特許第5791012号(P5791012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5791012-インクジェットプリンター 図000002
  • 特許5791012-インクジェットプリンター 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791012
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   B41J2/01 125
   B41J2/01 303
   B41J2/01 301
   B41J2/01 451
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-44295(P2011-44295)
(22)【出願日】2011年3月1日
(65)【公開番号】特開2012-179802(P2012-179802A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】395003187
【氏名又は名称】株式会社セイコーアイ・インフォテック
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】堂前 美徳
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−4511(JP,A)
【文献】 特開平6−270412(JP,A)
【文献】 特開2006−192704(JP,A)
【文献】 特開2002−254681(JP,A)
【文献】 特開2002−248746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱によって定着するインクと、記録メディアに前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載して前記記録メディアの搬送方向に対して交差する方向に往復走査するキャリッジと、前記キャリッジの下面側に対向して配置され前記記録メディアを保持するプラテンと、前記キャリッジの上方に配置され、前記記録メディアに着弾した前記インクを加熱するヒーターと、を備え、前記ヒーターを筐体内に配置し、前記記録メディアに着弾した直後の前記インクを加熱し前記インクを前記記録メディアに定着させるインクジェットプリンターにおいて、
前記筐体の背面に配置され、外部の気体を前記筐体内に吸気する吸気用の外装開口部と、
前記外装開口部に設けられ、前記筐体の内側に空気を送り込む機内吸気ファンと、
前記キャリッジの前記外装開口部に対向する位置に設けられた背面開口部と、
前記キャリッジの前記記録メディアの搬送方向の下流側に向けられ配置された前記キャリッジ内からの排気用の排気開口部と、
前記筐体内に吸気用のダクト吸気開口部を有し、前記ヒーターの前記記録メディアとは反対側を通り、前記筐体の記録メディア排出側に前記筐体の外部に向けて排気するダクト排気開口部を備える排気ダクトと、
前記ダクト排気開口部に設けれ、前記排気ダクト内から気体を外部に排出するダクト排気ファンと、
を有することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記背面開口部に前記キャリッジの内部に気体を送風するキャリッジ吸気ファンを有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター
【請求項3】
前記キャリッジは前記キャリッジ内の温度を測定するキャリッジ温度センサーを有し、前記インクジェットヘッドはインク流路の温度を測定するヘッド温度センサーを有し、前記キャリッジ温度センサーと前記ヘッド温度センサーの温度に基づいて前記キャリッジ吸気ファンの動作制御を行うことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンター。
【請求項4】
前記排気ダクトの前記ヒーターと対向する面は、前記ヒーターから照射される赤外線を反射する反射層を有し、前記ヒーターのリフレクターとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙、樹脂フィルムなどの記録媒体にインクを吐出して画像等を記録するインクジェットプリンターが知られている。インクジェットプリンターでは、様々な種類のインクが使用される。例えば、主溶剤に有機溶剤を用いた溶剤インク、紫外線硬化型インク、熱硬化型インクなど、用途に応じていろいろな種類のインクが用いられている。例えば、特開2006−264328号公報には、熱によって定着を促進させる熱硬化型インクを用いたインクジェットプリンターが開示されている。この装置は、ヒーターをキャリッジの上方に、キャリッジの走査方向に沿って配置した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−264328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、効率的にインクを乾燥させるために、インクがインクジェットヘッドから吐出された直後に熱をインク及び記録媒体に加える方式である。この場合、ヒーターはインクジェットヘッドの真上に配置されることになる。このような構成では、インクジェットヘッドを有するキャリッジはヒーターの直下で熱せられることになり、インクジェットヘッドの温度を上昇させ、吐出不良を招く。そのため従来の技術では、ヒーターに平行に冷却ファンを配置し、キャリッジに風を当てて冷却する構成が示されている。また、キャリッジに風防を設けて風を受けやすくしている。キャリッジの走査方向の両端の冷却ファンを内から外に空気が流れるようにし、中央側から両端側に向かって風が流れるようにしている。また、キャリッジを冷却水で冷却するシステム、キャリッジ上部に光を反射する耐熱板を配置した構成などの、キャリッジの温度を上げないようにする技術が開示されている。
【0005】
しかし、冷却水や耐熱板などを用いた場合に余分なスペースが必要となり、またコストがかかってしまう問題がある。
【0006】
また、キャリッジ上方に記録媒体方向に向けてファンが取り付けられているので、印刷直前、直後の記録媒体に対しても風を送り、冷却してしまう問題もある。積極的にキャリッジ方向に外気を導入すると、記録媒体の温度が下がり、記録媒体に着弾したインクが定着不良を起こすことや、インクジェットヘッドのノズル面に風が回りこむことで吐出不良を起こすことなどの問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題に対して、本願発明のインクジェットプリンターは、熱によって定着するインクと、記録メディアに前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載して前記記録メディアの搬送方向に対して交差する方向に往復走査するキャリッジと、前記キャリッジの下面側に対向して配置され前記記録メディアを保持するプラテンと、前記キャリッジの上方に配置され、前記記録メディアに着弾した前記インクを加熱するヒーターと、を備え、前記ヒーターを筐体内に配置し、前記記録メディアに着弾した直後の前記インクを加熱し前記インクを前記記録メディアに定着させるインクジェットプリンターにおいて、前記筐体の背面に配置され、外部の気体を前記筐体内に吸気する吸気用の外装開口部と、前記外装開口部に設けられ、前記筐体の内側に空気を送り込む機内吸気ファンと、前記キャリッジの前記外装開口部に対向する位置に設けられた背面開口部と、前記キャリッジの前記記録メディアの搬送方向の下流側に向けられ配置された前記キャリッジ内からの排気用の排気開口部と、前記筐体内に吸気用のダクト吸気開口部を有し、前記ヒーターの前記記録メディアとは反対側を通り、前記筐体の記録メディア排出側に前記筐体の外部に向けて排気するダクト排気開口部を備える排気ダクトと、前記ダクト排気開口部に設けれ、前記排気ダクト内から気体を外部に排出するダクト排気ファンと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
装置が取り込んだ外気がそのままキャリッジ内に入ってキャリッジ内温度の上昇を防ぐ。キャリッジが取り込まなかった外気は装置上部に伸びた排気ダクトが吸気して外部に吐き出すことで、記録メディア上には外気温度の風がまわることなく、着弾直後のインクの温度低下を防ぐ。同時に、ヘッドのノズル面への風の回りこみが極めて少ないため、インク着弾精度の低下、インクミストの増加、ノズル乾燥、等のヘッドの諸問題を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態のインクジェットプリンター内の第1の気体の流れを示す側面方向からの概略断面図である
図2図2は、本発明の実施形態のインクジェットプリンター内の第2の気体の流れを示す側面方向からの概略断面図である
図3図3は、本発明の実施形態のインクジェットヘッドの温度制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。
図1は、インクジェットプリンターの側面方向からの概略断面図である。矢印は気体の流れ方向を示す。装置外装1の背面には吸気用の開口部2が有り、機内吸気ファン3が搭載されている。インクジェットプリンターの筐体を構成する装置外装1背面にはキャリッジ4の背面が近接しており、キャリッジ4の背面の吸気用の開口部5には、キャリッジ吸気ファン6が搭載されている。機内吸気ファン3は、キャリッジ4の移動方向の全域に、キャリッジ吸気ファン6と対向する位置に配置されている。間に障害物が無いように配置することで、機内吸気ファン3が外気を装置内に吸気した直後にキャリッジ吸気ファン6がその空気をキャリッジ4内に吸気できる。キャリッジ4はYレール7に取り付けられ、走査方向に可動する。Yレール7はキャリッジ4の移動方向を案内するレールである。キャリッジ4の内部には、インクジェットヘッド8が搭載されており、インクを吐出するノズル面がキャリッジ4の下面からのぞくように位置している。インクジェットヘッド8は、インク流路の温度を調べるインク温度センサー9を搭載し、さらにインク流路のインクを加熱するインク加熱ヒーターが内蔵されている。
【0011】
キャリッジ4の下面側の筐体には平板のプラテン11が備わっている。記録紙、樹脂フィルムなのどの記録メディア10はプラテン11上に案内されるように不図示の搬送装置によって搬送される。プラテン11上に保持された記録メディア10上に、インクジェットヘッド8からインクが吐出され、画像が形成される。プラテン11は吸引孔が備わり、記録メディア10を保持する構成でもよい。
【0012】
キャリッジ4の真上、すなわち上面側の筐体にはヒーター12が取り付けられており、インクジェットヘッド8から吐出されたインクをすぐに加熱する。ヒーター12にはシーズヒーターやカーボンヒーター等を用いる。ヒーター12から記録メディア10までの距離を考えると、熱伝導によってインクを加熱するより、赤外線照射によって好ましい。よって、ヒーター12は赤外線を多く照射するヒーターが好ましい。例えばセラミックヒーター、カーボンヒーター、赤外線を発光しやすいように表面処理をしたシーズヒーターなどが好ましい。
【0013】
ヒーター12の電源をONにしてから所望の温度に到達するまで時間がかかるため、インクを吐出するよりも前に電源を入れておく必要がある。つまり、装置を使用しているときは、ヒーター12の電源はONである場合が多く、ヒーター12の回りは加熱される。キャリッジ4の正面である記録メディア10の排出側には開口部13が有り、キャリッジ排気ファン14によりキャリッジ内部の空気を排気している。これによってキャリッジ吸気ファン6で取り込まれた空気はキャリッジ4の内部のインクジェットヘッド8の周囲を通過して、キャリッジ排気ファン14でキャリッジ4正面に排気され、インクジェットヘッド8の周りを外気に近い温度にもできる。キャリッジ4は背部の開口部5と正面の開口部13のある箱状の構成なので、内部では気体は背部の開口部5から正面の開口部13へ流れるようになっている。
【0014】
また更により単純にした改良例として、キャリッジ排気ファン14を無くした場合でも、キャリッジ吸気ファン6によりキャリッジ4内の気体圧力は加圧されるため、キャリッジ4正面の開口部13から排気されるが、キャリッジ排気ファン14を使用するのに比べ、気流のスピードが鈍り、排気量が少ない。
【0015】
キャリッジ4内にはインクジェットヘッド8の近傍にキャリッジ温度センサー15を配置してキャリッジ4内の温度がインクジェットヘッド8に適正な温度か確認する。装置内にもキャリッジ4の近傍に機内温度センサー16を配置し、機内温度が適正か確認する。装置正面側には排気ダクト17があり、装置背面の機内吸気ファン3から吸気された気体を吸気し外部に排出するダクト排気ファン18が取り付けられている。そのため、キャリッジ4がない場所では、筐体内に吸気された気体は主に排気ダクト17に吸い込まれることになり、インクジェットヘッド8側に流れる気体を少なくでき、気流による吐出方向の乱れの防止にもなり、また、記録メディア10の温度低下も防止できる。排気ダクト17の一部はヒーター12の上部を覆うように位置してヒーター12から照射される赤外線の反射板の役割にもなり、より効率的にインクを加熱することができる。排気ダクト17は金属製として光沢を持たせることや、表面に光沢あるいは白色の層を形成することで、表面の反射率を高くするのが好ましい。ダクト排気ファン18による排気の排出方向は、記録メディア10の搬送方向でも良いし、インク乾燥を促進したい場合には、記録メディア10方向でも良い。記録メディア10の搬送方向に排気した場合、排気された気体が呼び水となって、キャリッジ排気ファン14で排気された気体が積極的に機外へと排出される。外側に向けて送風するため、ダクト排気ファン18の排気気体の送風方向を記録メディア10の表面に対して、0度以上90度未満の範囲で記録メディア排出方向に傾けて配置することが好ましい。これらの構成をとることで、インクジェットヘッド8の温度管理が容易になり、同時にノズル面周辺で大きな気流の乱れを起こすことなく機内吸気と排気を可能にし、インクミストの増加やノズル乾燥等の問題を防ぎ印刷安定性を高めることができる。
【0016】
インクジェットプリンターの背面から前面方向に気体が流れ、インクジェットヘッド8の吐出面への気体の流れを防止している。
【0017】
図2は、インクジェットプリンターの側面方向からの概略断面図の他の例である。矢印は気体の流れ方向を示す。この構成では、図1と異なり、ヒーター12の近傍で、排紙側の位置に排気ダクト開口部19を配置し、ヒーター周囲の気体を排気ダクト17が吸気する構成となる。その気体の流れによる対流によってヒーター12が冷却され、ヒーター12の劣化を防ぐことができる。ヒーター12上部には別途リフレクター20を配置することでヒーター12の赤外線照射効率を向上させる。リフレクター20は平板でも良いが、楕円形状か放物線形状は効率よく集光できる。ヒーター12周囲の加熱された空気を印刷後の記録メディア10に排出することで、インクの定着をさらに促進することができる。
【0018】
図3は、インクジェットヘッド8の温度制御フローチャートである。これを用いてファンの動作例を説明する。装置の初期状態は、キャリッジ4上部のヒーター12はON、機内吸気ファン3とダクト排気ファン18が駆動されており、キャリッジ4に近い位置に配置された機内温度センサー16の検出値に基づいて機内温度の適正温度に保つように、両ファンの回転数を制御し吸排気バランスを保っている。この状態でインクジェットヘッド8の温度制御を開始する(ステップS1)。次に、キャリッジ内温度センサー15でキャリッジ内温度がインク吐出適正温度範囲以下であるか確認する(ステップS2)。ここでNO、つまり、キャリッジ内温度がインク吐出適正温度範囲より高い場合、キャリッジ吸気ファン6を駆動する(ステップS3)。キャリッジ吸気ファン6は段階的に吸気能力を高めるように制御するのが好ましい。キャリッジ4内により多く吸気させるため、キャリッジ吸気ファン6の段階的に吸気能力を高める制御に連動して機内吸気ファン3の吸気能力を高める制御、およびダクト排気ファン18の吸気能力を高める制御するのがこのましい。キャリッジ4は図1図2に示すように正面に開口部13があり、ここからキャリッジ内の気体が排気される。ここにキャリッジ排気ファン14を搭載し、キャリッジ吸気ファン6と同期して動作することにより強制排気することもできる。ステップS2に戻り、キャリッジ内温度がインク吐出適正温度範囲以下まで下がっているか確認する。機内吸気ファン3が取り込んだ外気がキャリッジ吸気ファン6によってキャリッジ4内に直接吸気されるため、キャリッジ内温度は外気温度に近いところまで下げることが可能である。次にインクジェットヘッド8に内蔵するインク温度センサー9でインクがインクの吐出適正温度範囲に対して高いか、低いか、適正温度範囲内か、を確認する(ステップS4)。ステップS4で高いと判断した場合、ステップS4が適正温度範囲内になるまでステップS3とステップS4を繰り返す。ステップS4で低いと判断した場合、インクジェットヘッド8に内蔵されたインク加熱ヒーターでインクを加熱する(ステップS5)。インク温度センサー9が読み取る温度が適正範囲になるまでステップS4とステップS5を繰返す。ステップS4が適正温度範囲内である場合、インクジェットヘッド8からインク吐出が可能となる(ステップS6)。この一連の制御を繰り返すことで、安定した印刷を行うことができる。
【符号の説明】
【0019】
1 装置外装
2 装置外装背面の吸気用の開口部
3 機内吸気ファン
4 キャリッジ
5 キャリッジ背面の吸気用の開口部
6 キャリッジ吸気ファン
7 Yレール
8 インクジェットヘッド
9 インク温度センサー
10 記録メディア
11 プラテン
12 ヒーター
13 キャリッジ正面の排気用の開口部
14 キャリッジ排気ファン
15 キャリッジ温度センサー
16 機内温度センサー
17 排気ダクト
18 ダクト排気ファン
19 排気ダクト開口部
20 リフレクター
図1
図2
図3