(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790793
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】空冷凝縮器およびそれを備えた発電装置
(51)【国際特許分類】
F28B 11/00 20060101AFI20150917BHJP
F28B 1/06 20060101ALI20150917BHJP
F01K 9/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
F28B11/00
F28B1/06
F01K9/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-555200(P2013-555200)
(86)(22)【出願日】2013年1月23日
(86)【国際出願番号】JP2013000308
(87)【国際公開番号】WO2013111577
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年5月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-10698(P2012-10698)
(32)【優先日】2012年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150441
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦幸
(72)【発明者】
【氏名】大澤 勇
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−139235(JP,A)
【文献】
特開平11−132674(JP,A)
【文献】
特開昭63−201492(JP,A)
【文献】
特開2005−140013(JP,A)
【文献】
特開2007−006683(JP,A)
【文献】
特開2003−090687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28B 11/00
F01K 9/00
F28B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁を介して間接的に作動媒体を空冷する熱交換器と、前記熱交換器に冷却空気を供給する第1ファンとを備える冷却装置と、
前記熱交換器の出口側の前記作動媒体の圧力値を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段で得られた圧力値が大気圧以上に設定された目標値に近づくように、前記冷却装置を制御する制御部とを備える空冷凝縮器であって、
前記制御部は、前記圧力検出手段の圧力値が前記目標値未満の場合に前記第1ファンの回転数を減少させ、前記圧力検出手段の圧力値が前記目標値より高い場合に前記第1ファンの回転数を増加させ、
前記冷却装置は、複数の熱交換器と、各熱交換器の入口側に前記作動媒体をそれぞれ分配させる分岐配管と、前記各熱交換器の出口側に前記作動媒体を集約させる集約配管と、前記各熱交換器の入口側または出口側に設けた弁と、を備え、
前記制御部は、さらに、前記第1ファンの回転数が上限値より高い場合に、開ける弁の数を増やし、前記第1ファンの回転数が下限値未満の場合に、開ける弁の数を減らす空冷凝縮器。
【請求項4】
前記冷却装置は、第2のファンをさらに備え、
前記弁がすべて開いており、かつ前記第1ファン回転数が上限値より高い場合に第2ファンを作動させ、前記第1ファンの回転数が下限値未満の場合に前記第2ファンを停止する請求項1に記載の空冷凝縮器。
【請求項5】
前記第2ファンを複数備え、
前記制御部は、複数の前記第2ファンの稼働台数の制御を行なうことを特徴とする請求項4に記載の空冷凝縮器。
【請求項6】
前記冷却装置は、前記熱交換器の入口側または出口側のいずれかに前記作動媒体の流量を調節する流量調整弁を備え、
前記制御部は、前記圧力検出手段の圧力値が前記目標値未満の場合に前記流量調整弁の開度を減少させ、前記圧力値が前記目標値より高い場合に前記流量調整弁の開度を増加させる請求項1に記載の空冷凝縮器。
【請求項7】
前記圧力検出手段が、前記熱交換器の出口側の前記作動媒体の温度を計測する温度計と、前記温度計で計測した温度に基づいて前記熱交換器の出口側の前記作動媒体の圧力値を演算する演算部とからなる請求項1、4または5のいずれか一項に記載の空冷凝縮器。
【請求項8】
タービンから供給される作動媒体を凝縮する請求項1、4、5または6のいずれか一項に記載の空冷凝縮器と、
熱源流体の熱で前記作動流体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から供給される前記作動媒体の蒸気で回転するタービンと、
前記タービンに接続された発電機と、
前記空冷凝縮器出口から前記蒸発器入口へ前記作動媒体を送るポンプとを備える発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉循環流路を通流する作動媒体を空気で冷却する空冷凝縮器およびそれを備えた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に水を用い、熱源で水を加熱して生じた蒸気でタービンを回し、タービンに連結された発電機で発電を行い、タービンから排出された低温蒸気を凝縮器で液化し、液化した水を前記熱源で気化するサイクルを備えた発電装置が知られている。従来の発電装置では、媒体である水を外気と接触させ、水の気化熱による冷却効果で水自身を冷やしていた。
【0003】
例えば、特許文献1は、復水器と、空気抽出器と、復水器冷却器と、復水器冷却器に冷却水を送る循環水ポンプと、循環水ポンプ用電動機と、復水器冷却器の冷却能力を調整するべく循環水ポンプの回転数を制御する制御手段とを有する復水器システムを開示している。
【0004】
また、特許文献2は、蒸気タービンより排気される蒸気を凝縮器内に形成された風洞に導き、凝縮器に設けられた空気入口部より風洞に導入された空気と蒸気とを熱交換して蒸気を凝縮させる空冷凝縮器において、凝縮器の空気入口部に設けられた吸気冷却器と、この吸気冷却器に冷却配管を介して接続され冷媒を循環させて空気入口部より風洞に流入する空気を冷却する放熱器と、吸気冷却器より放熱器に戻る冷媒を凝縮させる圧縮機とを備える空冷凝縮器を開示している。
【0005】
また、特許文献3は、エンジンの冷媒が過熱されて発生した蒸気を介して動力回収を行う動力回収機と、当該動力回収機を通過した後の蒸気を液体の冷媒に戻す凝縮器と、液体となった冷媒を前記エンジンに供給する供給ポンプと、前記冷媒の循環系内の空気排出手段とを備え、前記空気排出手段は、浸入空気検出手段と、当該浸入空気検出手段の検出結果に基づいて作動する凝縮器作動抑制手段と、前記凝縮器内が昇圧したときに、凝縮器内部の空気が冷媒とともに排出されるリザーブタンクとを備え、前記浸入空気検出手段は、圧力センサと、水温センサと、水温に対応した飽和蒸気圧と前記圧力センサによって測定された系内の圧力とを比較して空気の浸入を判断する演算手段とを含む廃熱回収装置を開示している。
【0006】
また、特許文献4は、ごみ焼却炉等の発電設備に設置される蒸気凝縮器に、複数台の蒸気凝縮器ファンを回転させて該蒸気を冷却するようにした蒸気凝縮器ファン制御システムにおいて、前記蒸気凝縮器ファンの運転方式として、該ファンのうちの何台かを定格回転数運転を行う固定ファン台数制御方式と、前記ファンの残りの台数を定格容量より小さい容量で運転するインバータによる回転数制御方式を組み合わせるものであって、この両制御方式は前記蒸気凝縮器の出口温度に応じて使い分けるようにしたことを特徴とする蒸気凝縮器ファン制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−343211号公報
【特許文献2】特開2007−107814号公報
【特許文献3】特開2009−97391号公報
【特許文献4】特開平11−337272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のような水と外気を直接接触させて冷却する方式では、水が蒸発するため補給水が必要であり、さらに水の濃縮によりスケールが発生するため、水質管理をしなければならない問題点があった。
【0009】
この問題点を克服する冷却方式として、特許文献2に記載のような空冷方式の冷却器が開発されている。しかし、特許文献2のように、吸気冷却器で冷却された空気によって発電用作動媒体である蒸気を冷却する方式では、冷却器の媒体ガスを冷却する冷却器において、外気温度が、大気圧における作動媒体の沸点より低下すると作動媒体ガス流路が大気に比べて負圧になるために、作動媒体流路の配管接続部分から空気が混入するという問題があった。
【0010】
また空気が作動媒体流路内に侵入した場合、空気が不凝縮ガスとして存在することで作動媒体流路内の圧力が上がり、タービンの背圧が上がるとタービンの出力が低下してしまう。
【0011】
また、ファンの回転数を固定している場合、ファンの回転数は、夏季の最高気温でも作動媒体を凝縮できるように回転数を設定する。そのため、冬季には、作動媒体を過剰に冷却することになり、空気が作動媒体流路内に侵入しタービン背圧が上昇し結果的に発電所の投入エネルギーに対する発電出力が低くなってしまう問題点があった。
【0012】
また、媒体が密閉系の凝縮器では、侵入空気を除去するために侵入空気除去装置を設置し、運転管理を行なう必要が生じると予想されるが、侵入した空気を除去する際に作動媒体も漏れるため、作動媒体を補充しなければならなくなるという問題点もあった。
【0013】
特許文献3のような排熱回収装置では、冷媒に空気が混入したことを検知してから、冷媒から空気を除去するので、冷媒に空気が蓄積する間には発電出力低下しまう。
特許文献4は、固定ファン台数制御方式や回転数制御方式について記載されているが、作動媒体に空気が混入することを防止することに関する記載は無く、課題も異なる。
【0014】
上記の問題点を考慮し、本発明は、作動媒体に空気が混入することを抑制できる空気凝縮器、およびそれを用いた発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の空冷凝縮器は、壁を介して間接的に作動媒体を空冷する熱交換器と、前記熱交換器に冷却空気を供給する第1ファンとを備える冷却装置と、前記熱交換器の出口側の前記作動媒体の圧力値を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段で得られた圧力値が大気圧以上に設定された目標値に近づくように、前記冷却装置を制御する制御部とを備える。このような構成によれば、凝縮器内が大気圧より正圧に維持できるので、作動媒体へ空気が混入することを抑制できる。
【0016】
また、前記制御部は、前記圧力検出手段の圧力値が前記目標値未満の場合に前記第1ファンの回転数を減少させ、前記圧力検出手段の圧力値が前記目標値より高い場合に前記第1ファンの回転数を増加させる。このような構成によれば、ファンの回転数を制御することで、冷却能力を制御でき、作動媒体が過剰に冷却されることを防止できる。
【0017】
またさらに、前記冷却装置は、複数の熱交換器と、各熱交換器の入口側に前記作動媒体をそれぞれ分配させる分岐配管と、前記各熱交換器の出口側に前記作動媒体を集約させる集約配管と、前記各熱交換器の入口側または出口側に設けた弁と、を備え、前記制御部は、前記第1ファンの回転数が上限値より高い場合に、開ける弁の数を増やし、前記第1ファンの回転数が下限値未満の場合に、開ける弁の数を減らすこととしてもよい。
【0018】
このような構成によれば、凝縮器に流入する熱量の変化に応じて、作動媒体を各熱交換器へ分配する弁を開閉制御することで、空冷凝縮器全体の冷却能力を制御できる。
【0019】
また、本発明の別の態様としては、前記冷却装置は、第2のファンをさらに備え、前記弁がすべて開いており、かつ前記第1ファン回転数が上限値より高い場合に第2ファンを作動させ、前記第1ファンの回転数が下限値未満の場合に前記第2ファンを停止する。
【0020】
熱交換器とファンのセットで構成される複数の冷却装置を台数制御していた従来の構成に比べ、本発明の上記態様の構成によれば、弁の開閉制御を優先して行い、さらに冷却能力が必要な場合に第2ファンの台数制御をするので、第2ファンが作動する機会を減らすことができ、ファンの消費電力を抑えることができる。
【0021】
さらには、前記第2ファンを複数備え、前記制御部は、複数の前記第2ファンの稼働台数の制御を行なう態様としても良い。
【0022】
また本発明の別の態様としては、上記空冷凝縮器において、前記冷却装置が前記熱交換器の入口側または出口側のいずれかに前記作動媒体の流量を調節する流量調整弁を備え、前記制御部は、前記圧力検出手段の圧力値が前記目標値未満の場合に前記流量調整弁の開度を減少させ、前記圧力値が前記目標値より高い場合に前記流量調整弁の開度を増加させるものとしてもよい。
【0023】
前記圧力検出手段は圧力センサの他、前記熱交換器の出口側の前記作動媒体の温度を計測する温度計と、前記温度計で計測した温度に基づいて前記熱交換器の出口側の前記作動媒体の圧力値を演算する演算部とから構成しても良い。
【0024】
また、本発明の発電装置は、タービンから供給される作動媒体を凝縮する前記空冷凝縮器と、熱源流体の熱で前記作動流体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から供給される前記作動媒体の蒸気で回転するタービンと、前記タービンに接続された発電機と、前記空冷凝縮器出口から前記蒸発器入口へ前記作動媒体を送るポンプとを備えるものとする。
【0025】
このような構成によれば、作動媒体へ空気が混入することを防止でき、発電効率を向上できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の下記実施例によれば、凝縮器内が大気圧よりも負圧になることを抑制できるので、作動流体へ空気が混入することを防止できる。また、凝縮器への流入熱量が増えたときに優先して弁を開き、すべての弁が開いた後にファンの作動台数を増やすことにより、ファンの消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施例に係る凝縮器が組み込まれた発電装置の概略構成図である。
【
図3】凝縮器3の弁とファンの作動組合せを示した図である。
【
図6】熱交換器の数を1〜6とした場合の凝縮器全体の交換熱量と外気温度との関係を例示した図である。
【
図7】外気温度とファンの風量(100%、20%)を変更した際の熱交換量を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る発電装置の実施例を説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例に係る凝縮器が組み込まれた発電装置の概略構成図である。熱源流体入口1から流入した熱源流体は、蒸発器3、予熱器8を通って熱を回収され、熱源流体出口2から外部へ排出される。作動媒体は、循環ポンプ7、予熱器8、蒸発器3、タービン4および凝縮器6を順に配管で接続した環状の流路を通流する。
【0029】
予熱器8は、蒸発器3から排出された熱源流体と凝縮器6から排出された液状の作動媒体とを熱交換させて、作動媒体を加熱する。なお、予熱器8は必須ではないが、予熱器8を備える構成にすると、熱源流体から回収できる熱量を増加できる。
【0030】
蒸発器3は、熱源流体入口1から来る熱源流体と予熱器8で予熱された作動媒体とを熱交換させて作動媒体を加熱し、作動媒体をガス化している。蒸発器3で気化されたガス状の作動媒体は、タービン4へ供給される。
【0031】
タービン4は、ガス状の作動媒体の圧力で回転する。タービン4の回転軸は、発電機5に連結されており、タービン5の回転により発電する。タービン5の回転数を計測する回転数計12が設置されている。発電機5の出力は、電力変換器13に入力され、制御装置10の指令に基づいて所定の電圧の直流電力、または所定の電圧および周波数の交流電力へ変換され、外部へ出力される。タービン4から排出された作動媒体は、凝縮器6へ導入される。
【0032】
凝縮器6は、空冷式の熱交換器であり、外気とガス状の作動媒体の熱交換が行われ、作動媒体は凝縮して液状となる。凝縮器6の具体的構造としては、例えば、放熱配管の外周にフィンが設けられているフィンチューブ型の熱交換器が望ましい。凝縮器6の詳細な構造や動作は後で述べる。
【0033】
圧力計9は、凝縮器6と循環ポンプ7との間の配管に備えられており、圧力系9の信号線が制御装置10へ接続されている。
温度計11は、凝縮器出口の作動媒体の温度を測定する。温度計11の信号配線は、制御装置10に接続されている。
【0034】
凝縮器6の周辺をより詳細に描いた図を
図2に示す。タービン4から出たガス状の作動媒体は、分岐配管70で分岐され、弁60a、60b、60c、60d、60e、60f、入口側マニホールド61a、61b、61c、61d、61e、61f、放熱配管(熱交換器)62a、62b、62c、62d、62e、62f、出口側マニホールド63a、63b、63c、63d、63e、63fをそれぞれ通流する。前記ガス状の作動媒体は、放熱配管62a、62b、62c、62d、62e、62fを通流する際に、放熱配管の管壁を介して外気で冷却される。第1ファン64aは、放熱配管62a、62bに外気を送風し、放熱配管62a、62bの冷却を促進させる。第2ファン64cは、放熱配管62c、62dに外気を送風し、放熱配管62c、62dの冷却を促進させる。第2ファン64eは、放熱配管62e、62fに外気を送風し、放熱配管62e、62fの冷却を促進させる。出口側マニホールド63a、63b、63c、63d、63e、63fから出た液化された作動媒体は、集約配管71で集約され、循環ポンプ7へ送られる。各ファンの空気流量を制御するために、ルーバーを設置してもよい。
【0035】
循環ポンプ7は、制御装置10の信号に基づいて、凝縮器6から予熱器8へ作動媒体を送液する。
制御装置10は、弁60a、60b、60c、60d、60e、60f、圧力計9、温度計11の各信号配線や、第1ファン64a、第2ファン64c、64eの各動力配線と接続されている。そして、制御装置10は、タービン4へ送る作動媒体流量の指令値に基づいて、循環ポンプ7が予熱器8へ液状の作動媒体を送る流量を制御している。
【0036】
次に、凝縮器6と外気温の関係に関して説明する。
図6は、熱交換器の数を1〜6とした場合の凝縮器全体の交換熱量と外気温度との関係を例示した図である。外気温15℃におけるファンの風量100%での凝縮器の熱交換量を1.0と規格化した。弁を6個開いた状態で外気温が−40 ℃になると凝縮器の熱交換量は2.67倍となる。
凝縮器の伝熱量は下記の式1で表される。
【0037】
Q=U×A×T
m ・・・・(式1)
Q:交換熱量(W)
U:総括伝熱係数(W/m
2・K)
A:伝熱面積(m
2)
T
m:対数平均温度差(K)
ここで、Uに大きな影響を与える空気流量が一定なのでUは変化が少ない。また面積は一定であるから、Qはほぼ対数平均温度差に比例する。この関係から外気温の変化に対応した熱交換量を計算すると
図6のようになる。作動媒体を冷やしすぎると、作動媒体の飽和蒸気圧が大気圧を下回り、負圧となることで凝縮器内に大気を吸込む恐れがある。そこで、開く弁の数を3つとすると凝縮器の熱交換量は外気温が−40℃でも0.96倍であった。従って、作動媒体の冷やしすぎを防止することによって、作動媒体の飽和蒸気圧が大気圧を下回ることを防止できる。
【0038】
図7は、外気温度とファンの風量(100%、20%)を変更した際の熱交換量を例示した図である。外気温15 ℃におけるファンの風量100%での凝縮器の熱交換量を1.0と規格化した。外気温が−40℃のときは、風量を20%に減らしても凝縮器の熱交換量は0.8倍であり、1を超えることを防止できる。従って、作動媒体の冷やしすぎを防止することによって、作動媒体の飽和蒸気圧が大気圧を下回ることを防止できる。
【0039】
次に装置の動作について説明する。
図3は、凝縮器6の弁とファンの作動組合せを示した図である。
図4は、作動シーケンス図である。
本発明の実施例の動作の要点を
図3で説明する。流入熱量が多くなる程、まず、弁60a、60b、60c、60d、60e、60fを順次開けて、これらの弁に接続した放熱配管62a、62b、62c、62d、62e、62fによる冷却能力を増加させる。さらに流入熱量が増加する場合は、第2ファン64c、64eを順次作動させて冷却能力を増加させる。これらの過程すべてにおいて、第1ファン64aが回転数制御されており、第1ファン64aは、凝縮器出口の圧力計9の値が目標値に近づくように制御される。
【0040】
次に、より詳細な動作を
図4で説明する。制御装置10の制御手順は、大きく3つのステップを備えている。
ステップS1では、まず
図2の弁60aを開き、流入熱量に関わらず圧力計9で得られた圧力値が目標値に近づくように第1ファン64aの回転数制御を行っている。具体的には、制御部10は、圧力計9の圧力値が目標値未満の場合に第1ファン64aの回転数を減少させ、圧力計9の圧力値が目標値より高い場合に第1ファン64aの回転数を増加させる。この回転数制御は、PID制御で行うことが望ましい。
この目標値を大気圧以上に設定すれば、凝縮器6内に空気が混入して、発電効率が低下することを抑制できるが、目標値が高すぎると凝縮器6の冷却能力が低下する。
そこで、凝縮器6の外に設けられた気圧計(不図示)の計測値を制御装置10に入力し、この計測値の0%〜50%増しの値を目標値として制御することが好ましい。このように目標値を設定すれば、凝縮器6内の圧力を大気圧以上に維持しながら、発電出力の低下を抑制することができる。
またさらに好ましくは、目標値を気圧計の計測値の20%増しとする。このように設定すれば、高温熱源である熱水や低温熱源である外気温度の変動時に系内が負圧になることを回避できる。
【0041】
ステップ1と並行して、凝縮器6へ流入する熱量が少ないステップS2では、制御装置10は、弁60a以外の弁60b、60c、60d、60e、60fの開閉制御を行う。具体的には、制御部10は、予め定めた弁の開閉の優先順位に基づいて、第1ファン64aの回転数が上限値より高い場合に、弁60b、60c、60d、60e、60fの内、開ける弁の数を増やし、第1ファン64aの回転数が下限値未満の場合に弁60b、60c、60d、60e、60fの内、開ける弁の数を減らす。弁60b、60c、60d、60e、60fがすべて開いているときは、弁60b、60c、60d、60e、60fの開閉制御を終了して、各弁が開いた状態でステップS3に移行する。
【0042】
ステップ2の後のステップS3では、制御装置10は、第2ファン64c、64eの作動/停止を制御して、作動する第2ファンの台数を制御する。具体的には、制御部10は、予め定めた第2ファン64c、64eの作動の優先順位に基づいて、弁64a、60b、60c、60d、60e、60fがすべて開ておりかつ前記第1ファン64aの回転数が前記上限値より高い場合に、前記第2ファン64c、64eの内の少なくとも1つを作動させ、前記第1ファン64aの回転数が下限値未満の場合に、前記第2ファン64c、64eの内の少なくとも1つを停止する。第2ファン64c、64eがすべて停止し、かつ、第1ファン64aの回転数が下限値未満になると、ステップS3を終了して、ステップ2に戻る。
【0043】
消費電力低減の観点における上記の実施例の要点は、壁を介して間接的に作動媒体を空冷する複数の熱交換器と、各前記熱交換器にそれぞれ備えた弁と、前記熱交換器の少なくとも1つを冷却する複数のファンと、前記熱交換器の出口側の前記作動媒体の圧力値を測定するセンサと、前記センサで得られた圧力値が目標値に近づくように、2つ以上の前記ファンを作動させる前に複数の前記弁の開閉制御をする制御部とを備える点にある。このような構成によれば、ファンを作動させる前に弁を優先的に開閉制御するので、2台目以降のファンが作動する機会を減らすことができる。その結果、ファンの消費電力を減らすことができる。
【0044】
次に、本装置のデータフローを
図5に示した。制御装置10は、圧力計9の計測値と目標値に基づいて、ステップS1の第1ファン64aの回転数制御を行う。
また、制御装置10は、第1ファン64aの実測回転数または回転数の指令値をモニタリングしており、これらの値に基づいて、ステップ2の弁60a、60b、60c、60d、60e、60fの開閉制御を行う。
【0045】
制御装置10は、第1ファン64aの実測回転数または回転数の指令値をモニタリングしており、これらの回転数のいずれかが上限値を超えたら弁を開き、これらの回転数のいずれかが下限値を未満になったら弁を閉じる制御をしている。
【0046】
制御装置10は、弁の開いている数をモニタリングしている。弁がすべて開いた状態になると第2ファンの台数制御を開始する。制御装置10は、第1ファン64aの実測回転数または回転数の指令値をモニタリングしており、これらの回転数のいずれかが上限値を超えたら第2ファンの少なくとも1つを作動させ、これらの回転数のいずれかが下限値を未満になったら第2ファンの少なくとも1つを停止させる制御をしている。流入熱量が減少して、第2ファン64c、64eがすべて停止しており、かつ、第1ファン64aの回転数が下限値未満になると、ステップS3を終了して、ステップ2の弁の開閉制御に戻る。
(実施例2)
上記実施例1の変形例として、次の構成としても良い。上記実施例1の前記弁60a、60b、60c、60d、60e、60fの開閉制御に関して、各弁を流量調整弁とし、前記熱交換器を通流する前記作動媒体の流量を制御してもよい。その場合は、流入熱量の増加に応じて各弁に優先順位を定め、制御部10は、優先順位が高い弁の開度が100%に達したら、次の優先順位の弁を開くように制御を行う。さらに、制御部10は、圧力計9の圧力値が前記目標値未満の場合に前記流量調整弁の開度を減少させ、圧力計9の圧力値が前記目標値より高い場合に前記流量調整弁の開度を増加させる。
(実施例3)
上記実施例1または実施例2の変形例として、次の構成としても良い。圧力計9で凝縮器出口の圧力を計測する代わりに、前記熱交換器の出口側の前記作動媒体の温度を計測する温度計11を用い、前記制御部10が、前記温度計11で計測した温度に基づいて前記熱交換器の出口側の前記作動媒体の圧力値を演算し、上記実施例1または実施例2と同様の制御を行うこととしても良い。具体的には、例えば、nペンタンの場合、下記の式2を用いて、温度(T1)における飽和蒸気圧値(Pst)を演算する。用いる作動媒体が違う場合は、その作動媒体の特性に合わせて飽和蒸気圧値(Pst)を求める式を適宜変更する。
【0047】
Pst=0.0003(T1)
3+0.0159(T1)
2+1.1844(T1)+24.316 ・・・(式2)
以上のように、本発明の実施例によれば、また、目標値を大気圧以上に設定にすれば、凝縮器内が大気圧よりも負圧になることを抑制できるので、作動流体へ空気が混入することを抑制できる。
【符号の説明】
【0048】
1:熱源流体入口
2:熱源流体出口
3:蒸発器
4:タービン
5:発電機
6:空冷凝縮器
7:循環ポンプ
8:予熱器
9:圧力計
10:制御部
11:温度計
12:回転数計
13:電力変換器
60a、60b、60c、60d、60e、60f:弁
61a、61b、61c、61d、61e、61f:入口側マニホールド
62a、62b、62c、62d、62e、62f:放熱配管
63a、63b、63c、63d、63e、63f:出口側マニホールド
64a:第1ファン
64c、64e:第2ファン
70:分岐配管
71:集約配管