特許第5790778号(P5790778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5790778成形装置、及び熱可塑性成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790778
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】成形装置、及び熱可塑性成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20150917BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20150917BHJP
   B29C 43/52 20060101ALI20150917BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
   B29C43/36
   B29C43/02
   B29C43/52
   B29K101:12
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-544027(P2013-544027)
(86)(22)【出願日】2011年11月16日
(86)【国際出願番号】JP2011076363
(87)【国際公開番号】WO2013073015
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2014年7月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 成形加工’11、社団法人プラスチック成形加工学会、平成23年6月15日発行
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 文夫
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−269540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/36
B29C 43/02
B29C 43/52
B29K 101/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状の熱可塑性材料が配置される、容積可変に構成されたキャビティを内部に有する成形型と、
上記キャビティ内に配置された熱可塑性材料を加熱し溶融させる加熱手段と、
上記キャビティの容積を縮小させるように上記成形型に圧力を印加する圧力印加手段と、を備え
該圧力印加手段は、少なくとも上記熱可塑性材料が溶融を開始する前から該熱可塑性材料の温度が低下し始めるまでの間、上記成形型への圧力の印加を継続するよう構成されていることを特徴とする成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成形装置において、上記圧力印加手段は、溶融した上記熱可塑性材料が固化するまでの間、上記成形型への圧力の印加を継続するよう構成されていることを特徴とする成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成形装置において、上記成形型は、上記キャビティの容積を縮小可能な構造に形成されており、
上記圧力印加手段は、上記キャビティ内を減圧する装置であることを特徴とする成形装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形装置において、上記加熱手段は、上記熱可塑性材料と、上記成形型における上記キャビティ形成面との少なくとも一方に吸収される電磁波を照射する装置であることを特徴とする成形装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形装置において、上記熱可塑性材料を冷却する冷却手段をさらに備えることを特徴とする成形装置。
【請求項6】
成形型のキャビティ内に固体状の熱可塑性材料を配置する配置工程と、
上記熱可塑性材料を加熱して溶融させる加熱工程と、
上記キャビティの容積を縮小させるように上記成形型に圧力を印加する圧力印加工程と、
溶融した上記熱可塑性材料を冷却して固化させる冷却工程と、を含み、
上記圧力印加工程は、上記加熱工程及び上記冷却工程を行うときに行い、かつ、該冷却工程が完了するまでの間、継続することを特徴とする熱可塑性成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の熱可塑性成形品の製造方法において、上記成形型は、上記キャビティの容積を縮小可能な構造に形成されており、
上記圧力印加工程は、上記キャビティ内を減圧することによって行うことを特徴とする熱可塑性成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型のキャビティの容積を縮小させて、キャビティ内に配置された熱可塑性樹脂から成形品を成形する成形装置、及び熱可塑性成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を用いて所定形状の成形品を得る方法としては、一般的には、射出成形、ブロー成形、押出成形、プレス成形等の種々の成形方法がある。
これらの一般的な成形方法とは別に、例えば、特許文献1においては、成形型のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する際に、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を、成形型を介して熱可塑性樹脂に照射する方法が開示されている。この方法では、成形型を構成するゴムと熱可塑性樹脂との物性の違いにより、ゴム製の成形型に比べて、熱可塑性樹脂の方が強く加熱される。
また、例えば、特許文献2においては、ゴム型のキャビティ内に充填した粒子状態の熱可塑性樹脂に、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射して、この熱可塑性樹脂を加熱して溶融させ、その後、キャビティにおいて残された空間に、溶融状態の熱可塑性樹脂を追加充填することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−216447号公報
【特許文献2】特開2009−241455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、予め溶融させた熱可塑性樹脂を成形型のキャビティ内に充填するために、ペレット等の粒子状又は固形状の熱可塑性樹脂を予め溶融させるための装置が必要になる。また、特許文献2においても、溶融状態の熱可塑性樹脂を追加充填するために、同様の装置が必要になる。また、溶融状態の熱可塑性樹脂の充填を行う場合には、余分に熱可塑性樹脂を確保しておく必要があり、熱可塑性樹脂の使用量を少なくすることが困難である。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、熱可塑性材料を予め溶融させてキャビティへ注入する装置が不要になり、少ない熱可塑性材料の使用量で成形品を成形することができる成形装置、及び熱可塑性成形品の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、固体状の熱可塑性材料が配置される、容積可変に構成されたキャビティを内部に有する成形型と、
上記キャビティ内に配置された熱可塑性材料を加熱し溶融させる加熱手段と、
上記キャビティの容積を縮小させるように上記成形型に圧力を印加する圧力印加手段と、を備えることを特徴とする成形装置にある。
【0007】
本発明の他の態様は、成形型のキャビティ内に固体状の熱可塑性材料を配置する配置工程と、
上記熱可塑性材料を加熱して溶融させる加熱工程と、
上記キャビティの容積を縮小させるように上記成形型に圧力を印加する圧力印加工程と、
溶融した上記熱可塑性材料を冷却して固化させる冷却工程と、を含み、
上記圧力印加工程は、上記加熱工程及び上記冷却工程を行うときに行い、かつ、該冷却工程が完了するまでの間、継続することを特徴とする熱可塑性成形品の製造方法にある。
【発明の効果】
【0008】
上記成形装置は、キャビティ内の熱可塑性材料を加熱する際に、キャビティの容積を縮小させて成形品を得るものである。
成形装置においては、成形型のキャビティに配置された固体状の熱可塑性材料を、加熱手段によって加熱・溶融させる際に、圧力印加手段によってキャビティの容積を縮小させる。固体状の熱可塑性材料をキャビティ内に配置したときには、キャビティを形成する面と熱可塑性材料との間や、複数の熱可塑性材料の間に空隙が形成される。熱可塑性材料を加熱・溶融させる際にキャビティの容積を縮小させることによって、これらの空隙がほとんどなくなり、容積縮小後のキャビティの形状に沿った形状の熱可塑性材料の成形品を成形することができる。成形品は、冷やされて固化した後、成形型から取り出すことができる。
【0009】
それ故、上記成形装置によれば、熱可塑性材料を予め溶融させてキャビティへ注入する装置が不要になり、少ない熱可塑性材料の使用量で成形品を成形することができる。
なお、固形状の熱可塑性材料を用いる場合には、この固形状の熱可塑性材料をキャビティの一部に配置し、残部に粒子状の熱可塑性材料を配置することができる。
【0010】
上記熱可塑性成形品の製造方法においては、キャビティ内の熱可塑性材料を加熱する際に、キャビティの容積を縮小させて成形品を得る。
上記製造方法においては、配置工程を行った後の加熱工程を行うときに、圧力印加工程を行う。そして、圧力印加工程は、冷却工程を行うときにも行い、冷却工程が完了するまでの間継続する。これにより、圧力印加工程による、キャビティの容積を縮小させた状態は、熱可塑性材料の少なくとも一部が溶融を開始する前後から、溶融した熱可塑性材料を冷却して固化するまでの間維持される。そのため、熱可塑性材料が固化するまでの間、容積縮小後のキャビティの形状を維持することができる。そして、溶融した熱可塑性材料の漏れ出しや、冷却固化時の熱可塑性材料の変形を最小限に抑え、容積縮小後のキャビティの形状に沿った形状の熱可塑性材料の成形品を精度よく成形することができる。
【0011】
それ故、上記熱可塑性成形品の製造方法によれば、熱可塑性材料を予め溶融させてキャビティへ注入する装置が不要になり、少ない熱可塑性材料の使用量で成形品を成形することができる。また、熱可塑性材料の成形品の成形精度を向上させることができる。
なお、固形状の熱可塑性材料を用いる場合には、この固形状の熱可塑性材料をキャビティの一部に配置し、残部に粒子状の熱可塑性材料を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1における、原位置にある一対のゴム型部の間のキャビティに熱可塑性樹脂を配置した状態を、正面から見た断面で示す説明図。
図2】実施例1における、原位置にある一対のゴム型部の間のキャビティに熱可塑性樹脂を配置した状態を、側方から見た断面で示す説明図。
図3】実施例1における、一方側ゴム型部における吸引口及び複数の吸引ゲートの形成状態を、上方から見た状態の断面で示す説明図。
図4】実施例1における、光の照射を受けた熱可塑性樹脂が溶融して、一対のゴム型部が若干互いに接近した状態を、正面から見た断面で示す説明図。
図5】実施例1における、光の照射を受けた熱可塑性樹脂が溶融して、一対のゴム型部が最も接近した状態を、正面から見た断面で示す説明図。
図6】実施例1における、成形品を正面から見た断面で示す説明図。
図7】実施例1における、シリコーンゴムにおける光の透過率を示すグラフ。
図8】実施例1における、他の一対のゴム型部の間のキャビティに熱可塑性樹脂を配置した状態を、側方から見た断面で示す説明図。
図9】実施例2における、原位置にある一対のゴム型部を、正面から見た断面で示す説明図。
図10】実施例2における、光の照射を受けた熱可塑性樹脂が溶融して、一対のゴム型部が部分的に順次接近していく状態を、正面から見た断面で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述した成形装置、及び熱可塑性成形品の製造方法における好ましい実施の形態につき説明する。
上記熱可塑性材料は、固体状のものを用いる。ここで、固体状には、粒子状又は固形状がある。粒子状には、粉末状も含まれ、固形状には、シート状、ブロック状が含まれる。粒子状とは、球状、円筒状、その他粉砕品に見られる不定形状等の状態のことをいう。固形状とは、板状、棒状、線状等の状態をいう。
目的とする成形品の形状によって、粒子状、固形状の熱可塑性材料を適宜選択することができる。また、固体状の熱可塑性材料は、2種以上の形態のものを混合して用いることができる。
【0014】
上記熱可塑性材料が粒子状である場合には、用いることができる熱可塑性材料の粒子径は、成形する成形品の厚み、すなわちキャビティの幅に依存するが、熱可塑性材料の粒子径は、1〜3000μmの範囲内とすることができる。熱可塑性材料の粒子径は、好ましくは、50〜3000μmの範囲内、更に好ましくは200〜2500μmの範囲内とすることができる。
また、熱可塑性材料の平均粒子径がこれらの範囲内であって、更に1〜100μmの範囲内の熱可塑性材料の小形粒子を含有していると、キャビティへの熱可塑性材料の粒子の充填に際して好ましい場合がある。粒子の嵩比重は、0.4以上が好ましく、より好ましくは0.45以上、更に好ましくは0.5以上である。
【0015】
上記成形装置において、上記圧力印加手段は、少なくとも上記熱可塑性材料が溶融を開始する前から該熱可塑性材料の温度が低下し始めるまでの間、上記成形型への圧力の印加を継続するよう構成することができる。
この場合には、少なくとも熱可塑性材料の温度が低下し始めるまでの間、容積縮小後のキャビティの形状を維持することができる。そして、熱可塑性材料の成形品を精度よく成形することができる。
また、熱可塑性材料の温度が低下し始めたかどうかは、実際の材料温度によって判定することができる。ただし、成形型内の温度変化を正確に把握することは困難な場合も多い。そのため、加熱手段による加熱を終了した時点をもって、熱可塑性材料の温度が低下し始めたものとしてもよい。また、後述する冷却手段による冷却が開始された時点をもって、熱可塑性材料の温度が低下し始めたものとしてもよい。
【0016】
また、上記圧力印加手段は、溶融した上記熱可塑性材料が固化するまでの間、上記成形型への圧力の印加を継続するよう構成することができる。
この場合には、熱可塑性材料が固化するまでの間、容積縮小後のキャビティの形状を維持することができる。そして、容積縮小後のキャビティの形状に沿った形状の熱可塑性材料の成形品を精度よく成形することができる。
【0017】
また、上記成形型は、上記キャビティの容積を縮小可能な構造に形成されており、上記圧力印加手段は、上記成形型を外から機械的に加圧する装置の他に、上記キャビティ内を減圧する装置とすることができる。
この場合には、キャビティ内が減圧されることによって、成形型の外部とキャビティの内部との圧力差を利用して、キャビティの容積を縮小させることができる。
成形型は、複数の型部に分割し、複数の型部が互いに接近する際に、複数の型部が合わさる面に形成されたキャビティの容積を縮小させる構造に形成することができる。
【0018】
上記成形型は、その全体を弾性変形可能な弾性部材としてのゴムによって形成することができる。この場合には、成形型を、キャビティを開放するための分割面において複数に分割することが容易であり、成形型の製造が容易である。また、ゴムの弾性変形を利用してキャビティの容積を縮小させることもできる。
また、成形型は、その全体をセラミックス等から形成することもできる。この場合には、複数に分割した型部を互いに接近させる構造を採用して、キャビティの容積を縮小させることができる。
また、成形型は、硬質の外型部分の内部に、弾性変形可能な弾性部材からなる内型部分を配置して形成することもできる。
【0019】
また、上記圧力印加手段は、上記成形型を外部から加圧する装置とすることもできる。
この場合には、成形型の外部から加える圧力によって、キャビティの容積を縮小させることができる。
【0020】
また、上記加熱手段は、上記熱可塑性材料と、上記成形型における上記キャビティ形成面との少なくとも一方に吸収される電磁波を照射する装置とすることができる。
この場合には、電磁波を吸収させて熱可塑性材料を加熱・溶融させることができ、成形品を成形するための装置の構成を簡単にすることができる。この電磁波を照射する装置としては、0.78〜2μmの波長領域(近赤外線領域)を含む電磁波(光)、又は0.01〜100mの波長領域(マイクロ波領域、高周波領域)を含む電磁波(光)を照射する電磁波(光)照射手段を用いることができる。
なお、本明細書において電磁波とは光を含む広い概念であり、上記熱可塑性材料を加熱可能であればその波長は限定されない。
【0021】
また、上記成形装置は、上記熱可塑性材料を冷却する冷却手段をさらに備えていることができる。
この場合には、冷却手段によって、加熱・溶融後の熱可塑性材料を迅速に冷却することができ、熱可塑性材料の成形品の成形時間を短くすることができる。
上記冷却手段としては、内部に冷媒を流通可能な金属板等を冷却対象物に接触させる接触型の熱交換体の他、成形型に空気を吹き付ける送風ファン、気化熱を利用して成形型を冷却する熱交換器・熱交換素子、所定温度以下に冷やされた冷却室等とすることができる。
【0022】
上記熱可塑性成形品の製造方法においては、上記成形型は、上記キャビティの容積を縮小可能な構造に形成されており、上記圧力印加工程は、上記キャビティ内を減圧することによって行うことができる。
この場合には、キャビティ内が減圧されることによって、成形型の外部とキャビティの内部との圧力差を利用して、キャビティの容積を縮小させることができる。
【0023】
上記成形型は、電磁波を透過する性質を有するゴム材料から構成することができる。また、成形型は、一対の型部から構成し、キャビティは、一対の型部の互いに合わさる対向側に形成することができる。一対の型部を用いることによって、成形型のキャビティの容積を縮小させる構成を容易に実現することができる。
上記加熱手段は、一対の型部の表面から、キャビティ内に配置した固体状の熱可塑性材料に電磁波を照射する電磁波照射手段とすることができる。
上記圧力印加手段は、電磁波照射手段から照射する電磁波によってキャビティ内に配置した熱可塑性材料を溶融させる際に、一対の型部を互いに接近させてキャビティの容積を縮小させる構成とすることができる。
【0024】
上記電磁波照射手段から照射する電磁波(光)としては、広い波長領域の電磁波(光)を用いることができる。
この電磁波としては、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波(近赤外線)を用いることができる。この場合には、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波は、成形型に吸収される割合に比べて、成形型を透過して熱可塑性材料に吸収される割合が多く、成形型に比べて、熱可塑性材料をより強く加熱することが容易である。この場合には、成形型は、透明のゴム材料によって構成することができる。また、成形型は、電磁波を透過させる性質を有する程度で、半透明のゴム材料から構成することもできる。
なお、電磁波照射手段から照射される電磁波には、上記近赤外線以外の電磁波が含まれていてもよい。
【0025】
また、上記電磁波(光)としては、0.01〜100mの波長領域を含む電磁波(マイクロ波、高周波)を用いることもできる。この場合には、0.01〜100mの波長領域を含む電磁波によって、成形型及び熱可塑性材料に誘電加熱が行われ、熱可塑性材料における誘電体損失が、成形型における誘電体損失よりも大きいことによって、成形型に比べて熱可塑性材料をより強く加熱することが容易である。この場合には、成形型は、上記波長領域の電磁波の少なくとも一部を透過させる性質を有するものであればよく、透明又は半透明のゴム材料から構成する以外にも、種々の配色のゴム材料から構成することができる。
なお、電磁波照射手段から照射される電磁波には、上記マイクロ波又は高周波以外の電磁波が含まれていてもよい。
【0026】
また、上記電磁波照射手段は、近赤外線(0.78〜2μmの波長)、マイクロ波(0.01〜1mの波長)又は高周波(1〜100mの波長)を照射する装置とすることができる。
【0027】
また、上記熱可塑性材料は、熱可塑性樹脂とすることができる。熱可塑性樹脂(以下、単に熱可塑性樹脂ということがある。)としては、電磁波を吸収し、加熱される性質を有するものを用いることができる。
この熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有する重合体を含むものであれば、特に限定されず、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)等のゴム強化スチレン系樹脂、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、環状オレフィン樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フッ素樹脂、イミド系樹脂、ケトン系樹脂、スルホン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、感光性樹脂、液晶ポリマー、生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記熱可塑性樹脂のうち、電磁波(光)照射成形に用いる熱可塑性樹脂として好適なものとして、ゴム強化スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイ、ゴム強化スチレン系樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイ、ゴム強化スチレン系樹脂及びポリエステル系樹脂のアロイ等が挙げられる。
【0029】
さらに、上記熱可塑性樹脂は、非晶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。
成形型をゴム材料から形成した場合には、熱可塑性樹脂の冷却速度は、金型の場合に比べて遅くなる。そのため、結晶性の高い熱可塑性樹脂を用いると冷却中に結晶成長が進み、成形品の寸法精度が低下したり、成形品の耐衝撃性が低下したりすることがある。これに対し、熱可塑性樹脂を非晶性熱可塑性樹脂にすることにより、上記成形品の寸法精度の低下及び耐衝撃性の低下等を防止できる場合がある。
【0030】
上記熱可塑性樹脂は、目的や用途に応じて、更に、繊維状、粒子状、板状等の充填剤、メタリック顔料等の加飾剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、抗菌剤、親水性付与剤、淡色系着色剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0031】
また、上記成形型は、シリコーンゴムから形成することができる。
この場合には、成形型の作製が容易であるとともに、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波により、成形型をほとんど加熱することなく熱可塑性材料を強く加熱することができる。
また、シリコーンゴムの硬度は、JIS Aスプリング硬さ試験機による測定において25〜80であることが好ましい。
【0032】
また、上記成形装置は、上記キャビティ内の真空引きを行う真空手段を備えており、該真空手段によって上記キャビティ内の圧力を、上記成形型を構成する一対の型部の外部の圧力よりも低くして、該一対の型部に吸引力を発生させることにより、上記熱可塑性材料が溶融する際に上記一対の型部が互いに接近するよう構成することができる。
また、上記熱可塑性成形品の製造方法においては、上記キャビティ内の真空引きを行う真空手段を用い、該真空手段によって上記キャビティ内の圧力を、上記成形型を構成する一対の型部の外部の圧力よりも低くして、該一対の型部に吸引力を発生させることにより、上記熱可塑性材料が溶融する際に上記一対の型部を互いに接近させることができる。
【0033】
これらの場合には、真空手段によって発生させた吸引力(型締め力)によって、一対の型部を互いに接近させることが容易である。また、吸引力を利用して一対の型部を互いに接近させることにより、溶融した熱可塑性材料をキャビティの全体に容易に行き渡らせることができる。
なお、一対の型部は、真空手段によって発生させる吸引力を利用する以外にも、一対の型部に外力を加えて強制的に互いに接近させることもできる。
【0034】
また、上記一対の型部は、互いに接近させる前の原位置において、いずれか一方に設けた被嵌入凹部内に他方に設けた嵌入凸部を嵌入し、該嵌入凸部と上記被嵌入凹部とによって上記一対の型部の間に形成された分割面の全周を閉塞して構成することができる。
この場合には、一対の型部を互いに接近させるために分割面に形成した隙間から熱可塑性材料が漏れ出すことを容易に防止することができる。
【0035】
また、上記一対の型部は、互いに接近させる前の原位置において、いずれか一方に設けたキャビティ形成凹部内に、他方に設けたキャビティ形成凸部を配置し、上記一対の型部の間に形成された分割面の全周に貼り付けられた樹脂テープによって、上記分割面の全周を閉塞して構成することもできる。
この場合にも、一対の型部を互いに接近させるために分割面に形成した隙間から熱可塑性材料が漏れ出すことを容易に防止することができる。
【0036】
また、上記一対の型部の一方は、上記成形品の裏面を成形するキャビティ形成凸部と、該キャビティ形成凸部の外縁部全周に形成された環状嵌入凹部と、該環状嵌入凹部の外縁部全周において突出形成された環状外周凸部とを有しており、上記一対の型部の他方は、上記キャビティ形成凸部を内側に配置して上記成形品の意匠面を成形するキャビティ形成凹部と、該キャビティ形成凹部の外縁部全周において突出し上記環状外周凸部の内周面に嵌入して上記環状嵌入凹部内に配置する環状内周凸部とを有しており、上記キャビティは、上記一対の型部を互いに接近させる前の原位置において、上記キャビティ形成凸部の先端面と上記キャビティ形成凹部の底面との間、上記キャビティ形成凸部の外周面と上記環状内周凸部の内周面との間、上記環状嵌入凹部の底面と上記環状内周凸部の先端面との間に連続して形成し、上記一対の型部の一方には、上記キャビティ形成凸部の先端面に開口する吸引口と、上記環状嵌入凹部の底面に開口する吸引ゲートとを形成し、上記吸引口及び上記吸引ゲートには、上記真空手段によって真空引きを行うための真空引き経路を連通させることができる。
【0037】
この場合には、一対の型部の一方における環状外周凸部の内周面に対する、一対の型部の他方における環状内周凸部の外周面の嵌入によって、一対の型部を互いに接近させるために分割面に形成した隙間から熱可塑性材料が漏れ出すことを容易に防止することができる。
また、吸引口及び吸引ゲートを介してキャビティ内の真空引きを行うことにより、一対の型部の間に容易に吸引力を発生させることができ、溶融した熱可塑性材料をキャビティの全体に容易に行き渡らせることができる。
また、吸引口には、キャビティに配置された粒子状の熱可塑性材料が溶融する際に、このキャビティに余剰になった溶融状態の熱可塑性材料を溢れ出させることもできる。
【0038】
また、上記吸引口は、上記粒子状の熱可塑性材料を上記キャビティ内へ投入する投入口も兼ねていることができる。
この場合には、キャビティ内に熱可塑性材料を配置する際には、一対の型部を閉じた状態において吸引口から粒子状の熱可塑性材料を投入することができる。
【0039】
また、上記一対の型部は、上記一対の型部の一方における上記環状嵌入凹部の底面と上記一対の型部の他方における上記環状内周凸部の先端面とが当接するまで接近させ、上記環状嵌入凹部の底面と上記環状内周凸部の先端面との間に形成された余剰空間から、上記キャビティ形成凸部の外周面と上記環状内周凸部の内周面との間に形成された立壁空間へ上記熱可塑性材料を供給して、上記成形品を成形するよう構成することができる。
この場合には、成形する成形品の寸法精度を安定させることができる。また、成形に用いる熱可塑性材料の余剰分を極力低減することができ、熱可塑性材料の使用量を少なくすることができる。
【0040】
また、上記吸引ゲートは、上記吸引口よりも流路断面積が小さいことが好ましい。また、上記吸引ゲートは、上記環状嵌入凹部の底面における、上記キャビティ形成凹部の底面に対向する位置と、上記環状内周凸部に対向する位置とに開口して形成することができる。
この場合には、吸引ゲートに粒子状の熱可塑性材料の目詰まりを生じ難くし、キャビティにおける端部まで熱可塑性材料を安定して行き渡らせることができる。
また、上記環状嵌入凹部の底面における上記吸引ゲートの開口位置は、少なくとも、環状形状における中心部分を介して対峙する一対、あるいは複数対の位置に配置することが好ましい。これにより、吸引口からの吸引を周方向においてバランスよく行うことができる。
【0041】
また、上記成形装置においては、上記電磁波照射手段は、上記一対の型部の他方における外側面から電磁波を照射するよう構成し、上記キャビティ形成凹部の側から先に上記キャビティ内に配置された上記粒子状の熱可塑性材料を溶融させて充填することにより、上記吸引ゲートが閉塞されることを防止して、上記キャビティの全体に上記熱可塑性材料が充填されるまで、上記真空手段による真空引きを継続するよう構成することができる。
また、上記熱可塑性成形品の製造方法においては、上記電磁波照射手段による電磁波を、上記一対の型部の他方における外側面から照射し、上記キャビティ形成凹部の側から先に上記キャビティ内に配置された上記粒子状の熱可塑性材料を溶融させて充填することにより、上記吸引ゲートが閉塞されることを防止して、上記キャビティの全体に上記熱可塑性材料が充填されるまで、上記真空手段による真空引きを継続することができる。
これらの場合には、吸引ゲートが閉塞されることを効果的に防止することができると共に、キャビティの全体に熱可塑性材料が充填されるまで、一対の型部の間に吸引力を作用させておくことができる。
【0042】
また、上記成形装置においては、上記電磁波照射手段は、上記一対の型部の他方における外側面の一方側から他方側へ部分的に順次相対的に移動しながら電磁波を照射するよう構成し、上記キャビティにおける一方側から他方側に向けて順次上記熱可塑性材料を充填するよう構成することもできる。
また、上記熱可塑性成形品の製造方法においては、上記電磁波照射手段による電磁波を、上記一対の型部の他方における外側面の一方側から他方側へ部分的に順次移動しながら照射し、上記キャビティにおける一方側から他方側に向けて順次上記熱可塑性材料を充填することもできる。
これらの場合には、キャビティ内の熱可塑性材料を部分的に溶融させていくことにより、キャビティの全体に熱可塑性材料を安定して行き渡らせることができる。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明の成形装置、及び熱可塑性成形品の製造方法に係る実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例の成形装置(光照射成形装置)1は、固体状の熱可塑性材料としての熱可塑性樹脂6が配置される、容積可変に構成されたキャビティ20を内部に有する成形型と、キャビティ20内に配置された熱可塑性樹脂6を加熱し溶融させる加熱手段と、キャビティ20の容積を縮小させるように成形型に圧力を印加する圧力印加手段とを備えている。
本例の成形型は、図1図2に示すごとく、光Xを透過する性質を有するゴム材料からなると共に互いに合わさる対向側にキャビティ20を形成する一対のゴム型部2A、2Bである。本例の加熱手段は、図4に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bの表面から、キャビティ20内に配置した粒子状の熱可塑性樹脂6に光Xを照射する光照射手段4である。本例の圧力印加手段は、キャビティ20内を減圧する真空手段5である。
【0044】
光照射成形装置1は、図4図5に示すごとく、光照射手段4から照射する光Xによってキャビティ20内に配置した熱可塑性樹脂6を溶融させながら、一対のゴム型部2A、2Bを互いに接近させてキャビティ20の容積を縮小させ、容積が縮小したキャビティ20内において熱可塑性成形品である熱可塑性樹脂6の成形品7を成形するよう構成してある。
なお、図1図2は、一対のゴム型部2A、2Bが原位置P1にある状態を示す。図4は、一対のゴム型部2A、2Bが若干互いに接近した状態を示す。図5は、一対のゴム型部2A、2Bが最も接近した位置P2において成形品7を成形する状態を示す。
【0045】
以下に、本例の光照射成形装置1及び熱可塑性成形品の製造方法(光照射成形方法)につき、図1図8を参照して詳説する。
一対のゴム型部2A、2Bは、ゴム材料としての透明又は半透明のシリコーンゴムからなる。この一対のゴム型部2A、2Bは、成形する成形品7のマスターモデル(手作りの現物等)を液状のシリコーンゴム内に配置し、このシリコーンゴムを硬化させ、硬化後のシリコーンゴムからマスターモデルを取り出して作製することができる。また、一対のゴム型部2A、2Bは、ゴム製であるため、成形後の成形品7を取り出す際の型開きを行うための分割面(パーティング面)205(図1図2参照)を簡単にかつ任意に形成することができる。
【0046】
熱可塑性樹脂6としては、非晶性熱可塑性樹脂であるとともにゴム変性熱可塑性樹脂であるABS樹脂の粒子を用いる。熱可塑性樹脂6としては、粒子径が1〜3000μmのものを用いることができる。また、粒子状の熱可塑性樹脂6は、嵩比重が0.6程度の熱可塑性樹脂6の微細ペレットである。
【0047】
図4に示すごとく、光照射手段4は、0.78〜2μmの波長領域を含む光Xを発生させるよう構成されている。光照射手段4は、0.78〜2μmの波長領域(ほぼ近赤外線の波長領域に相当する。)を含む光Xを発するハロゲンランプを用いて構成してある。このハロゲンランプは、0.78〜2μmの波長領域内に(本例では約0.9μmに)光強度のピークを有するものを用いた。ハロゲンランプは、光源41と、光源41から発せられた光Xを集光して反射させるリフレクタ42とを用いて構成されている。
【0048】
光照射成形装置1は、光照射手段4によって、キャビティ20内に配置した熱可塑性樹脂6を、シリコーンゴムからなる一対のゴム型部2A、2Bに比べて、強く加熱して、安定した寸法精度の成形品7を成形することができるものである。
図7は、透明のシリコーンゴムと半透明のシリコーンゴムについて、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光Xの透過率(%)をとって、各シリコーンゴムにおける光Xの透過率を示すグラフである。同図において、各シリコーンゴムは、200〜2200(nm)の間の波長の光Xを透過させることがわかる。そのため、この波長の領域である近赤外線をシリコーンゴム製のゴム型部2A、2Bの表面に照射すると、当該近赤外線の多くを、ゴム型部2A、2Bを透過させてキャビティ2内の熱可塑性樹脂6に吸収させることができる。
【0049】
図1に示すごとく、光照射成形装置1は、圧力印加手段として、キャビティ20内の真空引きを行う真空手段5を備えている。真空手段5は、一対のゴム型部2A、2Bに接続するポンプであり、熱可塑性樹脂6が配置されたキャビティ20内の真空引きを行い、このキャビティ20内を真空状態にするよう構成されている。図4図5に示すごとく、光照射成形装置1は、キャビティ20内の圧力を一対のゴム型部2A、2Bの外部の圧力よりも低くして、一対のゴム型部2A、2Bに吸引力(型締め力)Fを発生させることにより、熱可塑性樹脂6が溶融する際に一対のゴム型部2A、2Bが互いに接近するよう構成されている。
【0050】
図6に示すごとく、光照射成形装置1において成形する成形品7は、本体部71と、本体部71に対して略垂直に又は傾斜して起立するよう形成された立壁部72とを有するものである。本例の立壁部72は、本体部71の外縁部の全周から起立するものとした。これ以外にも、成形品7は、本体部71の適宜部分から立壁部72を略垂直に又は傾斜して起立させたものとすることができる。なお、後述する吸引口27に成形された成形部分73を切断して、成形品7とすることができる。
【0051】
図1図2に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bの一方である一方側ゴム型部2Aは、成形品7の裏面702を成形するキャビティ形成凸部21と、キャビティ形成凸部21の外縁部全周に形成された環状嵌入凹部22と、環状嵌入凹部22の外縁部全周に突出形成された環状外周凸部23とを有している。一対のゴム型部2A、2Bの他方である他方側ゴム型部2Bは、キャビティ形成凸部21を内側に配置して成形品7の意匠面701を成形するキャビティ形成凹部25と、キャビティ形成凹部25の外縁部全周において突出し環状外周凸部23の内周面231に嵌入して環状嵌入凹部22内に配置する環状内周凸部26とを有している。
ゴム型部2A、2Bにおける被嵌入凹部は、一方側ゴム型部2Aにおける環状嵌入凹部22及び環状外周凸部23によって形成されており、ゴム型部2A、2Bにおける嵌入凸部は、他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26によって形成されている。
【0052】
他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の外周面263は、一対のゴム型部2A、2Bを互いに接近させる前の原位置P1において、環状外周凸部23の内周面231に嵌入されている。一対のゴム型部2A、2Bは、互いに接近させる前後において、環状内周凸部26の外周面263と環状外周凸部23の内周面231とによって、一対のゴム型部2A、2Bの間に形成された分割面205の全周が閉塞されている。
一方側ゴム型部2Aにおける環状外周凸部23の内周面231に対する、他方側ゴム型部における環状内周凸部26の外周面263の嵌入によって、一対のゴム型部2A、2Bを互いに接近させるために分割面205に形成した隙間29から溶融した熱可塑性樹脂6Bが漏れ出すことを容易に防止することができる。
【0053】
図1図2に示すごとく、キャビティ20は、一対のゴム型部2A、2Bを互いに接近させる前の原位置P1において、キャビティ形成凸部21の先端面211とキャビティ形成凹部25の底面251との間、キャビティ形成凸部21の外周面212と環状内周凸部26の内周面262との間、環状嵌入凹部22の底面221と環状内周凸部26の先端面261との間に連続して形成されている。
図4図5に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bは、キャビティ20内に配置された熱可塑性樹脂6が溶融する際に、一方側ゴム型部2Aにおける環状嵌入凹部22の底面221と、他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の先端面261とが当接するまで接近するよう構成されている。一対のゴム型部2A、2Bが互いに接近してキャビティ20内に成形品7を成形する際には、キャビティ形成凸部21とキャビティ形成凹部25との間に形成された本体空間201と、環状嵌入凹部22の底面221と環状内周凸部26の先端面261との間に形成された余剰空間203とから、キャビティ形成凸部21の外周面212と環状内周凸部26の内周面262との間に形成された立壁空間202へ熱可塑性樹脂6が供給される。なお、図4図5において、粒子状の熱可塑性樹脂を6Aで示し、溶融した熱可塑性樹脂を6Bで示す。
【0054】
図1図2に示すごとく、一方側ゴム型部2Aには、キャビティ形成凸部21の先端面211に開口する吸引口27と、環状嵌入凹部22の底面221に開口する吸引ゲート28とが貫通形成されている。吸引口27は、粒子状の熱可塑性樹脂6Aをキャビティ20内へ投入するための投入口の機能も兼ねている。また、吸引口27は、本体空間201に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aが溶融する際に、この本体空間201に余剰になった溶融状態の熱可塑性樹脂6Bを溢れ出させる空間としての機能も有している。
【0055】
本例において成形する成形品7は、上記のごとく立壁部72が本体部71の全周において略垂直又は傾斜状に起立するものである。そして、図3に示すごとく、吸引ゲート28は、環状嵌入凹部22の底面221における、キャビティ形成凹部25の底面251に対向する位置と、環状内周凸部26に対向する位置との複数箇所に開口して形成してある。なお、図3は、一方側ゴム型部2Aにおける吸引口27及び複数の吸引ゲート28の形成状態を示す。
【0056】
吸引ゲート28は、立壁部72を形成する位置に合わせて適宜形成することができる。
例えば、互いに対向する一対の立壁部72のみを形成する場合には、環状嵌入凹部22の底面221であって立壁部72を形成する部分において、キャビティ形成凹部25の底面251に対向する位置と、環状内周凸部26に対向する位置とにのみ開口する吸引ゲート28を形成する。図8に示すごとく、環状嵌入凹部22の底面221であって立壁部72を形成しない残りの部分においては、キャビティ形成凹部25の底面251に対向する位置と、環状内周凸部26に対向する位置とには吸引ゲート28を形成しないことができる。この場合、環状嵌入凹部22の底面221であって立壁部72を形成しない残りの部分においては、一方側ゴム型部2Aにおけるキャビティ形成凸部21の外周面212と他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の内周面262とを接触させておき、溶融した熱可塑性樹脂6が、環状内周凸部26の先端面261と環状嵌入凹部22の底面221との間に流入しないようにすることができる。
【0057】
図1図2に示すごとく、吸引ゲート28は、吸引口27よりも流路断面積が小さい。吸引ゲート28は、真空手段5によってキャビティ20内の気体(エア)を吸引する際に、キャビティ20内における粒子状の熱可塑性樹脂6Aが吸引されないように熱可塑性樹脂6Aの粒子よりも小さな流路断面積で形成してある。
一方側ゴム型部2Aにおいて他方側ゴム型部2Bと対向しない側には、バックアッププレート3が重ねて配置されている。そして、一方側ゴム型部2Aとバックアッププレート3との間には、真空手段5によって真空引きを行うための真空引き経路31が形成されている。真空引き経路31は、吸引口27及び複数の吸引ゲート28に連通している。
【0058】
図4図5に示すごとく、光照射手段4は、他方側ゴム型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25の底面251と平行に形成された外側面206に対向して配設されている。光照射成形装置1は、他方側ゴム型部2Bにおける外側面206に光照射手段4から照射する光Xによって、キャビティ形成凹部25の側から先にキャビティ20内に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aを溶融させることができる。そして、吸引口27及び複数の吸引ゲート28は、光照射手段4とは反対側に位置する一方側ゴム型部2Aに形成されているため、粒子状の熱可塑性樹脂6A全体が溶融するまで、吸引口27及び吸引ゲート28が閉塞されることがない。そのため、光照射成形装置1は、吸引ゲート28が閉塞されることを防止して、キャビティ20の全体に溶融した熱可塑性樹脂6Bが充填されるまで、真空手段5による真空引きを継続することができる。
【0059】
図4図5においては、吸引口27を設けた一方側ゴム型部2Aを下側にして配置した一対のゴム型部2A、2Bに対して、他方側ゴム型部2Bの上方から光照射手段4によって光Xを照射する状態を示した。これに対し、一対のゴム型部2A、2Bは、一方側ゴム型部2Aと他方側ゴム型部2Bとを水平方向に組み合わさる状態で配置し、水平方向から光Xを照射することもできる。また、他方側ゴム型部2Bを下側にして配置した一対のゴム型部2A、2Bに対して、一方側ゴム型部2Aの上方から光照射手段4によって光Xを照射することもできる。
【0060】
図示は省略するが、一対のゴム型2A、2Bの少なくとも一方において、キャビティ20を形成するキャビティ形成面は、ゴム材料による一般部よりも、光の吸収性がよい物質を設けて形成することができる。例えば、一対のゴム型2A、2Bにおいて、キャビティ20に接する部分に光の吸収性がよい表面層を形成し、この表面層に、光照射手段4から照射される光を吸収させることができる。この場合には、表面層からの熱伝達によってキャビティ20内の熱可塑性樹脂6を加熱・溶融させることができる。なお、加熱手段として光以外の電磁波を照射する装置を用いる場合には、上記表面層を、光以外の電磁波を吸収して発熱する材料によって形成することができる。この場合にも、表面層による同様の作用効果を得ることができる。
また、光照射成形装置1には、一対のゴム型2A、2Bを介して熱可塑性樹脂6を冷却する冷却手段を設けることができる。この冷却手段は、例えば、一対のゴム型部2A、2Bに空気を吹き付ける送風機とすることができる。この場合、送風機は、さらに熱交換器と組み合わせて冷風を吹き付けるようにすることができ、また、例えば粉末状のドライアイス等の冷媒を吹き付けるようにすることもできる。
【0061】
次に、上記光照射成形装置1を用いた光照射成形方法による作用効果について説明する。
まず、樹脂配置工程(配置工程)として、一対のゴム型部2A、2Bの間に形成するキャビティ20内に粒子状の熱可塑性樹脂6Aを配置する。このとき、熱可塑性樹脂6Aは、一方側ゴム型部2Aに形成した吸引口(投入口)27から互いに組み合わせた状態の一対のゴム型部2A、2Bの間のキャビティ20内へ投入することができる。また、熱可塑性樹脂6Aは、開いた状態の他方側ゴム型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25内に配置することもできる。この場合、熱可塑性樹脂6Aを配置した他方側ゴム型部2Bに、一方側ゴム型部2Aを組み合わせる。
また、粒子状の熱可塑性樹脂6Aをキャビティ20内に配置したときには、キャビティ20を形成する面と熱可塑性樹脂6Aとの間や、熱可塑性樹脂6A同士の間に空隙が形成される。
【0062】
特に、固形状の熱可塑性樹脂6を用いる場合には、キャビティ形成凹部25又はキャビティ形成凸部21に対して熱可塑性樹脂6を配置した後、一対のゴム型部2A、2Bを組み合わせることができる。また、熱可塑性樹脂6は、粒子状のものと固形状のものとを組み合わせて用いることができる。
また、図1図2に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bを組み合わせた状態においては、一方側ゴム型部2Aにおける環状外周凸部23の内周面231と、他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の外周面263とによって、一対のゴム型部2A、2Bの間に形成された分割面205の全周が閉塞される。
【0063】
次いで、樹脂成形工程(加熱工程及び圧力印加工程)として、図1に示すごとく、真空手段5によって真空引き経路31から吸引口27及び複数の吸引ゲート28を介してキャビティ20内の真空引きを開始する。このとき、キャビティ20において粒子状の熱可塑性樹脂6Aの間に形成された空隙から空気が吸引され、一対のゴム型部2A、2Bには、互いに接近しようとする吸引力Fが作用し、粒子状の熱可塑性樹脂6Aの粒子同士の間に圧力が加わる。
そして、図4に示すごとく、真空手段5による真空引きを継続した状態で、光照射手段4によって他方側ゴム型部2Bにおける外側面206へ0.78〜2μmの波長領域を含む光Xを照射する。このとき、光Xの多くは他方側ゴム型部2Bを透過し、キャビティ20内の熱可塑性樹脂6Aに吸収される。そして、光照射手段4に近い側に配置された他方側ゴム型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25の底面251の近傍に位置する熱可塑性樹脂6Aが強く加熱される。キャビティ20内に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aは、キャビティ20の本体空間201において他方側ゴム型部2Bのキャビティ形成凹部25の底面251の近傍に位置する粒子から先に溶融する。
なお、真空手段5による一対のゴム型2A、2Bへの圧力の印加は、熱可塑性樹脂6が溶融を開始する前から行われることになる。
【0064】
このとき、キャビティ20内においては、粒子状の熱可塑性樹脂6Aの粒子同士の間の空隙は略真空状態にある。そして、キャビティ20の内部と外部との圧力差によって一対のゴム型部2A,2Bに圧力が印加される結果、粒子状の熱可塑性樹脂6Aの粒子同士の間には圧力が作用している。この状態で、光照射手段4によって本体空間201内の粒子状の熱可塑性樹脂6Aが加熱されて溶融すると、粒子間に作用していた圧力が解放され、一対のゴム型部2A、2Bに作用する吸引力Fによって本体空間201の容積が減少する。これにより、本体空間201の容積が減少した分だけ一対のゴム型部2A、2Bが互いに接近する。
また、キャビティ20内の熱可塑性樹脂6Aが溶融を開始した後も、真空手段5によるキャビティ20内の真空引きを継続する。
【0065】
図5に示すごとく、キャビティ20内における粒子状の熱可塑性樹脂6Aは、キャビティ20の本体空間201においてキャビティ形成凹部25の底面251の近傍に位置する粒子から先に溶融し、次いで、キャビティ形成凸部21の先端面211の近傍に位置する粒子へと順次溶融して行く。そして、キャビティ20における立壁空間202及び余剰空間203に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aは、本体空間201に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aの略全体が溶融するまで、溶融せずに粒子状態が維持される。これにより、吸引口27及び複数の吸引ゲート28に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aの間に形成された空隙からキャビティ20における本体空間201の真空引きが継続される。
【0066】
本体空間201における粒子状の熱可塑性樹脂6Aが溶融し、一対のゴム型部2A、2Bが互いに接近したときには、立壁空間202及び余剰空間203に配置された粒子状の熱可塑性樹脂6Aが溶融する。このとき、余剰空間203における溶融した熱可塑性樹脂6Bは、一対のゴム型部2A、2Bの接近によって余剰空間203の容積が減少する際に立壁空間202へと供給される。また、本体空間201において余剰となった溶融状態の熱可塑性樹脂6Bも、立壁空間202へと供給される。
また、熱可塑性樹脂6Aが溶融することにより、キャビティ20内に形成されていた空隙がほとんどなくなる。
【0067】
こうして、立壁空間202における粒子状の熱可塑性樹脂6Aが溶融する際に、立壁空間202における熱可塑性樹脂6の不足分は、余剰空間203及び本体空間201から補充することができ、立壁空間202に成形する立壁部72の厚みが薄くなることを回避することができる。また、一対のゴム型部2A、2Bは、キャビティ20内に配置された熱可塑性樹脂6が溶融する際に、一方側ゴム型部2Aにおける環状嵌入凹部22の底面221と、他方側ゴム型部2Bにおける環状内周凸部26の先端面261とが当接するまで接近する。そして、環状嵌入凹部22の底面221と環状内周凸部26の先端面261との間には、薄いシート状(バリ状)の熱可塑性樹脂の成形品が成形される。
【0068】
このように、樹脂成形工程においては、キャビティ20の全体に溶融した熱可塑性樹脂6Bが充填されるまで、真空手段5による真空引きを継続し、容積が減少したキャビティ20の全体に溶融した熱可塑性樹脂6Bを行き渡らせることができる。
次いで、樹脂冷却工程として、一対のゴム型部2A、2Bにおけるキャビティ20に溶融した熱可塑性樹脂6Bが充填された状態を維持する。このとき、溶融した熱可塑性樹脂6Bが冷やされて固化し、本体空間201において本体部71が成形されると共に立壁空間202において立壁部7が成形されて、熱可塑性樹脂6の成形品7を得ることができる。
【0069】
また、樹脂冷却工程においても、圧力印加工程を継続して行い、真空手段5によるキャビティ20内の真空引きを継続する。そして、樹脂冷却工程において、成形品7の冷却が完了するまで真空引きを継続する。
これにより、キャビティ20の容積が縮小した状態は、熱可塑性樹脂6の溶融が開始するときから、溶融した熱可塑性樹脂6を冷却して固化するまでの間維持される。そのため、熱可塑性樹脂6が固化するまでの間、容積が縮小したキャビティ20の形状を維持することができる。そして、溶融した熱可塑性樹脂6の漏れ出しや、冷却固化時の熱可塑性樹脂6の変形を最小限に抑え、容積縮小後のキャビティ20の形状に沿った形状の熱可塑性樹脂6の成形品7を精度よく成形することができる。
【0070】
なお、本例においては、樹脂冷却工程においても、真空手段5によるキャビティ20内の真空引きを継続する場合を示した。これ以外にも、真空引き経路31を閉塞した後に、真空手段5を真空引き経路31から分離することによって、キャビティ20内が減圧された状態を維持してもよい。また、一対のゴム型部2A,2Bに対して機械的に外力を加えることによって、容積が縮小したキャビティ20の形状を維持するようにしてもよい。
【0071】
また、本例においては、ゴム製の成形型を用いるため、従来の金型に比べて熱可塑性樹脂6の温度低下が緩やかである。このため、急激な冷却による成形品7の反りやヒケが生じにくい。さらに、キャビティ20の容積を縮小させた状態で緩やかに冷却することにより、次の効果を得ることもできる。熱可塑性樹脂6の温度が低下する際には、その容積が減少する。このとき、熱可塑性樹脂6の容積減少に追随して、一対のゴム型部2A、2Bが若干互いに接近して、キャビティ20の容積を縮小させることができる。これにより、容積縮小後のキャビティ20の形状に沿った形状の熱可塑性樹脂6の成形品7を精度よく成形することができる。
その後、成形品取出工程として、一対のゴム型部2A、2Bを離型して、成形した成形品7を取り出すことができる。
【0072】
本例においては、ゴム型部2A、2Bに比べて熱可塑性樹脂6を強く加熱して溶融させることができ、ゴム型部2A、2Bの温度上昇を抑制して、熱可塑性樹脂6を効果的に加熱することができる。そのため、熱可塑性樹脂6の成形品7を成形する際に、ゴム型部2A、2Bの熱劣化を効果的に防止することができる。
また、キャビティ20の容積を縮小させて成形品7を成形するため、キャビティ20内へ溶融状態の熱可塑性樹脂6Bを充填する必要がない。また、熱可塑性樹脂6を予め溶融させてキャビティ20へ注入する樹脂注入ノズル等の装置が不要になる。また、キャビティ20内に配置した熱可塑性樹脂6のほぼすべてを成形品7の成形に使用することができる。
【0073】
それ故、本例の光照射成形装置1及びこれを用いた光照射成形方法によれば、熱可塑性樹脂6を予め溶融させてキャビティ20へ注入する装置が不要になり、少ない熱可塑性樹脂6の使用量で成形品7を成形することができる。
【0074】
(実施例2)
本例においては、上記光照射成形装置1の構成を上記実施例1とは異なる構成にしたいくつかの例を示す。
上記一対のゴム型部2A、2Bは、上記環状外周凸部23の内周面231と上記環状内周凸部26の外周面263との嵌合によって一対のゴム型部2A、2Bの間の分割面205の全周を閉塞する以外にも、図9に示すごとく、一対のゴム型部2A、2Bの間に形成された分割面205の全周に貼り付けられた樹脂テープ35によって、分割面205の全周を閉塞する構造とすることもできる。
具体的には、一方側ゴム型部2Aに、キャビティ形成凸部210を形成すると共にその外縁部全周に環状凹部220を形成し、他方側ゴム型部2Bに、キャビティ形成凹部250を形成すると共にその外縁部全周に環状凸部260を形成する。
【0075】
そして、一方側ゴム型部2Aの側面207と他方側ゴム型部2Bの側面207との間に掛け渡して貼り付けた樹脂テープ35によって、一方側ゴム型部2Aと他方側ゴム型部2Bとの間の分割面205における隙間29を塞ぐ。このとき、環状凹部220の底面と環状凸部260の先端面との間に、成形品7の成形に用いる熱可塑性樹脂6と同じ組成の熱可塑性樹脂6のスペーサ61を配置する。そして、このスペーサ61の高さを調節することによって、本体空間201の成形前の容積、すなわちキャビティ20の成形前の容積を意図する容積に設定することができる。この場合には、樹脂テープ35によって、溶融したキャビティ20内の熱可塑性樹脂6が分割面205における隙間29から外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0076】
また、図10に示すごとく、上記光照射手段4は、他方側ゴム型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25の底面251と平行に形成された外側面206に沿って一方側から他方側へ、すなわち、一対のゴム型部2A、2Bが向き合う方向に対して直交する方向の一方側から他方側へ、順次移動しながら部分的に光Xを照射するよう構成することができる。そして、熱可塑性樹脂6を配置したキャビティ20内を真空手段5によって真空状態にしておき、順次移動する光照射手段4によって光Xを照射することにより、一対のゴム型部2A、2Bのキャビティ20における一方側から他方側に沿って順次熱可塑性樹脂6を加熱して溶融させる。これにより、一対のゴム型部2A、2Bを一方側から他方側に沿って順次互いに接近させ、キャビティ20の全体に熱可塑性樹脂6を充填して、成形品7を得ることができる。この場合には、キャビティ20内の粒子状の熱可塑性樹脂6Aを部分的に溶融させていくことにより、キャビティ20の全体に溶融した熱可塑性樹脂6Bを安定して行き渡らせることができる。
本例においても、光照射成形装置1のその他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10