(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視で、前記開口部の寸法のうち前記線条部の延伸方向の寸法は、これに直交する方向の寸法よりも大きく、前記線条部の延伸方向に直交する方向において前記開口部の寸法は前記コイル開口の寸法より大きい、請求項1または2に記載の無線通信装置。
前記平面コイルアンテナと結合する前記線条パターンのインダクタンスに応じて、前記平面コイルアンテナの共振周波数が所定値となるように、当該平面コイルアンテナのインダクタンス値が定められている、請求項1〜5のいずれかに記載の無線通信装置。
前記平面コイルアンテナのコイルパターンの巻回幅は、前記線条部の2本分の線幅と、前記線条部の線間距離との合計値よりも大きい、請求項1〜6のいずれかに記載の無線通信装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されているアンテナ装置では、金属部材に平面コイルアンテナのコイルパターンと同程度の大きな開口面積となるように開口部を形成することになるため、上記金属部材を筐体に適用した場合に、筐体自体の機械的強度が低くなる。特に、携帯端末やタブレットPC等の大面積・薄型の装置では、金属筐体の機械的強度の低下は避けなければならない。また、開口部が外面に露出する場合には、外観デザインの面で大きな制約を受けることになる。さらに、上記金属部材を静電シールド材として利用する場合に、開口部で静電シールド効果は低下し、電気的特性の面でも問題となる。
【0008】
本発明の目的は、開口部を有する面状導体と平面コイルアンテナとが対向配置された無線通信装置において、開口部における開口面積が大きくなるのを抑制しながら、十分な通信特性を得ることが可能な無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線通信装置は、開口部を有する面状導体と、開口部に対面配置され、コイルパターンおよびコイル開口を有する平面コイルアンテナと、を備えた無線通信装置であって、開口部に、互いに平行な複数の線条部を有し、一部が開口部周囲で面状導体に接続された、線条パターンが設けられていることを特徴とする。
【0010】
平面視で、前記開口部の寸法のうち線条部の延伸方向の寸法は、同方向におけるコイルパターンの外形寸法よりも大きいことが好ましい。
【0011】
平面視で、前記開口部の寸法のうち線条部の延伸方向の寸法は、これに直交する方向の寸法よりも大きく、線条部の延伸方向に直交する方向において開口部の寸法はコイル開口の寸法より大きいことが好ましい。
【0012】
前記開口部は平面視で矩形状であり、線条パターンは開口部の互いに対向する2つの辺に接続されていることが好ましい。
【0013】
前記線条パターンによる開口部の被覆率は30%以上であることが好ましい。
【0014】
平面コイルアンテナのインダクタンス値は、前記平面コイルアンテナと結合する線条パターンのインダクタンスに応じて、平面コイルアンテナの共振周波数が所定値となるように定められていることが好ましい。
【0015】
前記平面コイルアンテナのコイルパターンの巻回幅は、前記線条部の2本分の線幅と、前記線条部の線間距離との合計値よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、面状導体の開口部に複数の平行な線条部を有する線条パターンが設けられていることにより、開口部の一部が塞がれて開口面積が小さくなるとともに、開口部に平面コイルアンテナが対面している状態で、開口部付近および複数の線条部に電流が誘導されるので、磁界が面状導体を透過的に抜けて十分な通信特性が得られる。そのため、面状導体が構造材として用いられる場合には、その機械的強度が確保できる。また、面状導体がシールド材として用いられる場合には、そのシールド効果を確保できる。さらに、面状導体が装置の外面に用いられる場合には、その外観デザインの制約を緩和できる。
【0017】
特に、平面視で、前記開口部の寸法のうち線条部の延伸方向の寸法が同方向におけるコイルパターンの外形寸法よりも大きいと、平面コイルアンテナによる磁界を打ち消す方向の電流が効果的に抑制される。
【0018】
また、平面視で、前記開口部の寸法のうち線条部の延伸方向の寸法は、これに直交する方向の寸法よりも大きく、線条部の延伸方向に直交する方向において開口部の寸法がコイル開口の寸法より大きいと、平面コイルアンテナによる磁界を打ち消す方向の電流が効果的に抑制される。
【0019】
また、前記開口部は平面視で矩形状であり、線条パターンは開口部の互いに対向する2つの辺に接続されていると、線条パターンを通って周回する電流が流れにくいので、線条パターンに流れる誘導電流が効果的に抑制される。
【0020】
また、前記線条パターンによる開口部の被覆率が30%以上であると、機械的強度の点、シールド効果の点、または外観デザインの制約の点で好ましい。
【0021】
また、前記平面コイルアンテナと結合する線条パターンのインダクタンスに応じて、平面コイルアンテナの共振周波数が所定値となるように、平面コイルアンテナのインダクタンス値が定められていると、線条パターンのインダクタンスを有効に利用して、平面コイルアンテナのコイルパターンを太くでき、Q値の向上および通信性能の向上が図れる。
【0022】
また、前記平面コイルアンテナのコイルパターンの巻回幅は、前記線条部の2本分の線幅と、前記線条部の線間距離との合計値よりも大きいと、線条パターンに流れる誘導電流は充分に抑制される。
【0023】
このように、誘導電流による打ち消しが抑制されることにより、通信相手のアンテナとの結合度がより高くなり、通信距離を大きくすることができる。または、小面積の線条パターンで、所定の通信距離を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0026】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係る移動体通信端末101の正面図、
図1(B)はその背面図である。
図2は移動体通信端末101のアンテナ部の拡大平面図である。この移動体通信端末101は本発明の「無線通信装置」の例である。移動体通信端末101は、本体構造材として上部金属筐体91および下部金属筐体92を備えている。下部金属筐体92は本発明に係る「面状導体」の例である。移動体通信端末101は前面に表示・タッチパネル80を備えている。下部金属筐体92の内側にはその下部金属筐体92に対して平面コイルアンテナが対面配置されている。下部金属筐体92には、平面コイルアンテナが対面する位置に開口部30が形成され、当該開口部30には線条パターン10が設けられている。この線条パターン10および上記平面コイルアンテナにより移動体通信端末101のアンテナ部が構成されている。
【0027】
図2は上記アンテナ部の拡大平面図である。本実施形態において、ストライプ状の線条パターン10が開口部30に形成されている。ストライプ状の線条パターン10は、複数の線条部11からなる。これら複数の線条部11は互いに平行であり、下部金属筐体92の一部である。すなわち、線条部それぞれの両端は開口部30の内周に繋がっている。隣接する線条部の間にはスリット31が形成されている。
【0028】
コイルパターン20は、コイル開口20Aとなる周囲に巻回された矩形スパイラル状の導体パターンであり、例えばフレキシブルな基材に形成されている。コイル開口20Aおよびコイルパターン20の表面には磁性体層が設けられている。なお、コイルパターンはこうした形状に限定されるものではなく、例えば複数のループパターンを積層してなる積層型のコイルパターンであってもよいし、コイル開口内に磁性体層を挿入したものであってもよい。また、上記磁性体層はコイルパターン20の金属筐体と対面する面とは反対側である裏面側にのみ設けられていてもよいし、磁性体層が無くてもよい。
【0029】
コイルパターン20の両端には給電回路および共振周波数調整用の並列キャパシタが接続されている。なお、共振周波数調整用のキャパシタはコイルパターン20に対して直列に接続されていてもよいし、共振周波数調整用のキャパシタが無くてもよい。
【0030】
図2において、コイルパターン20の外形寸法は25×25mm、内形寸法は約13×13mmである。ライン&スペース(L/S)は400μm/200μm、ターン数は10である。また、移動体通信端末の筐体内に組み込んだ状態(下部金属筐体92に対面した状態)での共振周波数が13.56MHzとなるように、上記並列キャパシタの容量を定める。
【0031】
開口部30の寸法は27.1×27.1mmであり、この開口部30に平面コイルアンテナが対向する。線条部11およびスリット31の幅はそれぞれ0.5mmである。
【0032】
図3(A)は線条パターン10の構造を示す図である。
図3(B)(C)は線条パターン10およびその近傍に流れる電流と平面コイルアンテナのコイルパターンに流れる電流との関係を示す図である。
【0033】
図3(B)において、矢印はコイルパターン20に流れる電流ic1,ic2,ic3,ic4の方向の例である。
図3(C)において、電流ih11はコイルパターン20に流れる電流ic2により発生される磁界を介して誘導される電流、電流ih12は上記電流ih11とともにループを形成する電流である。同様に、電流ih21はコイルパターン20に流れる電流ic4により発生される磁界を介して誘導される電流、電流ih22は上記電流ih21とともにループを形成する電流である。電流iv1は、コイルパターン20に流れる電流ic1により発生される磁界を介して誘導される電流、電流iv2は、コイルパターン20に流れる電流ic3により発生される磁界を介して誘導される電流である。
【0034】
平面コイルアンテナのコイルパターン20の巻回幅Wcは、線条部11(
図2参照)の2本分の線幅と線間距離との合計値よりも大きい。
【0035】
このように、線条部の延伸方向には電流が誘導されるが、線幅方向(線条部の延伸方向と直交する方向)にはスリットによって電流経路が遮断されるので、電流は殆ど流れない。下部金属筐体92に流れる電流ih12,ih22は、コイルパターン20に流れる電流ic2,ic4と同方向である。そのため、下部金属筐体92の開口部30(
図2参照)の内縁を周回する電流で平面コイルアンテナによる磁界が渦電流で完全に打ち消されることはなく、平面コイルアンテナの磁界は下部金属筐体92を透過的に抜けて、通信相手のアンテナと結合する。
【0036】
図4(A)(B)は第1の実施形態の比較例としての移動体通信端末のアンテナ部の平面図である。
図4(A)は、下部金属筐体92に開口部もスリットも形成されていない例、
図4(B)は、下部金属筐体92の、平面コイルアンテナが対向する位置に開口部が形成されている例である。平面コイルアンテナの構成はいずれも
図2に示したものと同じである。
【0037】
図5は、
図2に示した第1の実施形態のアンテナ部、および
図4(A)(B)に示した比較例のアンテナ部の特性を示す図である。
図5において縦軸は通信相手側アンテナとの結合係数である。通信相手側アンテナはリーダ・ライタ用のφ70mmのループアンテナである。アンテナ間の距離は25mmである。
【0038】
図5において(0A)(0B) は
図4(A)(B)に示した各アンテナ部の特性であり、(1) は
図2に示した第1の実施形態のアンテナ部の特性である。
図4(A)に示したように、下部金属筐体92に開口部もスリットも形成されていないと結合係数は0.0003と極めて小さく、アンテナとして機能しない。
図4(B)に示したように、下部金属筐体92の、平面コイルアンテナが対向する位置に開口部が形成されていると、結合係数は0.019となり、通信相手側アンテナと強く結合する。
図2に示した第1の実施形態に係るアンテナ部であれば、結合係数は0.0158となり、通信相手側アンテナと充分結合する。
【0039】
本実施形態によれば、開口部30のスリット総面積が
図4(B)に示した開口の面積の約1/2であるにも拘わらず比較的大きな結合係数が得られる。また、開口部30の実質的な開口面積が小さいので、開口部30を設けたことによる下部筐体の機械的強度の低下は少ない。さらに、金属筐体に幅0.5mm程度のスリットが形成されるだけであるので、通常の使用状態では視認し難く、外観デザイン上の制約を受けない。そのうえ、金属筐体の開口部でのシールド効果も確保できる。
【0040】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、線条パターンが第1の実施形態とは異なる例を示す。
【0041】
図6(A)は線条パターン10の構造を示す図である。
図6(B)(C)は線条パターン10およびその近傍に流れる電流と平面コイルアンテナのコイルパターンに流れる電流との関係を示す図である。
【0042】
本実施形態において、複数の線条部を有するミアンダライン状の線条パターン10が開口部30に形成されている。線条パターン10は下部金属筐体92の一部である。すなわち、線条パターン10の両端は開口部30の互いに対向する2つの辺に繋がっている。そのため、線条パターン10の延伸方向に誘導された電流は線条パターン10の折り返し部で折り返すため、平面コイルアンテナにより発生される磁界を打ち消す磁界は殆ど生じない。また、ミアンダライン状の線条部の線幅方向(線条部の延伸方向と直交する方向)に流れる電流経路が殆ど無いので、線条パターン10には大きな誘導電流が流れない。
【0043】
図6(B)は平面コイルアンテナの平面図である。この平面コイルアンテナの基本構成は第1の実施形態で示したものと同じである。
【0044】
平面コイルアンテナのコイルパターン20の巻回幅Wcは、線条パターン10の線条部の2本分の線幅と線間距離との合計値よりも大きい。
【0045】
図6(B)において、矢印はコイルパターン20に流れる電流ic1,ic2,ic3,ic4の方向の例である。
図6(C)において、電流ip1,ip2,ip3,ip4はコイルパターン20に流れる電流ic1,ic2,ic3,ic4により発生される磁界を介して線条パターン10上に誘導される電流とループを形成する電流である。線条パターン10には電流が誘導されるが、一方向には流れない。すなわち、平面コイルアンテナのコイルパターン20の巻回幅で線条パターン10の線条部は1回以上往復するので、線条パターン10の線条部に流れる電流の方向が互いに逆になる領域が交互に繰り返されることになる。そのため、線条パターン10に流れる電流で発生される磁界は相殺され、開口部30の内部には、平面コイルアンテナにより発生される磁界を打ち消す磁界は殆ど生じない。そのため、平面コイルアンテナの磁界は下部金属筐体92の開口部30を透過的に抜けて、通信相手のアンテナと結合する。
【0046】
図7は、本実施形態に係るアンテナ部の回路図である。
図7において、インダクタL1は平面コイルアンテナのインダクタンスに相当し、キャパシタC1は平面コイルアンテナのキャパシタンスおよび共振周波数調整用に接続したキャパシタの合成容量に相当する。このインダクタL1とキャパシタC1とのLC並列回路に給電回路9が接続される。また、
図7においてインダクタL2は線条パターン10のインダクタンスに相当する。平面コイルアンテナのコイルパターンと線条パターン10とは磁界結合するので、等価的には
図7に示したように表される。したがって、線条パターン10が近接することで、給電回路9から見た共振回路の共振周波数は変位する。キャパシタC1のキャパシタンスは、上記共振回路が所定の周波数(13.56MHz)で共振するように調整される。但し、ミアンダラインパターンにすることにより、給電回路9から平面コイルアンテナ側を視たインダクタンスの低下は抑えられる。そのため、コイルパターン20のターン数を少なくでき、線幅を太くすることもできる。
図8(A)(B)はその例を示す図であり、平面コイルアンテナの平面図である。
【0047】
図8(A)(B)いずれもコイルパターン20のターン数は4である。
図8(A)はコイルパターン20のターン数を減らすことでコイル開口20Aを拡大した例、
図8(B)は、コイル開口20Aを変えず、必要なターン数が減ったことに合わせて、コイルパターン20の線幅を太くした例である。
【0048】
図9は、
図8(A)(B)に示した第2の実施形態のアンテナ部、および
図4(A)(B)に示した比較例のアンテナ部の特性を示す図である。
図9において縦軸は通信相手側アンテナとの結合係数である。測定条件は第1の実施形態で示したものと同じである。
【0049】
図9において(0A)(0B)は
図4(A)(B)に示した各アンテナ部の特性であり、(2A)(2B) は
図8(A)(B)に示した第2の実施形態のアンテナ部の特性である。
【0050】
本実施形態によれば、線条パターンの無い、単なる開口部が形成された比較例(
図4(B))と同等の高い結合係数が得られる。特に、コイルパターンの線幅を太くすることにより、損失が減るため平面コイルアンテナのQ値が向上する。
【0051】
《第3の実施形態》
図10(A)は、第3の実施形態に係る移動体通信端末のアンテナ部における線条パターン10の構造を示す図である。
図10(B)(C)は線条パターン10およびその近傍に流れる電流と平面コイルアンテナのコイルパターンに流れる電流との関係を示す図である。
【0052】
第2の実施形態において
図6(A)に示した例では、線条パターン10の両端が開口部30の1辺に沿った位置で金属筐体92に接続されていたが、本実施形態では、線条パターン10の両端が開口部30の対角位置付近で金属筐体92に接続されている。そのことで、金属筐体92に対する線条パターン10の接続位置が対称位置になり、平面コイルアンテナのコイルパターンに流れる電流を妨げるような誘導電流が線条パターン10に発生し難い。そのため、通信相手側アンテナとの結合係数が高められる。本実施形態に係るアンテナ部の結合係数は、これまでに示した実施形態と同じ条件で0.02である。
【0053】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、線条パターンが第1、第2、第3の実施形態とは更に異なる例を示す。
【0054】
図11(A)は線条パターン10の構造を示す図である。
図11(B)(C)は線条パターン10およびその近傍に流れる電流と平面コイルアンテナのコイルパターンに流れる電流との関係を示す図である。また、
図11(D)は
図11(C)の部分拡大図であり、櫛歯状線条部に流れる電流を示す図である。
【0055】
本実施形態において、線条パターン10は、開口部30に形成された櫛歯状線条パターン13A,13Bで構成されている。櫛歯状線条パターン13A,13Bはそれぞれ、複数の線条部と、これら複数の線条部を接続する部分を有する。櫛歯状線条パターン13A,13Bは線条パターンの1つの例である。櫛歯状線条パターン13A,13Bは櫛歯同士が交互に対向している。櫛歯状線条パターン13A,13Bは下部金属筐体92の一部である。すなわち、櫛歯状線条パターン13A,13Bの各歯の片端は開口部30の内周に繋がっている。
【0056】
図11(B)は平面コイルアンテナの平面図である。この平面コイルアンテナの構成は第2の実施形態で示したものと同じである。
【0057】
平面コイルアンテナのコイルパターン20の巻回幅Wcは、櫛歯状線条部13A,13Bの線条部の2本分の線幅と線間距離との合計値よりも大きい。
【0058】
図11(B)において、矢印はコイルパターン20に流れる電流ic1,ic2,ic3,ic4の方向の例である。
図11(C)において、電流ip1,ip2,ip3,ip4はコイルパターン20に流れる電流ic1,ic2,ic3,ic4により発生される磁界を介して誘導される電流である。
【0059】
図11(D)は、
図11(C)における櫛歯状線条パターンを、線条部の線幅方向に拡大した図である。櫛歯状線条パターン13A,13Bにも電流が誘導されるが、櫛歯状線条パターン13A,13Bの各線条部の縁端に沿って往復する電流が流れる。そのため、線条部に流れる電流で発生される磁界は相殺され、平面コイルアンテナの磁界は下部金属筐体92の開口部30を透過的に抜けて、通信相手のアンテナと結合する。
【0060】
特に、平面コイルアンテナのコイルパターン20の巻回幅で、櫛歯状線条パターン13A,13Bの線条部が複数本対向すれば、櫛歯状線条パターン13A,13Bが平面コイルアンテナのコイルパターン20と結合することにより誘導される電流が互いに相殺される。そのため、平面コイルアンテナの信号電流を打ち消すような誘導電流(渦電流)が下部金属筐体92に流れることが効果的に抑制される。
【0061】
図12は、
図11に示した第4の実施形態のアンテナ部、および
図4(A)(B)に示した比較例のアンテナ部の特性を示す図である。
図12において縦軸は通信相手側アンテナとの結合係数である。測定条件は第1の実施形態で示したものと同じである。
【0062】
図12において(0A)(0B)は
図4(A)(B)に示した各アンテナ部の特性であり、(3A)(3B) は
図11に示した第4の実施形態のアンテナ部の特性である。但し、(3A) は、
図8(A)に示した平面コイルアンテナを用いた場合の特性、(3B) は、
図8(B)に示した平面コイルアンテナを用いた場合の特性である。
【0063】
本実施形態によれば、線条パターンの無い、単なる開口部が形成された比較例(
図4(B))と同等の高い結合係数が得られる。特に、コイルパターンの線幅を太くすることにより、損失が減るため平面コイルアンテナのQ値が向上する。
【0064】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、線条パターン10の縦横寸法を変化させた例について示す。線条パターンはいずれも第1の実施形態と同様のストライプ形状である。
【0065】
図13(A)は、開口部の寸法のうち、線条部の延伸方向(X軸方向)の寸法が、同方向におけるコイルパターン20の外形寸法よりも大きい例である。開口部の線条部の延伸方向の寸法は35mm、その直交方向(Y軸方向)の寸法は26.35mmである。
【0066】
図13(B)は、開口部の寸法のうち、線条部の延伸方向(X軸方向)に対して直交方向の寸法が、同方向におけるコイルパターン20の外形寸法よりも大きい例である。開口部の線条パターンの延伸方向の寸法は27.1mm、その直交方向(Y軸方向)の寸法は35.5mmである。
【0067】
図13(C)(D)は、開口部の寸法のうち、線条部の延伸方向(X軸方向)に対して直交方向の寸法が、同方向におけるコイルパターン20の外形寸法よりも小さい例である。
図13(C)において、開口部の線条部の延伸方向の寸法は27.1mm、その直交方向(Y軸方向)の寸法は19.5mmである。また、
図13(D)において、開口部の線条部の延伸方向の寸法は27.1mm、その直交方向の寸法は12.5mmである。
【0068】
図14は、
図13に示した第5の実施形態のアンテナ部、および
図2に示した第1の実施形態に係るアンテナ部の特性を示す図である。
図14において縦軸は通信相手側アンテナとの結合係数である。測定条件は第1の実施形態で示したものと同じである。
【0069】
図14において(1) は
図2に示したアンテナ部の特性であり、(4A)(4B)(4C)(4D) は
図13(A)(B)(C)(D)に示した第5の実施形態のアンテナ部の特性である。
【0070】
図13(A)に示したように、開口部の寸法のうち、線条部の延伸方向(X軸方向)の寸法が、同方向におけるコイルパターン20の外形寸法よりも大きいと、開口部30の内周縁を周回する誘導電流が効果的に抑制されて、0.0269と高い結合係数が得られる。
図13(B)に示したように、開口部を線条部の延伸方向に対して直交する方向(Y軸方向)へ拡げても結合係数の増大効果はあまりない。
【0071】
図13(C)に示したように、コイルパターン20の巻回幅の半分程度にまで掛かるように開口部が形成されていると結合係数は向上する。この結合係数は第1実施形態で示したアンテナ部の特性より高いので、下部金属筐体92が僅かながら放射体として作用していることになる。また、
図13(D)に示したように、開口部の寸法のうち、線条部の延伸方向に対して直交方向(Y軸方向)の寸法をさらに短くすると、結合係数は再び低下する。これは、金属筺体において平面コイルアンテナに流れる信号電流と同方向に流れる電流が少なくなってしまうためである。
【0072】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、無線通信装置の他の例について示す。
図15は第6の実施形態に係る無線通信装置の例としてのノートパソコンの外観斜視図である。このノートパソコン102は金属筐体90を備え、操作面のうち、特にタッチパッド横のスペースに開口部および線条パターン10が設けられている。線条パターン10には、これまでに示した実施形態と同様に、平面コイルアンテナのコイルパターンが対面配置されている。
【0073】
このようにしてノートパソコンの操作面の一部をNFCのための送受信部として用いることができる。
【0074】
《他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、無線通信装置の金属筐体に線条パターンを設けたが、この線条パターンに、線条パターンを隠すようにデザインした絶縁性のシールを貼付してもよい。
【0075】
以上に示した各実施形態では、装置外部の本体構造材としての金属筐体に線条パターンを設けたが、本発明はこれに限らない。例えば樹脂筐体の内部に本体構造材としての金属シャーシを備える場合に、その金属シャーシに線条パターンを設けてもよい。また、例えば樹脂筐体内に回路基板が収納されている場合に、その回路基板に形成されている、平面状に拡がるグランドパターンに適用してもよい。すなわち、回路基板のグランドパターンの一部に線条パターンを形成し、その線条パターンに平面コイルアンテナを対面配置してもよい。
【0076】
以上に示した各実施形態では、ライン&スペース(L/S)が0.5/0.5mmの線条パターンを形成したが、本発明において「線条パターン」の線幅はコイルパターン20の外形幅の1/5以下であればよい。
【0077】
以上に示した各実施形態では、線条パターンによる開口部の被覆率が約50%であったが、それより低くてもよい。但し、静電シールド効果の点では30%以上であることが好ましい。
【0078】
以上に示した各実施形態では、線条パターンの形状が180°回転対称形またはそれに近似するものの例を示したが、非対称であってもよい。例えば、開口部の1辺から一方向にのみ突出する櫛歯状のパターンであってもよい。
【0079】
以上に示した各実施形態では、線条パターン10の線条パターンは、金属筐体などの面状導体と一体である例を示したが、線条パターン10を別体で形成し、金属筐体などの面状導体の開口に貼付してもよい。
【0080】
以上の各実施形態で示した線条パターンおよび平面コイルアンテナによるアンテナ部は、例えばRFIDアンテナに適用した場合、タグ用アンテナとして用いることもできる。また、リーダ/ライタ用アンテナとして利用することもできる。
【0081】
以上の各実施形態では、互いに平行な複数の線条部を有する線条パターンを設けた例を示したが、複数の線条部の互いの関係は正確に平行でなくてもよい。本発明における「平行」の意味は、既に述べた作用効果を奏する範囲で、複数の線条部が互いに「略平行」である場合も含む。
開口部(30)を有する面状導体である下部金属筐体(92)と、開口部(30)に対面配置され、コイルパターン(20)およびコイル開口を有する平面コイルアンテナと、を備えた無線通信装置であり、開口部(30)に、互いに平行な複数の線条部を有し、一部が開口部(30)の周囲で下部金属筐体(92)に接続された線条パターン(10)が設けられている。これにより、開口部における開口面積が大きくなるのを抑制しながらも、十分な通信特性を得る。