特許第5790877号(P5790877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790877
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】光生体測定システム及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20150917BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   A61B10/00 EZDM
   A61B5/14 322
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-514339(P2014-514339)
(86)(22)【出願日】2012年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2012062223
(87)【国際公開番号】WO2013168294
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2014年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 芳浩
(72)【発明者】
【氏名】網田 孝司
(72)【発明者】
【氏名】河野 理
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 晴英
(72)【発明者】
【氏名】増田 善紀
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−032204(JP,A)
【文献】 特開2010−240298(JP,A)
【文献】 特開2009−136434(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/005303(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/161018(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/65890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の頭皮表面上に配置される複数の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数の受光プローブとを有し、各受光プローブは送光プローブから第二設定距離r2で離れた位置に配置される送受光部と、
送光プローブから受光プローブまでの複数の第二受光量情報ΔA2を取得することで、被検者の脳の所定範囲における脳活動に関する複数の測定データを取得する送受光用制御部とを備える光生体測定システムであって、
前記送受光部には、送光プローブから第二設定距離r2より短い第一設定距離r1で離れた位置にN個の参照プローブを配置することが可能となっており、
送光プローブから参照プローブまでのN個の第一受光量情報ΔA1を取得することで、前記被検者の頭皮の広範囲における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得する第一受光量情報取得部を備え、
前記被検者の頭皮の広範囲における皮膚血流に関する皮膚血流データを得る前試験が実行された後、N個の第一受光量情報ΔA1のうちからX個の第一受光量情報ΔA1が選択され、
前記送受光用制御部は、送光プローブから受光プローブまでの複数の第二受光量情報ΔA2を取得することで、被検者の脳の所定範囲における脳活動に関する複数の測定データを取得する際には、X個の第一受光量情報ΔA1を取得することで、前記被検者の頭皮の所定位置における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得する本試験を実行することを特徴とする光生体測定システム。
【請求項2】
送光プローブから参照プローブまでのN個の第一受光量情報ΔA1を取得するための広範囲制御テーブルを予め記憶する記憶部と、
X個の第一受光量情報ΔA1を取得するための選択制御テーブルを記憶部に記憶させる選択制御テーブル作成部とを備え、
前記第一受光量情報取得部は、前記送受光部に対して光の送受光を広範囲制御テーブルを用いて制御することで、前記被検者の頭皮の広範囲における皮膚血流に関する皮膚血流データを得て、
前記送受光用制御部は、前記選択制御テーブルが記憶された後、前記送受光部に対して光の送受光を選択制御テーブルを用いて制御することで、前記被検者の頭皮の所定位置における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得することを特徴とする請求項1に記載の光生体測定システム。
【請求項3】
被検者の頭皮表面上に配置される複数の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数の受光プローブとを有し、各受光プローブは送光プローブから第二設定距離r2で離れた位置に配置される送受光部と、
送光プローブから受光プローブまでの複数の第二受光量情報ΔA2を取得することで、被検者の脳の所定範囲における脳活動に関する複数の測定データを取得する送受光用制御部とを備える光生体測定システムの使用方法であって、
前記送受光部には、送光プローブから第二設定距離r2より短い第一設定距離r1で離れた位置にN個の参照プローブを配置することが可能となっており、
送光プローブから参照プローブまでのN個の第一受光量情報ΔA1を取得することで、前記被検者の頭皮の広範囲における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得する前試験ステップと、
N個の第一受光量情報ΔA1のうちからX個の第一受光量情報ΔA1を選択する選択ステップと、
送光プローブから受光プローブまでの複数の第二受光量情報ΔA2を取得することで、被検者の脳の所定範囲における脳活動に関する複数の測定データを取得する際には、X個の第一受光量情報ΔA1を取得することで、前記被検者の頭皮の所定位置における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得する本試験ステップとを含むことを特徴とする光生体測定システムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光生体測定システム及びその使用方法に関し、さらに詳細には非侵襲で脳活動を測定する光生体測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳の活動状況を観察するために、光を用いて簡便に非侵襲で測定する光脳機能イメージング装置が開発されている。このような光脳機能イメージング装置では、被検者の頭皮表面上に配置した送光プローブにより、異なる3種類の波長λ、λ、λ(例えば、780nmと805nmと830nm)の近赤外光を脳に照射するとともに、頭皮表面上に配置した受光プローブにより、脳から放出された各波長λ、λ、λの近赤外光の強度変化(受光量情報)ΔA(λ)、ΔA(λ)、ΔA(λ)をそれぞれ検出する。
そして、このようにして得られた受光量情報ΔA(λ)、ΔA(λ)、ΔA(λ)から、脳血流中のオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]と、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]とを求めるために、例えば、Modified Beer Lambert則を用いて関係式(1)(2)(3)に示す連立方程式を作成して、この連立方程式を解いている。さらには、オキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]と、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]とから総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を算出している。
ΔA(λ)=E(λ)×[oxyHb]+E(λ)×[deoxyHb]・・・(1)
ΔA(λ)=E(λ)×[oxyHb]+E(λ)×[deoxyHb]・・・(2)
ΔA(λ)=E(λ)×[oxyHb]+E(λ)×[deoxyHb]・・・(3)
なお、E(λm)は、波長λmの光におけるオキシヘモグロビンの吸光度係数であり、E(λm)は、波長λmの光におけるデオキシヘモグロビンの吸光度係数である。
【0003】
ここで、送光プローブと受光プローブとの間の距離(チャンネル)と、測定部位との関係について説明する。図9は、一対の送光プローブ及び受光プローブと、測定部位との関係を示す図である。送光プローブ12が被検者の頭皮表面の送光点Tに押し当てられるとともに、受光プローブ13が被検者の頭皮表面の受光点Rに押し当てられる。そして、送光プローブ12から光を照射させるとともに、受光プローブ13に頭皮表面から放出される光を入射させる。このとき、頭皮表面の送光点Tから照射された光のうちで、バナナ形状(測定領域)を通過した光が頭皮表面の受光点Rに到達する。すなわち、光は、送光点T近傍の皮膚に存在する血管と、脳に存在する血管と、受光点R近傍の皮膚に存在する血管とを通過することになる。
【0004】
そこで、脳に存在する血管のみによる受光量情報ΔAを取得するために、送光プローブ12と受光プローブ13との間の距離(チャンネル)を、短距離r1としたものと長距離r2としたものとを備えるものが開示されている(例えば、特許文献1や非特許文献1参照)。図10は、送光プローブ12と短距離r1となる参照プローブ14及び長距離r2となる受光プローブ13と、測定部位との関係を示す断面図である。これにより、長距離r2のチャンネルで、送光点T近傍の皮膚に存在する血管と、脳に存在する血管と、受光点R2近傍の皮膚に存在する血管とによる受光量情報ΔA2を取得するとともに、短距離r1のチャンネルで、送光点T近傍の皮膚に存在する血管(受光点R1近傍の皮膚に存在する血管)のみによる受光量情報ΔA1を取得している。
【0005】
そして、このようにして得られた受光量情報ΔA1、ΔA2から式(4)を用いて、脳に存在する血管のみによる受光量情報ΔAを求めている。
ΔA=ΔA2−KΔA1・・・(4)
ところで、式(4)において受光量情報ΔAを求めるためには係数Kを決定する必要があり、この係数Kを算出する算出方法が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。この算出方法では、最小二乗誤差を用いて係数Kを算出している。
【0006】
また、光脳機能イメージング装置では、脳の複数箇所の測定部位に関するオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])をそれぞれ測定するために、例えば、近赤外分光分析計等が利用されている(例えば、特許文献2参照)。
図11は、従来の近赤外分光分析計の概略構成の一例を示すブロック図である。近赤外分光分析計101は、光を出射する光源2と、光源2を駆動する光源駆動機構4と、光を検出する光検出器3と、A/D(A/Dコンバータ)5と、送受光用制御部121と、解析用制御部122と、メモリ(記憶部)123とを備えるとともに、8個の送光プローブ12と、8個の受光プローブ13と、モニタ画面26a等を有する表示装置26と、キーボード(入力装置)27とを備える。
【0007】
光源駆動機構4は、送受光用制御部121から入力された駆動信号により光源2を駆動する。光源2は、例えば異なる3種類の波長λ、λ、λの近赤外光を出射することができる半導体レーザLD1、LD2、LD3等である。
光検出器3は、近赤外光をそれぞれ検出することにより、受光信号(受光量情報)ΔA(λ)、ΔA(λ)、ΔA(λ)をA/D5を介して送受光用制御部121に出力する検出器であり、例えば光電子増倍管等である。
【0008】
このような近赤外分光分析計101においては、8個の送光プローブ12と8個の受光プローブ13とを所定の配列で被検者の頭皮表面に接触させるために、ホルダ(送受光部)130が使用される。図12は、8個の送光プローブと8個の受光プローブとが挿入されるホルダ130の一例を示す平面図である。
送光プローブ12T1〜12T8と受光プローブ13R1〜13R8とは、縦方向に4個と横方向に4個とに交互となるように配置されている。このとき、送光プローブ12T1〜12T8と受光プローブ13R1〜13R8との間の間隔(チャンネル)である第二設定距離r2は、30mmとなっている。これにより、脳の24箇所の計測位置に関する受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)を得ている。
【0009】
ところで、このような8個の送光プローブ12T1〜12T8と8個の受光プローブ13R1〜13R8との位置関係では、1個の受光プローブ13で、複数個の送光プローブ12から照射された光を同時に受光せず、1個の送光プローブ12から照射された光のみを受光するように、送光プローブ12から光を照射するタイミングと、受光プローブ13で光を受光するタイミングとを調整する必要がある。このため、メモリ123の制御テーブル記憶領域123aには、光源2で光を出射するタイミングと光検出器3で光を検出するタイミングとを示す制御テーブルが記憶されている。
送受光用制御部121は、制御テーブル記憶領域123aに記憶された制御テーブルに基づいて、所定の時間に1個の送光プローブ12に光を送光する駆動信号を光源駆動機構4に出力するとともに、受光プローブ13で受光された受光信号(受光量情報)を光検出器3で検出してデータ記憶領域123bに記憶させている。
【0010】
ここで、図4は、制御テーブルの一例を説明するための図である。このような制御テーブルによれば、まず5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長780nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長805nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長830nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T2に波長780nmの光を送光させるように、所定のタイミングで1個の送光プローブ12T1〜12T8に光を順番に送光させていく。このとき、いずれか1個の送光プローブ12T1〜12T8に光を送光させるごとに、8個の受光プローブ13R1〜13R8で受光信号を検出することになるが、所定のタイミングで検出した所定の受光プローブ13R1〜13R8の受光信号をメモリ123のデータ記憶領域123bに記憶させる。具体的には、送光プローブ12T1からの光を検出した受光プローブ13R1と受光プローブ13R3との受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させ、送光プローブ12T2からの光を検出した受光プローブ13R1と受光プローブ13R2と受光プローブ13R4との受光信号をデータ記憶領域123bに記憶させるように、所定のタイミングで検出した所定の受光プローブ13R1〜13R8の受光信号をデータ記憶領域123bに記憶させる。これにより、合計24個の受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)の収集が行われる。
【0011】
解析用制御部122は、24個の受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)に基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を24個の測定データとして求める。その結果、医師や検査技師等によって観察されるために、24個の測定データがモニタ画面26aに表示される。例えば、脳表面画像の24個の所定位置上に各測定データの画像表示がそれぞれ行われており、各測定データは、ある計測時間tでのオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]の数値に対応する色で表現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−136434号公報
【特許文献2】特開2001−337033号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Rolf B. Saager, and Andrew J. Berger "Direct characterization and removal of interfering absorption trends in two-layer turbid media" J. Opt. Soc. Am. A/Vol.22, No.9/September 2005.
【非特許文献2】Francesco Fabbri, Angelo Sassaroli, Michael e Henry, and Sergio Fantini "Optical measurements of absorption changes in two-layered diffusive media" Phys. Med. Biol. 49(2004) 1183 - 1201.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上述したような受光量情報ΔA1、ΔA2や係数Kを用いた算出方法で受光量情報ΔAを算出しているが、これは一対の送光プローブ12及び受光プローブ13の組み合わせを考慮しており、上述したような光脳機能イメージング装置101のホルダ130のような複数の送光プローブ12T1〜12T8及び複数の受光プローブ13R1〜13R8の組み合わせを考慮したものではなかった。つまり、脳の複数箇所(24箇所)の計測位置に関する受光量情報ΔAを算出するものではなかった。
なお、上述したような算出方法で受光量情報ΔAを算出するために、全ての送光プローブ12T1〜12T8及び受光プローブ13R1〜13R8の組み合わせに対して短距離r2とした複数(例えば8個)の参照プローブ14を設けることも考えられるが、8個の参照プローブ14を設けることはコストがかかる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本件発明者らは、上記課題を解決するために、多数(例えば8個)の参照プローブ14を設けることなく、脳の複数箇所の測定部位に関して脳に存在する血管のみによる受光量情報ΔAを考察することができる方法について検討を行った。そこで、被検者の脳の所定範囲における測定データを取得する前に、被検者の頭皮の所定範囲における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得して、その皮膚血流データを観察しながら、どれが必要な位置(例えば2個)における皮膚血流データであるか否かを決定することにした。その後、被検者の脳の所定範囲における測定データを取得する際には、必要な位置(例えば2個)における皮膚血流データを取得することにした。つまり、まず多数の参照プローブ14で光を検出することにより、被検者の頭皮の所定範囲における皮膚血流データを取得する前試験を実行して、前試験の皮膚血流データを観察しながら少数の参照プローブ14を選択した後、少数の参照プローブ14と受光プローブ13とで光を検出することにより、被検者の頭皮の必要な位置(例えば2個)における皮膚血流データを取得しながら、被検者の脳の所定範囲における測定データを取得する本試験を実行することを見出した。
【0016】
すなわち、本発明の光生体測定システムは、被検者の頭皮表面上に配置される複数の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数の受光プローブとを有し、各受光プローブは送光プローブから第二設定距離r2で離れた位置に配置される送受光部と、送光プローブから受光プローブまでの複数の第二受光量情報ΔA2を取得することで、被検者の脳の所定範囲における脳活動に関する複数の測定データを取得する送受光用制御部とを備える光生体測定システムであって、前記送受光部には、送光プローブから第二設定距離r2より短い第一設定距離r1で離れた位置にN個の参照プローブを配置することが可能となっており、送光プローブから参照プローブまでのN個の第一受光量情報ΔA1を取得することで、前記被検者の頭皮の広範囲における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得する第一受光量情報取得部を備え、前記被検者の頭皮の広範囲における皮膚血流に関する皮膚血流データを得る前試験が実行された後、N個の第一受光量情報ΔA1のうちからX個の第一受光量情報ΔA1が選択され、前記送受光用制御部は、送光プローブから受光プローブまでの複数の第二受光量情報ΔA2を取得することで、被検者の脳の所定範囲における脳活動に関する複数の測定データを取得する際には、X個の第一受光量情報ΔA1を取得することで、前記被検者の頭皮の所定位置における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得する本試験を実行するようにしている。
【0017】
ここで、「第二設定距離r2」は、送光点T近傍の皮膚に存在する血管と、脳に存在する血管と、受光点R近傍の皮膚に存在する血管とによる受光量情報を取得するための距離であり、「第一設定距離r1」は、送光点T又は受光点R近傍の皮膚に存在する血管による受光量情報を取得するための距離である。
また、「被検者の脳の所定範囲」とは、計測したい任意の脳の範囲のことをいい、送受光部の大きさ等によって決定されるものであり、「被検者の頭皮の広範囲」とは、任意の頭皮の範囲のことをいい、送受光部の大きさ等によって決定されることになり、「被検者の頭皮の所定位置」とは、脳に存在しない血管を計測するための位置のことをいい、例えば、頭皮から2cm以内に存在する主要動脈や主要静脈や送受光部付近の動脈や送受光部付近の静脈を計測するための位置等となり、本願では、皮膚血流データを取得するための適切な位置となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の光生体測定システムによれば、医師や検査技師等は複数の皮膚血流データを考察する前試験を実行するので、必要な皮膚血流データを選択することができ、その結果、本試験では必要な皮膚血流データのみを取得した上で、複数の測定データを取得することができる。
【0019】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の光生体測定システムにおいては、送光プローブから参照プローブまでのN個の第一受光量情報ΔA1を取得するための広範囲制御テーブルを予め記憶する記憶部と、X個の第一受光量情報ΔA1を取得するための選択制御テーブルを記憶部に記憶させる選択制御テーブル作成部とを備え、前記第一受光量情報取得部は、前記送受光部に対して光の送受光を広範囲制御テーブルを用いて制御することで、前記被検者の頭皮の広範囲における皮膚血流に関する皮膚血流データを得て、前記送受光用制御部は、前記選択制御テーブルが記憶された後、前記送受光部に対して光の送受光を選択制御テーブルを用いて制御することで、前記被検者の頭皮の所定位置における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得するようにしてもよい。
【0020】
そして、本発明の光生体測定システムの使用方法は、被検者の頭皮表面上に配置される複数の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数の受光プローブとを有し、各受光プローブは送光プローブから第二設定距離r2で離れた位置に配置される送受光部と、送光プローブから受光プローブまでの複数の第二受光量情報ΔA2を取得することで、被検者の脳の所定範囲における脳活動に関する複数の測定データを取得する送受光用制御部とを備える光生体測定システムの使用方法であって、前記送受光部には、送光プローブから第二設定距離r2より短い第一設定距離r1で離れた位置にN個の参照プローブを配置することが可能となっており、送光プローブから参照プローブまでのN個の第一受光量情報ΔA1を取得することで、前記被検者の頭皮の広範囲における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得する前試験ステップと、N個の第一受光量情報ΔA1のうちからX個の第一受光量情報ΔA1を選択する選択ステップと、送光プローブから受光プローブまでの複数の第二受光量情報ΔA2を取得することで、被検者の脳の所定範囲における脳活動に関する複数の測定データを取得する際には、X個の第一受光量情報ΔA1を取得することで、前記被検者の頭皮の所定位置における皮膚血流に関する皮膚血流データを取得する本試験ステップとを含むようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態である光生体計測装置の概略構成を示すブロック図。
図2】8個の送光プローブと8個の受光プローブと8個の参照プローブとが挿入されるホルダの一例を示す平面図。
図3】受光量情報が得られる位置を説明する図。
図4】制御テーブルの一例の説明図。
図5】広範囲制御テーブルの一例の説明図。
図6】選択制御テーブルの一例の説明図。
図7】8個の皮膚血流データの画像表示を示す図。
図8】光生体計測装置の使用方法の一例について説明するためのフローチャート。
図9】一対の送光プローブ及び受光プローブと、測定部位との関係を示す図。
図10】送光プローブと短距離となる参照プローブ及び長距離となる受光プローブと、測定部位との関係を示す断面図。
図11】従来の近赤外分光分析計の概略構成の一例を示すブロック図。
図12】8個の送光プローブと8個の受光プローブとが挿入されるホルダの一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態である光生体計測装置の概略構成を示すブロック図である。また、図2は、8個の送光プローブと8個の受光プローブと8個の参照プローブとが挿入されるホルダ(送受光部)の一例を示す平面図である。なお、近赤外分光分析計101と同様のものについては、同じ符号を付している。
光生体計測装置(光生体測定システム)1は、光を出射する光源2と、光源2を駆動する光源駆動機構4と、光を検出する光検出器3と、A/D(A/Dコンバータ)5と、送受光用制御部21と、解析用制御部22と、選択制御テーブル作成部24と、第一受光量情報取得部25と、メモリ(記憶部)23とを備えるとともに、8個の送光プローブ12と、8個の受光プローブ13と、2個(X個<N個)の参照プローブ14a、14bと、モニタ画面26a等を有する表示装置26と、キーボード(入力装置)27とを備える。
【0024】
光源2は、送受光用制御部21から入力された駆動信号により8個の送光プローブ12T1〜12T8のうちから選択される1個の送光プローブ12に光を送光する。上記光としては、近赤外光(例えば、780nmと805nmと830nmとの3波長光)が用いられる。
光検出器3は、8個の受光プローブ13R1〜13R8で受光した近赤外光(例えば、780nmと805nmと830nmとの3波長光)を個別に検出することにより、8個の第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)を送受光用制御部21に出力するとともに、2個(X個)の参照プローブ14で受光した近赤外光(例えば、780nmと805nmと830nmとの3波長光)を個別に検出することにより、第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(x=1,2)を送受光用制御部21に出力する。
【0025】
ホルダ30は、8個の送光プローブ12T1〜12T8と、8個の受光プローブ13R1〜13R8と、8個(N個)の参照プローブ14B1〜14B8とを配置することが可能となる貫通孔T1〜T8、R1〜R8、B1〜B8が形成されている。
送光プローブ12T1〜12T8が配置可能な貫通孔T1〜T8と受光プローブ13R1〜13R8が配置可能な貫通孔R1〜R8とは、行方向及び列方向に交互となるように正方格子状に形成されている。このとき、送光プローブ12T1〜12T8が配置可能な貫通孔T1〜T8と受光プローブ13R1〜13R8が配置可能な貫通孔R1〜R8との間の間隔(チャンネル)である第二設定距離r2は、30mmとなっている。
【0026】
また、参照プローブ14B1が配置可能な貫通孔B1は、送光プローブ12T1が配置可能な貫通孔T1と受光プローブ13R3が配置可能な貫通孔R3との間で、送光プローブ12T1が配置可能な貫通孔T1と第一設定距離r1で離れた位置に形成されており、送光プローブ12T1が配置可能な貫通孔T1と参照プローブ14B1が配置可能な貫通孔B1との間の間隔である第一設定距離r1は、10mmとなっている。そして、参照プローブ14B2が配置可能な貫通孔B2は、送光プローブ12T3が配置可能な貫通孔T3と第一設定距離r1で離れた位置に形成され、参照プローブ14B3が配置可能な貫通孔B3は、送光プローブ12T2が配置可能な貫通孔T2と第一設定距離r1で離れた位置に形成されるように、各参照プローブ14が配置可能な貫通孔は、各送光プローブ12が配置可能な貫通孔と第一設定距離r1で離れた位置にそれぞれ形成されている。
【0027】
メモリ23は、24個の測定データを取得するためにホルダ30に対して光の送受光を制御する制御形態を定める制御テーブルを予め記憶するとともに、8個(N個)の皮膚血流データを取得するためにホルダ30に対して光の送受光を制御する制御形態を定める広範囲制御テーブルを予め記憶し、かつ、2個(X個)の皮膚血流データを取得するためにホルダ30に対して光の送受光を制御する制御形態を定める選択制御テーブルを記憶するための制御テーブル記憶領域23aと、受光信号(測定データ)等を記憶するデータ記憶領域23bとが形成されている。
図4は、前述の通り制御テーブルの一例を説明するための図であり、図3は、受光量情報が得られる位置を説明するための図である。なお、制御テーブルは、近赤外分光分析計101の制御テーブルと同様に用いられるので、説明を省略する。
【0028】
図5は、広範囲制御テーブルの一例を説明するための図である。このような広範囲制御テーブルによれば、まず5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長780nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長805nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長830nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T2に波長780nmの光を送光させるように、所定のタイミングで1個の送光プローブ12に光を順番に送光させていく。このとき、いずれか1個の送光プローブ12に光を送光させるごとに、8個の参照プローブ14B1〜14B8で受光信号を検出することになるが、所定のタイミングで検出した所定の参照プローブ14の受光信号をメモリ23のデータ記憶領域23bに記憶させる。具体的には、送光プローブ12T1からの光を検出した参照プローブ14B1の受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させ、送光プローブ12T3からの光を検出した参照プローブ14B2の受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させるように、所定のタイミングで検出した所定の参照プローブ14の受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させる。これにより、合計8個(N個)の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(n=1,2,・・・,8)の収集が行われる。
【0029】
図6は、選択制御テーブルの一例を説明するための図である。なお、選択制御テーブルの作成方法についての詳細は後述する。このような選択制御テーブルによれば、制御テーブルによって所定のタイミングで1個の送光プローブ12に光を順番に送光させていく際に、いずれか1個の送光プローブ12に光を送光させるごとに、2個(X個)の参照プローブ14で受光信号を検出することになるが、所定のタイミングで検出した所定の参照プローブ14の受光信号をメモリ23のデータ記憶領域23bに記憶させる。具体的には、送光プローブ12T3からの光を検出した参照プローブ14B3の受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させ、送光プローブ12T4からの光を検出した参照プローブ14B4の受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させるように、所定のタイミングで検出した所定の参照プローブ14の受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させる。これにより、合計2個(X個)の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(x=1,2)の収集が行われる。
【0030】
第一受光量情報取得部25は、8個(N個)の皮膚血流データを取得する入力信号を受信したときには、制御テーブル記憶領域23aに記憶された広範囲制御テーブルに基づいて、所定の時間に1個の送光プローブ12に光を送光する駆動信号を光源駆動機構4に出力するとともに、参照プローブ14で受光された受光信号(受光量情報)を光検出器3で検出する。
具体的には、第一受光量情報取得部25は、まず5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長780nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長805nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長830nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T2に波長780nmの光を送光させるように、所定のタイミングで1個の送光プローブ12に光を順番に送光させていく。このとき、所定のタイミングで検出した所定の参照プローブ14B1〜14B8の受光信号をメモリ23のデータ記憶領域23bに記憶させる。その結果、合計8個(N個)の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(n=1,2,・・・,8)の収集が行われる。
【0031】
送受光用制御部21は、24個の測定データを取得する入力信号を受信したとき(制御テーブル記憶領域23aに選択制御テーブルが記憶された後)には、制御テーブル記憶領域23aに記憶された制御テーブルと選択制御テーブルとに基づいて、所定の時間に1個の送光プローブ12に光を送光する駆動信号を光源駆動機構4に出力するとともに、受光プローブ13と参照プローブ14とで受光された受光信号(受光量情報)を光検出器3で検出する。
具体的には、送受光用制御部21は、まず5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長780nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長805nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T1に波長830nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12T2に波長780nmの光を送光させるように、所定のタイミングで1個の送光プローブ12T1〜12T8に光を順番に送光させていく。このとき、所定のタイミングで検出した所定の受光プローブ13R1〜13R8と所定の参照プローブ14a、14bとの受光信号をメモリ23のデータ記憶領域23bに記憶させる。その結果、合計24個の受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)の収集が行われるとともに、合計2個(X個)の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(x=1,2)の収集が行われる。
【0032】
解析用制御部22は、8個(N個)の皮膚血流データを取得する際には、8個(N個)の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(n=1,2,・・・,8)に基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を8個の皮膚血流データとして求める。これにより、モニタ画面26aには、図7に示すような頭皮表面画像の8個の所定位置C1〜C8上に8個の皮膚血流データの画像表示が行われる。このとき、皮膚血流データは、例えば、ある計測時間tにおける8個の所定位置C1〜C8でのオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]を、数値とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、色で表現されている。また、8個の所定位置C1〜C8は、送光点Tと受光点Bとを被検者の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点とする。
【0033】
また、解析用制御部22は、24個の測定データを取得する際(制御テーブル記憶領域23aに選択制御テーブルが記憶された後)には、24個の第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)と2個(X個)の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(x=1,2)とに基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を24個の測定データと2個の皮膚血流データとして求める。
【0034】
選択制御テーブル作成部24は、キーボード27による入力操作によって、8個(N個)の皮膚血流データのうちから所望個数(X個)とその配置位置の皮膚血流データが選択されることで、2個(X個)の皮膚血流データを取得するための選択制御テーブルを作成して制御テーブル記憶領域23aに記憶させる制御を行う。
このとき、医師や検査技師等は、X個の皮膚血流データを選択するために、例えば、モニタ画面23aに表示された画像を用いてキーボード27で入力操作して設定することになるが、図7に示すような画像表示が行われている際に、8個の皮膚血流データのうちから必要な皮膚血流データを選択することにより設定する。これにより、必要な部位における皮膚血流に関する皮膚血流データを取り逃すということがなくなる。
【0035】
次に、光生体計測装置1の使用方法について説明する。図8は、光生体計測装置1の使用方法の一例について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、ホルダ30を被検者の頭皮表面に配置する。
次に、ステップS102の処理において、8個の送光プローブ12T1〜12T8を貫通孔T1〜T8に挿入するとともに、8個の受光プローブ13R1〜13R8を貫通孔B1〜B8に挿入する。このとき、受光プローブ13R1〜13R8を貫通孔B1〜B8に挿入することにより、参照プローブ14B1〜14B8として用いることになる。つまり、前試験と本試験とを設けているため、受光プローブ13R1〜13R8を参照プローブ14B1〜14B8として利用する。
【0036】
次に、ステップS103の処理において、第一受光量情報取得部25は、広範囲制御テーブルに基づいて、所定の時間に1個の送光プローブ12に光を送光する駆動信号を光源駆動機構4に出力するとともに、参照プローブ14B1〜14B8で受光された8個の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(n=1,2,・・・,8)を光検出器3で検出する(前試験ステップ)。
次に、ステップS104の処理において、解析用制御部22は、8個の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(n=1,2,・・・,8)に基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を8個の皮膚血流データとして求めて、モニタ画面26aに表示する。
【0037】
次に、ステップS105の処理において、医師や検査技師等は、モニタ画面23aに表示された画像を用いてキーボード27で入力操作することにより、8個の皮膚血流データのうちから所望個数とその配置位置の皮膚血流データを選択する(選択ステップ)。
次に、ステップS106の処理において、選択制御テーブル作成部24は、X個の皮膚血流データを取得するための選択制御テーブルを作成して制御テーブル記憶領域23aに記憶させる。
【0038】
次に、ステップS107の処理において、8個の参照プローブ13R1〜13R8を貫通孔B1〜B8から取外し貫通孔R1〜R8に挿入するとともに、2個の参照プローブ14a14bを貫通孔B3、B4に挿入する。
次に、ステップS108の処理において、送受光用制御部21は、制御テーブルと選択制御テーブルとに基づいて、所定の時間に1個の送光プローブ12に光を送光する駆動信号を光源駆動機構4に出力するとともに、受光プローブ13R1〜13R8と参照プローブ14a、14bとで受光された24個の第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)と、2個(X個)の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(x=1,2)とを光検出器3で検出する(本試験ステップ)。
【0039】
次に、ステップS109の処理において、解析用制御部22は、2個の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(x=1,2)に基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を2個の皮膚血流データとして求めて、モニタ画面26aに表示する。
次に、ステップS110の処理において、医師や検査技師等は2個の皮膚血流データを観察して、アーティファクトがあるか否かを判断する。アーティファクトがあると判断したときにはステップS108の処理に戻る。つまり、本試験を再度実行する。
一方、アーティファクトがないと判断したときには、ステップS111の処理において、解析用制御部22は、24個の第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)に基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を24個の測定データとして求めて、モニタ画面26aに表示する。
そして、ステップS111の処理が終了したときには、本フローチャートを終了させる。
【0040】
以上のように、光生体計測装置1によれば、医師や検査技師等は8個の皮膚血流データを考察する前試験を実行するので、必要な2個の皮膚血流データを選択することができ、その結果、本試験では必要な2個の皮膚血流データのみを取得した上で、24個の測定データを取得することができる。これにより、必要な2個の皮膚血流データを観察してアーティファクトがない場合の24個の測定データを取得することができる。
また、光生体計測装置1は、8個の送光プローブ12と、8個の受光プローブ13と、2個の参照プローブ14a、14bとを備えるだけで、24個の測定データを取得するとともに、必要な皮膚血流データを取得することができる。したがって、光生体計測装置1は、8個の送光プローブと8個の受光プローブと8個の参照プローブとを備える必要がなくなり、コストを抑えることができる。
【0041】
<他の実施形態>
(1)上述した光生体計測装置1では、8個の皮膚血流データのうちから2個の皮膚血流データを選択する構成を示したが、8個の皮膚血流データのうちから3個等の他の個数の皮膚血流データを選択する構成としてもよい。
【0042】
(2)上述した光生体計測装置1では、キーボード27によって8個(N個)の皮膚血流データのうちから所望個数(X個)とその配置位置の皮膚血流データが選択される構成を示したが、皮膚血流データの内容等によって閾値等を登録することで8個(N個)の皮膚血流データのうちから所望個数(X個)とその配置位置の皮膚血流データが自動的に選択されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、非侵襲で脳活動を測定する光生体計測装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1: 光生体計測装置(光生体測定システム)
12: 送光プローブ
13: 受光プローブ
14: 参照プローブ
21: 送受光用制御部
23: メモリ(記憶部)
24: 選択制御テーブル作成部
25: 第一受光量情報取得部
30: ホルダ(送受光部)
図1
図2
図3
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