特許第5790908号(P5790908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テンパール工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000002
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000003
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000004
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000005
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000006
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000007
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000008
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000009
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000010
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000011
  • 特許5790908-回路遮断器の瞬時引外し装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790908
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】回路遮断器の瞬時引外し装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 71/74 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   H01H71/74
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-15834(P2009-15834)
(22)【出願日】2009年1月27日
(65)【公開番号】特開2010-176905(P2010-176905A)
(43)【公開日】2010年8月12日
【審査請求日】2012年1月20日
【審判番号】不服2013-23896(P2013-23896/J1)
【審判請求日】2013年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
(72)【発明者】
【氏名】毎熊 健造
【合議体】
【審判長】 冨岡 和人
【審判官】 島田 信一
【審判官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−69771(JP,U)
【文献】 実開平1−83244(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H71/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路に発生した過電流を検出し,瞬時引外し特性を有する瞬時引外し装置を備えた多極回路遮断器において,
各極毎の瞬時引外し装置を構成する可動鉄片と連動して開閉機構を動作させるよう作用する作用部材の作用片自体を,開閉機構への作用方向に対して予め折り曲げて構成し,
開閉機構と作用片との間隙を調整する時には,折り曲げて構成した作用片自体の曲げを作用方向に沿う方向に曲げ戻すことにより,間隙を調整する間隙調整手段を設けたことを特徴とする回路遮断器の瞬時引外し装置。
【請求項2】
前記間隙調整手段における折り曲げ部分は,曲げ部を複数有して略くの字状に形成され,略くの字状の曲げ部の曲げ戻しによって延びる方向が作用方向に沿う方向に一致することを特徴とする請求項1記載の瞬時引外し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,配線用遮断器や漏電遮断器などの回路遮断器の瞬時引外し装置に関するものである。特に,瞬時引外し装置が開閉機構部に作用して引外し動作を行わせる場合の,該瞬時引外し装置の作用のし具合を,当初の設計値に近づけるよう調整可能な瞬時引外し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器の瞬時引外し装置は,回路遮断器に短絡などの異常電流が流れた場合に,電流による電磁誘導を利用して瞬時動作を行い,接点装置を開極するよう開閉機構部に作用するものである。
【0003】
一般的に,瞬時引外し装置は固定子と可動子とで構成され,可動子は,電磁誘導により固定子に吸引される可動鉄片と,他の部材に当接作用する作用片を備えた作用部材とから構成される。なお,可動鉄片と作用片とは1つの部品で構成される場合と,別々の部品を固着することで構成される場合とがある。
【0004】
固定子と可動鉄片には,鉄など磁性体の材料を用いる。固定子と可動鉄片の配置は,回路遮断器の主回路に流れる電流の周りに発生する磁界により電磁石となって引き付け合うような位置関係となるよう配置する。
【0005】
具体的には,固定子は筐体に固着され,可動子は固定子に対し軸支回転や並進移動など適宜吸引動作されるよう配置される。固定子と可動鉄片の間には予め間隙を設けてあり,回路遮断器が設置された電路に異常のない状態では前記間隙が保持されるよう,ばねなどの付勢部材により,前記間隙を保持している。
【0006】
回路遮断器が設置された電路に短絡などの異常電流が流れた場合,可動子は,付勢部材による付勢力に抗して固定子に吸引され,作用片が開閉機構部の作動板に作用する。作動板には,開閉機構部を所定の状態(オン状態,オフ状態)に保持せしめるよう開閉機構部と係合するラッチ部を形成する係合片が固着されている。このラッチ部における係合が,可動子の作動板への作用により作動板の変移とともに係合片が軸支回転や並進移動などして外れた場合には,開閉機構部が接点装置を開極させ,回路遮断器は短絡などの異常電流を遮断することができる。
【0007】
さて,前記係合片の係合が外れるためには,前述した係合片が一定量以上の軸支回転や並進移動などをする必要がある。即ち,係合片が固着されている作動板が一定量以上の軸支回転や,並進移動などをする必要があり,前記可動子は作動板に対して作用するにあたり,一定量以上の作用をする必要がある。そして,可動子の作動板への必要な作用量は,前記固定子と可動鉄片の間隙の大きさ,作動板と可動子の位置関係,係合量の長さなどで決定される。
【0008】
このような瞬時引外し装置においては,一般的に固定子が可動子をひきつける吸引力は,間隙の自乗に反比例する関係であり,回路遮断器における引外し電流を選定するにあたっては,間隙の大きさが個々の製品に応じてばらつきにくくなるよう設計が行われている。
【0009】
しかしながら,間隙の大きさに関与する部品は,一般的に,固定子,可動鉄片,可動鉄片の軸支部の3部品程度と少ないため,間隙の大きさを決定する寸法のばらつきの積上げも少なくできる。したがって,間隙の大きさのばらつきを小さくすることは比較的容易である。
【0010】
また,前述した係合の大きさについては,瞬時引き外し性能だけでなく,長限時引き外し性能,漏電引き外し性能などの引き外し性能や,回路遮断器が振動や衝撃などに耐えて閉路状態を保持する性能に大きく影響するため,やはり,ばらつきにくくなるよう設計しなければならない。そして,係合の大きさに関与する部品は,一般的に,作動板,係合片,それらを軸支する軸受部材(主軸受)の3部品程度と少ないため,係合の長さを決定する寸法のばらつきの積上げも少なくできる。したがって,係合の長さのばらつきを小さくすることは比較的容易である。
【0011】
また,作動板と可動子の位置関係は,瞬時引き外し性能に大きく影響するため,ばらつきにくいよう設計することが望ましいが,作動板と可動子の位置関係に関与する部品は,それらが別個に,回路遮断器の筐体に配設されることから,前述の部品の寸法のばらつきの積み上げが,5〜9部品程度の多くの部品の積み上げになり,作動板と可動子の位置関係のばらつきを小さくすることが容易ではない。そして,これらの位置関係のばらつきにより作動板と可動子の間隔が大きくなり過ぎると,可動子の作動板への作用のし具合が不十分で,係合が外れずに,最悪の場合,開閉機構部が駆動できないために接点装置が開極されず,瞬時引き外し性能を満足できない場合が予想されるため,設計値の公差範囲から外れているような場合には,製造工程において関係する部品の交換や,部品そのものに対して曲げ加工を行い,作動板と可動子の位置関係を設計値に近づけるよう修正する必要があった。
【0012】
そして,部品の交換などにより作動板と可動子の位置関係を修正する場合は,交換後の部品の組み合わせにより位置関係が適切か否か確実性に乏しい上,交換,確認に要する工数が多くなり製造コストが高くなる。
【0013】
また,部品そのものに対して曲げ加工を行い,作動板と可動子の位置関係を修正する場合,可動子側を曲げ加工する方法が確実性は高い。これは,一般的に作動板は樹脂などの絶縁材料で形成されることが多く,弾性を有するため,一旦曲げ加工を行っても復元する可能性があるからである。
【0014】
このため,実際には可動子を曲げ加工することになる。この場合,可動子が筐体に取り付けられたまま,可動子そのものを作動板方向に曲げ加工するため,曲げ加工には比較的大きな力が必要になる。また,回路遮断器または可動子の意図しない部分が変形などしないよう配慮する必要がある。
【0015】
したがって,瞬時引外し装置を回路遮断器へ取り付けた状態で可動子を曲げ加工する場合には,専用の曲げ加工治具を用意して,不用意な変形を回避する必要があるが,一般的に可動子の周辺には空間が少ないため,この狭い空間で回路遮断器または可動子の意図しない部分が変形などしないような曲げ加工治具を製作することは困難であることが多い。
【0016】
また,瞬時引外し装置を回路遮断器から取り外した状態で曲げ加工を行うことは比較的容易であるが,瞬時引外し装置の取り外しと取り付けの工数が余分にかかり,また,取り外しと取り付け作業自体において,ねじを外して締め直すことにより取り付け位置のばらつきが生ずることがあるため,正確な調整に対する不確定性が残り,総じて製造コストが高くなる要因となる。
【0017】
このように,作動板と可動子の位置関係を当初の設計値に近づけるよう回路遮断器へ取り付けた状態で可動子を曲げ加工する場合であっても,回路遮断器から取外した状態で曲げ加工する場合であっても,曲げ加工の際に誤って必要以上に曲げ過ぎた場合は,回路遮断器に電流が流れていない状態であっても可動子が作動板に常時作用してしまい接点装置の閉操作ができなくなってしまう場合がある。この場合,再度,可動子を曲げ戻す加工を行わなければならず,製造コストがさらに高くなる。
【0018】
さて,可動子そのものに対して曲げ加工する例を挙げたが,その他の調整例として,特許文献1及び特許文献2を示した。特許文献1には,図1に示したように,動作電流を調整するダイヤル式の引外し電流調整機構の開示がなされている。ダイヤルを回すことにより,各極に渡された回動軸が回転し,回動軸に軸支されたインスタントバーを介して,アーマチュアを駆動させ,ヨークとアーマチュアとのギャップを変化させるものである。
【0019】
また,特許文献2には,図1に示したように,過電流引外し装置に組み込まれたダイヤル式の時延引外し電流の調整機構の開示がなされている。ダイヤルを回すことにより,各極に渡って軸支されたクロスバーの操作片に形成された軸方向に傾斜する斜面を,軸方向に移動させることにより,バイメタルと操作片とのギャップを変化させるものである。
【0020】
このように,特許文献1及び特許文献2は,いずれも,製品出荷後においても引外し電流の調整を筐体の外側から行うことができるように構成された回路遮断器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平4−212232号公報 図4
【特許文献2】特開平9−298025号公報 図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
このように,従来の回路遮断器の瞬時引き外し装置にあっては,以上のように,製造後において,作動板と可動子の位置関係を修正するためには,可動子そのものを作動板方向に曲げ加工するから,場合によっては不用意な力がかかり,回路遮断器または可動子の意図しない部分が変形してしまうことがあり,また,多くの工数を要し,製造コストが高くなるという問題があった。
【0023】
また,特許文献1及び特許文献2においては,回路遮断器の各極に対して個別に調整を行うことができないから,特定の極だけを調整することができ,また,調整のための構造が複雑となり,コストが高くなるという課題があった。
【0024】
そこで本件の発明の目的とするところは,引外し電流の大きさを変えることなく,各極独立して可動子と作動板とのギャップを当初の設計値に近づけるよう調整作業を行えながらも,製造コストを低くできるとともに,専用の曲げ加工治具が不要で,回路遮断器へ取り付けた状態で曲げ加工しても回路遮断器または可動子の意図しない部分の変形などがなく,しかも,曲げの量が一定量以下にでき,誤って必要以上に調整しすぎることのない瞬時引外し装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述の目的を達成するために,本発明の請求項1では,電路に発生した過電流を検出し,瞬時引外し特性を有する瞬時引外し装置を備えた多極回路遮断器において,各極毎の瞬時引外し装置を構成する可動鉄片と連動して開閉機構を動作させるよう作用する作用部材の作用片自体を,開閉機構への作用方向に対して予め折り曲げて構成し,該開閉機構と作用片との間隙を調整する時には,折り曲げて構成した作用片自体の曲げを作用方向に沿う方向に曲げ戻すことにより,間隙を調整する間隙調整手段を設けたことを特徴として回路遮断器の瞬時引外し装置を提供したものである。
【0026】
これにより,瞬時引外し装置における固定子と可動鉄片との間隙は変化しないから,引外し電流の大きさは変わらず,各極独立して可動子と作動板とのギャップの調整作業を行えながらも,製造コストを低くできるとともに,専用の曲げ加工治具が不要で,回路遮断器へ取り付けた状態で曲げ加工しても回路遮断器または可動子の意図しない部分の変形などがなく,しかも,曲げの量が一定量以下にでき,誤って必要以上に調整しすぎることのない瞬時引外し装置を得ることができる。
【0027】
調整には一般的なペンチなどの工具を用いることができ,専用の曲げ加工治具が不要で,回路遮断器へ取り付けた状態で曲げ加工しても回路遮断器または可動子の意図しない部分の変形などがなく,しかも,曲げの量が一定量以下にでき,誤って必要以上に調整しすぎることのない瞬時引外し装置を得ることができる。
【0028】
また,請求項2による瞬時引外し装置は,前記間隙調整手段における折り曲げ部分は,曲げ部を複数有して略くの字状に形成され,略くの字状の曲げ部の曲げ戻しによって延びる方向が作用方向に沿う方向に一致することを特徴として,請求項1記載の回路遮断器の瞬時引外し装置を提供したものである。
これにより,調整が必要と見込まれる調整可能量を確保する時に,作用片を一方向に折り曲げて該作用片を構成する場合と比較して,曲げ部を複数有して略くの字状に形成した場合には,該作用片が占める空間を低減させることができ,省スペース化を行いながら瞬時引外し装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
引外し電流の大きさを変えることなく,各極独立して可動子と作動板とのギャップを当初の設計値に近づけるよう調整作業を行えながらも,製造コストを低くできるとともに,専用の曲げ加工治具が不要で,回路遮断器へ取り付けた状態で曲げ加工しても回路遮断器または可動子の意図しない部分の変形などがなく,しかも,曲げの量が一定量以下にでき,誤って必要以上に調整しすぎることのない瞬時引外し装置を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の瞬時引外し装置を適用した回路遮断器のカバーを開けた状態の斜視図。
図2】初期の間隙の状態を示した図。
図3】作用片が作動板に当接した時の状態を示した図。
図4】係合部のラッチが外れた時の状態を示した図。
図5】実施例1の作用部材の拡大図。
図6】作用片を最大まで曲げ戻した場合の図。
図7】作用片の初期状態と曲げ戻した場合の比較図。
図8】実施例2の作用部材の拡大図。
図9】作用片の初期状態と曲げ戻した場合の比較図。
図10従来の例を示した図。
図11】従来の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下,本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0032】
図1は,本発明の瞬時引外し装置を回路遮断器に適用した場合の実施例を示すもので,各極毎に瞬時引外し装置を備えた多極回路遮断器100の筐体を構成するカバーを取り外した場合の斜視図である。
【0033】
回路遮断器100の瞬時引外し装置110以外の部分は,一般的な瞬時引外し装置を備えた回路遮断器と同等のものである。即ち,操作ハンドル101をオン,オフ操作することによって,該操作ハンドルとリンク機構などにより接続された開閉機構部102が連動して駆動され,さらに該開閉機構部102に接続された接点装置103が連動して駆動されて,電路を開閉するものである。また,電路に過電流が発生した場合には,回路遮断器に備えられた過電流引外し装置110によって過電流を検出し,過電流の大きさによって,時延引外し,もしくは瞬時引外しを行うよう該過電流引外し装置110の作用部が開閉機構部102を引外し動作し,自動的に電路を遮断する。
【0034】
過電流引外し装置には,熱動電磁形と完全電磁形などがあり,本実施例では熱動電磁形の過電流引外し装置110を示している。そして,熱動電磁形の過電流引外し装置110においては,電路に過電流が発生した場合には,該過電流の大きさによって,短絡電流などの異常電流が発生した場合には,固定子となる電磁枠と,該電磁枠に吸引される可動子となる可動鉄片を筐体内の電路を囲むように設けて,短絡電流に起因する電磁誘導により駆動する電磁式の短絡電流検出部により該異常電流を検出して瞬時引外し動作を行い,短絡電流よりも小さな過電流が発生した場合には,バイメタルなどの熱動素子を用いて熱動式の検出部により過電流を検出して時延引外し動作を行うものである。
【0035】
接点装置103は,一端に接点が設けられた可動接触子1031と,該可動接触子1031と対向配置されて,同じく一端に接点が設けられた固定接触子1032とを備えている。このうち,固定接触子1032は回路遮断器100のケース側に配設され,可動接触子1031は開閉機構部102に備えられるクロスバー104に装着されて,該クロスバー104が,前記操作ハンドル101の操作に連動して回動することにより,接点装置103が開閉駆動される。
【0036】
過電流引外し装置110の開閉機構部102への作用は,前述したように,開閉機構部に設けられた作動板に対して行われる。本実施例の場合,図2に示したように,作動板105は,開閉機構部102を構成する主軸受1021に軸支されて,一定量回動自在に保持されている。また,作動板105には,開閉機構部を所定の状態(オン状態,オフ状態)に保持せしめるよう開閉機構の一部と係合するようラッチ部が形成された係合片1051が固着されている。このラッチ部における開閉機構部側の係合が,過電流引外し装置110の作用片が作動板に作用することにより作動板が変移していき,作動板の変移とともに係合片が軸支回転や並進移動などして係合が外れた場合には,開閉機構部が接点装置103を開極させ,回路遮断器100は電路を遮断するよう動作する。
【0037】
さて,過電流引外し装置110における作動板への作用は,時延引外しの場合には,熱動素子であるバイメタルに設けられた作用部により行われ,瞬時引外しの場合には,電磁式の引外し機構に備えられる可動子のうち作用部材に設けられた作用片により行われる。
【0038】
作用部材の拡大図を図5に示した。本実施例の場合,作用部材1111は,非磁性体で形成されており,一端には,作用片1111aが設けられている。また,可動鉄片の取付け用孔部1111bが設けられており,可動鉄片1112がカシメにより取付けられる。また,略中央部には,作用部材を,固定子である電磁枠1113に回動自在に軸支するための孔部1111cが設けられている。電磁枠1113は磁性体で形成されているから,短絡電流などの異常電流が発生した場合には,電磁誘導により,可動子が固定子に引き付けられて,作用部材が図2中反時計回りに回転し,作用片1111aが作動板105に当接作用する。
【0039】
作用部材1111における作用片1111aには,作動板105と作用片1111aとの間隙を調整するための間隙調整手段を設けている。該間隙調整手段として,作用片の一部を作用方向に対して予め折り曲げて構成し,調整時には,折り曲げ部を作用方向に沿う方向に曲げ戻すことにより,前記間隙を調整可能としている。最大まで曲げ戻した場合の状態を図6に示した。最大まで曲げ戻した場合には,作用片は作用方向にまっすぐに伸びた状態となる。設計時においては,この調整前の状態で十分に作用量が確保できるよう設計するとよい。
【0040】
このような調整にあたっては,可動子と固定子との間隙を変化させずに行うことができる。即ち,可動子と固定子との間隙は,瞬時引外し装置の駆動が電磁誘導により行われることから,瞬時引外し装置を備えた回路遮断器における所定の瞬時引外し特性と密接に関係しており,瞬時引外し電流の下限値を変化させることなく調整を行うことが可能となるものである。
【0041】
可動子と固定子との間隙に着目すると,図2に示したように,過電流引外し装置110が動作していない初期状態の間隙G1,図3に示したように,電路に異常電流が発生した場合に過電流引外し装置110が駆動し,作動板105に作用片が当接した場合の間隙G2,及び図4に示したように,さらに過電流引外し装置が駆動し,作動板105を押圧し,開閉機構のラッチが外れた時の間隙G3,の寸法関係を,設計時の理想値に近づけながら作動板105と作用片1111aとの間隙を調整することができる。
【0042】
図5ならびに図6に示したように,作用片の作動板と当接する先端が「折り曲げ」状態から「曲げ戻し」状態に変移する量に比べて,作用部材1111が作動板105に作用する方向に変移する量は非常に小さいものとなる(図7)。
【0043】
実際に,作用片1111aの作動板と当接する先端が,「折り曲げ」状態から「曲げ戻し」状態に変移するまでの振れ幅,また,逆方向への振れ幅の量は,例えば8mm程度とした場合,作用部材1111が作動板105に作用する方向に変移する量,即ち,間隙の調整量は,0.5mm程度と,相対的に,1:0.06程度の比率で調整することができる。
【0044】
このため,調整作業にあたっては,ペンチなどの先端が細い工具を用いて作用片を挟み,作用部材が作動板方向に回転する方向に曲げ戻すように調整することで,作業を行うことができる。また,曲げ戻し量に対して間隙が変化する量が非常に小さいため,曲げ戻し量に対して間隙が変化する量が1:1である場合に比べて,作業の精密さは要求されず,また,曲げ戻しを最大限に行った場合でも,曲げの量が一定量以下にでき,調整しすぎるということがない。また,各極独立して可動子と作動版との間隙の調整作業を行え,製造時のばらつきをより細かく調整することができる。
【0045】
また,予め,作用片の一部を作用方向に対して折り曲げて構成しているため,作業者にとっては,その場所を用いて調整を行えばよいということが分かりやすく,不用意に他の場所を折り曲げる可能性を未然に低減することができるという効果がある。また,回路遮断器に過電流引外し装置を取り付けた状態で調整作業を行った場合でも,回路遮断器または可動子の意図しない部分の変形などがなく,折り曲げ加工という簡単な構造であること,調整が容易であることと相まって,製造コストを低減できるという効果がある。
【実施例2】
【0046】
次に,実施例2について説明を行う。
図8に,実施例2に係わる作用部材の拡大図を示した。本実施例については,固定子との組み付け構造や,可動子の組み付け構造は実施例1と同様である。本実施例においては,作用片1111dに設けた調整手段の折り曲げ構造を,曲げ部を複数有して略くの字状に形成したものである。
【0047】
調整時には,略くの字状の部分を,実施例1と同じく,ペンチなどの先端で挟み,くの字状の部分を延ばして調整する。
【0048】
この構造における特徴は,調整が必要と見込まれる調整可能量を確保する時に,作用片を一方向に折り曲げて該作用片を構成する場合と比較して,作用片が占める空間を低減させることができることにある。このため,実施例1の効果に加えて,回路遮断器の筐体の中における限られたスペース有効に利用できる瞬時引外し装置を提供することができる。
【0049】
削除
【0050】
削除
【実施例3】
【0051】
次に,実施例3について説明を行う。実施例3は,完全電磁形の過電流引外し装置における可動鉄片に本発明の間隙調整手段を設けた例である。
【0052】
完全電磁形の過電流引外し装置は,時延引外しの構成要素として,コイル内部にオイルダッシュポットを備えた電磁石を用いたものである。ダッシュポットの内部には,弾性部材により一方向に付勢させされた鉄心が備えられている。また,コイルの長さ方向には,固定子となる電磁枠が装着され,コイルの一方の開放端には,ダッシュポットの端部と対向するように,前記電磁枠に軸支された可動鉄片が備えられている。可動鉄片は,電磁石の駆動時に,ダッシュポットに吸引されるよう動作する。
【0053】
可動鉄片は,その外形が略Lの字形状に形成されており,ダッシュポットに吸引される側の端部とは,反対側の端部が作動板に作用するよう構成されている。端部は,作動板と所定の間隙を設けて配置されており,この作動板に作用する端部に,実施例1と同様に,調整手段を設けている。調整手段は,前記端部の一部を可動鉄片の作動板への作用方向に対して予め折り曲げて構成しており,調整時には,折り曲げ部を作用方向に沿う方向に曲げ戻すことにより,前記間隙を調整するものである。
【0054】
調整作業にあたっては,ペンチなどの先端が細い工具を用いて作用片を挟み,作用部材が作動板方向に回転する方向に曲げ戻すように調整することで,作業を行うことができる。
【0055】
削除
【0056】
削除
【0057】
また,実施例3は,実施例1,実施例2と同じく,曲げ戻し量に対して間隙が変化する量が非常に小さいため,曲げ戻し量に対して間隙が変化する量が1:1である場合に比べて,作業の精密さは要求されず,また,曲げ戻しを最大限に行った場合でも,曲げの量が一定量以下にでき,調整しすぎるということがない。また,各極独立して可動子と作動版との間隙の調整作業を行え,製造時のばらつきをより細かく調整することができる。
【0058】
また,予め,作用片の一部を作用方向に対して折り曲げて構成しているため,作業者にとっては,その場所を用いて調整を行えばよいということが分かりやすく,不用意に他の場所を折り曲げる可能性を未然に低減することができるという効果がある。また,回路遮断器に過電流引外し装置を取り付けた状態で調整作業を行った場合でも,回路遮断器または可動子の意図しない部分の変形などがなく,折り曲げ加工という簡単な構造であること,調整が容易であることと相まって,製造コストを低減できるという効果がある。
【符号の説明】
【0059】
100 回路遮断器
101 操作ハンドル
102 開閉機構部
103 接点装置
104 クロスバー
105 作動板
110 引外し装置
1111 作用部材
1111a 作用片
1111b 孔部
1111c 孔部
1111d 作用片
1111e 作用片
1112 可動鉄片
1102 固定子
1051 係合片
1021 主軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11