特許第5790956号(P5790956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790956
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ディジタルフィルタ回路
(51)【国際特許分類】
   H03H 17/02 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   H03H17/02 655Z
   H03H17/02 661F
   H03H17/02 633Z
   H03H17/02 655B
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-515063(P2013-515063)
(86)(22)【出願日】2012年4月19日
(86)【国際出願番号】JP2012061152
(87)【国際公開番号】WO2012157427
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-110286(P2011-110286)
(32)【優先日】2011年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100082924
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】鹿山 英則
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−028031(JP,A)
【文献】 特開昭63−257319(JP,A)
【文献】 特開2004−266824(JP,A)
【文献】 特開2003−264451(JP,A)
【文献】 米国特許第05262972(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fsを各チャネルのサンプリングレートとしたとき、最大合計サンプリングレート(n×Fs)(n≧2)の異なるサンプリングレートの複数チャネルフィルタリング処理を行うm(m≧2)タップ係数のディジタルフィルタ回路であって、
(n×m)個の遅延器からなる遅延回路であって、第1乃至第mのタップを持ち、各々がn個の遅延器から成る第1乃至第mの遅延器グループに分けられる、前記遅延回路と、
前記遅延回路への入力信号を所要サンプル間隔分遅延させた第1乃至第(m−1)の入力遅延信号と前記第2乃至第mのタップの出力信号とをそれぞれ選択的に前記第1乃至第(m−1)の遅延器グループへ供給することにより、サンプリングレート(k×Fs)(k≦n)に基づいて、前記(n×m)個の遅延器をk個の処理工程領域に分割可能な処理工程分割手段と、
前記第1乃至第mのタップ用にそれぞれ選択された、第1乃至第mの選択したタップ係数を供給するタップ係数供給手段と、
前記第1乃至第mのタップの出力と前記第1乃至第mの選択したタップ係数とを乗算して、それぞれ第1乃至第mの乗算結果を出力する第1乃至第mの乗算器から成る乗算回路と、
前記第1乃至第mの乗算結果を加算する複数の加算器から成る加算回路と、
前記第1乃至第mの乗算結果および前記複数の加算器の加算結果をそれぞれ累積加算して、複数の累積加算結果を出力する複数の累積加算器から成る累積加算部と、
前記複数の累積加算結果および前記加算回路の出力から、各処理工程のフィルタリング処理結果の出力フォーマットを生成する出力データフォーマット生成部と、
前記複数の累積加算器に対し、加算の開始信号、前記複数の累積加算結果のクリア信号を出力する累積加算制御部と、
を備えるディジタルフィルタ回路。
【請求項2】
前記処理工程分割手段は、
サンプリングレートが(k×Fs)(k≦n)であり、そのフィルタリング処理が前記k個の処理工程領域に分割されたチャネルを、処理工程領域に対応して所要サンプル間隔分遅延させた前記第1乃至第(m−1)の入力遅延信号を出力する第1乃至第(m−1)の処理工程毎データ遅延器から成る処理工程毎データ遅延回路と、
処理対象のチャネルの前記サンプリングレート(k×Fs)(k≦n)に基づいて、前記(n×m)個の遅延器を前記k個の処理工程領域に分割し、前記第1乃至第(m−1)の入力遅延信号と前記第2乃至第mのタップの出力とを、それぞれ、前記第1乃至第(m−1)の遅延器グループへ選択的に供給する第1乃至第(m−1)の入力選択器から成る入力選択部と、
から構成される、請求項1に記載のディジタルフィルタ回路。
【請求項3】
前記タップ係数供給手段は、
複数チャネルのサンプリングレート構成に基づいて、各処理工程領域のフィルタリング処理に応じた前記第1乃至第mのタップ用のタップ係数を決定する、各々が複数の係数決定器を含む第1乃至第mの係数決定器グループから成る係数決定部と、
前記第1乃至第mの係数決定器グループが出力するタップ係数群を、前記最大合計サンプリングレート(n×Fs)で、それぞれ、前記第1乃至第mの選択したタップ係数として、前記第1乃至第mの乗算器へ選択出力する第1乃至第mの係数選択器から成る係数選択部と、
から構成される、請求項1又は2に記載のディジタルフィルタ回路。
【請求項4】
前記mが4に等しい場合、
前記加算回路は、
前記第1の乗算結果と前記第2の乗算結果とを加算して、第1の加算結果を出力する第1の加算器と、
前記第3の乗算結果と前記第4の乗算結果とを加算して、第2の加算結果を出力する第2の加算器と、
前記第1の加算結果と前記第2の加算結果とを加算して、第3の加算結果を前記加算回路の出力信号として出力する第3の加算器と、
から構成される、請求項1乃至3のいずれか1つに記載のディジタルフィルタ回路。
【請求項5】
前記累積加算部は、
前記第1乃至第4の乗算結果をそれぞれ累積加算して、それぞれ、第1乃至第4の累積加算結果を出力する第1乃至第4の累積加算器と、
前記第1の加算結果を累積加算して、それぞれ、第5および第6の累積加算結果を出力する第5および第6の累積加算器と、
前記第2の加算結果を累積加算して、それぞれ、第7および第8の累積加算結果を出力する第7および第8の累積加算器と、
から構成される、請求項4に記載のディジタルフィルタ回路。
【請求項6】
前記出力データフォーマット生成部は、
前記第5乃至第8の累積加算結果を選択的に出力する第1の出力データ選択器と、
前記第1乃至第4の累積加算結果を選択的に出力する第2の出力データ選択器と、
から構成される、請求項5に記載のディジタルフィルタ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルフィルタ回路に関し、特に、複数のチャネルのフィルタリング処理を行う複数チャネルフィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機器の小型化、低消費電力化に伴って、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成されるディジタル信号処理部も小型化、低消費電力化が要求されている。例えば、通信分野で使用されるディジタルフィルタ回路は、急峻もしくは狭帯域のフィルタ特性や、複数の入力データ列に対する処理が必要である為に、回路規模が大きくなる。従って、特に、複数の異なるサンプリングレートの入力データ列を扱うフィルタ回路について、回路の簡素化の検討が行われている。
従来から種々のディジタルフィルタ回路が提案されている。例えば、非特許文献1に記載されたディジタルフィルタ回路は、複数の入力データ列に対するフィルタリング処理を、1つのフィルタ回路で共通に行うことが可能である。また、特許文献1は、複数の入力データ列に対するフィルタ処理の低消費電力化方法を提案している。以降、複数の入力データ列を、各々チャネルと表現する。
後で、図1を参照して詳細に説明するように、関連の複数チャネルフィルタ回路は、遅延回路と、乗算回路と、加算回路とから構成される。一般に、複数チャネルフィルタ回路が、nチャネル、mタップ係数の複数チャネルフィルタ回路であるとする。ここで、nは2以上の整数であり、mは2以上の整数である。この場合、遅延回路は(n×m)個の遅延器から構成され、乗算回路はm個の乗算器から構成される。各乗算器は、遅延器n個間隔に取り出した遅延器出力とタップ係数とを入力値とする。加算回路は、各乗算器における乗算結果を加算する。
サンプリングレートFsのn本のチャネルを、サンプリングレート(n×Fs)のn時分割フォーマットで、複数チャネルフィルタ回路に入力する。したがって、複数チャネルフィルタ回路は、(n×Fs)レートの各タイミングで、各チャネルのフィルタ演算結果を時分割で出力する。
このように、関連の複数チャネルフィルタ回路は、入力データを時分割で入力し、時分割された各タイミングで1つのチャネルの処理を行うため、単一チャネルフィルタ回路をn個並列に構成する場合と比較して、回路規模が特に大きい乗算器の数が(1/n)で実装可能な効率的な構成となっている。
また、本発明に関連する他の先行技術文献も種々知られている。
例えば、特許文献2は、周波数の異なる複数のシステム信号を単一のA/D変換器でサンプリングする技術において、A/D変換器のサンプリングレートを可能な限り低く、かつ後段のディジタル信号処理用クロックを各システムのクロックの整数倍にするための、A/D変換器のサンプリングレート決定方法を開示している。
また、特許文献3は、レートが同一の複数の基底帯域信号(例えば、Iチャネル信号、Qチャネル信号)を時分割で処理するフィルタに関する技術的思想を開示している。
さらに、特許文献4は、同一のフィルタ回路で遮断特性を変えることなく、演算用クロックの周波数のみを切り替えることにより異なるレートの入力信号を処理するために、フィルタ回路の前段にリサンプル回路を新たに設けた、ディジタルフィルタ回路を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−205346公報
【特許文献2】特開2009−117925号公報
【特許文献3】特開平07−038381号公報
【特許文献4】特開平08−162905号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Xilinx社,”Logicore IP FIR Compiler v5.0”,Product Specification DS534,April,19,2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、関連の複数チャネルフィルタ回路の構成では、同一サンプリングレートの複数チャネル処理に限定されるという課題がある。
特許文献2は、周波数の異なる複数のシステム信号を単一のA/D変換器で受信する際のA/D変換器のサンプリングレートを、後段のディジタル信号処理を効率的に行えるように決定する方法を開示しているに過ぎず、フィルタ処理に関する発明ではない。
特許文献3は、上述した従来の複数チャネルフィルタ回路に相当する技術思想を開示しているに過ぎない。
特許文献4では、異なる周波数の演算用クロックを使用する必要があり、また、新たに外部リサンプラを使用する必要がある。
本発明の目的は、異なるサンプリングレートの複数のチャネルのフィルタリング処理を少ない回路規模で実現する、ディジタルフィルタ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、異なるサンプリングレートの複数の入力データ列に対して、同一回路で各々異なるサンプリングレートに対するフィルタリング処理を行うことを特徴とするディジタルフィルタ回路である。
すなわち、前記課題の解決と目的を達成する為に、本発明に係る最大合計サンプリングレート(n×Fs)(n≧2)の異なるサンプリングレートの複数チャネルフィルタリング処理を行うm(m≧2)タップ係数のディジタルフィルタ回路は、(n×m)個の遅延器からなる遅延回路であって、第1乃至第mのタップを持ち、各々がn個の遅延器から成る第1乃至第mの遅延器グループに分けられる、遅延回路と、遅延回路への入力信号を所要サンプル間隔分遅延させた第1乃至第(m−1)の入力遅延信号と第2乃至第mのタップの出力信号とをそれぞれ選択的に第1乃至第(m−1)の遅延器グループへ供給することにより、サンプリングレート(k×Fs)(k≦n)に基づいて、(n×m)個の遅延器をk個の処理工程領域に分割可能な処理工程分割手段と、第1乃至第mのタップ用にそれぞれ選択された、第1乃至第mの選択したタップ係数を供給するタップ係数供給手段と、第1乃至第mのタップの出力と第1乃至第mの選択したタップ係数とを乗算して、それぞれ第1乃至第mの乗算結果を出力する第1乃至第mの乗算器から成る乗算回路と、第1乃至第mの乗算結果を加算する複数の加算器から成る加算回路と、第1乃至第mの乗算結果および複数の加算器の加算結果をそれぞれ累積加算して、複数の累積加算結果を出力する複数の累積加算器から成る累積加算部と、複数の累積加算結果および加算回路の出力から、各処理工程のフィルタリング処理結果の出力フォーマットを生成する出力データフォーマット生成部と、複数の累積加算器に対し、加算の開始信号、複数の累積加算結果のクリア信号を出力する累積加算制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明のディジタルフィルタ回路によれば、従来の複数チャネルフィルタ回路に対し、最小限の回路追加で最大合計サンプリングレート(n×Fs)の異なるサンプリングレートの複数チャネルフィルタ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1は関連の複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)の一構成例を示すブロック図である。
図2は本発明の一実施の形態による複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)の一構成例を示すブロック図である。
図3は本発明の一実施の形態による複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)における時分割入力フォーマットの一例を示す図である。
図4は本発明の一実施の形態による複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)における、入力信号のサンプリングレートと処理工程分割数、各処理工程領域が担当する積和演算の関係を示す表である。
図5は本発明の一実施の形態による複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)における係数設定部の出力係数例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず図1を参照して、本発明の理解を容易にするために、関連の複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)について説明する。
図1に示されるように、複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)は、遅延回路1と、乗算回路2と、加算回路3とから構成される。
一般に、複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)が、nチャネル、mタップ係数の複数チャネルフィルタ回路であるとする。ここで、nは2以上の整数であり、mは2以上の整数である。この場合、遅延回路1は(n×m)個の遅延器から構成され、乗算回路2はm個の乗算器から構成される。各乗算器は、遅延器n個間隔に取り出した遅延器の出力とタップ係数とを入力値とする。加算回路3は、各乗算器における乗算結果を加算する。
図1に示した複数チャネルフィルタ回路は、チャネル数nが4に等しく、タップ数mが4に等しい例を示している。すなわち、図1に示した複数チャネルフィルタ回路は、4チャネル、4タップ係数の複数チャネルフィルタ回路から成る。
この場合、遅延回路1は第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15から構成され、乗算回路2は第1乃至4の乗算器2−0〜2−3から構成され、加算回路3は第1乃至第3の加算器3−0〜3−2から構成される。
図1に示されるように、チャネル#0の入力データが、In0−0、In0−1、In0−2、In0−3、・・・からなり、チャネル#1の入力データが、In1−0、In1−1、In1−2、In1−3、・・・からなり、チャネル#2の入力データが、In2−0、In2−1、In2−2、In2−3、・・・からなり、チャネル#3の入力データが、In3−0、In3−1、In3−2、In3−3、・・・からなるとする。
このような場合、図示の4チャネル、4タップ係数の複数チャネルフィルタ回路には、サンプリングレートFsの4本のチャネルが、サンプリングレート(4×Fs)の4時分割フォーマットで入力される。
すなわち、4時分割入力データは、In0−0、In1−0、In2−0、In3−0、In0−1、In1−1、In2−1、In3−1、In0−2、In1−2、In2−2、In3−2、In0−3、In1−3、In2−3、In3−3、・・・となる。
第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15の各々は、サンプリングレート(4×Fs)の逆数に実質的に等しい単位遅延Tを供給する。すなわち、T=1/(4×Fs)である。第1乃至第15の遅延器1−0〜1−15は、例えば、それぞれ、所定ビット幅のDフリップフロップから構成され、全体として16段のシフトレジスタを構成する。尚、単位遅延Tは、サンプル間隔とも呼ばれる。
遅延回路1は、第1乃至第4のタップT0、T1,T2,およびT3を持つ。遅延回路1を構成する第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15は、第1乃至第4の遅延器グループに分けられる。すなわち、第1乃至第4の遅延器1−0〜1−3は第1の遅延器グループに属し、第5乃至第8の遅延器1−4〜1−7は第2の遅延器グループに属し、第9乃至第12の遅延器1−8〜1−11は第3の遅延器グループに属し、第13乃至第16の遅延器1−12〜1−15は第4の遅延器グループに属する。第1の遅延器グループ(1−0〜1−3)は、第1のタップT0と第2のタップT1との間に配置かれ、第2の遅延器グループ(1−4〜1−7)は、第2のタップT1と第3のタップT2とに間に配置され、第3の遅延器グループ(1−8〜1−11)は、第3のタップT2と第4のタップT3との間に配置かれ、第4の遅延器グループ(1−12〜1−15)は、第4のタップT3と遅延回路1の入力端子とに間に配置されている。
上記4時分割入力データは、上述した順序で遅延回路1の入力端子に供給され、遅延回路1で遅延される。その結果、この遅延回路1で単位遅延Tの16倍に等しい遅延時間16T(=4/Fs)だけ遅延されると、第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15の出力端子からは、それぞれ、図1に示されるような、In0−0、In1−0、In2−0、In3−0、In0−1、In1−1、In2−1、In3−1、In0−2、In1−2、In2−2、In3−2、In0−3、In1−3、In2−3、In3−3が出力される。
乗算回路2において、第1の乗算器2−0の一方の入力端子には、遅延回路1の第1のタップT0の出力信号が供給され、他方の入力端子には、第1のタップ係数C0が供給される。第1の乗算器2−0は、第1のタップT0の出力信号と第1のタップ係数C0とを乗算して、第1の乗算結果を出力する。同様に、第2の乗算器2−1の一方の入力端子には、遅延回路1の第2のタップT1の出力信号が供給され、他方の入力端子には、第2のタップ係数C1が供給される。第2の乗算器2−1は、第2のタップT1の出力信号と第2のタップ係数C1とを乗算して、第2の乗算結果を出力する。第3の乗算器2−2の一方の入力端子には、遅延回路1の第3のタップT2の出力信号が供給され、他方の入力端子には、第3のタップ係数C2が供給される。第3の乗算器2−2は、第3のタップT2の出力信号と第3のタップ係数C2とを乗算して、第3の乗算結果を出力する。第4の乗算器2−3の一方の入力端子には、遅延回路1の第4のタップT3の出力信号が供給され、他方の入力端子には、第4のタップ係数C3が供給される。第4の乗算器2−3は、第4のタップT3の出力信号と第4のタップ係数C3とを乗算して、第4の乗算結果を出力する。
加算回路3において、第1の加算器3−0は、第1の乗算結果と第2の乗算結果とを加算して、第1の加算結果を出力する。第2の加算器3−1は、第3の乗算結果と第4の乗算結果とを加算して、第2の加算結果を出力する。第3の加算器3−2は、第1の加算結果と第2の加算結果とを加算して、第3の加算結果を出力する。この第3の加算結果は、当該4チャネル、4タップ係数の複数チャネルフィルタのフィルタ出力((4×Fs)データフィルタ出力)として出力される。
上述したように、(4×Fs)のレートで動作する第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15の4個間隔で遅延器の出力(すなわち、第1乃至第4のタップT0〜T3の出力信号)を引き出し、当該遅延器の出力(第1乃至第4のタップT0〜T3の出力信号)と第1乃至第4のタップ係数C0〜C3とをそれぞれ第1乃至第4の乗算器2−0〜2−3にて(4×Fs)レートのタイミング毎に乗算する。(4×Fs)レートの同タイミングで乗算された出力(第1乃至第4の乗算器2−0〜2−3から出力される第1乃至第4の乗算結果)は加算回路3にて加算され、フィルタ出力となる。
したがって、(4×Fs)レートのうちチャネル#0の処理タイミングでは、遅延回路1から乗算回路2への出力(すなわち、第1乃至第4のタップT0〜T3の出力信号)は、下記の式1で表される。
{In0−0、In0−1、In0−2、In0−3} … 式1
この出力は、後段の乗算回路2と加算回路3で第1乃至第4のタップ係数C0〜C3と積和演算され、チャネル#0の積和出力は、下記の式2で表される。
Out0−0 = C0×In0−0 + C1×In0−1
+ C2×In0−2 + C3×In0−3 … 式2
同様に、チャネル#1、チャネル#2、チャネル#3の積和出力は、それぞれ、下記の式3、式4、及び式5で表される。
Out1−0 = C0×In1−0 + C1×In1−1
+ C2×In1−2 + C3×In1−3 … 式3
Out2−0 = C0×In2−0 + C1×In2−1
+ C2×In2−2 + C3×In2−3 … 式4
Out3−0 = C0×In3−0 + C1×In3−1
+ C2×In3−2 + C3×In3−3 … 式5
このように、(4×Fs)レートの各タイミングで、各チャネルのフィルタ演算結果が時分割で出力される。
上述したように、関連の複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)は、入力データを時分割で入力し、時分割された各タイミングで1つのチャネルの処理を行うため、単一チャネルフィルタ回路をn個並列に構成する場合と比較して、回路規模が特に大きい乗算器の数が(1/n)で実装可能な効率的な構成となっている。
しかしながら、前述したように、関連の複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)の構成では、同一サンプリングレートの複数チャネル処理に限定されるという課題がある。
次に、本発明の実施の形態の構成について図面を参照して説明する。
図2は本発明の一実施形態による複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)の一構成例を示すブロック図である。図3は本発明の一実施形態による複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)における時分割入力フォーマットの一例を示す図である。
図示の実施形態に係る複数チャネルフィルタ回路(ディジタルフィルタ回路)は、最大合計サンプリングレート(n×Fs)の異なるサンプリングレートの複数チャネルフィルタリング処理を行うmタップ係数のディジタルフィルタ回路である。ここで、nは2以上の整数、mは2以上の整数である。
図示の実施形態に係る複数チャネルフィルタ回路は、図1に示した関連の複数チャネルフィルタ回路と同様に、(n×m)個の遅延器から成る遅延回路1と、遅延器のn個間隔で取り出した遅延器の出力と係数選択部7(後述する)の出力とを入力値とするm個の乗算器から成る乗算回路2と、各乗算器における乗算結果を加算する加算回路3と、を備える。
遅延回路1は、第1乃至第mのタップT0〜T(m−1)を持ち、各々がn個の遅延器から成る第1乃至第mの遅延器グループに分けられる。乗算器2は、第1乃至第mの乗算器2−0〜2−(m−1)から成る。加算回路3は、後述するように、複数の加算器から成る。
そして、本実施形態に係る複数チャネルフィルタ回路は、更に、処理工程毎データ遅延回路4と、入力選択部5と、係数決定部6と、係数選択部7と、累積加算部8と、出力データフォーマット生成部9と、累積加算制御部10とを備えている。
処理工程毎データ遅延回路4は、サンプリングレートが(k×Fs)(k≦n)であり、そのフィルタリング処理がk個の処理工程領域に分割されたチャネルを、処理工程領域に対応して所要サンプル間隔分遅延させた第1乃至第(m−1)の入力遅延信号を出力する第1乃至第(m−1)の処理工程データ遅延器4−0〜4−(m−2)から成る。
入力選択部5は、処理対象のチャネルのサンプリングレート(k×Fs)(k≦n)に基づいて、(n×m)個の遅延器をk個の処理工程領域に分割し、第1乃至第(m−1)の入力遅延信号と第2乃至第mのタップT1〜T(m−1)の出力とを、それぞれ、第1乃至第(m−1)の遅延器グループへ選択的に供給する。
すなわち、処理工程毎データ遅延回路4と入力選択部5との組合せは、遅延回路1への入力信号を所要サンプル間隔分遅延させた第1乃至第(m−1)の入力遅延信号と第2乃至第mのタップT1〜T(m−1)の出力信号とを選択的に第1乃至第(m−1)の遅延器グループへ入力することにより、サンプリングレート(k×Fs)(k≦n)に基づいて、(n×m)個の遅延器をk個の処理工程領域に分割可能な処理工程分割手段(4,5)として働く。
係数決定部6は、複数チャネルのサンプリングレート構成に基づいて、各処理工程領域のフィルタリング処理に応じた第1乃至第mのタップT0〜T(m−1)用のタップ係数を決定する。係数決定部6は、各々が複数の係数決定器(後述する)を含む第1乃至第mの係数決定器グループから成る。
係数選択部7は、第1乃至第mの係数決定器グループが出力するタップ係数群を、最大合計サンプリングレート(n×Fs)で、それぞれ、第1乃至第mの選択したタップ係数として、第1乃至第mの乗算器2−0〜2−(m−1)へ選択出力する。
すなわち、係数決定部6と係数選択部7との組合せは、第1乃至第mのタップT0〜T(m−1)用にそれぞれ選択された、第1乃至第mの選択したタップ係数を供給するタップ係数供給手段(6,7)として動作する。
乗算回路2において、第1乃至第mの乗算器2−0〜2−(m−1)は、それぞれ、第1乃至mのタップT0〜T(m−1)の出力と第1乃至第mの選択したタップ係数とを乗算して、それぞれ第1乃至第mの乗算結果を出力する。
加算回路3は、第1乃至第mの乗算結果を加算する複数の加算器から成る。
累積加算部8は、各処理工程のk個の乗算もしくは積和演算結果を累積加算する。すなわち、累積加算部8は、第1乃至第mの乗算結果および上記複数の加算器の加算結果をそれぞれ累積加算して、複数の累積加算結果を出力する複数の累積加算器(後述する)から成る。
出力データフォーマット生成部9は、上記複数の累積加算結果および上記加算回路3の出力から、各処理工程のフィルタリング処理結果の出力フォーマットを生成する。
累積加算制御部10は、複数の累積加算器に対し、加算の開始信号、複数の累積加算結果のクリア信号を出力する。
図2に示した複数チャネルフィルタ回路は、図1に示した従来の複数チャネルフィルタ回路と同様に、最大チャネル数nが4に等しく、タップ数mが4に等しい場合の例を示している。
したがって、遅延回路1は第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15から構成され、乗算回路2は第1乃至4の乗算器2−0〜2−3から構成され、加算回路3は第1乃至第3の加算器3−0〜3−2から構成される。
これら遅延回路1、乗算回路2、および加算回路3の接続関係や動作は、図1を参照して説明したそれらと同様であるので、説明の簡略化のためにそれらの説明については省略する。
処理工程毎データ遅延回路4は、第1乃至第3の処理工程毎データ遅延器4−0、4−1、および4−2から構成されている。入力選択部5は、第1乃至第3の入力選択器5−0,5−1,および5−2から構成されている。
第1の処理工程毎データ遅延器4−0は、3個のDフリップフロップが縦続接続された3段のシフトレジスタから構成されている。第1の処理工程毎データ遅延器4−0は、遅延回路1の入力端子に供給される入力データを3T(3サンプル間隔)だけ遅延させて、遅延させたデータを第1の入力遅延信号として第1の入力選択器5−0の一方の入力端子に供給している。第1の入力選択器5−0の他方の入力端子は、遅延回路1の第2のタップT1に接続されている。第1の入力選択器5−0は、第1の処理工程毎データ遅延器4−0で遅延されたデータ(第1の入力遅延信号)と第2のタップT1の出力信号との一方を選択して、選択した信号を第1の遅延器グループ(1−0〜1−3)へ供給する。
第2の処理工程毎データ遅延器4−1は、2個のDフリップフロップが縦続接続された2段のシフトレジスタから構成されている。第2の処理工程毎データ遅延器4−1は、遅延回路1の入力端子に供給される入力データを2T(2サンプル間隔)だけ遅延させて、遅延させたデータを第2の入力遅延信号として第2の入力選択器5−1の一方の入力端子に供給している。第2の入力選択器5−1の他方の入力端子は、遅延回路1の第3のタップT2に接続されている。第2の入力選択器5−1は、第2の処理工程毎データ遅延器4−1で遅延されたデータ(第2の入力遅延信号)と第3のタップT2の出力信号との一方を選択して、選択した信号を第2の遅延器グループ(1−4〜1−7)へ供給する。
第3の処理工程毎データ遅延器4−2は、1個のDフリップフロップから構成されている。第3の処理工程毎データ遅延器4−2は、遅延回路1の入力端子に供給される入力データを1T(1サンプル間隔)だけ遅延させて、遅延させたデータを第3の入力遅延信号として第3の入力選択器5−2の一方の入力端子に供給している。第3の入力選択器5−2の他方の入力端子は、遅延回路1の第4のタップT3に接続されている。第3の入力選択器5−2は、第3の処理工程毎データ遅延器4−2で遅延されたデータ(第3の入力遅延信号)と第4のタップT3の出力信号との一方を選択して、選択した信号を第3の遅延器グループ(1−8〜1−11)へ供給する。
係数決定部6は、16個の係数決定器から構成されている。すなわち、係数決定部6は、第1乃至第16の係数決定器6−0−0,6−0−1,6−0−2,6−0−3,6−1−0,6−1−1,6−1−2,6−1−3,6−2−0,6−2−1,6−2−2,6−2−3,6−3−0,6−3−1,6−3−1,6−3−2,および6−3−3から構成される。第1乃至第16の係数決定器6−0−0〜6−3−3は、4個ずつ第1乃至第4の係数決定器グループに分けられる。
すなわち、第1乃至第4の係数決定器6−0−0,6−0−1,6−0−2,および6−0−3は第1の係数決定器グループ6−0−X(0≦X≦3)に属し、第5乃至第8の係数決定器6−1−0,6−1−1,6−1−2,および6−1−3は第2の係数決定器グループ6−1−Xに属し、第9乃至12の係数決定器6−2−0,6−2−1,6−2−2,および6−2−3は第3の係数決定器グループ6−2−Xに属し、第13乃至第16の係数決定器6−3−0,6−3−1,6−3−1,6−3−2,および6−3−3は第4の係数決定器グループ6−3−Xに属する。
すなわち、第1の係数決定器グループ(6−0−0〜6−0−3)は、第1のタップT0用のタップ係数を決定するためのものであり、第2の係数決定器グループ(6−1−0〜6−1−3)は、第2のタップT1用のタップ係数を決定するためのものであり、第3の係数決定器グループ(6−2−0〜6−2−3)は、第3のタップT2用のタップ係数を決定するためのものであり、第4の係数決定器グループ(6−3−0〜6−3−3)は、第4のタップT3用のタップ係数を決定するためのものである。
係数選択部7は、第1乃至第4の係数選択器7−0,7−1,7−2,および7−3から構成されている。第1の係数選択器7−0は、第1の係数決定器グループ(6−0−0〜6−0−3)に属する1つの係数決定器を選択して、第1の選択したタップ係数を第1の乗算器2−0へ供給する。第2の係数選択器7−1は、第2の係数決定器グループ(6−1−0〜6−1−3)に属する1つの係数決定器を選択して、第2の選択したタップ係数を第2の乗算器2−1へ供給する。第3の係数選択器7−2は、第3の係数決定器グループ(6−2−0〜6−2−3)に属する1つの係数決定器を選択して、第3の選択したタップ係数を第3の乗算器2−2へ供給する。第4の係数選択器7−3は、第4の係数決定器グループ(6−3−0〜6−3−3)に属する1つの係数決定器を選択して、第4の選択したタップ係数を第4の乗算器2−3へ供給する。
累積加算部8は、第1乃至第8の累積加算器8−0−0,8−0−1,8−0−2,8−0−3,8−1−0,8−1−1,8−1−2,および8−1−3から構成される。
第1の累積加算器8−0−0は、第1の乗算器2−0から出力される第1の乗算結果を累積して、第1の累積加算結果を出力する。第2の累積加算器8−0−1は、第2の乗算器2−1から出力される第2の乗算結果を累積して、第2の累積加算結果を出力する。第3の累積加算器8−0−2は、第3の乗算器2−2から出力される第3の乗算結果を累積加算して、第3の累積加算結果を出力する。第4の累積加算器8−0−3は、第4の乗算器2−3から出力される第4の乗算結果を累積加算して、第4の累積加算結果を出力する。
第5の累積加算器8−1−0は、第1の加算器3−0から出力される第1の加算結果を後述のように累積加算して、第5の累積加算結果を出力する。第6の累積加算器8−1−1は、第1の加算器3−0から出力される第1の加算結果を後述のように累積加算して、第6の累積加算結果を出力する。第7の累積加算器8−1−2は、第2の加算器3−1から出力される第2の加算結果を後述のように累積加算して、第7の累積加算結果を出力する。第8の累積加算器8−1−3は、第2の加算器3−1から出力される第2の加算結果を後述のように累積加算して、第8の累積加算結果を出力する。
出力データフォーマット生成部9は、第1および第2の出力データ選択器9−0および9−1から構成される。第1の出力データ選択器9−0は、第5乃至第8の累積加算器8−1−0〜8−1−3から出力される第5乃至第8の累積加算結果を選択的に出力する。第2の出力データ選択器9−1は、第1乃至第4の累積加算器8−0−0〜8−0−3から出力される第1乃至第4の累積加算結果を選択的に出力する。
図2における入力データは、図3に示すサンプリングレート(2×Fs)の1チャネルと、サンプリングレートFsの2チャネルが、最大合計サンプリングレート(4×Fs)でチャネル#0、チャネル#1、チャネル#0、チャネル#2、・・・の順に、最大合計サンプリングレート(4×Fs)で動作する遅延回路1に入力される。
詳述すると、サンプリングレート(2×Fs)の1チャネル(チャネル#0)の入力データは、In0−0、In0−1、In0−2、In0−3、In0−4、In0−5、In0−6、In0−7、・・・からなる。サンプリングレートFsの2チャネルのうちの一方(チャネル#1)の入力データは、In1−0、In1−1、In1−2、In1−3、・・・からなり、他方(チャネル#2)の入力データは、In2−0、In2−1、In2−2、In2−3、・・・からなる。
この場合、最大合計サンプリングレート(4×Fs)の時分割入力データは、In0−0、In1−0、In0−1、In2−0、In0−2、In1−1、In0−3、In2−1、In0−4、In1−2、In0−5、In2−2、In0−6、In1−3、In0−7、In2−3、・・・となる。
その際、入力される各チャネルのデータは、各チャネルのサンプリングレート(k×Fs)(k≦4)に応じて、k個の処理工程を担当する遅延回路1上の処理工程領域に、処理工程毎データ遅延回路4にて所要サンプル間隔分遅延された後に入力される。
すなわち、第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15は、サンプリングレートFsの入力データの処理工程#0領域として使用される。一方、第1乃至第8の遅延器1−0〜1−7は、サンプリングレート(2×Fs)の入力データの処理工程#0領域として使用され、第9乃至第16の遅延器1−8〜1−15は、サンプリングレート(2×Fs)の入力データの処理工程#1領域として使用される。
フィルタリング処理の処理工程の分割について、4タップ係数のフィルタリング処理を例に挙げて説明する。
入力信号を{In0、In1、In2、In3・・・}、第1乃至第4のタップ係数を{C0、C1、C2、C3}、出力信号を{Out0、Out1、Out2、Out3・・・}とすると、出力信号は、下記の式6で表される。
Out0 = C0×In0+C1×In1+C2×In2+C3×In3
Out1 = C0×In1+C1×In2+C2×In3+C3×In4
Out2 = C0×In2+C1×In3+C2×In4+C3×In5
Out3 = C0×In3+C1×In4+C2×In5+C3×In6

… 式6
図4は、本実施形態における入力信号のサンプリングレート(k×Fs)と、処理工程分割数と、各処理工程領域が担当する積和演算と、の間の関係を示す表である。
本実施形態におけるサンプリングレート(2×Fs)の入力信号に対しては、処理工程#0の積和演算処理(Out1、Out3、Out5、・・・)、処理工程#1の積和演算処理(Out0、Out2、Out4、・・・)が、第2の入力選択部5−1を挟んだ第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15のそれぞれ前半部(1−0〜1−7)、後半部(1−8〜1−15)の処理工程領域を用いて行われる。
各遅延器1−0〜1−15の動作タイミングにおいて、前段の第9の遅延器1−8の出力がサンプリングレート(2×Fs)の入力データである場合には、第2の入力選択器5−1は、第2の処理工程毎データ遅延器4−1の出力を選択して後段(1−0〜1−7)に出力する。前段の第9の遅延器1−8の出力がサンプリングレートFsの入力データである場合には、第2の入力選択器5−1は、前段の処理工程#1領域の第9の遅延器1−8の出力(すなわち、第3のタップT2の出力)を選択して後段に出力する。
第2の処理工程毎データ遅延器4−1は、サンプリングレート(2×Fs)の入力データの処理工程#1領域(1−8〜1−15)よりも2サンプル間隔遅延した入力データ(第2の入力遅延信号)を、処理工程#0領域(1−0〜1−7)に出力し、両処理工程領域において同タイミングで処理工程の異なる積和演算を実行できるようにする。
また、サンプリングレートFsの入力信号に対しては、処理工程#0の積和演算処理(Out0、Out1、Out2、・・・)が、第1乃至第15の遅延器1−0〜1−15の全体に亘る処理工程#0領域を用いて、各チャネル時分割に行われる。
なお、第1および第3の入力選択器5−0、5−2は、第2の入力選択器5−1と共にサンプリングレート(4×Fs)のチャネルが1チャネル入力された場合に、第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15上を4個の処理工程領域に分け、各処理工程領域への入力データの選択を行う。また、第1および第3の処理工程毎データ遅延器4−0、4−2は、第2の処理工程毎データ遅延器4−1と共にサンプリングレート(4×Fs)のチャネルが1チャネル入力された場合に、第1、第3、および第2の入力選択部5−0、5−2、5−1に入力するデータを、3サンプル間隔(3T)、1サンプル間隔(1T)、2サンプル間隔(2T)だけ遅延させる。
このように、第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15上の領域を、入力信号のサンプリングレートに応じた処理工程数に分割して、処理工程毎の積和演算処理を行うので、回路構成上のタップ係数の数はkの取りうる全ての値の公倍数であることが望ましい。本実施形態の構成では、k=1、2、4の場合を考慮に入れているので、タップ係数の数としては4の倍数であることが望ましい。
前記のように入力されてくる異なるサンプリングレートの複数のチャネルに応じた処理工程毎の積和演算処理を行うため、係数決定部6は複数チャネルのレート構成に基づいたタップ係数を決定し、出力する。
図5は、本実施形態の入力データのレート構成((2×Fs)入力データ×1+Fs入力データ×2)における各係数決定部6の出力係数である。
なお、図5は前記レート構成に特化した出力係数テーブルであるが、係数決定器6−0−0〜6−3−3は、最大合計サンプリングレートが(4×Fs)になるチャネルのレート構成パターン数分の出力係数を保持しておき、チャネルのレート構成に基づいて選択出力する。
係数選択部7は、係数決定部6が出力する係数を、第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15と同じ(4×Fs)のレートで、係数決定器6−x−0、6−x−1、6−x−2、6−x−3、6−x−0、・・・の順に順次出力を選択する。
加算回路3において、第1の加算器3−0は、第1の乗算器2−0の第1の乗算結果と、第2の乗算器2−1の第2の乗算結果とを加算し、第1の加算結果を出力する。第2の加算器3−1は、第3の乗算器2−2の第3の乗算結果と、第4の乗算器2−3の第4の乗算結果とを加算して、第2の加算結果を出力する。第3の加算器3−2は、第1の加算器3−0の第1の加算結果と、第2の加算器3−1の第2加算結果とを更に加算して、第3の加算結果を出力する。
第5および第7の累積加算器8−1−0、8−1−2は、サンプリングレート(2×Fs)のチャネルに対する第1および第2の加算器3−0、3−1の第1および第2の加算結果に対し、4時分割フォーマット中当該チャネルが占めるタイミング分の累積加算を、当該チャネルの処理タイミングに合わせて行う。
なお、第6および第8の累積加算器8−1−1、8−1−3は、サンプリングレート(2×Fs)のチャネルが2チャネル入力された場合の2チャネル目のデータに対する累積加算器である。また、第1乃至第4の累積加算器8−0−0〜8−0−3は、サンプリングレート(4×Fs)のチャネルが1チャネル入力された場合の処理工程毎乗算結果に対する累積加算器である。
累積加算制御部10は、各累積加算器8−0−0〜8−1−3に対し、加算の開始信号、累積加算結果のクリア信号を出力する。
出力データフォーマット生成部9において、第1の出力データ選択器9−0は、サンプリングレート(2×Fs)のチャネルに対する処理工程#0、処理工程#1の累積加算結果を入力し、出力フォーマットを生成して出力する。すなわち、第1の出力データ選択器9−0は、第5乃至第8の累積加算器8−1−0、8−1−1、8−1−2、および8−1−3から出力される第5乃至第8の累積加算結果を選択的に出力する。
なお、サンプリングレートFsの入力データに対するフィルタ演算結果は、第3の加算器3−2より時分割で出力される。
また、第2の出力データ選択器9−1は、サンプリングレート(4×Fs)のチャネルが入力された場合に、処理工程毎の累積加算結果を入力し、出力フォーマットを生成して出力する。すなわち、第2の出力データ選択器9−1は、第1乃至第4の累積加算器8−0−0、8−0−1、8−0−2、および8−0−3から出力される第1乃至第4の累積加算結果を選択的に出力する。
図2のブロック図中に、本実施形態のサンプリングレート(2×Fs)の1チャネルと、サンプリングレートFsの2チャネルが入力された場合の第1乃至第16の遅延器1−0〜1−15の出力が処理タイミングに沿って表示されている。
第1の乗算器2−0は、第1の乗算結果として、{C0×In0−3}、{C0×In1−0}、{C1×In0−4}、および{C0×In2−0}をこの順番に出力する。第2の乗算器2−1は、第2の乗算結果として、{C2×In0−5}、{C1×In1−1}、{C3×In0−6}、および{C1×In2−1}をこの順番に出力する。第3の乗算器2−2は、第3の乗算結果として、{C0×In0−4}、{C2×In1−2}、{C1×In0−5}、および{C2×In2−2}をこの順番に出力する。第4の乗算器2−3は、第4の乗算結果として、{C2×In0−6}、{C3×In1−3}、{C3×In0−7}、および{C3×In2−3}をこの順番に出力する。
第1の加算器3−0は、第1の加算結果として、{(C0×In0−3)+(C2×In0−5)}、{(C0×In1−0)+(C1×In1−1)}、{(C1×In0−4)+(C3×In0−6)}、および{(C0×In2−0)+(C1×In2−1)}をこの順番に出力する。第2の加算器3−1は、第2の加算結果として、{(C0×In0−4)+(C2×In0−6)}、{(C2×In1−2)+(C3×In1−3)}、{(C1×In0−5)+(C3×In0−7)}、および{(C2×In2−2)+(C3×In2−3)}をこの順番に出力する。第3の加算器3−2は、第3の加算結果として、{−}、{(C0×In1−0)+(C1×In1−1)+(C2×In1−2)+(C3×In1−3)}、{−}、{(C0×In2−0)+(C1×In2−1)+(C2×In2−2)+(C3×In2−3)}をこの順番に出力する。
第5の累積加算器8−1−0は、第5の累積加算結果として、{(C0×In0−3)+(C2×In0−5)}、{−}、{(C0×In0−3)+(C2×In0−5)+(C1×In0−4)+(C3×In0−6)}、および{−}をこの順番に出力する。第7の累積加算器8−1−2は、第7の累積加算結果として、{(C0×In0−4)+(C2×In0−6)}、{−}、{(C0×In0−4)+(C2×In0−6)+(C1×In0−5)+(C3×In0−7)}、および{−}をこの順番に出力する。
このように、異なるサンプリングレートの複数チャネル入力データに対し、各チャネルのサンプリングレートに応じて分割した処理工程を、遅延回路1上の各処理工程領域にて行うことで、最大合計サンプリングレート(4×Fs)の複数チャネルフィルタ処理が可能になる。
具体的には、{サンプリングレート(4×Fs)の入力データが1チャネル}、{サンプリングレート(2×Fs)の入力データが2チャネル}、{サンプリングレート(2×Fs)の入力データが1チャネル+サンプリングレートFsの入力データが2チャネル}、および{サンプリングレートFsの入力データが4チャネル}等のサンプリングレート構成の複数チャネルフィルタ処理が、本実施形態の構成により可能になる。なお、{サンプリングレートFsの入力データが4チャネル}は、従来の複数チャネルフィルタ処理に相当する。
本実施形態では簡単のため4タップ係数の場合を例に挙げて説明したが、一般に通信分野で用いられる急峻もしくは狭帯域のフィルタで要求されるタップ数は数十〜百数十タップと大きくなる。この場合、遅延回路1、乗算回路2、加算回路3の個数は、従来の複数チャネルフィルタ回路と変わらない。また、本発明の実施形態の構成で新たに追加される、処理工程毎データ遅延回路4、入力選択部5、累積加算部8、出力データフォーマット生成部9、および累積加算制御部10の個数は、タップ数が大きくなったとしても、本実施形態の図2に示した個数から増加することはなく、増加するのは、比較的回路規模の小さい選択回路から構成される係数決定部6、および係数選択部7のみである。
次に、本実施形態に係るディジタルフィルタ回路の効果について説明する。
以上説明した通り、本発明の実施形態に係るディジタルフィルタ回路によれば、従来技術のディジタルフィルタ回路に最小限の回路を追加するだけで、最大合計サンプリングレート(n×Fs)の異なるサンプリングレートの複数の入力データ列に対して、1つの回路でフィルタリング処理を行うことができる。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
例えば、上記実施形態では、n=4の場合を記述したが、それに限られるものではなく、引き出しタップ間の遅延回路1、係数決定部6、累積加算部8を増やした構成にすることで、n>4の場合にも対応可能である。
なお、図2の実施形態では、遅延回路1と後段の係数選択部7、乗算回路2、加算回路3が同一レートで動作する構成を記述したが、各処理工程領域内で遅延回路1のタップ出力を遅延回路1の動作レートのL倍のレートで選択出力し、係数選択部7、乗算回路2、加算回路3をL倍のレートで動作させた後に新たな累積加算器において前述のL倍のレートで選択した遅延器出力に対応した積和演算結果を累積加算することで、上記実施形態と同様のフィルタリング処理を行うことが可能であり、かつ乗算器の数を(1/L)に削減することが出来る。
また、図2の実施形態では、フィルタ出力を入力サンプリングレート毎に個別に出力データフォーマット生成部9から出力するように記述したが、それに限られるものではなく、各サンプリングレートの入力データに対応するフィルタ出力を統合した時分割フォーマットに再生成するようにしてもよい。
また、図2の実施形態では、複数チャネルを構成する入力データのサンプリングレートをFsの2のべき乗倍(1倍、2倍、4倍)の場合の構成を記述したが、これに限られたものではなく、例えば3分割した処理工程領域を遅延回路1上に確保するための入力選択部5を更に追加することにより、サンプリングレート(3×Fs)を含んだ最大合計サンプリングレート(4×Fs)までの複数チャネル、すなわちFsの逓倍のサンプリングレートのチャネルに関するフィルタリング処理が可能になる。
更に、図2の実施形態の構成では、各チャネルのフィルタ処理毎に係数決定部6にて個別の係数を設定可能であるため、例えば同じサンプリングレートの入力データに対して、異なるフィルタ特性、より具体的には異なるタップ係数を与えることも可能である。その際に所要タップ数が大きい方に合わせて遅延回路1を構成し、タップ数が少ない特性のチャネルに関してはタップ係数の両端を零で埋めて係数決定部6に保持しておくことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、異なるサンプリングレートの複数の入力データ列を処理するディジタルフィルタ回路に利用される。
【符号の説明】
【0011】
1 ・・・ 遅延回路
1−0〜1−15 ・・・ 遅延器
2 ・・・ 乗算回路
2−0〜2−3 ・・・ 乗算器
3 ・・・ 加算回路
3−0〜3−2 ・・・ 加算器
4 ・・・ 処理工程毎データ遅延回路
4−0〜4−2 ・・・ 処理工程毎データ遅延器
5 ・・・ 入力選択部
5−0〜5−2 ・・・ 入力選択器
6 ・・・ 係数決定部
6−0−0〜6−3−3 ・・・ 係数決定器
7 ・・・ 係数選択部
7−0〜7−3 ・・・ 係数選択器
8 ・・・ 累積加算部
8−0−0〜8−1−3 ・・・ 累積加算器
9 ・・・ 出力データフォーマット生成部
9−0〜9−1 ・・・ 出力データ選択器
10 ・・・ 累積加算制御部
T0〜T3 ・・・ 遅延回路のタップ
この出願は、2011年5月17日に出願された、日本特許出願第2011−110286号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5