(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回生トルク制限部は、前記電動モータにより回生されるエネルギー量の設定値よりも前記上限値が小さい場合には、前記摩擦制動トルクの割合の変更を抑制する請求項2に記載の制動制御装置。
前記回生トルク制限部は、前記トルク算出部が算出した要求制動トルクの変化が所定値以下であるときには、前記摩擦制動トルクの割合を所定期間ごとに低くして回生制動トルクの制限を解除する請求項2又は請求項3に記載の制動制御装置。
ブレーキペダルの入力部材の移動に応じて車輪に摩擦制動トルクを付与する摩擦制動装置と、車輪に回生制動トルクを付与する電動モータと、前記電動モータによる回生電力を充電する充電装置と、前記入力部材の変位量を検出する検出部と、を備える制動制御装置の制御方法であって、
前記検出部により検出された変位量に基づいてドライバの要求制動トルクを求め、前記要求制動トルクを回生制動トルクと摩擦制動トルクとに割り当てる工程と、
前記充電装置又は前記電動モータの動作条件により発生可能な回生制動トルクの制限値を求める工程と、
前記検出部が前記入力部材の変位量を検出してから回生制動トルクが前記制限値に達する前の途中で、要求制動トルクに対する回生制動トルクの割合を小さくする工程と、
を含む制動制御装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両を示す全体構成図である。
【0009】
ハイブリッド車両100は、ハイブリッド車両100を動かす駆動部101と、駆動部101を制御する制御部200と、により構成される。
【0010】
駆動部101は、車体に装着される車輪3a〜3dと、ハイブリッド車両100の動力源であるエンジン110と、車体を制動するときに車体の慣性エネルギーを回生するモータジェネレータ121と、を備える。
【0011】
さらに駆動部101は、車体を制動するときにモータジェネレータ121に生じる回生電力を充電する充電装置122を備える。充電装置122は、モータジェネレータ121の駆動電力を蓄えるバッテリ104と、モータジェネレータ121とバッテリ104との間で電力の供給を制御するインバータ103と、を備える。
【0012】
また、駆動部101は、エンジン110の動力をモータジェネレータ121の入力軸に伝達するクラッチ111と、クラッチ111を駆動する油圧ユニット106と、モータジェネレータ121の出力軸上に設けられた自動変速機130と、を備える。自動変速機130は、モータジェネレータ121の出力軸の動力をプロペラシャフト131に伝達するクラッチ112を有する。
【0013】
さらに駆動部101は、クラッチ112を駆動する油圧ユニット108と、プロペラシャフト131に連結されたディファレンシャル140と、ディファレンシャル140に連結された左ドライブシャフト141及び右ドライブシャフト142と、を備える。また、駆動部101は、ドライバの制動操作に応じて車輪3a〜3dに摩擦制動トルクを付与するブレーキ装置1を備える。
【0014】
エンジン110は、ハイブリッド車両100を走らせる動力源である。エンジン110は、例えば、ガソリンエンジンにより実現される。
【0015】
クラッチ111及び112は、板ばねの付勢力によって完全締結するノーマルクローズ型の乾式クラッチである。クラッチ111及び112としては、例えば、比例ソレノイドにより油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチが用いられる。
【0016】
油圧ユニット106は、クラッチ111を駆動してエンジン110の出力軸とモータジェネレータ121の入力軸とを締結状態又は開放状態にする。油圧ユニット108は、クラッチ112を駆動してモータジェネレータ121の出力軸とプロペラシャフト131の入力軸とを完全締結状態、スリップ締結状態、又は開放状態の3つの状態に切り替える。
【0017】
インバータ103は、直流と交流の2種類の電気を交互に変換する電流変換機である。インバータ103は、モータトルクが目標モータトルクとなるようにバッテリ104からの直流を任意の周波数の三相交流に変換してモータジェネレータ121に供給する。一方、モータジェネレータ121が発電機として機能するときは、モータジェネレータ121からの三相交流を直流に変換してバッテリ104に供給する。
【0018】
モータジェネレータ121は、ロータに永久磁石が埋設されステータにコイルが巻き付けられた同期型の電動モータである。モータジェネレータ121は、ハイブリッド車両100が制動するときに回生制動トルクを車輪3a及び3bに付与する。回生制動トルクとは、車輪3a及び3bに付与される制動トルクのうちモータジェネレータ121の発電に利用される制動トルクのことをいう。
【0019】
モータジェネレータ121は、インバータ103からの三相交流の供給によって制御される。モータジェネレータ121は、バッテリ104から電力の供給を受けると、電動機としてロータを回転駆動させる。また、モータジェネレータ121は、外力によりロータが回転されると、発電機として、ステータコイルの両端に起電力が生じる。モータジェネレータ121に生じた回生電力は、バッテリ104に充電される。
【0020】
自動変速機130は、前進5速、後退1速等の変速比を車速VSPやアクセル開度APO等に応じて自動的に切り換える変速機である。
【0021】
ディファレンシャル140は、自動変速機130の出力軸の動力を、左ドライブシャフト141に連結された車輪3aと、右ドライブシャフト142に連結された車輪3bとにそれぞれ付与する。
【0022】
ブレーキ装置1は、ドライバの制動操作の操作量を検出し、検出した操作量が大きいほど、車輪3a〜3dに付与する摩擦制動トルクを大きくする。ブレーキ装置1は、制御部200から回生制動トルクの値(以下「回生指令値」と称する。)を含む回生協調制御指令を受け付ける。ブレーキ装置1は、回生協調制御指令を受け付けると、ドライバの制動操作に応じた要求制動トルクから回生指令値の回生制動トルク分だけ減じた摩擦制動トルクを車輪3a〜3dに付与する。
【0023】
制御部200は、ハイブリッド車両100の走行及び制動を制御する制動制御装置である。制御部200は、ハイブリッド車両100の走行状態を3つの走行モードに切り替えることが可能である。
【0024】
制御部200は、モータジェネレータ121のみの動力によって走行させる電気自動車走行モード(以下、「EV走行モード」と称する)に走行状態を設定するときに、クラッチ111を開放状態にし、かつ、クラッチ112を締結状態に制御する。
【0025】
制御部200は、モータジェネレータ121とエンジン110の動力によって車を走行させるエンジン使用走行モード(以下、「HEV走行モード」と称する)に走行状態を設定するときに、クラッチ111及び112の両者を締結状態に制御する。
【0026】
制御部200は、モータジェネレータ121とエンジン110の動力をスリップさせながら車を走行させるエンジン使用スリップ走行モード(以下、「WSC走行モード」と称する)に設定する。このとき制御部200は、クラッチ111を締結状態にし、クラッチ112をスリップ締結状態に制御する。WSC走行モードは、特に、バッテリ104の充電状態(SOC:State Of Charge)が低い場合や、エンジン110の冷却水の温度が低い場合などにおいてクリープ走行が可能なときに設定される。
【0027】
HEV走行モードは、さらに、エンジン走行モードと、モータアシスト走行モードと、走行発電モードと、の3つの走行モードに分けられる。
【0028】
制御部200は、エンジン走行モードでは、エンジン110のみの動力によって車輪3a及び3bを回転させ、モータアシスト走行モードでは、エンジン110とモータジェネレータ121の両者の動力によって車輪3a及び3bを回転させる。
【0029】
さらに走行発電モードでは、制御部200は、エンジン110のみの動力によって、車輪3a及び3bを回転させると共にモータジェネレータ121を発電機として駆動させる。例えば、定速運転時や加速運転時において走行状態が走行発電モードに設定される。また、減速運転時には、モータジェネレータ121は、車輪3a及び3bに生じる制動エネルギーを回生電力に変換して回生電力をバッテリ104に充電する。
【0030】
制御部200は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車を走らせるための機能を担うものである。例えば、制御部200は、エンジン110の回転数Ne及びトルクTeを最適なエンジン動作点に調整する。また、制御部200は、モータジェネレータ121の回転数Nm及びトルクTmを最適なモータ動作点に調整する。
【0031】
制御部200は、エンジン110、モータジェネレータ121、充電装置122、クラッチ111、クラッチ112、及びブレーキ装置1からCAN(Controller Area Network)通信線201を介して、これらの状態情報を受け付ける。制御部200は、これらの状態情報を用いて、エンジン110、クラッチ111、クラッチ112、モータジェネレータ121、及びブレーキ装置1の目標の動作状態を決定する。
【0032】
また、ハイブリッド車両100を制動するときには、制御部200は、ブレーキ装置1により検出された制動操作量に基づいてドライバの要求制動トルクを求める。そして制御部200は、要求制動トルクを回生制動トルクと摩擦制動トルクとに割り当てる。本実施形態では、制御部200は、要求制動トルクを回生制動トルクに優先的に配分し、回生制動トルクだけでは要求制動トルクに達しない場合に摩擦制動トルクの割合を大きくする。
【0033】
具体的には制御部200は、要求制動トルクの値を回生制動トルクの回生指令値として設定し、インバータ103を制御してモータジェネレータ121により回生制動トルクを車輪3a及び3bに付与させるとともに、回生指令値を含む回生協調制御指令をブレーキ装置1に送信する。そしてブレーキ装置1は、ドライバの制動操作によって要求された要求制動トルクが回生制動トルクだけでは不足する場合に摩擦制動トルクを車輪3a〜3dに付与する。すなわち、制御部200は、回生制動トルクによる車体の減速のみでは制動トルクが不足する場合、その不足分を摩擦制動トルクで補うようにブレーキ装置1を制御する。
【0034】
図2は、ブレーキ装置1の詳細構成を示す構造図である。
【0035】
ブレーキ装置1は、車輪3a〜3dを制動するホイルシリンダ4a〜4dと、ホイルシリンダ4a〜4dに作動油を供給するマスタシリンダ2と、作動油を貯留するリザーバタンクRESと、を備える。さらにブレーキ装置1は、ブレーキペダルBPの操作により進退移動するインプットロッド6と、インプットロッド6に付与された推進力を倍力するマスタシリンダ圧制御機構5と、を備える。また、ブレーキ装置1は、インプットロッド6の変位量を検出するブレーキ操作量検出装置7と、ブレーキ操作量検出装置7が検出した変位量に応じてマスタシリンダ圧制御機構5を制御するマスタシリンダ圧制御装置8と、を備える。
【0036】
インプットロッド6は、ブレーキペダルBPと共にストローク(進退)する入力部材である。インプットロッド6のストロークにより、マスタシリンダ2のプライマリピストン2bが移動する。
【0037】
マスタシリンダ2は、インプットロッド6のアシスト部材としてのプライマリピストン2bを進退移動させるものである。
【0038】
マスタシリンダ圧制御機構5は、インプットロッド6の移動に応じてプライマリピストン2bに推進量を付与し、その推進力によりマスタシリンダ2内の液圧(以下、マスタシリンダ圧Pmc)を倍力する。すなわち、マスタシリンダ圧制御機構5は、マスタシリンダ2内に倍力されたブレーキ液を発生させるブレーキ倍力装置である。
【0039】
ブレーキ操作量検出装置7は、インプットロッド6の端部6b側に設けられている。ブレーキ操作量検出装置7は、ドライバの制動操作の操作量として、インプットロッド6のストロークの変位量を検出する検出部である。ブレーキ操作量検出装置7は、検出した変位量に応じた検出信号をマスタシリンダ圧制御装置8に出力する。
【0040】
マスタシリンダ圧制御装置8は、ブレーキ操作量検出装置7から検出信号を受け付け、検出信号に応じたインプットロッド6のストロークの変位量を示す変位量情報を制御部200に送信する。マスタシリンダ圧制御装置8は、制御部200からの制御指令に従ってマスタシリンダ圧制御機構5を駆動して、インプットロッド6の変位量に応じた推進力をプライマリピストン2bに付与する。
【0041】
以下、説明のため、マスタシリンダ2の軸方向をx軸方向とし、マスタシリンダ2の底部側をx軸正方向とブレーキペダルBP側をx軸負方向と定義する。
【0042】
マスタシリンダ2は、いわゆるタンデム型のシリンダである。マスタシリンダ2のシリンダ2a内には、アシスト部材としてのプライマリピストン2bと、セカンダリピストン2cとが設けられている。
【0043】
シリンダ2aでは、プライマリピストン2bのx軸正方向側の端面と、セカンダリピストン2cのx軸負方向側の端面とにより、第1液圧室としてのプライマリ液圧室2dが形成される。プライマリ液圧室2dは、プライマリ回路10と連通可能に接続されている。
【0044】
プライマリ液圧室2dの容積は、プライマリピストン2bとセカンダリピストン2cがシリンダ2a内をストロークすることにより変化する。プライマリ液圧室2dには、プライマリピストン2bをx軸負方向側に付勢する戻しバネ2fが設置されている。
【0045】
また、シリンダ2aでは、シリンダ2a内の底面と、セカンダリピストン2cにおけるx軸正方向側の端面とにより、第2液圧室としてセカンダリ液圧室2eが形成される。セカンダリ液圧室2eは、セカンダリ回路20と連通可能に接続されている。
【0046】
セカンダリ液圧室2eの容積は、セカンダリピストン2cがシリンダ2a内をストロークすることにより変化する。セカンダリ液圧室2eには、セカンダリピストン2cをx軸負方向側に付勢する戻しバネ2gが設置されている。
【0047】
プライマリ回路10には、プライマリ液圧センサ13が設けられている。液圧センサ13は、摩擦制動トルクを調整するために、プライマリ液圧室2dの液圧を検出し、検出結果を示す液圧情報をマスタシリンダ圧制御装置8に送信する。
【0048】
セカンダリ回路20には、セカンダリ液圧センサ14が設けられている。液圧センサ14は、摩擦制動トルクを調整するために、セカンダリ液圧室2eの液圧を検出し、検出結果を示す液圧情報をマスタシリンダ圧制御装置8に送信する。なお、図示は省略したが、プライマリ回路10とセカンダリ回路20には、ABS制御等を実施するための各種バルブやモータポンプ、リザーバ等が設けられている。
【0049】
インプットロッド6のx軸正方向側の端部6aは、プライマリピストン2bの隔壁2hを貫通し、プライマリ液圧室2d内に接地している。インプットロッド6の端部6aとプライマリピストン2bの隔壁2hとの間はシールされており、液密性を確保すると共に、端部6aは、隔壁2hに対して軸方向に摺動可能に設けられている。
【0050】
一方、インプットロッド6のx軸負方向側の端部6bは、ブレーキペダルBPに連結されている。ドライバがブレーキペダルBPを踏むと、インプットロッド6はx軸正方向側に移動し、ドライバがブレーキペダルBPを戻すと、インプットロッド6はx軸負方向側に移動する。
【0051】
また、インプットロッド6には、フランジ部6cの外径よりも小径かつ、プライマリピストン2bの隔壁2hの内周よりも大径の大径部6fが形成されている。ブレーキ操作が行われていないブレーキ非作動時には、大径部6fのx軸正方向側の端面と隔壁2hのx軸負方向側の端面との間にギャップL1が設けられる。このギャップL1により、プライマリピストン2bがインプットロッド6に対してx軸負方向に相対移動することが可能となる。これにより、制御部200から回生協調制御指令を受けたときに、マスタシリンダ圧制御装置8が回生制動トルク分だけ摩擦制動トルクを減じることができる。
【0052】
また、ギャップL1により、インプットロッド6がプライマリピストン2bに対してx軸正方向にギャップL1分だけ相対変位すると、大径部6fのx軸正方向側の端面と隔壁2hとが当接して、インプットロッド6とプライマリピストン2bとが一体的に移動する。これによってプライマリ液圧室2dの作動液が加圧され、加圧された作動液がプライマリ回路10に供給される。
【0053】
プライマリ液圧室2dの圧力により、セカンダリピストン2cがx軸正方向側へ移動する。これによってセカンダリ液圧室2eの作動液が加圧され、加圧された作動液がセカンダリ回路20に供給される。
【0054】
また、ホイルシリンダ4a〜4dは、車輪3a〜3dに摩擦制動トルクを付与する摩擦制動装置である。ホイルシリンダ4a〜4dは、それぞれ、ディスクロータ40a〜40dを押圧する。
【0055】
ホイルシリンダ4aは、シリンダ、ピストン、パッド等を有する。ホイルシリンダ4aでは、シリンダ2aからの作動液によってピストンが移動し、ピストンに連結したパッドがディスクロータ40aを押圧する。ホイルシリンダ4a〜4dのそれぞれは、互いに同じ構成である。
【0056】
ディスクロータ40a〜40dは、車輪3a〜3dに装着され、車輪3a〜3dと一体的に回転する。ディスクロータ40a〜40dに作用するブレーキトルクは、車輪と路面との間に作用するブレーキ力となる。
【0057】
リザーバタンクRESは、不図示の隔壁によって互いに仕切られた少なくとも2つの液室を有する。リザーバタンクRES内の一方の液室は、ブレーキ回路11を介して、マスタシリンダ2のプライマリ液圧室2dと連通可能に接続されている。他の液室は、ブレーキ回路12を介してセカンダリ液圧室2eと連通可能に接続されている。
【0058】
続いて、マスタシリンダ圧制御機構5の動作について説明する。
【0059】
マスタシリンダ圧制御機構5は、マスタシリンダ圧制御装置8からの制御指令に従ってプライマリピストン2bの変位量、すなわちマスタシリンダ圧Pmcを調整するものである。マスタシリンダ圧制御機構5は、インプットロッド6の変位量に応じた回転力を発生させる駆動モータ50と、駆動モータ50の回転力を増大させる減速装置51と、減速装置51の回転力をマスタシリンダ2に伝達する回転−並進変換装置55と、を有する。
【0060】
駆動モータ50は、三相DC(Direct Current)ブラシレスモータである。駆動モータ50は、マスタシリンダ圧制御装置8からの制御指令に従ってブレーキ操作量検出装置7からの検出信号に応じた回転トルクを発生させる。駆動モータ50は、プライマリピストン2bを進退移動させるアクチュエータの役割を果たす。
【0061】
減速装置51は、駆動モータ50の出力回転をプーリ減速方式により減速する。減速装置51は、駆動モータ50の出力軸に設けられた小径の駆動側プーリ52と、回転−並進変換装置55のボールネジナット56に設けられた大径の従動側プーリ53と、駆動側プーリ52及び従動側プーリ53に巻き掛けられたベルト54と、を有する。
【0062】
減速装置51は、駆動側プーリ52と従動側プーリ53の半径比により定まる減速比に応じて駆動モータ50の回転トルクを増幅し、増幅されたトルクを回転−並進変換装置55に伝達する。
【0063】
回転−並進変換装置55は、駆動モータ50の回転動力を並進動力に変換し、並進動力によりプライマリピストン2bを押圧する。回転−並進変換装置55は、ボールネジ方式を採用しており、ボールネジナット56と、ボールネジ軸57と、可動部材58と、戻しバネ59と、を有する。
【0064】
マスタシリンダ2のx軸負方向側にはハウジング部材HSG1が設けられ、ハウジング部材HSG1のx軸負方向側にはハウジング部材HSG2が設けられている。ハウジング部材HSG2内に設けられたベアリングBRGの内周には、ボールネジナット56が軸回転可能に設置されている。
【0065】
ボールネジナット56は、従動側プーリ53に嵌合されている。ボールネジナット56内には、中空のボールネジ軸57が螺合している。ボールネジナット56とボールネジ軸57との隙間には、複数のボールが回転移動可能に設置されている。
【0066】
ボールネジ軸57のx軸正方向側の端部には可動部材58が一体に設けられ、可動部材58のx軸正方向側の端面にはプライマリピストン2bが接合されている。プライマリピストン2bは、ハウジング部材HSG1に収容されている。プライマリピストン2bのx軸正方向側の端部は、ハウジング部材HSG1から突出してマスタシリンダ2の内周に嵌合されている。
【0067】
ハウジング部材HSG1の内周とプライマリピストン2bの外周との間には、戻しバネ59が設置されている。戻しバネ59は、x軸正方向側の端部がハウジング部材HSG1内のx軸正方向側の底面Aに固定され、x軸負方向側の端部が可動部材58に係合されている。戻しバネ59は、底面Aと可動部材58との間で軸方向に押し縮めて設置されており、可動部材58とボールネジ軸57をx軸負方向側に付勢している。
【0068】
従動側プーリ53が回転すると、ボールネジナット56が一体的に回転し、ボールネジナット56の回転運動により、ボールネジ軸57が軸方向に並進運動する。x軸正方向側へのボールネジ軸57の並進運動の推力により、可動部材58を介してプライマリピストン2bをx軸正方向側に押圧する。なお、
図2には、ブレーキ非作動時にボールネジ軸57がx軸負方向側に最大変位したときの状態が示されている。この状態がボールネジ軸57の初期位置である。
【0069】
一方、ボールネジ軸57には、並進運動の推力と反対方向(x軸負方向側)に戻しバネ59の弾性力が作用する。例えば、ブレーキ操作が行われているとき、すなわちプライマリピストン2bをx軸正方向側に押圧してマスタシリンダ圧Pmcを加圧している状態でも、x軸負方向側に弾性力が作用する。
【0070】
また、インプットロッド6とプライマリピストン2bとの間に画成した環状空間Bには、一対のバネ6d及び6eが配設されている。バネ6dの一端はインプットロッド6に設けられたフランジ部6cに係止され、バネ6dの他端はプライマリピストン2bの隔壁2hに係止されている。バネ6eの一端はフランジ部6cに係止され、バネ6eの他端は可動部材58に係止されている。
【0071】
バネ6d及び6eは、プライマリピストン2bに対してインプットロッド6を両者の相対変位の中立位置に向けて付勢し、ブレーキ非作動時にインプットロッド6とプライマリピストン2bとを相対移動の中立位置に保持する役割を果たす。バネ6d及び6eにより、インプットロッド6とプライマリピストン2bとが中立位置からいずれかの方向に相対変位したとき、プライマリピストン2bに対してインプットロッド6を中立位置に戻す付勢力が作用する。
【0072】
上記のように、モータジェネレータ121によって車輪3a及び3bに回生制動トルクが付与されるときに、ブレーキ装置1は、回生制動トルク分を減じた摩擦制動トルクを車輪3a〜3dに付与する。
【0073】
また、インプットロッド6がブレーキペダルBPと連動して移動し、プライマリ液圧室2dを加圧する構成であるため、マスタシリンダ圧Pmcに応じた力がインプットロッド6を介してブレーキペダルBPに作用し、ブレーキペダル反力としてドライバに伝達される。このため、車輪3a及び3bに回生制動トルクを付与するときに、ブレーキペダル反力が急変する場合がある。
【0074】
図3は、ブレーキ時におけるブレーキペダル反力が急変する例を示す図である。
図3(a)は、ブレーキ時における回生制動トルクの増加率の変動312を示す図である。
図3(b)は、回生制動トルクの変動312に起因するブレーキペダル反力の急激な変動322を示す図である。
図3(a)及び
図3(b)は横軸が共通の時間軸である。
【0075】
図3(a)に示すように、回生制動トルク312は、時刻t1から時刻t2までの期間は、ドライバの要求制動トルク311に合わせて増加している。しかしながら、回生制動トルク312は、t2以降、要求制動トルク311よりも回生制動トルクの増加率が低下している。これは、モータジェネレータ121の出力特性や、バッテリ104の電力の受け入れ制限などにより、モータジェネレータ121で発生可能な回生制動トルクが制限されるためである。
【0076】
図3(b)に示すように、回生制動トルクが制限されたときには、ドライバが違和感を受けにくいブレーキペダル反力321と比較して、実際のブレーキペダル反力322は、時刻t2から時刻t3までの間に急激に変化している。このため、ドライバに違和感を与えてしまうことが想定される。これに対し、制御部200は、回生制動トルクを車輪3a及び3bに付与するときには、ブレーキペダル反力の変動を抑制する反力変動抑制処理を実行する。
【0077】
反力変動抑制処理において、制御部200は、モータジェネレータ121及び充電装置122の動作条件により、モータジェネレータ121で発生可能な回生制動トルクの制限値を求める。そして制御部200は、回生制動トルクが制限値に達するまでの途中で、要求制動トルクに対する回生制動トルクの割合を小さくする。これにより、回生制動トルクの制限値付近での回生制動トルクの増加量の急変が抑制される。
【0078】
図4は、制御部200の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【0079】
制御部200は、ドライバの要求制動トルクを算出する要求トルク算出部210と、要求制動トルクに応じて回生制動トルクの上限値を決定する回生トルク決定部220と、回生制動トルクの増加率の変更閾値を算出する閾値算出部230と、を備える。さらに制御部200は、回生制動トルクが変更閾値を超えたときに、要求制動トルクに対する回生制動トルクの割合を制限する回生トルク制限部240と、を備える。
【0080】
要求トルク算出部210は、CAN通信線201からインプットロッド6の変位量情報を受け付けると、変位量情報に応じて要求制動トルクのトルク値を算出する。例えば、変位量情報が大きくなるほど要求制動トルクは大きくなる。要求トルク算出部210は、トルク値を示す要求情報を閾値算出部230に供給する。
【0081】
回生トルク決定部220は、要求トルク算出部210から要求情報を受け付けると、要求情報に示された要求制動トルクのうちモータジェネレータ121に割り当て可能な回生制動トルクの上限値を求める。回生トルク決定部220は、回生制動トルクの上限値を示す回生トルク情報を回生トルク制限部240に供給する。
【0082】
閾値算出部230は、CAN通信線201から、モータジェネレータ121及び充電装置122の動作条件を示す状態情報を受け付ける。状態情報には、バッテリ情報、モータ情報やインバータ情報が含まれる。バッテリ情報にはバッテリ104のSOC及び温度が示され、モータ情報にはモータジェネレータ121の回転数及び温度が示され、インバータ情報にはインバータ103の温度が示される。
【0083】
閾値算出部230は、モータジェネレータ121及び充電装置122の状態情報を用いてモータジェネレータ121が現在発生可能な回生制動トルクの制限値を算出する。例えば、閾値算出部230は、モータジェネレータ121の出力特性及びバッテリ104の特性を用いて、車速などの駆動部1001の状態情報により定まる制限値を算出する。なお、閾値算出部230は、モータジェネレータ121及び充電装置122のいずれか一方の状態情報に基づいて、回生制動トルクの制限値を算出してもよい。
【0084】
また、閾値算出部230は、回生制動トルクの増加率の急激な変動に対してドライバが許容可能な変動許容量を取得し、変動許容量から変動抑制規定値を算出する。
【0085】
例えば、閾値算出部230は、回生制動トルクの増加率を低下させるために必要な回生制動トルクの変更範囲を規定する規定値を保持する。規定値は、ハイブリッド車両100で許容可能なブレーキペダル反力の変動許容量により予め設定される。閾値算出部230は、回生制動トルクの制限値から規定値を減算し、その減算した減算値である変動抑制規定値を算出する。閾値算出部230は、変動抑制規定値を変更閾値として回生トルク制限部240に供給する。
【0086】
回生トルク制限部240は、回生トルク決定部220から回生トルク情報を受け付け、閾値算出部230から変更閾値を受け付ける。回生トルク制限部240は、回生トルク情報に示された回生制動トルクが変更閾値未満である場合には、要求制動トルクに対する回生制動トルクの割合を一定に維持する。
【0087】
一方、回生トルク制限部240は、回生制動トルクが変更閾値を超える場合には、要求制動トルクに対する摩擦制動トルクの割合を高くして回生制動トルクの単位時間あたりの増加率を小さくする。すなわち、回生トルク制限部240は、ブレーキペダル反力の変動抑制処理により、回生制動トルクの割合を小さくして摩擦制動トルクを大きくする。次に、ブレーキペダル反力の変動抑制手法について図面を参照して説明する。
【0088】
図5は、制御部200によるブレーキペダル反力の変動抑制手法の一例を示す図である。
【0089】
図5では、要求トルク算出部210が、ブレーキ操作量検出装置7からのインプットロッド6の変位量情報に基づいて要求制動トルクT0を算出する。その後、回生トルク決定部220が、要求制動トルクT0に対応する回生制動トルクの上限値T1を求める。例えば、回生トルク決定部220は、要求制動トルクごとに、要求制動トルクの値と回生制動トルクの上限値とが互いに対応付けられたマップを保持し、マップから要求制動トルクの値T0に対応付けられた上限値T1を抽出する。
【0090】
次に閾値算出部230が、ハイブリッド車両100の状態情報に基づいてモータジェネレータ121で発生可能な回生制動トルクの制限値T2を算出する。例えば、閾値算出部230は、車速などの速度情報、モータジェネレータ121自体の出力特性やバッテリ104の受け入れ特性などの動作条件から制限値T2を算出する。
【0091】
さらに閾値算出部230は、ドライバが許容可能な変動許容量により定められた回生制動トルクの規定値ΔTを取得する。そして閾値算出部230は、次式に示すように、回生制動トルクの制限値T2から規定値ΔTを減算し、減算した値を反力変動対策用の変更閾値Tthとして回生トルク制限部240に供給する。
【0093】
次に回生トルク制限部240は、回生制動トルクの上限値T1が変更閾値Tth以上であるか否かを判断する。回生トルク制限部240は、上限値T1が変更閾値Tth以上であると判断したときに要求制動トルクT0’と回生制動トルクT1’とを取得する。
【0094】
そして回生トルク制限部240は、要求制動トルクT0’からT0までの回生制動トルクの増加率を「1」よりも小さい変化勾配αに設定する。具体的には回生トルク制限部240は、回生制動トルクの制限値でのブレーキペダル反力の変動に対してドライバが許容可能な変動許容量から増加勾配αを求める。
【0095】
回生トルク制限部240は、要求制動トルクT0’と回生制動トルクT1’と増加勾配αとを用いて、要求制動トルクT0に対応する回生制動トルクT1の補正値T3を算出する。回生トルク制限部240は、回生制動トルクの補正値T3が制限値T2よりも小さいため、補正値T3を回生指令値Tに設定し、回生指令値Tをブレーキ装置1及びインバータ103に送信する。
【0096】
これにより、制御部200は、ブレーキ操作量検出装置7がインプットロッド6の変位を検出したときから、回生制動トルクが制限値T2に達する前に、回生制動トルクの増加率を小さくすることができる。
【0097】
図6は、反力変動抑制処理によってブレーキペダル反力の変動が抑制された例を示す図である。
図6(a)は、反力変動抑制処理が行われた回生制動トルク613を示す図である。
図6(b)は、回生制動トルク613に起因するブレーキペダル反力の変動623を示す図である。
【0098】
図6(a)に示すように、時刻t2において、反力変動抑制処理が行われない回生制動トルク612は、制限値に達したため増加率が急激に低下している。これに対し、回生制動トルク613は、時刻t12から時刻t2までの間で増加率が下げられているので、時刻t2付近での回生制動トルクの変動が抑制されている。
【0099】
これにより、
図6(b)に示すように、ブレーキペダル反力623は、反力変動抑制処理が行われないときのブレーキペダル反力622と比較して、ブレーキペダル反力の急激な変動が抑制される。このため、反力変動抑制処理により、ドライバに違和感を与えることを軽減することができる。
【0100】
図7は、制御部200による反力変動抑制処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0101】
まず、要求トルク算出部210は、ブレーキ操作量検出装置7により検出されたインプットロッド6のストロークに基づいてドライバの要求制動トルクT0を算出する(ステップS1)。要求トルク算出部210は、要求制動トルクの値T0を回生トルク決定部220に供給する。
【0102】
その後、回生トルク決定部220は、要求トルク算出部210から要求制動トルクT0を受け付けると、要求制動トルクT0に対応する回生制動トルクの上限値T1を決定する(ステップS2)。回生トルク決定部220は、回生制動トルクT1を回生トルク制限部240に供給する。
【0103】
また、閾値算出部230は、ハイブリッド車両100の状態情報に基づいてモータジェネレータ121で発生可能な回生制動トルクの制限値T2を算出する(ステップS3)。さらに閾値算出部230は、ハイブリッド車両100で許容可能な変動許容量により定められた反力変動対策用の規定値ΔTを設定する(ステップS4)。
【0104】
そして閾値算出部230は、回生制動トルクの制限値T2から規定値ΔTを減算した変動抑制規定値を算出する(ステップS5)。閾値算出部230は、変動抑制規定値を変更閾値Tthとして回生トルク制限部240に供給する。
【0105】
回生トルク制限部240は、回生トルク決定部220から回生制動トルクの上限値T1を受け付け、閾値算出部230から変更閾値Tthを受け付けると、回生制動トルクT1が変更閾値Tthを超えているか否かを判断する(ステップS6)。回生制動トルクT1が変更閾値Tth以下である場合には、回生トルク制限部240は、上限値T1を回生制動トルクの回生指令値Tに設定する(ステップS9)。
【0106】
一方、回生トルク制限部240は、回生制動トルクT1が変更閾値Tthを超えている場合には、
図5で述べた変動抑制手法により、回生制動トルクT1よりも小さな補正値T3を算出する(ステップS7)。そして回生トルク制限部240は、回生制動トルクの制限値T2と補正値T3のうち小さい方の値を回生指令値Tに設定して(ステップS8)、制御部200での反力変動抑制処理が終了する。
【0107】
本実施形態によれば、制御部200が、モータジェネレータ121及び充電装置122の動作条件により求められた回生制動トルクの制限値を用いて、回生制動トルクが制限値に達する前に、摩擦制動トルクに対する回生制動トルクの比率を小さくする。
【0108】
このため、回生制動トルクの制限値付近において、回生制動トルクの増加率が低下しても事前に摩擦制動トルクに対する回生制動トルクの比率が下げられているので、回生制動トルクの急激な変動が抑制される。したがって、制限値付近での回生制動トルクの変動に起因するブレーキペダル反力の変動も抑制される。このため、制御部200は、ドライバに与える違和感を軽減することができる。
【0109】
さらに本実施形態では、制御部200において、閾値算出部230が回生制動トルクの制限値に応じて変更閾値を設定し、回生制動トルクが変更閾値を超える場合に回生トルク制限部240が、摩擦制動トルクの割合を高くして回生制動トルクを制限する。
【0110】
このため、制御部200は、モータジェネレータ121及び充電装置122の動作条件によって変化する回生制動トルクの制限値に合わせて変更閾値を変えるので、変更閾値が固定された構成と異なり、回生制動トルクの制限値が変更閾値より低くなるようなことを防止できる。したがって、制御部200は、回生制動トルクが制限値に達する前に、より確実に、要求制動トルクに対する回生制動トルクの割合を小さくすることができる。
【0111】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る制御部は、
図4に示した制御部200と基本構成は同じである。以下では、第1実施形態に係る制御部200と異なる点のみを説明する。
【0112】
閾値算出部230は、モータジェネレータ121により回生されるエネルギー量の要求値(以下「回生要求値」と称する。)を取得する。回生要求値は、例えば、あらかじめ閾値算出部230に記憶されている。閾値算出部230は、回生要求値が変動抑制規定値よりも大きい場合には、回生要求値を変更閾値として回生トルク制限部240に供給する。
【0113】
そして回生トルク制限部240は、回生制動トルクの上限値が回生要求値よりも小さいときには、変動抑制規定値よりも回生制動トルクが小さい場合であっても、回生制動トルクの増加率を小さくしない。つまり、回生トルク制限部240は、回生制動トルクの上限値が回生要求値よりも小さい場合でも、要求制動トルクに対する回生制動トルクの割合の変更を行わない。
【0114】
図8は、第2実施形態における反力変動抑制処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示されたステップS10以外の処理は、
図7と同様の処理であるため、ここでは主にステップS10について説明する。なお、ステップS5で閾値算出部230が、回生制動トルクの制限値T2から規定値ΔTを減算した変動抑制規定値を算出する。
【0115】
その後、閾値算出部230は、モータジェネレータ121を用いて回生可能な制動エネルギーを回収するための回生要求値を取得し、回生要求値と変動抑制規定値とを比較する(ステップS10)。そして閾値算出部230は、回生要求値と変動抑制規定値のうち大きな方を変更閾値として回生トルク制限部240に出力する。
【0116】
すなわち、閾値算出部230は、車速などにより変わる変動抑制規定値が、回生要求値よりも小さい場合に限り、回生要求値を変更閾値として回生トルク制限部240に設定してステップS6に進む。
【0117】
本実施形態によれば、閾値算出部230が変更閾値を回生要求値以上に設定する。これにより、制御部200は、ブレーキペダル反力の急激な変動を抑制しつつ、最低限必要な回生エネルギーの回収を優先させることができる。例えば、車両の速度が速いときには回生エネルギーが大きくなるので、回生制動トルクの制限値が低く変動抑制規定値が回生要求値よりも小さくなるときでも、回生制動トルクの制限を行わずに大きな回生エネルギーを回収することが可能となる。なお、閾値算出部230は、車両の速度が速いときほど回生要求値を高く設定してもよい。これにより、回生エネルギーの回収効率をさらに向上させることができる。
【0118】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る制御部は、
図4に示した制御部200と基本構成は同じである。本実施形態では、回生制動トルクの制限を解除する制限解除手法について説明する。
【0119】
要求トルク算出部210は、ブレーキ操作量検出装置7から定期的にインプットロッド6の変位量情報を受け付け、変位量情報ごとに要求制動トルクのトルク値を算出する。
【0120】
回生トルク制限部240は、ブレーキペダルBPの操作が保持されている状態を判定するために所定の保持判定値を有する。回生トルク制限部240は、要求トルク算出部210からのトルク値の変化が保持判定値以下になると、要求制動トルクに対する摩擦制動トルクの割合を所定の解除期間ごとに低くして回生制動トルクの制限を解除する。
【0121】
例えば、回生トルク制限部240は、要求トルク算出部210から要求制動トルクのトルク値T0を受け付けたときに、トルク値T0の直前に受け付けた前回のトルク値とトルク値T0とのトルク差分を算出する。そして回生トルク制限部240は、トルク差分が保持判定値以下であるときに、ブレーキペダルBPの操作が保持されていると判定し、回生制動トルクの制限を解除する。
【0122】
回生トルク制限部240は、回生制動トルクを段階的に上限値へ戻すために、例えば、予め定められた解除幅ΔT1を回生制動トルクの補正値T3に加算する。回生トルク制限部240は、次式に示すように、補正値に解除幅を加算した加算値(T3+ΔT1)と、回生制動トルクの制限値T2とのうち、小さい方の値を回生制動トルクの解除値T4として、回生指令値に設定する。
【0124】
そして要求制動トルクの変化が保持判定値以下で維持されている状況では、回生トルク制限部240は、解除期間ごとに回生指令値をΔT1だけ増加させ、回生制動トルクが制限値T2に達するまで繰り返し回生指令値を増加させる所定時間勾配処理を行う。
【0125】
図9は、第2実施形態に係る反力変動抑制処理の処理手順を示すフローチャートである。
図9に示されたステップS11〜S13以外の処理は、
図7と同様の処理であるため、ここでは主にステップS11〜S13について説明する。なお、ステップS7では回生トルク制限部240が回生制動トルクの補正値T3を算出する。
【0126】
次に回生トルク制限部240は、要求トルク算出部210から要求制動トルクのトルク値を受け付けると、ブレーキペダルBPの操作が維持された状態か否かを判定する(ステップS11)。具体的には回生トルク制限部240は、要求トルク算出部210から要求制動トルクT0を受け付けると、今回のトルク値T0と前回のトルク値との差分を求める。
【0127】
そして回生トルク制限部240は、要求制動トルクの差分が保持判定値以上である場合には、回生制動トルクの制限値T2と補正値T3のうち小さい方を回生指令値Tに設定する(ステップS8)。
【0128】
一方、回生トルク制限部240は、要求制動トルクの差分が保持判定値未満である場合には、ステップS7で算出された補正値T3から、解除幅ΔT1を加算した加算値(T3+ΔT1)を求める。そして回生トルク制限部240は、加算値(T3+ΔT1)と回生制動トルクの制限値T2のうち小さい方の値を解除値T4として算出する(ステップS12)。
【0129】
回生トルク制限部240は、回生制動トルクの解除値T4を回生指令値Tに設定して(ステップS13)、反力変動抑制処理が終了する。
【0130】
本実施形態によれば、回生トルク制限部240が、要求制動トルクの変化が保持判定値以下であるときに、要求制動トルクに対する摩擦制動トルクの割合を解除期間ごとに低くして回生制動トルクの制限を解除する。これにより、ブレーキペダルBPの操作が保持状態のときには、回生トルク制限部240は、摩擦制動トルクの割合を段階的に低くするので、ブレーキペダル反力の変動を抑制しつつ、回生制動トルクにより制動エネルギーを効率良く回収することができる。
【0131】
したがって、制御部200は、ブレーキペダル反力が急激に変動する可能性が低いときに回生制動トルクの制限値まで段階的に回生制動トルクを高くしていくので、ドライバに違和感を与えることなく回生エネルギーの回収効率を高めることができる。
【0132】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係る制御部の構成を示す機能ブロック図である。制御部300は、ブレーキ操作量検出装置7からのインプットロッド6の変位量情報に基づいて回生制動トルクの回生指令値を設定するものである。制御部300は、
図1で示した制御部200に対応する。
【0133】
制御部300は、踏力変化算出部310と、トルク変化算出部320と、トルク変化予測部330と、踏力変化予測部340と、トルク設定部350と、を備える。トルク設定部350は、回生制動トルクの増加率を制限する目標値設定部351を備える。
【0134】
踏力変化算出部310は、ブレーキペダルBPに生じた踏力の変化速度を算出するものである。
【0135】
踏力変化算出部310は、定期的にブレーキ操作量検出装置7からCAN通信線201を介して、インプットロッド6の変位量情報を受け付ける。また、踏力変化算出部310は、インプットロッド6の変位量情報に応じて変化するマスタシリンダ2内のマスタシリンダ圧Pmcを取得する。例えば、踏力変化算出部310は、インプットロッド6の変位量情報からマスタシリンダ圧Pmcを算出してもよいし、
図2に示した液圧センサ13及び14で検出された液圧値を用いてマスタシリンダ圧Pmcを算出してもよい。
【0136】
踏力変化算出部310は、マスタシリンダ圧Pmcと、インプットロッド6の面積AIRと、バネ6d及び6eのバネ定数Kと、インプットロッド6に対するプライマリピストン2bの相対位置Δxとを用いて踏力Fを算出する。具体的には踏力変化算出部310は、次式に示すように踏力Fを算出する。
【0138】
踏力変化算出部310は、ブレーキ操作量検出装置7からのインプットロッド6の変位量情報の変化に基づいて現在までの踏力の変化速度を算出する。例えば、踏力変化算出部310は、ブレーキ操作量検出装置7から変化量情報を受け付けたときに、その変化量情報の現在値と、その変化量情報を受け付ける直前の変化量情報の前回値との変位差分を求める。そして踏力変化算出部310は、直前の変化量情報を受け付けてから現在の変化量情報を受け付けるまでの時間により変位差分を除算して踏力の変化速度を算出する。踏力変化算出部310は、踏力の変化速度の値を示す踏力変化情報を踏力変化予測部340に供給する。
【0139】
トルク変化算出部320は、モータジェネレータ121が付与した回生制動トルクの変化速度を算出するものである。
【0140】
トルク変化算出部320は、回生制動トルクの現在値から、例えばトルク設定部350が前回設定した回生制動トルクの前回値を減算して現在までの回生制動トルクの変化速度を算出する。トルク変化算出部320は、回生制動トルクの変化速度の値を示すトルク変化情報をトルク変化予測部330に供給する。
【0141】
また、トルク変化算出部320は、モータジェネレータ121及び充電装置122から状態情報を受け付け、モータジェネレータ121及び充電装置122の状態情報を用いて回生制動トルクの制限値を算出し、その制限値をトルク変化予測部330に供給する。
【0142】
トルク変化予測部330は、トルク変化算出部320からのトルク変化情報に基づいて現在から所定時間後の回生制動トルクの変化速度を推定するトルク推定部である。
【0143】
例えば、トルク変化予測部330は、現在のドライバの操作に伴うトルク変化情報やインプットロッド6の変化量情報などから、所定時間後のドライバの操作を推定し、現在から所定時間後の車速を算出する。
【0144】
トルク変化予測部330は、現在から所定時間後の車速に減速するのに必要な回生制動トルクの予測値を算出する。そしてトルク変化予測部330は、トルク変化算出部320から回生制動トルクの制限値を受け付け、回生制動トルクの制限値よりも予測値が大きい場合には、例えば、予測値を回生制動トルクの制限値よりも下げる。なお、回生制動トルクを下げた分は摩擦制動トルクにより補われる。
【0145】
トルク変化予測部330は、現在の回生制動トルクから所定時間後の回生制動トルクを減算して所定時間後の変化速度の予測値を算出する。トルク変化予測部330は、回生制動トルクの予測値を示すトルク予測情報を踏力変化予測部340に供給する。
【0146】
踏力変化予測部340は、トルク変化予測部330からのトルク変化予測情報に基づいて現在から所定期間後の踏力の変化速度を予測するものである。
【0147】
踏力変化予測部340は、式1を用いて、トルク変化予測情報に示された変化速度を所定期間後の踏力の変化速度の予測値に変換する。踏力変化予測部340は、踏力の変化速度の予測値を示す踏力変化予測情報をトルク設定部350に供給する。
【0148】
トルク設定部350は、踏力変化予測部340からの踏力変化予測情報に応じて回生制動トルクの増加勾配を小さくするものである。トルク設定部350は、回生制動トルクの増加勾配を制限するために予め定められた規定値を目標値設定部351に保持する。
【0149】
トルク設定部350は、踏力変化算出部310からの踏力変化情報に示された変化速度と、踏力変化予測情報に示された変化速度との踏力差分、すなわち現在から所定期間後の踏力の変化速度を算出する。トルク設定部350は、踏力差分が目標値を超えるか否かを判断する。そしてトルク設定部350は、踏力差分が目標値以下である場合には、予め算出した回生制動トルクの値を回生指令値に設定する。
【0150】
一方、トルク設定部350は、踏力差分が目標値を超える場合には、現在から所定期間後にドライバに違和感を与える程のブレーキペダル反力が発生すると判断し、踏力差分が目標値と一致するように式1を用いて現在から所定期間後の回生制動トルクの変化速度を算出する。そしてトルク設定部350は、回生制動トルクの変化速度と一致するように回生制動トルクを求め、その回生制動トルクを回生指令値に設定することにより、予め算出された回生指令値よりも小さな値に補正する。トルク設定部350は、その補正した回生指令値を回生協調制御指令としてブレーキ装置1及びインバータ103にそれぞれ供給する。
【0151】
目標値設定部351は、ドライバの踏み込み速度に応じて目標値を増減させるものである。目標値設定部351は、踏力変化予測部340から踏力変化予測情報を受け付け、踏力変化予測情報に示された変化速度が遅いほど、規定値よりも目標値を小さく設定する。なお、目標値設定部351は、踏力変化算出部310からの踏力変化情報を用いて目標値を設定してもよい。
【0152】
図11は、制御部300によるブレーキペダル反力の変動抑制手法の一例を示す図である。
図11(a)は、反力変動抑制処理が施された回生制動トルク713を示す図である。
図11(b)は、回生制動トルク713に応じたブレーキペダル反力の変動723を示す図である。なお、回生制動トルク713及びブレーキペダル反力の変動723以外の線611、612、621、及び622は、
図6(a)及び
図6(b)に示したものと同じである。
【0153】
図11(b)の時刻t22において、踏力変化算出部310が、ブレーキ操作量検出装置7からの変位量情報の変化に基づいて時刻t21から現在t22までの踏力の変化速度を算出する。このとき、
図11(a)に示すように、トルク変化算出部320が、時刻t21から現在t22までの回生制動トルクの変化速度を算出する。
【0154】
そしてトルク変化予測部330は、時刻t21から現在t22までの回生制動トルクの変化速度を用いて、現在t22から所定時間pt後の時刻t23までの回生制動トルクの変化速度の予測値を算出する。踏力変化予測部340は、その回生制動トルクの変化速度を、式1を用いて現在t22から所定期間pt後の踏力の変化速度の予測値に変換する。
【0155】
トルク設定部350は、目標値設定部351に記憶された目標値と踏力の変化速度の予測値とを比較し、変化速度の予測値が目標値よりも大きいため、目標値を変化速度の予測値として設定する。そしてトルク設定部350は、その踏力の変化速度の予測値を式1により回生制動トルクの変化速度に変換し、その回生制動トルクの変化速度から求めた回生制動トルクを回生指令値Tに設定する。
【0156】
よって、
図11(a)に示すように、時刻t22付近で回生制動トルク713の増加勾配が下げられているため、
図11(b)の時刻t23付近でブレーキペダル反力723の急激な変動が抑制されている。したがって、ブレーキペダル反力723は、
図6(b)に示したブレーキペダル反力622と比較して急激な変動が抑制され、ドライバに与える違和感が軽減される。
【0157】
図12は、制御部300による反力変動抑制処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0158】
まず、トルク設定部350は、ブレーキ操作量検出装置7からのインプットロッド6の変位量情報により算出された現在の回生指令値を取得する(ステップS21)。
【0159】
次に踏力変化算出部310は、インプットロッド6が変位してから現在までの踏力の変化速度の値を算出する(ステップS22)。踏力変化算出部310は、その現在値を示す踏力変化情報を踏力変化予測部340に供給する。
【0160】
また、トルク変化算出部320は、回生制動トルクの現在値と前回値との差分を算出して現在までの回生制動トルクの変化速度を算出する(ステップS23)。トルク変化算出部320は、その変化速度の値を示すトルク変化情報をトルク変化予測部330に供給する。
【0161】
その後、トルク変化予測部330は、トルク変化算出部320からのトルク変化情報と回生制動トルクの制限値を用いて所定期間後の回生制動トルクの変化速度の予測値を算出する(ステップS24)。トルク変化予測部330は、その予測値を示すトルク変化予測情報を踏力変化予測部340に供給する。
【0162】
そして踏力変化予測部340は、トルク変化予測部330からのトルク変化予測情報を用いて式1により、現在から所定時間後の踏力の変化速度の予測値を算出する(ステップS25)。踏力変化予測部340は、その変化速度の予測値を示す踏力変化予測情報をトルク設定部350に供給する。
【0163】
目標値設定部351は、ドライバの踏み込み速度に応じて目標値を増減させる(ステップS26)。例えば、目標値設定部351は、踏力変化算出部310から踏力変化情報を受け付け、踏力変化情報に示された変化速度が遅いほど、目標値を小さく設定する。
【0164】
トルク設定部350は、踏力変化予測部340からの踏力変化予測情報が目標値を超えるか否かを判断する(ステップS27)。踏力変化予測情報が目標値以下である場合には、トルク設定部350は、ステップS21で算出された回生指令値を含む回生協調制御指令をブレーキ装置1及びインバータ103に送信する。
【0165】
一方、トルク設定部350は、踏力変化予測情報に示された変化速度が目標値を超える場合には、現在から所定期間後の踏力変化速度が目標値と一致するように回生指令値を小さな値に変更する(ステップS28)。そしてトルク設定部350は、回生指令値を含む回生協調制御指令をブレーキ装置1及びインバータ103に送信する。
【0166】
本実施形態によれば、踏力変化予測部340が所定時間後の踏力の変化速度の予測値を算出し、トルク設定部360が、その予測値からブレーキペダル反力の急変を生じると判断したときに事前に回生制動トルクの増加勾配を小さくする。
【0167】
このため、制御部300は、踏力の変化速度を予測することにより、回生制動トルクの制限値付近で生じるブレーキペダル反力の急激な変動を抑制することができる。したがって、制御部300は、ブレーキペダル反力の急激な変動によりドライバに与える違和感を軽減することができる。
【0168】
さらに本実施形態では、目標値設定部351は、ブレーキペダルBPの踏み込み速度が遅いほど目標値を小さく設定する。
【0169】
一般にドライバは踏み込み速度が遅いほど、ブレーキペダル反力の急変を感じ易くなる。そのため、目標値設定部351が踏み込み速度が遅いほど目標値を小さくすることにより、ブレーキペダル反力に対するドライバの感度が高いときに、回生制動トルクの増加勾配が小さくすることができる。よって、トルク設定部350は、回生制動トルクの制限値付近においてドライバに与える違和感をより軽減することが可能となる。
【0170】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る制御部は、
図10に示した制御部300と基本構成は同じである。以下では、第4実施形態に係る制御部300と異なる点のみを説明する。
【0171】
目標値設定部351は、ブレーキペダルBPの操作量に応じて目標値を増減させるものである。目標値設定部351は、ブレーキ操作量検出装置7からのインプットロッド6の変位量情報を受け付け、その変位量情報の現在値と、直前に受け付けた変位量情報の前回値との差分、ドライバの操作量を算出する。目標値設定部351は、その差分が大きいほど目標値を大きく設定する。
【0172】
図13は、第5実施形態に係る反力変動抑制処理の処理手順を示すフローチャートである。
図13に示されたステップS29以外の処理は、
図11と同様のものであるため、ここでは主にステップS29について説明する。
【0173】
ステップ25で処理が終了した後、目標値設定部351は、ブレーキ操作量検出装置7からのインプットロッド6の変位量情報に基づいて目標値を設定する(ステップS29)。
【0174】
本実施形態によれば、目標値設定部351は、ブレーキ操作量検出装置7からのインプットロッド6の変位量情報が大きいほど目標値を大きく設定する。
【0175】
一般的にブレーキペダルBPの操作量が大きいときには、ブレーキペダルBPへのドライバの踏力が大きいため、操作量が小さいときに比べてドライバはブレーキペダル反力の急変を感じ難くなる。
【0176】
そのため、目標値設定部351がインプットロッド6の変位量情報が大きいほど目標値を大きくすることにより、ブレーキペダル反力に対するドライバの感度が鈍いときに、回生制動トルクの増加勾配の制限を行わないように制御可能となる。よって、トルク設定部350は、ブレーキペダル反力の急変によりドライバに与える違和感を軽減し、かつ、回生エネルギーの回収効率をさらに高めることが可能となる。
【0177】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る制御部は、
図10に示した制御部300と基本構成は同じである。以下では、第4実施形態に係る制御部300と異なる点のみを説明する。
【0178】
本実施形態では、踏力変化算出部310が、トルク変化予測部330及び踏力変化予測部340で算出される予測値の所定期間ptをドライバの踏み込み速度に応じて変更する時間設定部としての役割も果たす。
【0179】
踏力変化算出部310は、ブレーキ操作量検出装置7からのインプットロッド6の変化量情報を受け付けると、その変化量情報と前回受け付けた変化量情報との差分から踏力の変化速度、すなわちドライバの踏み込み速度を算出する。
【0180】
踏力変化算出部310は、踏み込み速度が速いほど、トルク変化予測部330及び踏力変化予測部340で算出される予測値の所定期間を長く設定する。例えば、踏力変化算出部310は、踏み込み速度が所定の踏込み閾値よりも速いときに、予め設定された所定期間よりも長い予測期間を示す予測時間変更情報をトルク変化予測部330及び踏力変化予測部340に供給する。
【0181】
トルク変化予測部330及び踏力変化予測部340のそれぞれは、踏力変化算出部310からの予測時間変更情報を受け付けると、長期の予測期間後の変化速度の予測値を算出する。
【0182】
図13は、第6実施形態に係る反力変動抑制処理の処理手順を示すフローチャートである。
図13に示されたステップS30及びS31以外の処理は、
図12と同様の処理であるため、ここでは主にステップS30及び31について説明する。
【0183】
まず、踏力変化算出部310は、ブレーキ操作量検出装置7からのインプットロッド6の変化量情報と前回の変化量情報との差分からドライバの踏み込み速度を算出する(ステップS30)。そして踏力変化算出部310は、踏み込み速度が踏込み閾値よりも大きいときに、予め設定された所定時間よりも長い予測期間を示す予測時間変更情報をトルク変化予測部330と踏力変化予測部340とに供給する。
【0184】
ステップS23で処理が終了した後、トルク変化予測部330及び踏力変化予測部340のそれぞれは、踏力変化算出部310から予測時間変更情報を受け付けると、予め設定された所定期間を長期の予測期間に変更する(ステップS31)。その後、ステップS24に進む。
【0185】
本実施形態によれば、踏力変化算出部310が、ドライバによるブレーキペダルBPの踏み込み速度が速いほど、トルク変化予測部330及び踏力変化予測部340で算出される予測値の所定期間を長く設定する。
【0186】
ドライバの踏み込み速度が速いときには、回生制動トルクの制限値に達するまでの時間が短くなるため、回生制動トルクの変化勾配を小さくする期間も短くなり、変化勾配を小さくできる範囲が制限されてしまう。
【0187】
そのため、踏力変化算出部310が、踏み込み速度が速いほど予測値の所定期間を長く設定することにより、踏み込み速度が速いときにも、変化勾配を小さくするための時間が十分に確保される。したがって、トルク設定部350は、回生制動トルクの制限値に達する前に回生制動トルクの変化勾配を十分に小さくできるので、ブレーキペダル反力の急変を抑制することができる。
【0188】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0189】
なお、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【0190】
本願は、2012年3月14日に日本国特許庁に出願された特願2012−057744に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。