特許第5790787号(P5790787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000002
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000003
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000004
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000005
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000006
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000007
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000008
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000009
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000010
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000011
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000012
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000013
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000014
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000015
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000016
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000017
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000018
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000019
  • 特許5790787-非可逆回路素子及び送受信装置 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790787
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】非可逆回路素子及び送受信装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/383 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   H01P1/383 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-550155(P2013-550155)
(86)(22)【出願日】2012年9月12日
(86)【国際出願番号】JP2012073257
(87)【国際公開番号】WO2013094256
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-277769(P2011-277769)
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001449
【氏名又は名称】特許業務法人プロフィック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−282626(JP,A)
【文献】 特開2002−299915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/22− 1/397
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、第1中心電極の他端はグランドに接続され、
第2中心電極の一端は平衡入出力端子の他方に接続されるとともに第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
第1中心電極の一端は第1容量素子を介してグランドに接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されていること、
を特徴とする非可逆回路素子。
【請求項2】
非可逆回路素子とアンテナと受信側端子と送信側端子を備えた送受信装置において、
前記非可逆回路素子は、
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、第1中心電極の他端はグランドに接続され、
第2中心電極の一端は平衡入出力端子の他方に接続されるとともに第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
第1中心電極の一端は第1容量素子を介してグランドに接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されており、
第1不平衡入出力端子は前記送信側端子に接続され、平衡入出力端子は前記アンテナに接続され、第2不平衡入出力端子は前記受信側端子に接続されていること、
を特徴とする送受信装置。
【請求項3】
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、
第2中心電極の一端は第1中心電極の他端に接続されるとともに平衡入出力端子の他方及び第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
平衡入出力端子の間に第1中心電極と並列に第1容量素子が接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されていること、
を特徴とする非可逆回路素子。
【請求項4】
非可逆回路素子とアンテナと受信側端子と送信側端子を備えた送受信装置において、
前記非可逆回路素子は、
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、
第2中心電極の一端は第1中心電極の他端に接続されるとともに平衡入出力端子の他方及び第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
平衡入出力端子の間に第1中心電極と並列に第1容量素子が接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されており、
第1不平衡入出力端子は前記アンテナに接続され、平衡入出力端子は前記受信側端子に接続され、第2不平衡入出力端子は前記送信側端子に接続されていること、
を特徴とする送受信装置。
【請求項5】
非可逆回路素子とアンテナと受信側端子と送信側端子を備えた送受信装置において、
前記非可逆回路素子は、
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、
第2中心電極の一端は第1中心電極の他端に接続されるとともに平衡入出力端子の他方及び第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
平衡入出力端子の間に第1中心電極と並列に第1容量素子が接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されており、
第1不平衡入出力端子は前記アンテナに接続され、平衡入出力端子は前記送信側端子に接続され、第2不平衡入出力端子は前記受信側端子に接続されていること、
を特徴とする送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非可逆回路素子、特に、マイクロ波帯で使用されるサーキュレータ、及び該サーキュレータを備えて携帯電話などに搭載される送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サーキュレータは、予め定められた特定方向にのみ信号を伝送し、逆方向には伝送しない特性を有している。この特性を利用して、サーキュレータは、携帯電話などの移動体通信機器の送受信回路部に使用されている。
【0003】
この種のサーキュレータとして、特許文献1には、直流磁界が印加されるフェライトに、互いに電気的に絶縁状態で交差するように第1中心電極及び第2中心電極を配置し、第1及び第2中心電極のそれぞれの一端を第1及び第2入出力ポートとし、第1及び第2中心電極の他端の一つを第3入出力ポートとしたサーキュレータが記載されている。このサーキュレータは、従来に比べて挿入損失特性やアイソレーション特性を改善したものである。
【0004】
ところで、これからの携帯電話では、複数の通信システムに対応するためにマルチバンド化、マルチモード化が進み、比帯域幅で30%といった広帯域が要求される。しかし、前記サーキュレータでは、今後要求される広帯域化に対して、アイソレーション特性が狭いという問題点を有している。つまり、前記サーキュレータでは、中心周波数1.5GHzでアイソレーションが10dBの帯域幅は140MHzであり、比帯域幅は9%(140/1500)程度であった。
【0005】
さらに、前記サーキュレータでは、中心電極がグランドに接続されていないため、回路基板などに実装された際に中心電極と基板のグランド部との間で浮遊容量が発生し、特性がずれるという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−232818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、アイソレーション特性が良好で比帯域幅が広く、特性が安定した非可逆回路素子及び送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態である非可逆回路素子は、
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、第1中心電極の他端はグランドに接続され、
第2中心電極の一端は平衡入出力端子の他方に接続されるとともに第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
第1中心電極の一端は第1容量素子を介してグランドに接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されていること、
を特徴とする。
【0009】
本発明の第2の形態である送受信装置は、
非可逆回路素子とアンテナと受信側端子と送信側端子を備えた送受信装置において、
前記非可逆回路素子は、
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、第1中心電極の他端はグランドに接続され、
第2中心電極の一端は平衡入出力端子の他方に接続されるとともに第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
第1中心電極の一端は第1容量素子を介してグランドに接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されており、
第1不平衡入出力端子は前記送信側端子に接続され、平衡入出力端子は前記アンテナに接続され、第2不平衡入出力端子は前記受信側端子に接続されていること、
を特徴とする。
【0010】
前記第1の形態である非可逆回路素子及び第2の形態である送受信装置において、第1不平衡入出力端子に入力された高周波(送信)信号は平衡入出力端子の一方に同相で他方に逆相で出力され、第2不平衡入出力端子へは大きく減衰されて伝達されることはない。平衡入出力端子に入力された高周波(受信)信号は第2不平衡入出力端子から出力され、第1不平衡入出力端子へは大きく減衰されて伝達されることはない。第2不平衡入出力端子に入力された高周波信号は平衡入出力端子の一方及び他方が同相となるので平衡入出力端子からは出力されず、第1不平衡入出力端子に流れる。また、第1及び第2中心電極は、いずれもグランドに接続されているため、回路基板に実装された際に浮遊容量の発生が極力小さくなる。第1中心電極のインダクタンス成分と第1容量素子のキャパシタンス成分とで主に送信信号の周波数が決まる。第2中心電極のインダクタンス成分と第2容量素子のキャパシタンス成分とで主に受信信号の周波数が決まる。以上のごとく、非可逆回路素子の一つのポートを平衡入出力ポートとしたのでサーキュレータとして機能することになり、以下の実施例で詳述するようにアイソレーション特性が良好で比帯域幅が広いサーキュレータとすることができる。
【0011】
本発明の第3の形態である非可逆回路素子は、
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、
第2中心電極の一端は第1中心電極の他端に接続されるとともに平衡入出力端子の他方及び第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
平衡入出力端子の間に第1中心電極と並列に第1容量素子が接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されていること、
を特徴とする。
【0012】
本発明の第4の形態である送受信装置は、
非可逆回路素子とアンテナと受信側端子と送信側端子を備えた送受信装置において、
前記非可逆回路素子は、
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、
第2中心電極の一端は第1中心電極の他端に接続されるとともに平衡入出力端子の他方及び第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
平衡入出力端子の間に第1中心電極と並列に第1容量素子が接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されており、
第1不平衡入出力端子は前記アンテナに接続され、平衡入出力端子は前記受信側端子に接続され、第2不平衡入出力端子は前記送信側端子に接続されていること、
を特徴とする。
【0013】
前記第3の形態である非可逆回路素子及び第4の形態である送受信装置において、第1不平衡入出力端子に入力された高周波(受信)信号は平衡入出力端子の一方に同相で他方に逆相で出力され、第2不平衡入出力端子へは大きく減衰されて伝達されることはない。第2不平衡入出力端子に入力された高周波(送信)信号は平衡入出力端子の一方及び他方が同相となるので平衡入出力端子からは出力されず、第1不平衡入出力端子からアンテナに出力される。平衡入出力端子に入力された高周波信号は第2不平衡入出力端子から出力され、第1不平衡入出力端子へは大きく減衰されて伝達されることはない。また、第2中心電極はグランドに接続されているため、回路基板に実装された際に浮遊容量の発生が極力小さくなる。第1中心電極のインダクタンス成分と第1容量素子のキャパシタンス成分とで主に受信信号の周波数が決まる。第2中心電極のインダクタンス成分と第2容量素子のキャパシタンス成分とで主に送信信号の周波数が決まる。以上のごとく、非可逆回路素子の一つのポートを平衡入出力ポートとしたのでサーキュレータとして機能することになり、以下の実施例で詳述するようにアイソレーション特性が良好で比帯域幅が広いサーキュレータとすることができる。
【0014】
第5の形態である送受信装置は、
非可逆回路素子とアンテナと受信側端子と送信側端子を備えた送受信装置において、
前記非可逆回路素子は、
永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトに互いに絶縁状態で交差した第1中心電極及び第2中心電極を配置し、
第1中心電極の一端は第1不平衡入出力端子に接続されるとともに平衡入出力端子の一方に接続され、
第2中心電極の一端は第1中心電極の他端に接続されるとともに平衡入出力端子の他方及び第2不平衡入出力端子に接続され、第2中心電極の他端はグランドに接続され、
平衡入出力端子の間に第1中心電極と並列に第1容量素子が接続され、
第2中心電極の一端は第2容量素子を介してグランドに接続されており、
第1不平衡入出力端子は前記アンテナに接続され、平衡入出力端子は前記送信側端子に接続され、第2不平衡入出力端子は前記受信側端子に接続されていること、
を特徴とする。
【0015】
前記第5の形態である送受信装置において、第1不平衡入出力端子に入力された高周波(受信)信号は平衡入出力端子の一方及び他方が同相となるので平衡入出力端子からは出力されず、第2不平衡入出力端子に出力される。平衡入出力端子に入力された高周波(送信)信号は第1不平衡入出力端子からアンテナに出力され、第2不平衡入出力端子には大きく減衰されて伝達されることはない。第2不平衡入出力端子に入力された高周波信号は平衡入出力端子の一方に同相で他方に逆相で出力され、第1不平衡入出力端子へは大きく減衰されて伝達されることはない。また、第2中心電極はグランドに接続されているため、回路基板に実装された際に浮遊容量の発生が極力小さくなる。第1中心電極のインダクタンス成分と第1容量素子のキャパシタンス成分とで主に送信信号の周波数が決まる。第2中心電極のインダクタンス成分と第2容量素子のキャパシタンス成分とで主に受信信号の周波数が決まる。以上のごとく、非可逆回路素子の一つのポートを平衡入出力ポートとしたのでサーキュレータとして機能することになり、以下の実施例で詳述するようにアイソレーション特性が良好で比帯域幅が広いサーキュレータとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アイソレーション特性が良好で比帯域幅が広く、特性の安定した非可逆回路素子及び送受信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】携帯電話の送受信装置の一例を示すブロック図である。
図2】第1実施例であるサーキュレータを示す等価回路図である。
図3】第1実施例であるサーキュレータの分解斜視図である。
図4】第1実施例であるサーキュレータを構成するフェライトと中心電極を示す斜視図である。
図5】第1実施例であるサーキュレータにおける第1不平衡入出力端子から平衡入出力端子への挿入損失を示すグラフである。
図6】第1実施例であるサーキュレータにおける平衡入出力端子から第2不平衡入出力端子への挿入損失を示すグラフである。
図7】第1実施例であるサーキュレータにおける第1不平衡入出力端子から第2不平衡入出力端子へのアイソレーションを示すグラフである。
図8】第2実施例であるサーキュレータを示す等価回路図である。
図9】第2実施例であるサーキュレータの分解斜視図である。
図10】第2実施例であるサーキュレータを構成するフェライトと中心電極を示す斜視図である。
図11】第2実施例であるサーキュレータにおける第2不平衡入出力端子から第1不平衡入出力端子への挿入損失を示すグラフである。
図12】第2実施例であるサーキュレータにおける第1不平衡入出力端子から平衡入出力端子への挿入損失を示すグラフである。
図13】第2実施例であるサーキュレータにおける第2不平衡入出力端子から平衡入出力端子へのアイソレーションを示すグラフである。
図14】第3実施例であるサーキュレータを示す等価回路図である。
図15】第3実施例であるサーキュレータの分解斜視図である。
図16】第3実施例であるサーキュレータを構成するフェライトと中心電極を示す斜視図である。
図17】第3実施例であるサーキュレータにおける平衡入出力端子から第1不平衡入出力端子への挿入損失を示すグラフである。
図18】第3実施例であるサーキュレータにおける第1不平衡入出力端子から第2不平衡入出力端子への挿入損失を示すグラフである。
図19】第3実施例であるサーキュレータにおける平衡入出力端子から第2不平衡入出力端子へのアイソレーションを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る非可逆回路素子及び送受信装置の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ部材、部分については共通する符号を付し、重複する説明は省略する。また、図3図4図9図10図15及び図16において斜線を付した部分は導体である。
【0019】
(送受信装置、図1参照)
一実施例である送受信装置は、図1に示すように、アンテナANTにアンテナ共用器として機能するサーキュレータ10を接続し、該サーキュレータ10の一方のポートに受信側フィルタ11Rx、ローノイズアンプ12Rx、ミキサ13Rxを介して受信信号端子Rxを接続し、他方のポートに送信側フィルタ11Tx、パワーアンプ12Tx、ミキサ13Txを介して送信信号端子Txを接続したもので、ミキサ13Rx,13Tx間には電圧制御発振器14が接続されている。
【0020】
アンテナANTで受信した高周波信号はサーキュレータ10で受信側フィルタ11Rxに伝送され、ローノイズアンプ12Rx、ミキサ13Rxを介して受信信号端子Rxに伝送される。送信信号端子Txから入力された高周波信号はミキサ13Tx、パワーアンプ12Tx、送信側フィルタ11Txを介してサーキュレータ10に伝送され、該サーキュレータ10からアンテナANTに伝送される。ここで、サーキュレータ10としては、複数の通信システムに対応するために比帯域幅で30%といった広帯域が要求され、以下にこの種の要求に応え得るサーキュレータについて説明する。
【0021】
(第1実施例、図2図7参照)
第1実施例であるサーキュレータ10Aは図1に示す集中定数型の等価回路からなる。即ち、第1中心電極L1及び第2中心電極L2が磁気結合しており、第1中心電極L1の一端P1は第1不平衡入出力端子P3に接続されるとともに平衡入出力端子の一方P5に接続され、かつ、第1中心電極L1の他端はグランドに接続されている。第2中心電極L2の一端P2は平衡入出力端子の他方P6に接続されるとともに第2不平衡入出力端子P4に接続され、かつ、第2中心電極L2の他端はグランドに接続されている。さらに、第1中心電極L1の一端P1は第1容量素子C1を介してグランドに接続され、第2中心電極L2の一端P2は第2容量素子C2を介してグランドに接続されている。
【0022】
前記サーキュレータ10Aは、具体的には、図3及び図4に示すように、一対の永久磁石30よって直流磁界が印加されるフェライト20の表裏面に、互いに絶縁状態で交差した第1中心電極L1及び第2中心電極L2が配置されている。フェライト20は一対の永久磁石30に挟着保持され、容量素子C1,C2とともに回路基板40上に実装される。
【0023】
第1中心電極L1は、その一端P1がフェライト20の裏面に沿って延在して電極31aの上端に接続され、該電極31aの下端はフェライト20の裏面側に回り込んで電極31bの上端に接続され、該電極31bの下端がグランドに接続される。第2中心電極L2は、一端P2を有する電極31cが上端からフェライト20の裏面側に回り込んで電極31dの下端に接続され、該電極31dが上端からフェライト20の裏面側に回り込んで電極31eを介してグランドに接続される。
【0024】
このように、第1及び第2中心電極L1,L2の形状は、回路基板40と垂直方向に回転対象であり、それぞれのインダクタンスが等しくなるように構成されている。なお、第1及び第2中心電極L1,L2のグランドに接続される電極31bの下端及び電極31eは一体的に構成してもよい。
【0025】
回路基板40はその上面に導体41,42,43が形成されている。第1中心電極L1の一端P1は導体41に接続され、該導体41の一端が第1不平衡入出力端子P3として機能するとともに、他端が平衡入出力端子の一方P5として機能する。第1及び第2中心電極L1,L2の他端(電極31b,31e)は導体42に接続され、該導体42はグランド端子として機能する。第2中心電極L2の一端P2は導体43に接続され、該導体43の一端が第2不平衡入出力端子P4として機能するとともに、他端が平衡入出力端子の他方P6として機能する。また、第1容量素子C1は導体41,42間に接続され、第2容量素子C2は導体42,43間に接続される。
【0026】
以上の構成からなるサーキュレータ10Aにおいて、第1不平衡入出力端子P3は送信側に接続され、平衡入出力端子P5,P6はアンテナANTに接続され、第2不平衡入出力端子P4は受信側に接続される。
【0027】
第1不平衡入出力端子P3に入力された送信信号は平衡入出力端子の一方P5に同相で他方P6に逆相で出力され、第2不平衡入出力端子P4へは大きく減衰されて伝達されることはない。平衡入出力端子P5,P6に入力された受信信号は第2不平衡入出力端子P4から出力され、第1不平衡入出力端子P3へは大きく減衰されて伝達されることはない。第2不平衡入出力端子P4に入力された高周波信号は平衡入出力端子の一方P5及び他方P6が同相となるので平衡入出力端子P5,P6からは出力されず、第1不平衡入出力端子P3に流れる。
【0028】
ここで、携帯電話のアンテナ共用器として前記サーキュレータ10Aを用いる場合、WCDMAのBand8とBand12を含むシステムにおいては、送信帯698〜915MHz、受信帯728〜960MHzとなる。
【0029】
次に、前記アイソレータ10Aの諸特性を図5図6図7を参照して説明する。ここで使用したアイソレータ10Aは、以下の構成からなる。フェライト20のサイズは、1.7×0.5mm角で厚みが0.2mmである。第1及び第2中心電極L1,L2はともに約50μm幅である。第1容量素子C1は6.2pF、第2容量素子C2は5.2pFである。平衡入出力インピーダンスは50Ω、不平衡入出力インピーダンスは50Ωである。
【0030】
前述のように、第1不平衡入出力端子P3を送信側に接続し、平衡入出力端子P5,P6をアンテナANTに接続し、第2不平衡入出力端子P4を受信側に接続した場合、P3からP5,P6への挿入損失特性を図5に示し、P5,P6からP4への挿入損失特性を図6に示し、P3からP4へのアイソレーション特性を図7に示す。698〜915MHzでの送信信号の挿入損失は、図5から明らかなように、1.7dBである。746〜960MHzでの受信信号の挿入損失は、図6から明らかなように、1.6dBである。698〜960MHzでの送信信号の受信側へのアイソレーションは、図7から明らかなように、21.0dBであり、アイソレーションが20dB以上の比帯域幅は30%以上である。
【0031】
また、第1及び第2中心電極L1,L2は、いずれもグランドに接続されているため、回路基板40に実装された際に浮遊容量の発生が極力小さくなる。第1中心電極L1のインダクタンス成分と第1容量素子C1のキャパシタンス成分とで主に送信信号の周波数が決まる。第2中心電極L2のインダクタンス成分と第2容量素子C2のキャパシタンス成分とで主に受信信号の周波数が決まる。
【0032】
(第2実施例、図8図13参照)
第2実施例であるサーキュレータ10Bは図8に示す集中定数型の等価回路からなる。即ち、第1中心電極L1及び第2中心電極L2が磁気結合しており、第1中心電極L1の一端P1は第1不平衡入出力端子P3に接続されるとともに平衡入出力端子の一方P5に接続されている。第2中心電極L2の一端P2は第1中心電極L1の他端に接続されるとともに平衡入出力端子の他方P6及び第2不平衡入出力端子P4に接続され、第2中心電極L2の他端はグランドに接続されている。さらに、平衡入出力端子P5,P6の間に第1中心電極L1と並列に第1容量素子C1が接続され、第2中心電極L2の一端P2は第2容量素子C2を介してグランドに接続されている。
【0033】
前記サーキュレータ10Bは、具体的には、図9及び図10に示すように、一対の永久磁石30よって直流磁界が印加されるフェライト20の表裏面に、互いに絶縁状態で交差した第1中心電極L1及び第2中心電極L2が配置されている。フェライト20は一対の永久磁石30に挟着保持され、容量素子C1,C2とともに回路基板40上に実装される。
【0034】
第1中心電極L1は、一端P1を有する電極32aが上端からフェライト20の裏面に沿って延在して電極32bの下端に接続され、該電極32bの上端からフェライト20の裏面側に回り込んで電極32cの下端に接続されている。第2中心電極L2は、電極32cの下端から始まり、該電極32cの上端からフェライト20の裏面側に回り込んで電極32dの下端に接続され、該電極32dの上端からフェライト20の裏面側に回り込んで電極32eの下端に接続され、該電極32eの上端からフェライト20の裏面側に回り込んで電極32fがグランドに接続される。
【0035】
このように、第1中心電極L1はフェライト20に2ターン巻回されており、第2中心電極L2は3ターン巻回されている。従って、第1中心電極L1よりも第2中心電極L2のインダクタンスが大きく形成されている。
【0036】
回路基板40はその上面に導体41,42,43が形成されている。第1中心電極L1の一端P1は導体41に接続され、該導体41の一端が第1不平衡入出力端子P3として機能するとともに、他端が平衡入出力端子の一方P5として機能する。第1及び第2中心電極L1,L2の他端(電極32cの下端)は導体42に接続され、該導体42の一端が第2不平衡入出力端子P4として機能するとともに、他端が平衡入出力端子の他方P6として機能する。また、第1容量素子C1は導体41,42間に接続され、第2容量素子C2は導体42,43間に接続される。
【0037】
以上の構成からなるサーキュレータ10Bにおいて、第1不平衡入出力端子P3はアンテナANTに接続され、平衡入出力端子P5,P6は受信側に接続され、第2不平衡入出力端子P4は送信側に接続される。
【0038】
第1不平衡入出力端子P3に入力された受信信号は平衡入出力端子の一方P5に同相で他方P6に逆相で出力され、第2不平衡入出力端子P4へは大きく減衰されて伝達されることはない。第2不平衡入出力端子P4に入力された送信信号は平衡入出力端子の一方P5及び他方P6が同相となるので平衡入出力端子P5,P6からは出力されず、第1不平衡入出力端子P3からアンテナANTに出力される。平衡入出力端子P5,P6に入力された高周波信号は第2不平衡入出力端子から出力され、第1不平衡入出力端子へは大きく減衰されて伝達されることはない。
【0039】
ここで、前記第1実施例で説明した通信システムの携帯電話のアンテナ共用器として前記サーキュレータ10Bを用いる場合の諸特性を図11図12図13を参照して説明する。ここで使用したアイソレータ10Bは、以下の構成からなる。フェライト20のサイズは、1.7×0.5mm角で厚みが0.2mmである。第1及び第2中心電極L1,L2はともに約50μm幅である。第1容量素子C1は5.3pF、第2容量素子C2は3.4pFである。平衡入出力インピーダンスは50Ω、不平衡入出力インピーダンスは50Ωである。
【0040】
前述のように、第1不平衡入出力端子P3をアンテナANTに接続し、平衡入出力端子P5,P6を受信側に接続し、第2不平衡入出力端子P4を送信側に接続した場合、P4からP3への挿入損失特性を図11に示し、P3からP5,P6への挿入損失特性を図12に示し、P4からP5,P6へのアイソレーション特性を図13に示す。698〜915MHzでの送信信号の挿入損失は、図11から明らかなように、1.1dBである。728〜960MHzでの受信信号の挿入損失は、図12から明らかなように、1.8dBである。698〜960MHzでの送信信号の受信側へのアイソレーションは、図13から明らかなように、15.9dBであり、アイソレーションが15dB以上の比帯域幅は30%以上である。
【0041】
また、第2中心電極L2はグランドに接続されているため、回路基板40に実装された際に浮遊容量の発生が極力小さくなる。第1中心電極L1のインダクタンス成分と第1容量素子C1のキャパシタンス成分とで主に受信信号の周波数が決まる。第2中心電極L2のインダクタンス成分と第2容量素子C2のキャパシタンス成分とで主に送信信号の周波数が決まる。通常、送信側からアンテナANTへの挿入損失がアンテナANTから受信側への挿入損失よりも重視されるが、本第2実施例のごとく、第2中心電極L2のインダクタンスを第1中心電極L1よりも大きくすることで、送信側からアンテナANTへの挿入損失をアンテナANTから受信側よりも小さくできる。さらに、受信側を平衡出力としているため、受信帯域でのコモンモードノイズを低減できる。
【0042】
(第3実施例、図14図19参照)
第3実施例であるサーキュレータ10Cは図14に示す集中定数型の等価回路からなる。この等価回路及び基本的な構成は前記第2実施例と同様である。但し、第1及び第2中心電極L1,L2の構成(インダクタンス比)が異なっており、かつ、第2実施例とは永久磁石30によって印加される磁場の方向を逆向きとしている。
【0043】
第1中心電極L1は、一端P1を有する電極33aが上端からフェライト20の裏面に沿って延在して電極33bの下端に接続され、該電極33bの上端からフェライト20の裏面側に回り込んで電極33cの下端に接続され、フェライト20の裏面側に回り込んで電極33dの下端に接続されている。第2中心電極L2は、電極33dの下端から始まり、該電極33dの上端からフェライト20の裏面側に回り込んで電極33eの下端に接続され、該電極33eの上端からフェライト20の裏面側に回り込んで電極33fがグランドに接続される。
【0044】
このように、第1中心電極L1はフェライト20に3ターン巻回されており、第2中心電極L2は2ターン巻回されている。従って、第2中心電極L2よりも第1中心電極L1のインダクタンスが大きく形成されている。
【0045】
フェライト20及び容量素子C1,C2が回路基板40上に実装される形態は前記第2実施例で説明したとおりである。
【0046】
以上の構成からなるサーキュレータ10Cにおいて、第1不平衡入出力端子P3はアンテナANTに接続され、平衡入出力端子P5,P6は送信側に接続され、第2不平衡入出力端子P4は受信側に接続される。
【0047】
第1不平衡入出力端子P3に入力された受信信号は平衡入出力端子の一方P5及び他方P6が同相となるので平衡入出力端子P5,P6からは出力されず、第2不平衡入出力端子P4に出力される。平衡入出力端子P5,P6に入力された送信信号は第1不平衡入出力端子P3からアンテナANTに出力され、第2不平衡入出力端子P4には大きく減衰されて伝達されることはない。第2不平衡入出力端子に入力された高周波信号は平衡入出力端子の一方に同相で他方に逆相で出力され、第1不平衡入出力端子P3へは大きく減衰されて伝達されることはない。
【0048】
ここで、前記第1実施例で説明した通信システムの携帯電話のアンテナ共用器として前記サーキュレータ10Cを用いる場合の諸特性を図17図18図19を参照して説明する。ここで使用したアイソレータは、以下の構成からなる。フェライト20のサイズは、1.7×0.5mm角で厚みが0.2mmである。第1及び第2中心電極L1,L2はともに約50μm幅である。第1容量素子C1は3.6pF、第2容量素子C2は5.7pFである。平衡入出力インピーダンスは50Ω、不平衡入出力インピーダンスは50Ωである。
【0049】
前述のように、第1不平衡入出力端子P3をアンテナANTに接続し、平衡入出力端子P5,P6を送信側に接続し、第2不平衡入出力端子P4を受信側に接続した場合、P5、P6からP3への挿入損失特性を図17に示し、P3からP4への挿入損失特性を図18に示し、P5,P6からP4へのアイソレーション特性を図19に示す。698〜915MHzでの送信信号の挿入損失は、図17から明らかなように、1.0dBである。746〜960MHzでの受信信号の挿入損失は、図18から明らかなように、1.9dBである。698〜960MHzでの送信信号の受信側へのアイソレーションは、図19から明らかなように、17.8dBであり、アイソレーションが15dB以上の比帯域幅は30%以上である。
【0050】
また、第2中心電極L2はグランドに接続されているため、回路基板40に実装された際に浮遊容量の発生が極力小さくなる。第1中心電極L1のインダクタンス成分と第1容量素子C1のキャパシタンス成分とで主に送信信号の周波数が決まる。第2中心電極L2のインダクタンス成分と第2容量素子C2のキャパシタンス成分とで主に受信信号の周波数が決まる。通常、送信側からアンテナANTへの挿入損失がアンテナANTから受信側への挿入損失よりも重視されるが、本第3実施例のごとく、第1中心電極L1のインダクタンスを第2中心電極L2よりも大きくすることで、送信側からアンテナANTへの挿入損失をアンテナANTから受信側よりも小さくできる。さらに、送信側を平衡入力としているため、送信帯域でのコモンモードノイズを低減できる。
【0051】
なお、本発明に係る非可逆回路素子及び送受信装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【0052】
特に、フェライトや永久磁石の構成、形状などの細部は任意である。また、容量素子は回路基板に改造されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明は、非可逆回路素子及び送受信装置に有用であり、特に、アイソレーション特性が良好で比帯域幅が広く、特性が安定している点で優れている。
【符号の説明】
【0054】
10,10A,10B,10C…サーキュレータ
20…フェライト
30…永久磁石
L1,L2…中心電極
C1,C2…容量素子
ANT…アンテナ
Tx…送信側端子
Rx…受信側端子
P3…第1不平衡入出力端子
P4…第2不平衡入出力端子
P5,P6…平衡入出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19