【実施例】
【0043】
以下に、本発明の成形装置、及び熱可塑性成形品の製造方法に係る実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例の成形装置(光照射成形装置)1は、固体状の熱可塑性材料としての熱可塑性樹脂6が配置される、容積可変に構成されたキャビティ20を内部に有する成形型と、キャビティ20内に配置された熱可塑性樹脂6を加熱し溶融させる加熱手段と、キャビティ20の容積を縮小させるように成形型に圧力を印加する圧力印加手段とを備えている。
本例の成形型は、
図1、
図2に示すごとく、光Xを透過する性質を有するゴム材料からなると共に互いに合わさる対向側にキャビティ20を形成する一対のゴム型部2A、2Bである。本例の加熱手段は、
図4に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bの表面から、キャビティ20内に配置した粒子状の熱可塑性樹脂6に光Xを照射する光照射手段4である。本例の圧力印加手段は、キャビティ20内を減圧する真空手段5である。
【0044】
光照射成形装置1は、
図4、
図5に示すごとく、光照射手段4から照射する光Xによってキャビティ20内に配置した熱可塑性樹脂6を溶融させながら、一対のゴム型部2A、2Bを互いに接近させてキャビティ20の容積を縮小させ、容積が縮小したキャビティ20内において熱可塑性成形品である熱可塑性樹脂6の成形品7を成形するよう構成してある。
なお、
図1、
図2は、一対のゴム型部2A、2Bが原位置P1にある状態を示す。
図4は、一対のゴム型部2A、2Bが若干互いに接近した状態を示す。
図5は、一対のゴム型部2A、2Bが最も接近した位置P2において成形品7を成形する状態を示す。
【0045】
以下に、本例の光照射成形装置1及び熱可塑性成形品の製造方法(光照射成形方法)につき、
図1〜
図8を参照して詳説する。
一対のゴム型部2A、2Bは、ゴム材料としての透明又は半透明のシリコーンゴムからなる。この一対のゴム型部2A、2Bは、成形する成形品7のマスターモデル(手作りの現物等)を液状のシリコーンゴム内に配置し、このシリコーンゴムを硬化させ、硬化後のシリコーンゴムからマスターモデルを取り出して作製することができる。また、一対のゴム型部2A、2Bは、ゴム製であるため、成形後の成形品7を取り出す際の型開きを行うための分割面(パーティング面)205(
図1、
図2参照)を簡単にかつ任意に形成することができる。
【0046】
熱可塑性樹脂6としては、非晶性熱可塑性樹脂であるとともにゴム変性熱可塑性樹脂であるABS樹脂の粒子を用いる。熱可塑性樹脂6としては、粒子径が1〜3000μmのものを用いることができる。また、粒子状の熱可塑性樹脂6は、嵩比重が0.6程度の熱可塑性樹脂6の微細ペレットである。
【0047】
図4に示すごとく、光照射手段4は、0.78〜2μmの波長領域を含む光Xを発生させるよう構成されている。光照射手段4は、0.78〜2μmの波長領域(ほぼ近赤外線の波長領域に相当する。)を含む光Xを発するハロゲンランプを用いて構成してある。このハロゲンランプは、0.78〜2μmの波長領域内に(本例では約0.9μmに)光強度のピークを有するものを用いた。ハロゲンランプは、光源41と、光源41から発せられた光Xを集光して反射させるリフレクタ42とを用いて構成されている。
【0048】
光照射成形装置1は、光照射手段4によって、キャビティ20内に配置した熱可塑性樹脂6を、シリコーンゴムからなる一対のゴム型部2A、2Bに比べて、強く加熱して、安定した寸法精度の成形品7を成形することができるものである。
図7は、透明のシリコーンゴムと半透明のシリコーンゴムについて、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光Xの透過率(%)をとって、各シリコーンゴムにおける光Xの透過率を示すグラフである。同図において、各シリコーンゴムは、200〜2200(nm)の間の波長の光Xを透過させることがわかる。そのため、この波長の領域である近赤外線をシリコーンゴム製のゴム型部2A、2Bの表面に照射すると、当該近赤外線の多くを、ゴム型部2A、2Bを透過させてキャビティ2内の熱可塑性樹脂6に吸収させることができる。
【0049】
図1に示すごとく、光照射成形装置1は、圧力印加手段として、キャビティ20内の真空引きを行う真空手段5を備えている。真空手段5は、一対のゴム型部2A、2Bに接続するポンプであり、熱可塑性樹脂6が配置されたキャビティ20内の真空引きを行い、このキャビティ20内を真空状態にするよう構成されている。
図4、
図5に示すごとく、光照射成形装置1は、キャビティ20内の圧力を一対のゴム型部2A、2Bの外部の圧力よりも低くして、一対のゴム型部2A、2Bに吸引力(型締め力)Fを発生させることにより、熱可塑性樹脂6が溶融する際に一対のゴム型部2A、2Bが互いに接近するよう構成されている。
【0050】
図6に示すごとく、光照射成形装置1において成形する成形品7は、本体部71と、本体部71に対して略垂直に又は傾斜して起立するよう形成された立壁部72とを有するものである。本例の立壁部72は、本体部71の外縁部の全周から起立するものとした。これ以外にも、成形品7は、本体部71の適宜部分から立壁部72を略垂直に又は傾斜して起立させたものとすることができる。なお、後述する吸引口27に成形された成形部分73を切断して、成形品7とすることができる。
【0051】
図1、
図2に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bの一方である一方側ゴム型部2Aは、成形品7の裏面702を成形するキャビティ形成凸部21と、キャビティ形成凸部21の外縁部全周に形成された環状嵌入凹部22と、環状嵌入凹部22の外縁部全周に突出形成された環状外周凸部23とを有している。一対のゴム型部2A、2Bの他方である他方側ゴム型部2Bは、キャビティ形成凸部21を内側に配置して成形品7の意匠面701を成形するキャビティ形成凹部25と、キャビティ形成凹部25の外縁部全周において突出し環状外周凸部23の内周面231に嵌入して環状嵌入凹部22内に配置する環状内周凸部26とを有している。
ゴム型部2A、2Bにおける被嵌入凹部は、一方側ゴム型部2Aにおける環状嵌入凹部22及び環状外周凸部23によって形成されており、ゴム型部2A、2Bにおける嵌入凸部は、他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26によって形成されている。
【0052】
他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の外周面263は、一対のゴム型部2A、2Bを互いに接近させる前の原位置P1において、環状外周凸部23の内周面231に嵌入されている。一対のゴム型部2A、2Bは、互いに接近させる前後において、環状内周凸部26の外周面263と環状外周凸部23の内周面231とによって、一対のゴム型部2A、2Bの間に形成された分割面205の全周が閉塞されている。
一方側ゴム型部2Aにおける環状外周凸部23の内周面231に対する、他方側ゴム型部における環状内周凸部26の外周面263の嵌入によって、一対のゴム型部2A、2Bを互いに接近させるために分割面205に形成した隙間29から溶融した熱可塑性樹脂6Bが漏れ出すことを容易に防止することができる。
【0053】
図1、
図2に示すごとく、キャビティ20は、一対のゴム型部2A、2Bを互いに接近させる前の原位置P1において、キャビティ形成凸部21の先端面211とキャビティ形成凹部25の底面251との間、キャビティ形成凸部21の外周面212と環状内周凸部26の内周面262との間、環状嵌入凹部22の底面221と環状内周凸部26の先端面261との間に連続して形成されている。
図4、
図5に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bは、キャビティ20内に配置された熱可塑性樹脂6が溶融する際に、一方側ゴム型部2Aにおける環状嵌入凹部22の底面221と、他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の先端面261とが当接するまで接近するよう構成されている。一対のゴム型部2A、2Bが互いに接近してキャビティ20内に成形品7を成形する際には、キャビティ形成凸部21とキャビティ形成凹部25との間に形成された本体空間201と、環状嵌入凹部22の底面221と環状内周凸部26の先端面261との間に形成された余剰空間203とから、キャビティ形成凸部21の外周面212と環状内周凸部26の内周面262との間に形成された立壁空間202へ熱可塑性樹脂6が供給される。なお、
図4、
図5において、粒子状の熱可塑性樹脂を6Aで示し、溶融した熱可塑性樹脂を6Bで示す。
【0054】
図1、
図2に示すごとく、一方側ゴム型部2Aには、キャビティ形成凸部21の先端面211に開口する吸引口27と、環状嵌入凹部22の底面221に開口する吸引ゲート28とが貫通形成されている。吸引口27は、粒子状の熱可塑性樹脂6Aをキャビティ20内へ投入するための投入口の機能も兼ねている。また、吸引口27は、本体空間201に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aが溶融する際に、この本体空間201に余剰になった溶融状態の熱可塑性樹脂6Bを溢れ出させる空間としての機能も有している。
【0055】
本例において成形する成形品7は、上記のごとく立壁部72が本体部71の全周において略垂直又は傾斜状に起立するものである。そして、
図3に示すごとく、吸引ゲート28は、環状嵌入凹部22の底面221における、キャビティ形成凹部25の底面251に対向する位置と、環状内周凸部26に対向する位置との複数箇所に開口して形成してある。なお、
図3は、一方側ゴム型部2Aにおける吸引口27及び複数の吸引ゲート28の形成状態を示す。
【0056】
吸引ゲート28は、立壁部72を形成する位置に合わせて適宜形成することができる。
例えば、互いに対向する一対の立壁部72のみを形成する場合には、環状嵌入凹部22の底面221であって立壁部72を形成する部分において、キャビティ形成凹部25の底面251に対向する位置と、環状内周凸部26に対向する位置とにのみ開口する吸引ゲート28を形成する。
図8に示すごとく、環状嵌入凹部22の底面221であって立壁部72を形成しない残りの部分においては、キャビティ形成凹部25の底面251に対向する位置と、環状内周凸部26に対向する位置とには吸引ゲート28を形成しないことができる。この場合、環状嵌入凹部22の底面221であって立壁部72を形成しない残りの部分においては、一方側ゴム型部2Aにおけるキャビティ形成凸部21の外周面212と他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の内周面262とを接触させておき、溶融した熱可塑性樹脂6が、環状内周凸部26の先端面261と環状嵌入凹部22の底面221との間に流入しないようにすることができる。
【0057】
図1、
図2に示すごとく、吸引ゲート28は、吸引口27よりも流路断面積が小さい。吸引ゲート28は、真空手段5によってキャビティ20内の気体(エア)を吸引する際に、キャビティ20内における粒子状の熱可塑性樹脂6Aが吸引されないように熱可塑性樹脂6Aの粒子よりも小さな流路断面積で形成してある。
一方側ゴム型部2Aにおいて他方側ゴム型部2Bと対向しない側には、バックアッププレート3が重ねて配置されている。そして、一方側ゴム型部2Aとバックアッププレート3との間には、真空手段5によって真空引きを行うための真空引き経路31が形成されている。真空引き経路31は、吸引口27及び複数の吸引ゲート28に連通している。
【0058】
図4、
図5に示すごとく、光照射手段4は、他方側ゴム型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25の底面251と平行に形成された外側面206に対向して配設されている。光照射成形装置1は、他方側ゴム型部2Bにおける外側面206に光照射手段4から照射する光Xによって、キャビティ形成凹部25の側から先にキャビティ20内に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aを溶融させることができる。そして、吸引口27及び複数の吸引ゲート28は、光照射手段4とは反対側に位置する一方側ゴム型部2Aに形成されているため、粒子状の熱可塑性樹脂6A全体が溶融するまで、吸引口27及び吸引ゲート28が閉塞されることがない。そのため、光照射成形装置1は、吸引ゲート28が閉塞されることを防止して、キャビティ20の全体に溶融した熱可塑性樹脂6Bが充填されるまで、真空手段5による真空引きを継続することができる。
【0059】
図4、
図5においては、吸引口27を設けた一方側ゴム型部2Aを下側にして配置した一対のゴム型部2A、2Bに対して、他方側ゴム型部2Bの上方から光照射手段4によって光Xを照射する状態を示した。これに対し、一対のゴム型部2A、2Bは、一方側ゴム型部2Aと他方側ゴム型部2Bとを水平方向に組み合わさる状態で配置し、水平方向から光Xを照射することもできる。また、他方側ゴム型部2Bを下側にして配置した一対のゴム型部2A、2Bに対して、一方側ゴム型部2Aの上方から光照射手段4によって光Xを照射することもできる。
【0060】
図示は省略するが、一対のゴム型2A、2Bの少なくとも一方において、キャビティ20を形成するキャビティ形成面は、ゴム材料による一般部よりも、光の吸収性がよい物質を設けて形成することができる。例えば、一対のゴム型2A、2Bにおいて、キャビティ20に接する部分に光の吸収性がよい表面層を形成し、この表面層に、光照射手段4から照射される光を吸収させることができる。この場合には、表面層からの熱伝達によってキャビティ20内の熱可塑性樹脂6を加熱・溶融させることができる。なお、加熱手段として光以外の電磁波を照射する装置を用いる場合には、上記表面層を、光以外の電磁波を吸収して発熱する材料によって形成することができる。この場合にも、表面層による同様の作用効果を得ることができる。
また、光照射成形装置1には、一対のゴム型2A、2Bを介して熱可塑性樹脂6を冷却する冷却手段を設けることができる。この冷却手段は、例えば、一対のゴム型部2A、2Bに空気を吹き付ける送風機とすることができる。この場合、送風機は、さらに熱交換器と組み合わせて冷風を吹き付けるようにすることができ、また、例えば粉末状のドライアイス等の冷媒を吹き付けるようにすることもできる。
【0061】
次に、上記光照射成形装置1を用いた光照射成形方法による作用効果について説明する。
まず、樹脂配置工程(配置工程)として、一対のゴム型部2A、2Bの間に形成するキャビティ20内に粒子状の熱可塑性樹脂6Aを配置する。このとき、熱可塑性樹脂6Aは、一方側ゴム型部2Aに形成した吸引口(投入口)27から互いに組み合わせた状態の一対のゴム型部2A、2Bの間のキャビティ20内へ投入することができる。また、熱可塑性樹脂6Aは、開いた状態の他方側ゴム型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25内に配置することもできる。この場合、熱可塑性樹脂6Aを配置した他方側ゴム型部2Bに、一方側ゴム型部2Aを組み合わせる。
また、粒子状の熱可塑性樹脂6Aをキャビティ20内に配置したときには、キャビティ20を形成する面と熱可塑性樹脂6Aとの間や、熱可塑性樹脂6A同士の間に空隙が形成される。
【0062】
特に、固形状の熱可塑性樹脂6を用いる場合には、キャビティ形成凹部25又はキャビティ形成凸部21に対して熱可塑性樹脂6を配置した後、一対のゴム型部2A、2Bを組み合わせることができる。また、熱可塑性樹脂6は、粒子状のものと固形状のものとを組み合わせて用いることができる。
また、
図1、
図2に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bを組み合わせた状態においては、一方側ゴム型部2Aにおける環状外周凸部23の内周面231と、他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の外周面263とによって、一対のゴム型部2A、2Bの間に形成された分割面205の全周が閉塞される。
【0063】
次いで、樹脂成形工程(加熱工程及び圧力印加工程)として、
図1に示すごとく、真空手段5によって真空引き経路31から吸引口27及び複数の吸引ゲート28を介してキャビティ20内の真空引きを開始する。このとき、キャビティ20において粒子状の熱可塑性樹脂6Aの間に形成された空隙から空気が吸引され、一対のゴム型部2A、2Bには、互いに接近しようとする吸引力Fが作用し、粒子状の熱可塑性樹脂6Aの粒子同士の間に圧力が加わる。
そして、
図4に示すごとく、真空手段5による真空引きを継続した状態で、光照射手段4によって他方側ゴム型部2Bにおける外側面206へ0.78〜2μmの波長領域を含む光Xを照射する。このとき、光Xの多くは他方側ゴム型部2Bを透過し、キャビティ20内の熱可塑性樹脂6Aに吸収される。そして、光照射手段4に近い側に配置された他方側ゴム型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25の底面251の近傍に位置する熱可塑性樹脂6Aが強く加熱される。キャビティ20内に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aは、キャビティ20の本体空間201において他方側ゴム型部2Bのキャビティ形成凹部25の底面251の近傍に位置する粒子から先に溶融する。
なお、真空手段5による一対のゴム型2A、2Bへの圧力の印加は、熱可塑性樹脂6が溶融を開始する前から行われることになる。
【0064】
このとき、キャビティ20内においては、粒子状の熱可塑性樹脂6Aの粒子同士の間の空隙は略真空状態にある。そして、キャビティ20の内部と外部との圧力差によって一対のゴム型部2A,2Bに圧力が印加される結果、粒子状の熱可塑性樹脂6Aの粒子同士の間には圧力が作用している。この状態で、光照射手段4によって本体空間201内の粒子状の熱可塑性樹脂6Aが加熱されて溶融すると、粒子間に作用していた圧力が解放され、一対のゴム型部2A、2Bに作用する吸引力Fによって本体空間201の容積が減少する。これにより、本体空間201の容積が減少した分だけ一対のゴム型部2A、2Bが互いに接近する。
また、キャビティ20内の熱可塑性樹脂6Aが溶融を開始した後も、真空手段5によるキャビティ20内の真空引きを継続する。
【0065】
図5に示すごとく、キャビティ20内における粒子状の熱可塑性樹脂6Aは、キャビティ20の本体空間201においてキャビティ形成凹部25の底面251の近傍に位置する粒子から先に溶融し、次いで、キャビティ形成凸部21の先端面211の近傍に位置する粒子へと順次溶融して行く。そして、キャビティ20における立壁空間202及び余剰空間203に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aは、本体空間201に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aの略全体が溶融するまで、溶融せずに粒子状態が維持される。これにより、吸引口27及び複数の吸引ゲート28に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aの間に形成された空隙からキャビティ20における本体空間201の真空引きが継続される。
【0066】
本体空間201における粒子状の熱可塑性樹脂6Aが溶融し、一対のゴム型部2A、2Bが互いに接近したときには、立壁空間202及び余剰空間203に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aが溶融する。このとき、余剰空間203における溶融した熱可塑性樹脂6Bは、一対のゴム型部2A、2Bの接近によって余剰空間203の容積が減少する際に立壁空間202へと供給される。また、本体空間201において余剰となった溶融状態の熱可塑性樹脂6Bも、立壁空間202へと供給される。
また、熱可塑性樹脂6Aが溶融することにより、キャビティ20内に形成されていた空隙がほとんどなくなる。
【0067】
こうして、立壁空間202における粒子状の熱可塑性樹脂6Aが溶融する際に、立壁空間202における熱可塑性樹脂6の不足分は、余剰空間203及び本体空間201から補充することができ、立壁空間202に成形する立壁部72の厚みが薄くなることを回避することができる。また、一対のゴム型部2A、2Bは、キャビティ20内に配置された熱可塑性樹脂6が溶融する際に、一方側ゴム型部2Aにおける環状嵌入凹部22の底面221と、他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の先端面261とが当接するまで接近する。そして、環状嵌入凹部22の底面221と環状内周凸部26の先端面261との間には、薄いシート状(バリ状)の熱可塑性樹脂の成形品が成形される。
【0068】
このように、樹脂成形工程においては、キャビティ20の全体に溶融した熱可塑性樹脂6Bが充填されるまで、真空手段5による真空引きを継続し、容積が減少したキャビティ20の全体に溶融した熱可塑性樹脂6Bを行き渡らせることができる。
次いで、樹脂冷却工程として、一対のゴム型部2A、2Bにおけるキャビティ20に溶融した熱可塑性樹脂6Bが充填された状態を維持する。このとき、溶融した熱可塑性樹脂6Bが冷やされて固化し、本体空間201において本体部71が成形されると共に立壁空間202において立壁部7が成形されて、熱可塑性樹脂6の成形品7を得ることができる。
【0069】
また、樹脂冷却工程においても、圧力印加工程を継続して行い、真空手段5によるキャビティ20内の真空引きを継続する。そして、樹脂冷却工程において、成形品7の冷却が完了するまで真空引きを継続する。
これにより、キャビティ20の容積が縮小した状態は、熱可塑性樹脂6の溶融が開始するときから、溶融した熱可塑性樹脂6を冷却して固化するまでの間維持される。そのため、熱可塑性樹脂6が固化するまでの間、容積が縮小したキャビティ20の形状を維持することができる。そして、溶融した熱可塑性樹脂6の漏れ出しや、冷却固化時の熱可塑性樹脂6の変形を最小限に抑え、容積縮小後のキャビティ20の形状に沿った形状の熱可塑性樹脂6の成形品7を精度よく成形することができる。
【0070】
なお、本例においては、樹脂冷却工程においても、真空手段5によるキャビティ20内の真空引きを継続する場合を示した。これ以外にも、真空引き経路31を閉塞した後に、真空手段5を真空引き経路31から分離することによって、キャビティ20内が減圧された状態を維持してもよい。また、一対のゴム型部2A,2Bに対して機械的に外力を加えることによって、容積が縮小したキャビティ20の形状を維持するようにしてもよい。
【0071】
また、本例においては、ゴム製の成形型を用いるため、従来の金型に比べて熱可塑性樹脂6の温度低下が緩やかである。このため、急激な冷却による成形品7の反りやヒケが生じにくい。さらに、キャビティ20の容積を縮小させた状態で緩やかに冷却することにより、次の効果を得ることもできる。熱可塑性樹脂6の温度が低下する際には、その容積が減少する。このとき、熱可塑性樹脂6の容積減少に追随して、一対のゴム型部2A、2Bが若干互いに接近して、キャビティ20の容積を縮小させることができる。これにより、容積縮小後のキャビティ20の形状に沿った形状の熱可塑性樹脂6の成形品7を精度よく成形することができる。
その後、成形品取出工程として、一対のゴム型部2A、2Bを離型して、成形した成形品7を取り出すことができる。
【0072】
本例においては、ゴム型部2A、2Bに比べて熱可塑性樹脂6を強く加熱して溶融させることができ、ゴム型部2A、2Bの温度上昇を抑制して、熱可塑性樹脂6を効果的に加熱することができる。そのため、熱可塑性樹脂6の成形品7を成形する際に、ゴム型部2A、2Bの熱劣化を効果的に防止することができる。
また、キャビティ20の容積を縮小させて成形品7を成形するため、キャビティ20内へ溶融状態の熱可塑性樹脂6Bを充填する必要がない。また、熱可塑性樹脂6を予め溶融させてキャビティ20へ注入する樹脂注入ノズル等の装置が不要になる。また、キャビティ20内に配置した熱可塑性樹脂6のほぼすべてを成形品7の成形に使用することができる。
【0073】
それ故、本例の光照射成形装置1及びこれを用いた光照射成形方法によれば、熱可塑性樹脂6を予め溶融させてキャビティ20へ注入する装置が不要になり、少ない熱可塑性樹脂6の使用量で成形品7を成形することができる。
【0074】
(実施例2)
本例においては、上記光照射成形装置1の構成を上記実施例1とは異なる構成にしたいくつかの例を示す。
上記一対のゴム型部2A、2Bは、上記環状外周凸部23の内周面231と上記環状内周凸部26の外周面263との嵌合によって一対のゴム型部2A、2Bの間の分割面205の全周を閉塞する以外にも、
図9に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bの間に形成された分割面205の全周に貼り付けられた樹脂テープ35によって、分割面205の全周を閉塞する構造とすることもできる。
具体的には、一方側ゴム型部2Aに、キャビティ形成凸部210を形成すると共にその外縁部全周に環状凹部220を形成し、他方側ゴム型部2Bに、キャビティ形成凹部250を形成すると共にその外縁部全周に環状凸部260を形成する。
【0075】
そして、一方側ゴム型部2Aの側面207と他方側ゴム型部2Bの側面207との間に掛け渡して貼り付けた樹脂テープ35によって、一方側ゴム型部2Aと他方側ゴム型部2Bとの間の分割面205における隙間29を塞ぐ。このとき、環状凹部220の底面と環状凸部260の先端面との間に、成形品7の成形に用いる熱可塑性樹脂6と同じ組成の熱可塑性樹脂6のスペーサ61を配置する。そして、このスペーサ61の高さを調節することによって、本体空間201の成形前の容積、すなわちキャビティ20の成形前の容積を意図する容積に設定することができる。この場合には、樹脂テープ35によって、溶融したキャビティ20内の熱可塑性樹脂6が分割面205における隙間29から外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0076】
また、
図10に示すごとく、上記光照射手段4は、他方側ゴム型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25の底面251と平行に形成された外側面206に沿って一方側から他方側へ、すなわち、一対のゴム型部2A、2Bが向き合う方向に対して直交する方向の一方側から他方側へ、順次移動しながら部分的に光Xを照射するよう構成することができる。そして、熱可塑性樹脂6を配置したキャビティ20内を真空手段5によって真空状態にしておき、順次移動する光照射手段4によって光Xを照射することにより、一対のゴム型部2A、2Bのキャビティ20における一方側から他方側に沿って順次熱可塑性樹脂6を加熱して溶融させる。これにより、一対のゴム型部2A、2Bを一方側から他方側に沿って順次互いに接近させ、キャビティ20の全体に熱可塑性樹脂6を充填して、成形品7を得ることができる。この場合には、キャビティ20内の粒子状の熱可塑性樹脂6Aを部分的に溶融させていくことにより、キャビティ20の全体に溶融した熱可塑性樹脂6Bを安定して行き渡らせることができる。
本例においても、光照射成形装置1のその他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。