特許第5790890号(P5790890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790890
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】組電池用スタッカー及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20150917BHJP
   H01M 10/613 20140101ALN20150917BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALN20150917BHJP
   H01M 10/647 20140101ALN20150917BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALN20150917BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALN20150917BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   !H01M10/613
   !H01M10/6551
   !H01M10/647
   !H01M10/6563
   !H01M10/6554
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-560179(P2014-560179)
(86)(22)【出願日】2014年7月23日
(86)【国際出願番号】JP2014069393
(87)【国際公開番号】WO2015012292
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-155097(P2013-155097)
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 幸一
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−122819(JP,A)
【文献】 特開平09−120808(JP,A)
【文献】 特開2010−092610(JP,A)
【文献】 特開2013−145686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/6551
H01M 10/6554
H01M 10/6563
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平板状の電池を厚さ方向に積層した電池ブロックを収容する組電池用スタッカーであって、
第1の鋼板から形成されるとともに、前記電池ブロックの前記厚さ方向の両端部に配置される一対のエンドプレートと;
第2の鋼板から形成されるとともに、前記一対のエンドプレートを相互に連結する連結部材と;
を備え、
前記エンドプレートは、
前記電池ブロックの前記厚さ方向の端面に対向する底壁部と;
前記底壁部の両側から前記電池ブロックの厚さ方向に延出し、前記電池ブロックの側面の一部を覆う側壁部と;
を備え、
前記連結部材は、前記側壁部の少なくとも一部と重なるように配置され
前記連結部材が、前記エンドプレートの外表面上において、前記側壁部上を通り、前記底壁部上に回り込んで前記底壁部に固定されている
ことを特徴とする組電池用スタッカー。
【請求項2】
前記エンドプレートの前記底壁部が、前記電池ブロックの前記厚さ方向から見て矩形の形状を有しており、
前記側壁部が、前記底壁部の一対の対辺に沿って形成されており、
前記エンドプレートにおいて、前記底壁部の角部近傍に、前記連結部が固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の組電池用スタッカー。
【請求項3】
前記側壁部の、前記電池ブロックの前記厚さ方向の幅W(mm)と、前記底壁部の面積S(mm)とが、下記式(1)を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の組電池用スタッカー。
0.1×S1/2≦W≦0.4×S1/2 式(1)
【請求項4】
前記底壁部に開口部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の組電池用スタッカー。
【請求項5】
前記エンドプレートに、前記底壁部および前記側壁部にわたり、外側に膨らんだ第1の線状凸部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の組電池用スタッカー。
【請求項6】
前記第1の線状凸部に通気孔が形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の組電池用スタッカー。
【請求項7】
前記エンドプレートに、前記底壁部および前記側壁部にわたり、内側に膨らんだ第2の線状凸部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の組電池用スタッカー。
【請求項8】
前記第1の鋼板及び前記第2の鋼板の引張強さが590MPa以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の組電池用スタッカー。
【請求項9】
複数の平板状の電池を厚さ方向に積層した電池ブロックと、
前記電池ブロックを収容する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組電池用スタッカーと、
を備えることを特徴とする組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は組電池用スタッカー及び組電池に関する。
本願は、2013年7月26日に、日本に出願された特願2013−155097号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
この明細書において、「電池ブロック」とは、「厚さ方向に積層された複数の平板状の電池」を意味する。「電池ブロックの厚さ方向」とは、「複数の平板状の電池の積層方向」と同じ方向を意味する。「組電池」とは、「電池ブロックを組電池用スタッカーにより固定した部品」を意味する。
【0003】
一般的に、組電池用スタッカーは、たとえば、電池ブロックの厚さ方向両端部に配置された一対のエンドプレートと、電池ブロックの厚さ方向に延びるとともに一対のエンドプレート間を連結する連結部材とを備えている。
組電池用スタッカーには、電池ブロックを安定して保持するための構造、および強度が求められる。電池ブロックは充電及び放電を繰り返すと劣化して膨張する。従って、組電池用スタッカーは、電池ブロックが膨張したときに生じる応力にも耐える必要がある。
【0004】
特許文献1には、アルミニウム、アルミニウム合金、または硬質プラスティックを素材とする一対のエンドプレート間を、金属バンド(連結部材)で連結した組電池が開示されている。このエンドプレートには、エンドプレートの曲げ強度を高くするために、平板状の補強リブが、エンドプレートと一体に設けられている。エンドプレートの素材としてアルミニウム、またはアルミニウム合金を用いる場合は、ダイキャスト法により、エンドプレートと補強リブとは一体成型される。
【0005】
特許文献2には、エンドプレート、およびホルダ部材(連結部材)が、合成樹脂を射出成形することにより形成された組電池が開示されている。
【0006】
特許文献3には、エンドプレートの代わりに、複数の電池の各々の側面に連結部材を設けて、この連結部材を介して、複数の電池に連結ロッドが取り付けられた組電池が開示されている。各連結部材には、貫通孔が形成されており、連結ロッドは、この貫通孔に挿通されている。
【0007】
特許文献4には、一対のバッテリーモジュールを直列に配置して一体化したバッテリーモジュールユニットが開示されている。このバッテリーモジュールユニットにおいては、一対のバッテッリーモジュール間に配置された第1エンドプレートと、一対のバッテリーモジュールの両端部に配置された二枚の第2エンドプレートとにより一対のバッテリーモジュールを挟み込んでいる。第2エンドプレートには連結部が一体形成され、この連結部の先端が第1エンドプレートの側面に固定されている。
【0008】
特許文献5には、一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートの側面同士を連結する結束バンドとにより電池ブロックを固定した蓄電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本国特開2008−282582号公報
【特許文献2】日本国特開2012−59581号公報
【特許文献3】日本国特開2013−8479号公報
【特許文献4】日本国特開2013−122820号公報
【特許文献5】日本国特開平9−120808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1の組電池では、エンドプレートの素材としてアルミニウム又はアルミニウム合金を用いる場合は、エンドプレートは、ダイキャスト法により製造される。従って、エンドプレートの加工コストが高いとともに、薄くすることができないため、重量が大きくなる。また、エンドプレートの素材として硬質プラスティックを用いる場合でも、補強リブを形成するために、加工コストが高くなる。また、必要な強度を確保するためには、硬質プラスティックの使用量を多くしなければならないので、材料コストが高くなる。さらに、エンドプレートにプラスティックを使うと、組電池の放熱性が悪くなる。
【0011】
特許文献2の組電池でも、エンドプレートは合成樹脂から形成されるので、同様に、必要な強度を確保するために材料コストが高くなるとともに、組電池の放熱性が悪くなる。
【0012】
特許文献3の組電池においては、すべての電池に連結部材を設ける必要があるため、製造コストが高くなる。
【0013】
特許文献4のバッテリーモジュールユニットにおいては、第1のエンドプレートはアルミニウム製引き抜き材で構成されている。従って、第1のエンドプレートの加工コストが高いとともに、薄くすることができないため、重量が大きくなる。尚、特許文献4のバッテリーモジュールユニットにおいては、バッテリーモジュールの膨張を、エンドプレートとは別個の、支持部材の上面に固定されたブロック状の固定部材により抑制する構成を採用している。すなわち、特許文献4のエンドプレートだけではバッテリーモジュールの膨張を抑制するには不十分である。
【0014】
特許文献5の蓄電池においては、一対のエンドプレートの側面に結束バンドを固定する構造であるため、電池が膨張した際の応力が固定部付近に集中してしまう。従って、必要強度を確保するためにはエンドプレートの厚さ及び重量を大きくする必要がある。
【0015】
そこで、この発明の目的は、従来の組電池用スタッカーを用いた場合に比して、必要強度を確保しつつ軽量化、および省スペース化を図ることができ、製造コストを低減可能であり、優れた放熱性を有する、組電池用スタッカー及び組電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の概要は下記の通りである。
(1)本発明の第一の態様は、複数の平板状の電池を厚さ方向に積層した電池ブロックを収容する組電池用スタッカーである。この組電池用スタッカーは、第1の鋼板から形成されるとともに、前記電池ブロックの前記厚さ方向の両端部に配置される一対のエンドプレートと;第2の鋼板から形成されるとともに、前記一対のエンドプレートを相互に連結する連結部材と;を備える。前記エンドプレートは、前記電池ブロックの前記厚さ方向の端面に対向する底壁部と;前記底壁部の両側から前記電池ブロックの厚さ方向に延出し、前記電池ブロックの側面の一部を覆う側壁部と;を備え、前記連結部材は、前記側壁部の少なくとも一部と重なるように配置され、前記連結部材が、前記エンドプレートの外表面上において、前記側壁部上を通り、前記底壁部上に回り込んで前記底壁部に固定される
)上記(1)に記載の組電池用スタッカーでは、前記エンドプレートの前記底壁部が、前記電池ブロックの前記厚さ方向から見て矩形の形状を有しており、前記側壁部が、前記底壁部の一対の対辺に沿って形成されており、前記エンドプレートにおいて、前記底壁部の角部近傍に、前記連結部が固定されていてもよい。
)上記(1)又は(2)に記載の組電池用スタッカーでは、前記側壁部の、前記電池ブロックの前記厚さ方向の幅W(mm)と、前記底壁部の面積S(mm)とが、下記式(A)を満してもよい。
0.1×S1/2≦W≦0.4×S1/2 式(A)
)上記(1)〜()のいずれか一項に記載の組電池用スタッカーでは、前記底壁部に開口部が形成されていてもよい。
)上記(1)〜()のいずれか一項に記載の組電池用スタッカーでは、前記エンドプレートに、前記底壁部および前記側壁部にわたり、外側に膨らんだ第1の線状凸部が形成されていてもよい。
)上記()に記載の組電池用スタッカーでは、前記第1の線状凸部に通気孔が形成されていてもよい。
)上記(1)〜()のいずれか一項に記載の組電池用スタッカーでは、前記エンドプレートに、前記底壁部および前記側壁部にわたり、内側に膨らんだ第2の線状凸部が形成されていてもよい。
)上記(1)〜()のいずれか一項に記載の組電池用スタッカーでは、前記第1の鋼板及び前記第2の鋼板の引張強さが590MPa以上であってもよい。
)本発明の第二の態様は、複数の平板状の電池を厚さ方向に積層した電池ブロックと、前記電池ブロックを収容する、上記(1)〜()のいずれか一項に記載の組電池用スタッカーと、を備える組電池である。
【発明の効果】
【0017】
上記構成によれば、エンドプレート、および連結部材は、それぞれ鋼板から形成されるので、アルミニウム、またはアルミニウム合金等の金属材料をダイキャスト成型する場合に比して、薄く形成することができる。また、連結部材を樹脂から形成する場合に比して、必要な強度を得るための厚さを、極めて薄くすることができる。したがって、本発明によれば、組電池用スタッカーの軽量化を図ることができ、材料コストを低減でき、組電池の小型化(省スペース化)を図ることができる。また、鋼板は、樹脂に比して熱伝導性が高いので、放熱性を高くすることができる。
【0018】
さらに、鋼板から形成されるエンドプレート、および連結部材は、プレス加工により、生産性を高くして製造できる。所定の形状の平板状の鋼板を曲げ加工することにより、底壁部と、側壁部とを備えたエンドプレートを製造することができる。したがって、加工コストを低くすることができる。
【0019】
エンドプレートにおいて、特に底壁部と側壁部との間の移行部近傍には、電池が劣化により膨張した場合には、他の部分に比して大きな応力がかかる。本発明によれば、当該移行部近傍では、エンドプレート(少なくとも側壁部の一部)と、連結部材とによる二重構造が形成されている。これにより、当該移行部近傍に生じる応力の集中を緩和することができる。従って、エンドプレート、および連結部材に、耐力が低いおよび/または板厚の小さい鋼板を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る組電池用スタッカー10を含む組電池1の分解斜視図である。
図2】本発明の変形例としてエンドプレート13と電池ブロック20との間にスペーサ50を配設する場合の概略部分平面図である。
図3】鋼板100をプレス加工してエンドプレート13を形成する方法を説明するための概略斜視図である。
図4】本発明の変形例として、連結部材14aを用いる場合の概略斜視図である。
図5】エンドプレート13、および連結部材14に生じる応力の分布を示す概略図である。
図6図1に示す構成の組電池1において、エンドプレート13の厚さ、および側壁部13Bの幅Wと、エンドプレート13に生じる最大応力との関係を示す図である。
図7】底壁部13Aに開口部13Dが形成される場合の概略斜視図である。
図8】線状凸部13Cに通気孔13Eが形成される場合の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、この発明の一実施形態に係る組電池用スタッカー10を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る組電池用スタッカー10を含む、組電池1の分解斜視図である。
【0022】
本実施形態に係る組電池用スタッカー10は、電池ブロック20を収容して固定することにより組電池1を構成する部材である。電池ブロック20は平板状電池20aをその厚さ方向(積層方向)に積層して構成される部材である。平板状電池20aは、いわゆる角型電池であり、平面視において、すなわち、電池ブロック20の厚さ方向から見て、矩形形状を有する。
【0023】
本実施形態に係る組電池用スタッカー10は、電池ブロック20の厚さ方向の両端部に配置される一対のエンドプレート13と、一対のエンドプレート13を相互に連結する連結部材14とを含む。エンドプレート13、および連結部材14は、それぞれ、鋼板(第1の鋼板、第2の鋼板)から形成される。鋼板としては、たとえば、590MPa以上の引張強さを有する高張力鋼板を用いることができる。
【0024】
エンドプレート13は、電池ブロック20の厚さ方向の端面に対向する底壁部13Aと、底壁部13Aの両側から電池ブロック20の厚さ方向に延出し、電池ブロック20の端部近傍、すなわち、電池ブロック20の側面の一部を覆う側壁部13Bとを含む。
底壁部13Aは、電池ブロック20の厚さ方向から見て矩形(略矩形を含む)の形状を有しており、側壁部13Bは、底壁部13Aの一対の対辺に沿って形成されている。側壁部13Bは、底壁部13Aの他の対の対辺に沿っては、形成されていない。すなわち、1つのエンドプレート13は、2つの側壁部13Bを有する。
【0025】
側壁部13Bの面方向は、底壁部13Aの面方向に対して、ほぼ垂直である。このため、底壁部13A、および側壁部13Bに平行な方向に見ると、エンドプレート13は、U字(コの字)形の形状を有する。側壁部13Bは、いずれも、ほぼ同じ幅(底壁部13Aからの延出長さ)を有する。
【0026】
側壁部13Bと底壁部13Aとの移行部(屈曲部)は、曲率半径Rを3.0mm〜10mmとしてもよい。曲率半径を3.0mm以上とする場合、電池ブロック20と底壁部13Aとの間、及び/又は、電池ブロック20と側壁部13Bとの間に隙間が十分形成されるため、トンネル効果を発揮することになり、この隙間における空気の流動性を高めることで放熱性を高めることが可能となる。一方、曲率半径Rが10mmを超える場合には、放熱性を高める効果が飽和すると共に組電池1が大型化するため好ましくない。
【0027】
エンドプレート13には、図1に示すように、底壁部13Aおよび側壁部13Bにわたり、表面側(組電池1の外側)に膨らんだ線状凸部13C(第1の線状凸部)が形成されている。この場合、エンドプレート13において、表面には線状凸部13Cが形成され、裏面には線状凸部13Cに対応する溝が形成される。線状凸部13Cは、底壁部13Aにおいて、側壁部13Bが設けられた一対の対辺にわたって、他の対の対辺に平行に延びており、さらに、側壁部13Bの端部まで延びている。この実施形態では、1つのエンドプレート13に、2本の線状凸部13Cが形成されている。
【0028】
連結部材14は、帯状であり、エンドプレート13の外表面(電池ブロック20と反対側の面)上において、側壁部13B上を通り、底壁部13A上に回り込んで底壁部13Aに固定されている。連結部材14は、エンドプレート13において、底壁部13Aの4つの角部近傍に、それぞれ、固定されている。すなわち、本実施形態に係る組電池用スタッカーは、4本の連結部材14を備えている。4本の連結部材14は、互いにほぼ平行に、かつ、電池ブロック20の厚さ方向に延びている。連結部材14は、底壁部13Aに対して、たとえば、ビス15及びナット15aにより固定されている。ビス15及びナット15aの代わりにリベットを用いてもよい。
【0029】
エンドプレート13と、連結部材14とにより、略直方体の枠が形成されており、これにより、複数の平板状電池20aを、空隙を少なくして収容することができる。電池ブロック20は、一対の底壁部13Aに抑えられて保持されるので、平板状電池20aのそれぞれに連結部材等を取り付ける必要はなく、既存の電池を加工せずに用いることができる。
【0030】
エンドプレート13、および連結部材14は、それぞれ鋼板から形成されるので、アルミニウム、またはアルミニウム合金等の金属材料をダイキャスト成型する場合に比して、薄く形成することができる。更に、樹脂から形成する場合に比して、必要な強度を得るための厚さを、極めて薄くすることができる。
【0031】
たとえば、エンドプレート13に8000Nの力が加わる場合、エンドプレート13の厚さを、たとえば、2.3mmとし、連結部材14の厚さを、たとえば、1.8mmとすることができる。エンドプレートを、アルミニウム、またはアルミニウム合金のダイキャスト成型により形成する場合は、そのエンドプレートの厚さは、たとえば、15mm程度となる。エンドプレートを、樹脂で形成する場合は、さらに厚くしなければ、必要な強度が得られない。
【0032】
したがって、本実施形態に係る組電池用スタッカー10を用いた組電池1によれば、従来の組電池に比して、エンドプレート13、および連結部材14に関して、軽量化を図り、材料コストを低減し、組電池1の小型化(省スペース化)を図ることができる。たとえば、アルミニウムをダイキャスト成型して得たエンドプレートを用いた場合、組電池全体の重量が、たとえば、1800gであるとすると、このエンドプレートを、図1に関して説明したエンドプレート13に置き換えると、組電池1の重量は、1000gとなる。すなわち、この場合、本発明により、組電池1に関し、40%以上の軽量化を図ることができる。
【0033】
エンドプレート13に線状凸部13Cが形成されていることにより、エンドプレート13が薄い鋼板から形成される場合であっても、エンドプレート13の剛性を高くすることができる。より詳しくは、エンドプレート13に線状凸部13Cを形成することにより、線状凸部13Cの延在方向に直交する方向にエンドプレート13を曲げようとする力に対して、高い剛性を得ることができる。
更には、線状凸部13Cによりエンドプレート13の表面積を大きくすることが出来るため、放熱性を向上させることもできる。
【0034】
組電池1では、電池ブロック20が劣化により膨張する際に、エンドプレート13の底壁部13Aには、連結部材14の張力による力が加わる。この力は、線状凸部13Cの延在方向に直交する方向に、エンドプレート13に加わる。したがって、線状凸部13Cにより、連結部材14の張力によりエンドプレート13に加えられる力に、効果的に抗することができる。すなわち、底壁部13Aは、連結部材14の張力によっては変形し難い。
【0035】
また、鋼板は、樹脂に比して熱伝導性が高い。エンドプレート13、および連結部材14がそれぞれ鋼板から形成されることにより、組電池1の放熱性を高めることが出来る。また、組電池1の放熱性は、連結部材14の幅を狭くすることにより、高くすることができる。
エンドプレート13と電池ブロック20との間には、図2の概略部分平面図に示す変形例のように、面積率で5%以上20%以下のスペーサ部分を除いて、電池ブロック20の厚さ方向に1mm以上10mm以下の距離の隙間Gが形成されることが放熱性改善の観点から好ましい。尚、鋼板は強度が高いのでスペーサ50を介して十分に電池ブロック20を保持することが出来る。
【0036】
エンドプレート13は、以下のようにして製造することができる。
まず、エンドプレート13に対応する平面形状を有する平板状の鋼板100を用意する。この鋼板100に対して、プレス加工することにより、線状凸部13Cを形成するとともに、曲げ加工をして、底壁部13Aと、側壁部13Bとを形成する。
【0037】
図3は、プレス加工によりエンドプレート13を形成する方法を説明するための斜視図である。
【0038】
この方法では、下型8、および上型9を含む金型を用いる。図3では、下型8、および上型9については、加工面近傍の形状のみを示している。下型8には、凹部が形成されている。凹部の内面は、大略的に平坦な底面8Aと、大略的に平坦な側面8Bとを含む。側面8Bは、底面8Aに対してほぼ垂直になっている。下型8において、凹部の一方側から、凹部内、および凹部の他方側にわたって、2本の溝8Cが形成されている。
【0039】
上型9は、下型8の凹部と相補形状の凸部を有する。凸部の表面は、大略的に平坦で下型8の底面8Aに対応する頂面9Aと、大略的に平坦で下型8の側面8Bに対応する側面9Bとを含む。側面9Bは、頂面9Aに対してほぼ垂直になっている。頂面9Aに対して一方側の側面9B、頂面9A、および頂面9Aに対して他方側の側面9Bにわたって、下型8の溝8Cに対応する2本の突起9Cが形成されている。
【0040】
下型8、および上型9を用いてエンドプレート13を形成するときは、まず、下型8において、凹部の一方側と他方側とにまたがるように、平板状の鋼板100を置く。すなわち、この鋼板100の長さは、凹部の幅より大きい。ただし、鋼板100において、下型8の凹部外の部分の上に載る部分の長さは、下型8の凹部の深さより短い。平板状の鋼板100は、たとえば、より大きな鋼板を打ち抜き加工して得ることができる。
【0041】
次に、上型9の凸部を、下型8の凹部に挿入して、下型8と上型9とにより、鋼板100をプレスする。鋼板100において、底面8Aと頂面9Aとに挟まれた部分は、底壁部13Aとなり、側面8Bと側面9Bとに挟まれた部分は、側壁部13Bとなる。側面8B、および側面9Bが、それぞれ、底面8A、および頂面9Aに対してほぼ垂直になっていることにより、側壁部13Bの面方向が底壁部13Aの面方向に対してほぼ垂直になるように鋼板100が折り曲げられる。また、鋼板100において、溝8Cと突起9Cとに挟まれた部分は、線状凸部13Cとなる。
【0042】
このように、プレス加工により、1枚の鋼板から、極めて簡単にエンドプレート13を形成することができる。このようなプレス加工では、金属材料をダイキャスト成型する場合や、樹脂材料を射出成形する場合に比して、エンドプレートを短時間で製造することができる。連結部材14も、同様に、平板状の鋼板をプレス加工することにより、屈曲部(側壁部13Bと底壁部13Aとの移行部に対応する部分)を有するように形成することができるので、短時間で製造することができる。したがって、エンドプレート13、および連結部材14は、生産性を高くして製造できるので、加工コストを低減することができる。
【0043】
図4は、上記の連結部材14に替えて連結部材14aを用いる変形例を示す斜視図である。
【0044】
この図4に示す変形例では、連結部材14aは、底壁部13A上には回り込ませず、側壁部13Bに固定させている。図4に、固定部を、「×」印で示す。側壁部13Bの端部と連結部材14aの端部とは、重なり合って二重構造を形成している。これにより、二重構造を有しない場合に比して、エンドプレート13において、底壁部13Aと側壁部13Bとの移行部近傍における、電池ブロック20の劣化による膨張に起因する応力の集中を緩和して最大応力を小さくすることができる。
【0045】
これに対して、図1に示す実施形態の組電池用スタッカー10では、側壁部13Bと連結部材14とによる二重構造に加えて、底壁部13Aと連結部材14とによる二重構造も形成されている。これにより、底壁部13Aと側壁部13Bとの移行部近傍における、電池ブロック20の劣化による膨張に起因する応力の集中を、さらに緩和することができ、移行部近傍が破損しないようにすることができる。
【0046】
側壁部13Bの幅W(底壁部13Aからの突出長さ)により、エンドプレート13、および連結部材14(特に、底壁部13Aと側壁部13Bとの移行部、および連結部材14の対応する部分)の各部に生じる応力の大きさは変化する。
【0047】
図5に、エンドプレート13、および連結部材14に生じる応力分布を示す。この応力分布を得るために採用したシミュレーション条件は下記の通りである。
(A)エンドプレート13の側壁部13Bの幅W:20mm
(B)エンドプレート13の厚さ:2.3mm
(C)エンドプレート13の材質:引張強さが590MPa級の高張力鋼板
(D)連結部材14の材質:引張強さが590MPa級の高張力鋼板
(E)連結部材14の厚さ:1.8mm
(F)連結部材14の幅:15mm
(G)底壁部13Aと側壁部13Bとの間の移行部の曲率半径:5mm
(H)線状凸部13Cの幅:10mm
(I)線状凸部13Cによる突起の高さ:3mm
(J)エンドプレート13に加える力:底壁部13Aにおいて組電池1内方側の面に垂直に7500N
尚、側壁部13Bの幅Wは、側壁部13Bの平坦部分の長さであり、底壁部13Aと側壁部13Bとの移行部で屈曲している部分の長さは含まない。
【0048】
上記の条件のうち、「(A)側壁部13Bの幅W」を5mm〜40mmの範囲で変更して応力分布を評価した結果、エンドプレート13に関しては、側壁部13Bの幅Wが5mm〜20mmの範囲では、側壁部13Bの幅Wが長くなるほど、応力の集中は緩和され、エンドプレート13の各部に生じる応力のうち最大応力は、大幅に低下することを突き止めた。一方、側壁部13Bの幅Wを20mmより長くしても、応力の分布に大きな差異はなかった。連結部材14に関しては、側壁部13Bの幅Wが5mm〜30mmの範囲では、側壁部13Bの幅Wが長くなるほど、応力の集中は緩和され、連結部材14の各部に生じる応力のうち最大応力は、大幅に低下する。一方、側壁部13Bの幅Wを30mmより大きくしても、応力の分布に大きな差異はない。
【0049】
したがって、エンドプレート13、および連結部材14の双方について、各部に生じる応力のうち最大応力を小さくするためには、側壁部13Bの幅Wを30mm以上にすることが好ましい。一方、組電池用スタッカー10の軽量化のためには、側壁部13Bの幅Wは短い方がよい。したがって、この場合、側壁部13Bの幅Wは、30mmにするのがよい。
【0050】
以上の結果から、側壁部13Bの幅Wを長くすることにより、エンドプレート13、および連結部材14を構成する材料として、耐力が低いものを使用可能であることがわかる。必要となる耐力は、エンドプレート13、および連結部材14の厚さによっても異なる。
【0051】
尚、側壁部13Bの幅Wは、底壁部13Aの表面積Sに基づき所定範囲に設定してもよい。この場合、側壁部13Bの幅W(mm)と、底壁部13Aの表面積S(mm)とが、下記式(1)を満たすことが望ましい。
0.1×S1/2≦W≦0.4×S1/2 式(1)
【0052】
側壁部13Bの幅Wを0.1×S1/2以上とする場合、電池ブロック20の劣化による膨張に起因する応力を緩和することが出来るため好ましい。
一方、Wが0.4×S1/2超である場合、電池ブロック20の劣化による膨張に起因する応力を緩和する効果が飽和する。従って、軽量化、放熱性向上の観点から、Wを0.4×S1/2以下とすることが好ましい。
尚、底壁部13Aの表面積Sは、底壁部13Aの外側の面の平坦部分の表面積であり、底壁部13Aと側壁部13Bとの移行部で屈曲している部分の面積は含まない。
【0053】
図6は、図1に示す構成の組電池1において、エンドプレート13の厚さ、および側壁部13Bの幅Wと、エンドプレート13に生じる最大応力(シミュレーションにより求めたもの)との関係を示す図である。厚さは、1.6mm、2.0mm、および2.3mmとした(図6に、それぞれ、「1.6t」、「2.0t」、および「2.3t」と示す)。
【0054】
最大応力は、側壁部13Bの幅Wが長くなるほど、また、側壁部13Bの厚さが厚くなるほど小さくなる。最大応力をSMAX(MPa)、側壁部の幅をW(mm)、厚さをt(mm)とすると、図6の結果から、SMAXは、下記式(2)で近似することができる。
MAX=A×W 式(2)
ここで、A=b×t+c、a=−0.33、b=−1550、c=4500である。
【0055】
組電池の構成の違いにより、上記式(2)の係数として、下記式(3)、式(4)、式(5)の範囲内の適当な値を採用することができる。
−0.35≦a≦−0.30 式(3)
−1600≦b≦−1500 式(4)
4400≦c≦4600 式(5)
【0056】
図1に示す実施形態の組電池1を製造する際、ビス15及びナット15aによる固定に先立って、連結部材14においてエンドプレート13に重なる部分の形状を、エンドプレート13の対応する表面の形状と相補的になるようにしておけば、ビス15及びナット15aを固定する際のエンドプレート13と連結部材14との位置合わせが容易になる。このような効果は、変形例に係る連結部材14aが側壁部13Bに固定されている場合(図4参照)には得られない。
【0057】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、例えば下記のように種々の変更をすることが可能である。
(1)上記の実施形態では、底壁部13Aの一辺に沿って、2本の連結部材14が設けられているが、3本以上の連結部材14を設けてもよい。
(2)上記の実施形態では、エンドプレート13には、2本の線状凸部13Cが形成されているが、線状凸部13Cは形成されていなくてもよく、1本の線状凸部13Cが形成されていてもよく、また、3本以上の線状凸部13Cが形成されていてもよい。薄いエンドプレート13を用いる場合や、エンドプレート13にかかる応力が大きい場合は、線状凸部13Cの数を多くすることが好ましい。
(3)図7に示すように、エンドプレート13において、大きな応力がかからない部分には、開口部13Dを形成してもよい。この場合、組電池1の放熱性を高くすることができるとともに、材料の低減による軽量化を図ることができる。
(4)図8に示すように、エンドプレート13の線状凸部13Cに通気孔13Eを形成してもよい。この場合、空気の逃げ道を確保でき、また、凸部形状により表面積が増えるためフィン効果により、更に放熱性を高くすることもできる。
(5)本実施形態においては線状凸部13Cが外側に膨出する構成としているが、反対側、すなわち、内側に膨出する線状凸部(第2の線状凸部)を形成してもよい。この構成とする場合、第2の線状凸部が電池ブロック20に当接することによりエンドプレート13と電池ブロック20との間に隙間が形成される。従って、この隙間における空気の流動性を高めて放熱性を高めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、従来の組電池用スタッカーを用いた場合に比して、必要強度を確保しながらの軽量化、および省スペース化を図ることができ、製造コストを低減可能であり、優れた放熱性を有する、組電池用スタッカー及び組電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 組電池
10 組電池用スタッカー
13 エンドプレート
13A 底壁部
13B 側壁部
13C 線状凸部
13D 開口部
13E 通気孔
14 連結部材
15 ビス
15a ナット
20 電池ブロック
20a 平板状電池
50 スペーサ
G 隙間
100 鋼板
図2
図6
図1
図3
図4
図5
図7
図8