【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 発行者一般社団法人情報処理学会、社団法人電子情報通信学会、情報・システムソサイエティ(ISS)及び、ヒューマンコミュニケーショングループ(HCG)による「第10回情報科学技術フォーラム 講演論文集」に2011年8月22日付け発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者や子供の孤食が問題となってきている。
例えば、両親が共働き等しているため、あるいは子供の生活パターンが不規則なために、両親が不在の時または両親の就眠中に誰もいない食卓に座ってただ1人で食事を摂る子供の割合が増えている。この場合、両親が子供を放任すると、子供の食事が不規則になり、また偏食が生じて、子供の健康に支障をきたすおそれがある。
【0003】
また、一人暮らしの老人の場合には、食事を作る手間や、独りぼっちで食事をするつまらなさから、食事が不規則になったり、十分な量の食事を摂らない生活パターンに陥りがちである。そして、高齢者の場合には、とりわけ、食事が十分に摂られないと栄養状態が急速に悪化し、体力および病気に対する抵抗力も低下して、重大な健康上の問題を引き起こすおそれがある。
【0004】
そこで、この孤食の問題を解決する端緒として、食習慣をきちんと確立させるべく、食事がいつ摂られたのか、どの程度の時間をかけて摂られたのか等を検出する方法がこれまでに提案されている。
【0005】
例えば、ステレオカメラで食卓上の弁当等を撮影し、得られた動画を画像処理して、どのおかずをどの程度摂食したのかを検出する方法(例えば、非特許文献1参照)や、カメラによって摂食時の口の動きを撮影し、得られた動画を画像処理して、咀嚼機能を検出する方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0006】
しかし、これらの方法では、被検者が食事中にカメラによって撮影されるので、被検者のプライバシーが侵害されるという問題がある。また、被検者がカメラ撮影を意識しすぎて日常生活に支障をきたすおそれもある。
さらには、照明が十分でなく、しかも一日を通じて照明条件が大きく変化する室内では、鮮明な画像が得られない場合もあり、常に正確な検出が保証されるわけではない。また、カメラの設置場所が固定されるので、食卓の位置や、被検者の座る位置が変わってしまうと、検出が行えなくなるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、被検者のプライバシーを侵害することなく、かつ被検者の日常生活に支障をきたすことなく、摂食動作を手軽にかつ正確に検出できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、
第1発明は、絶縁体から形成された一対の箸であって、前記一対の箸のうちの一方の箸の先端部に設けられた第1の電極と、前記一対の箸のうちの他方の箸の先端部に設けられた第2の電極と、前記一方の箸に内蔵され、前記第1の電極を通じて高周波電気信号を送信する高周波信号送信部と、前記他方の箸に内蔵され、前記第2の電極を通じて前記高周波電気信号を受信する高周波信号受信部と、前記他方の箸に内蔵され、前記高周波信号受信部が受信する前記高周波電気信号の強度が、予め決定された基準値以上であるとき、前記箸の使用者による摂食動作が生じたものと判定して、摂食動作検出信号を出力する摂食動作検出部と、を備え、前記基準値は、食べ物が前記第1の電極および前記第2の電極間に挟まれた場合に前記高周波信号受信部が受信する前記高周波電気信号の強度に基づいて予め決定されるものであることを特徴とする一対の箸を構成したものである。
【0013】
上記課題を解決するため、また、
第2発明は、絶縁体から形成された一対の箸であって、前記一対の箸のうちの一方の箸の先端部に設けられた第1の電極と、前記一方の箸の後端部に設けられた第2の電極と、前記一方の箸に内蔵され、前記第1の電極および前記第2の電極間の電気抵抗を測定する抵抗測定部と、前記抵抗測定部の測定値が予め決定された基準値以下であるとき、前記使用者の摂食動作が生じたものと判定して、摂食動作検出信号を出力する摂食動作検出部と、前記一対の箸のうちの他方の箸の先端部に設けられた第3の電極と、前記他方の箸の後端部に設けられ、前記第3の電極に電気的に接続された第4の電極と、を備え、前記基準値は、前記箸の使用者が前記一対の箸によって食べ物を掴み、前記一方の箸と、前記使用者の手指と、前記他方の箸と、前記食べ物とによって電気的閉回路が形成された場合に、前記抵抗測定部によって測定される電気抵抗値に基づいて予め決定されるものであることを特徴とする一対の箸を構成したものである。
【0014】
第1および
第2発明の構成において、前記摂食動作検出部は、前記摂食動作検出信号を外部に送信する送信部を有していることが好ましく、また、前記摂食動作検出部は、前記摂食動作検出信号を発生したことを、その時刻とともに記録するメモリを有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
第1発明では、一対の箸のそれぞれの先端部に電極が設けられ、一対の箸のうちの一方の箸の電極から送信された高周波電気信号が、一対の箸のうちの他方の箸の電極で受信される。他方の箸には、さらに、受信された信号の強度に基づいて摂食動作検出信号を出力する摂食動作検出部が組み込まれる。
この場合、一対の箸によって何も掴まれず、一対の電極が互いに間隔をあけて配置されている場合は、他方の箸で受信される信号の強度は比較的小さい。しかし、一対の箸によって食べ物が掴まれ、一対の電極間に食べ物が挟まれた場合には、食べ物が導電性を有するので、他方の箸で受信される信号の強度は、一対の箸によって何も掴まれていない場合よりも大きくなる。そして、使用者は、一対の箸によって食べ物を掴むと、それに続いて食べ物を口に運ぶのが通例であると考えられる。
【0018】
こうして、食べ物が一対の電極間に挟まれた場合に他方の箸で受信される信号の強度に基づいて基準値が予め決定され、受信信号強度が基準値以下となったときに、摂食動作検出部から摂食動作検出信号が出力される。
【0019】
第2発明では、一対の箸のそれぞれの両端に電極が設けられ、一対の箸のうちの一方の箸には、両端の一対の電極間の電気抵抗を測定する抵抗測定部と、抵抗測定部の測定値に基づいて摂食動作検出信号を出力する摂食動作検出部とが組み込まれ、一対の箸のうちの他方の箸の両端の一対の電極は電気的に接続される。
この場合、一対の箸が使用されないとき、あるいは一対の箸の後端部が使用者の手指で把持されただけで、一対の箸で何も掴まれず、一対の箸の先端部の電極が互いに間隔をあけて配置されているときは、これらの電極間に電流が流れず、抵抗測定部による測定値はほぼ無限大である。ところが、使用者が一対の箸を用いて食べ物を掴み、一対の箸の先端部の電極間に食べ物が挟まれた場合には、一方の箸、使用者の手指、他方の箸および食べ物によって電気的閉回路が形成され、同時に、この閉回路中を電流が流れて、抵抗測定部によって閉回路の電気抵抗値が測定される。そして、使用者は、一対の箸によって食べ物を掴むと、それに続いて食べ物を口に運ぶのが通例であると考えられる。
【0020】
こうして、この電気的閉回路の電気抵抗値に基づいて基準値が予め決定され、抵抗測定部の測定値が基準値以下となったとき、摂食動作検出部から摂食動作検出信号が出力される。
【0021】
本発明によれば、
一対の箸を用いるだけで摂食動作を手軽にかつ確実に検出することができる。また、摂食行動のモニタリングに際し、被検者(摂食用具の使用者)は、カメラで撮影されるという不安を抱くことなく、普段通りに食事をすることができ、よって、被検者は、プライバシーを侵害されることも、日常生活に支障をきたすこともない。さらには、食卓の位置や被検者の座る位置を、毎回、固定する必要もない。
また、日本人の食生活においては、通常、一対の箸と、当該一対の箸の使用者との対応関係は固定されて
いるので、本発明のように一対の箸とした場合には、摂食行動をモニタリングする際に、被検者(箸の使用者)をその都度特定する必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例による
一対の箸の一方の構成を示す概略的な平面図である。
図1を参照して、本発明による
一対の箸の一方1は、摂食時に、一端部1aが使用者の手指で把持されるとともに、他端部1bが当該使用者の口に入れられるように
なっている。
【0024】
一対の箸の一方1の一端部1aに第1の電極2が設けられ、他端部1bには、第2の電極3が、第1の電極2から電気的に絶縁された状態で設けられる。
また、
一対の箸の一方1には、第1の電極2および第2の電極3間の電気抵抗を測定する抵抗測定部4が内蔵される。
【0025】
一対の箸の一方1には、さらに、抵抗測定部4の測定値が予め決定された基準値以下であるとき、使用者の摂食動作が生じたものと判定して、摂食動作検出信号を出力する摂食動作検出部5が内蔵される。
【0026】
基準値は、次のようにして決定される。すなわち、
一対の箸の一方1が使用されないとき、あるいは
一対の箸の一方1の一端部1aが使用者の手指で把持されただけのときは、第1および第2の電極2、3間の電気抵抗値はほぼ無限大であって、第1および第2の電極2、3間には電流は流れない。
ところが、
図2に示すように、使用者が、手指で
一対の箸の一方1の一端部1aを把持するとともに、他端部1bを口に含むと、摂食用具1と使用者の身体(口、頭、胴、腕および手)とによって電気的閉回路が形成され、同時に、この閉回路中を電流が流れて、抵抗測定部4によって閉回路の電気抵抗が測定される。
【0027】
そして、このような電気的閉回路は、使用者が、本発明の
箸を用いて食べ物を口に入れた場合に形成されるものと考えられる。
こうして、予め、実験によってこの電気的閉回路の電気抵抗の平均値が求められ、得られた平均値が基準値とされる。なお、電気抵抗の値は、人によって多少のバラツキがあるものの、ほぼ一定の値となることがこの実験で確認された。
【0028】
図3は、
一対の箸の一方1の回路構成の1例を示す図である。
図3において、抵抗測定部4は、第1および第2の電極2、3間に直列接続された電池6および電流計7から構成される。また、摂食動作検出部5は、電流計7によって測定された電流値を電圧値に変換する電流‐電圧変換回路5aと、電流‐電圧変換回路5aの出力値と基準電圧を比較して比較結果を出力するシュミット回路(比較回路)5bとから構成される。なお、
図3中、Rは、
一対の箸の一方1と使用者の身体(口、頭、胴、腕および手)とによって形成される電気的閉回路の電気抵抗を示している。
この回路構成では、抵抗値の代わりに電流値が測定され、シュミット回路(比較回路)5bは、電流‐電圧変換回路5aの出力値が基準電圧以上となった場合に、摂食動作検出信号(highの電気信号)を出力する。
【0029】
好ましくは、摂食動作検出部5は、摂食動作検出信号を外部に送信する送信部を有しており、摂食動作検出部5から出力される摂食動作検出信号は、無線または赤外線等によって外部の受信機8に送信される。そして、受信機8は、摂食動作検出信号が出力されたことを、その時刻とともに記録する。
あるいは、摂食動作検出部5は、摂食動作検出信号を出力したことを、その時刻とともに記録するメモリを有しており、摂食行動のモニタリングの終了後にメモリに記録されたデータが読み取られる。
【0030】
この実施例によれば、
箸を用いるだけで摂食動作を手軽にかつ確実に検出することができる。また、摂食行動のモニタリングに際し、被検者(
箸の使用者)は、カメラで撮影されるという不安を抱くことなく、普段通りに食事をすることができ、よって、被検者は、プライバシーを侵害されることも、日常生活に支障をきたすこともない。加えて、
箸を用いてモニタリングするので、毎回、食卓の位置や被検者の座る位置を固定する必要もない。
また、日本人の食生活においては、通常、一対の箸と、当該一対の箸の使用者との対応関係は固定されて
いるので、摂食行動をモニタリングする際に、被検者(箸の使用者)をその都度特定する必要がない。
【0031】
(第2実施例)
図4は、本発明の第2実施例による一対の箸の構成を示すブロック図である。
図4を参照して、本発明による一対の箸10、11はいずれも絶縁体から形成されている。そして、一対の箸10、11のうちの一方の箸10の先端部10aに第1の電極12が設けられ、一対の箸10、11のうちの他方の箸11の先端部11aに第2の電極13が設けられる。
【0032】
また、一方の箸10には、第1の電極12を通じて高周波電気信号を送信する高周波信号送信部14が内蔵され、他方の箸11には、第2の電極13を通じて、高周波信号送信部14からの高周波電気信号を受信する高周波信号受信部15が内蔵される。
高周波信号送信部14から送信される高周波電気信号は、例えば10KHz程度の周波数を有していることが好ましい。
【0033】
他方の箸11には、さらに、高周波信号受信部15が受信する高周波電気信号の強度が、予め決定された基準値以上であるとき、箸の使用者による摂食動作が生じたものと判定して、摂食信号を出力する摂食動作検出部16が内蔵される。
【0034】
基準値は、次のようにして決定される。すなわち、一対の箸10、11によって何も掴まれず、第1および第2の電極12、13が互いに間隔をあけて配置されている場合は、高周波信号受信部15が受信する高周波電気信号の強度は比較的小さい。しかし、
図5に示すように、一対の箸10、11によって食べ物18が掴まれ、第1および第2の電極12、13間に食べ物18が挟まれた場合には、食べ物18が、通常、水分や塩分を含んでいて導電性を有するので、高周波信号受信部15が受信する高周波電気信号の強度は、一対の箸10、11によって何も掴まれていない場合よりも大きくなる。
【0035】
そして、使用者は、一対の箸10、11によって食べ物18を掴むと、それに続いて食べ物18を口に運ぶのが通例であると考えられる。
こうして、予め、実験によって、第1および第2の電極12、13間に種々の食べ物を挟んだ場合の、高周波信号受信部15によって受信される高周波電気信号の強度が測定され、それらの測定値の平均値が求められ、得られた平均値が基準値とされる。
【0036】
図6は、一対の箸10、11の回路構成の一例を示す図である。
図6において、高周波信号受信部15は、高周波信号送信部14の高周波電気信号を弁別するためのフィルター部15aと、フィルター部15aの下段に設けられた整流部15bとから構成される。また、摂食動作検出部16は、整流部15bから出力される電流を電圧に変換する電流‐電圧変換回路16aと、電流‐電圧変換回路16aの出力値と基準電圧を比較して比較結果を出力するシュミット回路(比較回路)16bとから構成される。なお、
図3中、Rは、一対の箸10、11によって掴まれた食べ物18の電気抵抗を示している。
この回路構成では、シュミット回路(比較回路)16bは、電流‐電圧変換回路16aの出力値が基準電圧以上となった場合に、摂食動作検出信号(highの電気信号)を出力する。
【0037】
摂食動作検出部16は、好ましくは、摂食動作検出信号を外部に送信する送信部を有しており、摂食動作検出部16から出力される摂食動作検出信号は、無線または赤外線等によって外部の受信機17に送信される。そして、受信機17は、摂食動作検出信号が出力されたことを、その時刻とともに記録する。
あるいは、摂食動作検出部16は、摂食動作検出信号を出力したことを、その時刻とともに記録するメモリを有しており、摂食行動のモニタリングの終了後にメモリに記録されたデータが読み取られる。
【0038】
この実施例によれば、一対の箸を用いて摂食動作を検出するが、日本人の食生活においては、通常、一対の箸と、当該一対の箸の使用者との対応関係は固定されているので、摂食行動のモニタリングに際し、被検者(箸の使用者)をその都度特定する必要がない。また、一対の箸を用いるだけで摂食動作を手軽にかつ確実に検出することができる。
さらに、摂食行動のモニタリングに際し、食卓の位置や被検者の座る位置を毎回固定する必要がなく、また、被検者(箸の使用者)は、カメラで撮影されるという不安を抱くことなく、普段通りに食事をすることができ、よって、被検者は、プライバシーを侵害されることも、日常生活に支障をきたすこともない。
【0039】
(第3実施例)
図7は、本発明の第3実施例による一対の箸の構成を示すブロック図である。
図7を参照して、本発明による一対の箸20、21はいずれも絶縁体から形成されている。そして、一対の箸20、21のうちの一方の箸20の先端部20aに第1の電極22が設けられ、後端部20bに第2の電極23が設けられる。また、一対の箸20、21のうちの他方の箸21の先端部21aには第3の電極24が設けられ、他端部21bには第4の電極25が設けられる。第3および第4の電極24、25は導線33によって電気的に接続されている。
【0040】
また、一方の箸20には、第1および第2の電極22、23間の電気抵抗を測定する抵抗測定部26が内蔵される。
一方の箸20には、さらに、抵抗測定部26の測定値が予め決定された基準値以下であるとき、使用者の摂食動作が生じたものと判定して、摂食動作検出信号を出力する摂食動作検出部27が内蔵される。
【0041】
基準値は、次のようにして決定される。すなわち、一対の箸20、21が使用されないとき、あるいは一対の箸20、21の後端部20b、21bが使用者の手指で把持されただけで、一対の箸20、21で何も掴まれず、第1および第3の電極22、24が互いに間隔をあけて配置されているときは、第1および第2の電極22、23間に電流が流れず、抵抗測定部26による測定値はほぼ無限大である。
ところが、
図8に示すように、使用者が一対の箸20、21を用いて食べ物20を掴み、第1および第3の電極22、24間に食べ物29が挟まれた場合には、一方の箸20、使用者の手指30、他方の箸21および食べ物29によって、電気的閉回路が形成され、同時に、この閉回路中を電流が流れて、抵抗測定部26によって閉回路の電気抵抗が測定される。
【0042】
そして、使用者は、一対の箸20、21によって食べ物29を掴むと、それに続いて食べ物29を口に運ぶのが通例であると考えられる。
こうして、予め実験によって、この電気抵抗の平均値が求められ、得られた平均値が基準値とされる。
【0043】
図9は、一対の箸20、21の回路構成の1例を示す図である。
図9を参照して、抵抗測定部26は、例えば、第1および第2の電極22、23間に直列接続された電池31および電流計32から構成される。また、摂食動作検出部27は、例えば、電流計32によって測定された電流値を電圧値に変換する電流‐電圧変換回路27aと、電流‐電圧変換回路27aの出力値と基準電圧を比較して比較結果を出力するシュミット回路(比較回路)27bとから構成される。なお、
図3中、R1およびR2は、それぞれ、一対の箸20、21の先端部によって掴まれた食べ物29の抵抗および一対の箸20、21の後端部を把持した使用者の手指30の抵抗を示している。
この回路構成では、抵抗値の代わりに電流値が測定され、シュミット回路(比較回路)27bは、電流‐電圧変換回路27aの出力値が基準電圧以上となった場合に、摂食動作検出信号(highの電気信号)を出力する。
【0044】
好ましくは、摂食動作検出部27は、摂食動作検出信号を外部に送信する送信部を有しており、摂食動作検出部27から出力される摂食動作検出信号は、無線または赤外線等によって外部の受信機28に送信される。そして、受信機28は、摂食動作検出信号が出力されたことを、その時刻とともに記録する。
あるいは、摂食動作検出部27は、摂食動作検出信号を出力したことを、その時刻とともに記録するメモリを有しており、摂食行動のモニタリングの終了後にメモリに記録されたデータが読み取られる。
そして、この実施例においても、第2実施例の場合と同様の効果が得られる。
【0045】
(実験)
次に、本発明の作用効果を調べるための実験を行った。実験は、実施例1による
一方の箸および実施例3の一対の箸を用いて
行った。
そして、2名の被検者(A、B)のそれぞれに、実施例1による一方の箸、および実施例3による一対の箸をそれぞれ用いて食事をしてもらい、食事中に、摂食動作検出信号が出力された回数をカウントした。また、食事の様子をカメラによって撮影した。
【0046】
食事の終了後、カメラに記録した映像に基づいて、各被験者が実際に摂食動作を行った回数をカウントして、これを正解数とし、第1実施例による摂食用具および第3実施例による一対の箸のそれぞれによって検出された摂食動作の回数と比較した。結果を表1に示す。
【0048】
表1より、第1実施例のほうが第3実施例よりも検出誤差が少ないことがわかった。その理由は、食事中、箸は、単に食べ物を掴んで口に運ぶためだけに使用されるものではなかったからであると推察される。
しかし、第3実施例においても、ある程度の正解数が出ており、必ずしも検出精度が悪い訳ではなかった。これは、箸を用いて食べ物を掴む行動が、摂食動作に直接つながる場合が多いことが原因であると考えられる。
また、第1実施例については、検出誤差が少なく、このことから、摂食用具が直接口に触れた際の抵抗値変化を検出することによって、摂食動作をかなり高い精度で検出できることがわかった。
【0049】
摂食動作をより正確に検出することができれば、摂食動作の回数・頻度・間隔等を調べることによって、どのように食事に臨んだか、食事にどれくらい集中していたのか、早食いの兆候はみられないのか等のより細かな食事状況の推測が可能になると考えられる。
【0050】
(別の実施例)
図10に示した実施例は、使用者が、一対の箸によって食べ物を掴んで口に入れたときに、それを摂食動作として検出し得る構成を有している。
図10において、一対の箸40、41はいずれも絶縁体から形成されている。そして、一対の箸40、41のうちの一方の箸40の先端部40aに第1の電極42が設けられ、後端部40bに第2の電極43が設けられる。また、一対の箸40、41のうちの他方の箸41の先端部41aには第3の電極44が設けられ、他端部41bには第4の電極45が設けられる。
【0051】
また、一方の箸40には、電池46および第1の電流計47が内蔵されて、第1および第2の電極42、43間に直列接続され、他方の箸41には、第2の電流計48が内蔵されて、第3および第4の電極44、45間に接続される。
【0052】
一方の箸20には、さらに、抵抗測定部26の測定値が予め決定された基準値以下であるとき、使用者の摂食動作が生じたものと判定して、摂食動作検出信号を出力する摂食動作検出部27が内蔵される。
【0053】
こうして、使用者が一対の箸40、41を用いて食べ物を掴み、口に入れたとき、一方の箸40と、使用者の手指(抵抗R1)と、他方の箸41と、食べ物(抵抗R2)とによって第1の電気的閉回路が形成されると同時に、一方の箸40と、使用者の身体(口、頭、胴、腕および手)(抵抗R3)とによって第2の電気的回路が形成される。
【0054】
この場合、第1の電流計47によって測定された電流値と第2の電流計48によって測定された電流値の差をとると、第2の電気的回路を流れる電流値が得られる。こうして、この電流値の差を利用することによって、第1実施例と同様にして、摂食動作を検出することができる。