特許第5790818号(P5790818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5790818基地局、移動通信システム、移動通信装置および通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790818
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】基地局、移動通信システム、移動通信装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/02 20090101AFI20150917BHJP
   H04W 28/04 20090101ALI20150917BHJP
【FI】
   H04W36/02
   H04W28/04 110
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-57842(P2014-57842)
(22)【出願日】2014年3月20日
(62)【分割の表示】特願2012-173895(P2012-173895)の分割
【原出願日】2008年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-112970(P2014-112970A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2014年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2007-71706(P2007-71706)
(32)【優先日】2007年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】永田 淳
(72)【発明者】
【氏名】板羽 直人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】林 貞福
【審査官】 松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−067115(JP,A)
【文献】 NTT DoCoMo,'Re-synchronization' mechanism for lossless/no duplication handover,R3-060412,フランス,3GPP,2006年 3月30日,paragraph 2
【文献】 Nortel Networks,In sequence delivery over S1 and X2 interface,R3-060737,フランス,3GPP,2006年 5月 3日,paragraph 2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信システムの基地局であって、
移動通信装置と通信可能に構成され、
コアネットワークと通信可能に構成され、
前記移動通信装置と前記基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記基地局から第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信可能に構成される、
基地局。
【請求項2】
前記未送達データは、
前記移動通信装置と前記第二の基地局との間で再送されるデータである、請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
移動通信システムであって、
コアネットワークと、
移動通信装置と、
第一の基地局と、
第二の基地局と、を備え、
前記第一の基地局は、
前記移動通信装置と前記第一の基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記第一の基地局から第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信する、
移動通信システム。
【請求項4】
前記未送達データは、前記移動通信装置と前記第二の基地局との間で再送されるデータである、請求項3に記載の移動通信システム。
【請求項5】
移動通信装置と通信し、
コアネットワークと通信し、
前記移動通信装置と第一の基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記第一の基地局から第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第一の基地局から前記第二の基地局へ送信する方法。
【請求項6】
前記未送達データは、前記移動通信装置と前記第二の基地局との間で再送されるデータである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第一の基地局と、第二の基地局とを有する移動通信システムの移動通信装置であって、
前記第一の基地局と通信可能に構成され、
前記第二の基地局と通信可能に構成され、
前記移動通信装置と前記基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記第一の基地局から前記第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信可能に構成される、
移動通信装置。
【請求項8】
前記未送達データは、前記移動通信装置と前記第二の基地局との間で再送されるデータである、請求項7に記載の移動通信装置。
【請求項9】
移動通信システムの基地局であって、
移動通信装置と通信し、
コアネットワークと通信し、
前記移動通信装置と前記基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記基地局から第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信する、
基地局。
【請求項10】
第一の基地局と、第二の基地局とを有する移動通信システムの移動通信装置であって、
前記第一の基地局と通信し、
前記第二の基地局と通信し、
前記移動通信装置と前記基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記第一の基地局から前記第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信する、
移動通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局及びそれを用いた移動通信システム、並びにデータ転送方法に関し、特に、移動通信端末の移動に伴うハンドオーバ時のデータ転送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Pertnership Project)により標準化されている移動体通信ネットワーク(以下、3Gネットワークと称する)は、図1に示すように、CN(Core Network)10と、UTRAN(Universal Terrestrial Radio Access Network)11とから構成されている。そして、UTRAN11は複数のRNS(Radio Network Subsystem )12,13を有している。これらRNS12,13は各々、RNC(Radio Network Controller:無線基地局制御装置)14,15と、NodeB(無線基地局装置)16,17,18,19とから構成されている。
【0003】
図示せぬ移動通信端末であるUE(User Equipment)は、移動に伴って無線リンクで接続しているNodeBを切り替えながら通信を継続することができ、これをハンドオーバと称している。かかるハンドオーバとしては、RNCで下りデータを複製して、これら複製データを一時的にSourceNodeB(ハンドオーバ元基地局装置)とTarget NodeB(ハンドオーバ先基地局装置)との両方へ送信し、これら両方のNodeBから、UEが同時に受信する方法(ソフトハンドオーバ)がある。
【0004】
また、RNCにおいて下りデータをバッファリングしておき、UEがSourceNodeBから受信完了しなかったデータを、RNCからTarget NodeBに再度送信し、TargetNodeBからUEに送信することにより、ハンドオーバ中の下りデータの取りこぼしが起こらないようにする技術が、WO2004/030396号公報や特許公開2003−078937号公報に開示されている。
【0005】
一方、3GPPでは、ユーザデータのスループットの向上、呼接続遅延及びユーザデータの転送遅延の減少、ノード数の削減、標準化の必要なインタフェースの削減などを目的として、LTE(Long Term Evolution )及びSAE(System Architecture Evolution )という名称で、次世代(B3G:Beyond 3G )ネットワーク(以下、LTE/SAEネットワークという)の検討を行っている。図2に示すように、このLTE/SAEネットワーク20は、EUTRAN(Evolved UTRAN )22と、Evolved CN21とから構成されている。EUTRAN22には、eNodeBというノード23,24が配置されている。
【0006】
このLTE/SAEネットワーク20では、Evolved CN21とeNodeB23,24との間は、S1インタフェースと称されるインタフェースにより接続されている。また、eNodeB23と24との間は、X2インタフェースと称されるインタフェースにより接続されている。
【0007】
このようなLTE/SAEネットワーク20では、UE30が異なるeNodeB間をハンドオーバする際に、EvolvedCN20からSource eNodeBに送信された下りデータのうち、UEに送信完了しなかったデータを、SourceeNodeBからTarget eNodeBに転送し、さらにこのTarget eNodeBからUEに送信することにより、送信できないデータが発生することを減少させることが検討されている。
【0008】
ここで、ハンドオーバ直後には、Target eNodeBには、UEに送信すべき下りデータとして、Source eNodeBから転送されてきたデータと、EvolvedCNから直接Target eNodeBに送信されてきたデータとが存在することになる。通常、上位層にTCP(Transmission Control Protocol)などが使用されていると、データの順番の入れ替わりはスループットの劣化に対して影響を及ぼすので、UEには可能な限り順番通りに送信することが望ましい。
【0009】
また、Source eNodeBから転送されてきたデータは、ハンドオーバ前に、EvolvedCNからUEに向けて送信されたデータであるので、ハンドオーバ後に、Evolved CNからTargeteNodeBに送信されたデータよりも先にUEに送信されることが望ましい。しかしながら、Target eNodeBでは、Source eNodeBから転送されてきたデータをEvolved CNから送信されたデータよりも必ずしも先に受信するとは限らないうえに、転送されている間に順番が入れ替わる可能性もある。
【0010】
そのために、Evolved CNがUEに送信しようとした順番通りに、Target eNodeBがUEに送信させたい場合は、TargeteNodeBにて、Source eNodeBから転送されてきたデータとEvolved CNから送信されたデータとを、順番通りに並べ替えてから送信する必要がある。
【0011】
ところが、図3に示すように、Source eNodeBからUE30に送信された下りデータ1〜6は、不連続にUE30が受信完了する可能性がある。この場合、例えば、図3のデータ2のように、SourceeNodeB23で送達確認(ACK:Acknowledge )ができているが、そのデータよりも前に送信すべきデータ(データ1)の送信が完了していない場合に、データ2をTarget eNodeB24に転送する方法と、転送しない方法とが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のようなデータ2をTarget eNodeB24に転送した場合、Source eNodeB23からUE30に送信が完了しているにもかかわらず、TargeteNodeB24に転送することにより、両eNodeB間のネットワークを消費する上に、再びTarget eNodeB24からUE30に送信してしまう可能性があり、無駄が生じる。
【0013】
また、データ2をTarget eNodeB24に転送しない場合、Target eNodeB24では、SourceeNodeB23からの転送データを不連続に受信する(すなわち、データ1の後にデータ3を受信する)ことになり、Source eNodeB23が不連続に転送を行っているのか、もしくはデータ2に対してネットワーク上で消失や遅延が発生しているのか、TargeteNodeB24では判断できない。そこで、予め設けられているタイマを起動して、受信を待つなどの処理が必要となってしまうという問題点がある。
【0014】
なお、特許公開2003−078937号公報を参照すると、ハンドオーバにより基地局切替えが生じた時に、データの重複や抜けを防止するために、基地局相互間で、バッファ状態同期信号を送受信するようにしているが、データ送信以外にバッファ状態同期信号の送受信のためには、スループットが増加し、またそのための両基地局間の通信ネットワークの消費をも必要とするという問題点がある。
【0015】
そこで、本発明は、LTE/SAEネットワークにおいて、Source eNodeBからTarget eNodeBへのハンドオーバのデータ転送に関して、UEがSource eNodeBから不連続にデータの受信を完了した場合についての上記問題を解決すべくなされたものであって、スループットの増加や、タイマの増設や、更には基地局間のネットワークの浪費をなくした基地局及びそれを用いた移動通信システム、並びにデータ転送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による基地局は、移動通信システムの基地局であって、移動通信装置と通信可能に構成され、コアネットワークと通信可能に構成され、前記移動通信装置と前記基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記基地局から第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信可能に構成される。
【0017】
本発明による移動通信システムは、コアネットワークと、移動通信装置と、第一の基地局と、第二の基地局と、を備え、前記第一の基地局は、前記移動通信装置と前記第一の基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記第一の基地局から第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信する。
【0018】
本発明による方法は、移動通信装置と通信し、コアネットワークと通信し、前記移動通信装置と第一の基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記第一の基地局から第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第一の基地局から前記第二の基地局へ送信する。
【0019】
本発明による移動通信装置は、第一の基地局と、第二の基地局とを有する移動通信システムの移動通信装置であって、前記第一の基地局と通信可能に構成され、前記第二の基地局と通信可能に構成され、前記移動通信装置と前記基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記第一の基地局から前記第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信可能に構成される。
【0020】
本発明による基地局は、移動通信システムの基地局であって、移動通信装置と通信し、コアネットワークと通信し、前記移動通信装置と前記基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記基地局から第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信する。
【0021】
本発明による移動通信装置は、第一の基地局と、第二の基地局とを有する移動通信システムの移動通信装置であって、前記第一の基地局と通信し、前記第二の基地局と通信し、前記移動通信装置と前記基地局との間で再送すべき未送達データがある場合、前記第一の基地局から前記第二の基地局への前記移動通信装置のハンドオーバ中において第一の未送達データが前記第二の基地局へ送信される前に、X2インターフェースを介して、前記第一の未送達データのシーケンス番号を、他の未送達データのシーケンス番号とは別に前記第二の基地局へ送信する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、移動通信端末のハンドオーバに伴ってデータを基地局間で転送するネットワークにおいて、移動通信端末がハンドオーバ元の基地局から受信を完了しているデータを、ハンドオーバ元の基地局がハンドオーバ先の基地局に転送することなく、ハンドオーバ先の基地局はデータが転送されてこないと判断することが可能となる。従って、転送されてこないデータを待ち合わせるなどの処理を行う必要がなくなり、さらに両基地局から重複してデータを送信してしまうことを防ぐことが可能となる。また、両基地局間のネットワークの消費も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】3GPPにより標準化されている移動通信システムの概略を示す図である。
図2】次世代ネットワークであるLTE/SAEネットワークのシステム概略を示す図である。
図3図2のネットワークにおける移動通信端末のハンドオーバ時のデータの流れの例を示す図である。
図4】本発明の実施例による基地局の概略ブロック図である。
図5】本発明の第一の実施例の動作の概略を説明する図である。
図6】本発明の実施例の動作を示すシーケンス図である。
図7】本発明の第二の実施例の動作の概略を説明する図である。
図8】本発明の第三の実施例の動作の概略を説明する図である。
図9】本発明の第四の実施例の動作の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明について図面を参照しつつ説明する。本発明のシステム構成は、図2に示したシステムと同一である。再度図2を参照すると、LTE/SAEネットワーク20は、EvolvedCN21と、EUTRAN22とから構成されている。EUTRAN22には複数のeNodeB23,24が配置されている。
【0025】
これらeNodeB23,24は、図1に示した3GネットワークのRNC14,15の機能の一部と、NodeB(無線基地局装置)16〜19の各々に相当する機能とを統合したノードである。eNodeBの各々は、EvolvedCNとS1と呼ばれるインタフェースで接続され、eNodeB同士はX2と呼ばれるインタフェースで互いに接続されている。なお、これらS1,X2インタフェースは論理的な接続形態であり、物理的には、例えば、X2インタフェースはS1インタフェースと共有される場合もある。
【0026】
また、Evolved CN20は、インターネットなどの外部ネットワークや無線LAN網などとも接続されている。UE30が外部ネットワークや他の移動端末などから受信するデータ(下りデータ)は、UE30が接続されているeNodeBにEvolvedCN20から送信され、無線リンクを通してUE30に送信される。UE30が通信を継続しながら異なるeNodeBにハンドオーバする場合は、eNodeBがEvolvedCN20から受信した下りデータのうち、UE30に未送信または送信済みであるが送達確認(ACK)がとれていないデータを、ハンドオーバ先のeNodeBにX2インタフェースを通して転送する。UE30は、この転送されたデータをハンドオーバ先のeNodeBから受信する。
【0027】
図2のeNodeB23,24の機能ブロックが図4に示されている。なお、図4においては、本発明に関係する部分のみが示されている。図4を参照すると、本発明の実施例によるeNodeBは、EvolvedCN21との通信をなすEvolved CNとの通信部101と、他のeNodeBとの通信をなすeNodeBとの通信部102と、UE30との通信をなす無線通信部103と、UE30のハンドオーバの制御をなすハンドオーバ制御部104と、このハンドオーバ時のデータ転送の制御をなすデータ転送制御部105と、これら各部を制御する制御部(CPU)106と、この制御部106の制御動作手順を予めプログラムとして格納すると共に、作業用メモリとして機能するメモリ107とを含んで構成されている。
【0028】
ここで、図3に示したように、下りデータ1〜7がSource eNodeB23からUE30に送信されるべきものとする。この場合における本発明の第一の実施例の概略を、図5を参照しつつ説明する。ハンドオーバに伴って、SourceeNodeB23からTarget eNodeB24に転送される下りデータは、Source eNodeB23でUE30に送信すべきデータのうち、UEに未送信または送信済みであるが、送達確認(ACK)がとれていないデータのみとする。このとき、図5に示すように、SourceeNodeB23は、転送するデータに対して、直前に転送したデータの情報を付与してTarget eNodeB24に送信する。
【0029】
すなわち、例えば、Source eNodeBがTarget eNodeBにデータ1,3,7とを転送する場合には、データ3にデータ1を直前に転送したという情報を、また、データ7にデータ3を直前に転送したという情報を、それぞれ付与してTargeteNodeB に転送する。
【0030】
このようにすることにより、既にSource eNodeBで送達確認を受信したデータをTarget eNodeBに転送することなく、TargeteNodeBでは、データが不連続に転送されてくることを認識できる。従って、転送されてこないデータについて、タイマを用いて受信を待つなどの処理を行う必要がなくなる。また、SourceeNodeBからの受信が完了しているデータを、Target eNodeBから重複して送信することを防ぐことができる。なお、上記の直前に転送したデータの情報としては、例えば、シーケンス番号とすることが考えられる。
【0031】
本発明の実施例の動作について、図6のシーケンス図を参照しつつ以下に説明する。いま、図3に示したように、UE30は、eNodeB23配下のセルからeNodeB24配下のセルにハンドオーバしようとしており、SourceeNodeBからはデータ2とデータ4〜6の受信を完了しているものとする。また、Source eNodeBはそれらのデータについて送達確認(ACK)を受信しており、Evolved CN21からはデータ1〜7までを受信しているものとする。
【0032】
UEはLTE/SAEネットワークにおいて移動しつつ通信を行っており、EvolvedCN(MME/UPE:Mobile Management Entity/User Equipment Entity)からの下りユーザデータをSource eNodeBから受信している(ステップS1,S2)。このとき、UEは周囲の無線状況を監視しており、その結果を、割り当てられた上りリンクを用いて(ステップS3)、SourceeNodeBに報告する(ステップS4)。
【0033】
Source eNodeBは、この報告された無線状況に基づいて、UEをTargeteNodeBにハンドオーバさせることを決定する(ステップS5)。そして、その旨をTarget eNodeBに通知すると共に、それに必要な情報(Context Data)を転送する(ステップS6)。Target eNodeBでは、このハンドオーバを受け入れることを決定し、UEの情報(Context Data)を記憶し、C−RNTI(Customer-Radio Network Temporary Identity )を補足する(ステップS7)。そして、これをSourceeNodeBに返答すると共に、必要な情報をもSource eNodeBに転送する(ステップS8)。
【0034】
Source eNodeBは、割り当てられたダウンリンクを用いて(ステップS9)、UEに対してハンドオーバを指示する(ステップS10)と共に、保持している下りデータのうち、UEに未送信のものと、送信済みであるがUEから送達確認(ACK)されていないものとをTargeteNodeBに転送する(ステップS12,S13)。
【0035】
この例では、データ1,3,7となる。このとき、図5に示したように、送信するデータに対して、直前に送信したデータの情報を付与してTargeteNodeBに転送する。Target eNodeBは、Source eNodeBからのデータをバッファリングする(ステップS14)。
【0036】
なお、ステップS11は、Source eNodeBからのハンドオーバ指示(ステップS10)に応答して、UEがSource eNodeBの旧セルから離脱し、TargeteNodeBの新セルと同期確立を開始する処理である。
【0037】
Target eNodeBは、SourceeNodeBから転送されてきたデータについて、データに付与されている直前に転送されたデータの情報を参照して、今受信したデータよりも前にSourceeNodeBから転送されたデータが既に受信完了しているかどうかを判断する。例えば、Target eNodeBにてSource eNodeBから転送されたデータをデータ1、データ3の順番に受信したとして、データ3にSourceeNodeBが直前に転送したデータはデータ1であるという情報が付与されていれば、データ2は転送されてこないと判断できる。
【0038】
しかし、例えば、Target eNodeBでSource eNodeBからデータ3を受信して、そのデータに直前に転送したデータはデータ2であるという情報が付与されていれば、データ2はネットワーク上で消失または遅延などが発生している可能性がある。そこで、データ2の受信をある一定時間待つなどの処理を行うことが考えられる。
【0039】
そして、UEとTarget eNodeBとの間において、同期確立(ステップS15)、アップリンクの割り当て(ステップS16)などの処理が行われ、UEはTargeteNodeBに対してハンドオーバしたことを通知する(ステップS17)。そして、Target eNodeBは、Evolved CNに、UEがハンドオーバしてきたのでUE宛の下りデータを自分宛に送信するように通知する(ステップS19,S20)。この段階で、EvolvedCNは、Target eNodeBにデータの送信を開始する(ステップS23,S24)。
【0040】
それ以前のデータはSource eNodeBに送信しており(ステップS18)、Source eNodeBからTarget eNodeBに転送されてくる(ステップSS21,S22)。従って、Target eNodeBにはSourceeNodeBからのデータとEvolved CNからのデータとが混在する可能性があるが、それらについてはシーケンス番号などで順番を制御することが考えられる。このとき、SourceeNodeBからの転送データを不連続に受信しても、受信しなかったデータについて受信を期待するべきかどうかは、上記の方法により判断できる。以後、データは、EvolvedCNからTarget eNodeBを介してUEへ転送される(ステップS24,S25)。
【0041】
なお、図6において、実線はL3(Layer3:Network Layer)シグナリング、一点鎖線はL1/L2(Layer2/3:Physical layer/Data link layer)シグナリング、破線はユーザデータをそれぞれ示す。
【0042】
次に、本発明の第二の実施例について説明する。本実施例は、システム構成やeNodeBの機能ブロックの構成については、先の第一の実施例と同一である。本実施例では、転送するデータに含める情報を、直後に転送する予定のデータとする。例えば、図7に示すように、SourceeNodeBがTarget eNodeBに対してデータ1,3,7を転送するときには、データ1には直後のデータはデータ3であるという情報、データ3には直後のデータはデータ7であるという情報を、それぞれ含める。
【0043】
この場合、最後に転送されるデータには、直後のデータがないという情報を付与することにより、TargeteNodeBにて最後のデータを明確に認識することも可能となる。
【0044】
次に、本発明の第三の実施例について説明する。本実施例は、システム構成やeNodeBの機能ブロックの構成については、先の第一の実施例と同一である。本実施例では、転送するデータに含める情報として、転送されないデータの情報を含める。例えば、図8に示すように、SourceeNodeBがTarget eNodeBに対してデータ1,3,7を転送するときには、データ3にデータ2を転送しないという情報、データ7にデータ4〜6とを転送しないという情報を、それぞれ含めることも考えられる。
【0045】
本実施例の効果は先の実施例の場合と同様であるが、含める情報量が多くなる。また、図8では、転送されないデータの情報は、直後に転送されるパケットに含まれているが、直前に転送されるデータに含めることも考えられる。
【0046】
次に、本発明の第四の実施例について説明する。本実施例は、システム構成やeNodeBの機能ブロックの構成については、先の第一の実施例と同一である。本実施例では、図9に示すように、SourceeNodeBで送達確認を受信したデータもTarget eNodeBに転送するが、そのデータには送達確認を受信しているという情報を付与して転送する。この場合、SourceeNodeBとTarget eNodeBとの間のネットワークリソースの節約は出来ないが、UEに対してSourceeNodeBで受信完了しているデータを、Target eNodeBからも重複して送信することは防ぐことができる。
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、移動通信端末のハンドオーバに伴ってデータをeNodeBである基地局間で転送するネットワークにおいて、移動通信端末がハンドオーバ元の基地局から受信を完了しているデータを、ハンドオーバ元の基地局がハンドオーバ先の基地局に転送することなく、ハンドオーバ先の基地局はデータが転送されてこないと判断することが可能となる。従って、転送されてこないデータを待ち合わせるなどの処理を行う必要がなくなり、更に両基地局から重複してデータを送信してしまうことを防ぐことが可能となる。また、両基地局間のネットワークの消費も削減できる。
【0048】
なお、上記の各実施例における動作は、予めその動作手順をプログラムとしてROMなどの記録媒体に格納しておき、これをコンピュータ(CPU)により読み取らせて実行させるように構成できることを明らかである。
【0049】
以上、実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0050】
この出願は、2007年3月20日に出願された日本出願特願2007−071706を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
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図7
図8
図9