(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の挟持部が前記チューブを挟む方向及び前記挿入部の長手方向と直交する方向における前記一対の挟持部の寸法は、前記ルーフ部のそれより大きい請求項1に記載の留置針装置。
前記一対の挟持部が前記チューブを挟む方向及び前記挿入部の長手方向と直交する方向における高さが、前記挿入部に近づくにしたがって低くなるように、前記ルーフ部の上面が傾斜している請求項3に記載の留置針装置。
前記ルーフ部は、前記一対の挟持部が前記チューブを挟む方向及び前記挿入部の長手方向と直交する方向に、前記チューブの外周面の一部を露出させる請求項1〜6のいずれかに記載の留置針装置。
【背景技術】
【0002】
留置針装置は、輸液、輸血、体外血液循環などの処置に広く使用される。このような処置において、金属針を血管内に留置すると血管が傷付けられる可能性がある。そこで、軟質の外針と硬質の内針とを備えた留置針装置が知られている。外針の先端から内針の先端を突出させた状態で外針及び内針を患者の血管に穿刺し、その後、内針を外針から後退させ、外針のみを患者に留置する。留置された軟質の外針は患者の血管を傷付ける可能性は低い。
【0003】
図18Aは、このような従来の留置針装置900(例えば特許文献1参照)の一例の上方から見た斜視図、
図18Bはその下方から見た斜視図、
図19は、
図18Aの19−19線を含む垂直面に沿った従来の留置針装置900の矢視断面図である。説明の便宜のため、患者に穿刺する側(
図18A、
図18B及び
図19の紙面の左側)を「前側」、これと反対側を「後側」と呼ぶ。
【0004】
留置針装置900は、略円筒形状を有するシールド筒921と、その一端(前端)に固定された外ハブ925とを含むシールド920を備える。外ハブ925の前端に軟質の外針930が固定されている。
【0005】
シールド筒921の外ハブ925側端近傍の外周面に一対の翼929a,929bが設けられている。翼929a,929bは柔軟性を有しており、上下に揺動可能である。
【0006】
シールド920の内腔内にはハブ940が、シールド920の長手方向(即ち、前後方向)に移動可能に挿入されている。ハブ940の前端には金属製の硬質の内針950が固定され、ハブ940の後端には柔軟なチューブ960の一端が接続されている。内針950とチューブ960とは、ハブ940を前後方向に貫通する縦貫路943を介して連通している。
【0007】
図18A、
図18B、
図19では、ハブ940はシールド920の内腔の前端側に位置している。シールド920に対するハブ940のこの位置を「初期位置」と呼ぶ。初期位置では、ハブ940に保持された内針950は外針930を貫通し、内針950の先端は外針930の先端から外部に突出している。
【0008】
ハブ940を初期位置に保持するために、ストッパー970が用いられる。
図20はストッパー970の斜視図である。略半円筒形状の基端部971から、略半円筒形状の挿入部972及び一対の固定部973が延びている。挿入部972は一対の固定部973の間に配置され、これらは互いに平行である。
【0009】
図19に示されているように、シールド筒921の後端から、ストッパー970の挿入部972を挿入する。挿入部972の先端をハブ940の後端に衝突させてハブ940を前側に押し込むことにより、ハブ940を初期位置に配置することができる。
図18Bに示されているように、ストッパー970の基端部971の下面側に、チューブ960の一部が露出している。
【0010】
ハブ940を初期位置に保持したまま、内針950及び外針930を患者の血管に穿刺する。穿刺する間、ハブ940を初期位置に維持するためには、シールド920に対してストッパー970が変位するのを防ぐ必要がある。このため、作業者は、2本の指で、ストッパー970の基端部971を上下方向に(
図18Aの矢印H91参照)に又は水平方向に(
図18Aの矢印H92参照)把持してもよく、あるいは、一対の固定部973を水平方向に(
図18Aの矢印H93参照)把持してもよい。あるいは、一対の固定部973を一対の翼929a,929bとシールド筒921との間で挟んで固定するように一対の翼929a,929bを上方に折り曲げて、重ね合わされた一対の翼929a,929bを2本の指で把持してもよい。
【0011】
その後、シールド920からストッパー970を抜き去り、続いてシールド920からチューブ960を引っ張る。これにより、チューブ960とともにハブ940及び内針950がシールド920に対して後方に移動し、
図21に示すように、内針950がシールド920内に収納される。
図21に示したシールド920に対するハブ940の位置を「後退位置」と呼ぶ。この状態で粘着テープ等を用いて留置針装置910を患者に固定する。軟質の外針930のみが患者に穿刺された状態で留置される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の上記の留置針装置において、前記一対の挟持部が前記チューブを挟む方向及び前記挿入部の長手方向と直交する方向における前記一対の挟持部の寸法は、前記ルーフ部のそれより大きいことが好ましい。これにより、一対の挟持部にて留置針装置やストッパーを安定して把持することができる。
【0022】
前記挿入部の側から、前記ルーフ部及び前記一対の挟持部がこの順に配置されていることが好ましい。これにより、一対の挟持部がストッパーの後端に配置することが可能になり、これは一対の挟持部を弾性的に変位させるのに有利である。
【0023】
上記において、前記一対の挟持部が前記チューブを挟む方向及び前記挿入部の長手方向と直交する方向における高さが、前記挿入部に近づくにしたがって低くなるように、前記ルーフ部の上面が傾斜していることが好ましい。更に、一対の挟持部の上面も同様に傾斜していることが好ましい。これにより、一対の挟持部を把持して留置針装置を穿刺した場合に、その後、ストッパーをシールドから抜き去る作業が容易になる。
【0024】
前記ルーフ部は、前記チューブの外周面の一部を前記ルーフ部から突出させることが好ましい。これにより、ルーフ部を上下方向に把持した場合に、ルーフ部と一緒にチューブを確実に把持することができる。従って、ストッパーをシールドから抜き去ると同時に、内針をシールド内に確実に収納することができる。
【0025】
前記ルーフ部に前記チューブが嵌入する溝が形成されていることが好ましい。これにより、ルーフ部にてチューブを安定的に保持することができる。
【0026】
前記ルーフ部は、前記一対の挟持部が前記チューブを挟む方向及び前記挿入部の長手方向と直交する方向に、前記チューブの外周面の一部を露出させることが好ましい。これにより、基部を上下方向に把持した場合に、基部とともにチューブを把持することができる。
【0027】
前記ストッパーは、前記挿入部を挟んで配置された一対の固定部を更に備えることが好ましい。この場合、前記チューブを把持するように前記一対の挟持部を弾性的に変位させたとき、前記一対の固定部が前記挿入部から離間する向きに変位することが好ましい。これにより、挿入部をシールド内に挿入する際、及び、ストッパーをシールドから抜き去る際に、一対の挟持部を把持することにより固定部とシールドとの干渉を回避することができる。
【0028】
前記ストッパーは、前記挿入部を挟んで配置された一対の固定部と、前記一対の挟持部と前記一対の固定部とを繋ぐ一対の架橋部を更に備えていてもよい。この場合、前記一対の架橋部を互いに接近するように弾性的に変位させたとき、前記チューブを把持するように前記一対の挟持部が変位することが好ましい。これにより、穿刺とその後の内針の収納作業とを把持位置を変更することなく行うことができる把持方法の種類数が増える。上記において、前記一対の架橋部を互いに接近するように弾性的に変位させたとき、更に、前記一対の固定部は前記挿入部から離間する向きに変位してもよい。これにより、挿入部をシールド内に挿入する際、及び、ストッパーをシールドから抜き去る際に、一対の架橋部を把持することにより固定部とシールドとの干渉を回避することができる。
【0029】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、以下の各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0030】
(実施形態1)
図1Aは、ハブが初期位置にある、本発明の実施形態1にかかる留置針装置100の上方から見た斜視図、
図1Bはその下方から見た斜視図である。以下の説明の便宜のため、留置針装置100の長手方向をZ軸、Z軸と直交する水平方向軸及び上下方向軸をそれぞれX軸及びY軸とする直交座標系を設定する。Y軸の矢印の側(即ち、
図1A及び
図1Bの紙面の上側)を「上側」、これと反対側を「下側」と呼ぶ。但し、「水平方向」及び「上下方向」は、留置針装置100の実際の使用時の向きを意味するものではない。更に、患者に穿刺する側(Z軸の矢印の側、即ち、
図1A及び
図1Bの紙面の左側)を「前側」、これと反対側を「後側」と呼ぶ。
図2は、
図1Aの2−2線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置100の矢視断面図である。
【0031】
留置針装置100は、シールド20を備える。シールド20は、シールド筒21と、シールド筒21の一端(前端)に固定された外ハブ25とを有する。シールド筒21は、内径が一定の略円筒形状を有する。シールド筒21の外ハブ25とは反対側端(後端)近傍の内周面には、周方向に連続する係止突起22が形成されている。外ハブ25は略漏斗形状を有し、そのシールド筒21とは反対側端(前端)に軟質の外針30が固定されている。外針30は略円筒形状を有する。シールド筒21及び外ハブ25の材料としては、特に制限はないが、硬質材料が好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等を用いることができる。シールド筒21及び外ハブ25が透明又は透光性を有すると、その内腔内の血液やハブ40を透視することができるので好ましい。外針30の材料としては、特に制限はないが、軟質材料が好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリウレタン系エラストマー、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等を用いることができる。外針30が透明又は透光性を有すると、その内腔内の血液や内針50を透視することができるので好ましい。なお、外ハブ25及び外針30を、上記の軟質材料を用いて一体に形成してもよい。
【0032】
参照符号29a,29bは、X軸と略平行に延びた翼である。翼29a,29bは、略円筒形状の固定部材28に設けられている。固定部材28をシールド筒21の外ハブ25側端近傍の外周面に外装することにより、翼29a,29bがシールド20に装着されている。翼29a,29bの材料としては、特に制限はないが、軟質材料が好ましく、例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエチレン、オレフィン系又はポリスチレン系の熱可塑性エラストマー等を用いることができる。なお、翼29a,29bは、シールド20に一体に成形されていてもよい。
【0033】
シールド20の内腔内にはハブ40が、シールド20の長手方向(即ち、Z軸方向)に移動可能に挿入されている。ハブ40の前端には金属製の硬質の内針50が固定されている。内針50は略円筒形状を有し、その先端は鋭利に加工されている。ハブ40の後端には樹脂製の柔軟なチューブ60の一端が接続されている。チューブ60の他端は、例えば血液透析を行うための血液回路に接続されている。ハブ40の外周面にOリング49が装着されている。Oリング49はシールド筒21の内周面に密着し、シールド20の内腔において、Oリング49よりも外針30側の血液がOリング49よりもチューブ60側に漏洩するのを防ぐ。ハブ40の材料としては、特に制限はないが、硬質材料が好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等を用いることができる。チューブ60の材料としては、特に制限はないが、軟質材料が好ましく、例えば、塩化ビニル等を用いることができる。
【0034】
図3Aはハブ40の斜視図、
図3Bは
図3Aの3B−3B線を含む面に沿ったハブ40の矢視断面図、
図3Cは
図3Aの3C−3C線を含む面に沿ったハブ40の矢視断面図である。
図3Bの断面と
図3Cの断面とは互いに直交する。ハブ40は、一端(前端)に、円錐面状の外面を有する前部41を有し、他端に円筒面状の外面を有する後部42を有する。縦貫路43が、ハブ40の中心軸40aに沿って前部41から後部42までハブ40を縦貫している。
図2に示されているように、内針50は、前部41側から縦貫路43内に挿入されて、ハブ40に保持される。後部42がチューブ60内に挿入されて、ハブ40とチューブ60とが接続される。かくして、内針50とチューブ60とは、ハブ40の縦貫路43を通じて連通される。
【0035】
前部41と後部42との間の、ハブ40の外周面に、周方向に連続する環状溝44が形成されている。
図2に示されているように、環状溝44にOリング49が装着される。
【0036】
ハブ40の外周面に、環状溝44と前部41との間に、環状溝44側から径大部45及び径小部46がこの順に形成されている。径小部46は前部41に隣接し、径小部46の外径は、前部41の最大径とほぼ同じであり、且つ、径大部45の外径よりも小さい。前部41、径小部46、及び径大部45には、これらを直径方向(中心軸40aに直交する方向)に横貫する横貫路47が形成されている。横貫路47は、縦貫路43と交差し且つ連通している。
【0037】
後部42の周囲に、片持ち支持された4つの弾性片48が、ハブ40の中心軸40aに対して等角度間隔で配置されている。弾性片48は、ハブ40の中心軸40aに対して略平行に延びている。弾性片48の後部42とは反対側の面には、嵌合溝48aとテーパ面48bとが形成されている。嵌合溝48aは、ハブ40の周方向に沿った凹部(溝)である。テーパ面48bは、嵌合溝48aに対して弾性片48の自由端側に隣接し、嵌合溝48a側で外径が大きな円錐面の一部をなす。
【0038】
図1A、
図1B、
図2では、ハブ40はシールド20の内腔の前端側に位置している。シールド20に対するハブ40のこの位置を本発明では「初期位置」と呼ぶ。初期位置では、ハブ40に保持された内針50は外針30を貫通し、その先端は外針30の先端から外部に突出している。
【0039】
ハブ40を初期位置を維持するために、ストッパー170が用いられる。
図4Aはストッパー170の上方から見た斜視図、
図4Bはその下方から見た斜視図、
図4Cはその平面図である。ストッパー170は、挿入部172と、一対の固定部173と、基部180とを備える。
【0040】
基部180の後ろ側の部分は、その後端から形成されたスリット186によって一対の挟持部185に分割されている。一対の挟持部185は、X軸方向に対向し、互いに接近する向きD2(
図4C参照)に弾性的に変位することができる。
【0041】
基部180の、スリット186が形成されていない前側の部分をルーフ部183と呼ぶ。
図4Bに示されているように、ルーフ部183の下側には、挿入部172とスリット186とを一直線状に結ぶZ軸方向に沿った溝184が形成されている。
【0042】
基部180の上下方向(Y軸方向)寸法は、ルーフ部183よりも挟持部185の方が大きい。この寸法差がなだらかに変化するように、ルーフ部183及び挟持部185の上面には、挿入部172に近づくにしたがって低くなる傾斜面が形成されている。
【0043】
挿入部172は一対の固定部173の間に配置され、挿入部172及び一対の固定部173はルーフ部183から前側に向かってZ軸と平行に延びている。挿入部172の、その長手方向に垂直な面(即ち、XY面に平行な面)に沿った断面は、下側が開放した略U字形状を有する。固定部173は、YZ面と平行な主面を有する板状体である。
【0044】
図1A、
図1B、
図2に示されているように、シールド筒21の後端から、ストッパー170の挿入部172をシールド筒21の内腔内に挿入する。ストッパー170をシールド20内に可能なかぎり深く挿入すると、挿入部172の先端がハブ40の弾性片48の後端に衝突し、ハブ40の径大部45が外ハブ25の後端に衝突して、ハブ40はシールド20の内腔内の初期位置に配置される。ハブ40に接続されたチューブ60は、略U字状断面を有する挿入部172、ルーフ部183の下側の溝184、及び挟持部185の間のスリット186に嵌入する。ストッパー170の一対の固定部173は、シールド20のシールド筒21の両側に位置し、その先端は翼29a,29bの位置まで達している。ストッパー170の基部180は、シールド筒21外に位置している。
【0045】
図5は、ルーフ部183を通る
図1Aの5−5線を含む垂直面(XY面)に沿った矢視断面図である。
図5は、図面を簡単化するために、断面より奥側に見える部材を省略した端面図として描かれている。ルーフ部183の溝184の内周面は略U字状の断面形状を有し、この溝184内にチューブ60が嵌入している。チューブ60の外周面のうち下方を向いた一部が露出し、残りはルーフ部183で覆われている。
図5に示されているように、チューブ60の露出した下側の外周面の一部は、ルーフ部183の下面からわずかに下方に向かって突出していることが好ましい。溝184の深さ(Y軸方向寸法)は、チューブ60の外径と同じかこれより小さいことが好ましい。溝184の幅(X軸方向寸法)は、チューブ60の外径と同じかこれより小さいことが好ましい。
【0046】
以上のように構成された本実施形態1の留置針装置100の使用方法及び作用を説明する。
【0047】
図1A、
図1B、
図2に示すように内針50が外針30の先端から突出した状態で、内針50及び外針30を患者の血管に穿刺する。穿刺する際に内針50は反力を受ける。この反力によって内針50及びこれを保持するハブ40が外針30及びシールド20に対して後方に向かって移動するのを防止する必要がある。ストッパー170の挿入部172は、その先端をハブ40の後端(弾性片48)に当接させて、ハブ40が移動するのを制限する。穿刺する際には、作業者は、ストッパー170がシールド20に対して移動することがないように留置針装置100を把持する必要がある。このような把持方法として、概して以下の4通りが挙げられる。
【0048】
第1の把持方法では、
図6Aの矢印H11に示すように、ストッパー170のルーフ部183を、2本の指(例えば親指と人差し指)で上下方向(Y軸方向)に把持することができる。
図5に示すように、ルーフ部183の下側にチューブ60の外周面の一部が露出している。従って、この第1の把持方法では、ルーフ部183とチューブ60とを一緒に把持することができる。
【0049】
第2の把持方法では、
図6Bの矢印H12に示すように、ストッパー170の一対の挟持部185を、2本の指で水平方向(X軸方向)に把持することができる。一対の挟持部185の把持の仕方としては、親指と中指とで一対の挟持部185を把持し且つ人差し指をシールド20の上面に添える方法や、親指と人差し指とで一対の挟持部185を把持する方法などがあるが、前者は留置針装置100を安定的に保持できるので好ましい。このときの把持力によって一対の挟持部185は互いに接近する方向(
図4Cの矢印D2参照)に弾性的に変位するので、一対の挟持部185がその間のチューブ60を挟持する。従って、この第2の把持方法では、一対の挟持部185とチューブ60とを一緒に把持することができる。
【0050】
第3の把持方法では、
図6Bの矢印H13に示すように、ストッパー170の一対の固定部173を、2本の指(例えば親指と人差し指)で水平方向(X軸方向)に把持することができる。このときの把持力によって、一対の固定部173は互いに接近する方向に容易に弾性変形してシールド筒21の外周面に密着する。従って、この第3の把持方法では、一対の固定部173とシールド筒21とを一緒に把持することができる。
【0051】
第4の把持方法では、翼29a,29bを上側に折り曲げ互いに重ね合わせて、2本の指(例えば親指と人差し指)で水平方向(X軸方向)に把持することができる(図示を省略)。このとき、一対の固定部173は、翼29a,29bとシールド筒21との間に挟まれて固定される。従って、この第4の把持方法では、翼29a,29bに加えて、一対の固定部173とシールド筒21とを一緒に把持することができる。
【0052】
上記のいずれかの方法で留置針装置100を把持しながら内針50及び外針30を患者の血管内に穿刺した後、シールド20からストッパー170を抜き去り、これと同時に又はこれに続いて、シールド20からチューブ60を引っ張る。この操作の詳細は後述する。チューブ60の前端にはハブ40が接続されているので、チューブ60を引っ張ることによって、ハブ40及びこれに保持された内針50がシールド20に対して後方に移動する。
【0053】
シールド筒21の後端近傍の内周面には係止突起22が形成されている。ハブ40が係止突起22まで移動し、ハブ40の弾性片48の外面に形成されたテーパ面48bが係止突起22上を摺動する。このとき弾性片48は後部42側に弾性変形する。次いで、テーパ面48bが係止突起22を乗り越えると、弾性片48が弾性回復し、嵌合溝48aに係止突起22が嵌入する。嵌合溝48aと係止突起22とが嵌合したときの、シールド20に対するハブ40の位置を本発明では「後退位置」と呼ぶ。
【0054】
図7は、ハブ40が後退位置にある留置針装置100の上方から見た斜視図である。
図8は、
図7の8−8線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置100の矢視断面図である。
【0055】
図8に示されているように、ハブ40が後退位置にあるとき、ハブ40の嵌合溝48a(
図3A、
図3B、
図3Cを参照)とシールド筒21の係止突起22とが嵌合している。また、ハブ40に保持された内針50は外針30から抜き去られ、シールド20の内腔内に収納されている。
【0056】
初期位置(
図1A、
図1B、
図2参照)に比べると、後退位置では、外針30内の流路の断面積は内針50の断面積分だけ増大するので、血液の流量が増大する。また、後退位置では、外針30からチューブ60に至る流路としては、内針50の内腔及びハブ40の縦貫路43を順に通る第1流路と、シールド20の内面と内針50及びハブ40の各外面との間の空間12、ハブ40の横貫路47、及びハブ40の縦貫路43を順に通る第2流路の2つがあるので、大きな流量で血液を流すことができる。
【0057】
この状態で翼29a,29bの上から粘着テープを患者の皮膚に貼り付け、留置針装置100を患者に固定する。外針30のみが患者に穿刺された状態で留置される。後退位置では、柔軟な外針30内に硬質の内針50が存在しないので、患者が動くなどにより、患者に対する留置針装置100の姿勢が仮に変化しても、外針30が患者の血管等を傷付けることはない。
【0058】
必要な処置が終了すると、翼29a,29bを固定する粘着テープを患者から剥がし、外針30を患者から引き抜く。シールド20に対してチューブ60を押し引きしても、ハブ40の嵌合溝48aとシールド筒21の係止突起22との嵌合状態は解除されない。即ち、内針50を外針30の先端から再度突出させたり、ハブ40とともに内針50をシールド20から引き抜いたりすることはできない。従って、硬質の内針50を誤って穿刺したり、使用済みの留置針装置10を誤って再使用したりするのを防止している。使用済みの留置針装置100は廃棄される。
【0059】
内針50及び外針30を患者の血管内に穿刺した後、
図7及び
図8に示すようにハブ40を後退位置に移動させるための操作について説明する。
【0060】
初期位置(
図1A、
図1B、
図2参照)にあるハブ40を後退位置(
図7、
図8参照)に移動させるためには、シールド20からストッパー170を抜き去る(取り除く)ことが必要である。
図1A、
図1Bの状態からストッパー170を取り除くためには、作業者はストッパー170のシールド20外に露出した部分を把持する必要がある。但し、一対の固定部173を上述した第3の把持方法(
図6Bの矢印H13)と同様に把持した場合、上述したように一対の固定部173に加えてシールド筒21も一緒に把持されてしまうので、シールド20からストッパー170を取り除くことはできない。従って、作業者は、必然的に基部180を把持することになる。
【0061】
例えば、上述した第1の把持方法(
図6Aの矢印H11)と同様に、基部180のルーフ部183を上下方向(Y軸方向)に把持することができる。この場合、上述したように、ルーフ部183とチューブ60とを一緒に把持することができる。従って、シールド20からストッパー170を引っ張ると、チューブ60もストッパー170と一緒に引っ張ることができる。
【0062】
あるいは、上述した第2の把持方法(
図6Bの矢印H12)と同様に、基部180の一対の挟持部185を水平方向(X軸方向)に把持することができる。この場合、上述したように、一対の挟持部185が弾性的に変位して、その間のチューブ60を挟持する。従って、シールド20からストッパー170を引っ張ると、チューブ60もストッパー170と一緒に引っ張ることができる。
【0063】
以上のように、本実施形態1によれば、基部180を上下方向又は水平方向に把持してシールド20から引き抜くと、ストッパー170と一緒にチューブ60も引っ張ることができる。
【0064】
これに対して、上述した従来の留置針装置900では、本実施形態1のスリット186に相当する形状が基端部971に形成されていないので、基端部971を水平方向に把持した場合(
図18Aの矢印H92参照)には、ストッパー970と一緒にチューブ960を把持することができない。従って、ハブ940及び内針950の位置はそのままで、ストッパー970のみをシールド920から抜き去ることが可能である。その結果、チューブ960を引っ張って内針950をシールド920内に収納するのを忘れる可能性がある。
【0065】
本実施形態1では、従来の留置針装置900と異なり、基部180を上下方向(
図6Aの矢印H11参照)及び水平方向(
図6Aの矢印H12参照)のいずれの方向に把持した場合であっても、ストッパー170を抜き去る操作を行えば、これと同時にハブ40を後退位置(
図7、
図8参照)に移動させることができる。従って、穿刺後にストッパー170のみを抜き去って内針50をシールド20内に収納するのを忘れるという誤操作が発生する可能性が低減される。
【0066】
また、上述した従来の留置針装置900では、基端部971を水平方向(
図18Aの矢印H92参照)に把持して穿刺した場合には、その後、内針950をシールド920内に収納する際に、把持位置を変える必要がある。これに対して、本実施形態1では、基部180を上下方向に(第1の把持方法、
図6Aの矢印H11参照)又は水平方向に(第2の把持方法、
図6Bの矢印H12参照)把持して内針50及び外針30を穿刺した場合には、その後、把持位置を変えることなく内針50をシールド20に収納することができる。従って、一連の作業を迅速且つ効率よく行うことができる。
【0067】
上述した例では、
図5に示されているように、チューブ60の外周面の一部が、ルーフ部183の下面からわずかに下方に向かって突出している。これは、第1の把持方法(
図6Aの矢印H11参照)の場合に、ストッパー170に対してチューブ60が滑ることなく、両者を一体的に把持するのに有利である。従って、内針50をシールド20内に収納し忘れるという誤操作をする可能性を更に低減することができる。
【0068】
上述した例では、
図4A、
図4B、
図6Aに示されているように、挟持部185の上下方向(Y軸方向)寸法は、ルーフ部183のそれよりも大きい。これは、第2の把持方法(
図6Bの矢印H12参照)の場合に、ストッパー170を含む留置針装置100を安定的に把持するのに有利である。
【0069】
更に、上述した例では、
図4Aに示されているように、ルーフ部183の上面が挟持部185から挿入部172に近づくにしたがって徐々に低くなるように傾斜している。これは、第2の把持方法(
図6Bの矢印H12参照)の場合に、ストッパー170をシールド20から抜き去る操作を行うのに有利である。即ち、第2の把持方法では、親指と中指とで一対の挟持部185を把持しながら、人差し指をシールド筒21の後端21r(
図2、
図6A参照)に当てて、人差し指でシールド筒21を前方に押し出すように移動させることで、ストッパー170をシールド20から抜き去ることができる。このとき、ルーフ部183の上面が上述のように傾斜していると、
図2、
図6Aから容易に理解できるように、ルーフ部183の上面に対してシールド筒21の後端21rを相対的に突出させることができるので、シールド筒21の後端21rに人差し指で力を印加しやすい。
【0070】
上述した例では、
図5に示されているように、溝184の幅(X軸方向寸法)は、チューブ60の外径と同じかこれより小さい。これにより、チューブ60が溝184の内周面によってX軸方向に弾性的に圧縮変形され、チューブ60とストッパー170との間の滑りが低減される。これにより、ストッパー170をシールド20から抜き去る際に、ストッパー170と一緒にチューブ60を引っ張ることができる。
【0071】
上述した例では、挿入部172の側から、ルーフ部183及び挟持部185がこの順に配置されている。これにより、挟持部185をストッパー170の後端に配置して、片持ち支持構造にすることができる。従って、挟持部185の弾性変位量を容易に大きくすることが可能となる。その結果、基部180を水平方向(
図6Aの矢印H12参照)に把持した場合に、一対の挟持部185によりチューブ60をより確実に挟持することができる。
【0072】
(実施形態2)
本実施形態2の留置針装置200は、ストッパーの構成に関して実施形態1の留置針装置100と異なる。以下の説明で参照する図面において、実施形態1の留置針装置100と同じ部材については同一の符号を付して、それらの説明を省略する。以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態2の留置針装置200を説明する。
【0073】
図9Aは、ハブ40が初期位置にある、本発明の実施形態2にかかる留置針装置200の上方から見た斜視図、
図9Bはその下方から見た斜視図である。
図10は、
図9Aの10−10線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置200の矢視断面図である。実施形態1と同様に、本実施形態2においても、ハブ40を初期位置に配置し且つ維持するために、ストッパー270が用いられる。
図11Aはストッパー270の上方から見た斜視図、
図11Bはその下方から見た斜視図、
図11Cはその平面図である。本実施形態2のストッパー270は、略U字状の断面形状を有する挿入部172と、板状の一対の固定部173と、基部280とを備える。
【0074】
基部280の後ろ側の部分は、その後端から形成されたスリット286によって一対の挟持部285に分割されている。一対の挟持部285は、X軸方向に対向し、互いに接近する向き向きD22(
図11C参照)に弾性的に変位することができる。
【0075】
基部280の、スリット286が形成されていない前側の部分をルーフ部283と呼ぶ。
図11Bに示されているように、ルーフ部283の下側には、挿入部172とスリット286とを一直線状に結ぶZ軸方向に沿った溝284が形成されている。
【0076】
実施形態1と同様に、基部280の上下方向(Y軸方向)寸法が、ルーフ部283よりも挟持部285において大きくてもよい。また、ルーフ部283の上面(さらには挟持部285の上面)が、挿入部172に近づくにしたがって低くなるように傾斜していてもよい。
【0077】
挿入部172は、ルーフ部183から前側に向かってZ軸と平行に延びている。一方、一対の固定部173は、実施形態1と異なり、一対の挟持部285からZ軸に沿って延びている。従って、
図11Cに示されているように、一対の挟持部285が互いに接近する向きD22に変位すると、一対の固定部173の前側端は互いに離間する向きD23に変位する。
【0078】
図9A、
図9B、
図10に示されているように、シールド筒21の後端から、ストッパー270の挿入部172をシールド筒21の内腔内に挿入する。実施形態1と同様に、挿入部172の先端でハブ40を前側に押し込んで、ハブ40をシールド20の内腔内の初期位置に配置することができる。ハブ40に接続されたチューブ60は、略U字状断面を有する挿入部172、ルーフ部283の下側の溝284、及び挟持部285の間のスリット286に嵌入する。基部280は、シールド筒21外に位置している。
【0079】
図12は、ルーフ部283を通る
図9Aの12−12線を含む垂直面(XY面)に沿った矢視断面図である。
図12は、図面を簡単化するために、断面より奥側に見える部材を省略した端面図として描かれている。ルーフ部283の溝284の内周面は略U字状の断面形状を有し、この溝284内にチューブ60が嵌入している。チューブ60の外周面のうち下方を向いた一部が露出し、残りはルーフ部283で覆われている。
図12に示されているように、チューブ60の露出した下側の外周面の一部は、ルーフ部283の下面からわずかに下方に向かって突出していることが好ましい。
【0080】
以上のように構成された本実施形態2の留置針装置200の使用方法は実施形態1の留置針装置100と同じである。
【0081】
即ち、ハブ40を初期位置(
図9A、
図9B、
図10参照)に維持しながら、内針50及び外針30を患者の血管に穿刺する。このときの留置針装置200の把持方法としては、実施形態1で説明した第1〜第4の把持方法と同じ把持方法が可能である。留置針装置200の代表的な把持位置を
図13A、
図13Bに示す。第1の把持方法では、
図13Aの矢印H21に示すように、ストッパー270のルーフ部283を、2本の指で上下方向(Y軸方向)に把持することができる。第2の把持方法では、
図13Bの矢印H22に示すように、ストッパー270の一対の挟持部285を、2本の指で水平方向(X軸方向)に把持することができる。第3の把持方法では、
図13Bの矢印H23に示すように、ストッパー270の一対の固定部273を、2本の指で水平方向(X軸方向)に把持することができる。第4の把持方法では、翼29a,29bを上側に折り曲げ互いに重ね合わせて、2本の指で水平方向(X軸方向)に把持することができる(図示を省略)。
【0082】
内針50及び外針30を患者の血管内に穿刺した後、ハブ40を後退位置(
図7、
図8参照)に移動させる。このためには、シールド20からストッパー270を抜き去り、更に、シールド20からチューブ60を引っ張る必要がある。シールド20からストッパー270を抜き去るには、実施形態1と同様に、作業者は基部280を把持する必要がある。
【0083】
例えば、第1の把持方法(
図13Aの矢印H21)と同様に、基部280のルーフ部283を上下方向(Y軸方向)に把持することができる。
図12に示されているように、ルーフ部283の下側にチューブ60の外周面の一部が露出しているから、ルーフ部283とチューブ60とを一緒に把持することができる。従って、シールド20からストッパー270を引っ張ると、チューブ60もストッパー270と一緒に引っ張ることができる。
【0084】
あるいは、第2の把持方法(
図13Bの矢印H22)と同様に、基部280の一対の挟持部285を水平方向(X軸方向)に把持することができる。この場合、一対の挟持部285が弾性的に変位して、その間のチューブ60を挟持する。従って、シールド20からストッパー270を引っ張ると、チューブ60もストッパー270と一緒に引っ張ることができる。
【0085】
以上のように、本実施形態1と同様に、基部280を上下方向又は水平方向に把持してシールド20から引き抜くと、ストッパー270と一緒にチューブ60も引っ張ることができる。従って、穿刺後にストッパー270のみを抜き去って内針50をシールド20内に収納するのを忘れるという誤操作が発生する可能性が低減される。
【0086】
また、基部280を上下方向に(第1の把持方法、
図13Aの矢印H21参照)又は水平方向に(第2の把持方法、
図13Bの矢印H22参照)把持して内針50及び外針30を穿刺した場合には、その後、把持位置を変えることなく内針50をシールド20に収納することができる。従って、一連の作業を迅速且つ効率よく行うことができる。
【0087】
本実施形態2のストッパー270では、
図11Cで説明したように、一対の挟持部285の向きD22への弾性的な変位に連動して、一対の固定部173を向きD23に変位させることができる。従って、第2の把持方法(
図13Bの矢印H22参照)で把持することにより、挿入部172をシールド20内に挿入する際、及び、ストッパー270をシールド20から抜き去る際に、固定部173とシールド20との干渉を回避することができる。
【0088】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1で説明した各種変更例は、本実施形態2にも適用することができる。
【0089】
(実施形態3)
本実施形態3の留置針装置300は、ストッパーの構成に関して実施形態1の留置針装置100と異なる。以下の説明で参照する図面において、実施形態1の留置針装置100と同じ部材については同一の符号を付して、それらの説明を省略する。以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態3の留置針装置300を説明する。
【0090】
図14Aは、ハブ40が初期位置にある、本発明の実施形態3にかかる留置針装置300の上方から見た斜視図、
図14Bはその下方から見た斜視図である。
図15は、
図14Aの15−15線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置300の矢視断面図である。実施形態1と同様に、本実施形態3においても、ハブ40を初期位置に配置し且つ維持するために、ストッパー370が用いられる。
図16Aはストッパー370の上方から見た斜視図、
図16Bはその下方から見た斜視図、
図16Cはその平面図である。本実施形態3のストッパー370は、略U字状の断面形状を有する挿入部172と、板状の一対の固定部173と、基部380と、一対の架橋部390とを備える。
【0091】
基部380の後ろ側の部分は、その後端から形成されたスリット386によって一対の挟持部385に分割されている。一対の挟持部385は、X軸方向に対向し、互いに接近する向きD32(
図16C参照)に弾性的に変位することができる。
【0092】
基部380の、スリット386が形成されていない前側の部分をルーフ部383と呼ぶ。ルーフ部383及び挟持部385の上面は、挿入部172に近づくにしたがって低くなるように傾斜している。
図16Bに示されているように、ルーフ部383の下側には、挿入部172とスリット386とを一直線状に結ぶZ軸方向に沿った溝384が形成されている。
【0093】
挿入部172は一対の固定部173の間に配置され、挿入部172及び一対の固定部173はルーフ部383から前側に向かってZ軸と平行に延びている。
【0094】
図16Cに示されているように、架橋部390は、挟持部385の後端と、固定部173の前端の近傍とを繋いでいる。架橋部390は、固定部173に対して挿入部172とは反対側に配置され、ルーフ部383からX軸方向に離間し、X軸方向の外側にアーチ状に膨らんでいる。本例では、架橋部390は挟持部385の後端に接続されているが、挟持部385の後端近傍の位置に接続されていてもよい。
【0095】
図16Cにおいて矢印H32に示すように、一対の挟持部385の後端部分(または一対の架橋部390の後端部分もしくはその近傍)を水平方向に押圧すると、一対の挟持部385は互いに接近する向きD32に弾性的に変位する。架橋部390が挟持部385と固定部173とを繋いでいるので、一対の挟持部385が互いに接近する向きD32に変位すると、一対の固定部173の前側端は互いに離間する向きD33に弾性的に変位する。
【0096】
また、
図16Cにおいて矢印H33に示すように、一対の架橋部390のZ軸方向の中央部分又はその近傍を水平方向に押圧すると、押圧力が架橋部390を介して挟持部385に伝達されて、一対の挟持部385が互いに接近する向きD32に弾性的に変位する。同時に、架橋部390が挟持部385と固定部173とを繋いでいるので、上記と同様に、一対の固定部173の前側端は互いに離間する向きD33に弾性的に変位する。
【0097】
図14A、
図14B、
図15に示されているように、シールド筒21の後端から、ストッパー370の挿入部172をシールド筒21の内腔内に挿入する。実施形態1と同様に、挿入部172の先端でハブ40を前側に押し込んで、ハブ40をシールド20の内腔内の初期位置に配置することができる。ハブ40に接続されたチューブ60は、略U字状断面を有する挿入部172、ルーフ部383の下側の溝384、及び挟持部385の間のスリット386に嵌入する。基部380は、シールド筒21外に位置している。
【0098】
図示を省略するが、ルーフ部383のXY面に沿った断面形状は、実施形態1のルーフ部183のXY面に沿った断面形状(
図5参照)と実質的に同じである。ルーフ部383の溝384の内周面は略U字状の断面形状を有し、この溝384内にチューブ60が嵌入する。チューブ60の外周面のうち下方を向いた一部が露出し、残りはルーフ部383で覆われる。実施形態1と同様に、好ましくはチューブ60の露出した下側の外周面の一部は、ルーフ部383の下面からわずかに下方に向かって突出している。
【0099】
以上のように構成された本実施形態3の留置針装置300の使用方法は実施形態1の留置針装置100とほぼ同じである。
【0100】
即ち、ハブ40を初期位置(
図14A、
図14B、
図15参照)に維持しながら、内針50及び外針30を患者の血管に穿刺する。このときの留置針装置300の把持方法としては、実施形態1で説明した第1〜第4の把持方法とほぼ同じ把持方法が可能である。留置針装置300の代表的な把持位置を
図17A、
図17Bに示す。第1の把持方法では、
図17Aの矢印H31に示すように、ストッパー370のルーフ部383を、2本の指で上下方向(Y軸方向)に把持することができる。第2の把持方法では、
図17Bの矢印H32に示すように、ストッパー370の一対の挟持部385の後端部分(または一対の架橋部390の後端部分もしくはその近傍)を、2本の指で水平方向(X軸方向)に把持することができる。第3の把持方法では、
図17Bの矢印H33に示すように、ストッパー370の一対の架橋部390のZ軸方向の中央部分又はその近傍を、2本の指で水平方向(X軸方向)に把持することができる。第4の把持方法では、翼29a,29bを上側に折り曲げ互いに重ね合わせて、2本の指で水平方向(X軸方向)に把持することができる(図示を省略)。
【0101】
内針50及び外針30を患者の血管内に穿刺した後、ハブ40を後退位置(
図7、
図8参照)に移動させる。このためには、シールド20からストッパー370を抜き去り、更に、シールド20からチューブ60を引っ張る必要がある。実施形態1と同様に、作業者は基部380を把持して、シールド20からストッパー370を抜き去ることができる。
【0102】
例えば、第1の把持方法(
図17Aの矢印H31)と同様に、基部380のルーフ部383を上下方向(Y軸方向)に把持することができる。
図14Bに示されているように、ルーフ部383の下側にチューブ60の外周面の一部が露出しているから、ルーフ部383とチューブ60とを一緒に把持することができる。従って、シールド20からストッパー370を引っ張ると、チューブ60もストッパー370と一緒に引っ張ることができる。
【0103】
あるいは、第2の把持方法(
図17Bの矢印H32)と同様に、基部380の一対の挟持部385の後端部分(または一対の架橋部390の後端部分もしくはその近傍)を水平方向(X軸方向)に把持することができる。この場合、一対の挟持部385が矢印D32(
図16C参照)の向きに弾性的に変位して、その間のチューブ60を挟持する。従って、シールド20からストッパー370を引っ張ると、チューブ60もストッパー370と一緒に引っ張ることができる。
【0104】
更に、本実施形態3では、第3の把持方法(
図17Bの矢印H33)と同様に、一対の架橋部390のZ軸方向の中央部分又はその近傍を水平方向(X軸方向)に把持することができる。この場合も、一対の挟持部385が矢印D32(
図16C参照)の向きに弾性的に変位して、その間のチューブ60を挟持する。従って、シールド20からストッパー370を引っ張ると、チューブ60もストッパー370と一緒に引っ張ることができる。
【0105】
以上のように、基部380を上下方向又は水平方向に把持して、あるいは一対の架橋部390を水平方向に把持して、シールド20から引き抜くと、ストッパー370と一緒にチューブ60も引っ張ることができる。従って、穿刺後にストッパー370のみを抜き去って内針50をシールド20内に収納するのを忘れるという誤操作が発生する可能性が低減される。
【0106】
また、基部380を上下方向に(第1の把持方法、
図17Aの矢印H31参照)又は水平方向に(第2の把持方法、
図17Bの矢印H32参照)把持して内針50及び外針30を穿刺した場合、及び、一対の架橋部390を水平方向に(第3の把持方法、
図17Bの矢印H33参照)把持して内針50及び外針30を穿刺した場合には、その後、把持位置を変えることなく内針50をシールド20に収納することができる。従って、一連の作業を迅速且つ効率よく行うことができる。
【0107】
本実施形態3のストッパー370では、
図16Cで説明したように、一対の挟持部385の向きD32への弾性的な変位に連動して、一対の固定部173を向きD33に変位させることができる。従って、第2の把持方法(
図13Bの矢印H22参照)及び第3の把持方法(
図17Bの矢印H33参照)で把持することにより、挿入部172をシールド20内に挿入する際、及び、ストッパー370をシールド20から抜き去る際に、固定部173とシールド20との干渉を回避することができる。
【0108】
上記の説明から理解できるように、本実施形態3のストッパー370は、一対の架橋部390を備えるので、第1〜第3のいずれの把持方法であっても、シールド20からストッパー370を抜き去るのと同時に内針50をシールド20に収納することができる。穿刺とその後の内針50の収納作業とを把持位置を変更することなく行うことができる把持方法の種類数が、実施形態1,2が2通りであったのに対して、本実施形態3では3通りに増える。
【0109】
上記の例では、架橋部390はアーチ状に外側に膨らんだ形状を有していたが、架橋部390の形状はこれに限定されない。上述したように、一対の架橋部390を把持することにより、少なくとも一対の挟持部385を向きD32に弾性的に変位させることができれば、例えば直線状、三角形状、台形状などの任意の形状に設定することができる。
【0110】
上記の例では、一対の架橋部390を矢印H33(
図16C参照)の向きに互いに接近するように変位させたとき、一対の固定部173の前側端は互いに離間する向きD33に変位したが、本発明はこれに限定されない。例えば、一対の架橋部390を変位させたとき、一対の固定部173がほとんど変位しない設計や、一対の固定部173が互いに接近する向きに変位する設計であってもよい。
【0111】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1で説明した各種変更例は、本実施形態3にも適用することができる。
【0112】
上記の実施形態1〜3は例示であって、本発明は上記の実施形態1〜3に限定されず、適宜変更することができる。
【0113】
ストッパーの構成は上記の実施形態に示したものに限定されない。例えば、実施形態1,2に示したストッパー170,270において、一対の固定部173を省略してもよい。
【0114】
上記の実施形態に示したストッパー170,270,370は、上方から見たときに左右対称形状を有していたが、本発明はこれに限定されず、左右非対称形状であってもよい。
【0115】
一対の挟持部が挿入部とルーフ部との間に配置されていてもよい。また、ストッパーの基部が、ルーフ部及び挟持部以外の部分を有していてもよい。
【0116】
後退位置にあるハブ40とシールド20との嵌合構造は、上記以外の構成を有していてもよい。あるいは、当該嵌合構造を省略してもよい。