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特許5790952生産エネルギー管理システムおよびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790952
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】生産エネルギー管理システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20150917BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20150917BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
   G06Q50/04 100
   G05B23/02 301Z
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-90548(P2013-90548)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-215701(P2014-215701A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2014年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池山 智之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢一
(72)【発明者】
【氏名】関 光
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−313557(JP,A)
【文献】 特開昭63−117814(JP,A)
【文献】 特開2011−248614(JP,A)
【文献】 特開2012−031799(JP,A)
【文献】 特開2013−073584(JP,A)
【文献】 特開2010−250383(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0133270(US,A1)
【文献】 特開2009−271698(JP,A)
【文献】 田中 克知,工場エネルギー操業支援システムの開発 −「見える化」から「エネルギー効率最適操業へ」,計装,日本,(有)工業技術社,2010年 5月 1日,第53巻 第5号,第44−48頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/02
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント内に配置された装置間における生産関連物の入出力に関する流れと、エネルギーの入出力に関する流れとを有向線で表現し、生産関連物およびエネルギーの指標値と前記プラント内で計測される各種計測データとを対応付けた生産・エネルギーフローモデルの定義を受け付ける生産・エネルギーフローモデル定義部と、
前記プラント内から各種計測データを収集するデータ収集部と、
収集された各種計測データと、定義された生産・エネルギーフローモデルとに従って、装置毎のエネルギー演算を行なうエネルギー演算部と、
を備えたことを特徴とする生産エネルギー管理システム。
【請求項2】
前記エネルギー演算は、エネルギー消費量、エネルギーコスト、CO2排出量、エネルギー消費原単位、エネルギー効率、ユーザの設定に係る指標値、これらの組み合わせ、演算された指標値、演算結果または演算結果に基づいて得られた指標値のいずれかを算出することを特徴とする請求項1に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項3】
前記生産・エネルギーフローモデルにおいて、装置を表わすシンボルは、生産関連物の前記装置への入力を示す有効線を接続する原料入力と、生産関連物の前記装置からの出力を示す有向線を接続する製品出力と、エネルギーの前記装置への入力を示す有向線を接続するユーティリティ入力と、エネルギーの前記装置からの出力を示す有向線を接続するユーティリティ出力とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項4】
前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の指標値として、保有熱を含み、エネルギー量として扱うことが可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項5】
前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の入出力に関する流れとして、同一装置における生産関連物の循環を定義可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項6】
前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の一部または全部を燃料として扱う流れとして、前記生産関連物の一部または全部をエネルギー量として定義可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項7】
前記生産・エネルギーフローモデルは、複数の装置をまとめてサブシステムとして定義することで1つの装置として取り扱い可能であり、前記サブシステムは階層化構造を含んでいることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項8】
前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の入出力に関する流れとして、蓄積装置における生産関連物の一時貯蔵を定義可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項9】
前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の入出力に関する流れとして、装置間移動、加工時間、反応時間における生産関連物関連物の時間遅れ、伝達関数、ユーザの定義に係る関数で表現された遅れを定義可能であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項10】
前記エネルギー演算の結果に基づいて、前記生産・エネルギーフローモデルにおける有向線の表示態様を変更するデータ表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項11】
前記装置毎のエネルギー演算結果と、前記エネルギー演算結果との相関に関する評価結果に基づいて抽出した要因との関係式を示すベースライン関数を算出するベースラインモデル演算部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項12】
実際の要因と実際のエネルギー指標値と、前記実際の要因と前記ベースライン関数とに基づいて算出された推定エネルギー指標値とを比較表示するデータ表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項11に記載の生産エネルギー管理システム。
【請求項13】
プラント内に配置された装置間における生産関連物の入出力に関する流れと、エネルギーの入出力に関する流れとを有向線で表現し、生産関連物およびエネルギーの指標値と前記プラント内で計測される各種計測データとを対応付けた生産・エネルギーフローモデルの定義を受け付ける生産・エネルギーフローモデル定義処理と、
前記プラント内から各種計測データを収集するデータ収集処理と、
収集された各種計測データと、定義された生産・エネルギーフローモデルとに従って、装置毎のエネルギー演算を行なうエネルギー演算処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産エネルギー管理システムに関し、特に、連続プロセスに好適な生産エネルギー管理システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントにおけるエネルギーの流れと生産物の流れをモデル化し、計測されたエネルギー使用量、生産量等に基づいてエネルギー使用状況を評価する生産エネルギー管理システムが知られている。生産エネルギー管理システムは、エネルギー消費の現状や改善点等を視覚化する、いわゆる「見える化」を可能とするものであり、工場のエネルギーに関する操業指標を明らかにすることでエネルギー利用の最適化を支援するシステムである。
【0003】
例えば、特許文献1、非特許文献1に記載されている生産エネルギー管理システムは、製造ラインにおけるエネルギー情報と生産情報とを収集し、エネルギー情報と生産情報とをリンクさせることで、製品やロット当たりの消費エネルギー、CO排出量、エネルギーコスト、生産効率、エネルギー原単位等を算出する。なお、エネルギー原単位は、製品の生産に使用したエネルギー消費量を製品の生産量、原料の投入量、中間製品の生産量等で割ることで得られる指標である。
【0004】
ここで、エネルギー情報と生産情報とのリンクは、図14に示すように、プラントにおけるエネルギーの流れをモデル化したエネルギーフローモデルと、装置・機器等(「装置」と総称する)間の生産の流れをモデル化した生産フローモデルとを紐付することで行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−67114号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「工場エネルギー操業支援システムEnerizeE3」横河技術報Vol.53 2010 省エネ特集号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、プラントにおけるプロセスは、その生産方式によってバッチプロセスと連続プロセスとに分けることができる。バッチプロセスは、機械工業プラントのように、次々と一連の操作を加えることにより、主として形のある材料を加工したり組み立てたりして製品を製造する非連続のプロセスである。
【0008】
一方、連続プロセスは、石油生成プラントや化学プラントのように、材料も製品も、主として液体や気体などの流体であり、材料が装置の中に連続的に流れ込み、装置の中を流れる間に連続的に加工され、製品も連続的に装置から流れ出すプロセスである。
【0009】
バッチプロセスでは、装置に供給されて消費されるエネルギーと、各装置における生産物との関係が明確であるのに対し、連続プロセスでは、生産物自体が保有熱という形でエネルギーを有していたり、生産物の一部が装置を循環したり、装置に一時的に蓄積されることがある。さらには、生産物の一部がエネルギーとして用いられることもある。
【0010】
従来の生産エネルギー管理システムは、図14に示したように、エネルギーフローモデルを定義して、装置に投入された電力、蒸気、冷水等のエネルギー量を演算することで消費エネルギーを算出している。また、生産フローモデルを定義して、各装置における生産量を算出している。
【0011】
このようなモデルを用いた算出法は、装置に供給されて消費されるエネルギーと、各装置における生産物との関係が明確なバッチプロセスの評価には適しているが、製品の経路が多様性を有し、また生産物自体のエネルギーを考慮する必要がある連続プロセスの評価には十分とはいえない。
【0012】
そこで、本発明は、連続プロセスに好適な生産エネルギー管理システムおよびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である生産エネルギー管理システムは、プラント内に配置された装置間における生産関連物の入出力に関する流れと、エネルギーの入出力に関する流れとを有向線で表現し、生産関連物およびエネルギーの指標値と前記プラント内で計測される各種計測データとを対応付けた生産・エネルギーフローモデルの定義を受け付ける生産・エネルギーフローモデル定義部と、前記プラント内から各種計測データを収集するデータ収集部と、収集された各種計測データと、定義された生産・エネルギーフローモデルとに従って、装置毎のエネルギー演算を行なうエネルギー演算部と、を備えたことを特徴とする。
ここで、前記エネルギー演算は、エネルギー消費量、エネルギーコスト、CO2排出量、エネルギー消費原単位、エネルギー効率、ユーザの設定に係る指標値、これらの組み合わせ、演算された指標値、演算結果または演算結果に基づいて得られた指標値のいずれかを算出することができる。
また、前記生産・エネルギーフローモデルにおいて、装置を表わすシンボルは、生産関連物の前記装置への入力を示す有効線を接続する原料入力と、生産関連物の前記装置からの出力を示す有向線を接続する製品出力と、エネルギーの前記装置への入力を示す有向線を接続するユーティリティ入力と、エネルギーの前記装置からの出力を示す有向線を接続するユーティリティ出力とを備えることができる。
また、前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の指標値として、保有熱を含み、エネルギー量として扱うことが可能とすることができる。
また、前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の入出力に関する流れとして、同一装置における生産関連物の循環を定義可能とすることができる。
また、前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の一部または全部を燃料として扱う流れとして、前記生産関連物の一部または全部をエネルギー量として定義可能とすることができる。
また、前記生産・エネルギーフローモデルは、複数の装置をまとめてサブシステムとして定義することで1つの装置として取り扱い可能であり、前記サブシステムは階層化構造を含めることができる。
また、前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の入出力に関する流れとして、蓄積装置における生産関連物の一時貯蔵を定義可能とすることができる。
また、前記生産・エネルギーフローモデルは、生産関連物の入出力に関する流れとして、装置間移動、加工時間、反応時間における生産関連物関連物の時間遅れ、伝達関数、ユーザの定義に係る関数で表現された遅れを定義可能とすることができる。
また、前記エネルギー演算の結果に基づいて、前記生産・エネルギーフローモデルにおける有向線の表示態様を変更するデータ表示部をさらに備えるようにしてもよい。
また、前記装置毎のエネルギー演算結果と、前記エネルギー演算結果との相関に関する評価結果に基づいて抽出した要因との関係式を示すベースライン関数を算出するベースラインモデル演算部をさらに備えることができる。
このとき、実際の要因と実際のエネルギー指標値と、前記実際の要因と前記ベースライン関数とに基づいて算出された推定エネルギー指標値とを比較表示するデータ表示部をさらに備えるようにしてもよい。
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様であるコンピュータプログラムは、プラント内に配置された装置間における生産関連物の入出力に関する流れと、エネルギーの入出力に関する流れとを有向線で表現し、生産関連物およびエネルギーの指標値と前記プラント内で計測される各種計測データとを対応付けた生産・エネルギーフローモデルの定義を受け付ける生産・エネルギーフローモデル定義処理と、前記プラント内から各種計測データを収集するデータ収集処理と、収集された各種計測データと、定義された生産・エネルギーフローモデルとに従って、装置毎のエネルギー演算を行なうエネルギー演算処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。

【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、連続プロセスに好適な生産エネルギー管理システムおよびコンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る生産エネルギー管理システムの構成を示すブロック図。
図2】本実施形態の生産エネルギー管理システムの動作の概要について説明するフローチャート。
図3】生産・エネルギーフローモデルにおける装置のシンボルを説明する図。
図4】装置に接続される有向線を説明する図。
図5】生産・エネルギーフローモデルの例を示す図。
図6】生産・エネルギーフローモデルの階層構造の例を示す図。
図7】エネルギー関連計算の詳細について説明するフローチャート。
図8】通常の装置のエネルギー関連計算を説明する図。
図9】備蓄装置のエネルギー関連計算を説明する図。
図10】循環する系の装置のエネルギー関連計算を説明する図。
図11】循環する系の装置のエネルギー関連計算の具体例を説明する図。
図12】生産・エネルギーフローモデルに演算結果を表示した例を示す図。
図13】ベースラインの表示例を示す図。
図14】従来の生産エネルギー管理システムにおけるエネルギーフローモデルと生産フローモデルとを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る生産エネルギー管理システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態では、生産エネルギー管理システム100は、連続プロセスのプラント300を対象にエネルギー操業の支援を行なうものとする。連続プロセスのプラント300は、複数台の装置や機器等を含んだ装置群310と、流量計、電力計、温度計等の各種センサ群320を備えている。各種センサ群320は、主として装置群310に付随して配置されている。
【0017】
本図に示すように、生産エネルギー管理システム100は、フィールドデータ収集部110、フィールドデータベース120、生産・エネルギーフローモデル定義部130、生産・エネルギーフローモデルデータベース140、エネルギー演算部150、エネルギー演算結果データベース160、ベースラインモデル演算部170、ベースラインモデルデータベース180、データ表示部190を備えている。
【0018】
生産エネルギー管理システム100は、例えば、コンピュータプログラムに従って動作を行なう1台あるいは複数台のコンピュータと外部記憶装置・モニタ・入出力装置等の周辺装置とを用いて構成することができる。
【0019】
フィールドデータ収集部110は、連続プロセスプラント300に配置されている各種センサ群320で計測されたデータを収集して、フィールドデータベース120に格納する。フィールドデータ収集部110が収集する計測データは、エネルギー消費に関係するデータであるが、直接エネルギー量に結びつかない生産量や周辺の温湿度等も含まれる。
【0020】
フィールドデータベース120は、フィールドデータ収集部110によって収集された計測データを格納するデータベースである。各計測データは収集周期毎の時系列にまとめることが望ましい。また、単位変換やインデックス付与等の編集を行なうようにしてもよい。
【0021】
生産・エネルギーフローモデル定義部130は、連続プロセスプラント300の装置群310における材料や製品等の流れとエネルギーの流れとをモデル化した生産・エネルギーフローモデルの定義を受け付ける。生産・エネルギーフローモデルの定義を受け付けの際には、エンジニアやサービス員のモデル定義作業を支援するため、装置の種類やエネルギーの種類等を示す種々のシンボルを用いたグラフィカルなインタフェースを提供することが望ましい。
【0022】
生産・エネルギーフローモデルでは、モデルで定義される材料の量や温度、エネルギー量等の指標値と、それらの指標値の算出に用いる計測データとの対応も定義づけておく。また、モデルで定義される装置の属性に応じたエネルギー消費量算出法、生産量算出法等も定義する。装置の属性としては、例えば、エネルギーや材料が循環する系の装置、複数の材料や複数の製品が連続的に生産される系の装置、製品や材料の一時保管を行なう系の装置等がある。
【0023】
生産・エネルギーフローモデルデータベース140は、グラフィカルなインタフェースによって定義されたモデルをその図形情報とともに格納するデータベースである。
【0024】
エネルギー演算部150は、生産・エネルギーフローモデルデータベース140に格納されたモデルの定義に従って、フィールドデータベース120に格納された計測データを用いてエネルギー演算を行なう。演算結果は、エネルギー演算結果データベース160に格納する。
【0025】
エネルギー演算の項目は、エネルギー消費量、エネルギーコスト、CO排出量、エネルギー消費原単位、エネルギー効率、ユーザの設定に係る指標値、これらの組み合わせ、演算された指標値、演算結果または演算結果に基づいて得られた指標値等とすることができ、工場全体、装置、任意に指定された装置から構成されるサブシステム毎に演算を行なうことができる。エネルギー演算の際には、電気・ガス・重油等のエネルギーソース毎のエネルギー単価、CO2排出係数や、材料の比熱等の演算用パラメータが用いられる。
【0026】
エネルギー演算結果データベース160は、エネルギー演算部150によって算出されたエネルギー演算結果を格納するデータベースである。
【0027】
ベースラインモデル演算部170は、エネルギー演算結果データベースに格納されている演算結果等に基づいて、ベースラインモデルを生成する。生成したベースラインモデルはベースラインモデルデータベース180に格納する。
【0028】
ベースラインモデルは、操作者によって指定された期間におけるエネルギー演算結果から、その期間のエネルギー消費量とエネルギー消費量に影響を与える要因との関係を関数で表わしたものである。この関数をベースライン関数と呼ぶ。
【0029】
ここで、要因は、材料の投入量、温度や湿度等の装置の周辺環境、プラントの運用モード、材料の種類・産地等とすることができ、フィールドデータベースに格納された計測データ以外の情報も用いることができる。このような計測データ以外の情報は、生産・エネルギーフローモデル外情報として取り込むことができる。ベースラインモデルは、装置毎、サブシステム毎等に作成することができる。
【0030】
ベースラインモデルデータベース180は、ベースラインモデル演算部170が生成したベースライン関数を記録するデータベースである。
【0031】
データ表示部190は、エネルギー演算結果データベース160に記録されているエネルギー消費量、エネルギーコスト、CO排出量、エネルギー消費原単位、エネルギー効率等の情報や、ベースラインモデルデータベース180に記録されているベースライン関数に基づく情報等を各種グラフや図表等により表示する。
【0032】
次に、本実施形態の生産エネルギー管理システム100の動作の概要について図2のフローチャートを参照して説明する。生産エネルギー管理システム100の動作は、事前処理(S101)と運用処理(S102〜S107)とに分けることができる。
【0033】
事前処理では、生産・エネルギーフローモデル定義部130を利用して、エネルギー操業支援の対象となるプラントに対応した生産・エネルギーフローモデルを定義する(S101)。なお、エネルギー操業支援の対象となるプラントは、あるプラントの一部であってもよいし、複数のプラントであってもよい。
【0034】
生産・エネルギーフローモデルは、プラントを構成する装置間で、材料・原料・製品・仕掛品等(「生産関連物」と総称する)の流れと、エネルギーの流れを、入出力方向を明らかにした有向線で結んで表現したモデルである。連続プロセスでは、生産関連物がエネルギーとして扱われる場合があるため、生産関連物とエネルギーとを1つのモデルで扱うようにしている。
【0035】
生産・エネルギーフローモデルにおいて、装置は、図3に示すようなシンボルで表わされ、生産関連物の入力を示す有向線を接続する「原料入力」と、生産関連物の出力を示す有向線を接続する「製品出力」と、エネルギーの入力を示す有向線を接続する「ユーティリティ入力」と、エネルギーの出力を示す有向線を接続する「ユーティリティ出力」とを備えている。
【0036】
生産関連物の有向線では、気液混合や気体等の製品状態や材料の種類等で色分けをしたり線種を異ならせることができる。同様に、エネルギーの有向線でも、熱、冷水、電力、その他の種類に応じて色分けをしたり線種を異ならせることができる。
【0037】
例えば、図4に示すように、ある処理装置Xにおいて、材料aと材料bとが入力される場合は、「原料入力」に材料aと材料bの有向線を接続する。なお、材料aの有向線の他端は、材料aを供給する装置の「製品出力」等に接続し、材料bの有向線の他端は、材料bを供給する装置の「製品出力」等に接続する。
【0038】
入力される材料a、材料bには、流量、温度等の情報が付随し、モデル化においては、これらを計測する流量計、温度計等と連続プロセスプラント300内における各種センサ群320との対応付けも行なうようにする。これにより、フィールドデータベース120に格納された計測データを参照するとで、材料aの流量、温度等を把握することができる。
【0039】
また、処理装置Xにおいて、製品Aと製品Bとが出力される場合は、「製品出力」に製品Aと製品Bの有向線を接続する。有向線の他端は、出力先の装置の「原料入力」とすることができる。ただし、出力された製品が、他の装置においてエネルギーとして用いられる場合等は、他の装置の「ユーティリティ入力」に接続する。「製品出力」についても、製品Aと製品Bの流量等と各種センサ群320との対応付けを行なう。
【0040】
処理装置Xにおいて、熱、冷水、電力等のエネルギーが入力される場合は、「ユーティリティ入力」に有向線を接続する。有向線の他端は、エネルギーを供給する装置の「ユーティリティ出力」や原動力設備等とすることができる。入力されるエネルギーについても、流量、温度、電力量等を計測する各種センサ群320との対応付けを行なうようにする。
【0041】
処理装置Xにおいて、廃熱、排水等のエネルギーが出力される場合は、「ユーティリティ出力」に有向線を接続する。有向線の他端は、出力先の装置の「ユーティリティ入力」等とすることができる。出力されるエネルギーについても、流量、温度、電力量等を計測する各種センサ群320との対応付けも行なうようにする。
【0042】
いずれの場合においても、流量、温度等が連続プロセスプラント300内における各種センサ群320で直接計測できない場合は、定数や推定値等を用いるようにしてもよい。このとき、例えば、弁の開度等に基づいて、流量を推定することができる。
【0043】
図5は、複数の装置間が有向線で結ばれた生産・エネルギーフローモデルの例を示している。生産・エネルギーフローモデルでは、いくつかの装置をまとめてサブシステムとして定義し、1つの装置として扱えるようになっている。
【0044】
さらに、生産・エネルギーフローモデルでは、サブシステムごとに階層構造で管理することができるようになっている。一般に、石油生成プラント等の大規模プラントは、いくつかのプラントが集まって構成され、それぞれのプラントはいくつかの装置が集まって構成されている。これをフラットな生産・エネルギーフローモデルで表現しようとすると、石油生成プラント全体では、管理対象とすべき装置の数が膨大になってしまう。この煩雑さを解消するため、生産・エネルギーフローモデルは階層化することができるようになっている。
【0045】
図6に示した生産・エネルギーフローモデルの階層化の例では、石油生成プラント全体を、ユーティリティと製造プラントの2つに分け、製造プラントの中をさらに、常圧蒸留装置、脱硫装置、改質装置等の各種装置に分け、さらに各装置の中を機器で分けることにより階層化を行なっている。
【0046】
図2のフローチャートの説明に戻って、事前処理のモデル定義(S101)を終えると、実際の運用処理を開始する。ただし、モデル定義は、連続プロセスプラント300の構成変更等に応じて、運用処理開始後であっても適宜更新することができる。
【0047】
運用処理では、あらかじめ定められた周期、例えば、1分、10分等で、エネルギー関連計算(S102)を繰り返し行なう。このため、最新のエネルギー関連情報を取得することができ、操業に即座に反映させることができる。
【0048】
石油精製プラント等では、原油タンクの切替が頻繁に行なわれたり、装置の状態、気象などの外部条件が刻々と変化するが、本実施形態の生産エネルギー管理システム100は、最新のエネルギー関連情報を取得できるため、このような連続プロセスプラントの省エネルギー施策に好適である。
【0049】
そして、操作者からエネルギー関連計算結果の表示指示があった場合には(S103:Yes)、エネルギー関連計算結果に基づくエネルギー情報の表示を行なう(S104)。ただし、エネルギー情報の表示は操作者からの指示の有無にかかわらず、例えば、リアルタイムに表示したり、定期的に表示を更新したりしてもよい。
【0050】
また、操作者からベースライン処理の実行指示があった場合(S105:Yes)、は、操作者の指示に基づいてベースラインの計算を行ない(S106)、計算結果に基づくベースライン情報の表示を行なう(S107)。ベースライン処理の実行指示を操作者から受け付ける際には、対象とする装置の指定と、対象とする期間の指定とを併せて受け付けるようにする。
【0051】
次に、運用処理におけるエネルギー関連計算(S102)の詳細について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0052】
エネルギー関連計算(S102)では、まず、エネルギー量、生産量等の計算に必要なフィールドデータの計測値をフィールドデータベース120から読み込む(S201)。
【0053】
エネルギー量、生産量等の計算に必要な計測データとしては、燃料流量、製品流量、製品温度、蒸気流量、蒸気温度、電流、電圧、積算電力量等がある。これらは、生産・エネルギーフローモデルにおいて、各種センサ群320が計測し、フィールドデータベース120に格納されている計測データと装置毎に対応付けられている。
【0054】
フィールドデータを読み込むと、装置毎に、エネルギー量と生産量とを計算する(S202)。ただし、原動力設備のように、装置の種類によっては、エネルギーだけが流れているような場合もある。この場合は、エネルギー量のみを算出すれば足りる。
【0055】
例えば、図8に示すような、材料Aと材料Bとを入力し、燃料Dを加えることにより、製品Cが出力される装置の場合、流量計の計測データ等によって材料A、材料B、製品C、燃料Dの量を算出することができ、燃料Dの量に基づいて装置に加えられるエネルギー量を算出することができる。また、点線で示したように、製品Cの一部である製品C'を燃焼させて、装置に加えられるエネルギー量を算出することも可能である。
【0056】
このとき、製品や材料の保有熱がエネルギー量に影響を与える場合は、製品や材料の保有熱をエネルギー量の演算に用いるようにする。すなわち、製品や材料の量や熱は、生産量の算出のみならず、保有熱としてエネルギー量の算出にも用いることができる。
【0057】
例えば、材料Aの保有熱Haは、材料Aの比熱Sa×材料Aの量×材料Aの比熱Saにより算出することができる。材料Aの比熱Saは、別途用意したプロセスのシミュレータにより得ることができる。シミュレータを用いない場合は、実際の設備の入出力実績からテーブルを作成しておき、比熱Saを推測するようにしてもよい。
【0058】
一般に、石油化学プロセス等の連続プロセスでは、製品や材料に対する加熱工程が多く、前工程において加熱された製品は、次工程でその熱をさらに利用することが多い。また、熱交換・化学反応・分解等、工程毎に中間製品の保有熱量が変わったり、各工程で熱の回収も行なわれる。さらには、製品や不良品を燃料として投入する場合もある。このため、各工程において製品が有する熱量は次工程でのエネルギー収支に影響与え、コストにも影響を与える。本実施形態の生産エネルギー管理システム100では、保有熱としてエネルギー演算に用いることで、連続プロセスに適したモデルを定義できるようになっている。
【0059】
エネルギー量と生産量とを計算すると、エネルギーコストとCO2排出量の計算を行なう(S203)。エネルギーコストは、入力したエネルギー量に、電力、重油、ガス等のそのエネルギーのソース毎に定められたエネルギー単価をかけることで算出される。CO2排出量は、入力したエネルギー量に、そのエネルギーのソース毎に定められたCO2排出係数をかけることで算出される。
【0060】
また、装置におけるエネルギー効率の計算を行なう(S204)。エネルギー効率の計算は、装置に入力されるエネルギー量と有効に使用されて出力されたエネルギー量とから算出する。例えば、図8に示した装置におけるエネルギー効率は、製品Cの保有熱/(材料Aの保有熱+材料Bの保有熱+燃料Dの燃焼熱量)で求めることができる。
【0061】
次に、装置におけるエネルギー消費原単位の計算を行なう(S205)。エネルギー消費原単位は、製品を製造する際に装置に入力されたエネルギー量を製品の量で割ることにより算出することができる。
【0062】
ここで、製品を製造する際に装置に入力されたエネルギー量の演算に関して、装置の属性に対応した特殊な演算が必要な場合がある。これは、生産・エネルギーフローモデルで定義されている装置には、内部に材料やエネルギーを保持したり、循環したりするものがあり、これらは演算周期毎のエネルギー消費量を単純に積算しただけでは正確な評価ができないためである。
【0063】
例えば、装置が図9に示すような製品や材料の一時保管を行なう系の場合は、タンク等の備蓄設備に、エネルギー累積量を計算上持たせることで、備蓄設備内で撹拌や加熱等をしたり、材料の投入と備蓄設備からの排出の時刻が異なる場合に対応できるようしている。
【0064】
図9に示した例では、演算タイミングnにおける前工程からの入力流量をQi(n)、入力エネルギー累積使用量をEi(n)とし、次工程への出力流量をQo(n)とし、出力エネルギー累積使用量をEo(n)とし、撹拌用機器の電力をEm(n)とし、タンク内の貯蔵量をS(n)とすると、出力エネルギー累積使用量Eo(n)は、Es(n−1)*Qo(n)/S(n−1)と表わされる。
【0065】
なお、出力流量Qo(n)は、流量計で計測したり、弁の開度から推測することができる。また、タンク内の貯蔵量S(n)は、タンクの入力総量から出力総量を引いて求めたり、液位計から推定することができる。
【0066】
このとき、タンク内のエネルギー累積量Es(n)は、前回のタンク内のエネルギー累積量+入力エネルギー累積使用量+タンク内使用エネルギー量−出力エネルギー累積使用量となるため、Es(n)=Es(n−1)+Ei(n)+Em(n)−Eo(n)により算出することができる。
【0067】
また、図10(a)に示す処理装置Qのように、循環経路を持ち、出力した生産関連物が循環して時間遅れで再入力される系の場合、循環が行なわれる配管について遅れ時間を設定することで、循環の回収先の入力を、その遅れ時間分前の出力データとすることができる。
【0068】
例えば、図10(b)の装置モデルに示すように、循環量とエネルギー換算値とを定めると、生産関連物の収支
材料の入力=製品の出力については、
Mai(n)+Cai(n)=Poa(n)+Cao(n)
Cai(n)=Cao(n−1)
となり、エネルギーの収支については、
材料の入力+ユーティリティ入力=製品出力+ユーティリティ出力
{EMai(n)+ECai(n)}+{Eai(n)+Sai(n)}
={EPao(n)+ECao(n)}+(Hao)
ECai(n)=ECao(n+1)
となる。なお、製品出力における循環と製品との案分は測定値による動的案分としたり、固定比による案分等とすることができる。
【0069】
図10(b)に示した装置モデルのより具体的なエネルギー消費量の演算方法について図11を参照して説明する。ここでは、「ロットA」の製造で消費したエネルギー量を算出対象とする。
【0070】
本図の例では、0:00に生産エネルギー管理システムを稼働し、10分毎に生産・エネルギーフローモデルで定義された演算を実施するものとする。ただし、電力計等の現場計器は、本システムの稼働前から、測定を行ない、計測データを送信しているものとする。
【0071】
生産エネルギー管理システムの稼働後、1回目の演算は、演算モデルのうち、循環の入力がないものとして、演算をすべて行なう。そのため、この時の演算値は暫定のデータとなる。10分毎の2回目以降の演算では、循環の入力分も含めて演算をすべて行なう。この時、循環の入力分は、前回の演算の結果を参照する。また、10分毎の演算とは別に、設定された時間、例えば60分毎に、その間の演算結果の合算等を行なう締め処理を行なっているものとする。
【0072】
なお、今回の演算の例では前回の演算結果を参照する例を示したが、現在の演算結果、前々回以前の演算結果を複数参照することも可能である。また、装置間移動、加工時間、反応時間等の装置の制御性を示す時間遅れ、伝達関数、ユーザが指定した関数、その他指標値を参照することも可能である。
【0073】
ある製品を作るためのエネルギー使用量を演算する場合は、例えば、その製品が出力された時間を、データを基に演算する。0:56〜2:52に生産された製品「ロットA」のエネルギー使用量を演算する場合、演算の締め時間に合わせ、以下のデータを合算する。
「0:56〜1:00」「1:00〜2:00」「2:00〜2:10」「2:10〜2:20」「2:20〜2:30」「2:30〜2:40」「2:40〜2:50」「2:50〜2:52」
ここで、「1:00〜2:00」は、60分毎の締めデータを使用することができる。また、「2:00〜2:10」「2:10〜2:20」…「2:40〜2:50」は、10分毎の演算結果を使用することができる。
【0074】
一方、「0:56〜1:00」「2:50〜2:52」は演算の周期よりも短い周期のため、その期間を含む10分間のデータの演算結果を時間の長さによって案分するようにする。例えば、0:50〜1:00のエネルギー使用量が250の場合、「0:56〜1:00」のエネルギー使用量は、250を4/10で案分して100となる。同様に、「2:50〜2:52」のエネルギー使用量が200の場合、2:50〜2:52のエネルギー使用量は40となる。
【0075】
これらの演算結果の合計が、製品「ロットA」を製造するために消費されたエネルギー量となる。
【0076】
このエネルギー量を製品の量で除算を行なうと、エネルギー原単位となる。ユーザの管理状況に合わせ、原料の入力値や、中間製品の生産量、工場、プラントの単位面積など、ユーザが定める値を用いて、ユーザが定義した数式により指標値を算出することが可能である。
【0077】
本実施形態では、ロットについて説明したが、例えば製品の包装単位ごと、1日の出荷量、出荷先、その他ユーザが定める出荷製品の単位や、材料の購入単位ごと、格納したタンクごと、その他ユーザが定める原料管理の単位や、中間製品の管理単位で演算することが可能である。
【0078】
図7のフローチャートの説明に戻って、装置におけるエネルギー消費源単位の計算(S205)を終えると、各計算結果をエネルギー演算結果データベース160に記録する(S206)。
【0079】
以上、図2のフローチャートにおけるエネルギー関連計算(S102)の詳細な手順について説明した。
【0080】
図2のフローチャートにおけるエネルギー情報表示(S104)では、エネルギー関連計算で得られた装置毎のエネルギー消費量、エネルギーコスト、CO2排出量、エネルギー効率、エネルギー消費原単位等について、操作者の指示に基づいて棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ等の種々のグラフで表示したり、表形式等で表示する。このとき、任意の装置をまとめたり、表示対象とする期間を任意に設定できる。
【0081】
また、演算結果は、生産・エネルギーフローモデル上あるいは生産・エネルギーフローモデルの概要図上に表示させることもできる。例えば、図12に示すように、エネルギー消費量、エネルギーコスト、CO2排出量、エネルギー消費原単位、エネルギー効率、ユーザの設定に係る指標値、これらの組み合わせ、または演算された指標値等の大きさを、有向線の太さや色、線種等で視覚的に表現させることができる。また、各指標とユーザが設定した閾値との比較結果や後述するベースライン関数を用いた解析結果等を有向線や装置のシンボル等を変化させることで視覚的に表現させることができる。有向線やシンボル等の表示態様の変化は、サブシステム表示やサブシステムの階層化表示においても行なうことができる。
【0082】
次に、図2のフローチャートにおけるベースライン計算(S106)とベースライン表示(S107)について説明する。上述のように、ベースライン計算では、操作者によって指定された期間におけるエネルギー演算結果から、エネルギー消費量と要因との関係をベースライン関数で表わす処理を行なう。
【0083】
ベースラインは、エネルギー消費の改善を行なった場合に、その効果を検証するため等に用いることができる。具体的には、エネルギー関連計算(S102)で得られたエネルギー消費量、エネルギーコスト、CO2排出量、エネルギー効率、エネルギー消費原単位等の改善前の実績と、エネルギー消費量等に影響を与える要因との相関関係に基づいて、改善後の効果を検証することができる。以下では、エネルギー消費量についてのベースラインを例に説明する。
【0084】
ベースライン関数の作成に際しては、操作者から対象とする装置あるいは設備群と対象とする実績期間との設定を受け付ける。また、エネルギーの入出力値・材料の入力値・製品の出力値・温湿度等のフィールドデータ以外にも要因として考慮する情報を生産・エネルギーフローモデル外情報として入力する。
【0085】
生産・エネルギーフローモデル外情報は、温度や湿度等の装置の周辺環境、プラントの運用モード、材料の種類・産地、天候、降雨量、ラインの操業状態、アラーム情報等とすることができる。
【0086】
フィールドデータおよび生産・エネルギーフローモデル外情報で、要因として考慮する情報を要因候補と称すると、対象とする期間において、要因候補毎に、分散分析等を用いてエネルギー消費量の変動との関連性の有無を評価して、ベースライン関数に組み込む要因の絞り込みを行なう。
【0087】
なお、対象とする期間において、所定の条件に合致するデータを抽出して評価するようにしてもよい。所定の条件は、例えば、エネルギー原単位が基準値以下としたり、特定の運用モードや特定曜日等とすることができる。これにより、操業条件が近いデータを抽出したり、省エネルギーが達成できていた期間のデータを抽出することができる。
【0088】
要因を絞り込んだら、絞り込まれた要因群について、多変量解析を行ない、エネルギー消費量と各要因との関係を近似するモデル式を生成する。このモデル式をベースライン関数と称する。この際に、どの程度近似しているかを示す相関値を明らかにすることが望ましい。
【0089】
作成されたベースライン関数は、過去の実績に基づくものであるため、改善後の要因を代入することで、改善を行なわなかった場合のエネルギー消費量を推定することができる。この推定エネルギー消費量と、改善後の実際のエネルギー消費量とをグラフ表示して比較することで、改善の効果を視覚化することが可能となる。また、ベースライン関数に、要因Aと要因Bの任意の値を代入することで、エネルギー消費量を予測することも可能となる。
【0090】
図13は、ベースラインのグラフ表示例を示す図である。ベースラインモデル化・検討期間のエリアでは、省エネルギー施策前のエネルギー消費量の実績値と、要因として抽出された要因Aと要因Bの変動が示されている。そして、施策実施期間のエリアでは、省エネ施策実施後のエネルギー消費量と要因Aと要因Bの変動に加え、ベースライン関数を用いて算出された未改善の場合の推定エネルギー消費量の変動が表示されている。ここで、未改善の場合の推定エネルギー消費量は、ベースライン関数に省エネ施策実施後の要因Aと要因Bを代入することで得られる値である。
【0091】
本図に示すように、省エネ施策実施後のエネルギー消費量と未改善推定エネルギー消費量とを比較することにより、省エネルギー施策の効果を視覚的に評価することができる。
【0092】
このようなベースラインを利用することで、省エネルギー施策の効果以外にも、連続プロセスに適した種々の評価等を行なうことができる。例えば、石油化学プラントでは、精製する材料の種類や、精製する製品の交換等により、エネルギー消費量等が異なるが、ベースラインを用いて実際の稼働データと過去の稼働データとを比較することで、その時の運転状況のエネルギー消費量を評価することができる。
【0093】
また、一般に、装置の稼働時間が長くなるにつれて、装置のスケール付着等により、エネルギー消費量が増加する。この場合、装置のメンテナンスを行なってエネルギー消費量を減少させる必要があるが、ベースラインを用いて、現在のエネルギー消費量の評価を行なうことで、メンテナンスの必要性の検討を行なうことができるようになる。これにより、メンテナンス不良による不具合を防ぎ、安定的な生産の状態を維持することで、プラントのライフサイクルを延ばせることが期待される。
【0094】
以上、本実施形態の生産エネルギー管理システム100について説明した。なお、本実施形態では、連続プロセスプラント300を対象に説明したが、本発明は、連続プロセス以外のプロセスに適用することも可能である。また、主として熱量の収支についての演算を行なっているが、プラント内での製造工程において、仕掛け品に付加し、後の工程で回収するようなプラント、例えば、飲料工場における水や、化学工場における触媒の収支を算出するのにも適用することができる。
【0095】
また、蒸気を使用するプラントにおいて、抽気と呼ばれる、高圧・高温の蒸気を装置に入力し、その出力から、入力よりも低圧・低温の蒸気を別装置に入力することがある。このような2段階で蒸気を利用する場合の管理においても、本発明のモデルを適用することができる。
【0096】
また、生産エネルギー管理システム100のエネルギー演算結果を用いることで、任意の設備群に対し、熱精算図(サンキーダイアグラム)を描くことが可能となる。
【符号の説明】
【0097】
100…生産エネルギー管理システム、110…フィールドデータ収集部、120…フィールドデータベース、130…生産・エネルギーフローモデル定義部、140…生産・エネルギーフローモデルデータベース、150…エネルギー演算部、160…エネルギー演算結果データベース、170…ベースラインモデル演算部、180…ベースラインモデルデータベース、190…データ表示部、300…連続プロセスプラント、310…装置群、320…各種センサ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14