(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記双方向スイッチ素子は、単方向スイッチ素子である第3のスイッチ素子、及び第4のスイッチ素子を直列、かつ逆方向に接続して構成した事を特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
前記交流電源の交流入力電圧から前記エネルギー蓄積コンデンサの両端電圧への変換比(整流/PFC回路部の入出力電圧変換比)をデューティ比によって制御し、前記エネルギー蓄積コンデンサの両端電圧から直流出力電圧への変換比(絶縁型DC−DCコンバータ部の入出力電圧変換比)をスイッチング周波数によって制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチング電源装置。
交流入力電圧の正の半周期における前記双方向スイッチ素子のオン期間は、前記第1のスイッチ素子のオン期間を含み、前記双方向スイッチ素子がオンした後に前記第1のスイッチ素子がゼロ電圧状態でターンオンし、
交流入力電圧の負の半周期における前記双方向スイッチ素子のオン期間は、前記第2のスイッチ素子のオン期間を含み、前記双方向スイッチ素子がオンした後に前記第2のスイッチ素子がゼロ電圧状態でターンオンする事を特徴とする請求項1から請求項6に記載のスイッチング電源装置。
前記整流/PFC回路部の入出力電圧変換比をデューティ比によって制御し、前記DC−DCコンバータ部の入出力電圧変換比をスイッチング周波数によって制御することを特徴とする請求項9に記載のスイッチング電源装置。
軽負荷領域において、前記双方向スイッチ素子、前記第1のスイッチ素子、及び前記第2のスイッチ素子が共にオフするデッドタイムを延長した間欠スイッチング動作をおこなう事を特徴とする請求項1から請求項11に記載のスイッチング電源装置。
前記交流電源が3相交流であり、請求項1から請求項12に記載のスイッチング電源装置が3相交流入力の各相間に接続され、かつ各相間の電流バランスを保持する電流バランス回路を有するAC−DC電力変換システム。
【背景技術】
【0002】
商用の電力系統に接続されて動作する電子機器においては、単相、もしくは3相の交流を整流し、トランスを用いて絶縁を確保した状態で電力変換した後、一定の直流電圧値に安定化して前記電子機器に電力を供給するシステムが一般的に使用されている。前記のAC−DC電力変換システムには一般的にスイッチング電源装置が用いられる。
【0003】
一方で、前記のAC−DC電力変換システムの力率が低いと、前記電力系統の設備で過大な損失が発生したり、前記電力系統に共通接続された電子機器に誤動作を発生させたり、異音が発生する等の弊害を生じる。そのため、交流入力電流に含まれる高調波に関して、例えばIEC6100−3−2のような国際的な規制があり、高調波を規制の限度値以下に抑制する必要がある。
【0004】
力率を改善し、高調波を規制限度値以下に抑制するには、インダクタ、コンデンサのみでフィルタを構成するパッシブ方式と、スイッチング電源の技術を応用したアクティブ方式がある。アクティブ方式では、PFC(Power Factor Correction、力率改善)コンバータが用いられる。PFCコンバータではスイッチング動作による損失は伴うが、パッシブ方式より力率改善効果が高く、必要なインダクタ、コンデンサの値もパッシブ方式より小さい。
【0005】
前述のように構成したAC−DC電力変換システムの第1従来例を
図12に示す。なお、本発明の全ての回路図においては、わかりやすくするためにMOSFETの寄生ダイオードを点線で明示している。第1従来例では、交流電源ACinから供給される単相の交流が整流素子D7、D8、D9、D10で構成されるブリッジ整流ステージで整流されて脈流に変換される。PFCステージのPFCコンバータはPFCステージの入力電圧とほぼ比例した脈流状の入力電流を維持しつつ、前記脈流を直流に変換する。第1従来例の構成では、PFCコンバータにはブーストコンバータのトポロジーが用いられ、PFCインダクタLpfc1、スイッチ素子Q9、整流素子D11、と平滑用のエネルギー蓄積コンデンサCens1がブーストコンバータの電力変換回路を構成している。
【0006】
通常、PFC出力の直流電圧は脈流のピーク値よりも大きく設定され、一例として、最大で240Vacの入力を想定するワールドワイド対応の電力変換システムでは、PFCコンバータの出力電圧は400Vdc程度に設定される。PFCステージの出力電圧は抵抗R3、R4で分圧された後、第3の比較器AMP3に入力され、第1の基準電圧Vref1と比較されて第1の誤差信号を形成する。前記第1の誤差信号は抵抗R1、R2で分圧された脈流電圧と共に乗算器M1に入力され、第1の誤差信号と脈流電圧の乗算値が計算される。前記乗算値とPFCステージの入力電流に比例する電圧が第1の比較器AMP1で比較されて第2の誤差信号を形成する。前記第2の誤差信号は、鋸歯状波発生器STG1から出力された鋸歯状波電圧とコンパレータCOMP1で比較されてPWM制御された方形波信号を形成する。前記方形波信号に従って1次側制御回路CNTP1がスイッチ素子Q9を駆動する事で、入力電流が正弦波状を維持しつつ、PFCステージの出力電圧が目標値に安定化される。
【0007】
PFCコンバータから出力されエネルギー蓄積コンデンサCens1に一旦蓄積された直流電力は絶縁型コンバータステージの絶縁型DC−DCコンバータに入力され、トランスで絶縁を確保した状態で電力変換された後、安定化された直流電圧として出力される。第1従来例の絶縁型コンバータステージは電流共振ハーフブリッジコンバータのトポロジーで構成されている。PFC ステージから供給される直流電力は、デューティ比50%(D=0.5)で交互に駆動されるスイッチ素子Q10、Q11でスイッチングされて交流電力に変換され、トランスT1によって1次側から2次側に伝送される。NチャネルMOSFETで構成される第1、第2の同期整流素子SR7、SR8はそれぞれ、2次側制御回路CNTS1によって、ほぼ正弦波状に変化するトランスT1の2次巻線から出力される出力電流のうち、ソース→ドレイン方向の導通期間のみターンオンされる。前記第1、第2の同期整流素子SR7、SR8の整流動作によって、平滑コンデンサCf1両端に直流出力電圧が形成される。スイッチ素子Q10、Q11をZVS(Zero−Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)、同期整流素子SR7、SR8をZCS(Zero−Current Switching:ゼロ電流スイッチング)駆動させることで、高効率な電力変換動作が可能である。
【0008】
前記直流出力電圧は、抵抗R5、R6で分圧された後、第2の比較器AMP2で第2の基準電圧Vref2と比較され第3の誤差信号を形成する。前記第3の誤差信号はフォトカプラ等で形成される絶縁信号伝送素子ISO1を介して1次側制御回路CNTP1に入力される。1次側制御回路CNTP1は、前記第3の誤差信号に応じた周波数制御を行い、直流出力電圧を目標値に安定化させる。
【0009】
図13に示す第2従来例はブリッジレスPFCコンバータと一般に呼ばれる、特許文献1(米国特許第4412277号公報)に開示された回路である。交流入力に対して2つのブーストコンバータを逆方向、直列に接続する事で、交流電力を整流しながら力率を改善でき、第1従来例のブリッジ整流ステージとPFCステージを1つのステージで構成している。従って、第1従来例でブリッジ整流ステージ、PFC ステージ 、絶縁型コンバータステージの3つのステージの直列接続で構成されていたAC−DC電力変換システムが、整流 /PFCステージと絶縁型コンバータステージの2つのステージの直列接続で構成できる。
【0010】
交流入力電圧の正の半周期ではインダクタ9、11、スイッチ素子17、ダイオード13が構成する第1のブーストコンバータがPFCコンバータとして動作する。スイッチ素子17のスイッチング電流は、スイッチ素子19の寄生ダイオードを経由して流れ、スイッチ素子17が入力電流を正弦波状にするようにPWM制御される。一方で、交流入力電圧の負の半周期ではインダクタ9、11、スイッチ素子19、ダイオード15が構成する第2のブーストコンバータがPFCコンバータとして動作する。スイッチ素子19のスイッチング電流は、スイッチ素子17の寄生ダイオードを経由して流れ、スイッチ素子19が入力電流を正弦波状にするようにPWM制御される。
【0011】
図14に示す第3従来例は特許文献2(特許第2632586号公報)に開示されている絶縁型のブリッジレスPFCコンバータである。第3従来例は、
図15に示すカレントフェッドプッシュプルコンバータ(Current−Fed Push−pull Converter:電流供給形プッシュプルコンバータ)の1次側電力スイッチ素子Q12、Q13を、それぞれMOSFETを逆方向、直列に接続して構成した双方向スイッチ素子に置き換える事で交流入力に対応している。
図14が2次側整流回路にブリッジ整流を用いているのに対して
図15は両波整流を用いている点は異なるが、トポロジーは同じである。カレントフェッドプッシュプルコンバータでは、1次側電力スイッチQ12、Q13が共にオンするオーバーラップ時間を制御する事でPWM制御が可能であり、入力電圧、出力電流の変動に対して出力電圧を安定化させる事ができる。カレントフェッドプッシュプルコンバータでは、入力電流は電流連続モードで動作する。従って、カレントフェッドプッシュプルコンバータを第3従来例に示すように絶縁型ブリッジレスPFCコンバータに適用すると、入力電流から高調波を除去するための入力フィルタを簡易化できる利点がある。第1従来例がブリッジ整流ステージ、PFC ステージ 、絶縁型コンバータステージの3つのステージの直列接続で構成し、第2従来例が整流 /PFCステージと絶縁型コンバータステージの2つのステージの直列接続で構成しているのに対して、第3従来例は整流 /PFC/絶縁ステージの1つのステージでAC−DC電力変換システムを構成できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
《第1実施例》
図1の回路図に示す本発明の第1実施例におけるスイッチング電源装置101は、整流/PFC回路部、絶縁型DC−DCコンバータ部を一体化したスイッチング電源装置である。整流/PFC回路部とは、整流機能およびPFC機能の両方の機能を合わせ持つ回路部である。交流電源AcinにPFCインダクタLpfc1と、双方向スイッチ素子Qbdとを直列接続している。PFCインダクタLpfc1は入力電流を検出するための補助巻線を有するトランスとして構成されており、双方向スイッチ素子Qbdは、単方向スイッチ素子である第3のスイッチ素子Q3と第4のスイッチ素子Q4を逆方向に接続した直列回路によって構成される。第3のスイッチ素子Q3、第4のスイッチ素子Q4はNチャネルMOSFETであり、並列に寄生ダイオードを備える。前記双方向スイッチQbdの一端に、交流入力電圧の正の半周期に導通する極性の第1の整流素子D1と、交流入力電圧の負の半周期に導通する極性の第2の整流素子D2とが接続され、第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1とを有する直列回路と、第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2とを有する直列回路とが、前記双方向スイッチ素子Qbdと並列に接続されている。第1のスイッチ素子Q1と第2のスイッチ素子Q2とが構成する直列スイッチ回路と並列に、エネルギー蓄積コンデンサCens1が接続されている。エネルギー蓄積コンデンサCens1は交流入力電圧が低下する位相や交流入力の瞬時停電時に負荷回路Loadにエネルギーを供給する役割を担うため、比較的大容量のコンデンサを必要とする。エネルギー蓄積コンデンサCens1には常に第1のスイッチ素子Q1のドレイン側を(+)、第2のスイッチ素子Q2のソース側を(−)とする直流電圧が加わるので、極性を有するアルミ電解コンデンサを用いる事ができる。第1のスイッチ素子Q1と第2のスイッチ素子Q2の接続点と、第2のスイッチ素子Q2のソース端子の間には、共振インダクタLr1と、トランスT1の1次巻線Np1と、共振コンデンサCr1とで構成する直列共振回路の一端が接続されており、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源とするブリッジ形電力変換回路を構成している。トランスT1の2次巻線Ns1、Ns2には、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2、及び平滑コンデンサCf1で構成される整流平滑回路が接続されている。
【0027】
図2の動作波形に示す様に正弦波状の交流入力電圧が加わると、交流入力電圧に実質的に比例する正弦波状の電流を流入し、かつ安定化した直流電圧を出力する。本発明のスイッチング電源装置は、整流/PFC回路部、絶縁型DC−DCコンバータ部を一体化して構成しているが、整流/PFC回路部、絶縁型DC−DCコンバータ部がそれぞれ、独立に入出力変換比を制御する事ができる。従って、エネルギー蓄積コンデンサCens1の両端に発生する交流リップルは、絶縁型DC−DCコンバータ部の制御動作によって打ち消され、スイッチング電源装置からは出力されない。出力電圧の変動に対して、絶縁型DC−DCコンバータ部の独立な制御によって高速応答する事ができる。瞬時停電が発生しても一定期間は出力電圧値を規定値に保持する出力電圧保持動作が可能である。
【0028】
図3は、交流入力電圧に対する第3従来例のスイッチング電源装置と、本発明のスイッチング電源装置との、出力電圧の差異を示した図であり、第3従来例のスイッチング電源装置で発生する交流リップルが、本発明のスイッチング電源装置では発生せず、第3従来例のスイッチング電源装置が瞬時停電に対する出力電圧保持動作ができないのに対して、本発明のスイッチング電源装置は必要とされる出力電圧保持時間を確保する事ができる。かつ、
図12に示す従来の3ステージAC−DC電力変換システムよりも導通損失が少ないので高効率な電力変換が可能である。
【0029】
整流/PFC回路部は、PFCインダクタLpfc1、双方向スイッチQbd、第1の整流素子D1、第2の整流素子D2、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、エネルギー蓄積コンデンサCens1で構成され、交流入力電圧の正の半周期においては並列接続された双方向スイッチ素子Qbdと第1のスイッチ素子Q1との少なくとも一方を主スイッチとし、第2のスイッチ素子Q2を同期整流素子とするブーストコンバータとして機能し、交流入力電圧の負の半周期においては並列接続された双方向スイッチ素子Qbdと第2のスイッチ素子Q2との少なくとも一方を主スイッチとし、第1のスイッチ素子Q1を同期整流素子とするブーストコンバータとして機能する。
【0030】
従って、整流/PFC回路部の入出力変換比にはブーストコンバータの式が成り立ち、交流入力電圧をVin、エネルギー蓄積コンデンサの両端電圧をVensと定義し、交流入力電圧Vinの正の半周期において、双方向スイッチ素子Qbd、第1のスイッチ素子Q1の少なくとも一方がオンしている期間の、1周期に対する比率、および交流入力電圧Vinの負の半周期において、双方向スイッチ素子Qbd、第2のスイッチ素子Q2の少なくとも一方がオンしている期間の、1周期に対する比率を第1のデューティ比Dと定義すると、
【0031】
【数2】
の関係式が実質的に、成り立つ。数式(2)にはスイッチング周波数fswに相関する項がなく、少なくとも電流連続モードの領域ではスイッチング周波数の変動は整流/PFC回路部の入出力変換比に対してほとんど影響しない事を示している。
【0032】
絶縁型DC−DCコンバータ部は、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1、トランスT1、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2、平滑コンデンサCf1で構成され、エネルギー蓄積コンデンサCens1を直流入力電源とする電流共振コンバータ、もしくはLLC共振コンバータと呼ばれるトポロジーで構成される。共振コンデンサの容量をCr、共振インダクタのインダクタンスをLr、トランスの励磁インダクタンスをLmとすると、前記絶縁型DC−DCコンバータ部の入出力電圧変換比はスイッチング周波数fswを、
【0033】
【数4】
で定義される第1の共振周波数fr1と
【0034】
【数5】
で定義される第2の共振周波数fr2との間の範囲で制御する周波数制御によって変調される。電流共振コンバータにおいて第1の共振周波数fr1と第2の共振周波数の間の範囲では、主スイッチ素子がZVS(ゼロ電圧スイッチング)、整流素子がZCS(ゼロ電流スイッチング)となる高効率動作が可能である。
【0035】
図4は、第1の共振周波数fr1を480kHz、第2の共振周波数fr2を210kHzに設定し、エネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensを一定値と仮定した際の、スイッチング周波数fswと出力電圧Voutの関係の一例を示すグラフである。共振コンデンサCrと共振インダクタLr、トランスT1の励磁インダクタンスLmの共振により、第2の共振周波数fr2の近傍で出力電圧Voutは増大し、エネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensに対する出力電圧Voutの変換比率がピーク値になる。
【0036】
絶縁型DC−DCコンバータ部を構成する電流共振コンバータのデューティ比をDiと定義した場合、デューティ比Diの変化によって出力電圧Voutは増減するが、第1の共振周波数fr1の近傍ではデューティ比Diの影響が比較的小さい。従って、第2の共振周波数fr2より高周波の領域で周波数制御を行い、出力電圧Voutが目標値より低い場合はスイッチング周波数fswを低下させて第2の共振周波数fr2に近づけ、出力電圧Voutが目標値より高い場合はスイッチング周波数fswを増加させて第2の共振周波数fr2から遠ざけるように制御すれば出力電圧Voutを目標とする電圧値に対して安定化できる。この際、定常動作におけるスイッチング周波数fswを第1の共振周波数fr1の近傍に設定する事で、デューティ比Diの影響が小さくなり、また、電流共振コンバータは第1の共振周波数fr1近傍で最も高効率な電力変換が可能である事から、高効率な電力変換動作も可能になる。前述の動作により、整流/PFC回路部の入出力変換比はPWM(デューティ比)制御、絶縁型DC−DCコンバータ部の入出力変換比はPFM(スイッチング周波数)制御により、それぞれ独立に制御する事ができる。
【0037】
第1実施例において前述の制御を行うために、
図1の回路図に示す制御回路が構成されている。1次側制御回路グランドは交流電源Acinを整流素子D3、D4で整流したノードに設定する事で安全規格への対応を容易にしている。交流電源Acinの各端子と1次側制御回路グランドとの間には、分圧用の抵抗R1、R2、R3、R4が接続されており、分圧された電圧は動作モード判別器Mdt1に入力される。動作モード判別器Mdt1は、交流入力電圧Vinの範囲に応じて以下5種類の動作モードを判別し、モード判別信号として1次側制御回路CNTP1に出力する(
図2に示すA1、A2、B1、B2、Cのそれぞれのモードを参照)。
【0038】
Cモードは交流入力電圧Vinの絶対値が小さく、力率にはほとんど影響しない期間である。A1モード、A2モードは交流入力電圧Vinの正の半周期に相当する期間であるが、抵抗R1、R2の分圧点に現れる正弦半波電圧から交流入力電圧Vinの絶対値を計測して2種類のモードに判別する。交流入力電圧Vinの正の半周期で、交流入力電圧Vinの絶対値がCモードの基準値より大きく、かつエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensの1/2以下の場合はA1モードと判別し、交流入力電圧Vinの絶対値がエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensの1/2より大きい場合はA2モードと判別する。B1モード、B2モードは交流入力電圧Vinの負の半周期に相当する期間であるが、抵抗R3、R4の分圧点に現れる正弦半波電圧から交流入力電圧Vinの絶対値を計測して2種類のモードに判別する。交流入力電圧Vinの負の半周期で、交流入力電圧Vinの絶対値がCモードの基準値より大きく、かつエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensの1/2以下の場合はB1モードと判別し、交流入力電圧Vinの絶対値がエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensの1/2より大きい場合はB2モードと判別する。
【0039】
第1実施例の整流/PFC回路部でPFC動作を行うためには、交流入力電圧Vin、入力電流、及びエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensを基準電圧と比較して生成した第2の誤差信号を必要とする。交流入力電圧Vinは前述のように抵抗R1、R2、もしくは抵抗R3、R4の分圧電圧から交流入力電圧Vinに比例する電圧を得る事ができる。入力電流は、トランスとして構成されたPFCインダクタLpfc1の補助巻線の電圧を積分回路INT1で積分して計測する。エネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensを計測するためには、エネルギー蓄積コンデンサCens1各端子の電圧を抵抗R5、R6、抵抗R7、R8で分圧して第4の比較器AMP4に入力する。一例として抵抗R5、R6、及び抵抗R7、R8でエネルギー蓄積コンデンサCens1各端子の電圧を1/100に分圧すると、第4の比較器AMP4の入力端子間にはエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensの1/100の電圧が現れ、それを第4の比較器AMP4で一定の倍率で増幅してエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensに比例する電圧を第4の比較器AMP4から出力する。第4の比較器AMP4の出力を第3の比較器AMP3で第2の基準電圧Vref2と比較して第2の誤差信号を生成する。第2の誤差信号は抵抗R1、R2、もしくは抵抗R3、R4の分圧電圧から得られた交流入力電圧Vinに比例する電圧と、乗算器M1で乗算され、交流入力電圧Vinに応じた信号が生成される。積分回路INT1から出力した交流入力電流Vinに応じた信号と、乗算器M1から出力された交流入力電圧Vinに応じた信号と、を第1の比較器AMP1で比較し、第1の比較器AMP1から第2の誤差信号を出力してデューティ比計算器Dcnt1に入力する。デューティ比計算器Dcnt1には抵抗R1、R2、もしくは抵抗R3、R4の分圧電圧から得られた交流入力電圧Vinに比例する電圧と、第4の比較器AMP4からエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensに比例する電圧とが入力されており、
【0040】
【数3】
に従って概略デューティ比Drが計算される。概略デューティ比Drをフィードフォワード信号と成し、前記第2の誤差信号をフィードバック信号として前記フィードフォワード信号に負帰還となる極性で加算して、それに応じた直流電圧をデューティ比計算器Dcnt1からコンパレータCOMP1に出力する。コンパレータCOMP1の他方の入力には鋸歯状波発生器STG1から出力される鋸歯状波が入力され、コンパレータCOMP1から第1のデューティ比Dが調整された方形波信号が1次側制御回路CNTP1に出力される。
【0041】
一方で、鋸歯状波発生器STG1から出力される鋸歯状波の周波数は出力からのフィードバックによって変調される。スイッチング電源装置の2次側回路において、出力電圧Voutを抵抗R9、R10で分圧して検出し、第2の比較器AMP2で第1の基準電圧Vref1と比較してフィードバック信号を形成する。フィードバック信号は周波数制御器Fcnt1に入力されて鋸歯状波の周波数を変調する。その結果、絶縁型DC−DCコンバータ部の入出力変換比がスイッチング周波数の変調によって制御される。
【0042】
1次側制御回路CNTP1は、入力された方形波信号と、モード判別信号とに応じて、第1、第2、第3、第4のスイッチ素子Q1、Q2、Q3、Q4、及び第1、第2の同期整流素子SR1、SR2の駆動タイミング信号を生成し、それぞれ、第1、第2の絶縁信号伝送素子ISO1、ISO2に出力する。第1、第2の絶縁信号伝送素子ISO1、ISO2は1次側制御回路のグランドを基準とする駆動タイミング信号を、各スイッチ素子のソース電位を基準とする駆動信号に変換して各スイッチ素子を駆動する。短絡電流の発生を防止するために、第1のスイッチ素子Q1のオン期間と第2のスイッチ素子Q2のオン期間の間に、双方がオフ状態になるデッドタイムを設けるように駆動信号を形成する。
【0043】
また、第1、第2の同期整流素子SR1、SR2の駆動に関しては、第1の同期整流素子SR1のオン期間は第2のスイッチ素子Q2のオン期間内、第2の同期整流素子SR2のオン期間は第1のスイッチ素子Q1のオン期間内に設定する必要があるが、
【0044】
【数6】
で計算した電流共振期間Trhを最大オン期間として設定するか、第1、第2の同期整流素子SR1、SR2を流れる電流を直接的、もしくは間接的に検出して一定値以上の順方向電流(ソース→ドレイン方向の電流)が流れる場合のみに第1、第2の同期整流素子SR1、SR2をターンオンさせる事で、第1、第2の同期整流素子SR1、SR2に逆流電流が流れる現象を防止する事ができる。
【0045】
次に、
図5から
図9の等価回路に従って各動作モードの回路動作を説明する。
図5に示すCモードは交流入力電圧Vinの絶対値が小さく、力率にはほとんど影響しない期間である。第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4は、駆動損失を節約するためにオフ状態に保持されており、等価回路上には表記していない。交流電源Acinから正極性の電圧が出力される場合は、第1のスイッチ素子Q1を主スイッチ、第2のスイッチ素子Q2を同期整流素子、その逆に交流電源Acinから負極性の電圧が出力される場合は、第2のスイッチ素子Q2を主スイッチ、第1のスイッチ素子Q1を同期整流素子とする電流不連続モードのブーストコンバータに相似した電流が、交流電源Acinから流入するが、電流量は小さい。それ以外はエネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源とする電流共振コンバータの動作と全く同じである。
【0046】
図5(a)においては、第2のスイッチ素子Q2と第1の同期整流素子SR1がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1と第2の同期整流素子SR2がオフ状態であり、矢印で示した経路には共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の電流共振による正弦波状の電流が流れる。電流共振の半周期が終了すると、第1の同期整流素子SR1がターンオフして
図5(b)の動作に移行する。
【0047】
図5(b)においては、第2のスイッチ素子Q2がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態であり、矢印で示した経路に共振インダクタLr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振コンデンサCr1の共振電流が流れる。第2のスイッチ素子Q2がターンオフすると、
図5(b)の動作から
図5(c)の動作に移行する。
【0048】
図5(c)においては、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2が全てオフ状態であり、矢印で示した経路で電流が流れて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが充電される。寄生容量Cdisが充電されて第1のスイッチ素子Q1の両端電圧が0Vになった状態で第1のスイッチ素子Q1をターンオンすれば、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)が達成され、
図5(d)の動作に移行する。
【0049】
図5(d)においては、第1のスイッチ素子Q1と第2の同期整流素子SR2がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2と第1の同期整流素子SR1がオフ状態であり、矢印で示した経路には共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の電流共振による正弦波状の電流が流れる。電流共振の半周期が終了すると、第2の同期整流素子SR2がターンオフして
図5(e)の動作に移行する。
【0050】
図5(e)においては、第1のスイッチ素子Q1がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態であり、矢印で示した共振インダクタLr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振コンデンサCr1の経路に共振電流が流れる。第1のスイッチ素子Q1がターンオフすると、
図5(e)の動作から
図5(f)の動作に移行する。
【0051】
図5(f)においては、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2が全てオフ状態であり、矢印で示した経路で電流が流れて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが放電される。寄生容量Cdisが放電されて第2のスイッチ素子Q2の両端電圧が0Vになった状態で第2のスイッチ素子Q2をターンオンすれば、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)が達成され、再び、
図5(a)の動作に移行する。前述の動作に従って、スイッチング動作が繰り返される。
【0052】
交流入力電圧Vinの正の半周期において、第1のスイッチ素子Q1がオンしている期間の1周期に対する比率、および交流入力電圧Vinの負の半周期において、第2のスイッチ素子Q2がオンしている期間の1周期に対する比率を第2のデューティ比D´と定義した場合、
図5(g)に示す様に第2のデューティ比D´は0.5に保持され、周波数制御は、
図5(b)と
図5(e)に相当する期間の長さによって絶縁型DC−DCコンバータ部の入出力変換比を調整する。
【0053】
図6に示すA1モードは交流入力電圧Vinの正の半周期で、交流入力電圧Vinの絶対値がCモードの基準値より大きく、かつエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensの1/2以下の場合に相当する。A1モードの期間においては、PFC動作を行うために、第1のデューティ比D(整流/PFC回路部のデューティ比)は0.5以上の範囲でPWM制御されるが、第2のデューティ比D´は0.5に保持される。なお、A1モードにおいては、第4のスイッチ素子Q4は整流素子としてのみ作用するので、等価回路図にはダイオードとして表記している。
【0054】
図6(a)においては、第1のスイッチ素子Q1、第3のスイッチ素子Q3、第2の同期整流素子SR2がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2と第1の同期整流素子SR1がオフ状態である。A1モードにおける整流/PFC回路部は、第3のスイッチ素子Q3が主スイッチ、第2のスイッチ素子Q2が同期整流素子を成すブーストコンバータとして機能し、
図6(a)では第3のスイッチ素子Q3がオン状態なので入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源として矢印で示した共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。電流共振の半周期が終了すると、第2の同期整流素子SR2がターンオフして
図6(b)の動作に移行する。
【0055】
図6(b)においては、第1のスイッチ素子Q1と第3のスイッチ素子Q3がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。整流/PFC回路部では第3のスイッチ素子Q3がオン状態なので引き続き入力電流が漸増する。第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4の直列回路と並列に、第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1の直列回路が接続されているので、PFCインダクタLpfc1を流れる電流の一部は第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1の直列回路に分流し、導通損失が軽減される。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源として矢印で示した共振インダクタLr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振コンデンサCr1の経路に共振電流が流れる。第1のスイッチ素子Q1がターンオフすると、
図6(b)の動作から
図6(c)の動作に移行する。
【0056】
図6(c)においては、第3のスイッチ素子Q3がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。整流/PFC回路部では第3のスイッチ素子Q3がオン状態なので引き続き入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した経路で電流が流れて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが放電される。寄生容量Cdisが放電されて第2のスイッチ素子Q2の両端電圧が0Vになった状態で第2のスイッチ素子Q2をターンオンすれば、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)が達成され、
図6(d)の動作に移行する。
【0057】
図6(d)においては、第2のスイッチ素子Q2、第3のスイッチ素子Q3、第1の同期整流素子SR1がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1と第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。整流/PFC回路部では第3のスイッチ素子Q3がオン状態なので引き続き入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。
図6(d)の期間において、第3のスイッチ素子Q3がターンオフすると整流/PFC回路部のブーストコンバータがオン状態からオフ状態に切り換わり、
図6(e)の動作に移行する。
【0058】
図6(e)においては、PFCインダクタLpfc1の電流は第1の整流素子D1、第2のスイッチ素子Q2を経由して、エネルギー蓄積コンデンサCens1を充電しながら漸減する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、引き続き、矢印で示した共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。
図6(e)の期間において、第2のスイッチ素子Q2は、整流/PFC回路部の同期整流素子としてソースからドレイン方向の電流が流れ込む一方で、絶縁型DC−DCコンバータ部の1次側ローサイドスイッチ素子としてドレインからソース方向の電流が流れ込む。互いに逆方向の電流が打ち消しあうため、第2のスイッチ素子Q2を流れる電流量が減少し、導通損失が減少する。電流共振の半周期が終了すると、第1の同期整流素子SR1がターンオフして
図6(f)の動作に移行する。
【0059】
図6(f)においては、第2のスイッチ素子Q2がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1、第3のスイッチ素子Q3、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。PFCインダクタLpfc1の電流は、引き続き、第1の整流素子D1、第2のスイッチ素子Q2を経由して、エネルギー蓄積コンデンサCens1を充電しながら漸減する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した、共振コンデンサCr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振インダクタLr1、第2のスイッチ素子Q2の経路に共振電流が流れる。
図6(f)の期間においても、第2のスイッチ素子Q2は、整流/PFC回路部の同期整流素子としてソースからドレイン方向の電流が流れ込む一方で、絶縁型DC−DCコンバータ部の1次側ローサイドスイッチ素子としてドレインからソース方向の電流が流れ込む。互いに逆方向の電流が打ち消しあうため、第2のスイッチ素子Q2を流れる電流量が減少し、導通損失が減少する。
図6(f)の期間において、第2のスイッチ素子Q2をターンオフすると同時に、第3のスイッチ素子Q3をターンオンすると
図6(g)の動作に移行する。
【0060】
図6(g)においては、整流/PFC回路部のブーストコンバータはオフ状態からオン状態に切り換わり、入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2が全てオフ状態であり、矢印で示した経路で電流が流れて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが充電される。寄生容量Cdisが充電されて第1のスイッチ素子Q1の両端電圧が0Vになった状態で第1のスイッチ素子Q1をターンオンすれば、ZVSが達成される。第1のスイッチ素子Q1をターンオンするより前のタイミングで第3のスイッチ素子Q3をターンオンする事によって、寄生容量Cdisの充電を妨げる方向の電流が流れなくなるので、ZVSが達成しやすくなる。第1のスイッチ素子Q1がターンオンすると、再び、
図6(a)の動作に移行する。前述の動作に従って、スイッチング動作が繰り返される。
【0061】
図6(h)に示す様に第2のデューティ比D´は0.5に保持され、第1のデューティ比D(整流/PFC回路部のデューティ比)は、PFC動作を行うために0.5以上の範囲でPWM制御される。周波数制御においては、
図6(b)と
図6(f)に相当する期間の長さによって絶縁型DC−DCコンバータ部の入出力変換比を調整する。
【0062】
なお、
図6(h)では、第4のスイッチ素子Q4のG−S間電圧はローレベル(オフ状態)に維持されているが、寄生ダイオードのみを利用しているのでG−S間電圧はハイレベル(オン状態)であっても良い。
【0063】
図7に示すA2モードは交流入力電圧Vinの正の半周期で、交流入力電圧Vinの絶対値がエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensの1/2より大きい場合に相当する。A2モードは全ての交流入力電圧範囲で発生するわけではなく、例えばエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensを400Vに設定すると、交流電圧の実効値が140V以下だとA2モードは発生しない。A2モードの期間においては、PFC動作を行うために、第1のデューティ比D(整流/PFC回路部のデューティ比)は0.5より小さい範囲でPWM制御され、それに応じて第2のデューティ比D´も第1のデューティ比Dと実質的に等しい値となり、PWM制御される。なお、A2モードにおいても、第4のスイッチ素子Q4は整流素子としてのみ作用するので、等価回路図にはダイオードとして表記している。
【0064】
図7(a)においては、第1のスイッチ素子Q1、第3のスイッチ素子Q3、第2の同期整流素子SR2がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2と第1の同期整流素子SR1がオフ状態である。A2モードにおける整流/PFC回路部は、第1のスイッチ素子Q1と第3のスイッチ素子Q3とが主スイッチ、第2のスイッチ素子Q2が同期整流素子を成すブーストコンバータとして機能し、
図7(a)では第1のスイッチ素子Q1と第3のスイッチ素子Q3がオン状態なので入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源として矢印で示した共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。電流共振の半周期が終了すると、第2の同期整流素子SR2がターンオフして
図7(b)の動作に移行する。
【0065】
図7(b)においては、第1のスイッチ素子Q1と第3のスイッチ素子Q3がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。整流/PFC回路部では第1のスイッチ素子Q1と第3のスイッチ素子Q3がオン状態なので引き続き入力電流が漸増する。
図7(b)においては、絶縁型DC−DCコンバータ部から第1のスイッチ素子Q1に流れ込む電流による電圧降下が比較的小さいので、PFCインダクタLpfc1を流れる電流の一部は第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1の直列回路に分流し、導通損失が軽減される。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源として矢印で示した共振インダクタLr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振コンデンサCr1の経路に共振電流が流れる。第1のスイッチ素子Q1と第3のスイッチ素子Q3を同時にターンオフすると、
図7(b)の動作から
図7(c)の動作に移行する。
【0066】
図7(c)においては、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第3のスイッチ素子Q3、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2が全てオフ状態である。整流/PFC回路部のブーストコンバータがオン状態からオフ状態に切り換わる。PFCインダクタLpfc1の電流と絶縁型DC−DCコンバータ部の矢印で示した経路の電流によって、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが放電される。寄生容量Cdisが放電されて第2のスイッチ素子Q2の両端電圧が0Vになった状態で第2のスイッチ素子Q2をターンオンすれば、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)が達成され、
図7(d)の動作に移行する。
【0067】
図7(d)においては、第2のスイッチ素子Q2と第1の同期整流素子SR1がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1、第3のスイッチ素子Q3、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。PFCインダクタLpfc1の電流は第1の整流素子D1、第2のスイッチ素子Q2を経由して、エネルギー蓄積コンデンサCens1を充電しながら漸減する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。
図7(d)の期間において、第2のスイッチ素子Q2は、整流/PFC回路部の同期整流素子としてソースからドレイン方向の電流が流れ込む一方で、絶縁型DC−DCコンバータ部の1次側ローサイドスイッチ素子としてドレインからソース方向の電流が流れ込む。互いに逆方向の電流が打ち消しあうため、第2のスイッチ素子Q2を流れる電流量が減少し、導通損失が減少する。電流共振の半周期が終了すると、第1の同期整流素子SR1がターンオフして
図7(e)の動作に移行する。
【0068】
図7(e)においては、第2のスイッチ素子Q2がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1、第3のスイッチ素子Q3、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。PFCインダクタLpfc1の電流は、引き続き、第1の整流素子D1、第2のスイッチ素子Q2を経由して、エネルギー蓄積コンデンサCens1を充電しながら漸減する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した、共振コンデンサCr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振インダクタLr1、第2のスイッチ素子Q2の経路に共振電流が流れる。
図7(e)の期間においても、第2のスイッチ素子Q2は、整流/PFC回路部の同期整流素子としてソースからドレイン方向の電流が流れ込む一方で、絶縁型DC−DCコンバータ部の1次側ローサイドスイッチ素子としてドレインからソース方向の電流が流れ込む。互いに逆方向の電流が打ち消しあうため、第2のスイッチ素子Q2を流れる電流量が減少し、導通損失が減少する。
図7(e)の期間において、第2のスイッチ素子Q2をターンオフすると同時に、第3のスイッチ素子Q3をターンオンすると
図7(f)の動作に移行する。
【0069】
図7(f)においては、第3のスイッチ素子Q3がオン状態であり、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2はオフ状態である。整流/PFC回路部のブーストコンバータがオフ状態からオン状態に切り換わるので、入力電流は漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した経路で電流が流れて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが充電される。寄生容量Cdisが充電されて第1のスイッチ素子Q1の両端電圧が0Vになった状態で第1のスイッチ素子Q1をターンオンすれば、ZVSが達成される。第1のスイッチ素子Q1をターンオンするより前のタイミングで第3のスイッチ素子Q3をターンオンする事によって、寄生容量Cdisの充電を妨げる方向の電流が流れなくなるので、ZVSが達成しやすくなる。第1のスイッチ素子Q1がターンオンすると、再び、
図7(a)の動作に移行する。前述の動作に従って、スイッチング動作が繰り返される。
【0070】
図7(g)に示す様に第1のデューティ比D(整流/PFC回路部のデューティ比)と第2のデューティ比D´は実質的に同じ値となり、PFC動作を行うために第1のデューティ比Dを0.5より小さい範囲でPWM制御すると、それに伴って第2のデューティ比D´もPWM制御される。周波数制御においては、
図7(b)と
図7(e)に相当する期間の長さによって絶縁型DC−DCコンバータ部の入出力変換比を調整する。
【0071】
なお、
図7(g)では、第4のスイッチ素子Q4のG−S間電圧はローレベル(オフ状態)に維持されているが、寄生ダイオードのみを利用しているのでG−S間電圧はハイレベル(オン状態)であっても良い。
【0072】
図8に示すB1モードは交流入力電圧Vinの負の半周期で、交流入力電圧Vinの絶対値がCモードの基準値より大きく、かつエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensの1/2以下の場合に相当する。B1モードでは、A1モードと相似した回路動作になるが、第1の整流素子D1と第2の整流素子D2、第1のスイッチ素子Q1と第2のスイッチ素子Q2、第3のスイッチ素子Q3と第4のスイッチ素子Q4、第1の同期整流素子SR1と第2の同期整流素子SR2、とは互いの役割が入れかわる。B1モードの期間においては、PFC動作を行うために、第1のデューティ比D(整流/PFC回路部のデューティ比)は0.5以上の範囲でPWM制御されるが、第2のデューティ比D´は0.5に保持される。なお、B1モードにおいては、第3のスイッチ素子Q3は整流素子としてのみ作用するので、等価回路図にはダイオードとして表記している。
【0073】
図8(a)においては、第2のスイッチ素子Q2、第4のスイッチ素子Q4、第1の同期整流素子SR1がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1と第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。B1モードにおける整流/PFC回路部は、第4のスイッチ素子Q4が主スイッチ、第1のスイッチ素子Q1が同期整流素子を成すブーストコンバータとして機能し、
図8(a)では第4のスイッチ素子Q4がオン状態なので入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した共振コンデンサCr1、共振インダクタLr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。電流共振の半周期が終了すると、第1の同期整流素子SR1がターンオフして
図8(b)の動作に移行する。
【0074】
図8(b)においては、第2のスイッチ素子Q2と第4のスイッチ素子Q4がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。整流/PFC回路部では第4のスイッチ素子Q4がオン状態なので引き続き入力電流が漸増する。第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4の直列回路と並列に、第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2の直列回路が接続されているので、PFCインダクタLpfc1を流れる電流の一部は第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2の直列回路に分流し、導通損失が軽減される。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した共振コンデンサCr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振インダクタLr1、第2のスイッチ素子Q2の経路に共振電流が流れる。第2のスイッチ素子Q2がターンオフすると、
図8(b)の動作から
図8(c)の動作に移行する。
【0075】
図8(c)においては、第4のスイッチ素子Q4がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。整流/PFC回路部では第4のスイッチ素子Q4がオン状態なので引き続き入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した経路で電流が流れて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが充電される。寄生容量Cdisが充電されて第1のスイッチ素子Q1の両端電圧が0Vになった状態で第1のスイッチ素子Q1をターンオンすれば、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)が達成され、
図8(d)の動作に移行する。
【0076】
図8(d)においては、第1のスイッチ素子Q1、第4のスイッチ素子Q4、第2の同期整流素子SR2がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2と第1の同期整流素子SR1がオフ状態である。整流/PFC回路部では第4のスイッチ素子Q4がオン状態なので引き続き入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源として矢印で示した共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。
図8(d)の期間において、第4のスイッチ素子Q4がターンオフすると整流/PFC回路部のブーストコンバータがオン状態からオフ状態に切り換わり、
図8(e)の動作に移行する。
【0077】
図8(e)においては、PFCインダクタLpfc1の電流は第2の整流素子D2、第1のスイッチ素子Q1を経由して、エネルギー蓄積コンデンサCens1を充電しながら漸減する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、引き続き、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源として矢印で示した共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。
図8(e)の期間において、第1のスイッチ素子Q1は、整流/PFC回路部の同期整流素子としてソースからドレイン方向の電流が流れ込む一方で、絶縁型DC−DCコンバータ部の1次側ハイサイドスイッチ素子としてドレインからソース方向の電流が流れ込む。互いに逆方向の電流が打ち消しあうため、第1のスイッチ素子Q1を流れる電流量が減少し、導通損失が減少する。電流共振の半周期が終了すると、第2の同期整流素子SR2がターンオフして
図8(f)の動作に移行する。
【0078】
図8(f)においては、第1のスイッチ素子Q1がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2、第4のスイッチ素子Q4、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。PFCインダクタLpfc1の電流は、引き続き、第2の整流素子D2、第1のスイッチ素子Q1を経由して、エネルギー蓄積コンデンサCens1を充電しながら漸減する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源として矢印で示した第1のスイッチ素子Q1、共振インダクタLr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振コンデンサCr1の経路に共振電流が流れる。
図8(f)の期間においても、第1のスイッチ素子Q1は、整流/PFC回路部の同期整流素子としてソースからドレイン方向の電流が流れ込む一方で、絶縁型DC−DCコンバータ部の1次側ハイサイドスイッチ素子としてドレインからソース方向の電流が流れ込む。互いに逆方向の電流が打ち消しあうため、第1のスイッチ素子Q1を流れる電流量が減少し、導通損失が減少する。
図8(f)の期間において、第1のスイッチ素子Q1をターンオフすると同時に、第4のスイッチ素子Q4をターンオンすると
図8(g)の動作に移行する。
【0079】
図8(g)においては、整流/PFC回路部のブーストコンバータはオフ状態からオン状態に切り換わり、入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2が全てオフ状態であり、矢印で示した経路で電流が流れて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが放電される。寄生容量Cdisが放電されて第2のスイッチ素子Q2の両端電圧が0Vになった状態で第2のスイッチ素子Q2をターンオンすれば、ZVSが達成される。第2のスイッチ素子Q2をターンオンするより前のタイミングで第4のスイッチ素子Q4をターンオンする事によって、寄生容量Cdisの放電を妨げる方向の電流が流れなくなるので、ZVSが達成しやすくなる。第2のスイッチ素子Q2がターンオンすると、再び、
図8(a)の動作に移行する。前述の動作に従って、スイッチング動作が繰り返される。
【0080】
図8(h)に示す様に第2のデューティ比D´は0.5に保持され、第1のデューティ比D(整流/PFC回路部のデューティ比)は、PFC動作を行うために0.5以上の範囲でPWM制御される。周波数制御においては、
図8(b)と
図8(f)に相当する期間の長さによって絶縁型DC−DCコンバータ部の入出力変換比を調整する。
【0081】
なお、
図8(h)では、第3のスイッチ素子Q3のG−S間電圧はローレベル(オフ状態)に維持されているが、寄生ダイオードのみを利用しているのでG−S間電圧はハイレベル(オン状態)であっても良い。
【0082】
図9に示すB2モードは交流入力電圧Vinの負の半周期で、交流入力電圧Vinの絶対値がエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensの1/2より大きい場合に相当する。B2モードの期間においては、PFC動作を行うために、第1のデューティ比D(整流/PFC回路部のデューティ比)は0.5より小さい範囲でPWM制御され、それに応じて第2のデューティ比D´も第1のデューティ比Dと実質的に等しい値となり、PWM制御される。B2モードでは、A2モードと相似した回路動作になるが、第1の整流素子D1と第2の整流素子D2、第1のスイッチ素子Q1と第2のスイッチ素子Q2、第3のスイッチ素子Q3と第4のスイッチ素子Q4、第1の同期整流素子SR1と第2の同期整流素子SR2、とは互いの役割が入れかわる。B2モードにおいては、第3のスイッチ素子Q3は整流素子としてのみ作用するので、等価回路図にはダイオードとして表記している。なお、B2モードは全ての交流入力電圧範囲で発生するわけではなく、例えばエネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensを400Vに設定すると、交流電圧の実効値が140V以下だとB2モードは発生しない。
【0083】
図9(a)においては、第2のスイッチ素子Q2、第4のスイッチ素子Q4、第1の同期整流素子SR1がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1と第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。B2モードにおける整流/PFC回路部は、第2のスイッチ素子Q2と第4のスイッチ素子Q4とが主スイッチ、第1のスイッチ素子Q1が同期整流素子を成すブーストコンバータとして機能し、
図9(a)では第2のスイッチ素子Q2と第4のスイッチ素子Q4がオン状態なので入力電流が漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。電流共振の半周期が終了すると、第1の同期整流素子SR1がターンオフして
図9(b)の動作に移行する。
【0084】
図9(b)においては、第2のスイッチ素子Q2と第4のスイッチ素子Q4がオン状態で、第1のスイッチ素子Q1、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。整流/PFC回路部では第2のスイッチ素子Q2と第4のスイッチ素子Q4がオン状態なので引き続き入力電流が漸増する。
図9(b)においては、絶縁型DC−DCコンバータ部から第2のスイッチ素子Q2に流れ込む電流による電圧降下が比較的小さいので、PFCインダクタLpfc1を流れる電流の一部は第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2の直列回路に分流し、導通損失が軽減される。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した共振コンデンサCr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振インダクタLr1の経路に共振電流が流れる。第2のスイッチ素子Q2と第4のスイッチ素子Q4を同時にターンオフすると、
図9(b)の動作から
図9(c)の動作に移行する。
【0085】
図9(c)においては、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第4のスイッチ素子Q4、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2が全てオフ状態である。整流/PFC回路部のブーストコンバータがオン状態からオフ状態に切り換わる。PFCインダクタLpfc1の電流と絶縁型DC−DCコンバータ部の矢印で示した経路の電流によって、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが充電される。寄生容量Cdisが充電されて第1のスイッチ素子Q1の両端電圧が0Vになった状態で第1のスイッチ素子Q1をターンオンすれば、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)が達成され、
図9(d)の動作に移行する。
【0086】
図9(d)においては、第1のスイッチ素子Q1と第2の同期整流素子SR2がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2、第4のスイッチ素子Q4、第1の同期整流素子SR1がオフ状態である。PFCインダクタLpfc1の電流は第2の整流素子D2、第1のスイッチ素子Q1を経由して、エネルギー蓄積コンデンサCens1を充電しながら漸減する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源として矢印で示した共振インダクタLr1、共振コンデンサCr1の経路に電流共振による正弦波状の電流が流れる。
図9(d)の期間において、第1のスイッチ素子Q1は、整流/PFC回路部の同期整流素子としてソースからドレイン方向の電流が流れ込む一方で、絶縁型DC−DCコンバータ部の1次側ハイサイドスイッチ素子としてドレインからソース方向の電流が流れ込む。互いに逆方向の電流が打ち消しあうため、第1のスイッチ素子Q1を流れる電流量が減少し、導通損失が減少する。電流共振の半周期が終了すると、第2の同期整流素子SR2がターンオフして
図9(e)の動作に移行する。
【0087】
図9(e)においては、第1のスイッチ素子Q1がオン状態で、第2のスイッチ素子Q2、第4のスイッチ素子Q4、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2がオフ状態である。PFCインダクタLpfc1の電流は、引き続き、第2の整流素子D2、第1のスイッチ素子Q1を経由して、エネルギー蓄積コンデンサCens1を充電しながら漸減する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、エネルギー蓄積コンデンサCens1を入力源として矢印で示した、第1のスイッチ素子Q1、共振インダクタLr1、トランスT1の励磁インダクタンスLm、共振コンデンサCr1の経路に共振電流が流れる。
図9(e)の期間においても、第1のスイッチ素子Q1は、整流/PFC回路部の同期整流素子としてソースからドレイン方向の電流が流れ込む一方で、絶縁型DC−DCコンバータ部の1次側ハイサイドスイッチ素子としてドレインからソース方向の電流が流れ込む。互いに逆方向の電流が打ち消しあうため、第1のスイッチ素子Q1を流れる電流量が減少し、導通損失が減少する。
図9(e)の期間において、第1のスイッチ素子Q1をターンオフすると同時に、第4のスイッチ素子Q4をターンオンすると
図9(f)の動作に移行する。
【0088】
図9(f)においては、第4のスイッチ素子Q4がオン状態であり、第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2、第1の同期整流素子SR1、第2の同期整流素子SR2はオフ状態である。整流/PFC回路部のブーストコンバータがオフ状態からオン状態に切り換わるので、入力電流は漸増する。絶縁型DC−DCコンバータ部においては、矢印で示した経路で電流が流れて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と並列に存在する寄生容量Cdisが放電される。寄生容量Cdisが放電されて第2のスイッチ素子Q2の両端電圧が0Vになった状態で第2のスイッチ素子Q2をターンオンすれば、ZVSが達成される。第2のスイッチ素子Q2をターンオンするより前のタイミングで第4のスイッチ素子Q4をターンオンする事によって、寄生容量Cdisの放電を妨げる方向の電流が流れなくなるので、ZVSが達成しやすくなる。第2のスイッチ素子Q2がターンオンすると、再び、
図9(a)の動作に移行する。前述の動作に従って、スイッチング動作が繰り返される。
【0089】
図9(g)に示す様に第1のデューティ比D(整流/PFC回路部のデューティ比)と第2のデューティ比D´は実質的に同じ値となり、PFC動作を行うために第1のデューティ比Dを0.5より小さい範囲でPWM制御すると、それに伴って第2のデューティ比D´もPWM制御される。周波数制御においては、
図9(b)と
図9(e)に相当する期間の長さによって絶縁型DC−DCコンバータ部の入出力変換比を調整する。
【0090】
なお、
図9(g)では、第3のスイッチ素子Q3のG−S間電圧はローレベル(オフ状態)に維持されているが、寄生ダイオードのみを利用しているのでG−S間電圧はハイレベル(オン状態)であっても良い。
【0091】
図10は、第1実施例のスイッチング電源装置の軽負荷領域における間欠動作の波形を示している。
図10(a)に示すように、重負荷領域においては第1のスイッチ素子Q1と第2のスイッチ素子Q2は、双方がオフ状態になるデッドタイムを挟んで相補的なタイミングで連続的に駆動され、双方向スイッチ素子Qbd(第3のスイッチ素子Q3と第4のスイッチ素子Q4を逆方向に接続した直列回路によって構成)もCモードを除く領域では連続的にスイッチングされる。その結果、PFCインダクタLpfc1を流れる電流は連続モードになり、簡易な入力フィルタを設けるだけで、点線で示すように実質的に正弦波の入力電流波形を得る事ができる。一方で、軽負荷領域では
図10(b)に示す間欠動作に移行する。第1のスイッチ素子Q1、第2のスイッチ素子Q2の内、整流/PFC回路部の同期整流素子として機能するスイッチ素子がターンオフした後、全てのスイッチ素子(Q1、Q2、Qbd、SR1、SR2)がオフ状態となる休止期間を設け、負荷電流が少なくなるに従って休止期間を延長する間欠動作を行う事により、軽負荷領域におけるスイッチング損失、スイッチ素子の駆動損失、PFCインダクタLpfc1、共振インダクタLr1、トランスT1のコア損失を軽減する事で、軽負荷領域においても高効率な電力変換を行う事ができる。間欠動作時においては、PFCインダクタLpfc1を流れる電流は
図10(b)に示す様に不連続モードになる。
【0092】
第1実施例のスイッチング電源装置はブーストコンバータの主スイッチに相当するスイッチ素子のデューティ比を低減するか、スイッチング周波数を高周波化すれば出力電圧Voutを目標値よりも低減できるので、それらを利用してソフトスタート動作や過電流に対する出力電圧の垂下動作に対応できる。また、動作中に、スイッチング動作を停止してもスイッチ素子、及び整流素子の両端にサージ電圧は発生しないので、問題なく停止する事ができる。
【0093】
第1従来例のAC−DC電力変換システムではダイオードを5個、スイッチ素子を3個、同期整流素子を2個必要とし、第2従来例のブリッジレスPFCコンバータの後段に電流共振コンバータを接続すると、ダイオードを2個、スイッチ素子を4個、同期整流素子を2個必要とするのに対して、第1実施例ではダイオードを2個、スイッチ素子を4個、同期整流素子を2個で必要とし、電力半導体部品の数はほぼ同等である。回路の構成に当たって特別な部品は必要とせず、第1従来例のAC−DC電力変換システム、及び第2従来例のブリッジレスPFCコンバータと同じ部品を流用できる。一方で、第1実施例ではやや複雑な制御を必要とするが、近年発展が目覚ましいスイッチング電源のデジタル制御技術を適用すれば容易に実現可能であるため、問題にはならない。
【0094】
第1実施例のスイッチング電源装置は、前述した以外にも高効率な電力変換に適した以下のような特徴を備えている。
【0095】
絶縁型DC−DCコンバータ部を構成する電流共振コンバータは、デューティ比が0.5の場合に最も高効率な電力変換が可能であるが、AC−DC電力変換システムを1ステージに複合化したにも関わらず、絶縁型DC−DCコンバータ部のデューティ比を0.5に保持できる期間の割合が大きい。一例として、エネルギー蓄積コンデンサの両端電圧Vensを400Vに設定すると、交流電圧の実効値が240Vの場合は全期間の40%、交流電圧の実効値が140V以下なら全期間にわたってデューティ比を0.5に保持できる。AC−DC電力変換システムにおいては、交流電圧の実効値が低いと効率が低くなる傾向があるが、第1実施例のスイッチング電源装置は、デューティ比を全期間にわたって0.5に保持できる低電圧入力で特に効率を改善する効果が大きく、電力変換部品の放熱が容易になる。
【0096】
第1、第2のスイッチ素子に有用なMOSFETの寄生ダイオードは、一般的に、市販の高速ダイオードよりも逆回復特性が劣る傾向にあるが、第1実施例のスイッチング電源装置においては、以下の理由により問題にならない。
【0097】
第1のスイッチ素子Q1、もしくは第2のスイッチ素子Q2が整流/PFC回部の同期整流をしている期間には、絶縁型DC−DCコンバータ部から逆方向の電流が流れ込む事によって寄生ダイオードを導通する電流量が減少する。
【0098】
第1のスイッチ素子Q1、もしくは第2のスイッチ素子Q2が整流/PFC回部の同期整流をしている期間には、第1のスイッチ素子Q1、もしくは第2のスイッチ素子Q2はゲート信号が加えられてオンしている状態なので、寄生ダイオード部分を導通する電流量は少ない。
【0099】
直列に接続された第1の整流素子D1、及び第2の整流素子D2に逆回復特性に優れた高速ダイオードを用いれば逆回復電流を阻止できる。
【0100】
第1実施例によれば次のような効果を奏する。
【0101】
出力電圧を0V近辺まで低下させる事が可能なので、過電流に対する出力電圧の垂下動作やソフトスタート動作が可能である。
【0102】
交流入力電圧Vinが加わった状態でスイッチング動作を停止しても、スイッチ素子、及び整流素子の両端にサージ電圧は発生しない。
【0103】
出力リップルが小さく、過渡急変に対する高速応答や、瞬時停電に対する出力電圧の保持が可能である。
【0104】
大半の領域で入力電流が電流連続モードになるので入力フィルタが簡易化できる。
【0105】
本発明は第1従来例において3ステージ、第2従来例において2ステージで構成される交流入力/直流出力の電力変換システムを、第3従来例と同様に1ステージだけで構成できるので、電力部品の数が少なく回路構成が簡易なので、小型化、低コスト化に有利である。
【0106】
入力電流が通過する整流素子の数が、第1従来例より1個少ないので導通損失が少ない。
【0107】
整流/PFC回路部の同期整流素子が、絶縁型DC−DCコンバータ部の1次側スイッチ素子としても機能し、互いに逆方向の電流が打ち消って減少するので、導通損失が少ない。
【0108】
整流/PFC回路部でブーストコンバータの主スイッチとして機能する双方向スイッチ素子Qbdと並列に、第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1の直列回路、もしくは第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2の直列回路が接続されており、双方向スイッチ素子Qbdの電流が大きく、並列回路の電流が小さい動作状態において、双方向スイッチ素子Qbdの電流が並列回路に分流する事で電圧降下を軽減できる。
【0109】
双方向スイッチ素子Qbdを、並列接続された第1のスイッチ素子Q1、もしくは第2のスイッチ素子Q2より先にターンオンする事によって、寄生容量Cdisの充電を妨げる方向の電流が流れなくなるので、ZVSが達成しやすくなる。
【0110】
絶縁型DC−DCコンバータ部のデューティ比を最も効率が良い0.5に保持できる期間の割合が大きい。
【0111】
第1、第2のスイッチ素子を構成するMOSFETの寄生ダイオードの低速な逆回復特性が問題にならない。
【0112】
軽負荷領域においても間欠動作を行う事で、高効率な電力変換が実現できる。
【0113】
《第2実施例》
図11は本発明の第2実施例におけるAC−DC電力変換システム102の回路図であり、本発明を3相交流に適用した例であり、3相交流電源ACin3PからΔ結線で供給される3相交流に対して第1実施例で既に示した本発明のスイッチング電源装置を各相間に合計で3台接続している。3相交流であっても、第1実施例で示した回路構成が使用可能であり、各相間に合計3台のスイッチング電源装置を接続すれば、第1実施例と同様に高効率で、出力リップルが小さく、かつ、高速応答や入力瞬時停電に対する保持時間の確保も実現可能である。唯一異なるのは、3相交流では各相の電流をバランスさせる必要があるため、各相の電流バランス機能を備える事が望ましい点である。各スイッチング電源装置の1次側制御回路CNTP1、CNTP2、CNTP3における制御、及びスイッチング動作は第1実施例とほぼ同じである。各スイッチング電源装置の2次側制御回路CNTS1、CNTS2、CNTS3は、トランスT1、T2、T3の2次コイル両端電圧を計測して積分する事で2次コイル電圧降下の平均値を求めている。2次コイル電圧降下の平均値は出力電流にほぼ比例するので、各スイッチング電源装置の出力電流と相関する出力電流信号が得られる。各スイッチング電源装置は、電流バランス回路Cshareにおいて出力電流信号を交換し、出力電流分担の少ないスイッチング電源装置は出力電圧を微増するように自動調整する事で出力電流をバランスさせる事ができる。各スイッチング電源装置の出力電流をバランスさせる事で、結果的に3相交流の入力電流をバランスさせる事ができる。
【0114】
第2実施例では、第1実施例の効果に加え、以下のような効果を奏する。
【0115】
電流バランス機能を有するスイッチング電源装置を構成すれば、単相交流用のスイッチング電源装置をそのまま流用して3相交流用のAC−DC電力変換システムを構築する事ができる。
【0116】
なお、本発明は前述した以外にも多くの応用例に展開可能である。第1、第2実施例では、PFCインダクタは各スイッチング電源装置に1個ずつ接続しているが、2個に分割して交流入力ラインの双方に挿入しても良い。第1、第2の整流素子を同期整流素子で構成すれば双方向の電力伝送も可能である。また、特開2000−260639号公報に開示されているような技術を用いてPFCインダクタLpfc1とトランスT1とを複合化して1つの磁性部品にする事も可能である。制御の方法も第1、第2実施例の方法に限定されない。入力電流の検出には電流検出抵抗やカレントトランスを用いても良い。各スイッチ素子のデューティ比の決定にフィードフォワード制御を用いずにフィードバック制御のみを用いても良い。また、瞬時停電による交流入力遮断時において、デューティ比を0.5以外の値、例えば0.2や0.8に固定した周波数制御で出力電圧を安定化しても良い。