特許第5790813号(P5790813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5790813交流電圧の周期及び位相検出装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790813
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】交流電圧の周期及び位相検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 23/06 20060101AFI20150917BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G01R23/06 E
   H02M7/12 A
   H02M7/12 Q
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-40283(P2014-40283)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-165751(P2015-165751A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝英
(72)【発明者】
【氏名】角田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】小池 秀児
(72)【発明者】
【氏名】石原 義昭
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−318072(JP,A)
【文献】 特開2006−025550(JP,A)
【文献】 特開平06−062593(JP,A)
【文献】 特開2006−353057(JP,A)
【文献】 特開平09−261017(JP,A)
【文献】 特開2006−024537(JP,A)
【文献】 特開2013−068803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 23/02−23/15
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用の充電器に設けられる、商用配線電力網から供給される系統電源の交流電圧の周期及び位相検出装置であって、
前記交流電圧を検知する交流電圧センサと、
前記交流電圧センサで検知された交流電圧が、正電圧閾値を越えるタイミング又は負電圧閾値を下回るタイミングを検出して前記交流電圧の1周期を検出する1周期検出処理手段と、
前記1周期検出処理手段で検出される1周期を基に動的に時間閾値を設定し、前記交流電圧センサで検知される交流電圧の一つのゼロクロスを検出した後、前記時間閾値を越えた後に、次のゼロクロスを検出し、該ゼロクロスの検出を基に、前記交流電圧の半周期並びに0度及び180度の位相を検出するゼロクロス検出処理手段と、
を備えた交流電圧の周期及び位相検出装置。
【請求項2】
前記ゼロクロス検出処理手段は、前記交流電圧センサで検知される交流電圧が前回0ボルトを跨いでから今回0ボルトを跨ぐまでの継続時間が、前記1周期を基に動的に設定した時間閾値以上継続した後に、前記交流電圧の半周期毎のゼロクロスを検出する手段、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の交流電圧の周期及び位相検出装置。
【請求項3】
前記ゼロクロス検出処理手段は、前記交流電圧センサで検知される交流電圧が0ボルトを上回る正電圧継続時間が、前記1周期を基に動的に設定した正側時間閾値以上継続した後、又は、0ボルトを下回る負電圧継続時間が、前記1周期を基に動的に設定した負側時間閾値以上継続した後に、前記交流電圧の半周期毎のゼロクロスを検出する手段、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の交流電圧の周期及び位相検出装置。
【請求項4】
前記ゼロクロス検出処理手段は、前記交流電圧の半周期の期間が所定の異常時間閾値以上であり、且つ、前記正電圧継続時間が前記正側時間閾値以下又は前記負電圧継続時間が前記負側時間閾値以下であるか否かを判定し、該判定の結果を基に、異常ゼロクロスの発生を検出する手段、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の交流電圧の周期及び位相検出装置。
【請求項5】
商用配線電力網から供給される系統電源の交流電圧の周期及び位相検出方法であって、
車載用の充電器は、
前記交流電圧を検知する交流電圧センサで検知された交流電圧が、正電圧閾値を越えるタイミング又は負電圧閾値を下回るタイミングを検出して前記交流電圧の1周期を検出する1周期検出処理ステップと、
前記1周期検出処理ステップで検出された1周期を基に動的に時間閾値を設定し、前記交流電圧センサで検知される交流電圧の一つのゼロクロスを検出した後、前記時間閾値を越えた後に、次のゼロクロスを検出し、該ゼロクロスの検出により、前記交流電圧の半周期並びに0度及び180度の位相を検出するゼロクロス検出処理ステップと、
実行する交流電圧の周期及び位相検出方法。
【請求項6】
前記ゼロクロス検出処理ステップは、前記交流電圧センサで検知される交流電圧が前回0ボルトを跨いでから今回0ボルトを跨ぐまでの継続時間が、前記1周期を基に動的に設定した時間閾値以上継続した後に、前記交流電圧の半周期毎のゼロクロスを検出するステップ、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の交流電圧の周期及び位相検出方法。
【請求項7】
前記ゼロクロス検出処理ステップは、前記交流電圧センサで検知される交流電圧が0ボルトを上回る正電圧継続時間が、前記1周期を基に動的に設定した正側時間閾値以上継続した後、又は、0ボルトを下回る負電圧継続時間が、前記1周期を基に動的に設定した負側時間閾値以上継続し後に、前記交流電圧の半周期毎のゼロクロスを検出するステップ、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の交流電圧の周期及び位相検出方法。
【請求項8】
前記ゼロクロス検出処理ステップは、前記交流電圧の半周期の期間が所定の異常時間閾値以上であり、且つ、前記正電圧継続時間が前記正側時間閾値以下又は前記負電圧継続時間が前記負側時間閾値以下であるか否かを判定し、該判定の結果を基に、異常ゼロクロスの発生を検出するステップ、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の交流電圧の周期及び位相検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源を直流電源に変換するAC−DC変換装置等に適用される交流電圧の周期及び位相検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電圧から直流電圧を発生するAC−DC変換装置を備えた車載用の充電器等は、力率を改善するためにPFC(power factor correction)制御を行ない、交流電圧を整流回路により整流し、平滑コンデンサにより平滑して直流電圧に変換し、該直流電圧をDC−DCコンバータにより所定の直流電圧に変換して、最終的にバッテリー等に給電する。
【0003】
PFC制御では、入力される交流電圧の波形と同様の波形となるよう入力電流の波形を制御する方法、或いはマイクロコントローラ内に正弦波のマップを設けておき、入力される正弦波の交流電圧の位相に合わせて該マップに沿って電流を生成する方法が用いられる。
【0004】
正弦波のマップを使用して電流を生成する場合には、入力される交流電圧の0度及び180度の位相でマップの読出しを開始するため、入力される交流電圧の位相検出が必要となる。そのために、入力される交流電圧が0ボルトを跨ぐタイミング、即ちゼロクロスを正しく検出する必要がある。
【0005】
入力される交流電圧の周期の検出は、当該交流の電圧の実効値の演算、電流の実効値の演算、及び入力電力(平均値)を演算するために必要となる。交流電圧の実効値、交流電流の実効値及び交流電力(平均値)を基に、AC−DC変換装置の電流制御モードにおける目標電流となるよう入力電流を制御する。
【0006】
このような電流制御において、入力される交流電圧の周期性が乱れ、周期が変動する場合、既定の周期の値を用いた演算では、電圧及び電流の実効値並びに電力を正しく算出することができない。また、上位装置から指令される充電電力の指令値に対する応答性(追従性)、電圧変動に対する応答性(追従性)に高速に対応するために、上述の目標電流の更新を交流電圧の半周期(半波)毎に行なうこともある。そのため、交流電圧の0度及び180度の位相を正確に検出し、交流電圧の半周期(半波)毎の目標電流の更新タイミングを精度良く決定する必要がある。
【0007】
交流電圧の0度及び180度の位相、即ちゼロクロス点で、目標電流を更新することにより、電流が0アンペアから徐々に変化するため、滑らかな電流波形とすることができる。一方、交流電圧が0ボルト以外の電圧のとき、例えばピーク電圧付近のとき、目標電流を更新すると、ピーク電流付近の電流が変更後の電流に急激に上昇又は下降するため、大きく歪んだ電流波形となってしまう。
【0008】
交流電圧のゼロクロス検出に関して、下記の特許文献1には、ノイズ等による誤検出を防止するために、ゼロクロス検出に対するマスク期間(不感帯)を設定する構成が記載されている。特許文献1に記載のものは、図7に示すように、起動時から最初の所定期間T1に交流電圧の周波数が50Hzであるか60Hzであるかを検出し、検出した周波数を基に(1/検出周波数)/2により半周期を求める。
【0009】
特許文献1の交流電圧の周波数波の検出は、周波数測定期間T1(例えば200ms)におけるゼロクロスの回数が45以上55以下であれば50Hzとし、56以上65以下であれば60Hzとして検出する。そして、交流電圧の最大周波数変動率aから、交流電圧の半周期の許容変動幅αを、(1/検出周波数)/2×aとして算定し、マスク期間T2を、(1/検出周波数)/2−αとして設定する。
【0010】
そして、交流電圧のゼロクロスのタイミングをトリガとしてカウンタにより所定時間毎のカウントアップを開始し、該カウンタによるカウント値がマスク期間T2内の値のときに検出されたゼロクロスを、半周期の正規のゼロクロスとしては検出しないようにし、マスク期間T2経過後に検出されるゼロクロスを、半周期の正規のゼロクロスとして検出するようにしている。
【0011】
また、一定周期のパルス列に雑音パルスが混入し、或いは該パルス列のパルス周期に変動が生じ、パルス周期が所定値以下に短縮した場合、パルスインヒビットを行って、周期短縮を阻止する回路に関して下記の特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−318072号公報
【特許文献2】特公昭56−19767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1等に記載の従来のセロクロス検出方法では、最初に電源周波数を検出し、検出した電源周波数を基に算出した固定的なマスク期間を設けて、ノイズ等による誤検出を防止して交流電圧のゼロクロスの検出を行なっているが、マスク期間が固定であるため、交流電圧の周期が変動する場合、半周期の正規のゼロクロス以外のゼロクロスを誤検出する可能性がある。
【0014】
上記課題に鑑み、本発明は、変動する交流電圧の周期に対して、該交流電圧が0ボルトを跨ぐタイミング、即ちゼロクロスのタイミングを正しく検出し、該交流電圧の周期並びに0度及び180度の位相を正確に検出することが可能な交流電圧の周期及び位相検出装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るひとつの形態としての交流電圧の周期及び位相検出装置は、交流電圧を検知する交流電圧センサと、前記交流電圧センサで検知された交流電圧が、正電圧閾値を越えるタイミング又は負電圧閾値を下回るタイミングを検出して前記交流電圧の1周期を検出する1周期検出処理手段と、前記1周期検出処理手段で検出される1周期を基に動的に時間閾値を設定し、前記交流電圧センサで検知される交流電圧の一つのゼロクロスを検出した後、前記時間閾値を越えた後に、次のゼロクロスを検出し、該ゼロクロスの検出を基に、前記交流電圧の半周期並びに0度及び180度の位相を検出するゼロクロス検出処理手段と、を備えたものである。
【0016】
前記ゼロクロス検出処理手段は、前記交流電圧センサで検知される交流電圧が前回0ボルトを跨いでから今回0ボルトを跨ぐまでの継続時間が、前記1周期を基に動的に設定した時間閾値以上継続した後に、前記交流電圧の半周期毎のゼロクロスを検出する手段、を備えたものである。
【0017】
また、前記ゼロクロス検出処理手段は、前記交流電圧センサで検知される交流電圧が0ボルトを上回る正電圧継続時間が、前記1周期を基に動的に設定した正側時間閾値以上継続した後、又は、0ボルトを下回る負電圧継続時間が、前記1周期を基に動的に設定した負側時間閾値以上継続し後に、前記交流電圧の半周期毎のゼロクロスを検出する手段を備えたものである。
【0018】
また、前記ゼロクロス検出処理手段は、前記交流電圧の半周期の期間が所定の異常時間閾値以上であり、且つ、前記正電圧継続時間又は前記負電圧継続時間が前記時間閾値以下であるか否かを判定し、該判定の結果を基に、異常ゼロクロスの発生を検出する手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1周期検出処理手段で検出される1周期を基に動的にゼロクロス不感帯の時間閾値を設定することにより、交流電圧の周波数の変動に対して、正確に該交流電圧の半周期並びに0度及び180度の位相を検出することが可能となり、系統電源以外の周波数変動の大きい交流電源に対しても、正確に半周期及び位相を検出することができる。
【0020】
また、交流電圧の正電圧継続時間及び負電圧継続時間がそれぞれに所定の時間閾値を越えた後に、ゼロクロスの検出を行なうことにより、交流電圧センサのオフセット誤差や交流電圧波形の正負のピークのアンバランスがあるときの見かけ上の周期の誤差の発生に対して、正確に半周期並びに0度及び180度の位相を検出することができる。
【0021】
また、半周期の期間及び正電圧継続時間又は負電圧継続時間を、所定の閾値と比較して判定することにより、正電圧継続時間又は負電圧継続時間が所定の閾値以下のときに発生した異常のゼロクロスの発生を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による交流電圧の周期及び位相検出装置を適用した回路構成例を示す図である。
図2】1周期検出処理部による1周期の検出の態様を示す図である。
図3】ゼロクロスの検出をマスクする態様を示す図である。
図4】第1の実施形態によるゼロクロス検出の処理のフローチャートである。
図5】第2の実施形態によるゼロクロス検出の処理のフローチャートである。
図6】異常半周期の検出処理のフローチャートである。
図7】従来のゼロクロスの検出の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明による交流電圧の周期及び位相検出装置を適用した回路構成例を示す。本発明による交流電圧の周期及び位相検出装置は、商用配電線網から供給される交流電源(系統電源)等の交流電圧源11の電圧を検知するAC電圧センサ12と、該交流電圧源11の電圧の1周期を検出する1周期検出処理部13と、該交流電圧源11の電圧がゼロボルトを跨ぐタイミングを検出するゼロクロス検出処理部14とを備える。
【0024】
ゼロクロス検出処理部14で検出した交流電圧の半周期並びに0度及び180度の位相は、AC/DC電力変換制御部15に通知される。AC/DC電力変換制御部15は、ゼロクロス検出処理部14から通知された半周期並びに0度及び180度の位相に基づいて、AC/DC電力変換機16の入力電流等を制御する。
【0025】
図2は、1周期検出処理部13による1周期の検出の態様を示す。1周期検出処理部13は、AC電圧センサ12で検知される交流電圧源11の電圧が、正電圧閾値Vpthを越えるタイミング又は負電圧閾値Vmthを下回るタイミングを検出することにより1周期を検出する。なお、正電圧閾値Vpthと負電圧閾値Vmthは、絶対値が等しい電圧、即ち、負電圧閾値Vmth=−正電圧閾値Vpthとしてもよい。
【0026】
図2において、(a)はAC電圧センサ12で検知される交流電圧の波形を示し、正電圧閾値Vpthを越える点Pを上向き三角で示し、負電圧閾値Vmthを下回る点Qを下向き三角で示している。
【0027】
1周期検出処理部13は、正電圧閾値Vpthを越える点Pを検出し、該点Pを検出したタイミングで、正側1周期を検出する周期検出カウンタによる所定時間毎(例えば36KHz)のカウントアップを開始し、次の正電圧閾値Vpthを越える点Pを検出したタイミングで該周期検出カウンタのカウントアップを停止する。1周期検出処理部13は、該カウントアップの停止時のカウント値を正側1周期として検出し、該周期検出カウンタをゼロにクリアする。
【0028】
また、1周期検出処理部13は、負電圧閾値Vmthを下回る点Qを検出し、該点Qを検出したタイミングで、負側1周期を検出する周期検出カウンタによる所定時間毎(例えば36KHz)のカウントアップを開始し、次の負電圧閾値Vmthを下回る点Qを検出したタイミングで該周期検出カウンタのカウントアップを停止する。1周期検出処理部13は、該カウントアップの停止時のカウント値を負側1周期として検出し、該周期検出カウンタをゼロにクリアする。
【0029】
図2の(b)は、正電圧閾値Vpthを越える点Pから次の正電圧閾値Vpthを越える点Pまでの正側1周期を検出する周期検出カウンタのカウント値を示し、(c)は、負電圧閾値Vmthを下回る点Qから次の負電圧閾値Vmthを下回る点Qまでの負側1周期を検出する周期検出カウンタのカウント値を示している。
【0030】
1周期検出処理部13は、検出した正側1周期又は負側1周期の何れかのカウント値を選択し、該選択した1周期のカウント値を、該1周期を検出する毎にゼロクロス検出処理部14に通知する。
【0031】
1周期検出処理部13は、AC電圧センサ12で検知される電圧が、正電圧閾値Vpth又は負電圧閾値Vmthを跨ぐタイミングを検出して1周期を検出するため、0ボルト付近にノイズが重畳する交流電圧に対して、また、矩形波等のようにゼロクロス点が1点に定まらない波形の交流電圧に対しても、正確に1周期を検出することができる。
【0032】
ゼロクロス検出処理部14は、AC電圧センサ12で検知された交流電圧が0ボルトを跨ぐタイミング位置で、周期並びに0度及び180度の位相を検出する。しかし、交流電圧が0ボルトとなる付近では、系統電源等の交流電圧源11に接続された他の負荷回路や発電機等から発生するノイズが重畳し、該ノイズによるゼロクロス点を半周期毎のゼロクロス点として誤検出してしまう場合がある。
【0033】
交流電圧のゼロクロス点を誤検出すると、交流電圧の周期及び位相を正確に検出することができなくなる。そこで、ゼロクロス検出処理部14は、AC電圧センサ12で検知された交流電圧が一旦0ボルトを跨ぐゼロクロスを検出したとき、一定期間、次のゼロクロスの検出をマスクする。ゼロクロスの検出をマスクする処理の第1の実施形態について図3を参照して説明する。
【0034】
図3の(a)は、AC電圧センサ12で検知される交流電圧の波形を示している。ゼロクロス検出処理部14は、交流電圧のゼロクロスのエッジ点Rを検出したタイミングで、例えば36KHzの周期でカウントアップを行なう半周期カウンタのカウントアップを開始する。
【0035】
ゼロクロス検出処理部14は、一旦、交流電圧のゼロクロスのエッジ点Rを検出した後は、該半周期カウンタがマスク期間である所定の時間閾値T2に相当するカウント値Mを越えるまでは、次のゼロクロス点の検出を行わないようにする。
【0036】
ゼロクロス検出処理部14は、所定の時間閾値T2に相当するカウント値Mとして、1周期検出処理部13により直前に通知された直近の1周期のカウンタ値を用い、好ましくは、該1周期のカウンタ値の例えば約40%(≒25/64)の値を設定する。該所定の時間閾値T2は、交流電圧の公称周波数変動による許容位相変動幅にマージンを加えた期間を基に決定される。
【0037】
交流電圧のゼロクロスのエッジ点は、時間閾値T2のマスク期間中でないとき、(1)前回の検出時に負電圧で今回の検出時に正電圧(又は0以上の電圧)となったことにより検出し、また、(2)前回の検出時に正電圧で今回の検出時に負電圧(又は0以下の電圧)となったことにより検出する。図3の(b)は、交流電圧の半周期の期間を、例えば36KHz毎にカウントアップして検出するカウンタのカウント値を示している。
【0038】
交流電圧のゼロクロスのエッジ点の検出により、交流電圧の0度及び180度の位相が検出されるとともに、ゼロクロスのエッジ点の間を所定の周期でカウントアップしたカウント値により半周期が検出される。AC電圧センサ12により検知される交流電圧を、ADコンバータ等よりデジタル信号としてゼロクロス検出処理部14に入力することにより、ゼロクロス検出処理部14では、CPU等のプロセッサを用いてソフトウェア処理により交流電圧のゼロクロスを検出することができる。
【0039】
前述の特許文献1記載のものは、最初に、交流電圧源11の周波数が50Hzか60Hzかを判定し、該判定後の周波数の固定的な半周期に対し、所定の周期変動幅を差し引いた期間をマスク期間としている。これに対して、本願発明では、常時、交流電圧源11の1周期の期間を監視し、該1周期の期間に所定の計数を乗じて動的にマスク期間を設定することにより、交流電圧源11の周波数変動に適応して、正確に交流電圧源11の周期並びに0度及び180度の位相を検出することができる。
【0040】
上述のゼロクロス検出の第1の実施形態の処理フローについて図4を参照して説明する。ゼロクロス検出処理部14は、図4に示す処理フローを例えば36KHzのタイマ割り込みによって繰り返し実行する。図4に示す処理フローがタイマ割り込みによって起動されると、まず、半周期カウンタに1を加えるカウントアップ処理を実施する(ステップS41)。次のステップS42〜S44は、交流電圧が負から正に変化する時のゼロクロス検出の処理であり、ステップS45〜S47は、交流電圧が正から負に変化する時のゼロクロス検出の処理である。
【0041】
まず、交流電圧が負から正に変化するゼロクロス検出の処理について説明する。ステップS42において、前回の交流(AC)電圧が負(<0)でかつ今回の交流(AC)電圧が正(>0)か否かを判定する。この判定で、交流電圧が負から正に変化したか否かが判定される。交流電圧が負から正に変化したと判定された場合(ステップS42でYESの場合)、半周期カウンタのカウント値が時間閾値(マスク期間)T2に相当する値Mを越えているか否かを判定する(ステップS43)。
【0042】
半周期カウンタのカウント値が時間閾値(マスク期間)T2に相当する値Mを越えている場合(ステップS43でYESの場合)、負側から正側へのゼロクロスを検出し、このときの半周期カウンタのカウント値により、半周期を更新し、0度位相検出フラグをオンに設定し、半周期カウンタのカウント値をゼロにクリアする(ステップS44)。
【0043】
前述のステップS42で交流電圧が負から正に変化したと判定されない場合(ステップS42でNOの場合)、ステップS45に移行する。また、前述のステップS43で半周期カウンタのカウント値が時間閾値(マスク期間)T2に相当する値を越えていないと判定された場合(ステップS43でNOの場合)、ステップS45に移行する。
【0044】
次に、交流電圧が正から負に変化するゼロクロス検出の処理について説明する。ステップS45において、前回の交流(AC)電圧が正(>0)でかつ今回の交流(AC)電圧が負(<0)か否かを判定する。この判定で、交流電圧が正から負に変化したか否かが判定される。交流電圧が正から負に変化したと判定された場合(ステップS45でYESの場合)、半周期カウンタのカウント値が時間閾値(マスク期間)T2に相当する値Mを越えているか否かを判定する(ステップS46)。
【0045】
半周期カウンタのカウント値が時間閾値(マスク期間)T2に相当する値Mを越えている場合(ステップS46でYESの場合)、正側から負側へのゼロクロスを検出し、このときの半周期カウンタのカウント値により、半周期を更新し、180度位相検出フラグをオンに設定し、半周期カウンタのカウント値をゼロにクリアする(ステップS47)。
【0046】
前述のステップS45で交流電圧が正から負に変化したと判定されない場合(ステップS45でNOの場合)、処理を終了する。また、前述のステップS46で半周期カウンタのカウント値が時間閾値(マスク期間)T2に相当する値Mを越えていないと判定された場合(ステップS46でNOの場合)、処理を終了する。
【0047】
ゼロクロス検出処理部14は、この処理フローで検出した半周期、0度位相フラグ及び180度位相フラグを、AC/DC電力変換制御部15に通知し、該通知の後、0度位相フラグ及び180度位相フラグをオフに設定する。AC/DC電力変換制御部15は、ゼロクロス検出処理部14から通知される半周期Tを基に、下記の式1、式2及び式3により、交流電圧の実効値Vac_rms、交流電流の実効値Iac_rms及び入力電力Wacを演算する。
【0048】
【数1】
【0049】
【数2】
【0050】
【数3】
【0051】
AC/DC電力変換制御部15は、交流電圧の実効値Vac_rms、交流電流の実効値Iac_rms及び入力電力Wacを基に目標入力電流を算出し、0度及び180度の位相に合わせて正弦波のマップを読み出し、該目標入力電流に相当する入力電流を生成し、AC/DC電力変換機16を制御する。
【0052】
次にゼロクロスの検出をマスクする第2の実施形態の処理フローについて説明する。第2の実施形態によるゼロクロス検出は、交流電圧が0ボルトを上回る正電圧継続時間又は0ボルトを下回る負電圧継続時間が、所定時間以上継続した後に、半周期の検出を行ない、正電圧継続時間又は負電圧継続時間が時間閾値を越えてないときにゼロクロスが検出された場合、該ゼロクロスによる半周期検出が行なわれないようにするものである。
【0053】
以下、図5を参照して第2の実施形態によるゼロクロス検出の処理フローについて説明する。ゼロクロス検出処理部14は、図5に示す処理フローを例えば36KHzのタイマ割り込みによって繰り返し実行する。図5に示す処理フローがタイマ割り込みによって起動されると、まず、半周期カウンタに1を加えるカウントアップ処理を実施する(ステップS501)。次のステップS502〜S508は、交流電圧が正の半周期の検出処理であり、ステップS509〜S515は、交流電圧が負の半周期の検出処理である。
【0054】
まず、交流電圧が正の半周期の検出処理について説明する。まず、交流(AC)電圧が正(>0)か否かを判定する(ステップS502)。交流(AC)電圧が正(>0)と判定された場合(ステップS502でYESの場合)、正電圧継続時間を計測する正電圧継続カウンタのカウント値に1を加えてカウントアップする(ステップS503)。
【0055】
そして、正電圧継続カウンタのカウント値が、上限であるカウンタリミット以上であるか否かを判定する(ステップS504)。正電圧継続カウンタのカウント値がカウンタリミット以上である場合(ステップS504でYESの場合)、正電圧継続カウンタのカウント値をカウンタリミットの値に設定し(ステップS505)、ステップS509に移行する。前述のステップS504で正電圧継続カウンタのカウント値がカウンタリミット未満であると判定された場合(ステップS504でNOの場合)、なにもせずにステップS509に移行する。
【0056】
一方、前述のステップS502において、交流(AC)電圧が正(>0)でないと判定された場合(ステップS502でNOの場合)、前述の正電圧継続カウンタが所定の正側時間閾値を越えているか否かを判定する(ステップS506)。
【0057】
所定の正側時間閾値として、前述の第1の実施形態でマスク期間として説明した1周期の例えば25/64としてもよい。また、交流電圧センサのオフセット誤差や交流電圧波形の正負のピークのアンバランスがある場合には、後述する負側時間閾値と別個に独立して、正側時間閾値を定めてもよい。なお、前述のステップ504におけるカウンタリミットは、該正側時間閾値を越える値である。
【0058】
正電圧継続カウンタが正側時間閾値を越えている場合(ステップS506でYESの場合)、交流電圧が正側から負側へ変化してゼロクロスが発生したと判定し、このときの半周期カウンタのカウント値により、半周期を更新し、180度位相検出フラグをオンに設定し、半周期カウンタのカウント値をゼロにクリアする(ステップS507)。また、正電圧継続カウンタのカウント値をゼロにクリアする(ステップS508)。
【0059】
次に、交流電圧が負の半周期の検出処理について説明する。まず、交流(AC)電圧が負(<0)か否かを判定する(ステップS509)。交流(AC)電圧が負(<0)と判定された場合(ステップS509でYESの場合)、負電圧継続時間を計測する負電圧継続カウンタのカウント値に1を加えてカウントアップする(ステップS510)。
【0060】
そして、負電圧継続カウンタのカウント値が、上限であるカウンタリミット以上であるか否かを判定する(ステップS511)。負電圧継続カウンタのカウント値がカウンタリミット以上である場合(ステップS511でYESの場合)、負電圧継続カウンタのカウント値をカウンタリミットの値に設定し(ステップS512)、処理を終了する。前述のステップS511で負電圧継続カウンタのカウント値がカウンタリミット未満であると判定された場合(ステップS511でNOの場合)、なにもせずに処理を終了する。
【0061】
一方、前述のステップS509において、交流(AC)電圧が負(<0)でないと判定された場合(ステップS509でNOの場合)、前述の負電圧継続カウンタが所定の負側時間閾値を越えているか否かを判定する(ステップS513)。
【0062】
所定の負側時間閾値として、前述の正側時間閾値と同様に、1周期の例えば25/64としてもよい。また、交流電圧センサのオフセット誤差や交流電圧波形の正負のピークのアンバランスがある場合には、正側時間閾値と別個に独立して、負側時間閾値を定めてもよい。なお、前述のステップ511におけるカウンタリミットは、該負側時間閾値を越える値である。
【0063】
負電圧継続カウンタが負側時間閾値を越えている場合(ステップS513でYESの場合)、交流電圧が負側から正側へ変化してゼロクロスが発生したと判断し、このときの半周期カウンタのカウント値により、半周期を更新し、0度位相検出フラグをオンに設定し、半周期カウンタのカウント値をゼロにクリアする(ステップS514)。また、負電圧継続カウンタのカウント値をゼロにクリアする(ステップS515)。
【0064】
前述の第1の実施形態と同様に、ゼロクロス検出処理部14は、この処理フローで検出した半周期、0度位相フラグ及び180度位相フラグを、AC/DC電力変換制御部15に通知し、該通知の後、0度位相フラグ及び180度位相フラグをオフに設定する。AC/DC電力変換制御部15は、ゼロクロス検出処理部14から通知される半周期Tを基に、上述の式1、式2及び式3により、交流電圧の実効値Vac_rms、交流電流の実効値Iac_rms及び入力電力Wacを演算する。
【0065】
正電圧継続カウンタ及び負電圧継続カウンタを備える上述の第2の実施形態では、正側時間閾値又は負側時間閾値以内に発生したゼロクロスに対して、異常ゼロクロスの発生(異常半周期)として検出することができる。なお、図4及び図5の処理フローにおいて、半周期カウンタのリミット処理は省略している。
【0066】
図6は、第2の実施形態における異常半周期の検出処理フローを示す。該異常半周期の検出処理は、好ましくは、前述の図5の処理の終了後に実行するように構成することができる。異常半周期の検出処理は、まず、半周期カウンタが所定の異常時間閾値以上であるか否かを判定する(ステップS61)。所定の異常時間閾値として、例えば交流電圧の1周期の半分の値とすることができる。
【0067】
半周期カウンタが所定の異常時間閾値以上の場合(ステップS61でYESの場合)、正電圧継続カウンタが前述のステップS506における正側時間閾値未満であるか、又は、負電圧継続カウンタが前述のステップS513における負側時間閾値未満であるか、を判定する(ステップS62)。
【0068】
正電圧継続カウンタが該正側時間閾値未満、又は、負電圧継続カウンタが該負側時間閾値未満である場合(ステップS62でYES)、半周期エラーフラグをオンに設定し(ステップS63)、処理を終了する。半周期エラーフラグは、所定のタイミングでAC/DC電力変換制御部15に通知する。ステップS61及びステップS62でNOと判定された場合、処理を終了する。
【0069】
異常半周期は以下のようにして検出される。交流電圧がノイズ等の影響又は瞬停により、正電圧継続カウンタ又は負電圧継続カウンタが正側又は負側時間閾値以下のときに、0ボルトを跨ぐゼロクロスが発生したとする。
【0070】
すると、図5の処理フローにおいて、ステップS501で半周期カウンタがカウントアップされ、ステップS502又はステップS509の判定でゼロクロス発生によりNOと判定され、ステップS506又はステップS513の判定が行なわれる。
【0071】
ステップS506又はステップS513で、正電圧継続カウンタ又は負電圧継続カウンタが正側又は負側時間閾値以下なのでNOと判定され、このゼロクロスに対しては正規のゼロクロスとして検出しないため、半周期カウンタはゼロにクリアされずに、カウントアップを継続する。一方、正電圧継続カウンタ又は負電圧継続カウンタは、ステップS508又はS515によりゼロにクリアされる。
【0072】
そのため、交流電圧が瞬停やノイズ等の影響により、正電圧継続カウンタ又は負電圧継続カウンタが正側又は負側時間閾値未満のときに、異常ゼロクロスが発生すると、正電圧継続カウンタ又は負電圧継続カウンタが正側又は負側時間閾値未満の状態で、半周期カウンタが異常時間閾値を越えることとなり、この状態の発生を検出することにより、瞬停やノイズ等による異常ゼロクロスの発生(半周期エラー)を検出することができる。
【0073】
第1及び第2の実施形態によれば、1周期検出処理手段で検出される1周期を基に動的にゼロクロス不感帯の時間閾値を設定することにより、交流電圧の周波数の変動に対して、正確に該交流電圧の半周期並びに0度及び180度の位相を検出することが可能となり、系統電源以外の周波数変動の大きい交流電源に対しても、正確に半周期及び位相を検出することができる。
【0074】
また、第2の実施形態によれば、交流電圧の正電圧継続時間及び負電圧継続時間がそれぞれに所定の時間閾値を越えた後に、ゼロクロスの検出を行なうことにより、交流電圧センサのオフセット誤差や交流電圧波形の正負のピークのアンバランスがあるときの見かけ上の周期の誤差に対して、正確に半周期並びに0度及び180度の位相を検出することができる。
【0075】
また、第2の実施形態によれば、半周期の期間及び正電圧継続時間又は負電圧継続時間を、所定の閾値と比較して判定することにより、正電圧継続時間又は負電圧継続時間が所定の閾値未満のときに発生する異常ゼロクロスの発生を検出することが可能となる。
【0076】
また、第1及び第2の実施形態によれば、交流電圧がアナログ−デジタル変換回路等より入力されるAC/DC電力変換装置において、CPU等のプロセッサを用いてソフトウェア処理により交流電圧のゼロクロスを検出することができる。
【0077】
また、第1及び第2の実施形態によれば、半周期を正確に検出して半周期毎にPFC制御回路を制御して応答性を高めることができるため、PFC制御回路に使用される平滑コンデンサの容量を小さくすることができ、部品のコストダウン化を図ることが可能となる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上に述べた実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を取ることができる。
【符号の説明】
【0079】
11 交流電圧源
12 AC電圧センサ
13 1周期検出処理部
14 ゼロクロス検出処理部
15 AC/DC電力変換制御部
16 AC/DC電力変換機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7