(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属板からなる本体構造材と、前記本体構造材の内側に前記本体構造材に対して対面配置され、コイルパターンおよびコイル開口を有する平面コイルアンテナと、を備えた無線通信装置であって、
前記本体構造材に形成され、平面視で、前記コイルパターンの少なくとも2箇所で当該コイルパターンと交差し、且つ前記本体構造材の縁端部に連接しない、第1スリットパターンを備えたことを特徴とする無線通信装置。
平面視で、前記コイルパターンの外側で前記コイルパターンの外縁に沿って形成され、前記第1スリットパターンに連接され、且つ前記本体構造材の縁端部に連接されていない、第2スリットパターンを備えた、請求項1〜5のいずれかに記載の無線通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0020】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係る移動体通信端末101の正面図、
図1(B)はその背面図である。この移動体通信端末101は本発明の「無線通信装置」の例である。移動体通信端末101は、本体構造材として上部金属筐体91および下部金属筐体92を備えている。移動体通信端末101は前面に表示・タッチパネル80を備えている。下部金属筐体92の内側にはその下部金属筐体92に対して平面コイルアンテナが対面配置されている。下部金属筐体92には、平面コイルアンテナが対面する位置にスリット形成部10が設けられている。このスリット形成部10および上記平面コイルアンテナにより移動体通信端末のアンテナ部が構成されている。
【0021】
図2は上記アンテナ部の拡大平面図である。スリット形成部10は、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dおよび第2スリットパターン12a,12b,12c,12dで構成されている。平面コイルアンテナはコイルパターン20およびコイル開口20Aを備えている。コイルパターン20は、コイル開口20Aとなる周囲に巻回された矩形スパイラル状の導体パターンであり、例えばフレキシブルな基材に形成されている。
【0022】
コイルパターン20の両端には給電回路および共振周波数調整用の並列キャパシタが接続されている。コイル開口20Aおよびコイルパターン20の裏面側には磁性体層が設けられている。なお、平面コイルアンテナはこうした形態に限定されるものではなく、たとえば、複数のループパターンを積層した積層型のものであってもよいし、コイル開口内に磁性体層を挿入したものであってもよい。また、上記磁性体層はコイルパターン20の裏面側にのみ設けられていてもよいし、磁性体層が無くてもよい。なお、共振周波数調整用のキャパシタはコイルパターン20に対して直列に接続されていてもよいし、共振周波数調整用のキャパシタが無くてもよい。
【0023】
第1スリットパターン11a,11b,11c,11dは、平面視で、コイルパターン20と交差している。第1スリットパターン11a,11b,11c,11dはコイル開口20Aの中心でつながっている。
【0024】
第2スリットパターン12a,12b,12c,12dは、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dにそれぞれ連接され、且つ下部金属筐体92の縁端部には連接されていない。すなわち、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dおよび第2スリットパターン12a,12b,12c,12dは下部金属筐体92の面内で閉じている。第1スリットパターン11a,11b,11c,11d、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dは、一様な幅を持った線状の抜き部である。この幅は0.01mm以上1.0mm以下程度である。
【0025】
図2において、コイルパターン20の外形寸法は25×25mm、内形寸法は13×13mmである。ライン&スペース(L/S)は400μm/200μm、ターン数は10である。また、移動体通信端末の筐体内に組み込んだ状態(下部金属筐体92に対面した状態)での共振周波数が13.56MHzとなるように、上記並列キャパシタの容量は定める。第1スリットパターン11a,11b,11c,11dおよび第2スリットパターン12a,12b,12c,12dのスリット幅は、機械的強度の低下抑制という観点からコイルパターン20の内径寸法の1/5以下が好ましく、1/10以下の幅であればより好ましい。本実施形態では、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dおよび第2スリットパターン12a,12b,12c,12dのスリット幅はそれぞれ0.1mmである。第1スリットパターン11a,11b,11c,11dの長さは12.5mm、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dの長さは12.5mmである。
【0026】
図3(A)(B)は平面コイルアンテナのコイルパターンに流れる電流と下部金属筐体92に流れる電流との関係を示す図である。
図3(A)において、矢印はコイルパターン20に流れる信号電流の方向の例である。
図3(B)において、ループ状の電流io,iiは下部金属筐体92に流れる誘導電流を示している。
【0027】
コイルパターン20に流れる電流により発生される磁界を介して下部金属筐体92に渦電流が誘導される。第1スリットパターン11a,11b,11c,11dは平面視でコイルパターンを4箇所で交差しているので、下部金属筐体92に誘導される電流は第1スリットパターン11a,11b,11c,11dで遮断される。
【0028】
その結果、金属筺体92には、コイルパターン20に流れる信号電流と鏡像関係になるような大きく周回する渦電流は流れず、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dで区分された領域内を小さく周回する渦電流iiが流れる。
【0029】
このように、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dは、渦電流が流れる範囲を区分するので、上記小さく周回する渦電流iiの隣接する電流の方向は互いに逆となり、渦電流により発生される磁界は、コイル開口20Aの中心付近(第1スリットパターン11a,11b,11c,11dの近傍)で相殺される。各区分に流れる渦電流が、互いの隣接部分で効果的に相殺されるために、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dは、平面視で、コイル開口20Aの中心を通ってコイル開口20Aを等分するように形成されていることが好ましい。
【0030】
また、このように第1スリットパターン11a,11b,11c,11dが、渦電流の流れる範囲を区分するためには、第1スリットパターンは、コイルパターン20の少なくとも2個所でコイルパターン20と交差していることが好ましい。また、渦電流の流れる範囲を多く区分するために第1スリットパターンは複数本であることが好ましい。
【0031】
第2スリットパターン12a,12b,12c,12dは、電流iiの周回範囲を抑制する。また、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dはコイルパターン20の外縁とほぼ同じ位置あるいはわずかに外側に形成されているので、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dは、スリット形成部10の周囲を周回しようとする渦電流io、つまり、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dによって区分された領域内を流れようとする渦電流を抑制する。
【0032】
したがって、平面コイルアンテナによる磁界が渦電流で打ち消されにくく、平面コイルアンテナの磁界は下部金属筐体92を等価的に抜けて、通信相手のアンテナと結合する。
【0033】
図4(A)(B)(C)は第1の実施形態の比較例としての移動体通信端末のアンテナ部の平面図である。
図4(A)は、下部金属筐体92に開口もスリットも形成されていない例、
図4(B)は、下部金属筐体92の、平面コイルアンテナが対向する位置に開口が形成されている例、
図4(C)は、下部金属筐体92に、平面コイルアンテナのコイル開口20Aの中心から放射方向へ延びる1本のスリットパターン13が形成されている例である。平面コイルアンテナの構成はいずれも
図2に示したものと同じである。
【0034】
図5は、
図2に示した第1の実施形態のアンテナ部、および
図4(A)(B)(C)に示した比較例のアンテナ部の特性を示す図である。
図5において縦軸は通信相手側アンテナとの結合係数である。通信相手側アンテナはリーダ・ライタ用のφ70mmのループアンテナである。アンテナ間の距離は25mmである。
【0035】
図5において(0A)(0B)(0C) は
図4(A)(B)(C)に示した各アンテナ部の特性であり、(1) は
図2に示した第1の実施形態のアンテナ部の特性である。
図4(A)に示したように、下部金属筐体92に開口もスリットも形成されていないと結合係数は0.0003と極めて小さく、アンテナとして機能しない。
図4(B)に示したように、下部金属筐体92の、平面コイルアンテナが対向する位置に開口が形成されていると、結合係数は0.019となり、通信相手側アンテナと強く結合する。
図4(C)に示したように、下部金属筐体92の、平面コイルアンテナが対向する位置に1本のスリット13が形成されていると、結合係数は0.0048となり、通信相手側アンテナと僅かに結合する。
図2に示した第1の実施形態に係るアンテナ部であれば、結合係数は0.0101となり、通信相手側アンテナと充分結合する。
【0036】
本実施形態によれば、スリット形成部10のスリット総面積が
図4(B)に示した開口の面積に比べて非常に小さいにも拘わらず比較的大きな結合係数が得られる。また、コイルアンテナのコイル開口に対向する開口部を設けることなく、しかも第1スリットパターンは本体構造材の縁端部に連接していないので、本体構造材の機械的強度を大きく低下させること、あるいは本体構造材のデザイン性を大きく損なうことはない。さらに、金属筐体に幅0.1mm程度のスリットが形成されるだけであるので、通常の使用状態では視認し難く、外観デザイン上の制約を受けない。
【0037】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、スリット形成部の第1スリットパターンの数の違いによる特性の違いについて示す。
【0038】
図6(A)(B)は第2の実施形態に係る移動体通信端末のアンテナ部の平面図である。
図6(A)において、スリット形成部は、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dで構成されている。
図6(B)において、スリット形成部は、第1スリットパターン11a,11c,11dで構成されている。第1スリットパターン11a,11b,11c,11dの長さはそれぞれ22.5mmである。いずれの平面コイルアンテナもコイルパターン20およびコイル開口20Aを備えている。平面コイルアンテナの構成は、第1の実施形態で示したものと同じである。
【0039】
図7は、
図6(A)(B)に示した第2の実施形態のアンテナ部、および
図4(A)(B)(C)に示した比較例のアンテナ部の特性を示す図である。
図7において縦軸は通信相手側アンテナとの結合係数である。測定条件は第1の実施形態で示したものと同じである。
【0040】
図7において(0A)(0B)(0C) は
図4(A)(B)(C)に示した各アンテナ部の特性であり、(2A)(2B) は
図6(A)(B)に示した第2の実施形態のアンテナ部の特性である。
図6(A)に示したように、下部金属筐体92の、平面コイルアンテナが対向する位置に十字状に4本の第1スリットパターンが形成されていると、結合係数は0.0142となり、通信相手側アンテナと強く結合する。
図6(B)に示したように、下部金属筐体92の、平面コイルアンテナが対向する位置にT字状に3本の第1スリットパターンが形成されている場合でも、結合係数は0.0122となり、通信相手側アンテナと強く結合する。
【0041】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、スリット形成部の第1スリットパターンの形状の違いによる特性の違いについて示す。
【0042】
図8(A)(B)は第3の実施形態に係る移動体通信端末のアンテナ部の平面図である。
図8(A)において、スリット形成部は1本の第1スリットパターン11で構成されている。第1スリットパターン11のうち、Y軸方向に延びる部分の長さは13mm、X軸方向に延びる部分の長さはそれぞれ22.5mmである。このように、第1スリットパターン11は1本であっても、コイル開口20Aの中央を通って、コイルパターン20を2個所で交差するように配置することで、同方向に小さく周回する渦電流が隣接する。また、第1スリットパターン11はコイルパターン20の外方へ突出しているので、スリット形成部の周囲を周回しようとする渦電流も抑制される。
【0043】
図8(B)において、スリット形成部はそれぞれL字形の2本の第1スリットパターン11e,11fで構成されている。第1スリットパターン11e,11fのX軸方向の長さは37.5mm、Y軸方向の長さは12mmである。このように、第1スリットパターンがコイル開口20Aの中心付近を通っていなくても、第1スリットパターン11e,11fの内側(コイル開口20Aの内部)を周回する電流は第1スリットパターン11e,11fに沿って流れ、第1スリットパターン11e,11fの外側に沿ってそれぞれ周回する電流が流れる。また、第1スリットパターン11e,11fはコイルパターン20の外方へ突出しているので、スリット形成部の周囲を周回しようとする渦電流も抑制される。
【0044】
図9は、
図8(A)(B)に示した第3の実施形態のアンテナ部、および
図4(A)(B)(C)に示した比較例のアンテナ部の特性を示す図である。
図9において縦軸は通信相手側アンテナとの結合係数である。測定条件は第1の実施形態で示したものと同じである。
【0045】
図9において(0A)(0B)(0C) は
図4(A)(B)(C)に示した各アンテナ部の特性であり、(3A)(3B) は
図8(A)(B)に示した第3の実施形態のアンテナ部の特性である。
図8(A)に示したように、第1スリットパターン11は1本であっても、コイルパターンを2個所で交差することにより、0.0126と高い結合係数が得られる。また、
図8(B)に示したように、第1スリットパターンがコイル開口20Aの中心付近を通っていなくても、第1スリットパターンがコイルパターン20の外方へ延伸することにより、0.012と高い結合係数が得られる。
【0046】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、スリット形成部の第2スリットパターンによる作用効果について示す。
【0047】
図10(A)(B)(C)(D)は第4の実施形態に係る移動体通信端末のアンテナ部の平面図である。
図10(A)に示すアンテナ部の第2スリットパターン12a,12b,12c,12dの長さは第1の実施形態で示したスリット形成部10の第2スリットパターン12a,12b,12c,12dの長さの2倍であり、コイルパターン20の外形寸法に等しい。
【0048】
図10(B)は、
図10(A)に示した例において第1スリットパターン11a,11b,11c,11dを分離したものである。
図10(C)は、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dの寸法を半分にし、それぞれの一端が第1スリットパターン11a,11b,11c,11dに連接したものである。
図10(D)は、
図10(C)に示した例から、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dを、コイルパターン20の外周に沿って延長したものである。
【0049】
図11は、
図10(A)(B)(C)(D)に示した第4の実施形態のアンテナ部、および
図4(A)(B)(C)に示した比較例のアンテナ部の特性を示す図である。
図11において縦軸は通信相手側アンテナとの結合係数である。測定条件は第1の実施形態で示したものと同じである。
【0050】
図11において(0A)(0B)(0C) は
図4(A)(B)(C)に示した各アンテナ部の特性であり、(1) は第1の実施形態で示したアンテナ部の特性である。(4A)(4B)(4C)(4D) は
図10(A)(B)(C)(D)に示した第4の実施形態のアンテナ部の特性である。
【0051】
図10(A)に示したように、第2スリットパターンを長くすることにより、0.0133と高い結合係数が得られる。また、
図10(B)に示したように、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dを分離すると、渦電流を区分する効果が小さくなるので、第2スリットパターンが長いにも拘わらず、結合係数は多少低下する。また、
図10(C)に示したように、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dの寸法が短くても、それぞれの一端が第1スリットパターン11a,11b,11c,11dに連接していることにより、0.0126と高い結合係数が得られる。また、
図10(D)に示したように、コイルパターン20を囲むように第2スリットパターンを延長することにより、0.0142と高い結合係数が得られる。
【0052】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、平面コイルアンテナのコイルパターンが矩形以外の例について示す。
【0053】
図12(A)(B)は第5の実施形態に係る移動体通信端末のアンテナ部の平面図である。いずれの例も、平面コイルアンテナのコイルパターン20は、全体が円形のスパイラル状のパターンである。コイルパターン20は簡略化して表している。
【0054】
図12(A)に示す例では、スリット形成部は、120°等角度で放射状に延びる第1スリットパターン11a,11b,11cおよび円弧状の第2スリットパターン12a,12b,12cで構成されている。第1スリットパターン11a,11b,11cはコイルパターン20と交差し、第2スリットパターン12a,12b,12cはコイルパターン20の外縁に沿って形成されている。
【0055】
図12(B)に示す例では、スリット形成部は、90°等角度で放射状に延びる第1スリットパターン11a,11b,11c,11dおよび円弧状の第2スリットパターン12a,12b,12c,12dで構成されている。第1スリットパターン11a,11b,11c,11dはコイルパターン20と交差し、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dはコイルパターン20の外縁に沿って形成されている。
【0056】
このように、平面コイルアンテナのコイルパターンが円形である場合に、第2スリットパターンは円弧状であってもよい。また、第1スリットパターンは5本以上である場合にも等角度で放射状に延びるパターンであることが好ましい。
【0057】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、第1スリットパターンおよび第2スリットパターンの他の形状について示す。
【0058】
図13は第6の実施形態に係る移動体通信端末のアンテナ部の平面図である。スリット形成部は、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dおよび第2スリットパターン12a,12b,12c,12dで構成されている。第1スリットパターン11a,11b,11c,11dと第2スリットパターン12a,12b,12c,12dとの連接部は湾曲している。コイルパターン20の外側でコイルパターン20の外縁に沿って延びている部分が第2スリットパターン12a,12b,12c,12dである。但し、
図13に示す例では、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dの先端へ向かうほどコイルパターン20から離れるパターンである。
【0059】
このように、第1スリットパターン11a,11b,11c,11dはコイルパターン20に対して斜めに交差してもよい。また、第2スリットパターン12a,12b,12c,12dは放射方向から傾斜するパターンまたは渦巻状であってもよい。
【0060】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、スリット形成部の他の例およびコイルパターンの他の形状の例を示す。
【0061】
図14は第7の実施形態に係る移動体通信端末のアンテナ部の平面図である。スリット形成部は、"NFC"というスリットによる文字パターンで構成されている。平面コイルアンテナのコイルパターン20は、その概形が長方形である。このコイルパターン20に上記スリットによる文字パターンが重なるように、コイルパターン20および上記スリットによる文字パターンが配置されている。
【0062】
上記スリットによる文字パターンのうち、コイルパターンと交差してそのまま直線状に延びる部分は第1スリットパターンであり、コイルパターン20の外縁に沿って延びる部分は第2スリットパターンである。このように閉じたスリットを複数個備える場合にも同様に適用できる。
【0063】
《第8の実施形態》
第8の実施形態では、無線通信装置の他の例について示す。
図15は第8の実施形態に係る無線通信装置の例としてのノートパソコンの外観斜視図である。このノートパソコン102は金属筐体90を備え、操作面のうち、特にタッチパッド横のスペースにスリット形成部10が設けられている。スリット形成部10には、これまでに示した実施形態と同様に、平面コイルアンテナのコイルパターンが配置されている。
【0064】
このようにしてノートパソコンの操作面の一部をNFCのための送受信部として用いることができる。
【0065】
《他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、無線通信装置の金属筐体にスリット形成部を設けたが、このスリット形成部に、スリットパターンを隠すようにデザインした絶縁性のシールを貼付してもよい。
【0066】
以上に示した各実施形態では、装置外部の本体構造材としての金属筐体にスリット形成部を設けたが、本発明はこれに限らない。例えば樹脂筐体の内部に本体構造材としての金属シャーシを備える場合に、その金属シャーシにスリット形成部を設けてもよい。
【0067】
以上に示した各実施形態では、第1スリットパターンが4本までの例を示したが、第1スリットパターンは4本以上あってもよい。また、第2スリットパターンはすべての第1スリットパターンにそれぞれ連接している必要はなく、複数の第1スリットパターンのうち幾つかの第1スリットパターンにのみ第2スリットパターンが連接していてもよい。
【0068】
以上に示した実施形態では、スリット幅0.1mmのスリットを形成する例を示したが、本発明において「スリット」はコイルパターンの内形幅の1/5以下の幅の切れ込みである。本体構造材の機械的強度を確保するためには、スリットの幅はコイルパターンの内形幅の1/10以下であることが好ましい。また、スリットの総面積は、金属筺体の強度やシールド性の維持のため、コイル開口20Aの面積より小さいことが好ましい。
【0069】
以上の各実施形態で示したスリット形成部および平面コイルアンテナによるアンテナ部は、例えばRFIDアンテナに適用した場合、タグ用アンテナとして用いることもできる。また、リーダ/ライタ用アンテナとして利用することもできる。
金属筐体(92)等の本体構造材と、本体構造材の内側に本体構造材に対して対面配置され、コイルパターン(20)およびコイル開口(20A)を有する平面コイルアンテナと、を備えた無線通信装置であって、本体構造材に形成され、平面視で、コイルパターン(20)の少なくとも2箇所で当該コイルパターン(20)と交差し、且つ本体構造材の縁端部に連接しない、第1スリットパターン(11a,11b,11c,11d)を備える。これにより、機械的強度を確保し、所定の通信性能を確保する。