(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の導電層は、前記デバイス層の前記画素電極との間で容量成分を保持するための蓄積容量電極であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示装置。
前記表示装置は、前記表示素子層の視野側に配置される前記第1の基板又は前記第2の基板の表面に、所望の画像のデータを入力するための入力手段を備えることを特徴する請求項1乃至9のいずれかに記載の表示装置。
前記デバイス層は、少なくとも、画素スイッチ、該画素スイッチに接続された画素電極及び配線が、複数の表示画素に対応して配列されている請求項11乃至14のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<アクティブマトリクス型メモリ性表示装置の非画像更新時の画像劣化現象の解析>
まず、本願発明者が実施した電子ペーパー表示装置(アクティブマトリクス型メモリ性表示装置)の非画像更新状態時における表示画面の劣化現象の解析、検証結果が以下に説明される。
【0021】
本解析に適用した電子ペーパー表示装置は、薄膜トランジスタ(Thin-Film Transistor;以下、「TFT」と略記する)を設けたTFT基板と、該TFT基板に対向する対向基板と、TFT基板と対向基板間に介在する電気泳動表示素子と、を含む電気泳動型表示パネルを備えている。
【0022】
ここで、TFTは、画素駆動用のスイッチ(画素スイッチ)である。また、TFT基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるプラスチック基板と、TFTを一面側に形成したガラス基板と、を非導電性の糊(接着材料)で貼り付けて形成したものである。このTFT基板をプラスチック基板とガラス基板との2層で形成した理由は、TFTが形成されるガラス基板の厚さは0.1mm〜0.7mmと薄く割れやすいため、ガラス基板への衝撃を吸収するやわらかいプラスチック基板やプラスチック層等の緩衝層が必要であるためである。また、本解析においては、プラスチック基板表面の静電気を抑制するために、プラスチック基板表面に静電防止スプレーに塗布した表示パネルを用いた。
【0023】
このような電子ペーパー表示装置において、まず、電気泳動型表示パネルが表示駆動されて、該表示パネルに所望の画像が表示又は書き換えられた画像更新状態に設定した。その後、電気泳動型表示パネルが非表示駆動状態に制御されて、該表示パネルに表示された上記画像が保持又は書き換えられない非画像更新状態に設定した。この駆動方法による画像の解析結果では、上述したような画像の乱れや画質の劣化はほとんど生じなかった。
【0024】
ところが、例えば電子ペーパーの画面上に直接絵を描くペン入力や、画面に直接人体等が触れるタッチパネル等の入力手段を適用して、表示装置の画像更新が連続的かつ長時間継続するような表示を行った場合には、非画像更新状態の時に画像の劣化が発生した。具体的には、白表示した画面が徐々に灰色に変化していくような現象が観測された。このような現象は、以下の原因によるものであると本願発明者は推定した。
【0025】
すなわち、TFTは、TFTを駆動するための制御信号(又は選択信号)としてゲート信号が必要である。上記の電気泳動型表示パネルに適用されるTFTにおいては、オン動作(選択状態)の時にはゲート信号として例えば+25V程度の正電圧がゲート端子に印加される。一方、オフ動作(非選択状態)の時にはゲート信号として例えば−25V程度の負電圧がゲート端子に印加される。ここでは、本願発明者は、例えば画素数が800×600画素のSVGA(Super Video Graphics Array;スーパー・ビデオ・グラフィックス・アレイ)の解像度を有する表示装置に上記電気泳動型表示パネルを適用した場合について検証した。
【0026】
一般に、表示駆動制御における上記のオン時間(選択期間)は、0.027ms程度であり、オフ時間(非選択期間)は16.6ms程度に設定されている。そのため、TFTは、表示駆動サイクルの大半がオフ時間となり、実質的にオフ動作時の負電圧である−25VがTFT基板に配設されたゲート配線に印加され続けることになる。これにより、TFT基板のTFTが形成されたガラス基板及びプラスチック基板には−25Vの直流(Direct Current;DC)電圧が印加され続けることになる。そのため、ガラス基板とプラスチック基板の界面にある非導電性の糊による接着層やプラスチック基板内部でもチャージアップが生じる。本願発明者は、このチャージアップに起因して発生する電界が電気泳動表示素子の動作状態に影響を及ぼしているものと推定した。
【0027】
以上のように、電子ペーパー表示装置においては、非画像更新状態の時にも画像を保持することが求められている。しかしながら、本願発明者の解析により、プラスチック基板又はプラスチック層を有するTFT基板を用いた電子ペーパー表示装置においては、画像の乱れや画質の劣化の問題が生じることが判明した。その原因について、本願発明者は、プラスチック基板表面の静電気だけでなく、TFTをオフ状態に保持するためにゲート配線に印加するゲート信号(負電圧)等に起因して発生する直流電界によるプラスチック基板や接着層のチャージアップによるものであると推定した。
【0028】
そして、このような問題を解決するために、本願発明者は種々検討した結果、次のような結論に達した。すなわち、その結論とは、TFT基板に配設された配線とプラスチック基板又は接着層との間に電界シールド層を設けることにより、上記の画像の乱れや画質の劣化を良好に防止することができるということである。
【0029】
以下に、本発明に係る表示装置及びその製造方法の具体的な実施形態が詳しく説明される。
【0030】
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る表示装置の第1の実施形態の概略断面図である。ここでは、図示の都合上、一部の断面のハッチングが省略されている。
【0031】
図1に示すように、第1の実施形態に係る表示装置に適用可能な表示パネルは、第1の基板100と、第2の基板200と、表示素子層300と、を備えている。
【0032】
第1の基板100は、絶縁性基板110上に第1の導電層120を介してデバイス層130を積層した構成を有している。デバイス層130は、少なくとも画素スイッチ131に接続された画素電極132及び配線133を有している。これらの画素スイッチ131、画素電極132及び配線133は、表示パネルに配列される複数の表示画素の各々に対応するように配列されている。
【0033】
また、第2の基板200は、上記の第1の基板100に配列された画素電極132に対向するように設けた第2の導電層210を有している。
【0034】
表示素子層300は、上記の第1の基板100と第2の基板200の間に介在している。すなわち、本発明は、第1の基板100側の画素電極132と、第2の基板200側の第2の導電層210と、が表示素子層300を介して対向した構成を有している。
【0035】
そして、本実施形態の表示装置においては、上記のような構成を有する表示パネルが、少なくとも表示画素の非画像更新時に、第1の導電層120及び第2の導電層210が特定の電位に設定される。ここで、非画像更新時に第1の導電層120及び第2の導電層210に設定する特定の電位は、同電位であってもよいし、さらに、当該電位をグラウンド電位(接地電位)に設定するものであってもよい。
【0036】
すなわち、本実施形態に適用される表示パネルは、少なくとも非画像更新時に、第1の導電層120及び第2の導電層210が特定の電位(同電位やグラウンド電位)に接続されて、両者の間に電位差が生じないように設定される。これにより、本実施形態によれば、絶縁性基板110の表面に帯電した静電気による電界や、配線133等からの直流電界の発生をシールドすることができる。したがって、本実施形態に係る液晶表示装置は、絶縁性基板110におけるチャージアップを抑制することができるので、非画像更新時における画像の乱れや画質の劣化を防止することができる効果を有している。
【0037】
<第2の実施形態>
(第1の構造例)
図2は、第2の実施形態に係る表示パネルの第1の構造例を示す概略断面図である。ここでは、図示の都合上、一部の断面のハッチングが省略されている。
【0038】
第2の実施形態に係る表示装置(電子ペーパー表示装置)に適用可能な表示パネルの第1の構造例は、
図2に示すように、対向基板3と、電気泳動表示素子4と、TFT基板6と、を順次積層した電気泳動型の表示パネルを備えている。対向基板3と電気泳動表示素子4を積層した部材は、
図2中に示した電気泳動表示素子フィルム18を構成する。なお、この表示パネルは、図面上方側を視野側として、観察者が対向基板3を介して電気泳動表示素子4の表示を視認するようにした構成を有している。ここで、対向基板3は本発明の第2の基板に対応する構成であり、電気泳動表示素子4は本発明の表示素子層に対応する構成であり、TFT基板6は本発明の第1の基板に対応する構成である。
【0039】
本構造例において、対向基板3は、プラスチック基板1の一面側(すなわち、図面下面側)に、例えば単一の平面電極(いわゆる、べた電極)から形成される対向電極2を設けた構成を有している。対向電極2は、少なくとも後述するTFT基板6に配列される複数の画素電極14の形成領域(すなわち、表示領域)に対応する領域に設けられる。また、本構造例においては、対向基板3に用いるプラスチック基板1として、例えばポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリエステル、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone;PES)、ポリイミド膜、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)等を適用することができる。ここで、対向電極2は本発明の第2の導電層に対応する構成である。
【0040】
電気泳動表示素子4は、例えばマイクロカプセル型の電気泳動表示素子であって、対向基板3とTFT基板6間に介在している。電気泳動表示素子4は、具体的には、高分子材料(ポリマー)のバインダー(すなわち、結合剤)の中に、例えば直径が約40μmの球体状の複数のマイクロカプセル9を二次元的に敷き詰めたシート形状を有している。
【0041】
マイクロカプセル9の中には、例えばイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol;IPA)等の溶媒が封入されている。マイクロカプセル9は、上記溶媒中に、ナノレベルの大きさを有し、例えばマイナスに帯電した酸化チタン系の白色顔料を用いた無数の白粒子10と、例えばプラスに帯電したカーボン系の黒色顔料を用いた黒粒子11と、が分散されて、浮遊するようにした構成を有している。
【0042】
TFT基板6は、導電性接着層15を介して、TFT層26を設けたガラス基板7と、プラスチック基板8と、を積層した構成を有している。TFT層26を設けたガラス基板7は、
図2中に示したTFTガラス基板27を構成する。ここで、導電性接着層15は本発明の第1の導電層に相当し、TFT層26は本発明のデバイス層に相当し、プラスチック基板8は本発明の絶縁性基板に相当する構成である。
【0043】
TFT層26は、ガラス基板7の一面側(すなわち、図面上面側)に設けられ、画素駆動用のスイッチ(以下、「画素スイッチ」と記す)としてのTFT5と、各種配線5zと、パッシベーション膜13と、画素電極14を有している。
【0044】
ここで、画素スイッチとして適用可能なTFT5は、
図2に示すように、ゲート電極5aと、ゲート絶縁膜13aと、半導体層5bと、ドレイン電極5cと、ソース電極5dと、を備える薄膜トランジスタ構造を有している。なお、TFT5の半導体層5bは、例えばアモルファスシリコン(a-Si)やポリシリコン(p-Si)等の無機半導体材料を用いるものであってもよい。あるいは、半導体層5bは、ポリチオフェン等の有機半導体材料を用いるものであってもよい。さらには、半導体層5bは、透明な酸化亜鉛(ZnO)等の半導体材料を用いるものであってもよい。
【0045】
各種配線5zは、TFT5を駆動するための配線であり、具体的にはTFT5に接続された各種の配線であって、例えばゲート配線やデータ配線等である。
【0046】
パッシベーション膜13は、TFT5や各種配線5zを被覆して保護する単層又は複層の絶縁膜である。具体的には、本構造例においては、パッシベーション膜13として、例えば窒化シリコン(SiNx)膜等の無機絶縁膜やアクリル等の有機膜、あるいは、それらの積層膜を適用することができる。
【0047】
画素電極14は、
図2に示すように、パッシベーション膜13上に延在するように形成されるとともに、該パッシベーション膜13に設けたコンタクトホール21を介してTFT5のソース電極5dに接続されている。すなわち、画素電極14は、上述した電気泳動表示素子4を介して対向基板3側の対向電極2に対向するように形成されている。また、TFT5と画素電極14は、表示パネルに配列される複数の表示画素の各々に対応するように、ガラス基板7上に二次元的に配列されている。
【0048】
TFT基板6に用いるガラス基板7は、例えば0より大きく300μm以下(0.3mm以下)の厚さに形成した薄いガラス板であって、フレキシブル性を有している。また、本構造例においては、プラスチック基板8として、上述した対向基板3のプラスチック基板1と同様に、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド膜、ポリカーボネート(PC)等を適用することができる。
【0049】
導電性接着層15は、
図2に示すように、ガラス基板7と、プラスチック基板8と、を密着して接合するための接着層である。導電性接着層15は、例えば導電性粒子(図示を省略)が混合された糊又は接着材料を塗布することによって形成される。なお、本構造例においては、導電性粒子として、例えばグラファイト、金、ニッケルメッキ粒子等を適用することができる。また、本構造例においては、糊又は接着材料として、例えばシリコンやアクリル系樹脂等を適用することができる。
【0050】
導電性接着層15の表面抵抗率は、静電気による電界が電気泳動表示素子4に影響を与えない程度の時間に基づいて設定されることが好ましい。具体的には、表面抵抗率は、例えば1秒〜10秒程度でTFT基板6に帯電した静電気(電荷)を放電することができる値に設定されることが好ましく、本願発明者の実験結果によると、3×10
9Ω/□以下であることが好ましい。
【0051】
そして、本実施形態においては、少なくとも表示装置(すなわち、表示パネルに配列された各表示画素)が非画像更新状態の時に、
図2に概念的に示すように、導電性接着層15が対向基板3の対向電極2やグラウンド線に電気的に接続されるように制御する。これにより、導電性接着層15及びそれに隣接する基板において帯電した静電気(電荷)は対向電位やグラウンド電位(0V)に放電される。すなわち、導電性接着層15は、TFT層26の各種配線5z(特に、ゲート配線)に印加する電圧に起因して生じる電界がプラスチック基板8側に漏れることを防止する。更に、導電性接着層15は、プラスチック基板8表面の静電気によるチャージアップを防止する。このように、導電性接着層15は、電界シールド層として機能する。
【0052】
(第2の構造例)
図3は、第2の実施形態に係る表示パネルの第2の構造例を示す概略断面図である。ここで、上述した第1の構造例に示したパネル構造(
図2参照)と同等の構成については、同一の符号を付して示され、その説明が簡略化又は省略される。
【0053】
上述した第1の構造例においては、電界シールド層として、導電性粒子が混合された糊や接着材料(以下、便宜的に「導電糊」と総称する)から形成される導電性接着層15を適用したパネル構造が説明された。本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
すなわち、本実施形態に係る表示パネルの他の構造例(第2の構造例)は、導電性接着層15に替えて、例えばシールド電極を設けたパネル構造を有している。具体的には、表示パネルの第2の構造例は、
図3に示すように、TFT基板6を形成するガラス基板7とプラスチック基板8の間に、透明な導電膜材料から形成されるシールド電極16が介在した構成を有している。本構造例においては、透明な導電膜材料として、例えば酸化インジウム・スズ(Indium Tin Oxide;以下、「ITO」と略記する)等を良好に適用することができる。ここで、シールド電極16は、絶縁性(又は非導電性)の糊や接着材料を用いてガラス基板7やプラスチック基板8に接着されるものであってもよい。また、シールド電極16を構成するITO膜は、ガラス基板7側に形成されるものであってもよいし、プラスチック基板8側に形成されるものであってもよい。ここで、本構造例におけるシールド電極16は本発明の第1の導電層又は導電性の薄膜電極に相当する構成である。
【0055】
そして、本実施形態においては、少なくとも表示装置(すなわち、各表示画素)が非画像更新状態の時に、
図3に概念的に示すように、シールド電極16が対向基板3の対向電極2やグラウンド線に電気的に接続されて同電位になるように制御する。すなわち、シールド電極16は、当該シールド電極16及びそれに隣接する基板において帯電した静電気を対向電位やグラウンド電位に放電する電界シールド層として機能する。
【0056】
このように、本実施形態に係る各パネル構造によれば、少なくとも表示装置が非画像更新状態の時には、電界シールド層によりプラスチック基板8の表面に帯電した静電気による電界や、TFT層26のゲート配線等からの直流電界がシールドされる。ここで、電界シールド層とは、上述した導電性接着層15やシールド電極16である。したがって、本実施形態に係る表示装置は、非表示駆動(非画像更新状態)時における表示画面の劣化(画像の乱れや画質の劣化)を防止して、信頼性に優れた電子ペーパー表示装置を実現することができる効果を有している。
【0057】
(製造方法)
次に、上述した第1の構造例に示したパネル構造を有する表示パネルの製造方法が図面を参照しながら説明される。
【0058】
図4は、第2の実施形態に係る表示パネルの製造方法の一例を説明する工程断面図である。ここでは、第1の構造例を示す
図2を適宜参照して製造方法が説明される。
【0059】
上述した第1の構造例を有する表示パネルの製造方法は、まず、
図4(a)に示すように、ガラス基板7の一面側(すなわち、図面上面側;デバイス形成面側)にTFT層26が形成される。具体的には、
図2に示したように、ガラス基板7の一面側に、ゲート電極5a及び該ゲート電極5aに接続されたゲート配線を含む各種配線5zが形成された後、該ゲート電極5a及び各種配線5zを被覆するゲート絶縁膜13aが形成される。続いて、ゲート電極5aに対応するゲート絶縁膜13a上に、半導体層5b、ドレイン電極5c、ソース電極5d及びドレイン電極5cに接続されたデータ配線を含む各種配線(図示を省略)が形成される。続いて、ゲート絶縁膜13a上に、半導体層5b、ドレイン電極5c、ソース電極5d及びデータ配線を含む各種配線を被覆するパッシベーション膜13が形成された後、当該パッシベーション膜13にコンタクトホール21が形成される。続いて、コンタクトホール21内に露出するソース電極5dに電気的に接続し、かつ、パッシベーション膜13上に延在する画素電極14が形成される。これにより、ガラス基板7の一面側に、表示パネルの各表示画素に対応してTFT5と画素電極14が配列されたTFT層26を形成したTFTガラス基板27が完成する。
【0060】
次いで、
図4(b)に示すように、TFTガラス基板27の一面側(すなわち、図面上面側)の各画素電極14に接するように保護フィルム17が貼り付けられる。
【0061】
次いで、このTFTガラス基板27をエッチング溶液に浸すことにより、
図4(c)に示すように、ガラス基板7のTFT層26が形成されていない他面側(すなわち、図面下面側;ガラス面側)からガラス基板7がエッチングされる。このエッチング工程においては、予め測定しておいたガラス基板7のエッチングレートに基づいて、所望の膜厚になるまでエッチング処理を継続した後、TFTガラス基板27をエッチング溶液から取り出してエッチング処理を終了(停止)する。ここで、ガラス基板7の厚みは例えば0より大きく300μm以下になるようにエッチング処理を実行する。なお、本願発明者らは、ガラス基板7の厚みを300μmよりも厚くすると、表示パネルの十分なフレキシブル性が得られないことを確認している。
【0062】
次いで、ガラス基板7の上記エッチング処理が実行された他面側(すなわち、図面下面側;エッチング面)に導電糊を塗布してプラスチック基板8が貼り付けられる。その後、TFTガラス基板27の一面側(すなわち、図面上面側)に貼り付けられた保護フィルム17を剥がすことにより、
図4(d)に示すように、TFT5等のデバイスが形成されたTFT層26がプラスチック基板8側に転写される。これにより、ガラス基板7の一面側にTFT5や各種配線5z等を有するTFT層26が形成され、ガラス基板7の他面側に導電性接着層15を介してプラスチック基板8が貼り付けられたTFT基板6が完成する。
【0063】
次いで、
図4(e)に示すように、TFT基板6のTFT層26に電気泳動表示素子フィルム18が貼り合わせられる。この工程では、TFT層26に形成された各画素電極14に電気泳動表示素子4が接触し、かつ、該電気泳動表示素子4を介して上記画素電極14と対向基板3の対向電極2が対向するように電気泳動表示素子フィルム18が貼り合わせられる。なお、この工程の後、又は、この工程と並行して、TFT基板6側に形成した導電性接着層15と、電気泳動表示素子フィルム18(対向基板3)側の対向電極2と、を電気的に接続するため手段が形成される。具体的には、少なくとも表示装置(表示パネル)が非画像更新状態の時に、上記導電性接着層15と対向電極2を電気的に接続するための配線やスイッチ手段が適宜形成される。これにより、
図2に示したパネル構造を有する表示パネルが完成する。
【0064】
なお、上記の製造方法においては、
図4(d)に、ガラス基板7の他面側(すなわち、図面下面側;エッチング面)に導電糊を塗布してプラスチック基板8を貼り付ける工程を示した。この工程に替えて、当該エッチング面にITO等の透明な導電膜材料を用いたシールド電極16が形成された後、非導電性の糊を塗布してプラスチック基板8が貼り付けられ、その後上記と同様の工程が適用されるものであってもよい。このような製造方法によれば、
図3に示したパネル構造を有する表示パネルが完成する。
【0065】
(第3の構造例)
図5は、第2の実施形態に係る表示パネルの第3の構造例を示す概略断面図である。ここで、上述した第1及び第2の構造例に示したパネル構造(
図2、
図3参照)と同等の構成については、同一の符号を付して示され、その説明が簡略化又は省略される。
【0066】
上述した第1及び第2の構造例においては、ガラス基板7のデバイス形成面側にTFT層26及び電気泳動表示素子フィルム18を積層し、ガラス基板7のエッチング面側に導電性接着層15やシールド電極16を介してプラスチック基板8を積層したパネル構造が示された。本発明はこのパネル構造に限定されるものではない。
【0067】
すなわち、本実施形態に係る表示パネルのさらに他の構造例(第3の構造例)は、ガラス基板7のデバイス形成面側のTFT層26の表面に、シールド電極16や導電性接着層15を介してプラスチック基板8が積層された構成を有している。また、本構造例は、ガラス基板7のエッチング面側に、電気泳動表示素子フィルム18を積層した構成を有している。
【0068】
具体的には、表示パネルの第3の構造例においては、
図5に示すように、ガラス基板7の他面側(すなわち、図面下面側)に複数の画素電極14を配置した構成を有している。また、この画素電極14を被覆するように形成した絶縁性の層間膜20の表面(すなわち、図面下面側)に、複数のTFT5が設けられている。ここで、TFT5は、上述した構造例と同様に、ゲート電極5aと、ゲート絶縁膜13aと、半導体層5bと、ドレイン電極5cと、ソース電極5dと、を有している。また、各TFT5のソース電極5dは、ゲート絶縁膜13a及び層間膜20に形成したコンタクトホール21を介して、各画素電極14に接続されている。
【0069】
TFT5を含む層間膜20及びゲート絶縁膜13aは、パッシベーション膜13に被覆されている。このパッシベーション膜13の表面(すなわち、図面下面側)にはシールド電極16が配置されている。ここで、シールド電極16は、表示パネルの表示領域に対応する領域に設け、該表示領域の周辺の端子領域(図示を省略)には設けないようにする。その理由は、端子領域には各種配線5zを介してTFT5に接続し、かつ、表示駆動用のICチップ(ドライバチップ)に接続するための端子電極を露出して形成する必要があるためである。また、他の理由としては、当該端子領域は非表示領域であるので、帯電による電気泳動表示素子フィルム18における表示状態への影響がないためである。
【0070】
シールド電極16を含むパッシベーション膜13の表面(すなわち、図面下面側)には、電界シールド層としての機能を有する導電性接着層15を介して、プラスチック基板8が積層されている。一方、薄くエッチングしたガラス基板7の一面側(図面上面側)には、対向基板3と電気泳動表示素子4とを有する電気泳動表示素子フィルム18が積層されている。
【0071】
そして、本実施形態においては、少なくとも表示装置が非画像更新状態の時に、
図5に概念的に示すように、導電性接着層15及びシールド電極16から形成される電界シールド層が対向電極2やグラウンド線に電気的に接続されて同電位に設定されるように制御する。
【0072】
なお、このようなパネル構造においては、薄くエッチングされたガラス基板7を介して、電気泳動表示素子フィルム18の電気泳動表示素子4に各画素電極14から電圧が印加されることになる。そこで、マイクロカプセル9内の着色粒子(白粒子10及び黒粒子11)を良好に駆動制御するために、当該ガラス基板7の膜厚は、電気泳動表示素子フィルム18の大きさ(具体的には、マイクロカプセル9の直径)である40μm以下にすることが好ましい。
【0073】
このように、本実施形態に係るパネル構造によれば、導電性接着層15及びシールド電極16から形成される電界シールド層と、対向基板3の対向電極2との間で電位差が生じないように、電界シールド層と対向電極2が電気的に接続される。これにより、本実施形態に係る表示パネルは、プラスチック基板8の表面に帯電した静電気による電界や、ゲート配線等からの直流電界をシールドして、プラスチック基板8や導電性接着層15におけるチャージアップを抑制することができる。したがって、本実施形態に係る表示装置は、非表示駆動(非画像更新状態)時における表示画面の劣化を防止して、信頼性に優れた電子ペーパー表示装置を実現することができる効果を有している。
【0074】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る表示装置に適用可能な表示パネルの第3の実施形態が図面を参照しながら説明される。
【0075】
図6は、本発明に係る表示装置に適用可能な表示パネルの第3の実施形態を示す概略断面図である。ここで、上述した第2の実施形態に示した各パネル構造と同等の構成については、同一の符号を付して示され、その説明が簡略化又は省略される。
【0076】
第3の実施形態においては、TFT基板6側に設ける電界シールド層を、画素電極14に書き込まれた画素電位を保持するためのストレージ電極として利用する例について説明する。ここでは、TFT基板6以外の構成(すなわち、対向基板3及び電気泳動表示素子4を有する電気泳動表示素子フィルム18)は、上述した第2の実施形態と同等であるので、その説明が省略される。
【0077】
第3の実施形態に係る表示装置に適用可能な表示パネルは、
図6に示すように、TFT基板6が、TFT層26と、層間膜20と、蓄積容量電極19と、ガラス基板7と、層間接着層15aと、プラスチック基板8と、を順次積層した構成を有している。すなわち、ガラス基板7の一面側(図面上面側)には蓄積容量電極19と層間膜(絶縁層)20を介してTFT層26が設けられ、ガラス基板7の他面側(図面下面側)には層間接着層15aを介してプラスチック基板8が設けられている。
【0078】
ここで、TFT層26は、上述した第2の実施形態と同様に、TFT5や各種配線5z、パッシベーション膜13、画素電極14を有している。
【0079】
また、本実施形態においては、層間膜20として、例えばテトラエトキシシラン(Tetraethoxysilane;TEOS)等の絶縁性の無機平坦化膜を適用することができる。また、本実施形態においては、蓄積容量電極19として、例えばITO等の導電膜材料から形成される導電層を適用することができる。また、蓄積容量電極19は、例えば単一の平面電極(いわゆる、べた電極)として形成される。
【0080】
層間接着層15aは、ガラス基板7とプラスチック基板8とを密着して接合するための接着層である。層間接着層15aは、例えば非導電性の糊又は接着材料を塗布することによって形成される。なお、層間接着層15aは、上述した第2の実施形態に示した導電性接着層15と同様に、導電性の糊により形成されるものであってもよい。
【0081】
ガラス基板7及びプラスチック基板8は、上述した第2の実施形態と同等であるので、その説明が省略される。
【0082】
このようなパネル構造によれば、表示領域の各表示画素に対応してTFT基板6に設けられた各画素電極14と、上記の単一の平面電極として設けた蓄積容量電極19との間で蓄積容量(容量成分)が形成される。ここで、蓄積容量電極19は、当該蓄積容量を保持する機能に加えて、電気泳動表示素子4の非表示駆動(非画像更新状態)時における電界シールド層としての機能も併せ持っている。そのため、蓄積容量電極19は、表示領域に配列された画素電極14の全部にほぼ対応する領域に設けることが望ましい。
【0083】
そして、本実施形態においては、少なくとも表示装置(表示パネル)が非画像更新状態の時には、
図6に概念的に示すように、蓄積容量電極19が対向基板3の対向電極2やグラウンド線に電気的に接続されて同電位に設定されるように制御する。
【0084】
このように、本実施形態に係るパネル構造によれば、上述した第2の実施形態と同様に、非画像更新状態におけるTFT基板6のプラスチック基板8におけるチャージアップが抑制される。したがって、本実施形態に係る表示装置は、表示画面の劣化(画像の乱れや画質の劣化)を防止することができる効果を有している。加えて、本実施形態に係るパネル構造によれば、各表示画素において容易に大きな蓄積容量が形成される。したがって、本実施形態に係る表示装置は、電気泳動表示素子の駆動能力(すなわち、画像表示状態の保持力)を向上させることができるとともに、開口率を大きく設定することができる効果を有している。
【0085】
<第4の実施形態>
次に、本発明に係る表示装置に適用可能な表示パネルの第4の実施形態が図面を参照しながら説明される。
【0086】
(第1の構造例)
図7は、第4の実施形態に係る表示パネルの第1の構造例を示す概略断面図である。ここで、上述した第2の実施形態に示したパネル構造と同等の構成については、同一の符号を付して示され、その説明が簡略化又は省略される。
【0087】
上述した第2及び第3の実施形態においては、ガラス基板7の一面側にTFT層26を設け、その他面側に電界シールド層を介してプラスチック基板8を設けたTFT基板6が示された。すなわち、第2及び第3の実施形態においては、ガラス基板7の他面側をエッチングして、0より大きく300μm(0.3mm)以下の厚みを有するガラスの残膜を備えたパネル構造が説明された。本発明はこれに限定されるものではない。
【0088】
すなわち、本実施形態に係る表示パネルの第1の構造例は、TFT基板6にガラスの残膜(上述した第2の実施形態の第2の構造例に示したガラス基板7)に替えて絶縁性の層間膜が設けられたパネル構造を有している。具体的には、本構造例においては、
図7に示すように、プラスチック基板8上に導電性接着層15及びシールド電極16を介して層間膜20が設けられ、該層間膜20上にTFT層26が設けられた構成を有している。また、本構造例においては、TFT層26表面に電気泳動表示素子4及び対向基板3を有する電気泳動表示素子フィルム18が直接積層されている。
【0089】
(製造方法)
図8は、第4の実施形態に係る表示パネルの第1の構造例に適用可能な製造方法の一例を説明する工程断面図である。ここで、上述した第2の実施形態に示した製造方法と同等のプロセスについては、その説明が簡略化される。
【0090】
上述したパネル構造(
図7)を有する表示パネルの製造方法は、まず、
図8(a)に示すように、ガラス基板7の一面側(すなわち、図面上面側;デバイス形成面側)にエッチングストッパ層22が形成される。ここで、本実施形態においては、エッチングストッパ層22として、ガラスのエッチング液に溶けにくい材料、例えばシリコンリッチなシリコン酸窒化物(SiONx)等を適用することができる。続いて、エッチングストッパ層22上に、ITO等の導電膜材料を用いて電界シールド層を兼ねたシールド電極16が全面に形成された後、このシールド電極16を含むエッチングストッパ層22上に層間膜20が被覆形成される。ここで、本実施形態においては、層間膜20として、上述した第3の実施形態と同様に、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)等の無機の絶縁膜を適用することができる。続いて、当該層間膜20上に、TFT5や各種配線5z、パッシベーション膜13、画素電極14を有するTFT層26を形成して、エッチングストッパ層22及びシールド電極16を有するTFTガラス基板27が形成される。
【0091】
次いで、
図8(b)に示すように、TFTガラス基板27のTFT層26表面に、各画素電極14に接するように保護フィルム17が貼り付けられる。なお、この工程においては、例えば紫外線(ultraviolet;UV)を照射することにより剥離する性質を有する糊や接着材料を適用して保護フィルム17を貼り付けるものであってもよい。また、同等の効果を示すものとして、例えば加熱することにより剥離する性質を有する糊や接着材料を適用するものであってもよい。
【0092】
次いで、このTFTガラス基板27をエッチング溶液に浸すことにより、
図8(c)に示すように、ガラス基板7の他面側(すなわち、図面下面側;ガラス面側)からガラス基板7がエッチングされる。このガラス基板7のエッチング工程においては、ガラス基板7を完全に除去し、エッチングストッパ層22が完全に露出するまでエッチング処理が継続される。
【0093】
次いで、
図8(d)に示すように、ドライエッチング法を用いて上記露出したエッチングストッパ層22が除去される。このエッチングストッパ層22のエッチング工程においては、エッチングストッパ層22を完全に除去し、当該エッチングストッパ層22の上層に設けられているシールド電極16が完全に露出するまでエッチング処理が継続される。すなわち、ITO膜から形成されるシールド電極16は、シリコン酸窒化膜から形成されるエッチングストッパ層22をエッチング除去するためのエッチングストッパ層として機能する。これにより、TFT5等のデバイスがガラス基板7側から保護フィルム17側に転写される。
【0094】
次いで、
図8(e)に示すように、エッチングストッパ層22を除去することにより露出したシールド電極16の表面に導電糊を塗布してプラスチック基板8が貼り付けられる。続いて、TFT層26上に貼り付けられた保護フィルム17が剥がされる。これにより、TFT5等のデバイスやシールド電極16が保護フィルム17側からプラスチック基板8側に転写される。すなわち、プラスチック基板8の一面側(すなわち、図面上面側)に、導電糊から形成される導電性接着層15、シールド電極16及び層間膜20を介して、TFT5や各種配線5z等を有するTFT層26が形成されたTFT基板6が完成する。ここで、上述したように、TFT層26表面に保護フィルム17を貼り付ける際に、UV照射や加熱により剥離する性質を有する糊や接着材料を適用することにより、TFT層26のデバイスが損傷を受けることなく良好に保護フィルム17を剥離することができる。
【0095】
次いで、
図8(f)に示すように、TFT基板6の一面側(すなわち、図面上面側;デバイス形成面側)に、電気泳動表示素子4を介して、画素電極14と対向電極2が対向するように電気泳動表示素子フィルム18が貼り合わせられる。なお、この工程の後、又は、この工程と並行して、TFT基板6側に形成した導電性接着層15及びシールド電極16から形成される電界シールド層と、電気泳動表示素子フィルム18(対向基板3)側の対向電極2と、を電気的に接続するための手段が形成される。具体的には、少なくとも表示装置(表示パネル)が非画像更新状態の時に、上記シールド電極16と対向電極2を電気的に接続するための配線やスイッチ手段が適宜形成される。これにより、
図7に示したパネル構造を有する表示パネルが完成する。
【0096】
本構造例においては、表示パネルのフレキシブル性を左右するTFT基板6のガラス基板7が完全に除去され、当該ガラス基板7に替えて無機の絶縁膜(層間膜20)が設けられたパネル構造を有している。したがって、本構造例に係る表示装置は、上述した第2及び第3の実施形態と同様の効果に加えて、表示パネルのフレキシブル性を向上させることができる効果を有している。なお、本構造例においては、ガラス基板に替えてテトラエトキシシラン(TEOS)等の無機の絶縁膜から形成される層間膜20を適用した構成が説明された。本発明はこれに限定されるものではなく、他の絶縁膜から形成される層間膜20を適用するものであってもよい。
【0097】
(第2の構造例)
図9は、第4の実施形態に係る表示パネルの第2の構造例を示す概略断面図である。ここで、上述した第2の実施形態に示したパネル構造と同等の構成については、同一の符号を付して示され、その説明が簡略化される。
【0098】
本実施形態に係る表示パネルの第2の構造例は、上述した第2の実施形態の第3の構造例に示したガラス基板7(すなわち、ガラスの残膜)に替えてエッチングストッパ層を設けたパネル構造を有している。具体的には、本構造例は、
図9に示すように、プラスチック基板8上に導電性接着層15及びシールド電極16を介してTFT層26が設けられ、該TFT層26上にエッチングストッパ層22が設けられたパネル構造を有している。また、本構造例は、エッチングストッパ層22表面に電気泳動表示素子4及び対向基板3を有する電気泳動表示素子フィルム18が直接積層された構成を有している。
【0099】
(製造方法)
図10は、第4の実施形態に係る表示パネルの第2の構造例に適用可能な製造方法の一例を説明する工程断面図である。
【0100】
上述したパネル構造(
図9)を有する表示パネルの製造方法は、まず、
図10(a)に示すように、ガラス基板7の一面側(すなわち、図面上面側;デバイス形成面側)にエッチングストッパ層22が形成される。ここで、エッチングストッパ層22としては、上述した本実施形態の第1の構造例と同様に、ガラスのエッチング液に溶けにくい材料、例えばシリコンリッチなシリコン酸窒化物(SiONx)等を適用することができる。エッチングストッパ層22は、例えば0.5〜3.0μm程度の膜厚で形成される。続いて、エッチングストッパ層22上に、複数の画素電極14を形成した後、これらの画素電極14を含むエッチングストッパ層22上に層間膜20が被覆形成される。ここで、層間膜20は、上述した第3の実施形態と同様に、無機の絶縁膜を適用することができる。続いて、当該層間膜20上にTFT5や各種配線5z、パッシベーション膜13を有するTFT層26が形成される。このとき、ゲート絶縁膜13a及び層間膜20に形成したコンタクトホール21を介して各画素電極14とTFT5が接続される。続いて、TFT層26上の全面に静電防止用のシールド電極16を形成して、エッチングストッパ層22及びシールド電極16を有するTFTガラス基板27が形成される。
【0101】
次いで、
図10(b)に示すように、TFTガラス基板27のシールド電極16の表面に、導電糊を塗布してプラスチック基板8が貼り付けられる。
【0102】
次いで、このTFTガラス基板27をエッチング溶液に浸すことにより、
図10(c)に示すように、ガラス基板7の他面側(すなわち、図面下面側;ガラス面側)からガラス基板7がエッチングされる。このガラス基板7のエッチング工程においては、ガラス基板7を完全に除去し、エッチングストッパ層22が完全に露出するまでエッチング処理が継続される。これにより、TFT5等のデバイスやシールド電極16がガラス基板7側からプラスチック基板8側に転写される。すなわち、プラスチック基板8の表面に、導電糊から形成された導電性接着層15及びシールド電極16を介して、層間膜20を含むTFT層26及びエッチングストッパ層22を形成したTFT基板6が完成する。
【0103】
次いで、
図10(d)に示すように、このTFT基板6の上下を反転させて、TFT基板6の一面側(すなわち、図面上面側;デバイス形成面側)に、エッチングストッパ層22及び電気泳動表示素子4を介して、電気泳動表示素子フィルム18が貼り合わせられる。ここで、電気泳動表示素子フィルム18は、画素電極14と対向電極2が対向するように貼り合わせられる。なお、この工程の後、又は、この工程と並行して、TFT基板6側に形成した導電性接着層15及びシールド電極16から形成される電界シールド層と、電気泳動表示素子フィルム18(対向基板3)側の対向電極2と、を電気的に接続するための手段が形成される。具体的には、少なくとも表示装置(表示パネル)が非画像更新状態の時に、上記シールド電極16と対向電極2を電気的に接続するための配線やスイッチ手段が適宜形成される。これにより、
図9に示したパネル構造を有する表示パネルが完成する。
【0104】
このように、本構造例は、表示パネルのフレキシブル性を左右するTFT基板6のガラス基板7を完全に除去し、当該ガラス基板7に替えて薄い絶縁膜(エッチングストッパ層22)を設けたパネル構造を有している。したがって、本構造例に係る表示装置は、上述した第2及び第3の実施形態と同様の効果に加え、表示パネルのフレキシブル性を向上させることができる効果を有している。
【0105】
また、本構造例に適用可能な製造方法においては、ガラス基板7上に形成したTFT層26をプラスチック基板8に転写する際に、上述した本実施形態の第1の構造例に示したような、TFT層26への保護フィルム17の貼り付けや剥離を行う必要がない。したがって、本構造例に適用可能な製造方法は、画素電極14を含むTFT層26におけるクラックや剥離の発生を抑制して、プラスチック基板8への良好な転写を行うことができる効果を有している。
【0106】
また、本構造例は、ガラス基板7をエッチング除去する際に用いるエッチングストッパ層22の膜厚を0.5〜3.0μm程度に設定した構成を有している。すなわち、本構造例に適用可能な製造方法においては、エッチングストッパ層22の膜厚が、電気泳動表示素子4の大きさ(マイクロカプセル9の直径;例えば40μm)に比較して無視できる程度に薄く形成される。これにより、TFT基板6と電気泳動表示素子フィルム18との間にエッチングストッパ層22が介在するパネル構造であっても、電気泳動表示素子4が良好に駆動制御される。したがって、本構造例に係る表示装置は、エッチングストッパ層22の除去工程を省略して、その製造方法を簡略化することができる効果を有している。
【0107】
また、このようなパネル構造においては、電気泳動表示素子4の大きさに比較して無視できる程度に薄いエッチングストッパ層22をそのまま残しておいても、電気泳動表示素子4を駆動制御するための電圧が大きく変動することはない。したがって、本構造例に係る表示装置は、表示装置の駆動電圧を高く設定する必要がないので、回路の耐圧を低く設定することができる効果を有している。なお、本構造例及びその製造方法においては、エッチングストッパ層22をそのまま残した構成が説明された。本発明はこれに限定されるものではなく、エッチングストッパ層22を薄膜化又は完全に除去するための工程を含むものであってもよい。
【0108】
<表示装置の動作>
次に、上述した第2〜第4の各実施形態に係る表示パネルを備えた表示装置(電子ペーパー表示装置)の概略動作が説明される。
【0109】
上述したパネル構造を有する表示パネルにおける動作状態(画像表示状態)は、上述した背景技術に示したように、大別して、画像更新状態と非画像更新状態とに分けることができる。
【0110】
(画像更新状態)
画像更新状態においては、TFT基板6側の画素電極14に与える電圧(画素電位)と、対向基板3側の対向電極2に与える対向電位との差(電位差)を制御することにより、表示媒体である電気泳動表示素子4を駆動させて、所望の画像が表示される。
【0111】
すなわち、上述した各実施形態においては、表示する画像に応じて、ゲート配線及びデータ配線に印加する電圧を設定することにより、TFT5をオン動作又はオフ動作させて、画素電極14に所定の画素電位が印加される。ここで、画素電位は、対向電極2に印加する対向電位(基準電位)に対して、相対的に正又は負の電圧を印加する。これに応じて、電気泳動表示素子4の各マイクロカプセル9内の白粒子10及び黒粒子11が対向電極2側又は画素電極14側に移動する。これにより、各表示画素に対応するマイクロカプセル9が白表示状態又は黒表示状態に設定されて、所望の画像が表示される。
【0112】
ここで、画像更新状態において表示画素を黒表示させる場合が具体的に説明される。まず、上述した各実施形態において、例えば、データ配線に黒表示電圧として+15Vの電圧(データ電圧)が印加された状態で、ゲート配線を介してTFT5のゲート電極に選択レベルのゲート電圧として+25Vのパルス電圧(ゲート信号)が印加される。これにより、TFT5がオン動作して、上記データ配線の電圧(データ電圧=+15V)が、画素電圧として画素電極14に書き込まれる。その後、ゲート電圧が非選択レベルの−25Vに設定されることにより、TFT5がオフ動作する。なお、表示画素を白表示する場合には、上記黒表示電圧(+15V)に替えて、データ配線に白表示電圧として−15Vの電圧が印加された状態でTFT5をオン動作させることにより、当該データ電圧が画素電圧として画素電極14に書き込まれる。
【0113】
ここで、各表示画素の画素電極14に共通して対向するように設けた対向電極2には、対向電位(基準電位)として、例えばグラウンド電位(0V)が印加される。この画素電極14の画素電位と対向電極2の対向電位との電位差に応じて、電気泳動表示素子4のマイクロカプセル9内のマイナスに帯電した白粒子10が、正電圧(+15V)が書き込まれた画素電極14側に移動する。これにより、視野側(例えば
図1の図面上方側)からは、対向基板3のプラスチック基板1を介して、黒粒子11が視認されることになり黒表示状態が設定される。なお、画素電極14に負電圧(−15V)を書き込んだ場合には、電気泳動表示素子4のマイクロカプセル9内のプラスに帯電した黒粒子11が、画素電極14側に移動する。これにより、視野側からは、対向基板3のプラスチック基板1を介して、白粒子10が視認されることになり白表示状態が設定される。
【0114】
このような黒表示状態又は白表示状態が、各表示画素ごとに設定されることにより、表示パネルに所望の画像が表示される。
【0115】
(非画像更新状態)
電子ペーパー表示装置に適用可能な電気泳動表示素子4は、メモリ性を有しているので、上述した画像更新動作により表示された画像を保持する場合、あるいは、当該画像を更新しない場合においては、表示パネルの各画素電極14に電圧が印加される必要はない。特に、上述した各実施形態に示した表示パネルは、少なくともこの非画像更新状態において、対向電極2と電界シールド層を構成する導電性接着層15又はシールド電極16を電気的に接続してショートさせたパネル構造を有している。そのため、上述した各実施形態の表示パネルによれば、プラスチック基板8表面における静電気の帯電や、当該プラスチック基板8内部、ガラス基板7あるいはTFT層26とプラスチック基板8の界面にある導電性接着層15内部におけるチャージアップが抑制される。
【0116】
ここで、仮に対向電極2と電界シールド層(導電性接着層15又はシールド電極16)を電気的に接続しない構成について検討すると、この構成では対向電極2と電界シールド層が異なる電位を持つことになる。この場合、上述した解決課題及び画像劣化現象の解析において言及したように、非画像更新時に不必要な電界が電気泳動表示素子4に印加されることになり、白又は黒の表示状態が変化して画像が劣化する問題を有している。
【0117】
これに対して、上述した各実施形態に示した表示パネルによれば、少なくとも非画像更新状態においては、対向電極2と電界シールド層が電気的に接続されて同電位に設定されるので、不必要な電界が発生する現象を防止することができる。
【0118】
以上説明したように、上述した各実施形態に係る表示装置は、TFT基板を構成するTFT層とプラスチック基板の間に電界シールド層を介在させ、少なくとも非画像更新時に電界シールド層と対向電極を同電位に設定した構成を有している。これにより、プラスチック基板表面の静電気が防止されるとともに、TFT層に配設された各種配線からの直流電界に起因するプラスチック基板や接着層のチャージアップが抑制される。したがって、上述した各実施形態に係る表示装置は、非画像更新状態時における表示画面の劣化を防止して画像の表示状態を良好に保持することができ、信頼性に優れた表示装置を実現することができる効果を有している。また、上述した各実施形態に係る表示装置によれば、電界シールド層を各表示画素における蓄積容量を保持するための蓄積容量電極と兼用することにより、大きな蓄積容量が形成される。したがって、上述した各実施形態に係る表示装置は、電気泳動表示素子の駆動能力を向上させることができるとともに、開口率を大きく設定することができる効果を有している。
【0119】
なお、上述した各実施形態においては、少なくとも非画像更新状態の時に、対向電極2と、電界シールド層を構成する導電性接着層15やシールド電極16、蓄積容量電極19と、を電気的に接続して同電位に設定する構成が説明された。本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上述した各実施形態において、対向電極2と電界シールド層の電位のみならず、例えばデータ配線に印加するデータ電圧やゲート配線に印加するゲート電圧も同じ電位に設定されることが好ましい。さらには、これらが全てグランド電位(0V)に設定されることがより好ましい。
【0120】
また、上述した各実施形態に係る表示装置においては、本発明に係る技術思想を、電気泳動表示素子を用いた表示パネルに適用した構成が説明されたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明に係る技術思想は、他のメモリ性を有する表示素子、例えば電子粉流体やコレステリック液晶等を用いた表示パネルにも同様に適用することができる。
【0121】
また、上述した各実施形態においては、画像を白黒2色で表示するモノクロ表示に対応したパネル構造を有する表示装置が説明されたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明の技術思想は、カラー表示に対応したパネル構造を有する表示装置に適用するものであってもよい。
【0122】
図11は、第2の実施形態の第1の構造例として示した表示パネル(
図2参照)をカラー表示に対応させた場合のパネル構造を示す概略断面図である。
【0123】
すなわち、本発明に係る表示装置は、例えば
図11に示すように、第2の実施形態に示したパネル構造(
図2参照)において、対向基板3の他面側(図面上面側;視野側)にカラーフィルター基板23を接合した構成を有している。ここで、カラーフィルター基板23は、カラーフィルター24とプラスチック基板28を積層した構成を有している。カラーフィルター24の赤(R)、緑(G)、青(B)の各色のフィルター部は、TFT基板6に配列された表示画素の各表示色に対応するように配列されている。また、対向基板3のプラスチック基板1とカラーフィルター基板23のカラーフィルター24との間には、両者を接合するための透明な接着層29が介在している。
【0124】
<第5の実施形態>
次に、本発明に係る表示装置に適用可能な表示パネルの第5の実施形態が図面を参照しながら説明される。
【0125】
上述した「解決課題」及び「アクティブマトリクス型メモリ性表示装置の非画像更新時の画像劣化現象の解析」において言及したプラスチック基板表面の帯電による画像更新時の画像劣化の問題は、電子ペーパー表示装置をカラー表示に対応させた場合にも同様に生じる。したがって、例えば
図11に示したように、カラーフィルター24を用いてカラー表示に対応したパネル構造を有する表示装置においても、本発明の技術思想を適用することができる。これにより、上述した各実施形態と同様に、表示画面の劣化(画像の乱れや画質の劣化)の問題が良好に防止される。
【0126】
ところで、本願発明者の検証によれば、カラー表示に対応した表示装置においては、上述した各実施形態に示したモノクロ表示に対応した表示パネルの場合には問題にならなかった新たな問題が生じる場合があることが判明した。それは、具体的には、カラーフィルターとTFT基板のアライメントに関する問題である。
【0127】
<カラー化した場合の問題点の解析>
以下に、この新たな問題点についての具体的な検証結果が説明される。
【0128】
現在市場に流通し入手が可能な電気泳動表示素子(上述した電気泳動表示素子フィルム18に相当する)は、100〜200μmの厚さのフィルム状又はシート状の部材として提供されている。このような電気泳動表示素子を適用した表示パネルをカラー表示に対応させる場合には、例えば
図11に示したように、TFT基板6と、電気泳動表示素子フィルム18と、カラーフィルター基板23と、を順次積層したパネル構造が適用される。
【0129】
ここで、このような表示パネルにおいて、表示画素ごとの表示色を設定するためには、電気泳動表示素子フィルム18を介して配置するカラーフィルター基板23とTFT基板6を高い精度でアライメント(位置合わせ)して貼り合わせる製造工程が必要である。特に、表示媒体である電気泳動表示素子フィルム18及びカラーフィルター基板23のいずれもがフィルム状である場合には、これらのフィルム状の部材同士を特に高い精度でアライメントして貼り合わせる製造工程が必要となる。しかしながら、一般にフィルム状の部材同士を簡易な手法でアライメント精度良く貼り合わせることは非常に困難であり、適切かつ良好な製造方法は未だ開発されていなかった。
【0130】
また、電気泳動表示素子フィルム18を構成するプラスチック基板1は、一般にポリエチレンテレフタレート(PET)等の耐熱性の極めて低いフィルム材料を用いて形成されている。これに対して、TFT5やカラーフィルター24の形成には熱処理工程が必須である。そのため、TFT基板6やカラーフィルター基板23を構成するプラスチック基板8、28には、熱による伸び縮みが小さいガラスフィラーを混入させた高耐熱性のプラスチック基板が多用されている。
【0131】
具体的には、電気泳動表示素子フィルム18のプラスチック基板1に用いるポリエチレンテレフタレートの熱膨張率は、20×10
-6/K〜50×10
-6/K(20〜50ppm/℃)程度である。これに対して、TFT基板6やカラーフィルター基板23のプラスチック基板8、28に用いる高耐熱プラスチックの熱膨張率は、0.1×10
-6/K〜数×10
-6/K(0.1〜数ppm/℃)程度である。そのため、仮に電気泳動表示素子フィルム18を挟んでTFT基板6とカラーフィルター基板23を、アライメント精度良く貼り合わせることができたとしても、上記の熱膨張率の違いによりアライメントがずれてしまう問題を有している。これは、上記の貼り合わせ作業後に施される熱処理工程や、実製品における動作中の発熱等により、TFT基板6やカラーフィルター基板23、電気泳動表示素子フィルム18の撓みや相互の剥離等が生じることに起因するものである。
【0132】
このようなアライメントずれの問題を軽減するためには、例えば、カラーフィルター基板23の一面側に電気泳動表示素子4を直接形成する手法が考えられる。この手法によれば、上記の電気泳動表示素子フィルム18とカラーフィルター基板23との間のアライメント処理を実質的に省略して、電気泳動表示素子付きのカラーフィルター基板と、TFT基板6と、をアライメント精度よく貼り合わせることができるものと考えられる。しかしながら、この場合においても、その後の製造プロセスや実動作中にアライメントがずれてしまう問題を完全には解決することはできない。
【0133】
上述したようなフィルム状の部材同士を貼り合わせる際のアライメント精度の問題を解決する関連技術としては、例えば特開2006−171735号公報に記載された手法が知られている。すなわち、特開2006−171735号公報は、TFT等を形成した柔軟性を有する電子性背面板上にカラーフィルターを一体形成した後、電気泳動素子(表示媒体)を介して対向電極を貼り付けて表示装置を形成する手法を開示している。なお、この表示装置においては、電子性背面板側の外方から、表示された画像が観察される。しかし、特開2006−171735号公報は、電子ペーパー表示装置の非画像更新時において、基板の帯電に起因して生じる画像劣化の問題については言及していない。
【0134】
また、上述した背景技術に示した特許文献3は、フィルム状のカラーフィルター基板にTFT基板を転写により貼り付けてフレキシブルな液晶表示装置を形成する例を開示している。しかし、特許文献3に開示された通常の液晶表示装置においては、表示素子がメモリ性を有していない。そのため、電子ペーパー表示装置の非画像更新時において、基板の帯電に起因して発生する画像劣化の問題は生じ得ない。したがって、これらの公報に記載された技術によっては、電子ペーパー表示装置の非画像更新時における画像劣化の問題、及び、上記のカラーフィルター基板とTFT基板のアライメントずれの問題の双方を良好に解決することはできなかった。
【0135】
そこで、本発明の第5の実施形態は、電子ペーパー表示装置をカラー表示に対応させる場合に、カラーフィルター基板とTFT基板とを簡易な製造プロセスを用いて高いアライメント精度で貼り合わせることができるパネル構造を開示する。
【0136】
(第1の構造例)
図12は、第5の実施形態に係る表示パネルの第1の構造例を示す概略断面図である。ここで、上述した第2〜第4の各実施形態に示したパネル構造と同等の構成については、同一の符号を付して示され、その説明が簡略化又は省略される。
【0137】
本実施形態に係る表示パネルの第1の構造例は、
図12に示すように、上述した第2の実施形態の第2の構造例の図面上下を反転させ、更にTFT基板6に替えてTFT付きカラーフィルター基板25を設けたパネル構造を有している。
【0138】
すなわち、本構造例に係る表示パネルは、対向基板3と、マイクロカプセル型の電気泳動表示素子4と、TFT付きカラーフィルター基板25と、を積層したパネル構造を有している。対向基板3と電気泳動表示素子4を積層した部材は、上述した第2の実施形態と同様に、電気泳動表示素子フィルム18を構成している。
【0139】
TFT付きカラーフィルター基板25は、ガラス基板7上にTFT層26を設けたTFTガラス基板27と、シールド電極16と、カラーフィルター24と、プラスチック基板8と、を順次積層した構成を有している。ここで、カラーフィルター24とプラスチック基板8を積層した部材は、カラーフィルター基板23を構成する。
【0140】
ガラス基板7は、上述した第2の実施形態と同様に、フレキシブル性を有するように薄くエッチングされる。本構造例においては、当該ガラス基板7の一面側(すなわち、図面下面側)に画素スイッチとしてのTFT5や各種配線5z、画素電極14等を有するTFT層26が設けられた構成を有している。ここで、TFT5のゲート電極やソース、ドレイン電極、ゲート配線やデータ配線は、例えば金属材料により形成される。一方、画素電極14は、例えばITO等の透明な導電膜材料により形成される。
【0141】
また、本構造例においては、ガラス基板7の他面側(すなわち、図面上面側)であって、表示パネルの表示領域に対応する領域にシールド電極16が設けられた構成を有している。ここで、シールド電極16は、2次元配列された画素電極の全てに対応する領域に、ITO等の透明な導電膜材料からなりパターニングされていない単一の平面電極(いわゆる、べた電極)により形成されている。また、シールド電極16は、少なくとも表示装置(表示パネル)が非画像更新状態の時には、
図12に概念的に示すように、対向電極2やグラウンド線に電気的に接続されて同電位になるように設定される。ここで、本構造例においては、シールド電極16と、対向電極2やグラウンド線と、を接続する導通路として、例えば導電ペーストや配線等を適用することができる。
【0142】
カラーフィルター24は、熱膨張係数の小さいガラスフィラー入りのプラスチック基板8の一面側(すなわち、図面下面側)に、表示画素ごとの表示色に対応するように赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のフィルター部が配列された構成を有している。また、カラーフィルター24の各色の境界領域には、ブラックマトリクス(図示を省略)が配置されている。このようなカラーフィルター24は、上述したシールド電極16を介してガラス基板7の他面側(すなわち、図面上面側)に設けられる。
【0143】
このようなパネル構造において、
図12に示すように、TFT付きカラーフィルター基板25のプラスチック基板8の外方(すなわち、図面上方)側が視野側として設定される。すなわち、観察者30は、TFT付きカラーフィルター基板25のプラスチック基板8の外方側から、当該TFT付きカラーフィルター基板25(カラーフィルター基板23、TFTガラス基板27)を介して、電気泳動表示素子4の表示を視認することになる。ここで、TFTガラス基板27のTFT層26を構成するTFT5や各種配線5z等は、例えば金属材料を用いた不透明な電極層や配線層により形成されている。そのため、本構造例においては、TFT5や各種配線5zを、例えば上記ブラックマトリクスの配置領域に対応する位置(視野側から見てブラックマトリクスと平面的に重なる領域)に配設することが好ましい。これにより、本構造例に係るパネル構造においては、視野側から入射して電気泳動表示素子4で反射して視野側に再び放射される光が極力遮られないようにすることができる。したがって、本構造例に係る表示装置は、開口率を向上させることができる効果を有している。
【0144】
このように、本構造例は、熱膨張係数の近似するガラス基板7を有するTFTガラス基板27と、プラスチック基板8を有するカラーフィルター基板23と、をITO等の導電膜材料から形成されるシールド電極16を介して、貼り合わせたパネル構造を有している。これにより、本構造例によれば、TFTガラス基板27とカラーフィルター基板23の貼り合わせ作業後の製造プロセスにおける熱処理工程や、実製品における動作中の発熱等による、撓みや剥離等の発生が抑制される。したがって、本構造例に係る表示装置は、上述した熱膨張率の違いによるアライメントずれの発生を防止することができる効果を有している。
【0145】
また、本構造例においては、TFTガラス基板27とカラーフィルター基板23の間に、電界シールド層として機能するシールド電極16が設けられたパネル構造を有している。更に、本構造例においては、少なくとも表示装置(表示パネル)が非画像更新状態の時には、対向基板3の対向電極2とシールド電極16とが電気的に接続されて同電位になるように設定される。これにより、本構造例によれば、カラーフィルター24がシールド電極16に直接接しているので、カラーフィルター24に帯電した静電気が対向電位に放電されて、チャージアップが防止される。また、本構造例によれば、上述した各実施形態と同様に、ゲート配線等からの直流電界の発生がシールドされる。したがって、本構造例に係る表示装置は、画像劣化の問題を解決して、電子ペーパー表示装置の信頼性を向上させることができる効果を有している。
【0146】
また、本構造例においても、シールド電極16が蓄積容量電極を兼ねることができるので、各画素電極14との間で一定の蓄積容量を保持することができる。したがって、本構造例に係る表示装置は、開口率を向上させることができる効果も有している。
【0147】
(第2の構造例)
図13は、第5の実施形態に係る表示パネルの第2の構造例を示す概略断面図である。ここで、上述した各実施形態に示したパネル構造と同等の構成については、同一の符号を付して示され、その説明が簡略化又は省略される。
【0148】
上述した第1の構造例においては、ガラス基板7とカラーフィルター24との間に、シールド電極16が配置されたパネル構造が説明されたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0149】
すなわち、本実施形態に係る表示パネルの第2の構造例は、例えば
図13に示すように、TFT付きカラーフィルター基板25が、TFTガラス基板27とカラーフィルター基板23とを直接貼り合わせたパネル構造を有している。カラーフィルター基板23は、カラーフィルター24と、シールド電極16と、プラスチック基板8と、を順次積層した構成を有している。すなわち、本構造例は、プラスチック基板8とカラーフィルター24の間にシールド電極16が配置されたパネル構造を有している。
【0150】
ここで、本構造例においては、相互に熱膨張係数の近似する、ガラス基板7を有するTFTガラス基板27と、プラスチック基板8を有するカラーフィルター基板23と、が直接貼り合わせられている。これにより、本構造例によれば、TFTガラス基板27とカラーフィルター基板23の貼り合わせ作業後の熱処理工程や、実製品における動作中の発熱等による、撓みや剥離等の発生が抑制される。したがって、本構造例に係る表示装置は、上述した熱膨張率の違いによるアライメントずれの発生を防止することができる効果を有している。
【0151】
また、本構造例においては、プラスチック基板8及びカラーフィルター24がシールド電極16に直接接している。これにより、本構造例によれば、プラスチック基板8及びカラーフィルター24に帯電した静電気がシールド電極16を介して対向電位に放電されて、チャージアップが防止される。したがって、本構造例に係る表示装置は、画像劣化を抑制して、電子ペーパー表示装置の信頼性を向上させることができる効果を有している。
【0152】
なお、本実施形態に係る各構造例においては、電界シールド層としてITO等の透明な導電膜材料を用いたシールド電極16を設けた構成が説明された。本発明はこれに限定されるものではなく、透明な導電糊を用いた導電性接着層を設けた構成を適用するものであってもよい。
【0153】
(製造方法)
次に、上述したパネル構造を有する表示パネルの製造方法が図面を参照しながら説明される。
【0154】
図14は、第5の実施形態に係る表示パネルの製造方法の一例を説明する工程断面図である。ここで、上述した第2の実施形態に示した製造方法(
図4参照)と同等のプロセスについてはその説明が簡略化される。
【0155】
上述した第1の構造例を有する表示パネルの製造方法は、上述した第2の実施形態に示した製造方法と同様に、まず、
図14(a)に示すように、ガラス基板7の一面側(すなわち、図面上面側)にTFT層26が形成される。その後、TFT層26の各画素電極14に接するように保護フィルム17が貼り付けられる。
【0156】
次いで、このTFTガラス基板27をエッチング溶液に浸すことにより、
図14(b)に示すように、ガラス基板7の他面側(すなわち、図面下面側)がエッチングされる。ここでは、予め測定しておいたガラス基板7のエッチングレートに基づいて、ガラス基板7が例えば0より大きく300μm以下の所望の膜厚になるようにエッチング処理が実行される。
【0157】
次いで、ガラス基板7のエッチング面(すなわち、図面下面側)に、ITO等の透明な導電膜材料からなり、電界シールド層を兼ねたシールド電極16が全面に形成される。続いて、各表示画素の各表示色に対応して、カラーフィルター基板23の赤(R)、緑(G)、青(B)の各色のフィルター部が厳密に配置される。すなわち、TFTガラス基板27の表面に、カラーフィルター基板23のカラーフィルター24側が高精度のアライメントを行って貼り合わせられる。ここで、上述した実施形態と同様に、各表示画素の各表示色の配置は、TFTガラス基板27に形成した各画素電極14の配置に一致する。続いて、TFTガラス基板27の一面側に貼り付けられた保護フィルム17が剥がされる。これにより、
図14(c)に示すように、TFT5等のデバイスが保護フィルム17側からカラーフィルター基板23側に転写されて、TFT付きカラーフィルター基板25が完成する。
【0158】
次いで、
図14(d)に示すように、このTFT付きカラーフィルター基板25の上下を反転させて、TFT付きカラーフィルター基板25の一面側(すなわち、図面下面側)に、電気泳動表示素子フィルム18が貼り合わせられる。ここでは、TFT付きカラーフィルター基板25の一面側に電気泳動表示素子4が接触するように、電気泳動表示素子フィルム18が適当な(任意の)アライメント精度で貼り合わせられる。これにより、電気泳動表示素子4を介して画素電極14と対向電極2が対向するように配置される。なお、この工程の後、又は、この工程と並行して、TFT付きカラーフィルター基板25側に形成したシールド電極16と、電気泳動表示素子フィルム18(対向基板3)側の対向電極2と、を電気的に接続するための手段が形成される。具体的には、少なくとも表示装置(表示パネル)が非画像更新状態の時に、上記シールド電極16と対向電極2を電気的に接続するための配線やスイッチ手段が適宜形成される。これにより、
図12に示したパネル構造を有する表示パネルが完成する。
【0159】
このように、本実施形態に係る製造方法においては、予め、薄くエッチングしたガラス基板7上にTFT層26を形成したTFTガラス基板27と、カラーフィルター基板23と、が高精度のアライメントを行って直接貼り合わせられる。一方、TFT層26上に電気泳動表示素子フィルム18をラミネート(貼り合わせて積層)する際には、厳密なアライメント(高精度のアライメント)が必要とされない。したがって、比較的低い精度でアライメントが行われた後、TFT層26と電気泳動表示素子フィルム18が貼り合わせられる。
【0160】
このような表示装置及びその製造方法によれば、各表示画素の表示色とカラーフィルター24の各色のフィルター部が厳密に位置合わせされ、且つ、熱膨張係数の近似する基板相互が積層された表示パネルが、簡易な製造方法により実現される。これにより、
図11に示したようなパネル構造において生じる問題が解決される。すなわち、本実施形態に係る表示装置は、表示パネルの製造時におけるアライメント精度の問題や、基板相互の熱膨張率の違いによるアライメントずれの問題を克服することができる効果を有している。
【0161】
なお、本実施形態においては、上述した第2及び第3の実施形態と同様に、薄いガラス基板7を有するパネル構造においてカラー化する場合が説明されたが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態は、例えば、第4の実施形態に示したように、ガラス基板7を完全に除去したパネル構造においてカラー化する場合にも良好に適用することができる。
【0162】
(応用例)
図15は、本発明に係る表示装置を適用した応用例を示す概略断面図である。ここで、上述した第2〜第5の各実施形態に示したパネル構造と同等の構成については、同一の符号を付して示され、その説明が省略される。
【0163】
本発明に係る表示装置は、上述した第2〜第5の各実施形態に示した電子ペーパー表示装置単体としての態様に限定されるものではなく、様々な応用が可能である。本発明に係る表示装置は、例えば
図15に示すように、上述した第2の実施形態に示したパネル構造(
図2参照)において、対向基板3を構成するプラスチック基板1の他面側(図面上面側;視野側)に入力手段が設けられた構成に応用するものであってもよい。ここで、本発明においては、対向基板3の視野側の表面に設置可能な入力手段として、例えば、当該入力手段に直接接触することにより所望の画像情報のデータを入力するためのペン入力部やタッチパネル31等を良好に適用することができる。
【0164】
本発明によれば、このようなパネル構造において、画像更新が連続的かつ長時間継続するような表示を行った場合であっても、導電性接着層15から形成される電界シールド層と、対向電極2と、が電気的に接続されて同電位、更にはグラウンド電位になるように設定される。したがって、本発明の技術思想をこのようなパネル構造を有する表示装置に応用することは、基板の帯電に起因して生じる画像劣化の問題を解決するために極めて有効である。