特許第5790897号(P5790897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000008
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000009
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000010
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000011
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000012
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000013
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000014
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000015
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000016
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000017
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000018
  • 特許5790897-ワイヤレス電力伝送システム 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790897
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 17/00 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   H02J17/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-506737(P2015-506737)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2014056837
(87)【国際公開番号】WO2014148369
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-56855(P2013-56855)
(32)【優先日】2013年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-31873(P2014-31873)
(32)【優先日】2014年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 敬一
(72)【発明者】
【氏名】末定 剛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博紀
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/073508(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/001569(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/157011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 17/00
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と第2の電極との間に交流電圧を給電回路から給電する送電装置と、
前記第1の電極に対向する第3の電極と、前記第2の電極に対向する第4の電極との間に生じる交流電圧を負荷回路へ供給する受電装置と、
を備えた電力伝送システムにおいて、
前記送電装置は、
第1端が前記第1の電極に接続され、第2端が前記送電装置の基準電位に接続された第1リアクタンス素子と、
第1端が前記第2の電極に接続され、第2端が前記送電装置の基準電位に接続された第2リアクタンス素子と、
を有し、
前記受電装置は、
第1端が前記第3の電極に接続され、第2端が前記受電装置の基準電位に接続された第3リアクタンス素子と、
第1端が前記第4の電極に接続され、第2端が前記受電装置の基準電位に接続された第4リアクタンス素子と、
を有し、
前記第1の電極及び前記第3の電極の間に生じる容量Caa、前記第2の電極及び前記第4の電極の間に生じる容量Cpp、前記第1リアクタンス素子のリアクタンスをX1、前記第2リアクタンス素子のリアクタンスをX2、前記第3リアクタンス素子のリアクタンスをX3、前記第4リアクタンス素子のリアクタンスをX4で表したとき、
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極及び前記第4の電極、ならびに、前記第1リアクタンス素子、前記第2リアクタンス素子、前記第3リアクタンス素子及び前記第4リアクタンス素子は、
前記交流電圧の基本周波数で、Cpp/Caa=X1/X2=X3/X4、かつ、Cpp≧Caa、を満足するよう設定されている、
ワイヤレス電力伝送システム。
【請求項2】
前記送電装置は、前記第1の電極及び前記第2の電極との間に前記給電回路が配置されるよう設けられ、基準電位に接続されたシールド電極を有し、
前記第1リアクタンス素子の第2端、及び前記第2リアクタンス素子の第2端は、前記シールド電極に接続されている、
請求項1に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項3】
前記受電装置は、前記第3の電極及び前記第4の電極との間に前記負荷回路が配置されるよう設けられ、基準電位に接続されたシールド電極を有し、
前記第3リアクタンス素子の第2端、及び前記第4リアクタンス素子の第2端は、前記シールド電極に接続されている、
請求項1に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項4】
前記第1リアクタンス素子、前記第2リアクタンス素子、前記第3リアクタンス素子及び前記第4リアクタンス素子の少なくとも一つは、可変リアクタンス素子を含む、請求項1から3の何れかに記載のワイヤレス電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量結合(電界結合)により電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス電力伝送システムとして、特許文献1には、容量結合により電力を伝送するシステムが開示されている。特許文献1に記載のワイヤレス電力伝送システムは、高周波高電圧発生器、パッシブ電極及びアクティブ電極を備えた送電装置と、高周波高電圧負荷、パッシブ電極及びアクティブ電極を備えた受電装置とで構成されている。そして、送電装置のアクティブ電極と受電装置のアクティブ電極とが間隙を介して近接することにより、二つの電極同士が容量結合し、送電装置から受電装置へ電力が伝送される。この容量結合方式のワイヤレス電力伝送システムでは、面積当たりの伝送電力を大きくできること、及び、搭載面内の位置自由度が高くできること、といった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−531009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のワイヤレス電力伝送システムでは、受電装置の基準電位が大地電位に対して変動すると、例えばタッチパネルのように人が触れるデバイスなどで、電力伝送中に受電装置の負荷回路の誤動作が生じるといった問題がある。また、送電装置の基準電位が大地電位に対して変動すると、電源ラインへの不要伝導ノイズが発生するという問題がある。このため、容量結合方式のワイヤレス電力伝送システムでは、電力伝送中における基準電位変動の抑制が重要となる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、受電装置側の負荷回路の動作を安定化させることができるワイヤレス電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の電極と第2の電極との間に交流電圧を給電回路から給電する送電装置と、前記第1の電極に対向する第3の電極と、前記第2の電極に対向する第4の電極との間に生じる交流電圧を負荷回路へ供給する受電装置と、を備えた電力伝送システムにおいて、前記送電装置は、第1端が前記第1の電極に接続され、第2端が前記送電装置の基準電位に接続された第1リアクタンス素子と、第1端が前記第2の電極に接続され、第2端が前記送電装置の基準電位に接続された第2リアクタンス素子と、を有し、前記受電装置は、第1端が前記第3の電極に接続され、第2端が前記受電装置の基準電位に接続された第3リアクタンス素子と、第1端が前記第4の電極に接続され、第2端が前記受電装置の基準電位に接続された第4リアクタンス素子と、を有し、前記第1の電極及び前記第3の電極の間に生じる容量Caa、前記第2の電極及び前記第4の電極の間に生じる容量Cpp、前記第1リアクタンス素子のリアクタンスをX1、前記第2リアクタンス素子のリアクタンスをX2、前記第3リアクタンス素子のリアクタンスをX3、前記第4リアクタンス素子のリアクタンスをX4で表したとき、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極及び前記第4の電極、ならびに、前記第1リアクタンス素子、前記第2リアクタンス素子、前記第3リアクタンス素子及び前記第4リアクタンス素子は、前記交流電圧の基本周波数で、Cpp/Caa=X1/X2=X3/X4、かつ、Cpp≧Caa、を満足するよう設定されていることを特徴とする。
【0007】
この構成では、第1の電極及び第3の電極の間に生じる容量Caaと、第2の電極及び第4の電極の間に生じる容量Cppとの比に一致するよう、四つのリアクタンス素子を用いることで、送電装置側基準電位点と受電装置側基準電位点との電位差を0とすることができる。これにより、受電装置側基準電位の電位変動を低減して、受電装置側の負荷回路の動作を安定化させることができる。
【0008】
また、第3リアクタンス素子X3及び第4リアクタンス素子X4は抵抗成分を含まないので、受電側基準電位の電位変動を広い周波数帯域にわたり低減できる。リアクタンス素子(抵抗成分がゼロ)としているが、実際の素子には抵抗成分が含まれる。ここでは、抵抗成分はリアクタンス成分に対して十分小さくする。
【0009】
前記送電装置は、前記第1の電極及び前記第2の電極との間に前記給電回路が配置されるよう設けられ、基準電位に接続されたシールド電極を有し、前記第1リアクタンス素子の第2端、及び前記第2リアクタンス素子の第2端は、前記シールド電極に接続されている、構成でもよい。
【0010】
ここで、シールド電極は、送電装置内の給電回路から生じたノイズの輻射を抑制するために設けられたものである。この構成では、このシールド電極を介して、第1リアクタンス素子及び第2リアクタンス素子の接続点が基準電位に接続されている。そして、ノイズを遮蔽する程度の面積を有するシールド電極が送電側基準電位を構成する導体に加わることで、送電装置側基準電位の安定化を図ることができる。これにより、送電装置の基準電位が大地電位に対して変動することで電源ラインへの不要なノイズが伝導(漏えい)する、という問題を回避することができる。加えて、送電装置側基準電位点と受電装置側基準電位点との電位差を0とすることができるため、受電装置側基準電位の電位変動も低減され、受電装置側の負荷回路の動作を安定化させることができる。
【0011】
前記受電装置は、前記第3の電極及び前記第4の電極との間に前記負荷回路が配置されるよう設けられ、基準電位に接続されたシールド電極を有し、前記第3リアクタンス素子の第2端、及び前記第4リアクタンス素子の第2端は、前記シールド電極に接続されている構成でもよい。
【0012】
ここで、シールド電極は、受電装置内の高電圧部(負荷回路)から生じたノイズの輻射を抑制するために設けられたものである。この構成では、このシールド電極を介して、第3リアクタンス素子及び第4リアクタンス素子の接続点が基準電位に接続されている。そして、ノイズを遮蔽する程度の面積を有するシールド電極が受電側基準電位を構成する導体に加わることで、受電装置側基準電位の安定化が図られるため、受電装置側の負荷回路の動作を安定化させることができる。加えて、送電装置側基準電位点と受電装置側基準電位点との電位差を0とすることができ、送電装置側基準電位の電位変動も低減されるため、送電装置の基準電位が大地電位に対して変動することに起因し、電源ラインへの不要なノイズが伝導(漏えい)する問題を回避できる。
【0013】
前記第1リアクタンス素子、前記第2リアクタンス素子、前記第3リアクタンス素子及び前記第4リアクタンス素子の少なくとも一つは、可変リアクタンス素子を含む構成でもよい。
【0014】
この構成では、素子を実装した後であっても、送電装置側基準電位点と受電装置側基準電位点との電位差を0とする、Cpp/Caa=X1/X2=X3/X4の条件を満たすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、受電装置側基準電位の電位変動を低減し、受電装置側の負荷回路の動作を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1に係るワイヤレス電力伝送システムの回路図
図2】電力伝送システムを構成する送電装置及び受電装置の主要部を概念的に表した断面図
図3】電力伝送システムを構成する送電装置及び受電装置の主要部を概念的に表した断面図
図4】負荷回路RL側を無負荷状態とした場合において、一部を省略したワイヤレス電力伝送システムの等価回路図
図5】ブリッジ回路を取り出して簡略化したワイヤレス電力伝送システムの等価回路図
図6】負荷回路RL側を無負荷状態としない場合において、一部を省略したワイヤレス電力伝送システムの等価回路図
図7図6に示すキャパシタ及び抵抗をΔ−Y変換した場合の回路図
図8】別の例の送電装置及び受電装置の主要部を概念的に表した断面図
図9】実施形態2に係るワイヤレス電力伝送システムの等価回路図
図10】実施形態3に係るワイヤレス電力伝送システムを構成する送電装置及び受電装置の主要部を概念的に表した断面図
図11図10に示すワイヤレス電力伝送システムの回路図
図12】寄生容量を調整する場合のワイヤレス電力伝送システムを構成する送電装置及び受電装置の主要部を概念的に表した断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係るワイヤレス電力伝送システム301の回路図である。ワイヤレス電力伝送システム301は送電装置101と受電装置201とを備えている。受電装置201は負荷回路RLを備えている。この負荷回路RLには二次電池とその充電回路、及び入力手段としてタッチパネル(不図示)等を含んでいる。そして、受電装置201は、例えば携帯電子機器である。携帯電子機器としては携帯電話機、PDA、携帯音楽プレーヤ、ノート型PC、デジタルカメラなどが挙げられる。受電装置201は送電装置101に載置され、送電装置101は受電装置201の二次電池を充電する。タッチパネルは、この二次電池を電力源として駆動する。
【0018】
図1において、送電装置101の高周波電圧発生回路1は例えば100kHz〜数10MHzの高周波電圧を発生する。高周波電圧発生回路1の発生する電圧は、昇圧トランスT1により昇圧されて、アクティブ電極11及びパッシブ電極12との間に印加される。昇圧トランスT1の漏れインダクタンスLleakは、アクティブ電極11とパッシブ電極12との間に生じるキャパシタCs1とで共振回路を構成している。キャパシタCs1は、実素子であってもよいし、寄生容量であってもよい。
【0019】
なお、アクティブ電極11は、本発明に係る第1の電極に相当し、パッシブ電極12は、本発明に係る第2の電極に相当する。
【0020】
アクティブ電極11及びパッシブ電極12の間には、キャパシタ31,32が直列接続されている。詳しくは、アクティブ電極11側にキャパシタ31が接続され、パッシブ電極12側にキャパシタ32が接続されている。キャパシタ31及びキャパシタ32の接続点は、送電装置101の基準電位に接続されている。キャパシタ31,32は、実素子であってもよいし、アクティブ電極11やパッシブ電極12と送電装置の基準電位との間に構成される寄生容量であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。また、このキャパシタ31,32には、昇圧トランスT1の線間容量を含んでいてもよい。
【0021】
キャパシタ31は、本発明に係る第1リアクタンス素子に相当し、キャパシタ32は、本発明に係る第2リアクタンス素子に相当する。
【0022】
受電装置201が送電装置101に載置されると、受電装置201のアクティブ電極21は、送電装置101のアクティブ電極11と対向し、パッシブ電極22はパッシブ電極12と対向する。送電装置101側でアクティブ電極11とパッシブ電極12との間に電圧が印加された場合、アクティブ電極11,21が容量結合し、また、パッシブ電極12,22も容量結合する。この容量結合により、アクティブ電極21及びパッシブ電極22の間に電圧が誘起され、送電装置101から受電装置201へ電力が伝送される。
【0023】
アクティブ電極21は、本発明に係る第3の電極に相当し、パッシブ電極22は、本発明に係る第4の電極に相当する。
【0024】
アクティブ電極21とパッシブ電極22との間には、キャパシタ33,34が直列接続されている。詳しくは、アクティブ電極21側にキャパシタ33が接続され、パッシブ電極22側にキャパシタ34が接続されている。キャパシタ33,34の接続点は、受電装置201の基準電位に接続されている。キャパシタ33,34は、実素子であってもよいし、アクティブ電極21やパッシブ電極22と受電装置の基準電位との間に構成される寄生容量であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。また、このキャパシタ33,34には、降圧トランスT2の線間容量を含んでいてもよい。
【0025】
キャパシタ33は、本発明に係る第3リアクタンス素子に相当し、キャパシタ34は、本発明に係る第4リアクタンス素子に相当する。
【0026】
アクティブ電極21とパッシブ電極22との間に誘起される電圧は、降圧トランスT2により降圧され、インダクタLL、ダイオードD1,D2及びDC−DCコンバータ25により整流平滑され、負荷回路RLへ印加される。なお、降圧トランスT2の1次コイルは、図1に示す、アクティブ電極21とパッシブ電極22との間に生じるキャパシタCs2とで共振回路を構成している。キャパシタCs2は、実素子であってもよいし、寄生容量であってもよい。
【0027】
図1に示すキャパシタCaは、アクティブ電極11,21の間に生じる(等価的に接続される)容量であり、キャパシタCpは、パッシブ電極12,22の間に生じる(等価的に接続される)容量である。そして、キャパシタCaのキャパシタンスをCaa、キャパシタCpのキャパシタンスをCppで表すと、アクティブ電極11,21及びパッシブ電極12,22は、Caa≦Cppの関係が成り立つように形成されている。この関係が成り立つようにすることで、アクティブ電極11,21のみに高い電圧が生じ、パッシブ電極12,22には相対的に低い電圧を生じさせることができる。
【0028】
また、キャパシタ31,32,33,34は、受電装置201の基準電位の安定化を目的として設けられている。キャパシタ31,32,33,34それぞれのキャパシタンス値は、Ca,Cpの容量比との関係により設定される。その設定方法については後に詳述する。
【0029】
なお、送電装置101においては、キャパシタCs1,31,32の合成容量と昇圧トランスT1の漏れインダクタンスLleakとの共振周波数を、高周波電圧発生回路1の発生する高周波電圧の周波数付近に設定する。また、受電装置201においては、キャパシタCs2,33,34の合成容量と降圧トランスT2の1次側励磁インダクタンスとの共振周波数を高周波電圧発生回路1の発生する高周波電圧の周波数付近に設定する。そうすることで、受電装置201が送電装置101に載置され、互いのアクティブ電極11,21、パッシブ電極12,22が容量結合し、送電装置101から受電装置201へ電力が伝送される際に、互いの共振回路が結合することで複合共振が形成され、高周波電圧発生回路1の発生する高周波電圧の周波数付近において、損失の少ない電力伝送を行うことができる。
【0030】
図2及び図3は電力伝送システム301を構成する送電装置101及び受電装置201の主要部を概念的に表した断面図である。図2は、Caa<Cppの関係が成り立つ場合の断面図であり、図3は、Caa=Cppの関係が成り立つ場合の断面図である。
【0031】
送電装置101の筐体10の上面(受電装置201が載置される面)付近には、アクティブ電極11とパッシブ電極12とが設けられている。この筐体10は、例えばABS樹脂などのプラスチックの成形体であり、筐体10の内部にアクティブ電極11及びパッシブ電極12を一体成形することによって、筐体10の外表面を絶縁構造にしている。
【0032】
アクティブ電極11及びパッシブ電極12は、同一面内に設けられ、かつ、パッシブ電極12がアクティブ電極11の周囲を離間して取り囲むように設けられている。アクティブ電極11をパッシブ電極12で取り囲むことで、パッシブ電極がアクティブ電極を遮蔽する効果が得られるため、より高電圧が生じているアクティブ電極11,21の容量結合に起因して生じるノイズの輻射を抑制できる。
【0033】
また、送電装置101の筐体10の底面付近であって、アクティブ電極11及びパッシブ電極12と対向する位置には、シールド電極13が設けられている。シールド電極13は、高電圧部となるアクティブ電極11及びパッシブ電極12とグランド(大地)との間を遮蔽するように設けられている。このシールド電極13は、送電装置101の基準電位に接続されている。本実施形態では、シールド電極13の基準電位は大地電位である。なお、シールド電極13は、筐体10に沿って、筐体10の側面にも設けられていてもよい。また、シールド電極13は大地に接続されていなくてもよい。
【0034】
アクティブ電極11とパッシブ電極12との間には、キャパシタ31,32が直列接続されている。キャパシタ31,32の接続点はシールド電極13に接続されていて、シールド電極13を介して基準電位に接続されている。
【0035】
筐体10内には、高周波電圧発生回路1及び昇圧トランスT1を含む高周波高電圧発生回路が設けられている。この高周波高電圧発生回路は、アクティブ電極11とパッシブ電極12との間に高周波の高電圧を印加する。昇圧トランスT1の1次側は、シールド電極13を介して基準電位に接続されている。
【0036】
受電装置201の筐体20の底面(送電装置101の上面に載置される面)付近には、アクティブ電極21とパッシブ電極22とが設けられている。この筐体20は、例えばABS樹脂などのプラスチックの成形体であり、筐体20の内部にアクティブ電極21及びパッシブ電極22を一体成形することによって、筐体20の外表面を絶縁構造にしている。
【0037】
アクティブ電極21及びパッシブ電極22は、送電装置101と同様に、同一面内に設けられ、かつ、パッシブ電極22がアクティブ電極21の周囲を離間して取り囲むように設けられている。また、筐体20の上面付近であって、アクティブ電極21及びパッシブ電極22と対向する位置には、シールド電極23が設けられている。このシールド電極23は、受電装置201の基準電位に接続されている。
【0038】
Caa<Cppの場合(図2)、パッシブ電極12,22の面積が、アクティブ電極11,21の面積よりも大きくなるよう形成されている。この場合、アクティブ電極11と21の間に生じる電圧は、パッシブ電極12と22の間に生じる電圧よりも大きくなる。また、Caa=Cppの場合(図3)、アクティブ電極11,21の面積が、パッシブ電極12,22の面積と同じ大きさとなるよう形成されている。この場合、アクティブ電極11と21の間に生じる電圧と、パッシブ電極12と22の間に生じる電圧とは等しくなる。
【0039】
アクティブ電極21とパッシブ電極22との間には、キャパシタ33,34が直列接続されている。キャパシタ33,34の接続点はシールド電極23に接続されていて、シールド電極23を介して受電装置201の基準電位に接続されている。なお、シールド電極23は、筐体20に沿って、筐体20の側面にも設けられていてもよい。
【0040】
筐体20内には、アクティブ電極21とパッシブ電極22との間に誘起される電圧を受ける受電側回路24が設けられている。受電側回路24は、図1の降圧トランスT2、インダクタLL、ダイオードD1,D2、DC−DCコンバータ25及び負荷回路RL等を含む。この受電側回路24(具体的には、降圧トランスT2の2次側)は、シールド電極23を介して受電装置201の基準電位に接続されている。
【0041】
以下に、キャパシタ31,32,33,34の設定方法について詳述する。以下では、負荷回路RL側を無負荷状態とした場合と、無負荷状態としない場合とのそれぞれの設定方法について説明する。
【0042】
図4は、負荷回路RL側を無負荷状態とした場合において、一部を省略したワイヤレス電力伝送システム301の等価回路図である。図4では、キャパシタ31,32,33,34及びキャパシタCa,Cpから構成される回路を主に示し、他の回路、例えば、受電装置201の受電側回路24などを省略している。また、図4に示すTGは、送電装置101の基準電位点であり、RGは受電装置201の基準電位点である。
【0043】
図4において、キャパシタ31,32のインピーダンスをZ1,Z2で表す。また、キャパシタ33及びキャパシタCaの直列回路のインピーダンスをZ3、キャパシタ34及びキャパシタCpの直列回路のインピーダンスをZ4でそれぞれ表す。インピーダンスZ1,Z2は、
Z1=R1+jX1…(1)
Z2=R2+jX2…(2)
で表される。
【0044】
また、キャパシタ33,34のインピーダンスをそれぞれ、R3+jX3、及び、R4+jX4で表すと、インピーダンスZ3,Z4は、
Z3=1/jωCaa+R3+jX3…(3)
Z4=1/jωCpp+R4+jX4…(4)
で表される。
【0045】
キャパシタ31,32,33,34は、アクティブ電極11,21の間に生じる容量Caaと、パッシブ電極12,22の間に生じる容量Cppとの比に一致するよう各キャパシタンスが設定されている。すなわち、キャパシタ31,32,33,34は、高周波電圧発生回路1からの交流電圧の基本周波数において、以下の式(5)の条件を満たすように設定されている。
【0046】
Cpp/Caa=X1/X2=X3/X4…(5)
なお、上述したように、Caa≦Cppである。
【0047】
式(5)の条件を満足することで、送電装置側基準電位点TGと受電装置側基準電位点RGとの電位差は0となる。これは、キャパシタ31,32,33,34及びキャパシタCa,Cpから構成される回路がブリッジ回路を形成しているからである。そのブリッジ回路を図5に示す。図5は、ブリッジ回路を取り出して簡略化したワイヤレス電力伝送システム301の等価回路図である。図5では、各インピーダンスZ1,Z2,Z3,Z4と同じ符号で、インピーダンス素子の回路を表している。
【0048】
図5に示すように、インピーダンス素子Z1とインピーダンス素子Z2との接続点は送電装置側基準電位点TGであり、インピーダンス素子Z3とインピーダンス素子Z4との接続点は受電装置側基準電位点RGである。このブリッジ回路の平衡条件は、
Z1/Z2=Z3/Z4…(6)
であり、この平衡条件を満足すると、送電装置側基準電位点TGと受電装置側基準電位点RGとの電位差は0となる。
【0049】
前記式(1)〜(4)及び式(6)から算出される式の実部及び虚部をゼロとすると、以下の式(7)及び式(8)を得る。
【0050】
【数1】
【0051】
抵抗成分を無視すると、式(7)より、以下の式(9)となる。
【0052】
【数2】
【0053】
k=Cpp/Caa、k1=X1/X2、k2=X3/X4とすると、式(9)は、以下の式(10)となる。
【0054】
【数3】
【0055】
この結果、k=k1=k2となり、前述の式(5)が成り立つ。このように、式(5)の条件を満たすように、キャパシタ31,32,33,34、アクティブ電極11,21及びパッシブ電極12,22を設計することで、送電装置側基準電位点TGと受電装置側基準電位点RGとの電位差は0となる。
【0056】
図6は、負荷回路RL側を無負荷状態としない場合において、一部を省略したワイヤレス電力伝送システム301の等価回路図である。図6に示す回路は、図4に示す回路に加え、抵抗Rが付加された構成である。図7は、図6に示すキャパシタ33,34及び抵抗RをΔ−Y変換した場合の回路である。
【0057】
図7に示すZa,Zbのインピーダンスは、以下の式(11)及び式(12)で表される。
【0058】
【数4】
【0059】
そして、ブリッジ回路の平衡条件から、以下の式(13)を満足すれば、送電装置側基準電位点TGと受電装置側基準電位点RGとの電位差は0となる。
【0060】
【数5】
【0061】
抵抗成分R1,R2,R3,R4を無視し、k=Cpp/Caa、k1=X1/X2、k2=X3/X4とすると、式(13)から以下の式(14)となる。
【0062】
【数6】
【0063】
式(14)において、k=k1=k2である場合、抵抗R、及び、ωCaaに拘わらず、式(14)は成立する。すなわち、前述の式(13)が成り立ち、送電装置側基準電位点TGと受電装置側基準電位点RGとの電位差は0となる。
【0064】
負荷回路RL側を無負荷状態とした場合であっても、無負荷状態としない場合であっても、送電装置側基準電位点TGと受電装置側基準電位点RGとの電位差が0となれば、受電装置側基準電位点RGの電位は送電装置101のグランド電位に等しくなる。通常、送電装置101のグランド電位は接地電位(大地電位)であるので、前記式(5)又は式(13)の平衡条件を満たせば、受電装置201側の基準電位も接地電位(大地電位)に近付けることができる。そのことによって、受電装置201が、人が触って静電的に入力するデバイス(静電容量型タッチパネル)を有する場合、送電装置101から受電装置201への電力伝送中に、タッチパネルを操作しても、入力を受付けない、又は、意図しない入力が行われるといった誤動作をなくすことができる。
【0065】
なお、キャパシタ31,32,33,34は、何れか一つ、または全てが可変キャパシタであってもよい。この場合、キャパシタ34を実装した後であっても、式(5)又は式(13)を満たすことができる。そして、送電装置側基準電位点TGと受電装置側基準電位点RGとの電位差を0として、受電装置201側の基準電位の安定化が可能となる。
【0066】
なお、本実施形態では、送電装置101の基準電位を大地電位としているが、送電装置101の基準電位は大地電位でなくてもよい。この場合であっても、送電装置101の筐体が受電装置201よりも大きい場合など、送電装置101の基準電位のほうが受電装置201の基準電位よりも安定化されているため、受電装置201の基準電位を送電装置101の基準電位とほぼ等しくなるように制御することで、送電装置101から受電装置201への電力伝送中に、タッチパネルを操作しても、誤動作をなくすことができる。
【0067】
図8は、別の例の送電装置及び受電装置の主要部を概念的に表した断面図である。図8に示すように、受電装置201の基準電位を大地電位としてもよい。この場合にも、前記式(5)又は式(13)の平衡条件を満たすことで、送電装置101の基準電位を、受電装置201の基準電位である大地電位とすることができる。
【0068】
(実施形態2)
実施形態2に係るワイヤレス電力伝送システムでは、受電装置が実施形態1と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0069】
図9は実施形態2に係るワイヤレス電力伝送システム302の等価回路図である。ワイヤレス電力伝送システム302は、送電装置102と受電装置202とを備える。送電装置102は、実施形態1に係る送電装置101と同じであるため、説明は省略する。
【0070】
受電装置202には、アクティブ電極21とパッシブ電極22との間に直列接続された、インダクタ35,36が設けられている。詳しくは、アクティブ電極21側にインダクタ35が接続され、パッシブ電極22側にインダクタ36が接続されている。インダクタ35,36の接続点は、受電装置202の基準電位に接続されている。インダクタ35は、本発明に係る第3リアクタンス素子に相当し、インダクタ36は、本発明に係る第4リアクタンス素子に相当する。なお、キャパシタ31,32をインダクタに代えてもよい。さらに、前述のインダクタ35,36等は、可変インダクタンス素子であってもよい。
【0071】
なお、受電装置202の他の部分は、実施形態1と同じであるため、説明は省略する。
【0072】
キャパシタ31,32、インダクタ35,36及びキャパシタCa,Cpから構成される回路は、実施形態1の図5又は図7と同様に、ブリッジ回路を形成している。インダクタ35,36のインダクタンスをL1,L2で表すと、それぞれのリアクタンスX5、X6は、X5=ωL1、X6=ωL2である。このリアクタンスX5、X6は、図5に示すZ3,Z4に相当する(但し、符号は逆である)。そして、式(5)又は式(13)より、
Cpp/Caa=X1/X2=L1/L2…(15)
となる。
【0073】
式(15)の条件を満たすように、キャパシタ31,32、インダクタ35,36、アクティブ電極11,21及びパッシブ電極12,22を設計することで、送電装置側基準電位点TGと受電装置側基準電位点RGとの電位差は0となる。送電装置側基準電位点TGを電力送電装置のグランド電位に接続されていれば、受電装置側基準電位点RGの電位は電力送電装置のグランド電位に等しくなる。通常、送電装置101のグランド電位は接地電位(大地電位)であるので、前記式(15)の平衡条件を満たせば、受電装置202側の基準電位も接地電位(大地電位)に近付けることができる。そのことによって、受電装置202が、人が触って静電的に入力するデバイス(容量型タッチパネル)を有する場合、送電装置101から受電装置202への電力伝送中に、タッチパネルを操作しても、受電装置202の負荷回路RLの誤動作をなくすことができる。
【0074】
(実施形態3)
本実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムでは、実施形態1で説明したキャパシタ31,32,33,34に相当する容量を、送電装置及び受電装置内に生じる寄生容量で構成し、受電装置の基準電位の安定化させている。以下、その相違点について説明する。
【0075】
図10は、実施形態3に係るワイヤレス電力伝送システム303を構成する送電装置103及び受電装置203の主要部を概念的に表した断面図である。図11は、図10に示すワイヤレス電力伝送システム303の回路図である。なお、図11では、キャパシタCs1,Cs2は、図示を省略している。
【0076】
ワイヤレス電力伝送システム303では、送電装置103及び受電装置203それぞれは、各々の装置の基準電位に接続されたシールド電極13A,23Aを備えている。シールド電極13Aは、アクティブ電極11及びパッシブ電極12の近傍に配置され、シールド電極13と同電位である。シールド電極23Aは、アクティブ電極21及びパッシブ電極22の近傍に配置され、シールド電極23と同電位である。
【0077】
受電装置203を送電装置103に載置した場合、シールド電極13A,23Aの間には、アクティブ電極11,21及びパッシブ電極間12,22が間に介在する。高電位部分(アクティブ電極11,21)をシールド電極13A,23Aで挟み込むことで、アクティブ電極11,21間、及び、パッシブ電極間12,22間に生じる電界の漏えい(ノイズの輻射)を抑制することができる。
【0078】
送電装置103において、シールド電極13Aをアクティブ電極11及びパッシブ電極12の近傍に設けることで、シールド電極13Aとアクティブ電極11との間、及び、シールド電極13Aとパッシブ電極12との間それぞれに寄生容量が生じる。ここで、シールド電極13Aとアクティブ電極11との間に生じる寄生容量をキャパシタ41、シールド電極13Aとパッシブ電極12との間に生じる寄生容量をキャパシタ42でそれぞれ表す。
【0079】
また、受電装置203において、シールド電極23Aをアクティブ電極21及びパッシブ電極22の近傍に設けることで、シールド電極23Aとアクティブ電極21との間、及び、シールド電極23Aとパッシブ電極22との間それぞれに寄生容量が生じる。ここで、シールド電極23Aとアクティブ電極21との間に生じる寄生容量をキャパシタ43、シールド電極23Aとパッシブ電極22との間に生じる寄生容量をキャパシタ44でそれぞれ表す。
【0080】
キャパシタ41は、本発明に係る第1リアクタンス素子に相当し、キャパシタ42は、本発明に係る第2リアクタンス素子に相当する。また、キャパシタ43は、本発明に係る第3リアクタンス素子に相当し、キャパシタ44は、本発明に係る第4リアクタンス素子に相当する
送電装置103は、アクティブ電極11とシールド電極13Aとの間に接続されたキャパシタΔ41と、パッシブ電極12とシールド電極13Aとの間に接続されたキャパシタΔ42とを備えている。この接続構成により、図11に示すように、キャパシタΔ41は、キャパシタ41に対して並列接続し、キャパシタΔ42は、キャパシタ42に対して並列接続した構成となる。
【0081】
受電装置103は、アクティブ電極21とシールド電極23Aとの間に接続されたキャパシタΔ43と、パッシブ電極22とシールド電極23Aとの間に接続されたキャパシタΔ44とを備えている。この接続構成により、図11に示すように、キャパシタΔ43は、キャパシタ43に対して並列接続し、キャパシタΔ44は、キャパシタ44に対して並列接続した構成となる。
【0082】
この回路において、並列接続されたキャパシタ41,Δ41は、実施形態1で説明したキャパシタ31に相当する。同様に、並列接続されたキャパシタ42,Δ42、並列接続されたキャパシタ43,Δ43、及び、並列接続されたキャパシタ44,Δ44それぞれは、実施形態1で説明したキャパシタ32,33,34に相当する。そして、実施形態1で説明したように、アクティブ電極11,21の間に生じる容量Caaと、パッシブ電極12,22の間に生じる容量Cppとの比に一致するよう、各キャパシタンスの値を設定する。
【0083】
キャパシタ31に相当する並列接続されたキャパシタ41,Δ41のうち、キャパシタ41は、寄生容量である。したがって、キャパシタΔ41の容量は、実素子の容量からなり、キャパシタ41の容量に応じて、適宜決定される。同様に、キャパシタΔ42,Δ43,Δ44それぞれの容量も、実素子の容量からなり、寄生容量であるキャパシタ42,43,44の容量に応じて、適宜決定される。そして、適宜決定した容量のキャパシタΔ41,Δ42,Δ43,Δ44を接続することで、式(5)又は式(13)の平衡条件を満たして、受電装置203側の基準電位を、受電装置203の基準電位である大地電位とすることができる。
【0084】
なお、シールド電極13A,23Aに穴を形成して、シールド電極13A,23Aと、アクティブ電極11,21及びパッシブ電極12,22との間に生じる寄生容量を調整するようにしてもよい。
【0085】
図12は、寄生容量を調整する場合のワイヤレス電力伝送システム303を構成する送電装置及び受電装置の主要部を概念的に表した断面図である。
【0086】
この例では、シールド電極13Aに穴H1,H2,H3を形成し、その穴H1,H2,H3に、アクティブ電極11及びパッシブ電極12に接続される配線を通す構成としてある。また、シールド電極23Aに穴H4,H5,H6を形成し、その穴H4,H5,H6に、アクティブ電極21及びパッシブ電極22に接続される配線を通す構成としてある。
【0087】
この構成では、シールド電極13A,23Aに穴が形成された分だけ、シールド電極13A,23Aと、アクティブ電極11,21及びパッシブ電極12,22との対向面積が小さくなり、電極間に生じる寄生容量も小さくなる。すなわち、シールド電極13A,23Aに穴を形成することで、キャパシタ41,42,43,44のキャパシタンスを調整できるため、穴の径を大きく又は小さくして調整することで、キャパシタΔ41,Δ42,Δ43,Δ44を設けなくても、式(5)又は式(13)の平衡条件を満たすようにできる場合がある。
【0088】
また、配線が、穴H1〜H6を通ることで、配線とシールド電極13A,23Aとの間に寄生容量が生じる場合がある。この場合、この寄生容量も考慮して、キャパシタ41,42,43,44のキャパシタンスを調整するようにしてもよい。その他、送電装置103及び受電装置203内に生じる寄生容量を考慮して、キャパシタ41,42,43,44のキャパシタンスを調整するようにしてもよい。
【0089】
なお、図10に示すように、配線を通す穴を形成しない場合であっても、アクティブ電極11,21及びパッシブ電極12,22に接続される配線は、シールド電極13A,23Aの近傍を通ることがある。また、図12の構成において、図10に示すような実素子の容量からなるキャパシタΔ41,Δ42,Δ43,Δ44をさらに設けることにより、キャパシタンスを調整するようにしてもよい。
【0090】
さらに、配線とは関係なく、寄生容量を調整するために、配線が通る位置とは異なる位置に、シールド電極13A,23Aに穴を形成してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1−高周波電圧発生回路(給電回路)
11,21、−アクティブ電極
12,22−パッシブ電極
13,23−シールド電極
25−DC−DCコンバータ
31,41−キャパシタ(第1リアクタンス素子)
32,42−キャパシタ(第2リアクタンス素子)
33,43−キャパシタ(第3リアクタンス素子)
34−キャパシタ(第4リアクタンス素子、可変リアクタンス素子)
44−キャパシタ(第4リアクタンス素子)
35−インダクタ(第3リアクタンス素子)
36−インダクタ(第4リアクタンス素子)
Δ41,Δ42,Δ43,Δ44−キャパシタ
101,102,103−送電装置
201,202,203−受電装置
301,302,303−ワイヤレス電力伝送システム
T1−昇圧トランス(給電回路)
T2−降圧トランス
RL−負荷回路
Cs1,Cs2−キャパシタ
leak−漏れインダクタンス
LL−インダクタ
D1,D2−ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12