【文献】
長井圭治 他,レーザー核融合、レーザープラズマ実験用ターゲットの製作技術と新材料の利用,プラズマ・核融合学会誌,日本,プラズマ・核融合学会,2004年 7月,Vol.80、No.7,第626−639頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中心電極部が、前記反応部の中心に形成された貫通孔に電極物質を充填することによって形成され、前記外側電極部が、前記反応部の外周に長手方向に貫通しないように形成された溝に電極物質を充填することによって形成される、請求項8に記載のターゲットの製造方法。
前記中心電極部と前記反応部との間の境界よりも外周側で前記反応部を通るとともに長手方向に延びる平面に沿って、前記反応部、前記外側電極部、及び前記保持部を切断することによって、前記反応部をターゲット外部に露出させるための窓部が形成される、請求項3〜9のいずれか一項に記載のターゲットの製造方法。
前記外側電極部及び前記保持部を一緒に切り欠くことによって、前記反応部をターゲット外部に露出させるための窓部が形成される、請求項3〜9のいずれか一項に記載のターゲットの製造方法。
前記保持部は、ターゲットを保持可能とするように、ターゲットの横断面視で前記外側電極部の外周の少なくとも3箇所に位置している、請求項1〜9のいずれか一項に記載のターゲットの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示されるような従来のレーザ核融合技術では、発電のように多くのエネルギーを連続的に供給する必要性に応じて、効率的にエネルギーを生成することが達成できていない。このような従来のレーザ核融合技術では、密度の異なる流体間の境界に生じる凹凸によって発生する擾乱に起因して、流体の運動が不安定となる現象が発生する。このような現象は「レイリー・テイラーの不安定性」と呼ばれている。この「レイリー・テイラーの不安定性」の影響のために、従来のレーザ核融合技術では、ターゲット内部を効率的かつ均一に断熱かつ圧縮することが難しくなっている。そこで、このような課題を解決する以外に、従来のレーザ核融合の手法とは異なる新たなレーザ核融合の手法を提案することもまた望まれている。
【0010】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、効率的にエネルギーを生成可能とすべく提案される新たなレーザ核融合に用いられるターゲットを高い精度で、かつ容易に作製可能とするターゲットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決するために、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係るターゲットの製造方法は、レーザ核融合に用いられる長尺形状のターゲットの製造方法において、ターゲットの長手方向の一端側から核融合燃料のイオンが注入され、前記イオンが前記一端側から該一端側に対向する他端側に向かうようにターゲット内部の反応物質に送られ、レーザ光がターゲットの側面からターゲット内部の反応物質に照射されて、核融合反応が誘起される構成となっている、ターゲットの製造方法であって、電解物質により構成されるとともにターゲットの長手方向に沿って層上に形成される中心電極部の両外側面上に、反応物質により構成される反応部の中間層を配置し、前記反応部の各中間層の外側面上に、電解物質により構成される外側電極部の中間層を配置し、前記外側電極部の各中間層の外側面上に、
反応物質よりも剛性の高い補強材料から構成される保持部の中間層を配置して、積層構造体を形成するステップと、前記反応部を前記中心電極部の外周に形成し、前記外側電極部を、ターゲットの長手方向に複数に分離した状態で前記反応部の外周に形成し、かつ前記保持部を前記外側電極部の外周に形成するステップであって、前記反応部の表側層が、前記積層構造体の長手方向に沿った積層状表側面に形成した凹部内に反応物質を充填することによって形成され、前記反応部の裏側層が、前記積層構造体の表側面に対向する裏側面に形成した凹部内に反応物質を充填することによって形成され、前記外側電極部の表側層が、前記積層構造体の表側面上に電解物質を蒸着することによって形成され、かつターゲットの長手方向に複数に分離され、前記外側電極部の裏側層が、前記反応部の裏側面上に電解物質を蒸着することによって形成され、かつターゲットの長手方向に複数に分離され、前記外側電極部の中間層がターゲットの長手方向に複数に分離され、前記保持部の裏側層が、前記外側電極部の裏側層の裏側面上に
反応物質よりも剛性の高い補強材料を充填することによって形成される、ステップとを含む。
【0012】
第
1実施形態及び第2実施形態に係るターゲットの製造方法では、前記積層構造体を形成するステップが、前記積層構造体の長手方向の両端部に、
反応物質よりも剛性の高い補強材料により構成された補助保持部を配置することを含む。
【0013】
課題を解決するために、本発明の第3実施形態に係るターゲットの製造方法は、レーザ核融合に用いられ、かつ円形状又は等方的な多角形状の横断面を有する長尺形状に形成されるターゲットの製造方法において、ターゲットの長手方向の一端側から核融合燃料のイオンが注入され、該イオンが前記一端側から該一端側に対向する他端側に向かうようにターゲット内部の反応物質に送られ、レーザ光がターゲットの側面からターゲット内部の反応物質に照射されて、核融合反応が誘起される構成となっている、ターゲットの製造方法であって、前記反応物質により構成されるとともに円形状又は等方的な多角形状の横断面を有する反応部を形成するステップと、電解物質により構成されるとともに前記反応部の横断面の中心を通って長手方向に延びる中心電極部、及び電解物質により構成されるとともに前記反応部の外周に配置される外側電極部を形成するステップと、
反応物質よりも剛性の高い補強材料により構成されるとともに前記外側電極部の外周に配置される保持部を形成するステップと、前記反応部、前記中心電極部、前記外側電極部、及び前記保持部の組立体、並びに除去可能な物質により構成される除去部を、ターゲットの長手方向に交互に配置するステップと、前記除去部を除去するステップとを含む。
【0014】
第3実施形態に係るターゲットの製造方法では、前記除去部が前記反応部と同じ反応物質により構成される。
【0015】
第3実施形態に係るターゲットの製造方法では、前記中心電極部が、前記反応部の中心に形成された貫通孔に電極物質を充填することによって形成され、前記外側電極部が、前記反応部の外周に形成された貫通孔及び/又は溝に電極物質を充填することによって形成される。
【0016】
第3実施形態に係るターゲットの製造方法では、前記中心電極部が、前記反応部の片面側から前記除去部の横断面中心に突出するように形成される。
【0017】
第3実施形態に係るターゲットの製造方法では、前記中心電極部が、前記除去部の中心に形成された貫通孔に電解物質を充填することによって形成される。
【0018】
課題を解決するために、本発明の第4実施形態に係るターゲットの製造方法は、レーザ核融合に用いられ、かつ円形状又は等方的な多角形状の横断面を有する長尺形状に形成されるターゲットの製造方法において、ターゲットの長手方向の一端側から核融合燃料のイオンが注入され、該イオンが前記一端側から該一端側に対向する他端側に向かうようにターゲット内部の反応物質に送られ、レーザ光がターゲットの側面からターゲット内部の反応物質に照射されて、核融合反応が誘起される構成となっている、ターゲットの製造方法であって、前記反応物質により構成されるとともに円形状又は等方的な多角形状の横断面を有する反応部を形成するステップと、電解物質により構成されるとともに前記反応部の横断面の中心を通って長手方向に延びる中心電極部、及び電解物質により構成されるとともに前記反応部の外周に配置される外側電極部を形成するステップと、
反応物質よりも剛性の高い補強材料により構成されるとともに前記外側電極部の外周に配置される保持部を形成するステップと、前記反応部、前記中心電極部、前記外側電極部、及び前記保持部の組立体同士を、ターゲットの長手方向に交互に配置するステップと、前記反応部をターゲットの長手方向に複数に分離するように前記反応部の一部を除去するステップとを含む。
【0019】
第4実施形態に係るターゲットの製造方法では、前記中心電極部が、前記反応部の中心に形成された貫通孔に電極物質を充填することによって形成され、前記外側電極部が、前記反応部の外周に長手方向に貫通しないように形成された溝に電極物質を充填することによって形成される。
【0020】
また、第3実施形態及び第4実施形態に係るターゲットの製造方法は、下記(a)又は(b)のようであると好ましい。
(a)前記中心電極部と前記反応部との間の境界よりも外周側で前記反応部を通るとともに長手方向に延びる平面に沿って、前記反応部、前記外側電極部、及び前記保持部を切断することによって、前記反応部をターゲット外部に露出させるための窓部が形成される。
(b)前記外側電極部及び前記保持部を一緒に切り欠くことによって、前記反応部をターゲット外部に露出させるための窓部が形成される。
【0021】
さらに、第1実施形態〜第4実施形態に係るターゲットの製造方法では、前記保持部は、ターゲットを保持可能とするように、ターゲットの横断面視で前記外側電極部の外周の少なくとも3箇所に位置していると好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明のターゲットの製造方法は、レーザ核融合に用いられる長尺形状のターゲットの製造方法において、ターゲットの長手方向の一端側から核融合燃料のイオンが注入され、前記イオンが前記一端側から該一端側に対向する他端側に向かうようにターゲット内部の反応物質に送られ、レーザ光がターゲットの側面からターゲット内部の反応物質に照射されて、核融合反応が誘起される構成となっている、ターゲットの製造方法であって、電解物質により構成されるとともにターゲットの長手方向に沿って層上に形成される中心電極部の両外側面上に、反応物質により構成される反応部の中間層を配置し、前記反応部の各中間層の外側面上に、電解物質により構成される外側電極部の中間層を配置し、前記外側電極部の各中間層の外側面上に、
反応物質よりも剛性の高い補強材料から構成される保持部の中間層を配置して、積層構造体を形成するステップと、前記反応部を前記中心電極部の外周に形成し、前記外側電極部を、ターゲットの長手方向に複数に分離した状態で前記反応部の外周に形成し、かつ前記保持部を前記外側電極部の外周に形成するステップであって、前記反応部の表側層が、前記積層構造体の長手方向に沿った積層状表側面に形成した凹部内に反応物質を充填することによって形成され、前記反応部の裏側層が、前記積層構造体の表側面に対向する裏側面に形成した凹部内に反応物質を充填することによって形成され、前記外側電極部の表側層が、前記積層構造体の表側面上に電解物質を蒸着することによって形成され、かつターゲットの長手方向に複数に分離され、前記外側電極部の裏側層が、前記反応部の裏側面上に電解物質を蒸着することによって形成され、かつターゲットの長手方向に複数に分離され、前記外側電極部の中間層がターゲットの長手方向に複数に分離され、前記保持部の裏側層が、前記外側電極部の裏側層の裏側面上に
反応物質よりも剛性の高い補強材料を充填することによって形成される、ステップとを含む。
そのため、ターゲットの外周側からのレーザ光によって前記反応部にはさらなるイオンが加えられ、さらに、前記反応部では、前記レーザ光の照射によって電子が移動する一方でイオンが残されることとなる。その結果、前記反応部に電場が形成されること等によって、イオンが加速されることとなり、核融合反応が、ターゲットの一端から他端に向かって増幅するとともに連続して発生することとなる。また、このような核融合においては、従来のレーザ核融合とは異なり、ターゲット内にてイオンを効率的に生成かつ均一な方向に加速させることが重要となる。ここで、前記反応部にてイオンを加速させる電場等の方向は、長手方向に間隔を空けた前記反応部の平面に対して垂直になる傾向がある。従って、ターゲットの長手方向に間隔を空けた前記反応部の平面を、イオンの加速方向に一致するターゲットの長手方向に対して、垂直に配置することによって、前記反応部にて電場等により加速されたイオンが、ターゲットの一端から他端に向かって効率的に送られることとなる。
また、前記積層構造体は、シンプルな構造であるので容易に作製でき、ひいては前記積層構造体の形状精度を高めることができる。このような積層構造体を用いてターゲットは作製されるので、ターゲットを容易に製造でき、ひいてはターゲットの形状精度を高めることができる。このような形状精度の高いターゲットによって、核融合反応を効率的に発生させることができる。
【0023】
本発明のターゲットの製造方法では、前記積層構造体を形成するステップが、前記積層構造体の長手方向の両端部に、
反応物質よりも剛性の高い補強材料により構成された補助保持部を配置することを含むので、前記保持部と前記補助保持部とによって、ターゲットが確実に保護されることとなる。そのため、ターゲットの作製時、保管時、及び運用時に、外部から加えられる力によってターゲットが変形することを確実に防止できる。よって、さらに高い形状精度を有するターゲットを容易に製造できる。
【0024】
本発明のターゲットの製造方法は、レーザ核融合に用いられ、かつ円形状又は等方的な多角形状の横断面を有する長尺形状に形成されるターゲットの製造方法において、ターゲットの長手方向の一端側から核融合燃料のイオンが注入され、該イオンが前記一端側から該一端側に対向する他端側に向かうようにターゲット内部の反応物質に送られ、レーザ光がターゲットの側面からターゲット内部の反応物質に照射されて、核融合反応が誘起される構成となっている、ターゲットの製造方法であって、前記反応物質により構成されるとともに円形状又は等方的な多角形状の横断面を有する反応部を形成するステップと、電解物質により構成されるとともに前記反応部の横断面の中心を通って長手方向に延びる中心電極部、及び電解物質により構成されるとともに前記反応部の外周に配置される外側電極部を形成するステップと、
反応物質よりも剛性の高い補強材料により構成されるとともに前記外側電極部の外周に配置される保持部を形成するステップと、前記反応部、前記中心電極部、前記外側電極部、及び前記保持部の組立体、並びに除去可能な物質により構成される除去部を、ターゲットの長手方向に交互に配置するステップと、前記除去部を除去するステップとを含む。
そのため、ターゲットの外周側からのレーザ光によって前記反応部にはさらなるイオンが加えられ、さらに、前記反応部では、前記レーザ光の照射によって電子が移動する一方でイオンが残されることとなる。その結果、前記反応部に電場が形成されること等によって、イオンが加速されることとなり、核融合反応が、ターゲットの一端から他端に向かって増幅するとともに連続して発生することとなる。また、このような核融合においては、従来のレーザ核融合とは異なり、ターゲット内にてイオンを効率的に生成かつ均一な方向に加速させることが重要となる。ここで、前記反応部にてイオンを加速させる電場等の方向は、前記反応部の平面に対して垂直になる傾向がある。従って、イオンの加速方向に一致するターゲットの長手方向に対して、前記複数の反応部の平面を垂直に配置することによって、前記反応部にて電場等により加速されたイオンが、ターゲットの他端側で隣接する前記反応部に効率的に送られることとなる。
また、各反応部にて比較的作製し難い前記中心電極部、前記外側電極部、及び前記保持部を予め形成して、その後、このような前記中心電極部、前記反応部、前記外側電極部、及び前記保持部の組立体を、互いに長手方向に間隔を空けて配置している。そのため、前記反応部内で前記中心電極部及び前記外側電極部を予め高い精度で形成でき、ターゲットを高い精度で作製できる。さらに、前記反応部間に配置された前記除去部を除去することによって、互いに間隔を空けて配置された複数の反応部を容易に形成できる。従って、ターゲットを容易に作製できる。
【0025】
本発明のターゲットの製造方法では、前記除去部が前記反応部と同じ反応物質により構成されるので、例えば、前記反応部の体積を調節するために、前記反応部の一部をレーザ加工により除去する際に、前記反応部の一部と一緒に前記除去部を除去することによって、ターゲットをさらに効率的に作製できる。
【0026】
本発明のターゲットの製造方法では、前記中心電極部が、前記反応部の中心に形成された貫通孔に電極物質を充填することによって形成され、前記外側電極部が、前記反応部の外周に形成された貫通孔及び/又は溝に電極物質を充填することによって形成されるので、前記中心電極と前記外側電極とを容易に形成できる。よって、ターゲットをさらに容易に作製できる。
【0027】
本発明のターゲットの製造方法では、前記中心電極部が、前記反応部の片面側から前記除去部の横断面中心に突出するように形成されるので、前記反応部及び前記除去部に対応する中心電極部が一緒に形成され、前記中心電極部を効率的に形成できる。よって、ターゲットをさらに容易に作製できる。
【0028】
本発明のターゲットの製造方法では、前記中心電極部が、前記除去部の中心に形成された貫通孔に電解物質を充填することによって形成されるので、前記除去部の中心電極部を容易に形成でき、前記中心電極部を効率的に形成できる。よって、ターゲットをさらに容易に作製できる。
【0029】
本発明のターゲットの製造方法は、レーザ核融合に用いられ、かつ円形状又は等方的な多角形状の横断面を有する長尺形状に形成されるターゲットの製造方法において、ターゲットの長手方向の一端側から核融合燃料のイオンが注入され、該イオンが前記一端側から該一端側に対向する他端側に向かうようにターゲット内部の反応物質に送られ、レーザ光がターゲットの側面からターゲット内部の反応物質に照射されて、核融合反応が誘起される構成となっている、ターゲットの製造方法であって、前記反応物質により構成されるとともに円形状又は等方的な多角形状の横断面を有する反応部を形成するステップと、電解物質により構成されるとともに前記反応部の横断面の中心を通って長手方向に延びる中心電極部、及び電解物質により構成されるとともに前記反応部の外周に配置される外側電極部を形成するステップと、
反応物質よりも剛性の高い補強材料により構成されるとともに前記外側電極部の外周に配置される保持部を形成するステップと、前記反応部、前記中心電極部、前記外側電極部、及び前記保持部の組立体同士を、ターゲットの長手方向に交互に配置するステップと、前記反応部をターゲットの長手方向に複数に分離するように前記反応部の一部を除去するステップとを含む。
このように製造されたターゲットでは、核融合反応を誘起する際に、前記レーザ光によって前記反応部にはさらなるイオンが加えられ、前記反応部では前記レーザ光の照射によって電子が移動する一方でイオンが残されることとなる。この残されたイオンと前記レーザ光との間にシース電場が形成されて、イオンが加速される。従って、核融合反応は、ターゲットの前記反応部の一端側から他端側に向かって増幅するとともに連続して発生することとなる。このような核融合においては、ターゲット内部を効率的かつ均一に断熱かつ圧縮するという従来のレーザ核融合の課題を避けて、ターゲット内にてイオンを効率的に生成かつ均一な方向に加速させることによって、効率的にエネルギーを生成できる。
また、各反応部にて比較的作製し難い前記中心電極部、前記外側電極部、及び前記保持部を予め形成して、その後、このような前記中心電極部、前記反応部、前記外側電極部、及び前記保持部の組立体を積層することとなる。従って、前記反応部内で前記中心電極部及び前記外側電極部を予め高い精度で、かつ容易に形成でき、ターゲットを高い精度で、かつ容易に作製できる。
【0030】
本発明のターゲットの製造方法では、前記中心電極部が、前記反応部の中心に形成された貫通孔に電極物質を充填することによって形成され、前記外側電極部が、前記反応部の外周に長手方向に貫通しないように形成された溝に電極物質を充填することによって形成されるので、前記中心電極部を容易に形成でき、各外側電極部を互いに絶縁した状態で容易に形成できる。よって、ターゲットをさらに容易に作製できる。
【0031】
本発明のターゲットの製造方法は、前記中心電極部と前記反応部との間の境界よりも外周側で前記反応部を通るとともに長手方向に延びる平面に沿って、前記反応部、前記外側電極部、及び前記保持部を切断することによって、前記反応部をターゲット外部に露出させるための窓部が形成される。または、前記外側電極部及び前記保持部を一緒に切り欠くことによって、前記反応部をターゲット外部に露出させるための窓部が形成される。そのため、前記レーザ光を前記反応部に照射するための前記窓部を、容易に形成できる。よって、ターゲットをさらに容易に作製できる。
【0032】
本発明のターゲットの製造方法では、前記保持部は、ターゲットを保持可能とするように、ターゲットの横断面視で前記外側電極部の外周の少なくとも3箇所に位置しているので、ターゲットが前記保持部によって安定して保持され、ターゲットの変形を確実に防止でき、かつターゲットを安定して保持した状態で加工できる。よって、ターゲットをより高い精度で作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る製造方法によって作製されるターゲットを概略的に示す斜視図である。
【
図2】(a)
図1のA−A断面図である。(b)
図1のB−B断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るターゲットの製造方法に用いられる積層構造体を概略的に示す斜視図である。
【
図4】(a)
図3の積層構造体の横断面図である。(b)
図4(a)の積層構造体の表側面に外側電極部の表側層を形成した状態を示す横断面図である。(c)
図4(b)の外側電極部の表側層上にフォトレジストを塗布した状態を示す横断面図である。(d)
図4(c)のフォトレジストの一部を除去した状態を示す横断面図である。(e)
図4(d)の除去されたフォトレジストの一部に対応して反応部の一部及び外側電極部の一部を除去することによって、窓部及び表側凹部を形成した状態を示す横断面図である。(f)
図4(e)の残されたフォトレジストを除去した状態を示す横断面図である。(g)
図4(f)の積層構造体に裏側面に裏側凹部を形成した状態を示す横断面図である。(h)
図4(g)の裏側凹部内で中心電極部の裏側面上に反応部の裏側層を形成した状態を示す横断面図である。(i)
図4(h)における反応部の裏側層の表面を平坦に切削した状態を示す横断面図である。(j)
図4(i)の裏側凹部内における反応部の裏側層の表面に、外側電極部の裏側層を形成した状態を示す横断面図である。(k)
図4(j)の裏側凹部内における外側電極部の裏側層の表面上に保持部の裏側層を形成した状態を示す横断面図である。(l)
図4(k)の窓部及び表側凹部に反応部の表側層を形成した状態を示す横断面図である。
【
図5】(a)
図4(l)における反応部の表側層の表面を平坦に切削した状態を概略的に示す斜視図である。(b)
図5(a)の補助保持部を切断によって除去した際の切断面を示す図である。
【
図6】(a)
図5(b)の表側面側からレーザ加工を施すための切削パターンを概略的に示す平面図である。(b)
図6(a)の切削パターンによりレーザ加工を施した状態を示す平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る製造方法によって作製されるターゲットを、
図1のA−A断面と同様に示す横断面図である。
【
図8】(a)第2実施形態に係る製造方法に用いられる積層構造体の横断面図である。(b)
図8(a)の積層構造体の表側面に表側凹部を形成した状態を示す横断面図である。(c)
図8(b)の積層構造体に裏側面に裏側凹部を形成した状態を示す横断面図である。(d)
図8(c)の表側凹部に反応部の表側層を形成した状態を示す横断面図である。(e)
図8(d)の裏側凹部内で中心電極部の裏側面上に反応部の裏側層を形成した状態を示す横断面図である。(f)
図8(e)における反応部の裏側層の表面を平坦に切削した状態を示す横断面図である。(g)
図8(f)の裏側凹部内における反応部の裏側層の表面に、外側電極部の裏側層を形成した状態を示す横断面図である。(h)
図8(g)の裏側凹部内における外側電極部の裏側層の表面上に保持部の裏側層を形成した状態を示す横断面図である。(i)
図8(h)の表側面に外側電極部の表側層を形成した状態を示す横断面図である。(j)
図8(i)の外側電極部の表側層上にフォトレジストを塗布した状態を示す横断面図である。(k)
図8(j)のフォトレジストの一部を除去した状態を示す横断面図である。(l)
図8(k)の除去されたフォトレジストの一部に対応して外側電極部の一部を除去することによって、窓部を形成した状態を示す横断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る製造方法により作製されるターゲットを概略的に示す側面図である。
【
図10】(a)
図9のターゲットにおけるイオン入射側領域の概略縦断面図である。(b)
図9のターゲットにおけるイオン入射側領域の反応部を配置した範囲の概略横断面図である。
【
図11】(a)第3実施形態係る製造方法においてターゲットの反応部を形成するための低密度フォームシートの縦断面図である。(b)
図11(a)の低密度フォームシートを厚さ方向に圧縮することによって反応部を形成した状態を示す縦断面図である。(c)
図11(b)の反応部の外周に保持部を取付けた状態を示す縦断面図である。(d)
図11(c)の反応部に貫通孔を形成し、かつ
図11(c)の保持部に貫通孔及び下側縁溝を形成した状態を示す横断面図である。(e)
図11(d)の反応部の貫通孔に中心電極部を形成し、かつ
図11(d)の保持部の貫通孔及び下側縁溝に外側電極部を形成した状態を示す横断面図である。(f)
図11(e)の縦断面図である。(g)
図11(e)及び
図11(f)の組立体と、除去部とを交互に配置した状態を示す縦断面図である。(h)
図11(g)の組立体及び除去部を圧着した状態を示す縦断面図である。(i)
図11(g)の積層組立体を切断することによって窓部を形成した状態を示す縦断面図である。
【
図12】(a)本発明の第4実施形態に係る製造方法に用いられる反応部、中心電極部、外側電極部、及び保持部の組立体の横断面図である。(b)
図12(a)の組立体の縦断面図である。(c)
図12(a)及び
図12(b)の組立体を交互に積層した状態を示す縦断面図である。(d)
図12(c)の積層組立体を切断することによって窓部を形成した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るターゲットの製造方法を説明する。
まず、第1実施形態に係る製造方法により作製されるターゲットについて、
図1、
図2(a)、及び
図2(b)を参照して説明する。ターゲット1は、略四角形状の横断面を有する長尺形状に形成されている。ターゲット1の内部には、電解物質により構成された中心電極部2が、ターゲット1の長手方向に沿って配置されており、中心電極部2の横断面は略四角形状に形成されている。中心電極部2の外周には、核融合燃料の反応物質により構成された反応部3が、ターゲット1の長手方向に沿って配置されている。反応部3の外周には、電解物質により構成された外側電極部4がターゲット1の長手方向に複数に分離された状態で配置されている。なお、
図1では、一例として6分割された外側電極部4を示しているが、外側電極部4は2つ以上に分割されていればよい。外側電極部4の外周には、保持部5が設けられている。保持部5は、反応物質より剛性の高い
補強材料により構成されている。また、ターゲット1の一側面(以下、「表側面」という)1aには、反応部3をターゲット1の外部に露出させるように開口する窓部6が形成されている。なお、反応部3の反応物質は、核融合がDT反応系である場合、重水素、三重水素、又は重水素若しくは三重水素を構成元素として含む炭化水素の分子若しくは高分子(例えば、CxDy、CxTy)等であるとよく、核融合がpB反応系である場合、固体のデカボラン(B
10H
14)であるとよい。中心電極部2及び/又は外側電極部4の電解物質は、一例として、アルミニウム、ホウ素、及び/又はマグネシウムとなっているとよい。
【0035】
反応部3について、
図2(a)及び
図2(b)を参照して説明する。
反応部3は、横断面視で中心電極部2の外周に配置された表側層3a、裏側層3b、及び一対の中間層3cを有している。表側層3aは、窓部6によってターゲット1の表側面1aで露出している。裏側層3bは、横断面視で、中心電極部2を挟んで表側層3aに対向して配置されている。中間層3cは、表側層3aと裏側層3bとの間で延在している。一例として、ターゲット1内に設けられる複数の反応部3における反応物質の密度は、ターゲット1全体に反応物質を設けた場合の反応物質の密度に対して約10%となっているとよい。
【0036】
外側電極部4について、
図1、
図2(a)、及び
図2(b)を参照して説明する。
外側電極部4の横断面は、略ハット形状に形成されており、外側電極部4は、横断面視でターゲット1の表側面1aに沿って配置された一対の表側層4aと、反応部3の外周に配置された裏側層4b、及び一対の中間層4cを有している。一対の表側層4aは、ターゲット1の表側面1aで、ターゲット1の長手方向に直交する方向に互いに間隔を空けて配置されている。裏側層4bは、横断面視で反応部3を挟んで表側層4aに対向して配置されている。一対の中間層4cは、それぞれ一対の表側層4aと裏側層4bとの間で延在している。
【0037】
保持部5について、
図2(a)及び
図2(b)を参照して説明する。
保持部5は、外側電極部4の外周に配置された裏側層5a、及び一対の中間層5bを有している。裏側層5aは、ターゲット1の表側面1aに対向する一側面(以下、「裏側面」という)1bに沿って配置されている。中間層5bは、ターゲット1における表側面1aと裏側面1bとの間の一側面(以下、「中間側面」という)1cに沿って配置されている。
【0038】
ここで、
図3及び
図4(a)を参照して、ターゲット1の製造に用いる積層構造体7について説明する。
積層構造体7は、中心電極部2、反応部3の中間層3c、外側電極部4の中間層4c、及び保持部5の中間層5bを積層することによって形成されている。詳細には、中心電極部2の両面上に、それぞれ反応部3の中間層3cが重ねて配置されている。反応部3の中間層3cの外側面上に、外側電極部4の中間層4cが重ねて配置されている。外側電極部4の中間層4cの外側面上に、保持部5の中間層5bが重ねて配置されている。さらに、積層構造体7の長手方向の両端には、補助保持部8が配置されている。このような積層構造体7では、横断面視で、各層の積層断面に沿った一側面(以下、「表側面」という)7aが、ターゲット1の表側面1aに対応するものとする。積層構造体7の表側面7aに対向する一側面(以下、「裏側面」という)7bが、ターゲット1の裏側面1bに対応するものとする。保持部5の中間層5bに沿った側面(以下、「中間側面」という)7cが、ターゲット1の中間側面1cに対応するものとする。
【0039】
本発明の第1実施形態に係るターゲット1の製造方法について、
図3〜
図6を参照して説明する。
(ステップ1−1)
図3及び
図4(a)に示すように、中心電極部2の両面上に反応部3の中間層3cを配置する。各反応部3の中間層3cの外側面上に外側電極部4の中間層4cを配置する。各外側電極部4の中間層4cの外側面上に保持部5の中間層5bを配置した状態で各層を圧着する。さらに、圧着した各層の組立体における長手方向の両端に補助保持部8を圧着して、積層構造体7を作製する。
(ステップ1−2)
図4(b)に示すように、積層構造体7の表側面7aに電解物質を蒸着して、外側電極部4の表側層4aを形成する。
(ステップ1−3)
図4(c)に示すように、外側電極部4の表側層4aの表面上にフォトレジスト9を塗布して、このフォトレジスト9のレジストパターンを感光する。このレジストパターンは、一対の外側電極部4の間に配置された開口形成領域9a(
図4(d)を参照)と、外側電極部4を互いに長手方向に分離するように形成した複数の電極分離領域(図示せず)とを有している。具体的には、開口形成領域9aは、
図4(d)に示すように、表側層4aの表面の幅方向中央で長手方向に延びるように形成されている。また、複数の電極分離領域は、表側層4aの表面で互いに長手方向に間隔を空けて配置され、かつそれぞれ表側層4aの表面の幅全体に延びるように形成されている。
(ステップ1−4)
図4(d)に示すように、レジストパターンを感光したフォトレジスト9を現像した後に洗浄して、フォトレジスト9の一部を除去する。
(ステップ1−5)
図4(e)に示すように、除去されたフォトレジスト9の一部に対応して、外側電極部4の表側層4aの一部をエッチング処理により除去して、窓部6を形成する。このとき、積層構造体7の表側面7aで露出する中心電極部2の一部もまた、エッチング処理により除去して、表側凹部10を形成する。
(ステップ1−6)
図4(f)に示すように、残されたフォトレジスト9を外側電極部4の表側層4aの表面から除去する。
(ステップ1−7)
図4(g)に示すように、積層構造体7に裏側凹部11を形成する。この裏側凹部11は、横断面視で、中心電極部2と積層構造体7の裏側面7bとの間で延びる台形形状に形成されている。
(ステップ1−8)
図4(h)に示すように、裏側凹部11内に反応物質を充填して、中心電極部2の裏側面上に反応部3の裏側層3bを形成する。
(ステップ1−9)
図4(i)に示すように、外側電極部4の中間層4cの一部を裏側凹部11内で露出させるように、反応部3の裏側層3bの表面を平坦に切削する。
(ステップ1−10)
図4(j)に示すように、外側電極部4の表側層4aに対応して積層構造体7の長手方向に間隔を空けるように、裏側凹部11内における反応部3の裏側層3bの表面に電解物質をパターン蒸着して、外側電極部4の裏側層4bを形成する。
(ステップ1−11)
図4(k)に示すように、裏側凹部11内に
補強材料を充填して、外側電極部4の裏側層4bの表面上に保持部5の裏側層5aを形成する。
(ステップ1−12)
図4(l)に示すように、窓部6及び表側凹部10内に反応物質を充填して、中心電極部2の表側面上に反応部3の表側層3aを形成する。
(ステップ1−13)
図5(a)及び
図5(b)に示すように、反応部3の表側層3aの表面を平坦に切削する。
(ステップ1−14)
図5(a)及び
図5(b)に示すように、積層構造体7の補助保持部8を切断して取り除く。この切断面は、
図5(b)に示されるようになっている。
(ステップ1−15)
図6(a)及び
図6(b)に示すように、積層構造体7の表側面7a側からレーザ加工用のレーザ光を照射して、この積層構造体7の一部を切削する。このレーザ加工による切削パターン12は、長手方向に直交する方向で互いに向き合う一対の略T字状の切削領域12aを、長手方向に間隔を空けて配置するように形成されている。このようなレーザ加工によって、外側電極部4の中間層4cが長手方向に互いに間隔を空けて形成され、反応物質の体積が調節されることとなる。すなわち、ターゲット1内に設けられる複数の反応部3における反応物質の密度が調節されることとなる。
なお、上述の蒸着は、化学蒸着(CVD)及び物理蒸着(PVD)のいずれであってもよい。
【0040】
本発明の第1実施形態の製造方法により作製されたターゲット1を用いてレーザ核融合反応を発生させる方法について説明する。
シードイオンのイオンバンチをターゲット1の長手方向一端(以下、「入射端」という)に送る。入射端に送られたイオンバンチは、ターゲット1の入射端から該入射端に対向する他端(以下、「出射端」という)に向かうように反応部3に送られる。
【0041】
イオンバンチが反応部3の各部に到達する前に、この反応部3に、ターゲット1の窓部6から第1のパルスレーザ光を照射する。さらに、イオンバンチが反応部3に到達すると同時に、この反応部3に、ターゲット1の窓部6から第2のパルスレーザ光を照射するとともに、この反応部3に電圧を印加する。
【0042】
このような動作によってターゲット1内で発生する核融合の作用について説明する。
イオンバンチ内のシードイオンがターゲット1の反応部3に到達する前に、この反応部3に第1のパルスレーザ光が照射され、その結果、プラズマが発生して、反応部3におけるイオン(以下、「反応物質イオン」という)及び電子の温度が上昇する。反応物質イオンの温度が上昇することによって、反応物質の核的阻止能が低下することとなり、電子の温度が上昇することによって、反応物質の電子的阻止能が低下することとなる。そのため、シードイオンがターゲット1を通過する際に、シードイオンのエネルギーが反応物質イオン及び電子に奪われることが防止される。また、このような第1のパルスレーザ光が反応部3に照射されることによって、近年研究報告されている「クラスタ粒子のクーロン爆発現象」、「薄膜形状物質の高電場シース加速」等の現象のように、反応物質イオンが加速される。
【0043】
シードイオンがターゲット1の反応部3に到達すると同時に、この反応部3に第2のパルスレーザ光を照射することによって、プラズマが発生して、シードイオンをターゲット1の入射端から出射端に向かって加速させるレーザ光圧が生じる。このとき、第1のパルスレーザ光、及び第2のパルスレーザ光の照射によって加速された反応物質イオンと、シードイオンとの間で、「クーロン弾性散乱」が生ずる。ここで、シードイオンと反応物質イオンとは同じ物質のイオンとなっているので、「クーロン弾性散乱」によって、シードイオンの運動エネルギーが反応部3内で核融合反応に伴って増加し、この運動エネルギーが反応物質イオンに引き渡されることとなる。また、加速された反応物質イオンが、シードイオンのイオンバンチに取り込まれて、イオンバンチの運動エネルギーが増加することとなる。すなわち、「クーロン弾性散乱」によって、核融合反応によって生じた運動エネルギーが、次に発生する核融合反応に寄与するイオンに与えられることとなる。
【0044】
また、シードイオンがターゲット1の反応部3に到達すると同時に、この反応部3に電圧を印加する。この電圧印加によって反応部3に電界が生じ、この電界によって、正の電荷を有するシードイオンに対して、反応部3の外周から中心に向かう力が作用することとなる。そのため、ターゲット1の長手方向に沿って移動するシードイオンの移動方向が、「クーロン弾性散乱」等によって、ターゲット1の外部に散逸することが抑制されることとなる。
【0045】
このような動作及び作用においては、ターゲット1の長手方向の長さは、核融合反応により発生するイオンのエネルギーの増加量と、第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光により発生する反応物質イオンのエネルギーの増加量とが、ターゲット1の加熱に必要なイオンのエネルギーを超えるような長さに設定されていると好ましい。または、ターゲット1の長さは、核融合反応によるエネルギーの増幅率が、ターゲット1の加熱により消費されるエネルギーの減衰率よりも大きくなるような長さに設定されていると好ましい。一例として、ターゲット1の長さは、核融合がDT反応系の場合、300mm以上であると好ましい。また、ターゲット1の横断面は、ターゲット1の側方から照射される第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光の集光径に対応して形成されていると好ましく、このような第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光の直径は、10μm〜100μmであると好ましい。
【0046】
また、これらの動作及び作用を鑑みると、第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光が反応部3に照射された瞬間に、非平衡かつ超高温のプラズマが発生し、イオンバンチは、ピコ秒単位の短い時間内に「クーロン弾性散乱」及び「核融合反応」を生じながらターゲット1内を移動することとなる。そのため、このようなターゲットを用いた核融合反応では、従来のレーザ核融合のように、プラズマに関する「レイリー・テイラーの不安定性」の影響が問題とならず、ターゲット内部を効率的かつ均一に断熱かつ圧縮するという課題が避けられることとなる。
【0047】
以上のように本発明の第1実施形態によれば、ターゲット1の外周側からの第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光によって反応部3にはさらなるイオンが加えられ、さらに、反応部3では、第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光の照射によって電子が移動する一方でイオンが残されることとなる。その結果、反応部3に電場が形成されること等によって、イオンが加速されることとなり、核融合反応が、ターゲット1の入射端から出射端に向かって増幅するとともに連続して発生することとなる。また、このような核融合においては、従来のレーザ核融合とは異なり、ターゲット1内にてイオンを効率的に生成かつ均一な方向に加速させることが重要となる。ここで、反応部3にてイオンを加速させる電場等の方向は、反応部3の平面に対して垂直になる傾向がある。従って、ターゲット1の長手方向に間隔を空けた反応部3の平面を、イオンの加速方向に一致するターゲット1の長手方向に対して、垂直に配置することによって、反応部3にて電場等により加速されたイオンが、ターゲット1の入射端から出射端に向かって効率的に送られることとなる。
また、積層構造体7は、シンプルな構造であるので容易に作製でき、ひいては積層構造体7の形状精度を高めることができる。このような積層構造体7を用いてターゲット1は作製されるので、ターゲット1を容易に製造でき、ひいてはターゲット1の形状精度を高めることができる。このような形状精度の高いターゲット1によって、核融合反応を効率的に発生させることができる。
【0048】
本発明の第1実施形態によれば、積層構造体7の長手方向の両端部に、
補強材料により構成された補助保持部8を配置するので、保持部5と補助保持部8とによって、ターゲット1が確実に保護されることとなる。そのため、ターゲット1の作製時、保管時、及び運用時に、外部から加えられる力によってターゲット1が変形することを確実に防止できる。よって、さらに高い形状精度を有するターゲット1を容易に製造できる。
【0049】
本発明の第1実施形態によれば、保持部5は、ターゲット1を保持可能とするように、ターゲット1の横断面視で外側電極部4の外周の少なくとも3箇所に位置しているので、ターゲット1が保持部5によって安定して保持され、ターゲット1の変形を確実に防止でき、かつターゲット1を安定して保持した状態で加工できる。よって、ターゲット1をより高い精度で作製できる。
【0050】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るターゲットの製造方法について以下に説明する。第2実施形態のターゲットの製造方法は、基本的には、第1実施形態のターゲットの製造方法と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0051】
第2実施形態のターゲット21では、
図7に示すように、窓部22は、一対の外側電極部4の表側電極層4aの間に空間を設けるように形成されている。
【0052】
本発明の第2実施形態に係るターゲット21の製造方法について、
図3、
図5(a)、
図5(b)、
図6、
図7、及び
図8(a)〜
図8(l)を参照して説明する。
(ステップ2−1)
図3及び
図8(a)に示すように、第1実施形態と同様に積層構造体7を作製する。
(ステップ2−2)
図8(b)に示すように、積層構造体7の表側面7aに表側凹部23を形成する。この表側凹部23は、横断面視で、中心電極部2と積層構造体7の表側面7aとの間で延びる四角形状に形成されている。
(ステップ2−3)
図8(c)に示すように、積層構造体7の裏側面7bに裏側凹部24を形成する。この裏側凹部24は、横断面視で、中心電極部2と積層構造体7の裏側面7bとの間で延びる台形形状に形成されている。
(ステップ2−4)
図8(d)に示すように、表側凹部23内に反応物質を充填して、中心電極部2の表側面上に反応部3の表側層3aを形成する。
(ステップ2−5)
図8(e)に示すように、裏側凹部24内に反応物質を充填して、中心電極部2の裏側面上に反応部3の裏側層3bを形成する。
(ステップ2−6)
図8(f)に示すように、外側電極部4の中間層4cの一部を裏側凹部24内で露出させるように、反応部3の裏側層3bの表面を平坦に切削する。
(ステップ2−7)
図8(g)に示すように、積層構造体7の長手方向に間隔を空けるように、裏側凹部24内における反応部3の裏側層3bの表面に電解物質をパターン蒸着して、外側電極部4の裏側層4bを形成する。
(ステップ2−8)
図8(h)に示すように、裏側凹部24内に
補強材料を充填して、外側電極部4の裏側層4bの表面上に保持部5の裏側層5aを形成する。
(ステップ2−9)
図8(i)に示すように、積層構造体7の表側面7aに電解物質を蒸着して、外側電極部4の表側層4aを形成する。
(ステップ2−10)
図8(j)に示すように、外側電極部4の表側層4aの表面上にフォトレジスト25を塗布して、このフォトレジスト25のレジストパターンを感光する。このレジストパターンは、一対の外側電極部4の間に配置された開口形成領域25a(
図8(k)を参照)と、外側電極部4の裏側層4bに対応して表側層4aを互いに長手方向に分離するように形成した複数の電極分離領域(図示せず)とを有している。具体的には、開口形成領域25aは、
図8(k)に示すように、表側層4aの表面の幅方向中央で長手方向に延びるように形成されている。また、複数の電極分離領域は、表側層4aの表面で互いに長手方向に間隔を空けて配置され、かつそれぞれ表側層4aの表面の幅全体に延びるように形成されている。
(ステップ2−11)
図8(k)に示すように、レジストパターンを感光したフォトレジスト25を現像した後に洗浄して、フォトレジスト25の一部を除去する。
(ステップ2−12)
図8(l)に示すように、除去されたフォトレジスト25の一部に対応して、外側電極部4の表側層4aの一部をエッチング処理により除去して、窓部22を形成する。
(ステップ2−13)再び
図7に示すように、残されたフォトレジスト25を外側電極部4の表側層4aの表面から除去する。
(ステップ2−14)第1実施形態と同様に、
図5(a)に示すように、積層構造体7の補助保持部8を切断して取り除く。
(ステップ2−15)第1実施形態と同様に、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、積層構造体7の表側面7a側からレーザ加工用のレーザ光を照射して、この積層構造体7の一部を切削する。このレーザ加工による切削パターン12もまた、第1実施形態と同様になっている。
なお、上述の蒸着は、化学蒸着(CVD)及び物理蒸着(PVD)のいずれであってもよい。
【0053】
本発明の第2実施形態に係る製造方法により作製されたターゲット21を用いてレーザ核融合反応を発生させる方法は、第1実施形態と同様になっている。
【0054】
以上のように本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係るターゲットの製造方法を説明する。
まず、第3実施形態に係る製造方法により作製されるターゲットについて、
図9、
図10(a)、及び
図10(b)を参照して説明する。ターゲット31は、円形状又は等方的な多角形状の横断面を有する長尺形状に形成されている。なお、第3実施形態では、一例として、ターゲット31の横断面が四角形状に形成されているものとして説明する。このターゲット31の長手方向の一端(以下、「入射端」という)31aと、入射端31aに対向するターゲット31の長手方向の他端(以下、「出射端」という)31bとの間に位置する中間点31cを基準として、入射端31a側の領域(以下、「入射側領域」という)31dは、円柱形状に形成され、入射側領域31dの横断面面積は等しくなっている。このターゲット31の入射側領域31dには、ターゲット31の側方からの第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光が照射される。一例として、入射側領域31dの横断面は、照射される第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光の集光径に対応して形成されていると好ましく、第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光の集光径は10μm〜100μmであると好ましい。一方で、ターゲット31の中間点31cを基準として出射端31b側の領域(以下、「出射側領域」という)31eは、円錐形状に形成され、出射側領域31eの横断面面積は、ターゲット31の中間点31cから出射端31bに向かうに連れて増加している。
【0056】
図10(a)及び
図10(b)を参照すると、ターゲット31には、複数の平面状の反応部32が設けられている。反応部32の横断面は、円形状又は等方的な多角形状に形成されている。第3実施形態では、一例として、反応部32の横断面が円形状に形成されているものとして説明する。反応部32は、核融合燃料となる反応物質により構成されている。核融合がDT反応系である場合、反応部32の反応物質は重水素、三重水素、又は重水素若しくは三重水素を構成元素として含む炭化水素の分子若しくは高分子(例えば、CxDy、CxTy)等であるとよく、核融合がpB反応系である場合、反応部32の反応物質は固体のデカボラン(B
10H
14)であるとよい。このような反応部32は円板状に形成されている。複数の反応部32は、その平面を長手方向に対して垂直とし、かつ互いに長手方向に間隔を空けて配置されている。ターゲット31の入射側領域31dでは、各反応部32の平面の面積は、入射側領域31dの横断面に対応して互いに等しくなっている。一方で、ターゲット31の出射側領域31eでは、各反応部32の平面の面積は、出射側領域31eの横断面に対応してターゲット31の中間点31cから出射端31bに向かうに連れて増加している。このようにターゲット31内に設けられる複数の反応部32における反応物質の密度は、ターゲット31全体に反応物質を設けた場合の反応物質の密度に対して約10%となっているとよい。
【0057】
ターゲット31には、その横断面の中心を通って長手方向に延びるように円柱状に形成された中心電極部33が設けられている。中心電極部33の横断面は、円形状又は等方的な多角形状に形成されている。第3実施形態では、一例として、中心電極部33の横断面が円形状に形成されているものとして説明する。また、反応部32の外周には外側電極部34が設けられている。複数の外側電極部34は、ターゲット31の長手方向に互いに間隔を空けて配置されており、複数の外側電極部34は、互いに複数の反応部32同士を互いに絶縁するように構成されている。このような中心電極部33と外側電極部34との間の反応部32に電圧を印加することによって、反応部32に電界が生じる。この電界によって、正の電荷を有するシードイオンに対して反応部32の外周から中心に向かう力が作用することとなる。なお、中心電極部33及び/又は外側電極部34は、アルミニウム、ホウ素、及び/又はマグネシウムから構成されているとよい。各外側電極部34の外周には、ターゲット31を補強するように構成された保持部35が配置されている。
【0058】
外側電極部34の一部及び保持部35の一部を一緒に切り欠くことによって、窓部36が形成されている。この窓部36によって、反応部32の反応物質がターゲット31の外周で露出し、ターゲット31の側方からの第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光、及び反応部32を加工するためのレーザ光等が、ターゲット31の外周から反応部32の反応物質に照射可能となっている。
【0059】
本発明の第3実施形態に係るターゲット31の製造方法について、
図10(a)、
図10(b)、及び
図11(a)〜
図11(i)を参照して説明する。
(ステップ3−1)
図11(a)に示すように、反応部32を形成するための低密度フォームを円板形状に形成する。この低密度フォームは、反応物質により構成されている。
(ステップ3−2)
図11(b)に示すように、円板形状に形成した低密度フォームを厚さ方向に圧縮して、反応部32を形成する。
(ステップ3−3)
図11(c)に示すように、反応部32の外周に保持部35を取付ける。この保持部35の外周は、
図11(d)に示すように略四角形状に形成されている。
(ステップ3−4)
図11(d)に示すように、保持部35を取付けた反応部32の中心に、ドライエッチングによって略円形状の貫通孔32aを形成する。保持部35には、ドライエッチングによって、反応部32の外周に沿って略C字形状の貫通孔35aを形成する。貫通孔35aは、保持部35の一つの側縁(以下、「上側縁」という)35bに向かって開口している。さらに、上側縁35bに対向する一つの側縁(以下、「下側縁」という)35cとの間で延在する下側縁溝35dが、ドライエッチングにより形成されている。ドライエッチングの一例として、イオンミリングが用いられると好ましいが、その他の手法が用いられてもよい。
(ステップ3−5)
図11(e)及び
図11(f)に示すように、反応部32の貫通孔32aに電解物質を充填することによって、中心電極部33を形成する。このとき、中心電極部33は、反応部32の片側面から次の(ステップ3−6)で用いられるフォームシートの厚み分程度の高さで面垂方向に突出するように形成される。貫通孔32aからその直径方向にはみ出た中心電極33の部分は、ドライエッチングやイオンミリング工程で削り、貫通孔32aの直径と一致させる。また、保持部35の貫通孔35a及び下側縁溝35dに電解物質を充填することによって、外側電極部34を形成する。これによって、反応部32、中心電極部33、外側電極部34、及び保持部35の組立体37が作製される。
(ステップ3−6)
図11(g)に示すように、複数の組立体37を、その平面同士を向き合わせた状態で間隔を空けて配置し、この組立体37同士の間の間隔に、除去部38を構成する低密度フォームシートを配置する。なお、特に図示はしないが、除去部38には、中心電極部33を通すための貫通孔が形成されている。このように複数の組立体37と複数の除去部38とを交互に配置した状態で、隣接する組立体37の中心電極部33同士を互いに接触させるように、複数の組立体37と除去部38とを圧着して、
図11(h)に示すような積層組立体39を作製する。
(ステップ3−7)
図11(i)に示すように、反応部32と中心電極部33との間の境界よりも保持部35の上側縁35b側で反応部32を通るとともに積層組立体39の長手方向に延びる平面に沿って、反応部32、外側電極部34、及び保持部35を一緒に切断する。この切断面に、反応部32をターゲット31の外部に露出させるための窓部36が形成されることとなる。
(ステップ3−8)積層組立体39の側面からレーザ加工用のレーザ光を照射して、積層組立体39を切削して、積層組立体39の形状及び寸法を調節する。特に、ターゲット31内に設けられる複数の反応部32における反応物質の密度を調節する。
このような製造方法によって、ターゲット31が作製されることとなる。
【0060】
本発明の第3実施形態に係る製造方法により作製されたターゲット31にてレーザ核融合反応を発生させる方法、ターゲット31内で発生する核融合の作用については、第1実施形態と同様である。
【0061】
以上のように本発明の第3実施形態によれば、各反応部32にて比較的作製し難い中心電極部33、外側電極部34、及び保持部35を予め形成して、その後、このような反応部32、中心電極部33、外側電極部34、及び保持部35の組立体37を、互いに長手方向に間隔を空けて配置している。そのため、反応部32内で中心電極部33及び外側電極部34を予め高い精度で形成でき、ターゲット31を高い精度で作製できる。
さらに、反応部32間に配置された除去部38を除去することによって、互いに間隔を空けて配置された複数の反応部32を容易に形成できる。従って、ターゲット31を容易に作製できる。
【0062】
本発明の第3実施形態によれば、除去部38が反応部32と同じ反応物質により構成されるので、例えば、反応部32の体積を調節するために、反応部32の一部をレーザ加工により除去する際に、反応部32の一部と一緒に除去部38を除去することによって、ターゲット31をさらに効率的に作製できる。
【0063】
本発明の第3実施形態によれば、中心電極部33が、反応部32の中心に形成された貫通孔32aに電極物質を充填することによって形成され、外側電極部34が、反応部32の貫通孔35a及び下側縁溝35dに電極物質を充填することによって形成される。そのため、中心電極部33と外側電極部34とを容易に形成できる。よって、ターゲット31をさらに容易に作製できる。
【0064】
本発明の第3実施形態によれば、中心電極部33が、反応部32の片面側から除去部38の横断面中心に突出するように形成されるので、反応部32及び除去部38に対応する中心電極部33が一緒に形成され、中心電極部33を効率的に形成できる。よって、ターゲット31をさらに容易に作製できる。
【0065】
本発明の第3実施形態によれば、反応部32と中心電極部33との間の境界よりも外周側で反応部32を通るとともに長手方向に延びる平面に沿って、反応部32、外側電極部34、及び保持部35を切断することによって、反応部32をターゲット31外部に露出させるための窓部36が形成されるので、ターゲット31の側方からの第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光、レーザ加工用のレーザ光等を反応部32に照射するための窓部36が、容易に形成されることとなる。
【0066】
本発明の第3実施形態によれば、保持部35は、ターゲット31を保持可能とするように、ターゲット31の横断面視で外側電極部34の外周の少なくとも3箇所に位置しているので、ターゲット31が保持部35によって安定して保持され、ターゲット31の変形を確実に防止でき、かつターゲット31を安定して保持した状態で加工できる。よって、ターゲット31をより高い精度で作製できる。
【0067】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係るターゲットの製造方法について以下に説明する。第4実施形態のターゲットの製造方法は、基本的には、第3実施形態のターゲットの製造方法と同様になっている。第3実施形態と同様な要素は、第3実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第3実施形態と異なる構成について説明する。
【0068】
本発明の第4実施形態に係るターゲットの製造方法では、第3実施形態と同様のターゲット31を作製する。本発明の第4実施形態に係るターゲット31の製造方法について、
図11(a)〜
図11(d)、及び
図12(a)〜
図12(d)を参照して説明する。
(ステップ4−1)第3実施形態と同様に、
図11(a)に示すように、反応部32を形成するための低密度フォームを円板形状に形成する。この低密度フォームは反応物質により構成されている。しかしながら、第4実施形態の低密度フォームの厚さは、第3実施形態の低密度フォームシートの厚さよりも厚くなっている。詳細には、第4実施形態の低密度フォームシートの厚さは、第4実施形態において反応部32に用いられる低密度フォームシートの厚さと、除去部38に用いられる低密度フォームシートの厚さとを合わせた厚さに相当すると好ましい。
(ステップ4−2)第3実施形態と同様に、
図11(b)に示すように、円板形状に形成した低密度フォームを厚さ方向に圧縮して、反応部32を形成する。
(ステップ4−3)第3実施形態と同様に、
図11(c)に示すように、反応部32の外周に保持部35を取付ける。この保持部35の外周は、
図11(d)に示すように略四角形状に形成されている。なお、第4実施形態の保持部35の厚さは、反応部32の厚さと等しくなっている。
(ステップ4−4)
図12(a)及び
図12(b)に示すように、保持部35を取付けた反応部32の中心に、ドライエッチングによって略円形状の貫通孔32bを形成する。保持部35には、ドライエッチングによって、反応部32の外周に沿って略C字形状の外周溝35eを形成する。外周溝35eは、保持部35の上側縁35bに向かって開口している。さらに、下側縁35cと外周溝35eとの間で延在する下側縁溝35fが、ドライエッチングにより形成されている。ドライエッチングの一例として、イオンミリングが用いられると好ましいが、その他の手法が用いられてもよい。なお、外周溝35e及び下側縁溝35fは、保持部35の厚さ方向に貫通していない。
(ステップ4−5)
図12(a)及び
図12(b)に示すように、反応部32の貫通孔32bに電解物質を充填することによって、中心電極部33を形成する。また、保持部35の外周溝35e及び下側縁溝35fに電解物質を充填することによって、外側電極部34を形成する。これによって、反応部32、中心電極部33、外側電極部34、及び保持部35の組立体40が作製される。
(ステップ4−6)
図12(c)に示すように、複数の組立体40を、その平面同士を重ね合わせた状態で配置する。このように複数の組立体40を重ね合わせた状態で、隣接する組立体40の中心電極部33同士を互いに接触させるように、複数の組立体40同士を圧着して、積層組立体41を作製する。
(ステップ4−7)
図12(d)に示すように、反応部32と中心電極部33との間の境界よりも保持部35の上側縁35b側で反応部32を通るとともに積層組立体41の長手方向に延びる平面に沿って、反応部32、外側電極部34、及び保持部35を一緒に切断する。この切断面に、反応部32をターゲット31の外部に露出させるための窓部36が形成されることとなる。
(ステップ4−8)積層組立体41の側面からレーザ加工用のレーザ光を照射して、積層組立体41を切削して、積層組立体41の形状及び寸法を調節する。特に、複数の反応部32における反応物質の体積を調節する。
このような製造方法によって、ターゲット31が作製されることとなる。
【0069】
本発明の第4実施形態のターゲット31にてレーザ核融合反応を発生させる方法、ターゲット31内で発生する核融合の作用については、第3実施形態と同様である。
【0070】
以上のように本発明の第4実施形態によれば、各反応部32にて比較的作製し難い中心電極部33、外側電極部34、及び保持部35を予め形成して、その後、このような反応部32、中心電極部33、外側電極部34、及び保持部35の組立体40を積層することとなる。従って、反応部32内で中心電極部33及び外側電極部34を予め高い精度で、かつ容易に形成でき、ターゲット31を高い精度で、かつ容易に作製できる。
【0071】
本発明の第4実施形態によれば、中心電極部33が、反応部32の中心に形成された貫通孔32bに電極物質を充填することによって形成され、外側電極部34が、保持部35の外周溝35e及び下側縁溝35fに電解物質を充填することによって形成される。そのため、中心電極部33を容易に形成でき、各外側電極部34を互いに絶縁した状態で容易に形成できる。よって、ターゲット31をさらに容易に作製できる。
【0072】
本発明の第4実施形態によれば、第3実施形態と同様に、第1のパルスレーザ光、第2のパルスレーザ光、レーザ加工用のレーザ光等を反応部32に照射するための窓部36を、容易に形成できる。
【0073】
本発明の第4実施形態によれば、第3実施形態と同様に、保持部35が、ターゲット31を保持可能とするように、ターゲット31の横断面視で外側電極部34の外周の少なくとも3箇所に位置しているので、ターゲット31をより高い精度で作製できる。
【0074】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0075】
例えば、本発明の実施形態の第1変形例として、第3実施形態において、保持部35の貫通孔35aの代わりに、保持部35の厚さ方向に貫通しない溝が設けられてもよい。また、保持部35の下側縁溝35dが、保持部35の厚さ方向に貫通していてもよい。第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
本発明の実施形態の第2変形例として、第3実施形態において、除去部38の中心に形成された貫通孔に電解物質を充填することによって、除去部38に対応する中心電極部33が形成されてもよい。第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
本発明の実施形態の第3変形例として、第3実施形態及び第4実施形態において、外側電極部34及び保持部35を一緒に切り欠くことによって、反応部32をターゲット31外部に露出させるための窓部が形成されてもよい。第3実施形態及び第4実施形態と同様の効果が得られる。