特許第5790955号(P5790955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790955
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ローターを備えた血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/10 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   A61M1/10 535
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-508368(P2013-508368)
(86)(22)【出願日】2011年4月29日
(65)【公表番号】特表2013-525044(P2013-525044A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】DE2011001004
(87)【国際公開番号】WO2012006976
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年4月10日
(31)【優先権主張番号】102010024650.6
(32)【優先日】2010年6月22日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010019403.4
(32)【優先日】2010年5月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512285111
【氏名又は名称】メドス メディツィンテクニーク アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】バウムガルトナー, ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヘンセラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】マッテルン,ベンジャミン
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−151979(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0200750(US,A1)
【文献】 米国特許第04643641(US,A)
【文献】 英国特許第01383811(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/10 − A61M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受(14)を介してポンプ筐体(2)に支承されているローター(13)を具備した血液ポンプ(1)であって、その際前記ポンプ筐体(2)がその外壁(5)から筐体内側(8)を指し示す金属製のピン(10)を有する血液ポンプにおいて、前記ピン(10)が円錐形に形成され、円錐形の筐体フォーム(9)内に配置され、前記ポンプ筐体(2)の前記外壁(5)の外側のところに配置されており、
前記ローター(13)が、軸受(14)に通じる洗浄穴(17)を有していることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項2】
前記円錐形の筐体フォーム(9)が、ブレード(15)内で前記ブレード(15)の全長に渡って伸びていることを特徴とする、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項3】
前記ローターの直径が30mm未満であることを特徴とする、請求項1〜2のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項4】
ローターカバーディスク(19)の直径が、32mm未満であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項5】
前記ローターの重量が、10g未満であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項6】
前記筐体が半径方向外側の筐体壁(5)と、その中へ伸びているモーターマウント(6)を有し、その際前記モーターマウント(6)が形状接合でキャップ(7)を介して外側の筐体壁(5)と接続されており、半径方向外側の筐体壁(5)と前記モーターマウント(6)との間にリング状スリット(8)が形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項7】
モーターのトルクを非接触式に前記ローター(13)に伝達するために、前記ローター(13)が少なくとも1つのカップリング磁石(16)有していることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項8】
前記ローター(13)が軸受(14)を介してベアリングシェル内にあるボールセグメントと前記ポンプ筐体(2)で支承されていることを特徴とする、請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項9】
前記ローターが前記ボールセグメント有していることを特徴とする、請求項に記載の血液ポンプ。
【請求項10】
前記軸受の一部がPTFEから作られていることを特徴とする、請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項11】
前記軸受の一部がステンレス鋼から作られていることを特徴とする、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項12】
前記軸受の一部がセラミックまたはガラスから作られていることを特徴とする、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項13】
前記筐体の少なくとも1つの部分がポリエーテルケトンから作られていることを特徴とする、請求項1〜12のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項14】
前記血液ポンプの呼び水容量が17mL未満であることを特徴とする、請求項1〜13のうちのいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受を介してポンプ筐体内に支承されている、ローターを備えた血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
このような血液ポンプは、さまざまな実施形態が公知である。まず、ラジアルポンプとアキシャルポンプに分けられる。特に良い結果は斜流によって得られた。本発明は従って、特に斜流ポンプの分野に関する。
【0003】
このような血液ポンプの重要な使用分野は、体外循環におけるヒトの血液の圧送である。その場合血液ポンプは完全にまたは部分的に心臓のポンプ機能を担い、および数日間という一定期間心臓を支援するために、再生またはバイパスのために、使用される。病院に普及している、PVCチューブシステム、人工肺、動脈フィルターのようなコンポーネントおよび必要に応じてさまざまな容器と組み合わせて使用される。PVCチューブシステムの代わりにシリコンチューブピースから完全なシリコンチューブシステムまで、使用することもできる。
【0004】
制御、エネルギー供給および監視のために、駆動装置も担うことができる専用のコンソールが使用される。
【0005】
このようなポンプは、血液部分と駆動部分を連結解除するために、マグネットクラッチの原理が適用されていると有利である。このことは、血液が案内される表面を非常に小さく保つことを可能にする。コンパクトな構造により、患者に優しく、患者の近傍で使用できる。
【0006】
このような血液ポンプでは、ローターが好ましくはセラミックまたは酸化アルミニウム製の玉軸受けで支承されている。軸受の範囲では、温度上昇またはポンプの故障を招きかねない力が作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、このような血液ポンプにさらに開発を加えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、筐体がその外側の壁から筐体内側を指し示す金属製ピンを有する、この種類の血液ポンプによって解決される。
【0009】
頑丈な、熱伝導性のある材料から成るこのようなピンは、一方で筐体壁を通して熱を排出し、および他方で筐体から内側へ突出している筐体部分を安定化させる。この血液ポンプはその場合回転軸もダイナミックシールも不要である。
【0010】
ピンが円錐形に形成されると特に有利である。これにより、筐体内の特別な点から熱が吸収され、筐体外側に排出される。さらに、ピンの円錐形の形状が特別な機械的安定性を可能にする。
【0011】
ピンが筐体内に導かれた血液と触れることを阻止するため、ピンが円錐形の筐体フォーム内に配置されていることが提示される。したがってこのピンは、血液自体と接触することなく、筐体内部からおよび特に軸受エリアから熱を排出することができる。ここでは、軸受エリアから熱を排出し、軸受エリアを安定化させるために、ピンが軸受の近傍まで導かれていると特に有利である。
【0012】
軸受を可能な限り血液入口の近くに位置決めするため、円錐形の筐体フォームがブレード内で、および好ましくはブレード全長に渡って伸びていることが提示される。それによってローターのブレードが半径方向で円錐形のピンの外側に、および半径方向で円錐形の筐体フォームの外側に配置されていることが達成される。これにより、不動の円錐形筐体フォームとローターの間に生じた熱も、金属ピンを通って排出される。
【0013】
ローターは連続的にまたは断続的に回転してよい。特にローターの迅速な加速のために、ローターの直径は30mm未満、好ましくは28mm未満である。直径が小さいと、慣性力が低減され、それによって加速が容易になる。それにより、ローターは脈動的な投入にも理想的に使用される。脈動運転では、100ステップで回転数100rpm〜2500rpmが提示される。振動数はしたがって40〜90rpmである。
【0014】
ローターの重量が可能な限り小さく保たれると、特に直径が小さいことと合わせると有利である。それによって質量慣性力が低減され、加速が容易になる。有利な一実施態様では、ローターの重量が10g未満、好ましくはそれどころか8.5g未満である。
【0015】
これに対応して、ローターカバーディスクの直径は32mm未満、好ましくは30mm未満であってよい。
【0016】
ローターおよびカバーディスクの特別な構造は、本発明のその他の特徴とは無関係に発明の本質を成す。
【0017】
その他の、本発明のその他の特徴とはやはり無関係に発明の本質を成すのは、筐体の構造である。簡単な方法でドライブユニットを「血液部分」から分離するため、筐体が半径方向外側の筐体壁およびその中へ伸びているモーターマウントを有することが提示される。モーターはこれによって簡単に筐体から分離可能であり、筐体は同時にモーターホルダーとして使用される。
【0018】
特にコンパクトな構造は、半径方向外側の筐体壁とモーターマウントの間にリング状スリットが形成されることによって達成される。このリング状スリット内には、ローターから血液入り口へ流れる血液を導くことができる。血液部分と駆動部分の連結解除により、ドライブユニットを繰り返し使用することができ、かつ血液が案内される表面を非常に小さく保つことが可能である。この場合ポンプ材料は、血液凝固を抑制するコーティング、例えばReoparin(登録商標)またはBioline(登録商標)でコーティングを施せるものが選択される。
【0019】
トルクがモーターから非接触式にローターへ伝達されるために、ローターが少なくとも1つのカップリングマグネットを有していると有利である。そのために、ローター内に配置されているセグメント磁石またはリング磁石が使用されてよい。リング磁石の使用も、前述の特徴とは無関係に発明の本質を成す。ここでカップリング磁石は好ましい一実施例で磁性バックロックを持っている。ローターの前面がモーターの方を向いている限りにおいて、バックロックはローターの背面に配置されている。バックロックはセグメント磁石を接続し、ローターと駆動磁石の間に磁場強度が生じ得るように機能し、この磁場強度によって20Nを超える力が伝達され得る。
【0020】
さらに、ローターが軸受に通じる洗浄穴を有していると有利である。
【0021】
軸受には高い摩擦力が生じ、その結果大量に発熱が生じる。この熱は前述したように熱をよく電導するピンに伝えられ、このピンは好ましくは鋼から作られている。別法としてまたは追加的に、ローターが軸受を介してベアリングシェル内にあるボールセグメントと、ポンプ筐体内で支承されることが提示される。その際ボールセグメントは、軸受内に確実に存在するために、最大でベアリングシェルの半径であるべきである。好ましくはボールセグメントの半径は、ベアリングシェルの半径より小さく、その結果点支承が生じる。その際、ボールセグメントはボールの一部であってよい。軸受の構造も、前述の特徴とは無関係に発明の本質を成す。
【0022】
ボールセグメントは、その際ピンに沿っておよびローターに沿って形成されてよい。ローターがボールセグメントを有していると有利であることは明かである。
【0023】
摩耗の発生が可能な限り少なくなるよう、および優れた熱放散が保証されるよう、軸受の一部がPTFE、鋼、セラミックまたはガラス、好ましくはホウケイ酸ガラスから作られていることが提示される。この部分は好ましくはボールセグメントまたはボールであるのに対し、ピンは好ましくは鋼から作られている。材料の選択も、前述の特徴とは無関係に発明の本質を成す。
【0024】
筐体内で、特に軸受の範囲で温度が200℃を超える可能性があるため、少なくとも1つの筐体部分がポリエーテルケトンから作られていることが提示される。これは例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような高音耐熱性熱可塑性プラスチックである。この特徴も、前述の特徴とは無関係に発明の本質を成す。
【0025】
特別な設計上の構造により、呼び水容量が17mL、好ましくは15mL未満である、このような血液ポンプを作ることが可能である。
【0026】
本発明による血液ポンプの実施例は図に示され、以下に詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】血液ポンプの側面図である。
図2図1に示された血液ポンプの平面図である。
図3図1に示された血液ポンプの、C−C線に沿った断面図である。
図4】血液ポンプの別法の実施形態の側面図である。
図5図4に示された血液ポンプの平面図である。
図6図4に示された血液ポンプの、F−F線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示された血液ポンプ1は、インレット3およびアウトレット4を具備したポンプ筐体2を備えている。
【0029】
ポンプ筐体2は、半径方向外側の筐体壁5およびその中へ伸びているモーターマウント6から成る。モーターマウント6は、形状接合でキャップ7を介して外側の筐体壁5と接続している。
【0030】
モーターマウント6は、筐体壁5とモーターマウント6の間にリング状スリット8が生じるように筐体壁5内に突き出ている。インレット3に対して同軸にモーターマウント6のところに円錐形の筐体フォーム9が形成され、この中に円錐形のピン10が伸びている。ピン10は、段差部11を介して円錐形の筐体フォーム9と接続されている。
【0031】
円錐形の筐体フォーム9の先端には、玉軸受け12があり、ローター13と接着されている。この玉軸受け12は、円錐形の筐体フォーム9の帽子構造の中で、その中に配置されているピン10と共に動く。それによってローター13は軸受14を使用してポンプ筐体2内に支承されている。
【0032】
ローター13はブレード15を備え、モーター(図示せず)のトルクが非接触式でローター13に伝達されるよう、このブレードのところにカップリングマグネット16が固定されている。ローター13内のカップリングマグネット16は、個々のクオーターセグメント磁石として仕上げられてよい。有利にはリング磁石である。
【0033】
ローター13は、直径約26mmで、軸受14付近に洗浄穴17を備え、これを通って血液が入り口3から軸受14へ流れる。
【0034】
ローター13と筐体内側18の間にローターカバーディスク19が配置されており、これは直径が約28mmである。
【0035】
血液ポンプは、少なくとも7日間の一定期間の間使用できる。使用時間は、最大6時間から最大数週間までに達する。実際には、50日を超えてポンプが連続的に使用されても容易に耐えることが示されている。ダイアゴナル形状のインペラー、ひいてはダイアゴナル形状の流れ方向は、遠心ポンプとアキシャルポンプの利点を統合している。ポンプは0〜10,000rpmの回転域で連続的にまたは脈動して、体積流量毎分0〜8リッターを最大圧力差が最高650mmHgで生成する。最大圧送圧力は一般におよそ600mmHg未満である。
【0036】
無菌のおよび発熱性物質なしで納品されたポンプヘッドは、少なくとも3年間保管可能であり、輸送による損傷から十分に保護されている。
【0037】
図4から図6は、わずかに変更された血液ポンプ30の実施形態である。図1から図3に示された実施形態では呼び水容量が16mLであるのに対して、この変更された実施形態では呼び水容量が15mL未満である。このことは、ポンプ内に突出している、モーターマウント32の部分31によって達成される。
【符号の説明】
【0038】
1 血液ポンプ
2 ポンプ筐体
3 インレット
4 アウトレット
5 筐体壁
6 モーターマウント
7 キャップ
8 リング状スリット
9 筐体フォーム
10 ピン
11 段差部
12 玉軸受け
13 ローター
14 軸受
15 ブレード
16 カップリングマグネット
17 洗浄穴
18 筐体内側
19 ローターカバーディスク
30 血液ポンプ
32 モーターマウント
図1
図2
図3
図4
図5
図6