特許第5791038号(P5791038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5791038
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】巻き枕
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   A47G9/10 M
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-261387(P2014-261387)
(22)【出願日】2014年12月24日
【審査請求日】2015年1月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514328458
【氏名又は名称】大畑 義則
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】大畑 義則
【審査官】 平田 慎二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−333846(JP,A)
【文献】 実開平06−021470(JP,U)
【文献】 実開平07−001863(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方端が開口され、または開口可能に形成された筒状体が前記筒状体の直径方向に連接部を介して複数連接されて四角形状に形成されるとともに、前記連接部に沿って折曲される可撓性な枕本体部と、
前記枕本体部の筒状体に着脱可能に嵌入される硬質棒状部材と、
前記枕本体部の筒状体に着脱可能に嵌入される軟質棒状部材と、を備え、
前記硬質棒状部材及び前記軟質棒状部材は、直径が8mm〜14mmの径断面形状が円形または多角形の棒であり、
前記枕本体部の筒状体連接方向一端側に位置する筒状体に前記硬質棒状部材を少なくとも嵌入し、該硬質棒状部材が前記枕本体部の巻回中心になるように前記枕本体部を前記連接部に沿って折曲して該枕本体部を巻回してなることを特徴とする巻き枕。
【請求項2】
記筒状体は20〜100個の範囲である請求項1に記載の巻き枕。
【請求項3】
前記枕本体部の筒状体連接方向一端側に位置する3〜5個の筒状体に前記硬質棒状部材を嵌入し、残りの筒状体に前記軟質棒状部材を嵌入する請求項1または2に記載の巻き枕。
【請求項4】
前記複数の筒状体、前記硬質棒状部材、及び前記軟質棒状部材は、識別可能に形成されている請求項1〜の何れか1項に記載の巻き枕。
【請求項5】
前記硬質棒状部材又は前記軟質棒状部材を、前記枕本体部の複数の筒状体に1つ置きに嵌入する請求項1〜の何れか1項に記載の巻き枕。
【請求項6】
前記硬質棒状部材は棒磁石である請求項1〜の何れか1項に記載の巻き枕。
【請求項7】
前記枕本体部の表裏面における前記筒状体の軸芯方向両端部であって、前記枕本体部の巻き開始端から前記枕本体部の略1/2の位置までに、前記筒状体の連接方向に沿って面ファスナが連続的に又は断続的に設けられている請求項1〜の何れか1項に記載の巻き枕。
【請求項8】
前記枕本体部を一端側から他端側まで巻回したときの枕の高さが80mm以上になるように前記枕本体部の長さを形成する請求項1〜の何れか1項に記載の巻き枕。
【請求項9】
前記硬質棒状部材及び前記軟質棒状部材の少なくとも1個は、前記筒状体の軸芯方向の長さよりも長く形成されて前記筒状体の開口よりも突出する突出部を更に有し、前記突出部は吸液性部材で形成されている請求項1〜の何れか1項に記載の巻き枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻き枕に係り、特に使用者の好みに応じて枕の高さ調整や硬さ調整が容易であるとともに、洗濯等のメンテナンスが容易な巻き枕に関する。
【背景技術】
【0002】
人の快適な睡眠にとって枕の高さや硬さは重要な要素であることはよく知られているが、快適と感じる枕の高さや硬さは人それぞれによって違うことも知られている。このため、従来から高さの異なる枕や、充填材等の選択により硬さの異なる枕が多種類製造販売されており、使用者は自分にあった好みのものを適宜選択している。
【0003】
しかし、快適と感じる枕の高さや硬さは、その日の使用者の健康状態や体調、敷布団の硬さや掛布団の重さ等との関係で微妙に変わるため、一旦購入した枕の高さや硬さが合わなくなってくることが多く、せっかく購入した枕が無駄になる場合もある。
【0004】
このような背景から、例えば特許文献1に、枕の高さや硬さを適宜調整可能とした巻き枕が提案されている。
【0005】
特許文献1には、袋体を仕切縫合部で分割して10箇所の充填空間を形成し、これら充填空間のそれぞれに軟質充填材(ポリエチレン等の綿部材、フェザー)または硬質充填材(ポリエチレン等のパイプ片、木片、そば殻)を詰めて仕切縫合部に沿って折曲可能とし、かつ、充填空間の少なくともひとつに対して、硬さが異なる充填材を充填した巻き枕が開示されている。この巻き枕によれば、袋体を仕切縫合部に沿って折り曲げて袋体を巻回する巻回数を変えることにより、ひとつの枕で多様な高さや硬さを好みに応じて容易に選択調整できるとされている。
【0006】
また、近年はパソコンを長時間同一姿勢でデスクワークするサラリーマン、学生、主婦等が増加しており、これに伴ってストレートネック症状で悩む人が増加している。ストレートネック症状とは、頸部への負担が継続的にかかることによって起こる、頭痛、めまい、肩こり等の様々な症状を言い、頸椎を守る首の骨が本来の湾曲状態から真っ直ぐな状態になることによって生じる。
【0007】
ストレートネックの場合にも、高さ調整した適度な硬さの枕を、使用者の頸部に当てがい頸部を小さな力で押し上げた状態にすることで頸部の円滑な血流を確保し易くなり、ストレートネックに良いとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−333846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の巻き枕のように、袋体に充填する充填物が、綿部材、フェザー等の繊維状物質、パイプ片、木片、そば殻等の粒状物質の場合には、高さ調整、硬さ調整、メンテナンス(枕の洗濯等)において、以下の問題点がある。
【0010】
(1)繊維状物質や粒状物質のような細かな充填物は、使用しているうちに使用者の頭の重みや寝返り等により、枕内での偏りが生じてしまい、本来の快適な枕の高さや硬さが変わってしまう。したがって、その都度、充填物の偏りを直して快適な高さや硬さに再調整しなくてはならないという問題がある。
【0011】
(2)枕を使用することにより、枕は使用者の汗等により汚れるため、充填物を収納する袋体を定期的に洗濯する必要がある。しかし、繊維状物質や粒状物質のように細かな充填物は、洗濯のために袋体から取り出すと、洗濯後に再び袋体に詰めるのが面倒であるとともに、元の快適な枕の高さや硬さになるように詰め直すことは難しいという問題がある。この対策として、枕カバーをすることも考えられるが、高さや硬さ、更には頭を載せたときの感触が微妙に変わってしまうという問題がある。
【0012】
(3)さらに、特許文献1では、袋体を分割する充填空間の分割数は限定されないとの記載はあるが、実施例での具体的な分割数は10個と少なく、枕の高さ調整や硬さ調整に限界がある。
(4)更にまた、従来は、ストレートネックの人に適した枕が存在しなかった。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ストレートネックの人にも適し、使用者の頭の重みや寝返り等によって本来の快適な枕の高さや硬さが変わることがなく、汚れた場合にも簡単に洗濯でき、洗濯しても元の快適な枕の高さや硬さを簡単に復元できるのでメンテナンスも容易な巻き枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の巻き枕は上記目的を達成するために、少なくとも一方端が開口され、または開口可能に形成された筒状体が前記筒状体の直径方向に連接部を介して複数連接されて四角形状に形成されるとともに、前記筒状体の連接部に沿って折曲される可撓性な枕本体部と、前記枕本体部の筒状体に着脱自在に嵌入される硬質棒状部材と、前記枕本体部の筒状体に着脱自在に嵌入される軟質棒状部材と、を備え、前記硬質棒状部材と軟質棒状部材とを前記複数の筒状体に適宜嵌入した前記枕本体部を前記連接部に沿って折曲して該枕本体部を巻回してなることを特徴とする。
【0015】
ここで、「硬質棒状部材と軟質棒状部材とを複数の筒状体に適宜嵌入」とは、巻き枕の使用者が自分の好みの枕の高さ及び硬さになるように、複数の筒状体に硬質棒状部材と軟質棒状部材とを嵌入することを言う。
【0016】
また、本発明の巻き枕は、枕本体部を巻回した巻回状態のものに限定されるものではなく、筒状体に硬質棒状部材又は軟質棒状部材を嵌入する前のものも含まれるものとする。また、可撓性な枕本体部の筒状体は、筒状の形状を常時維持していることを意味するものではなく、硬質棒状部材又は軟質棒状部材を嵌入する際に筒状を形成することを意味する。また、嵌入とは、硬質棒状部材又は軟質棒状部材が筒状体に隙間なく収納されることを言う。
【0017】
本発明の巻き枕の使用者は、硬質棒状部材と軟質棒状部材とを複数の筒状体に適宜嵌入した枕本体部を、筒状体の連接部に沿って折り曲げて枕本体部を巻回することにより巻き枕を形成する。
【0018】
即ち、巻き枕を形成する際に、複数の筒状体に嵌入する硬質棒状部材と軟質棒状部材との個数比率や嵌入する筒状体の位置を変えることで巻き枕の硬さを調整でき、枕本体部の巻回数を調整することで枕の高さを調整できる。
【0019】
このように、本発明の巻き枕は、枕本体部の筒状体に充填する充填物として、硬質性と軟質性の2種類の硬さの棒状部材を採用したので、従来の繊維状物質や粒状物質のような細かな充填物ように、使用者の頭の重みや寝返り等によって本来の快適な枕の高さや硬さが変わることがない。
【0020】
また、巻き枕が汚れた場合には、棒状部材なので筒状体から簡単に抜き取ることができ、また洗濯後は簡単に再嵌入することができる。そして、抜き取る際に、硬質棒状部材及び軟質棒状部材と、抜き取られた筒状体との対応関係が分かれば、枕本体部を洗濯後に抜き取ったと同じ位置の筒状体に硬質棒状部材又は軟質棒状部材を再嵌入できる。これにより、元の快適な枕の高さや硬さを簡単に復元できる。さらに、充填物を棒状部材とすることで、充填物の洗濯あるいは清浄化も容易に行うことができ、メンテナンスが極めて簡単である。
【0021】
本発明の巻き枕の態様として、前記硬質棒状部材及び前記軟質棒状部材は、直径が8mm〜14mmの細い丸棒であり、前記筒状体は20〜100個の範囲であることが好ましい。
【0022】
巻き枕の高さ調整や硬さ調整をきめ細かく行うには、筒状体の直径に相当する硬質棒状部材及び軟質棒状部材の直径を細くし、硬質棒状部材と軟質棒状部材の個数比率や、嵌入する筒状体の位置のフレキシビリティを高めることが好ましいからである。
【0023】
具体的には、硬質棒状部材及び軟質棒状部材を直径8mm〜14mmの細い丸棒とし、筒状体の個数を20〜100個の範囲と多くすることで、枕の高さ調整や硬さ調整をきめ細かく行うことが可能となる。
【0024】
本発明の巻き枕の態様として、前記複数の筒状体、前記硬質棒状部材、及び軟質棒状部材は、識別可能に形成されていることが好ましい。これにより、硬質棒状部材及び軟質棒状部材と、抜き取られた筒状体との対応関係とを簡単に関連付けることができる。
【0025】
本発明の巻き枕の態様として、前記枕本体部の筒状体連接方向一端側に位置する筒状体に前記硬質棒状部材を少なくとも嵌入し、該硬質棒状部材が前記枕本体部の巻回中心になるように巻回することが好ましい。これにより、巻き枕の中心にしっかりした芯ができるので、巻き枕の形状が安定化する。
【0026】
本発明の巻き枕の態様として、前記枕本体部の筒状体連接方向一端側に位置する3〜5個の筒状体に前記硬質棒状部材を嵌入し、残りの筒状体に前記軟質棒状部材を嵌入することが好ましい。これにより、巻き枕の中心部が硬く、頭や頸部を接触させる外層部が柔らかい巻き枕を提供できる。本発明者の実験によれば、前記枕本体部の筒状体連接方向一端側の筒状体に硬質棒状部材を嵌入する数は、2〜6個が好ましく、3〜5個がより好ましいことが分かった。2〜6個の硬質棒状部材が巻回中心になるように巻くことにより、柔らかすぎず、しなりすぎない巻き枕になり、3〜5個の硬質棒状部材が巻回中心になるように巻くことにより、ストレートネックの人の肩こり、頭痛等を軽減する効果が高いことが判明した。
【0027】
本発明の巻き枕の態様として、前記硬質棒状部材又は前記軟質棒状部材を、前記枕本体部の複数の筒状体に1つ置きに嵌入することが好ましい。これにより、隣接する筒状体同士の間に枕本体部を巻回するための余裕部分ができるので、枕本体部を巻回し易くなる。さらには、巻回後の巻き枕の直径方向の外表面断面が凹凸になるので、巻き枕に頭や頸部を載せたときに凹部の溝に沿って空気が流れるので、夏場等の暑いときに頭や頸部が蒸れることがない。
【0028】
本発明の巻き枕の態様として、前記硬質棒状部材は棒磁石であることが好ましい。これにより、磁気枕としての機能も発揮することができる。
【0029】
本発明の巻き枕の態様として、前記枕本体部の表裏面における前記筒状体の軸芯方向両端部であって、前記枕本体部の巻き開始端から前記枕本体部の略1/2の位置まで、前記筒状体の連接部に沿って面ファスナが連続的に又は断続的に設けられていることが好ましい。これにより、枕本体部を綺麗なロール形状に巻回し易いとともに、巻き終わったときに巻きが戻って巻き枕の高さや硬さが変わってしまうことを防止できる。
【0030】
本発明の巻き枕の態様として、前記枕本体部を一端側から他端側まで巻回したときの枕の高さが80mm以上になるように前記枕本体部の長さを形成することが好ましい。
【0031】
ストレートネックにおいて、巻き枕を使用者の頸部に当てがい頸部を小さな力で押し上げた状態にするには、巻き枕の高さは50〜80mm(好ましくは60〜70mm)が良いとされており、枕の高さが80mm以上になるように枕本体部の長さを形成すれば問題ないからである。
【0032】
本発明の巻き枕の態様として、前記硬質棒状部材及び軟質棒状部材の少なくとも1個は、前記筒状体の軸芯方向の長さよりも長く形成されて前記筒状体の開口よりも突出する突出部を更に有し、前記突出部は吸液性部材で形成されていることが好ましい。
【0033】
これにより、吸液性の突出部に例えばアロマ液等の睡眠を促進させる匂い物質を浸透させておけば、使用者の睡眠をさらに促進することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の巻き枕によれば、使用者の頭の重みや寝返り等によって本来の快適な枕の高さや硬さが変わることがなく、汚れた場合にも簡単に洗濯でき、洗濯しても元の快適な枕の高さや硬さを簡単に復元できるのでメンテナンスも容易な巻き枕を提供できる。
【0035】
したがって、本発明の巻き枕は、以下の効果を奏する。
【0036】
イ)家庭で普通の枕としても使用できることは勿論のこと、持ち運びが簡単なので、旅行用の枕としても有効である。
【0037】
ロ)頸部の疲労感に対して微妙な高さ調整や硬さ調整が可能なので、ストレートネック用の枕として有効である。
【0038】
ハ)棒状部材が配列することで巻き枕を構成しており、棒状部材がつぼを刺激するので、首、背中、腰等のつぼマッサージ用としても有効である。
【0039】
ニ)特に、ストレートネック用やつぼマッサージ用として使用する場合、巻き枕を巻回する際に、シート状等の冷却材や加温材を一緒に巻くことができるので、高さ調整や硬さ調整に加えて、温度調整も可能なので、ストレートネック治療効果やつぼマッサージ効果を向上できる。なお、温度調整の場合、電気的な冷却器や加温器を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の巻き枕を組み立てる前の構成部材を説明する分解図
図2】巻き枕の組み立て途中の図
図3】巻き枕の組み立て完成図
図4】ストレートネックの使用者が巻き枕を頸部の下に当てがっている図
図5】枕本体部の複数の筒状体に硬質棒状部材と軟質棒状部材とを交互に嵌入した巻き枕の図
図6】枕本体部の複数の筒状体に1つ置きに硬質棒状部材又は軟質棒状部材を嵌入した巻き枕の図
図7】巻き枕の変形例を示した図
図8】タオル地の枕本体部、木製の硬質棒状部材、発砲ウレタン製の軟質棒状部材を用いた巻き枕の実施例の図
図9】実施例の巻き枕の完成図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下添付図面に従って、本発明に係る巻き枕の好ましい実施の形態について詳述する。
【0042】
[巻き枕の構成]
図1は、本発明の実施の形態の巻き枕を組み立てる前の構成部材を説明する分解図であり、図2は組み立て途中の図、図3は組み立て完成図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態の巻き枕10は、主として、枕本体部12と、硬質棒状部材14と、軟質棒状部材16とで構成される。なお、図1において、硬質棒状部材14は白地で示し、軟質棒状部材16は細かなドット地で描いている。
【0043】
枕本体部12は、少なくとも一方端が開口された複数の筒状体18が該筒状体18の直径方向に連接部12Aを介して複数連接されて四角形状に形成された可撓性部材であり、巻き枕10を形成する際には連接部12Aに沿って折り曲げる。なお、筒状体18は、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16の嵌入前においては、両端が開口、一方端が開口され他方端が閉塞、少なくとも一方端が開口可能、のいずれの態様でも良く、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16を嵌入した後においては、両端とも開口、両端とも閉塞、一方端が開口され他方端が閉塞の態様のうち、何れの態様も可能である。図1では、一方端が開口され他方端が閉塞された場合の例で図示している。
【0044】
枕本体部12の材質としては、タオル地やフェルト地等の布製、牛革、人工皮革等の皮製、ビニール製等を各種の可撓性材質のものを使用できる。図1では、枕本体部12の筒状体18の径断面形状を丸形状に描いているが、可撓性により実際には楕円形状に撓んだ状態になっている。
【0045】
枕本体部12は、例えば、長方形な2枚のタオル生地を重ね合わせ、筒状体18の直径に相当する幅を有して等間隔で連接部12Aを設けることにより形成できる。市販のバスタオルを使用して作製する場合、典型的なバスタオルの寸法である600mm×1200mmの寸法で作製することができる。連接部12Aは、例えば縫合による縫合部、接着材による接合部等により形成できる。
【0046】
なお、本実施の形態の巻き枕10は、70個の筒状体18、3個の硬質棒状部材14、67個の軟質棒状部材16の一例で説明し、図1及び図2では、筒状体18の連接途中を想像線で示しており、それに合わせて軟質棒状部材16も想像線で示している。
【0047】
また、枕本体部12の表裏面における筒状体18の軸芯方向両端部であって、枕本体部12の巻き開始端から枕本体部12の略1/2の位置まで、筒状体18同士の連接方向に沿って面ファスナ20が連続的に又は断続的に設けられていることが好ましい。図1では、枕本体部12の表裏面のうちの一方面のみに面ファスナ20が図示されているが、他方面にも設けられる。なお、図1では、枕本体部12の右端が巻き開始端になる。
【0048】
これにより、枕本体部12の巻き開始端から略半分程巻くまでの間、枕本体部12の巻回済みの部分が面ファスナ20で順次固定されていくので、綺麗なロール形状に巻回し易い。さらには、枕本体部12を巻き終わったときに、巻きが緩んでしまい巻き枕10の高さや硬さが変わってしまうことを防止できる。
【0049】
なお、枕本体部12の巻き開始端から巻き終了端まで面ファスナ20を設けると、巻き枕10の外表面に面ファスナ20が露出してしまうので問題がある。ここで、本発明においては、面ファスナ20を設けることに限定しているわけではなく、面ファスナ20を設けることは一実施形態である。本発明に係る巻き枕は、面ファスナ20を設けなくても、十分に使用可能であり、面ファスナ20がないことにより、寝ているときに簡単に巻きの長さを調整できるというメリットもある。
【0050】
面ファスナ20とは、一般的にマジックテープ(登録商標)として知られており、フック状に起毛されたフック状起毛部と、ループ状に密集して起毛されたループ状起毛部とを押し付けることにより貼り付き、剥がす方向の力で剥がれる。よって、本発明においては、巻いていったときにフック状起毛部と、ループ状起毛部とがうまく接触するように、フック状起毛部と、ループ状起毛部とが交互に設置されていることが好ましい。
【0051】
硬質棒状部材14は、使用者の頭程度の重さでは撓まない硬さのものであればどのような材質でもよいが、例えば木、金属、セラミックス、硬質プラスチック、硬質ゴム等を好適に使用できる。また、金属として棒磁石を使用すれば、磁気枕としての機能も発揮することができる。また、木としては、例えばヒノキを使用すれば、ヒノキの香りが安眠を促進することができる。
【0052】
軟質棒状部材16は、使用者の頭を載せたときに痛くない程度の柔軟性を有する材質であればどのようなものでもよいが、例えば軟質プラスチック(例えば発泡ウレタン樹脂)、軟質ゴム、緩衝剤として使用されるバックアップスポンジ等を好適に使用できる。
【0053】
[巻き枕の組立方法]
上記の枕本体部12、硬質棒状部材14、軟質棒状部材16により巻き枕10を組み立てるには、先ず図2に示すように、枕本体部12の筒状体18に、硬質棒状部材14と軟質棒状部材16とを嵌入させる。図2では、巻き開始端から3個の筒状体18に硬質棒状部材14を嵌入し、残りの67個の筒状体18に軟質棒状部材16を嵌入した(棒状部材の嵌入ステップ)。
【0054】
次に、図3に示すように、枕本体部12を連接部12Aに沿って折曲して該枕本体部12を巻回する(枕本体部の巻回ステップ)。
これにより、組み立てが終了し、巻き枕10が完成する。
【0055】
図4は、組み立てた本発明の実施の形態の巻き枕10を、ストレートネックの使用者22が、布団24(又はベッド)に就寝時に頸部26の下に当てがい頸部26を小さな力で押し上げた状態にしている図である。ストレートネックのための巻き枕10の高さHは、50〜80mm(好ましくは60〜70mm)が良いとされる。したがって、巻き枕10の高さが80mm以上になるように枕本体部12の長さを設定する必要がある。この場合、巻き枕10を、頸部26の下側を当てがうロール状の頸部支持部10Aと、後頭部28を支持する後頭部支持部10Bとで構成し、後頭部28を布団24の面24Aよりも少し高く支持できるようにすることが好ましい。後頭部支持部10Bの高さ調整は、後頭部支持部10Bを折り畳むことによって調整できる。
【0056】
上記した嵌入ステップと巻回ステップにおいて、使用者22は、複数の筒状体18に嵌入させる硬質棒状部材14と軟質棒状部材16との個数比率や、複数の筒状体18のうちの何れの筒状体18に硬質棒状部材14又は軟質棒状部材16を嵌入させるかによって巻き枕10の硬さを好みの硬さに調整する。また、使用者22は、枕本体部12を巻回する巻回数を調整することで巻き枕10の枕の高さを好みの高さに調整する。この場合、図4のように、巻回される枕本体部12の後頭部支持部10Bを、頸部支持部10Aと布団24との間に押し込むことで微妙な枕の高さの調整が可能となる。
【0057】
かかる硬さ調整や高さ調整において、本発明の実施の形態の巻き枕10は、枕本体部12の筒状体18に充填する充填物として硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16のように棒状部材を採用したので、従来の繊維状物質や粒状物質のような細かな充填物のように、使用者22の頭の重みや寝返り等によって本来の快適な枕の高さや硬さが変わることがない。
【0058】
また、巻き枕10が汚れた場合には、硬質棒状部材14と軟質棒状部材16とを枕本体部12の筒状体18から抜き取って枕本体部12を簡単に洗濯できる。このとき、複数の筒状体18のうち、どの位置の筒状体18から硬質棒状部材14を抜き取り、どの位置の筒状体18から軟質棒状部材16を抜き取ったかを分かるようにしておく。そして、枕本体部12を洗濯したら、抜き取ったと同じ位置の筒状体18に硬質棒状部材14又は軟質棒状部材16を嵌入してやれば、元の快適な枕の高さや硬さを簡単に復元できる。また、充填物が棒状部材なので、充填物の洗濯あるいは清浄化も容易に行うことができ、メンテナンスが極めて簡単である。
【0059】
巻き枕10の高さ調整や硬さ調整をきめ細かく行うには、筒状体18の直径に相当する硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16の直径を細くし、硬質棒状部材14と軟質棒状部材16の個数比率や、複数の筒状体18のうちの何れの筒状体18に硬質棒状部材14又は軟質棒状部材16を嵌入させるかのフレキシビリティを高めることが好ましい。また、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16の直径を細くすることで、枕本体部12の巻回数を多く確保できるので、微妙な枕の高さ調整も可能となる。
【0060】
そこで、発明者が実験により確かめた結果、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16の直径が8mm未満で巻き枕10を形成した場合には、頭の重みで撓みが生じ、枕の高さ調整がしにくい。また、14mmを超えて太いと、巻き枕10に頭を載せたり、頸部26の下に当てがったりしたときに、フィット感がなくなる。また、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16の径断面形状は円形状に限らず円に近い多角形であれば問題ないが、円形状が好ましい。
【0061】
この実験結果より、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16は、直径が8mm〜14mmの細い丸棒であることが好ましく、さらに好ましい直径は10mm〜12mmの範囲であり、特に好ましい直径は10mmである。そして、この太さの硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16で利用可能な枕の高さを確保するには、筒状体18の数は20〜100個の範囲であり、枕本体部12の長さにして500〜1000mmの範囲が好ましい。特に好ましい筒状体18の数は、30〜50個の範囲である。また、枕本体部12の幅(筒状体18の軸芯方向の長さ)は、寝返り等を考慮すると、300〜500mmの範囲が好ましい。
【0062】
発明者自身が、ストレートネックであるため、自らをも含めて実験した結果、上記数値範囲において、ストレートネックにより発生する肩こり、頭痛、めまい等の症状が軽減した。特に、上記好ましい数値範囲で作製した枕を使用することにより、肩こり、頭痛、めまい等の症状の軽減度合いが大きくなり、上記特に好ましい数値範囲で作製した枕を使用することにより、肩こり、頭痛、めまい等の症状はほとんど消失した。
【0063】
これは、本発明の巻き枕10により、使用者22の頸部26に当てがい頸部26を小さな力で押し上げた状態にすることで頸部26の円滑な血流を確保し易くなるとともに、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16で適度な硬さに調整された巻き枕10の棒状の部分による頸部26のつぼ等への刺激、及び、頸部26を適切な湾曲状態にすることによって、ストレートネックの症状が軽減、消失したものと考えられる。
【0064】
図1図3は、上述の通り、枕本体部12に70個の筒状体18を形成し、枕本体部12の筒状体18連接方向一端側(巻き開始位置側)に位置する2〜6個(さらに好ましくは3〜5個)の筒状体18に硬質棒状部材14を嵌入し、残りの筒状体18に軟質棒状部材16を嵌入し、3個の硬質棒状部材14が巻き中心になるように巻回した一例である。
また、図5は、枕本体部12に70個の筒状体18を形成し、硬質棒状部材14と軟質棒状部材16とを交互に嵌入して、巻き枕10を形成する一例である。
【0065】
図6は、枕本体部12に70個の筒状体18を形成し、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16を、枕本体部12の複数の筒状体18に1つ置きに嵌入して、巻き枕10を形成する一例である。これにより、隣接する筒状体18同士の間に枕本体部12を巻回するための余裕部分ができるので、枕本体部12を巻回し易くなる。さらには、巻回後の巻き枕10の外表面断面が凹凸になるので、巻き枕10に頭や頸部26を載せたときに凹部の溝に沿って空気が流れるので、夏場等の暑いときに後頭部28や頸部26が蒸れることがない。
【0066】
また、図示しなかったが、図3の4〜5重に巻回された巻回層の中心巻回層に硬質棒状部材14を嵌入し、最外巻回層(頸部又は頭と接触する巻回層)に軟質棒状部材16を嵌入し、中心巻回層と最外巻回層との間の中間巻回層に硬質棒状部材14と軟質棒状部材16とを適宜嵌入することで好みの枕の高さや硬さを調整することもできる。
【0067】
このように、本発明の実施の形態の巻き枕10は、枕本体部12、硬質棒状部材14、軟質棒状部材16の3つの簡単な構成でありながら、硬質棒状部材14と軟質棒状部材16の個数比率、複数の筒状体18に対する硬質棒状部材14と軟質棒状部材16の嵌入位置、枕本体部12の巻回数と巻回層に嵌入する硬質棒状部材14と軟質棒状部材16との配置、複数の筒状体18の全てに硬質棒状部材14又は軟質棒状部材16を嵌入させるか、1つ置きに嵌入させるか等により、使用者の好みの枕の高さや硬さを極めてきめ細かく調整することができる。
【0068】
ところで、例えば70個のように多数の筒状体18で枕本体部12を形成すると、枕本体部12の洗濯等により枕本体部12から硬質棒状部材14と軟質棒状部材16とを抜き出す場合、硬質棒状部材14と軟質棒状部材16とが、どの位置の筒状体18に嵌入されていたかが分からなくなってしまう。
そこで、本発明の巻き枕10の態様として、複数の筒状体18、複数の硬質棒状部材14、及び複数の軟質棒状部材16は、識別可能に形成されていることが好ましい。
【0069】
図1図6では、筒状体18と軟質棒状部材16にアラビア数字を付し、硬質棒状部材14にはアルファベットを付すことによって、70個の筒状体18から硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16を抜き出しても、筒状体18の位置と、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16との対応関係を簡単に関連付けておくことができる。
【0070】
したがって、洗濯等により多数の筒状体18から硬質棒状部材14と軟質棒状部材16を抜き取っても、元の快適な枕の高さや硬さを簡単に復元できる。このような認識による復元操作は、充填物が棒状部材であるがゆえの特徴であり、従来の繊維状物質や粒状物質のような細かな充填物では略不可能である。
認識方法としては、複数の筒状体18、複数の硬質棒状部材14、及び複数の軟質棒状部材16へ記号(数字を含む)を付与する方法、色分けする方法等が好適であるが、これに限定されない。
【0071】
これにより、本発明の巻き枕10によれば、使用者の頭の重みや寝返り等によって本来の快適な枕の高さや硬さが変わることがなく、汚れた場合にも簡単に洗濯でき、洗濯しても元の快適な枕の高さや硬さを簡単に復元できるのでメンテナンスも容易な巻き枕10を提供できる。
【0072】
図7は、本発明の実施の形態の巻き枕10の変形例であり、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16の少なくとも1個について、筒状体18の軸芯方向の長さよりも長く形成されて筒状体18の開口よりも突出する突出部14A(16A)を更に有し、突出部14A(16A)は吸液性部材で形成されているように構成したものである。
これにより、吸液性の突出部14A(16A)に例えばアロマ液等の睡眠を促進させる匂い物質を浸透させておけば、使用者の睡眠をさらに促進することができる。
【0073】
なお、本発明の実施の形態の巻き枕10は、枕本体部12を巻回するときに、加温シートや冷却シートを挟み込むように巻回することもできる。これにより、例えば頭部や頸部26を加温したり、冷却したりすることができる。また、本発明の実施の形態の巻き枕10は、本来の枕としての用途の他に、腰当てとして使用することもできる。また、本発明の実施の形態の巻き枕10は、携帯枕として利用することもできる。この場合、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16を抜き出すことなく、巻回させて携帯しても良いし、枕本体部12から硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16を抜き出した状態で携帯しても良い。枕本体部12から硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16を抜き出した状態で携帯する場合は、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16を収納する収納袋(図示せず)を更に備えることが好ましい。
【0074】
[実施例]
図8及び図9は、タオル地の枕本体部12、10mmの直径を有する木製の硬質棒状部材14と、10mmの直径を有する発泡ウレタン製の軟質棒状部材16とを用いて、上記に説明した巻き枕10を具体的に作製した実施例を図示したものである。
【0075】
図8に示すように、2枚の長方形なタオル地を重ね合わせ、等間隔で縫合してミシン目(連接部12A)を入れることにより、硬質棒状部材14及び軟質棒状部材16を嵌入させる筒状体18を30個形成した。そして、枕本体部12の巻回中心に硬質棒状部材14が配置されるように、硬質棒状部材14と軟質棒状部材16を適宜嵌入させた。
次に、図9に示すように、硬質棒状部材14が巻回中心になるように、枕本体部12を巻回して巻き枕10を形成した。
【符号の説明】
【0076】
10…巻き枕、10A…頸部支持部、10B…後頭部支持部、12…枕本体部、12A…連接部、14…硬質棒状部材、16…軟質棒状部材、18…筒状体、20…面ファスナ、22…使用者、24…布団、26…頸部、28…後頭部
【要約】
【課題】使用者の頭の重みや寝返り等によって本来の快適な枕の高さや硬さが変わることがなく、汚れた場合にも簡単に洗濯でき、洗濯しても元の快適な枕の高さや硬さを簡単に復元できる巻き枕を提供する。
【解決手段】少なくとも一方端が開口された筒状体18が筒状体18の直径方向に連接部12Aを介して複数連接されて四角形状に形成されるとともに、連接部12Aに沿って折曲される可撓性な枕本体部12と、枕本体部12の筒状体18に着脱自在に嵌入される硬質棒状部材14と、枕本体部12の筒状体18に着脱自在に嵌入される軟質棒状部材16と、を備え、硬質棒状部材14と軟質棒状部材16とを複数の筒状体18に適宜嵌入した枕本体部12を連接部12Aに沿って折曲して該枕本体部12を巻回してなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9