることができ、この構成はさらに現実的な利点を有する。2種類の曲線部分を結合したような曲線状の切れ刃を有する切削インサートの一例としての、第6実施形態の切削インサート410が
図18に示される。
【0067】
図18の切削インサート410では、上面および下面の長辺部は、要するに、切れ刃は、途中で曲率が変化する構成を有する。このように、曲線状切れ刃を曲率が異なる2つの曲線部分から構成することによって、以下の利益を得ることができる。
【0068】
上記第1から第5実施形態では、切削インサートを工具本体に装着するとき、工具本体のインサート取付座の側壁面と切削インサートの長側面とが当接するため、インサート取付座の側壁面は概して切削インサートの曲線状切れ刃の形状(すなわち、インボリュート曲線)にならったインボリュート曲線形状であることが求められた。しかしながら、インボリュート曲線は漸次曲率が変化する複雑な曲線であるために、インサート取付座の側壁面をその形状に正確に加工することは容易でなく、切削インサートの側面部分とインサート取付座の側壁面との接触状態にばらつきが生じる場合がある。つまり、切削インサートの側面部分のインボリュート曲線形状とインサート取付座の側壁面のインボリュート曲線形状とのずれにより、切削インサートの固定性を高めることに限界が生じ得る。これに対し、上述したようにインボリュート曲線を2つの曲率を有する曲線として近似することによって、インボリュート曲線を単純化することで、切削インサートの側面部分のみならず、インサート取付座の側壁面を容易に形成することが可能になる。そのため、切削インサートの側面形状とインサート取付座の側壁面形状とをより正確に適合させることができるので、切削インサートの固定性が向上する。
【0069】
図18に示すように、一つの切れ刃におけるこの2つの曲線部分において、一方の曲線部分(第1曲線部分)の曲率半径をR1とするとき、他方の曲線部分(第2曲線部分)の曲率半径R2は0.4R1以上1.0R1未満の範囲にあることが好ましい。2つの曲線部分の曲率半径の割合がこの範囲外になると、インボリュート曲線の近似度が低下してしまい、加工精度が悪化するからである。すなわち、上記範囲は、切削インサートの固定性と、インボリュート曲線の近似による加工精度と、を両立させることが可能な望ましい数値範囲である。なお、切削インサート410において、第1曲線部分は、第2曲線部分よりも切れ刃先端側に位置づけられる。換言すると、回転切削工具の工具本体に切削インサート410が取り付けられるとき、同一の使用切れ刃における第1曲線部分は、第2曲線部分よりも外周側に位置づけられる。
【0070】
このような近似インボリュート曲線は、2つの曲線部分から構成されるものに限定されず、曲率の異なる3つ以上の曲線部分から構成することも可能である。しかしながら、製造上の誤差を考慮すると、近似インボリュート曲線は2つの曲線部分から構成されるものが最も好ましいといえよう。3つ以上の曲線部分から構成するときは、そのような不具合が生じる可能性を低減するために、インサート取付座の側壁面と切削インサートの側面との接触面積を低減することが好ましい。例えば、インサート取付座の側壁面の一部分を凹ませるように形成し(
図11参照)、インサート取付座の側壁面が切削インサートの側面部分の一部とのみ接触するように構成することが好ましい。当然ながら、近似インボリュート曲線が2つの曲線から構成される場合においても、この構成を採用することができる。
【0071】
例えば、切削インサートの長側面のうち、上面の長辺部の第2曲線部分(相当部)と下面の長辺部の第2曲線部分(相当部)との間に延在する部分(
図18のS2部分参照)を切削インサートにおける当接面部分として機能させることができる。この場合、インサート取付座の側壁面60dには、切削インサートのこの当接面部分S2に当接する、凸状被当接部分S3が形成されることができる(
図19参照)。
図20には、切削インサートの当接面部分S2をインサート取付座60aの凸状被当接部分S3に当接させて、切削インサート410が、取付ねじでねじ止めされることで工具本体52に取り付けられたところが表されている。
【0072】
近似インボリュート曲線が2つの曲線部分(前述の曲率半径R1の第1曲線部分と曲率半径R2の第2曲線部分と)から構成されるときに上記インサート取付座の側面構成を採用する場合、曲率半径R2の曲線部分の長さは、曲率半径R1の曲線部分の長さよりも長いことが好ましい。なぜなら、切削インサートがインサート取付座に取り付けられるとき、曲率半径R2の曲線部分に関する部分がインサート取付座の側壁面と当接する関係となるため、曲率半径R2の曲線部分を長くすることによって切削インサートと工具本体との当接領域を大きく確保し、切削インサートの固定性を向上させることが可能となるからである。
【0073】
以上、複数の実施形態について説明したが、切削インサートと工具本体の組み合わせは上記に限定されない。すなわち、第1実施形態の切削インサート10を、1種類の切削インサートのみを使用して歯切り加工する歯切りカッタに適用することも可能である。また、第4実施形態の切削インサート210を、複数種類の切削インサートを使用して歯切り加工する歯切りカッタに適用することも可能である。
【0074】
以上述べたように、本発明による切削インサートでは、上下面の縁部に関して切れ刃を形成しつつも、着座面として機能し得る上下面そのものは切れ刃の曲線形状に湾曲する必要がない。したがって、従来の歯切り用の切削インサートを単に両面使いとしたときの場合のように、工具本体のインサート取付座の底壁面の形状をインボリュート曲線または特定の湾曲形状にならった曲面形状とする必要がない。したがって、歯切り加工にかかるトータルの費用を大きく抑制することが可能である。同時に、インサート取付座の底壁面を平坦形状などの単純な形状にするだけで足りるので、精度良くインサート取付座の底壁面を加工することができる。よって、本発明に係る切削インサートは、締め付けネジなどの機械的手段によって、より簡単にインサート取付座にしっかりと固定され得、切削インサートの着座安定性が大幅に向上する。
【0075】
これまで、切削インサートの切れ刃が外方に突出するように凸状曲線形状に形成されている切削インサートおよび切削工具について説明してきた。しかし、
図21から
図24に示される第7実施形態の切削インサート510および第8実施形態の切削インサート610のように、この切れ刃の曲線形状は切削インサート内方に凹むような凹状曲線形状であってもよい。ただし、
図21および
図22の切削インサート510は、第1実施形態の切削インサート10に対応関係を有し、
図23および
図24の切削インサート610は、第4実施形態の切削インサート210に対応関係を有する。このように凹状曲線形状に形成された切れ刃で切削することで、上記実施形態の切削インサートによって形成された歯と噛み合うことが可能な歯を形成することができる。すなわち、側面の凹凸が逆になった、言い換えればインボリュート曲線が逆になった歯を形成することが可能である。当然ながら、このような切削インサートであっても、上述してきた本発明に特徴的な効果を発揮することができる。
【0076】
この場合においても、切れ刃の凹状曲線形状は曲率の異なる複数の曲線部分、特に2つの曲線部分が結合することで構成された曲線形状とされることができる。このような切削インサートの一例としての、第9実施形態の切削インサート710が
図25に表される。
図25の切削インサート710は、
図21に示す切削インサートの変形例である。
図25を参照して、切削インサート710では、切れ刃の曲線形状の2つの曲線部分の一方の曲線部分(第1曲線部分)の曲率半径をR1とするとき、他方の曲線部分(第2曲線部分)の曲率半径R2は1.2R1以上2.3R1未満の範囲にあることが好ましい。2つの曲線部分の曲率半径の割合がこの範囲外になると、インボリュート曲線の近似度が低下してしまい、加工精度が悪化するからである。すなわち、上記範囲は、切削インサートの固定性と、インボリュート曲線の近似による加工精度と、を両立させることが可能な望ましい数値範囲である。なお、切削インサート710においても、上記切削インサート410と同様に、同一の使用切れ刃において、曲率半径R1の第1曲線部分は、曲率半径R2の第2曲線部分よりも切れ刃先端側に位置づけられる。
【0077】
また、本発明の切削インサートは歯切り用に限定されることはない。本発明に係る切削インサートは、被削材の加工側面を曲面状に形成することを目的とした他の切削加工においても使用することが可能である。すなわち、上面及び下面の曲線状の縁部つまり切れ刃は、インボリュート曲線を被削材に転写することを目的とした曲線形状を有さなくてもよい。
【0078】
前述した実施形態では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明については、請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明には、請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。