特許第5790864号(P5790864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790864
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】超音波発生装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20150917BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20150917BHJP
   G01S 7/521 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H04R1/34 330Z
   H04R17/00 330G
   G01S7/521 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-500672(P2014-500672)
(86)(22)【出願日】2013年2月13日
(86)【国際出願番号】JP2013053407
(87)【国際公開番号】WO2013125412
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-37503(P2012-37503)
(32)【優先日】2012年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩誠
(72)【発明者】
【氏名】三谷 彰宏
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−344582(JP,A)
【文献】 特開平05−219588(JP,A)
【文献】 特開2010−141397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 17/00−17/08
G01S 1/72− 1/82
G01S 3/80− 3/86
G01S 5/18− 5/30
G01S 7/52− 7/64
G01S 15/00−15/96
H01L 41/00−41/47
H04R 1/00− 1/02
H04R 1/06
H04R 1/20− 1/34
H04R 1/40
H04R 1/44
H04R 3/00
H04R 9/00
H04R 13/00
H04R 15/00
H04R 17/00−17/02
H04R 17/10
H04R 19/00
H04R 23/00
H04R 29/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケース材と、
前記第1のケース材に固定されている第2のケース材と、
前記第1及び第2のケース材で形成されている収納空間内に収納されている超音波発生素子と、
前記第1のケース材上に設けられており、前記超音波発生素子の下面と前記第1のケース材の上面との間に空間を形成するように、前記超音波発生素子を支持している第1の支持部材とを備え、
前記第1のケース材及び前記第2のケース材の一方に超音波を放出する音波放出孔が設けられており、前記超音波発生素子により発生した音波が前記超音波発生素子の下面と前記第1のケース材の上面との間の空間を経て前記音波放出孔に至る超音波発生装置であって、
前記超音波発生素子の下面と前記第1のケース材の上面との間の空間を含み、前記超音波発生素子の音圧発生中心点から前記音波放出孔に至る第1の音響経路において、該第1の音響経路の横断面が徐々に小さくなる部分を有するように複数の前記第1の支持部材が設けられている、超音波発生装置。
【請求項2】
平面視した際に、前記超音波発生素子の音圧発生中心点から複数の前記第1の支持部材が設けられている部分に向かうにつれて、複数の前記第1の支持部材間の間隔が狭くなっている、請求項1に記載の超音波発生装置。
【請求項3】
前記超音波発生素子が、中央に凹部及び貫通孔のうち一方が形成されているスペーサと、前記スペーサの一方主面に配置されており、かつ平板状の第1の圧電振動子と、前記スペーサの他方主面に配置されており、かつ平板状の第2の圧電振動子とを有し、前記第1の圧電振動子と前記第2の圧電振動子とが互いに逆位相で振動する、請求項1または2に記載の超音波発生装置。
【請求項4】
前記超音波発生素子と前記第2のケース材との間に設けられており、前記超音波発生素子の上面と前記第2のケース材の下面との間に空間を形成するように、前記超音波発生素子を支持している第2の支持部材をさらに備え、
前記超音波発生素子の上面と前記第2のケース材の下面との間の空間を含み、前記超音波発生素子の音圧発生中心点から前記音波放出孔に至る第2の音響経路において、該第2の音響経路の横断面が徐々に小さくなる部分を有するように複数の前記第2の支持部材が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波発生装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の支持部材の少なくとも一方が複数設けられており、隣り合う支持部材間が第1又は第2の音響経路の一部を構成しており、該隣り合う支持部材間において音響経路の横断面が徐々に小さくなる部分が構成されている、請求項に記載の超音波発生装置。
【請求項6】
前記隣り合う支持部材が、平面視した際に、前記超音波発生素子の音圧発生中心点から支持部材が隣り合っている部分に向かうにつれて、隣り合う支持部材間の間隔が狭くなる形状を有する、請求項に記載の超音波発生装置。
【請求項7】
前記隣り合う支持部材の対向し合っている辺が前記隣り合う支持部材間を通る音響経路に対して斜め方向に交差する方向に延びており、隣り合う一方の支持部材の前記辺が、隣り合う他方の支持部材の前記辺と前記隣り合う支持部材間の音響経路に対して線対称に配置されている、請求項に記載の超音波発生装置。
【請求項8】
前記支持部材が平面視で略三角形の形状を有し、隣り合う支持部材の対向し合っている辺が略三角形の一辺により構成されている、請求項に記載の超音波発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を用いた超音波発生素子を有する超音波発生装置に関する。より詳細には、本発明は、超音波発生素子がケースに収納されており、超音波発生素子からケースに設けられた音波放出孔に至る音響経路が構成されている超音波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、正確な距離測定方法として、超音波を利用した距離測定方法が活用されている。この方法では、超音波発生装置から超音波を放出し、被測定物に当てる。被測定物から反射した超音波を超音波マイク装置で検出する。放出から検出までに要した時間から、被測定物までの距離を算出する方法である。
【0003】
たとえば、特許文献1には、筺体に圧電振動子を装着してなる超音波発生装置が開示されている。なお、特許文献1の装置は、超音波発生装置と超音波マイク装置とを1つの装置で兼用させた、超音波センサ装置として構成されている。
【0004】
図9に、特許文献1に開示された超音波発生装置500を示す。超音波発生装置500は、ケース101を有する。ケース101内に、第1の圧電振動子102と、第1の圧電振動子102と逆位相に振動する、第2の圧電振動子103とが設けられている。また、ケース101内の空間は、柔軟性充填材105により満たされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−297219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した距離測定方法において、測定結果をより正確にしたり、測定可能距離をより長くしたりするためには、超音波発生装置の出力音圧を高くすることが必要である。
【0007】
しかしながら、従来の超音波発生装置500において、出力音圧を高くするのには限界があった。出力音圧を高くするためには、圧電振動子の分極を大きくしたり、圧電振動子に投入する電力を大きくしたりしなければならない。しかしながら、圧電振動子の分極には限界がある。また、投入する電力を大きくし過ぎると、圧電振動子が破壊限界を超えてしまう。従って、出力音圧を高くするのには限界があった。
【0008】
本発明の目的は、出力音圧をより一層高め得る超音波発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る超音波発生装置は、第1のケース材と、第1のケース材に固定されている第2のケース材と、第1及び第2のケース材で形成されている収納空間内に収納されている超音波発生素子とを備える。また、本発明に係る超音波発生装置は、第1のケース材上に設けられており、超音波発生素子の下面と第1のケース材の上面との間に空間を形成するように、超音波発生素子を支持している第1の支持部材をさらに備える。本発明では、第1のケース材及び第2のケース材の一方に超音波を放出する音波放出孔が設けられている。超音波発生素子により発生した音波が超音波発生素子の下面と第1のケース材の上面との間の空間を経て音波放出孔に至る。本発明では、超音波発生素子の下面と第1のケース材の上面との間の空間を含み、超音波発生素子の音圧発生中心点から音波放出孔に至る第1の音響経路において、該音響経路の横断面が他の部分よりも小さくなる部分を有するように第1の支持部材が設けられている。
【0010】
本発明に係る超音波発生装置のある特定の局面では、超音波発生素子が、中央に凹部及び貫通孔のうち一方が形成されているスペーサと、スペーサの一方主面に配置されており、かつ平板状の第1の圧電振動子と、スペーサの他方主面に配置されており、かつ平板状の第2の圧電振動子とを有する。第1の圧電振動子と第2の圧電振動子とが互いに逆位相で振動する。
【0011】
本発明に係る超音波発生装置の他の特定の局面では、超音波発生素子と第2のケース材との間に設けられており、超音波発生素子の上面と第2のケース材の下面との間に空間を形成するように、超音波発生素子を支持している第2の支持部材がさらに備えられている。超音波発生素子の上面と第2のケース材の下面との間の空間を含み、超音波発生素子の音圧発生中心点から音波放出孔に至る第2の音響経路において、該音響経路の横断面が他の部分よりも小さくなる部分を有するように第2の支持部材が設けられている。この場合には、第1,第2の音響経路の双方において音圧を効果的に高めることができる。
【0012】
本発明に係る超音波発生装置のさらに他の特定の局面では、第1及び第2の支持部材の少なくとも一方が複数設けられている。隣り合う支持部材間が第1又は第2の音響経路の一部を構成している。該隣り合う支持部材間において音響経路の横断面が他の部分よりも小さくなる部分が構成されている。
【0013】
本発明に係る超音波発生装置のさらに他の特定の局面では、隣り合う支持部材が、平面視した際に、超音波発生素子の音圧発生中心点から支持部材が隣り合っている部分に向かうにつれて、隣り合う支持部材間の間隔が狭くなる形状を有する。
【0014】
本発明に係る超音波発生装置のさらに別の特定の局面では、隣り合う支持部材の対向し合っている辺が隣り合う支持部材間を通る音響経路に対して斜め方向に交差する方向に延びている。隣り合う一方の支持部材の辺が、隣り合う他方の支持部材の辺に対して、隣り合う支持部材間の音響経路に対して線対称に配置されている。
【0015】
本発明に係る超音波発生装置のさらに他の特定の局面では、支持部材が平面視で略三角形の形状を有し、隣り合う支持部材の対向し合っている辺が略三角形の一辺により構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る超音波発生装置では、超音波発生素子の下面と第1のケース材の上面との間の空間を含み、超音波発生素子の音圧発生中心点から音波放出孔に至る第1の音響経路において、該音響経路の横断面が他の部分よりも小さくなる部分を有するように第1の支持部材が設けられているため、出力音圧を効果的に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る超音波発生装置の分解斜視図であり、図1(b)は、第1のケース材上に複数の第1の支持部材が設けられている構造及び第1の音響経路を説明するための模式的平面図であり、図1(c)は、第1の音響経路における音響経路の横断面が相対的に小さくなる部分を模式的に示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る超音波発生装置の外観を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係る超音波発生装置の正面断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係る超音波発生装置で用いられている超音波発生素子の分解斜視図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態に係る超音波発生装置における第1の支持部材の寸法と出力音圧特性との関係を示す図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る超音波発生装置を説明するための模式的平面図である。
図7図7は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る超音波発生装置を説明するための模式的平面図である。
図8図8は、本発明の第2の実施形態に係る超音波発生装置の正面断面図である。
図9図9は、従来の超音波発生装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0019】
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る超音波発生装置1の分解斜視図であり、図2はその外観を示す斜視図であり、図3はその正面断面図である。
【0020】
超音波発生装置1は、超音波を発生させる超音波発生素子2と、ケース3とを有する。超音波発生素子2がケース3内に収納されている。
【0021】
ケース3は、平板状の第1のケース材11と、キャップ状の第2のケース材12とを有する。すなわち、平板状の第1のケース材11上に、下方に開いた開口を有する第2のケース材12が固定されている。それによって、内部に収納空間を有するケース3が構成されている。この収納空間内に超音波発生素子2が収納されている。
【0022】
図2に斜視図で示すように、第2のケース材12の天板部には、複数の音波放出孔12a〜12dが設けられている。
【0023】
図4は、超音波発生素子2の分解斜視図である。超音波発生素子2は、スペーサ15を有する。スペーサ15は、例えば樹脂やセラミックスなどの適宜の剛性材料からなる。スペーサ15の中央領域には貫通孔である開口15aが形成されている。なお、貫通孔である開口15aに代えて、スペーサ15の中央領域において表面と裏面とに凹部を形成してもよい。
【0024】
スペーサ15の上面に、接着剤16を介して第1のバイモルフ型圧電振動子17が配置されている。接着剤16は、開口16aを有する。接着剤16は、スペーサ15の開口15aを除く領域において、スペーサ15の上面に塗布されている。
【0025】
同様に、スペーサ15の下面には、接着剤18を介して第2のバイモルフ型圧電振動子19が配置されている。接着剤18は、開口18aを有する。接着剤18は、スペーサ15の開口15aを除く領域において、スペーサ15の下面に塗布されている。なお、図3では、接着剤16,18の図示は省略されている。
【0026】
第1,第2のバイモルフ型圧電振動子17,19において、中央領域が圧電効果により振動する部分である。従って、この振動を妨げないように、上記開口15aがスペーサ15の中央領域に形成されている。
【0027】
図3に示すように、第1のバイモルフ型圧電振動子17は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスからなる圧電板17aを有する。圧電板17aの上面中央には第1の励振電極17bが設けられている。圧電板17aは複数の圧電体層を有する。第1の励振電極17bと圧電体層を介して重なり合うように、内部励振電極17cが設けられている。さらに、内部励振電極17cと圧電体層を介して重なり合うように、第2の励振電極17dが圧電板17aの下面中央に設けられている。図4に示すように、第1の励振電極17bは、隣り合う2つのコーナー部に向かって延びる引き出し電極17b1,17b2に連ねられている。
【0028】
第1の励振電極17bと内部励振電極17cとの間の圧電体層及び内部励振電極17cと第2の励振電極17dとの間の圧電体層は、厚み方向において同一方向に分極されている。他方、バイモルフ型圧電振動子として動作させるために、第1の励振電極17b及び第2の励振電極17dが、図3に示す第1の端子電極21に電気的に接続されている。端子電極21は、超音波発生素子2の一方端面に設けられている。超音波発生素子2の他方端面に端子電極22が設けられている。内部励振電極17cが第2の端子電極22に電気的に接続されている。従って、第1,第2の端子電極21,22間に交流電界を印加することにより、第1のバイモルフ型圧電振動子17が振動する。
【0029】
第2のバイモルフ型圧電振動子19も第1のバイモルフ型圧電振動子17と同様に構成されている。もっとも、第1のバイモルフ型圧電振動子17に対して、第2のバイモルフ型圧電振動子19は逆位相で振動するように構成されている。第2のバイモルフ型圧電振動子19もまた、第1,第2の端子電極21,22に電気的に接続されている。従って、第1,第2の端子電極21,22間に交流電界を印加することにより、第2のバイモルフ型圧電振動子19が振動する。
【0030】
よって、第1,第2の端子電極21,22間に交流電界を印加することにより、超音波発生素子2は、座屈音叉型振動子として動作し、超音波を発生する。この場合、超音波は、超音波発生素子2の下面から、超音波発生素子2の下面と第1のケース材11の上面との間の空間、超音波発生素子2の側面と第2のケース材12の側面との間の空間を経て、前述した音波放出孔12a〜12dに至る。同様に、超音波は、超音波発生素子2の上面から、超音波発生素子2の上面と第2のケース材12の下面との間の空間を経て、音波放出孔12a〜12dに至る。それによって、音波放出孔12a〜12dから超音波が放出される。
【0031】
上記超音波発生素子2の下面と第1のケース材11の上面との間の空間を含む超音波の伝搬経路を第1の音響経路Aとする。他方、超音波発生素子2の上面と第2のケース材12の下面との間の空間を含む超音波の伝搬経路を第2の音響経路Bとする。超音波発生装置1では、上記超音波発生素子2により発生した超音波が、図3に破線で示す第1,第2の音響経路A,Bを伝搬し、音波放出孔12a〜12dに至る。そして、超音波が音波放出孔12a〜12dから放出される。
【0032】
ところで、本実施形態では、超音波発生素子2は、第1のケース材11上に複数の第1の支持部材23を介して固定されている。第1の支持部材23は、超音波発生素子2の下面と第1のケース材11の上面との間に空間が形成されるように、超音波発生素子2を支持している。複数の第1の支持部材23は適宜の剛性材料からなる。このような剛性材料としては、セラミックス、金属または樹脂などを挙げることができる。
【0033】
詳細には、複数の第1の支持部材23は第1のケース材11上に設けられており、超音波発生素子2は図示しない接着剤により複数の第1の支持部材23と接合されている。そして、上記第1の支持部材23の厚みにより、前述した第1の音響経路Aを構成する空間が形成されている。
【0034】
本実施形態の特徴は、上記第1の音響経路Aにおいて、音響経路の横断面が他の部分よりも相対的に小さくなる部分が形成されるように、第1の支持部材23が設けられていることにある。これを、図1(b),(c)を参照してより具体的に説明する。図1(b)は、第1のケース材11上に複数の第1の支持部材23が設けられている構造を示す模式的平面図である。図1(c)は、第1の音響経路Aにおける音響経路の横断面が相対的に小さくなる部分を模式的に示す図である。なお、図1において、破線Cは第2のケース材12の接合される部分を示す。
【0035】
図1(c)において、第1の音響経路Aの方向を矢印Dで示す。すなわち、第1のケース材11上に位置している超音波発生素子2の下面側の中心が超音波発生中心点Pとなる。この超音波発生中心点Pから、上記第1の音響経路Aにおいて、矢印Dが示すように超音波が進行する。
【0036】
本実施形態では、第1の支持部材23が、平面視して直角三角形の形状を有する。そして、第1の音響経路Aにおいて、超音波発生中心点Pから第1の支持部材23,23が隣り合っている部分に向かうにつれ、隣り合う第1の支持部材23,23間の間隔が狭くなっている。より詳細には、隣り合う第1の支持部材23,23の直角三角形の形状の斜辺同士が矢印Dで方向を示す第1の音響経路Aを介して対向している。さらに、該斜辺は、第1の音響経路Aが超音波発生中心点Pから遠ざかるにつれて第1の音響経路A側に近づくように延ばされている。そのため、超音波発生中心点Pから第1の音響経路Aの進行方向前方に行くに従い、隣り合う第1の支持部材23,23間の間隔が狭くなっている。
【0037】
隣り合う第1の支持部材23,23が対向している部分を超えると、第1の音響経路Aは広がることとなる。すなわち、図1(c)に模式的平面図に示すように、第1の音響経路Aでは、音響経路の横断面が他の部分よりも相対的に小さくなる部分Xが設けられている。それによって、出力音圧を効果的に高めることが可能とされている。
【0038】
図1(b)に示すように、本実施形態では、第1の支持部材23,23が隣り合っている部分が4箇所存在する。従って、4つの第1の音響経路Aの部分において出力音圧が高められている。なお隣り合う第1の支持部材23,23の数は特に限定されるものではない。
【0039】
上記実施形態の超音波発生装置1において、第1の支持部材23の寸法を変化させ、出力音圧特性を測定した。結果を図5に示す。図5は、本実施形態に係る超音波発生装置1における第1の支持部材23の寸法と出力音圧特性との関係を示す図である。なお、超音波発生装置1において、図1(c)の寸法Eは3.3mmとした。すなわち、隣り合う第1の支持部材23,23の外側端同士の間の距離を寸法Eとし、この寸法Eを支持した。そして、第1の支持部材23において、直角三角形の直交し合う2辺の寸法を0.5mm、1.0mm、1.2mm、1.5mmと変化させた。従って、隣り合う第1の支持部材23,23間の最狭部分の寸法は、それぞれ、2.3mm、1.3mm、0.9mm及び0.3mmとなる。
【0040】
図5において、実線は第1の支持部材23において、直角三角形の直交し合う2辺の寸法が0.5mmの場合の結果を、破線は1.0mmの場合の結果を、一点鎖線は1.0mmの場合を、二点鎖線は1.5mmの場合の結果を示す。また、第1の支持部材23の厚みは0.10mmとした。
【0041】
図5から明らかなように、隣り合う第1の支持部材23,23間の最狭部分の寸法が小さくなるにつれ、出力音圧が高くなっていることがわかる。また、図5に、上記第1の支持部材23の代わりに、第1の音響経路中に音響経路の横断面が他の部分よりも相対的に小さくなる部分を有しない支持部材を用いた比較例の出力音圧特性を破線Fで示す。破線Fで示す比較例に比べ、上記実施形態では、第1の音響経路Aにおいて、平面視して直角三角形の形状を有する第1の支持部材23,23が対向し、音響経路の横断面が他の部分よりも相対的に小さくなる部分Xが設けられているため、出力音圧を効果的に高め得ることがわかる。
【0042】
図6は、上記第1の実施形態の第1の変形例に係る超音波発生装置を説明するための模式的平面図である。詳細には、図6は、図1(c)と同様に、第1の音響経路Aにおける音響経路の横断面が相対的に小さくなる部分を模式的に示す図である。本変形例では、第1の支持部材23が平面視して略L字状の形状を有している。この場合においても、超音波発生中心点Pから第1の音響経路Aの進行方向前方に行くと、隣り合う第1の支持部材23,23間の間隔が狭くなっている。これにより、第1の音響経路Aでは、音響経路の横断面が他の部分よりも相対的に小さくなる部分が設けられている。そのため、上記第1の実施形態と同様に、出力音圧を効果的に高めることができる。
【0043】
図7は、第1の実施形態の第2の変形例に係る超音波発生装置を説明するための模式的平面図である。詳細には、図7は、図1(c)と同様に、第1の音響経路Aにおける音響経路の横断面が相対的に小さくなる部分を模式的に示す図である。本変形例では、第1の実施形態における平面視して直角三角形の形状の第1の支持部材23の斜辺両端部分が切り落とされている。この場合においても、超音波発生中心点Pから第1の音響経路Aの進行方向前方に行くと、隣り合う第1の支持部材23,23間の間隔が狭くなっている。これにより、第1の音響経路Aでは、音響経路の横断面が他の部分よりも相対的に小さくなる部分が設けられている。従って、上記第1の実施形態と同様に、出力音圧を効果的に高めることができる。
【0044】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る超音波発生装置1Aを説明するための正面断面図である。第1の実施形態では、超音波発生素子2の下面側に第1の支持部材23が複数設けられ、それによって出力音圧が高められていた。第2の実施形態では、第1の実施形態の構造に加えて、超音波発生素子2の上面に第2の支持部材31が設けられている。第2の支持部材31は、超音波発生素子2の上面と第2のケース材12の下面との間に空間が形成されるように、超音波発生素子2を支持している。図8では示されていないが、第2の支持部材31は、平面視した際に、第1の支持部材23と同様に構成されている。従って、複数の第2の支持部材31が設けられているため、第2の音響経路Bでは、音響経路の横断面が他の部分よりも相対的に小さくなる部分が設けられている。従って、第2の音響経路Bにおいても、出力音圧を効果的に高めることができる。
【0045】
このように、第1の音響経路A及び第2の音響経路Bの双方において、支持部材を複数設け、出力音圧を高めてもよい。
【0046】
なお、上述した第1,第2の実施形態では、上記座屈音叉型振動子からなる超音波発生素子2を用いたが、本発明の超音波発生装置では、第1のケース材11上に複数の第1の支持部材23に支持される超音波発生素子の構造はこれに限定されるものではない。すなわち、第1の音響経路を経て音波放出孔に至る構造を有する超音波発生装置であれば、他の構造の超音波発生素子を用いてもよい。その場合にも、上記実施形態と同様に出力音圧を効果的に高めることができる。
【符号の説明】
【0047】
1,1A…超音波発生装置
2…超音波発生素子
3…ケース
11,12…第1,第2のケース材
12a〜12d…音波放出孔
15…スペーサ
15a…開口
16…接着剤
16a…開口
17…第1のバイモルフ型圧電振動子
17a…圧電板
17b…第1の励振電極
17b1,17b2…引き出し電極
17c…内部励振電極
17d…第2の励振電極
18…接着剤
18a…開口
19…第2のバイモルフ型圧電振動子
21,22…第1,第2の端子電極
23,31…第1,第2の支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9