【文献】
月刊メタルワーク,日本,社団法人 金属加工技術協会,1998年 8月10日,1998年8月号 Vol.609 No.17,42-45ページ
【文献】
牧充 ほか4名,角度伝達に関し組み立て誤差に鈍感な鼓形ウォームギヤの開発,関東学院大学工学部研究報告第53-2巻,日本,2009年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から3の何れか1項において、前記ウォームの位置ずれは、前記ウォームホイールの中心軸線に平行な方向に前記ウォームがオフセットされる第1の位置ずれと、前記ウォームホイールの中心軸線と直交する平面内で前記ウォームの中心軸線と前記ウォームホイールの中心軸線との距離を増減する方向に前記ウォームがオフセットされる第2の位置ずれと、前記ウォームの中心軸線を含み且つ前記ウォームホイールの中心軸線に平行な平面内で前記ウォームの中心軸線が傾斜する第3の位置ずれと、前記ウォームの中心軸線を含み且つ前記ウォームホイールの中心軸線とは直交する平面内で前記ウォームの中心軸線が傾斜する第4の位置ずれと、のうちの少なくとも一つを含むウォーム減速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、金属ギヤを用いることが考えられる。しかしながら、ウォーム減速機の負荷が大きくなって、ウォームホイールに対するウォームの位置ずれが大きくなったときに、ウォームの歯面がウォームホイールの歯面に対してエッジ当たりし、その結果、作動音が増大する。
また、ウォーム減速機の負荷が大きくなって、ウォームホイールに対するウォームの位置ずれが大きくなったときに、ウォームホイールの歯面では、ウォームの歯がウォームホイールの歯溝に入り込む側の部分(歯溝の入口部)において、歯当たりが強くなる傾向にある。その結果、歯面間で、いわゆるくさび効果による潤滑作用が低下し、潤滑状態が悪くなる。潤滑状態が悪くなると、温度が上昇するため、益々、潤滑状態が悪化する。したがって、長期の使用で摩耗が大きくなり、耐久性が低下する。また、摩耗の増大によってバックラッシが増大するため、歯打ち音が増大する。
【0005】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、作動音や歯打ち音が小さく、且つ耐久性に優れたウォーム減速機及び電動パワーステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、ウォーム(30)と、ウォームと噛み合う歯溝(50)を有するウォームホイール(40)と、を備え、ウォームホイールの歯面(41,42)は、第1形状部(61,71)と、第1形状部を取り囲む第2形状部(62,72)と、第1形状部を取り囲み且つ第2形状部により取り囲まれた第3形状部(63,73)とを含み、第1形状部は、常用負荷のときの前記ウォームホイールに対するウォームの位置ずれに起因して前記ウォームの歯面が可動する可動範囲の包絡面を含んで構成され、第2形状部は、使用時の最大負荷を超える過負荷のときに前記ウォームホイールに対するウォームの位置ずれに起因して前記ウォームの歯面が可動する可動範囲の包絡面(L1)を含んで構成され、第3形状部は、常用負荷の最大値と過負荷の最小値の間の負荷のときに、前記ウォームホイールに対するウォームの位置ずれに起因して前記ウォームの歯面が可動する可動範囲の包絡面を含んで構成されている減速機(20)を提供する。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
また、請求項2のように、前記第3形状部は、第1形状部と第2形状部との間を滑らかに接続する形状を含んでいてもよい。
【0008】
また、請求項3のように、前記第3形状部は、R形状部であってもよい。
また、請求項4のように、前記ウォームの位置ずれは、前記ウォームホイールの中心軸線(C2)に平行な方向(X1)に前記ウォームがオフセットされる第1の位置ずれと、前記ウォームホイールの中心軸線と直交する平面(P2)内で前記ウォームの中心軸線(C1)と前記ウォームホイールの中心軸線との距離(D1)を増減する方向(Y1)に前記ウォームがオフセットされる第2の位置ずれと、前記ウォームの中心軸線を含み且つ前記ウォームホイールの中心軸線に平行な平面(P1)内で前記ウォームの中心軸線が傾斜する第3の位置ずれと、前記ウォームの中心軸線を含み且つ前記ウォームホイールの中心軸線とは直交する平面内で前記ウォームの中心軸線が傾斜する第4の位置ずれと、のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0009】
また、請求項5記載の発明は、操舵補助用の電動モータ(19)と、前記電動モータの回転を減速する請求項1から4の何れか1項に記載のウォーム減速機(20)と、を備える電動パワーステアリング装置(1)を提供する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、常用負荷(すなわち比較的低負荷)のときは、第1形状部がウォームの歯面と歯当たりの良い状態で接触する。使用時の最大負荷付近のときは、第1形状部に加えて、第3形状部がウォームの歯面と接触し、主に第3形状部によって面接触状態で高負荷(例えば使用時の最大負荷)を受けることができる。すなわち、歯面間のエッジ当たりを抑制することができるので、作動音を低減することができる。
【0011】
また、最大負荷付近のときでも、実際の使用では接触することのない第2形状部の例えば歯幅方向の一対の端部とウォームの歯面との間には、隙間が形成される。すなわち、ウォームの可動範囲で大きくなっても、前記の隙間(特にウォームの歯がウォームホイールの歯溝に侵入する入口側に設けられる隙間)を通して歯面間に潤滑油が侵入し易くなる。したがって、潤滑油のくさび効果を確保して、歯面間の潤滑状態を良好に維持できるので、摩耗を抑制できる。ひていは、バックラッシの増加を長期にわたって抑制して、歯打ち音の発生を長期にわたって低減することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、第3形状部が第1形状部と第2形状部との間を滑らかに接続しているので、ウォームの可動範囲が大きくなっても、歯面間にエッジ当たりが生ずることを抑制して、作動音の増大を抑制することができる。
請求項3の発明によれば、第1形状部と第2形状部との間を、第3形状部としてのR形状部によってより滑らかに接続しているので、エッジ当たりの発生を確実に抑制して、作動音の増大を確実に抑制することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、ウォームホイールに対するウォームの種々の位置ずれに起因してウォームの歯面が可動する可動範囲を考慮し、その可動範囲の包絡面を含んで、ウォームホイールの形状部を構成するので、実際の使用において、確実に歯面間の潤滑状態を向上することができる。
請求項5の発明によれば、作動音や歯打ち音が小さく、耐久性に優れた電動パワーステアリング装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるウォーム減速機を備える電動パワーステアリング装置の概略構成を示す一部断面図である。
【
図3A】ウォームホイールの要部の斜視図であり、例えば一方の歯面(ここでは左歯面と呼ぶ)を示している。
【
図3B】ウォームホイールの要部の斜視図であり、例えば他方の歯面(ここでは右歯面と呼ぶ)を示している。
【
図4】過負荷のときのウォームホイールに対するウォームの位置ずれに起因してウォームの歯面が可動する可動範囲の包絡面を示す概略斜視図である。
【
図5A】ウォームホイールの一方の歯面の要部の概略断面図である。
【
図5B】ウォームホイールの他方の歯面の要部の概略断面図である。
【
図6】ウォーム減速機の概略図であり、ウォームホイールの中心軸線に平行な方向にウォームがオフセットされる第1の位置ずれを示している。
【
図7】ウォーム減速機の概略図であり、ウォームホイールの中心軸線と直交する平面内でウォームの中心軸線とウォームホイールの中心軸線間との距離を増大する方向にウォームがオフセットされる第2位置ずれを示している。
【
図8】ウォーム減速機の概略図であり、ウォームの中心軸線を含み且つウォームホイールの中心軸線に平行な面内でウォームの中心軸線が傾斜する第3の位置ずれを示している。
【
図9】ウォームの中心軸線を含み且つウォームホイールの中心軸線とは直交する平面内でウォームの中心軸線が傾斜する第4の位置ずれを示す概略図である。
【
図10A】ウォームホイールの要部の斜視図であり、常用負荷のときにおいて、例えば左歯面の接触領域と非接触領域を示している。
【
図10B】ウォームホイールの要部の斜視図であり、使用時の最大負荷付近の高負荷のときにおいて、例えば左歯面の接触領域と非接触領域を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は本発明の一実施の形態のウォームホイールを含む電動パワーステアリング装置の模式図である。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等からなる操舵部材2と、操舵部材2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。操舵部材2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0016】
本実施の形態では、操舵補助機構5がステアリングシャフト6にアシスト力(操舵補助力)を与える例に則して説明する。しかしながら、本発明を、操舵補助機構5が後述するピニオン軸にアシスト力を与える構造に適用することも可能である。
ステアリングシャフト6は、操舵部材2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。
【0017】
ステアリングシャフト6の周囲に配置されたトルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、操舵部材2に入力された操舵トルクを検出する。トルクセンサ11のトルク検出結果は、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)12に入力される。また、車速センサ13からの車速検出結果がECU12に入力される。中間軸7は、ステアリングシャフト6と転舵機構4とを連結している。
【0018】
転舵機構4は、ピニオン軸14と、転舵軸としてのラック軸15とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸15の各端部には、タイロッド16およびナックルアーム(図示せず)を介して転舵輪3が連結されている。
ピニオン軸14は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸14は、操舵部材2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸14の先端(
図1では下端)には、ピニオン17が設けられている。
【0019】
ラック軸15は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸15の軸方向の途中部には、前記ピニオン17に噛み合うラック18が形成されている。このピニオン17およびラック18によって、ピニオン軸14の回転がラック軸15の軸方向移動に変換される。ラック軸15を軸方向に移動させることで、転舵輪3を転舵することができる。
【0020】
操舵部材2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸14に伝達される。そして、ピニオン軸14の回転は、ピニオン17およびラック18によって、ラック軸15の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ19と、電動モータ19の出力トルクを転舵機構4に伝達するための伝達機構としてのウォーム減速機20とを含む。ウォーム減速機20は、駆動ギヤとしてのウォーム30と、このウォーム30と噛み合う被動ギヤとしてのウォームホイール40とを含む。ウォーム減速機20は、ギヤハウジング21内に収容されている。ギヤハウジング21内において、ウォーム30とウォームホイール40との少なくとも噛み合い領域には、潤滑油成分を含むグリース等の潤滑剤(図示せず)が充填されており、ウォーム30およびウォームホイール40の歯面間には、潤滑剤が介在している。
【0021】
ウォーム30は、図示しない継手を介して電動モータ19の回転軸(図示せず)に連結されている。ウォーム30は、電動モータ19によって回転駆動される。また、ウォームホイール40は、ステアリングシャフト6とは一体回転可能に連結されている。
電動モータ19がウォーム30を回転駆動すると、ウォーム30によってウォームホイール40が回転駆動され、ウォームホイール40およびステアリングシャフト6が一体回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸14に伝達される。ピニオン軸14の回転は、ラック軸15の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ19によってウォーム30を回転駆動することで、転舵輪3が転舵されるようになっている。
【0022】
電動モータ19は、三相ブラシレスモータからなり、制御装置としてのECU12によって制御される。ECU12は、トルクセンサ11からのトルク検出結果、車速センサ13からの車速検出結果等に基づいて電動モータ19を制御する。具体的には、ECU12では、トルクと目標アシスト量との関係を車速毎に記憶したマップを用いて目標アシスト量を決定し、電動モータ19の発生するアシスト力を目標アシスト量に近づけるように制御する。
【0023】
図2に示すように、ウォーム減速機20のウォーム30は、軸方向に対向する一対の歯面31,32を有しており、各歯面31,32は渦巻き状に連続している。
ウォームホイール40の外周には、複数の歯溝50が周方向に等間隔で形成されている。ウォームホイール40は、各歯溝50において相対向し、ウォーム30の一対の歯面31,32に、それぞれ、噛み合う一対の歯面41,42を有している。
【0024】
図3Aに示すように、ウォームホイール40の歯面41(例えば左歯面)は、第1形状部61と、第1形状部61を取り囲む第2形状部62と、第1形状部61を取り囲み且つ第2形状部62により取り囲まれた第3形状部63とを含んでいる。
第2形状部62は、使用時の最大負荷を超える過負荷のときにウォームホイール40に対するウォーム30の位置ずれに起因してウォーム30の歯面31が可動する可動範囲の包絡面L1(
図4参照)を含んで構成されている。包絡面L1は、前記可動範囲の包絡線の集合体である。使用時の最大負荷は、例えば据え切りのときに生ずる。使用時の最大負荷を超える負荷(過負荷)は、通常使用時には生じ得ない負荷である。ただし、転舵輪が縁石に乗り上げる等の非常時には、過負荷が生ずるおそれがある。
【0025】
第1形状部61は、常用負荷のときのウォームホイール40に対するウォーム30の位置ずれに起因してウォーム30の歯面31が可動する可動範囲の包絡面(図示せず)を含んで構成されている。
第3形状部63は、過負荷の最小値未満であって常用負荷の最大値を超える高負荷のときに、ウォームホイール40に対するウォーム30の位置ずれに起因してウォーム30の歯面31が可動する可動範囲の包絡面(図示せず)を含んで構成されている。第3形状部63は、
図5Aに示すように、第1形状部61の端部61aと第2形状部62の端部62aとの間を滑らかに接続する形状であれば良く、例えばR形状を有するR形状部に形成される。
【0026】
図3Bに示すように、ウォームホイール40の歯面42(例えば右歯面)は、第1形状部71と、第1形状部71を取り囲む第2形状部72と、第1形状部71を取り囲み且つ第2形状部72により取り囲まれた第3形状部73とを含んでいる。
第2形状部72は、使用時の最大負荷を超える過負荷のときにウォームホイール40に対するウォーム30の位置ずれに起因してウォーム30の歯面32が可動する可動範囲の包絡面L1(
図4参照)を含んで構成されている。使用時の最大負荷は、例えば据え切りのときに生ずる。使用時の最大負荷を超える負荷(過負荷)は、通常使用時には生じ得ない負荷である。ただし、転舵輪が縁石に乗り上げる等の非常時には、過負荷が生ずるおそれがある。
【0027】
第1形状部71は、常用負荷のときのウォームホイール40に対するウォーム30の位置ずれに起因してウォーム30の歯面32が可動する可動範囲の包絡面(図示せず)を含んで構成されている。
第3形状部73は、過負荷の最小値未満であって常用負荷の最大値を超える高負荷のときに、ウォームホイール40に対するウォーム30の位置ずれに起因してウォーム30の歯面32が可動する可動範囲の包絡面(図示せず)を含んで構成されている。第3形状部73は、
図5Bに示すように、第1形状部71の端部71aと第2形状部72の端部72aとの間を滑らかに接続する形状であれば良く、例えばR形状を有するR形状部に形成される。
【0028】
ウォーム30が右巻きの螺旋として構成されている場合には、ウォームホイール40の例えば右歯面である歯面42の噛み合い負荷が例えば左歯面である歯面41の噛み合い負荷よりも大きいので、例えば右歯面である歯面42の第1形状部71の面積が、左歯面である歯面41の第1形状部61の面積よりも広くなっていてもよい。
歯面41の第2形状部62を取り囲む部分64や歯面42の第2形状部72を取り囲む部分74は、ウォーム30と接触しないように形成されていればよく、特に形状を限定されないので、例えば鍛造により歯溝50を形成する場合に適している。
【0029】
前述した使用時の最大負荷を超える過負荷のときのウォーム30の位置ずれには、
図6に示す第1の位置ずれ、
図7に示す第2の位置ずれ、
図8に示す第3の位置ずれ、および
図9に示す第4の位置ずれが含まれている。
図6に示す第1の位置ずれは、ウォーム30がウォームホイール40の中心軸線C2に平行な方向X1にオフセットされる位置ずれである。より具体的には、第1の位置ずれは、ウォーム30の中心軸線C1を含み且つウォームホイール40の中心軸線C2に平行な平面P1(
図6において紙面に相当)内において、ウォーム30の中心軸線C1がウォームホイール40の中心軸線C2に平行な方向X1にオフセットされる位置ずれである。
【0030】
図7に示す第2の位置ずれは、ウォームホイール40の中心軸線C2と直交する平面P2内でウォーム30とウォームホイール40の中心間距離D1を増減する方向Y1に前記ウォーム30がオフセットされる位置ずれである。より具体的には、第2の位置ずれは、ウォーム30の中心軸線X1を含み且つウォームホイール40の中心軸線C2に直交する平面P2(
図7において紙面に相当)内において、ウォーム30の中心軸線C1とウォームホイール40の中心軸線間C2との距離である中心間距離D1を増減する方向Y1にウォーム30の中心軸線C1がオフセットされる位置ずれである。
【0031】
図8に示す第3の位置ずれは、ウォーム30の中心軸線C1を含み且つウォームホイール40の中心軸線C2に平行な面P1(
図8において紙面に相当)内でウォーム30の中心軸線C1が傾斜する位置ずれである。
図9に示す第4の位置ずれは、ウォーム30の中心軸線C1を含み且つウォームホイール40の中心軸線C2とは直交する平面P2(
図9において紙面に相当)内でウォーム30の中心軸線C1が傾斜する位置ずれである。
【0032】
本実施形態によれば、例えばウォーム30が右回りに回転するとして、常用負荷(すなわち比較的低負荷)のときは、
図10Aに示すように、ウォームホイール40の歯面41の第1形状部61がウォーム30の歯面31と歯当たりの良い状態で接触する。
また、据え切り等の、使用時の最大負荷付近のときは、
図10Bに示すように、第1形状部61に加えて、第3形状部63がウォーム30の歯面31と面接触し、主に第3形状部63によって面接触状態で高負荷(例えば使用時の最大負荷)を受けることができる。換言すると、歯面31,41間のエッジ当たりを抑制することができるので、作動音を低減することができる。
【0033】
また、据え切り等の、使用時の最大負荷付近のときでも、実際の使用では接触することのない第2形状部62の例えば歯幅方向W1の一対の端部621,622とウォーム30の歯面31との間には、隙間が形成される。すなわち、ウォーム30の可動範囲で大きくなっても、前記の隙間(特にウォーム30の歯がウォームホイール40の歯溝50に侵入する入口側に設けられる隙間)を通して歯面31,41間に潤滑油が侵入し易くなる。したがって、潤滑油のくさび効果を確保して、歯面31,41間の潤滑状態を良好に維持できるので、摩耗を抑制できる。ひていは、バックラッシの増加を長期にわたって抑制して、歯打ち音の発生を長期にわたって低減することができる。
【0034】
このように、作動音が小さく、耐久性に優れたウォーム減速機20を実現することができ、ひいては、作動音が小さく、耐久性に優れた電動パワーステアリング装置1を実現することができる。
さらに、第3形状部63が第1形状部61と第2形状部62との間を滑らかに接続しているので、ウォーム30の可動範囲が大きくなっても、ウォーム30の歯がウォームホイール40の歯面にエッジ当たりすることを抑制して、作動音の増大を抑制することができる。特に、第1形状部61と第2形状部62との間を、第3形状部63としてのR形状部によって、一層滑らかに接続しているので、エッジ当たりの発生を確実に抑制して、作動音の増大を確実に抑制することができる。また、R形状部であれば、加工し易く、製造上、有利である。
【0035】
また、ウォームホイール40に対するウォーム30の種々の位置ずれに起因してウォーム30の歯面31が可動する可動範囲を考慮し、その可動範囲の包絡面を含んで、ウォームホイール40の各形状部を構成するので、実際の使用において、確実に歯面31,41間の潤滑状態を向上することができる。
図示していないが、例えばウォーム30が右回りに回転するとしたときの、ウォームホイール40の歯面42の各形状部71〜73とウォーム30の歯面32との関係は、
図10A,
図10Bに示した、ウォームホイール40の歯面41の各形状部61〜63とウォーム30の歯面31との関係と同じである。
【0036】
なお、万一、転舵輪3が縁石等に乗り上げて、ウォームギヤ機構20が過大な逆入力を受けるような非常時において、過負荷が生じて、ウォームホイール40の歯面41,42の第2形状部62,72にウォーム30の歯が接触するようなことがあっても、そのような事態は、一瞬のことであるので、摩耗等の耐久性に影響を与えることはない。
本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態では、使用時の最大負荷を超える過負荷のときのウォーム30の位置ずれには、
図6に示す第1の位置ずれ、
図7に示す第2の位置ずれ、
図8に示す第3の位置ずれ、および
図9に示す第4の位置ずれの全てが含まれていたが、これに限らない。すなわち、使用時の最大負荷を超える過負荷のときのウォーム30の位置ずれには、
図6に示す第1の位置ずれ、
図7に示す第2の位置ずれ、
図8に示す第3の位置ずれ、および
図9に示す第4の位置ずれの少なくとも1つが含まれていればよい。その他、本発明は請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。