特許第5790862号(P5790862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5790862やに入りはんだ用フラックス、フラックスコートはんだ用フラックス、やに入りはんだ及びフラックスコートはんだ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5790862
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】やに入りはんだ用フラックス、フラックスコートはんだ用フラックス、やに入りはんだ及びフラックスコートはんだ
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/14 20060101AFI20150917BHJP
   B23K 35/363 20060101ALI20150917BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20150917BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
   B23K35/14 B
   B23K35/363 C
   !B23K35/26 310A
   !C22C13/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-261840(P2014-261840)
(22)【出願日】2014年12月25日
【審査請求日】2014年12月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 基泰
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】久木 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】川中子 宏
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 加一
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−255153(JP,A)
【文献】 特開2009−246356(JP,A)
【文献】 特開2013−086177(JP,A)
【文献】 特開2012−016737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 13/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジンエステルが30質量%以上80質量%以下かつ、
活性剤が5質量%以上15質量%以下を含有し、
前記ロジンエステルを含むベース材の合計が85質量%以上95質量%以下であるやに入りはんだ用フラックス。
【請求項2】
線状のはんだにフラックスが充填されたやに入りはんだであって、
前記フラックスは、
ロジンエステルが30質量%以上80質量%以下かつ、
活性剤が5質量%以上15質量%以下を含有し、
前記ロジンエステルを含むベース材の合計が85質量%以上95質量%以下であるやに入りはんだ。
【請求項3】
ロジンエステルが30質量%以上80質量%以下かつ、
活性剤が5質量%以上15質量%以下を含有し、
前記ロジンエステルを含むベース材の合計が85質量%以上95質量%以下であるフラックスコートはんだ用フラックス。
【請求項4】
線状のはんだにフラックスが被覆されたフラックスコートはんだであって、
前記フラックスは、
ロジンエステルが30質量%以上80質量%以下かつ、
活性剤が5質量%以上15質量%以下を含有し、
前記ロジンエステルを含むベース材の合計が85質量%以上95質量%以下であるフラックスコートはんだ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、やに入りはんだに使用されるフラックス、はんだ表面にフラックスが被覆されているフラックスコートはんだに使用するフラックス、フラックスを使用したやに入りはんだ及びフラックスコートはんだに関する。
【背景技術】
【0002】
やに入りはんだは、線状のはんだに固形のフラックスを充填した材料である。フラックスコートはんだは、線状のはんだをフラックスで被覆した材料である。はんだ付けに用いられるフラックスは、はんだ付け時に、はんだ及びはんだ付け対象の金属表面に存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする。フラックスを使用することで、はんだとはんだ付け対象の金属表面との間に金属間化合物を形成させて、強固な接合が得られるようになる。
【0003】
フラックスには、金属酸化物の除去、はんだ溶融時の再酸化の防止、はんだの表面張力の低下等の性能が必要である。このようなフラックスをやに入りはんだやフラックスコートはんだに使用する場合、フラックスには、金属表面の酸化膜を除去して濡れ性を向上させる活性剤と、活性剤を熱から保護するロジン等のベース材とからなるものが用いられる。特許文献1には、やに入りはんだ用フラックスにベース樹脂(後述する本発明のベース材に相当)としてロジンエステルなどのロジン系樹脂をフラックス中3〜60重量%、好ましくは5〜50%の範囲で添加することが開示されている。
【0004】
一般に、フラックスには、はんだ付け時の加熱によって揮発する成分が含まれる。揮発した成分が集合して気泡を形成し、その気泡が破裂すると、フラックスとはんだが飛散することがある。特許文献2には、フラックス内に多数の極微小気泡を発生させて微小ガス抜きを行うことで、フラックスから発生するガスの集中放出を防止したフラックス組成物について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−100279号公報
【特許文献2】特開2012−016737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
はんだ付け時の加熱によって揮発する成分の一部は、視認可能な白煙となる。特に排気設備が不十分な工場内等に発生した白煙が充満すると、作業効率が低下するという問題を引き起こしていた。
【0007】
特許文献1に開示されるフラックスは、上述した問題に対して何ら対策を施していなかった。また、後述する本発明の構成であるロジンエステルを30質量%以上80質量%以下とすることや、ロジンエステルを含むベース材の添加量を85質量%以上95質量%以下とすることの開示は一切なく、実施例においても上述した量のロジンエステルを添加したやに入りはんだの記載はない。特許文献2のフラックス組成物も、上述した問題に対して何ら対策を施しておらず、発生するガスの量を削減することに注目してはいなかった。
【0008】
そこで、本発明はこのような課題を解決したものであって、はんだ付け時に白煙の発生を抑制する、やに入りはんだ用フラックス、フラックスコートはんだ用フラックス、やに入りはんだ及びフラックスコートはんだを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ベース材としてロジンエステルを使用すると、フラックスの白煙の抑制に有効であることを見出した。ロジンエステルに活性剤及びその他のベース材を加えることで、はんだ付け時の白煙の抑制、作業するのに十分なはんだの濡れ性の確保及びフラックス製造時の原料の析出防止を可能とするフラックスが得られることを見出した。
【0010】
本発明のやに入りはんだ用フラックスは、ロジンエステルを30質量%以上80質量%以下かつ活性剤を5質量%以上15質量%以下含有し、やに入りはんだ用フラックスにおけるロジンエステルを含むベース材の合計は、85質量%以上95質量%以下であるものである。
【0012】
本発明のやに入りはんだは、線状のはんだにフラックスが充填されたやに入りはんだであって、フラックスは、ロジンエステルを30質量%以上80質量%以下かつ活性剤を5質量%以上15質量%以下含有し、ロジンエステルを含むベース材の合計が85質量%以上95質量%以下であるものである。
【0014】
本発明のフラックスコートはんだ用フラックスは、ロジンエステルを30質量%以上80質量%以下かつ活性剤を5質量%以上15質量%以下含有し、フラックスコートはんだ用フラックスにおけるロジンエステルを含むベース材の合計は、85質量%以上95質量%以下であるものである。
【0016】
本発明のフラックスコートはんだは、線状のはんだにフラックスが被覆されたフラックスコートはんだであって、フラックスは、ロジンエステルを30質量%以上80質量%以下かつ活性剤を5質量%以上15質量%以下含有し、ロジンエステルを含むベース材の合計が85質量%以上95質量%以下であるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るやに入りはんだ用フラックス及びフラックスコートはんだ用フラックスによれば、はんだ付け時の白煙を抑制することができる。これにより、室内に白煙が充満することを防ぎ、作業者は、効率よくはんだ付け作業を行うことができる。はんだの濡れ性を阻害しないため、はんだ不良を抑えることができる。フラックス製造時に原料がフラックス中に析出することを防止できるため、はんだにフラックスを充填するときの不良を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態としてのやに入りはんだ用フラックスについて説明する。但し、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0020】
[やに入りはんだ用フラックスの組成例]
本実施の形態のフラックスは、はんだ付け温度でも揮発しにくく、白煙を抑えることができるロジンエステルを含む。そしてロジンエステルは白煙を抑制するが、はんだの濡れ性と析出に影響を及ぼすのではんだの濡れ性を向上させる活性剤及びフラックス製造時の原料の析出を抑えるその他のベース材を含む。
【0021】
ロジンエステルとしては、例えば、水添ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン等のロジンをエステル化したものが使用される。
【0022】
その他のベース材としては、例えば、はんだ付け温度でも揮発しにくい樹脂等が用いられる。このような樹脂としては、水添ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、ワックス、高分子化合物及び脂肪酸エステルの何れか、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。その他のベース材は、これらに限定されるものではない。
【0023】
活性剤としては、例えば、ハロゲン活性剤、有機酸及びイミダゾールの何れか、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。本発明のやに入りはんだ用フラックスは、固形の形態で使用されるものであるが、チキソ剤、溶剤及び界面活性剤の何れか、又はこれらの組み合わせで、本発明の効果である白煙の抑制を損なわない程度に含有してもよい。
【0024】
本実施の形態において、これらのフラックスを利用したやに入りはんだ及びフラックスコートはんだが使用される。
【0025】
[試験方法]
本例では、ロジンエステル、その他のベース材及び活性剤の配合量を見極めるため、やに入りはんだを利用して次のように試験を行った。まず、表1に示す割合で、やに入りはんだ用フラックスを調合し、合金組成がSn−3Ag−0.5Cuのはんだに適用した(はんだ組成中の数字は質量%を示す)。続いて、各実施例及び比較例について、このやに入りはんだを用いて白煙量試験、濡れ性を評価するための濡れ広がり試験及び原料の析出試験を行った。なお、ロジンエステル及びその他のベース材の配合量の和を、ベース材としている。表1における組成率は質量%である。
【0026】
(1)白煙量試験
上述のように調合したフラックスを充填した、やに入りはんだの白煙量試験を以下の手順で行った。
1.はんだこて(白光(株)社製 本体:FX−951、はんだこて本体:FM2028、こて先:T12−C4 Cカットφ4mm)と、線径が0.8mmで、やに入りはんだ全体の重量に対してフラックス量が3%になるように調整した各例のやに入りはんだと、はんだ送り装置と、カメラを用意した。
2.はんだ送り装置にやに入りはんだを設置し、こて先温度を380℃に設定したはんだこてを用いて、やに入りはんだを20mm/sの速度でこて先に10秒間送り、加熱した。
3.白煙の観察箇所の背景を黒い布(例えばベルベット)で囲み、発生する白煙をカメラによって動画撮影した。
4.やに入りはんだがはんだこてのこて先に接触したときの画像1と、接触から3秒後の画像2を、解像度:640×480の静止画として取り出した。
5.画像ソフト:AT−Imageを使用し、画像2から画像1に映っている余分なものを削除し、白煙のみの画像にした。さらに、各ピクセルの明るさを0から255の256段階に分け、各明るさのピクセル数を出し、明るさが0〜19までの値はノイズとして削除した。そして、各明るさとピクセル数の積を算出し、すべての値の和を白煙の発生量Kとした。
【0027】
白煙量試験におけるカメラとはんだごての距離は、白煙がすべて映像として映せる距離で、静止画像として取り出した時、縦方向の8割程度に白煙が収まる距離が好ましい。各測定における測定条件は同一で行う必要がある。
【0028】
上述の白煙量試験は、使用するカメラや測定条件により白煙の発生量の値が異なる。そのため、ロジンエステル100%をフラックスとしたやに入りはんだを用いて白煙の発生量Kを測定し、白煙の発生度K/Kを算出することで測定条件の差を無くした。
【0029】
白煙量試験において、表中の「○」は、白煙の発生度が6以下であったことを、「×」は、白煙の発生度が6超であったことを表す。
【0030】
はんだ付け時に発生する白煙量が多く、室内に白煙が充満すると、はんだ付け作業の効率を低下させる。一方で、白煙量が少ないと、作業者は、効率よくはんだ付け作業を行うことができる。
【0031】
(2)濡れ広がり試験
続いて、フラックスを充填したやに入りはんだの濡れ広がり試験を以下の手順で行った。JIS Z-3197 8.3.1.1に準じてはんだの広がり率S(%)を測定する。
1.厚さ0.3mm、大きさ30mm×30mmの酸化銅板の上にやに入りはんだ0.3±0.03gを渦巻き状に置いたものを試料とする。
2.試料を250℃のはんだバス(もしくはホットプレート)ではんだ溶融開始後30秒間加熱保持した。
3.加熱源から下ろした後、室温まで冷却し凝固させ、フラックス残渣を洗浄後、マイクロメーターにてはんだの高さを測定した。
5.この高さをH(mm)、試験に用いたはんだを球としてみなした場合の直径D(mm)として、数1からはんだの広がり率S(%)を測定する。
【0032】
【数1】
【0033】
濡れ広がり試験において、表中の「○」は、S=77.0%以上を、「×」は、S=77.0%未満を表す。濡れ性の劣るフラックスをはんだに用いると、ボイドの発生等のはんだ付け不良を引き起こし易くなり、濡れ性の良いフラックスをはんだに用いると、はんだ付け不良を起こしにくくなる。
【0034】
(3)原料の析出試験(析出の有無)
続いて、フラックス保持時の析出試験を行った。
製造したフラックスを130℃の恒温槽に保持し、2時間経過後のフラックスの濁りの有無を肉眼で確認した。
【0035】
原料の析出試験において、表中の「○」は、原料の析出がなかったことを、「×」は、析出が見られたことを表す。原料の析出は、はんだにフラックスを詰めるときの不良の原因となり、原料の析出がない場合は、はんだにフラックスを適切に詰めることができる。
【0036】
各やに入りはんだ用フラックスにおける、白煙量試験、濡れ広がり試験及び原料の析出試験の結果を表1に示す。以下、表1を参照して各試験結果について説明する。
【0037】
【表1】
【0038】
[白煙量試験の結果について]
白煙量試験で良好な結果が得られた実施例及び比較例は、何れもロジンエステルを30質量%以上含有することが表から読み取れる。
【0039】
一方で、ロジンエステルの含有割合が30質量%に満たない比較例1及び比較例7は、何れも白煙量試験で良好な結果を得られなかった。比較例1、7を、活性剤の含有量が同じ実施例3、1とそれぞれ比較すると、次のようなことがわかる。
【0040】
比較例1と実施例3は、活性剤の含有割合が10質量%と等しい。しかし白煙量試験において、比較例1では良好な結果を得られなかったが、実施例3では良好な結果を得ることができた。比較例1はロジンエステルが0質量%であり、実施例3はロジンエステルを35質量%含有するという点が異なる。
【0041】
比較例7と実施例1も、活性剤の含有割合が15質量%と等しい。しかし白煙量試験において、比較例7では良好な結果を得られなかったが、実施例1は、良好な結果を得ることができた。比較例7はロジンエステルを20質量%含有し、実施例1はロジンエステルを30質量%含有するという点が異なる。
【0042】
これらの結果により、白煙量には、ロジンエステルの含有割合が関係することがわかる。ロジンエステルを30質量%以上含有するフラックスは、はんだ付け時の白煙量を抑えることができると推測される。
【0043】
しかし、比較例4は、ロジンエステルを40質量%含有するものの、白煙量試験で良好な結果を得ていない。比較例4と同じくロジンエステルを40質量%含有する実施例4は、白煙量試験で良好な結果を得ている。実施例4と比較例4との相違点は、活性剤とベース材の含有割合である。実施例4は、活性剤を10質量%含有する一方で、比較例4は、活性剤を17質量%含んでいる。この17質量%という割合は、実施例及び比較例の中で最も多い。ベース材については、実施例4が90質量%含有する一方で、比較例4は、83質量%である。これにより、活性剤が15質量%を超え、ベース材が85質量%に満たないと、白煙量が増えてしまうことがわかった。
【0044】
白煙量試験で良好な結果を得た実施例1〜9、比較例2、3、5、6は、何れもロジンエステルを30質量%以上含み、かつ、活性剤の含有量が15質量%以下という条件を満たす。これらのベース材の含有割合は、何れも85質量%以上である。
【0045】
これらの結果により、ロジンエステルが30質量%以上かつ活性剤を15質量%以下含有するやに入りはんだ用フラックスは、白煙量試験で良好な結果を得ることが見いだせた。更に、ベース材を85質量%以上含有することが好ましいことがいえる。
【0046】
[濡れ広がり試験の結果について]
濡れ広がり試験で良好な結果を得た実施例及び比較例は、何れも活性剤を5質量%以上含み、ベース材は95質量%以下であることが表から読み取れる。
【0047】
比較例2、5、6は、濡れ広がり試験において、良好な結果を得られなかった。これらの比較例は、活性剤の含有割合が何れも5質量%未満である。また、ベース材の含有割合が95質量%を超えている。比較例2、5、6をロジンエステルの含有量が同じ実施例1、5、8とそれぞれ比較すると、以下のようなことがわかる。
【0048】
比較例2と実施例1は、共にロジンエステルを30質量%含む。しかし比較例2と実施例1とは、活性剤の含有割合が異なる。濡れ広がり試験において、活性剤を15質量%含有する実施例1が良好な結果を得た一方、活性剤を2質量%のみ含有する比較例2は、良好な結果を得なかった。
【0049】
比較例5と実施例5は、共にロジンエステルを50質量%含む。しかし比較例5と実施例5とは、活性剤の含有割合が異なる。濡れ広がり試験において、活性剤を10質量%含有する実施例5が良好な結果を得た一方、活性剤を1質量%のみ含有する比較例5は、良好な結果を得なかった。
【0050】
比較例6と実施例8は、共にロジンエステルを80質量%含む。しかし比較例6と実施例8とは、活性剤の含有割合が異なる。濡れ広がり試験において、活性剤を5質量%含有する実施例8が良好な結果を得た一方、活性剤を1質量%のみ含有する比較例6は、良好な結果を得なかった。
【0051】
これらの結果により、はんだ付けするのに十分なはんだの濡れ性を得るためには、活性剤を5質量%以上含有することが好ましいことがわかる。ベース材は、95質量%以下であることが好ましい。
【0052】
以上の2試験により、ロジンエステルを30質量%以上、活性剤を5質量%以上15質量%以下含有するやに入りはんだ用フラックスは、はんだ付け時の濡れ性を保ちながら白煙の発生を防ぐことができるといえる。更に、ベース材は、85質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0053】
[原料の析出試験について]
比較例3は、原料の析出が発生した。他の比較例及び実施例は何れにおいても原料の析出が起きなかった。比較例3は、ロジンエステルを90%及び活性剤を10%含有する。比較例3は、ロジンエステルの含有割合が90質量%と非常に多い点がその他の例と相違している。また、比較例3は、その他のベース材を含有していない。
【0054】
この結果により、フラックス製造時に原料の析出を抑えるためには、ロジンエステルが80質量%以下であることが好ましいことを見出した。
【0055】
以上の結果より、フラックス製造時に原料を析出せずに、はんだ付け時に濡れ性を保ちながら白煙の発生を抑えた、やに入りはんだ用フラックスは、ロジンエステルを30質量%以上80質量%以下かつ活性剤を5質量%以上15質量%以下含有することが好ましいことがわかった。ロジンエステルを含むベース材の合計は、85質量%以上95質量%以下であることが、更に好ましいことがわかった。
【0056】
なお、一般にやに入りはんだのはんだ付けは、はんだこての温度が350℃程度で行われる。はんだ付け時の熱が高過ぎると、はんだこてに付着したフラックスの焦げがはんだ付け部に付着して、はんだ付け不良の原因となりやすい。しかし本発明のフラックスを使用したやに入りはんだは、はんだこての温度が450℃等の高温で使用しても、良好なはんだ付け性を実現できる。
【0057】
また本発明フラックスは、やに入りはんだ以外にもはんだ表面上にフラックスを被覆するフラックスコートはんだにも適用可能である。はんだ表面へフラックスを被覆する方法については、浸漬法やスプレーフラクサー等を用いた従来公知の方法を用いればよい。
【0058】
本発明を構成するはんだについて、線はんだを例に説明したが、本発明のはんだの形状は線状に限定されるわけではない。具体的にはペレット、ワッシャー、ディスク等のプリフォームはんだと呼ばれる形状を加工したはんだに適用可能である。前記プリフォームはんだは、フラックスが充填されたやに入りはんだ、フラックスが被覆されたフラックスコートはんだのどちらの形態であっても、白煙の発生を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、やに入りはんだに使用されるフラックス、フラックスを使用したやに入りはんだ、フラックスコートはんだに使用されるフラックス及びフラックスを使用したフラックスコートはんだに適用される。
【要約】
【課題】はんだ付け時に発生する白煙の量を減らすと共に十分な濡れ性を有し、かつ、フラックス製造時に原料がフラックス中に析出することを防ぐことができるはんだ用フラックスを提供する。
【解決手段】ロジンエステルが30質量%以上80質量%以下かつ、活性剤が5質量%以上15質量%以下を含有するやに入りはんだ用フラックスである。このロジンエステルを含むベース材の合計が85質量%以上95質量%以下で有ることが好ましい。
【選択図】無