【文献】
Organic Syntheses,1943年,Coll. Vol. 2,399
【文献】
Phys. Rev.,1947年,71(6),pp. 349-360
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ハイドロフルオロカーボンは、半導体、液晶などの微細加工用のエッチングガスとして有用であり、特にフッ化メタン(CH
3F)は、最先端の微細構造を形成するためのエッチングガスとして注目されている。
【0003】
フッ化メタンの製造方法としては、例えば、以下の方法が知られている。
(1)メチルアルコールとフッ化水素とを触媒を用いて反応させる方法(特許文献1)。
(2)塩化メチルとフッ化水素とを触媒を用いて反応させる方法(特許文献2)。
(3)1−メトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンを熱分解させる方法(特許文献3)。
(4)ジメチル硫酸とフッ化カリウムなどのアルカリ金属フッ化物をジグライムやスルホランなどの極性を有する溶媒の存在下に反応させることによりモノフルオロメタンを製造する方法(特許文献4)。
【0004】
これらの方法のうち、(1)の方法は、多量の水が発生するため、触媒が劣化しやすく、また、発生した水に未反応のフッ化水素が溶解してフッ酸が生成するため製造設備の腐食が起こりやすいという欠点がある。
【0005】
また、(2)の方法は、フッ素化の反応性を向上させるため、過剰のフッ化水素を加える必要があり、それをリサイクルして再利用すると設備が巨大になり、製造設備のコストが過大になる。さらに水分の混入などによる反応性の低下や製造設備の腐食の問題もある。
【0006】
さらに、(3)の方法は、フッ化メタンと同時に生じるジフルオロ酢酸フルオライドの沸点が0℃と低く、フッ化メタン(沸点−79℃)と分離するためには冷却のエネルギーが必要となる。また、低沸点の不純物が多く得られ、精留してもフッ化メタンとの分離が困難である。特に、不純物の中でも、トリフルオロメタン(CHF
3)は、沸点が−84℃であり、フッ化メタンと沸点が近く分離し難いうえ、原料転化率がトリフルオロメタンの生成量に関連するため、トリフルオロメタンを減らすためには反応の転化率を下げなければならない場合があり、結果的にフッ化メタンの生成効率が低下するという問題もある。さらに、原料となる1−メトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンは、テトラフルオロエチレンとメタノールを反応させて合成するため、テトラフルオロエチレンの取り扱いの危険性を伴い、また原料の価格や設備価格が高価になるという問題がある。
【0007】
さいごに、(4)の方法では、充分な量の生成物を得るためには高温(150℃程度)で反応させる必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、フッ化メタンの製造方法として、工業的生産により適した方法を提供することである。具体的には、本発明の主な目的は、触媒を用いることなく、かつ低温反応により、高純度かつ高収率で、さらに安全かつ安価にフッ化メタンを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記した目的を達成すべく、鋭意研究を重ねてきた。その結果、ジメチル硫酸と特定のフッ素化合物、すなわちフッ化水素、フッ化物金属塩及び/又はフッ酸塩、を原料として用い、フッ素化合物の種類に応じて溶媒の有無及び種類を設定すれば、触媒を用いず液相状態で反応させるという簡単な方法によって、分離操作が煩雑な副生成物をほとんど生じることなく、フッ化メタンを高収率で得ることができることを見出した。しかも、この方法によれば、原料として用いるジメチル硫酸及び上記フッ素化合物は従来から広く行われているメチル化反応、フッ素化反応及びフッ素化触媒等に利用されるものであるため容易にかつ安価に入手でき、このため安価でかつ効率良く、フッ化メタンを製造できるという利点も有する。本発明は、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の実施態様を含む。
項1.
(A)ジメチル硫酸と
(B)フッ素化合物として、フッ化水素及びフッ酸塩からなる群より選択される少なくとも一種、又はフッ化物金属塩
を液相で反応させることによりフッ化メタン(CH
3F)を製造する方法であって:
前記フッ素化合物(B)がフッ化水素又はフッ酸塩を含む場合に無溶媒で、又は溶媒として極性溶媒を用い、かつ
前記フッ素化合物(B)がフッ化物金属塩である場合に溶媒として水を用いて反応させることを特徴とする方法。
項2.
フッ化物金属塩が、下記一般式(1)で表される少なくとも一種のフッ化物金属塩である、項1に記載の方法。
【0012】
【化1】
【0013】
[式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。]
項3.
フッ酸塩が、下記一般式(2)又は(3)で表される少なくとも一種のフッ酸塩である、項1又は2に記載の方法。
【0014】
【化2】
【0015】
[式中、R
2、R
3及びR
4は、同一又は異なって、
水素原子;又は
一個以上のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基若しくはシクロアルキル基
を表し、
nは1〜5の整数である。]
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、R
5、R
6及びR
7は、同一又は異なって、
水素原子;又は
一個以上のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基若しくはシクロアルキル基
を表し、
nは1〜5の整数である。]
項4.
前記一般式(2)で表されるフッ酸塩が、フッ化アンモニウム(NH
4F)、一水素二フッ化アンモニウム(NH
4FHF)、フッ化メチルアミン(CH
3NH
3F)、フッ化エチルアミン(C
2H
5NH
3F)、フッ化ブチルアミン(C
4H
9NH
3F)、フッ化ジメチルアミン((CH
3)
2NH
2F)、フッ化ジエチルアミン((C
2H
5)
2NH
2F)、フッ化トリエチルアミン((C
2H
5)
3NHF)及びトリエチルアミン三フッ化水素酸塩((C
2H
5)
3N・3HF)からなる群より選択される少なくとも一種のフッ酸塩であり、及び/又は
前記一般式(3)で表されるフッ酸塩が、ピリジンフッ酸塩である、
項3に記載の方法。
項5.
フッ素化合物(B)としてフッ化水素を用い、無溶媒で前記の反応を行う、項1〜4のいずれかに記載の方法。
項6.
加圧することによりフッ化水素を液化させた状態で前記の反応を行う、項5に記載の方法。
項7.
フッ素化合物(B)としてフッ化物金属塩及び/又はフッ酸塩を用い、水を溶媒として用いて前記の反応を行う、項1〜4のいずれかに記載の方法。
項8.
フッ素化合物(B)を水に溶解させた水溶液中に、ジメチル硫酸(A)を滴下することにより前記の反応を行う、項7に記載の方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安価かつ容易に入手できる原料を用いて、取り扱いの難しい触媒を用いることなく、低温かつ液相での反応という簡単な方法によって、高い原料転化率で、かつ選択性よく、フッ化メタンを得ることができる。
【0019】
なお、本発明によって得られるフッ化メタンは、半導体製造プロセスにおいて微細構造を形成するためのドライエッチングガス等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の製造方法は、
(A)ジメチル硫酸と
(B)フッ素化合物として、フッ化水素及びフッ酸塩からなる群より選択される少なくとも一種、又はフッ化物金属塩
を液相で反応させることによりフッ化メタン(CH
3F)を製造する方法であって:
前記フッ素化合物(B)がフッ化水素又はフッ酸塩を含む場合に無溶媒で、又は溶媒として極性溶媒を用い、かつ
前記フッ素化合物(B)がフッ化物金属塩である場合に溶媒として水を用いて反応させることを特徴とする方法である。以下、本発明の製造方法について具体的に説明する。
【0021】
1.
フッ素化合物(B)
フッ素化合物(B)としては、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
1.1
フッ化物金属塩
フッ化物金属塩としては、特に限定されないが、下記式(1)で表されるフッ化物金属塩が好ましい。
【0024】
[式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。]
上記式(1)で表されるフッ化物アルカリ金属塩の中でも、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム及びフッ化セシウムが好ましい。
【0025】
上記式(1)で表されるフッ化物アルカリ土類金属塩の中でも、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム及びフッ化ラジウムが好ましい。
【0026】
上記式(1)で表されるフッ化物金属塩の中でも、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム及びフッ化セシウムが好ましく、フッ化カリウムがより好ましい。
【0027】
1.2
フッ酸塩
フッ酸塩としては、特に限定されないが、反応率の点で、下記(i)〜(ii)のフッ酸塩が好ましい。
(i)下記式(2)で表されるフッ酸塩:
【0029】
[式中、R
2、R
3及びR
4は、同一又は異なって、
水素原子;又は
一個以上のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基若しくはシクロアルキル基
を表し、
nは1〜5の整数である。]
上記フッ酸塩のうち、式中のR
2、R
3及びR
4のいずれかが、1個以上のハロゲン原子で置換されているアルキル基若しくはシクロアルキル基であるフッ酸塩の中では、ハロゲン原子としてフッ素原子で置換されているものが好ましい。
【0030】
フッ酸塩(i)としては、上記式(2)中、R
2、R
3及びR
4が、同一又は異なって、
水素原子;又は
一個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数3〜6のシクロアルキル基
を表すものであるフッ酸塩が好ましい。左記フッ酸塩のうち、式中のR
2、R
3及びR
4のいずれかが、1個以上のハロゲン原子で置換されているアルキル基若しくはシクロアルキル基であるフッ酸塩の中では、ハロゲン原子としてフッ素原子で置換されているものが好ましい。
【0031】
フッ酸塩(i)としては、上記式(2)中、R
2、R
3及びR
4が、同一又は異なって、
水素原子;又は
一個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1若しくは2のアルキル基若しくは炭素数が3若しくは4のシクロアルキル基を表すものであるフッ酸塩がより好ましい。左記フッ酸塩のうち、式中のR
2、R
3及びR
4のいずれかが、1個以上のハロゲン原子で置換されているアルキル基若しくはシクロアルキル基であるフッ酸塩の中では、ハロゲン原子としてフッ素原子で置換されているものが好ましい。
【0032】
フッ酸塩(i)としては、上記式(2)中、nが1〜5であるものが好ましい。
【0033】
フッ酸塩(i)の好ましい具体例として、フッ化アンモニウム(NH
4F)、一水素二フッ化アンモニウム(NH
4FHF)、フッ化メチルアミン(CH
3NH
3F)、フッ化エチルアミン(C
2H
5NH
3F)、フッ化ブチルアミン(C
4H
9NH
3F)、フッ化ジメチルアミン((CH
3)
2NH
2F)、フッ化ジエチルアミン((C
2H
5)
2NH
2F)、フッ化トリエチルアミン((C
2H
5)
3NHF)及びトリエチルアミン三フッ化水素酸塩((C
2H
5)
3N・3HF)等が挙げられる。これらの中で、フッ化アンモニウム(NH
4F)、フッ化メチルアミン(CH
3NH
3F)、フッ化エチルアミン(C
2H
5NH
3F)及びトリエチルアミン三フッ化水素酸塩((C
2H
5)
3N・3HF)がより好ましい。
(ii)下記式(3)で表されるフッ酸塩:
【0035】
[式中、R
5、R
6及びR
7は、同一又は異なって、
水素原子;又は
一個以上のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基若しくはシクロアルキル基
を表し、
nは1〜5の整数である。]
上記フッ酸塩のうち、式中のR
5、R
6及びR
7のいずれかが、1個以上のハロゲン原子で置換されているアルキル基若しくはシクロアルキル基であるフッ酸塩の中では、ハロゲン原子としてフッ素原子で置換されているものが好ましい。
【0036】
フッ酸塩(ii)としては、上記式(3)中、nが1〜5であるものが好ましい。
【0037】
フッ酸塩(ii)としては、上記式(3)中、R
5、R
6及びR
7が、同一又は異なって、
水素原子;又は
一個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数3〜6のシクロアルキル基
を表すものであるフッ酸塩が好ましい。左記フッ酸塩のうち、式中のR
5、R
6及びR
7のいずれかが、1個以上のハロゲン原子で置換されているアルキル基若しくはシクロアルキル基であるフッ酸塩の中では、ハロゲン原子としてフッ素原子で置換されているものが好ましい。
【0038】
フッ酸塩(ii)としては、上記式(3)中、R
5、R
6及びR
7が、同一又は異なって、
水素原子;又は
一個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1若しくは2のアルキル基若しくは炭素数が3若しくは4のシクロアルキル基
を表すものであるフッ酸塩がより好ましい。左記フッ酸塩のうち、式中のR
5、R
6及びR
7のいずれかが、1個以上のハロゲン原子で置換されているアルキル基若しくはシクロアルキル基であるフッ酸塩の中では、ハロゲン原子としてフッ素原子で置換されているものが好ましい。
【0039】
フッ酸塩(ii)の好ましい具体例として、ピリジンフッ酸塩等が挙げられる。
【0040】
フッ素化合物(B)は、固体の場合はできるだけ微細粒子であることが好ましい。粒子を細かくすることにより表面積を増やすことができ、ジメチル硫酸(A)と接触させると反応が進行しやすいためである。例えば、フッ化カリウムを用いる場合、平均粒子径は好ましくは10〜50μm、より好ましくは1次粒子の粒子径が0.1〜5μmである。特に、その比表面積が少なくとも1m
2/g(BET法)以上、好ましくは1.5m
2/g以上の微粒子状のものが好ましい。このようなフッ化カリウムは、特に限定されないが、例えば、スプレードライ法により、フッ化カリウムの沈澱を含む溶液をスプレードライすることによって得ることができる。
【0041】
また、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム及びフッ化アミン等のフッ化物は、フッ化水素を使う工程やフッ化水素を発生する工程において、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア水及びアミン等による中和処理の際に発生したフッ化物の廃棄溶液から再生して使用することができる。これらの廃棄溶液を、加熱することなどにより水分を蒸発させ濃度調整したのちに本発明の製造方法の原料として利用することができる。
【0042】
2.
反応条件
ジメチル硫酸(A)とフッ素化合物(B)の反応は、触媒を用いなくても、ジメチル硫酸(A)を直接あるいは溶媒を用いてフッ素化合物(B)と液相状態で接触させることによって進行させることができる。
【0043】
特に限定されないが、ジメチル硫酸(A)にフッ素化合物(B)を添加することによって反応させることができる。この場合、特に限定されないが、例えば、ジメチル硫酸(A)を液状で貯めておいた容器にフッ素化合物(B)を混合させたのちに、撹拌しながら昇温させて反応させることができる。
【0044】
また、特に限定されないが、フッ素化合物(B)にジメチル硫酸(A)を添加することによって反応させることもできる。
【0045】
フッ素化合物(B)がフッ化水素又はフッ酸塩を含む場合に無溶媒で、又は溶媒として極性溶媒を用いて反応を行う。また、フッ素化合物(B)がフッ化物金属塩である場合には溶媒として水を用いて反応を行う。
【0046】
極性溶媒としては、非プロトン性溶媒を用いることができる。非プロトン性溶媒としては、特に限定されないが、DMF、アセトニトリル及び等を使用できる。
【0047】
有機溶媒を用いる場合は、使用する前にモレキュラーシーブなどを用いて脱水しておくことが望ましい。
【0048】
溶媒として水を用いる場合は、中性付近で反応させるとジメチル硫酸の加水分解を抑制できるため好ましい。
【0049】
溶媒として水を用いる場合は、フッ素化合物(B)をあらかじめ水と混合した状態で、そこにジメチル硫酸を徐々に添加することが好ましい。ジメチル硫酸(A)は水溶液中では加水分解してしまうが、このような方法とすることにより、ジメチル硫酸(A)の加水分解を最低限に抑えつつ目的の反応を進行させることができる。徐々に添加する方法としては、フッ素化合物(B)と水の混合物を必要に応じて撹拌しながら、液体のジメチル硫酸を滴下する方法等が挙げられる。滴下速度は特に限定されず、通常行われる範囲から幅広く選択できる。例えば0.5〜50ml/hとすることができる。この場合、撹拌は、特に限定されないが、マグネチックスターラー等を用いて行うことができる。
【0050】
フッ素化合物(B)としてフッ化水素を用いて無溶媒で反応を行うことにより、目的生成物であるフッ化メタンの収率が特に向上する。特に限定されないが、通常、フッ化水素を無溶媒でジメチル硫酸(A)と反応させるためには、加圧することによりフッ化水素を液化させた状態で反応させる。加圧の条件としては、フッ化水素を液化させることができればよく、特に限定されないが、例えば圧力0.1〜1MPaとすることもできる。この場合、反応は通常、耐圧容器を使用して行う。
【0051】
フッ素化合物(B)としてフッ化金属塩及び/又はフッ酸塩を用いる場合は、水を溶媒として用いて反応を行うことが好ましい。この場合、目的生成物であるフッ化メタンの収率が向上する。この場合、前記の通り、フッ素化合物(B)をあらかじめ水と混合した状態で、そこにジメチル硫酸を徐々に添加することが好ましい。
【0052】
反応温度については、低すぎると原料の転化率が低下し、高すぎると不純物が多くなる傾向がある。溶媒の有無、用いる溶媒の種類にもよるが、溶媒として水を用いる場合、反応温度は、これらの点で、50〜150℃が好ましく、80℃〜120℃がより好ましく、90℃〜110℃がさらに好ましい。また、溶媒として極性溶媒を用いる場合、同様に、70℃〜300℃が好ましく、80℃〜200℃がより好ましく、100℃〜120℃がさらに好ましい。無溶媒の場合、同様に、80〜200℃が好ましく、100℃〜180℃がより好ましく、100℃〜150℃がさらに好ましい。
【0053】
本発明の方法は、従来の方法にくらべてより低温で、例えば具体的には150℃未満、120℃以下、あるいは100℃以下等で反応を進行させることができるという点で有利である。従来の方法では充分な生成物を得ることが難しかった温度条件であっても、本発明によれば、充分な生成物を得ることができる。
【0054】
反応時の圧力は、低すぎると空気の混入の可能性などがあり、この場合は操作が煩雑になる。これに対して、圧力が高すぎると機器の耐圧性を考慮する必要があり、漏えいの危険性も高くなる。これらの点から、特に加圧の必要がない場合の反応圧力は、0.05〜1MPaが好ましく、0.1〜0.5MPaがより好ましい。特に、反応操作の点では、大気圧(約0.1MPa)程度の圧力が好ましい。
【0055】
反応時間については特に限定的ではない。原料同士の接触時間が長すぎると、生成物を得るのに長時間を要するので、生産量を上げるためには接触時間を短くすることが好ましいが、接触時間が短すぎると、転化率が下がる傾向がある。このため、反応条件に応じて、原料の転化率と目的物の選択率の点から最も生産性が高くなる接触時間を選べばよい。
【0056】
本発明の製造方法においては特に触媒を使用する必要はないが、必要に応じて触媒を使用してもよい。
【0057】
ジメチル硫酸(A)に対するフッ素化合物(B)のモル比は、可能な限り大きいほうが好ましい。しかしながら、フッ素化合物(B)のモル比が大きいと製造原価が高くなるため、経済上問題にならない範囲内でフッ素化合物(B)を過剰にすることが好ましい。例えば、ジメチル硫酸(A)に対するフッ素化合物(B)のモル比は1〜100が好ましく、5〜50がより好ましく、20〜50がさらに好ましい。
【0058】
本発明の方法により得られるフッ化メタンは、必要に応じて公知の方法で分離精製することができる。例えば、蒸留又は抽出等により精製することができる。
【0059】
本発明の方法により得られるフッ化メタンは、半導体製造プロセスにおいて微細構造を形成するためのドライエッチングガス等として有用である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
1.
実施例1〜5
1.1
実施例1
100ccの耐圧容器にフッ化カリウム12g(0.21mol)と純水25gを入れた後、硫酸ジメチル10g(0.08mol)を加えて反応を開始した。100℃になってから、5時間反応させ、最終的な圧力は、0.15MPa/Gを示した。発生したガスを採集し、ガスクロマトグラフィーで分析した。この反応フッ化メタンの理論収量を0.08molとし、フッ化メタンの収量を計算すると0.08molであった。収率100%であった。
【0061】
1.2
実施例2
100ccの耐圧容器にフッ化カリウム10g(0.17mol)とアセトニトリル20mlを入れた後、硫酸ジメチル10g(0.08mol)を加えて反応を開始した。100℃、4時間反応させて発生したガスを採集し、ガスクロマトグラフィーで分析した。この反応フッ化メタンの理論収量を0.08molとすると、フッ化メタンの収率は27%であり、発生したガスにおける選択率は71%であった。不純物としてジメチルエーテル21%、ギ酸メチル8%を検出した。
【0062】
1.3
実施例3
100ccの耐圧容器に硫酸ジメチル10g(0.08mol)を入れた後、フッ化水素10g(0.5mol)を加えて反応を開始した。温度50℃、圧力0.15MPa/Gで5時間反応させた。発生したガスを採集し、ガスクロマトグラフィーで分析した。この反応のフッ化メタンの理論収量を0.16molとしたときの収率は53%であり、選択率は53%であった。不純物としてメタン41%、エタン6%を検出した。
【0063】
2.
実施例4〜11
アリーン冷却器と硫酸ジメチル(DMS)注入装置を取り付けた2口ナスフラスコ(35ml)にフッ化カリウム(KF)と水およびマグネチックスターラーを入れた後に系を密閉した。アリーン冷却器の先端には発生するガスを捕集するために、テドラーパックをあらかじめ取り付けて系内が大気圧以上にならないようにした。アリーン冷却器に水を流して冷却した状態で、フッ化カリウム水溶液を撹拌しながら、オイルバスで 反応温度まで加熱した。反応温度に達すると、硫酸ジメチル(DMS)注入装置を用いて硫酸ジメチルを滴下した。
【0064】
テドラーパックで捕集したガスに内部標準としてHFC-32を加えた後、GS-GASPROカラムを取り付けたガスクロマトグラフィーでHFC-41の定量を行った。また、フラスコ内の残液を水で希釈し、内部標準としてCH
3COONaを加え、1H NMR(D
2O)を測定して硫酸ジメチルの転化率を算出した。
【0065】
実施例4〜11の結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
主な不純物はメタノールであり、12%以下のジメチルエーテルおよび0.1%以下のジメトキシメタンを検出した。
【0068】
滴下速度1〜20ml/hの全範囲に渡って転化率は100%を示した(実施例4)。
【0069】
また、温度が高いほど収率が高い傾向も見られた(実施例7、10及び8)。
【0070】
さらに、モル比(KF / DMS)が大きいほど収率が高い傾向も見られ(実施例6及び9、実施例10及び11)、モル比(KF / DMS)46では、収率80%に達した。
【0071】
3.
比較例1
反応温度60℃とした他は実施例2と同じ条件で反応させた。フッ化メタンはほとんど得られなかった。
【0072】
4.
比較例2
水を溶媒として用いた実施例4〜11と対比する目的で、ジグライム(Diglyme)を溶媒に用いて同様の反応を行った。反応条件は表2に示した通りとした。
【0073】
結果を表2に示す。収率は1.5%であった。KFの溶媒への溶解量がわずかであるため反応が進行しなかったと考えられる。
【0074】
【表2】
【0075】
5.
実施例12
アリーン冷却器とテドラーパックを取り付けたガラス製の50mlナスフラスコにEt
3N・3HF (2.02g, 12.5mmol)とMe
2SO
4 (1.58g, 12.5mmol)を入れ、140℃にて5時間反応させた。捕集されたテドラーパック内のガス量は0.33gであった。発生したガスのCH
3Fの選択率は100%であった。当該反応のフッ化メタンの理論収量を12.5mmolとし、フッ化メタンの収量を計算すると、フッ化メタンの収率は77%であった。
【0076】
6.
実施例13
アリーン冷却器とテドラーパックを取り付けたガラス製の50mlナスフラスコにEt
3N・3HF (4.03g, 25mmol)とMe
2SO
4 (3.15g, 25mmol)を入れ、100℃にて5時間反応させた。捕集されたテドラーパック内のガス量は0.55gであった。発生したガスのCH
3Fの選択率は100%であった。フッ化メタンの理論収量を25mmolとし、フッ化メタンの収量を計算すると、フッ化メタンの収率は65%であった。
【0077】
以上の通り、実施例12および13では、140℃以下の低温において、大気圧中、ガラス製の容器でフッ化メタンを効率よく生成できた。