特許第5791063号(P5791063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人鳥取大学の特許一覧

特許5791063大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム
<>
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000003
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000004
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000005
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000006
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000007
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000008
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000009
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000010
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000011
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000012
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000013
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000014
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000015
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000016
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000017
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000018
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000019
  • 特許5791063-大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791063
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】大気中の物質の飛来状態判定装置、飛来物質採取用フィルタ及び飛来状態判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20150917BHJP
   G01N 15/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G01N21/27 A
   G01N15/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-509239(P2015-509239)
(86)(22)【出願日】2014年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2014066458
(87)【国際公開番号】WO2014203997
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2015年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-130989(P2013-130989)
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(72)【発明者】
【氏名】大西 一成
【審査官】 南 宏輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−152849(JP,A)
【文献】 特開平08−140698(JP,A)
【文献】 特開2002−333403(JP,A)
【文献】 特開2001−281129(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0185534(US,A1)
【文献】 特開平05−306987(JP,A)
【文献】 特開2003−281671(JP,A)
【文献】 特開平06−103475(JP,A)
【文献】 特開平10−232198(JP,A)
【文献】 特開2006−162343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/958
G01N 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中に飛来する物質を付着させたフィルタの画像情報を取得する取得部と、
前記取得した画像情報から、前記フィルタに付着した物質の成分及び量に応じて変化するフィルタの色を示す色情報を抽出する色抽出部と、
前記抽出した色情報に基づき、大気中における黄砂及び汚染物質を区別してそれらの飛来状態を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に基づき黄砂及び汚染物質を区別してそれらの飛来状態を示す情報を表示する表示部と
を備えた
大気中の物質の飛来状態判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、抽出した色情報から所定の判定式に基づき算出した値に基づいて、判定を行った日が、大気中の黄砂に関する成分が他の飛来物質の成分に対して比較的多いと考えられる黄砂日であるか否かを判定し、
前記表示部は、前記黄砂日であることを示す情報を表示する、
請求項1記載の大気中の物質の飛来状態判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、抽出した色情報から所定の判定式に基づき算出した値に基づいて、判定を行った日が、大気中の汚染物質に関する成分が他の飛来物質の成分に対して比較的多いと考えられる汚染日に該当するか否かを判定し、
前記表示部は、前記汚染日であることを示す情報を表示する、
請求項1または2に記載の大気中の物質の飛来状態判定装置。
【請求項4】
前記色抽出部は、前記フィルタの色情報を、当該フィルタと同じ条件で撮影された所定の基準色を含むカラーチャートの色情報に基づき補正する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の大気中の物質の飛来状態判定装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記フィルタの画像を撮影し、前記画像情報を生成する撮像部を含む、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の大気中の物質の飛来状態判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、所定の判定式に基づき、大気中における物質の飛来状態を判定し、
前記所定の判定式は、前記画像情報から抽出した輝度値、C(シアン)値、Y(イエロー)値、S(彩度)値のパラメータを含む、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の大気中の物質の飛来状態判定装置。
【請求項7】
大気の取り込み口と、
前記取り込み口から大気をケース内に取り込むための空気流を生成するファンと、
前記ケース内に取り込んだ大気に含まれる物質を付着させるフィルタを保持する保持部と、をさらに備え、
前記取得部は、前記保持部に保持されたフィルタの表面の画像を撮影し、撮影した画像から前記画像情報を生成する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の大気中物質の飛来状態判定装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の飛来状態判定装置に使用される、大気中の飛来物質の採取用フィルタであって、
複数の分割された領域を有し、前記複数の分割領域の少なくとも一部の領域において、特定の物質のみが反応する薬剤が塗布された
飛来物質採取用フィルタ。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の飛来状態判定装置に使用される、大気中の飛来物質の採取用フィルタであって、
所定の基準色を含むカラーチャートを備えた
飛来物質採取用フィルタ。
【請求項10】
コンピュータ読み取り可能な、大気中の物質の飛来状態を判定するプログラムであって、コンピュータに、
大気中に飛来する物質を付着させたフィルタの画像情報を取得するステップと、
前記取得した画像情報から、前記フィルタに付着した物質の成分及び量に応じて変化するフィルタの色を示す色情報を抽出するステップと、
前記抽出した色情報に基づき、大気中における黄砂及び汚染物質を区別してそれらの飛来状態を判定するステップと、
前記判定結果に基づき黄砂及び汚染物質を区別してそれらの飛来状態を示す情報を表示手段に表示させるステップと
を実行させる、
プログラム。
【請求項11】
前記判定するステップは、抽出した色情報から所定の判定式に基づき算出した値に基づいて、判定を行った日が、大気中の黄砂に関する成分が他の飛来物質の成分に対して比較的多いと考えられる黄砂日であるか否かを判定し、
前記表示させるステップは、前記黄砂日であることを示す情報を前記表示手段に表示させる、
請求項10記載のプログラム。
【請求項12】
前記判定するステップは、抽出した色情報から所定の判定式に基づき算出した値に基づいて、判定を行った日が、大気中の汚染物質に関する成分が他の飛来物質の成分に対して比較的多いと考えられる汚染日に該当するか否かを判定し、
前記表示させるステップは、前記汚染日であることを示す情報を前記表示手段に表示させる、
請求項10または11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記色情報を抽出するステップは、前記フィルタの色情報を、当該フィルタと同じ条件で撮影された所定の基準色を含むカラーチャートの色情報に基づき補正する、
請求項10ないし12のいずれか1つに記載のプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中に含まれる黄砂や汚染物質等の飛来状況を判定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
東アジア大陸の乾燥・半乾燥地帯から巻き上げられた土壌粒子が偏西風に乗って風下に運ばれる気象現象として黄砂がある。黄砂は日本では、春に多く観察される。また、近年、東アジア地域の経済成長に伴う都市・工業化などによって大気汚染物質の放出量が増加し、これらの大気汚染物質が単独でまたは黄砂とともに日本へ輸送されていることが観測されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−233822号公報
【特許文献2】特開2004−053357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の研究により、大気中に含まれる黄砂や汚染物質は健康被害を及ぼすことが知られている。すなわち、大気中に含まれる黄砂や汚染物質が多い日には、越境汚染物質由来で呼吸器症状を引き起こしたり、黄砂成分による喘息を悪化させたり、皮膚症状を訴える者が増加することが報告されている。また、花粉症既往者は、黄砂日には目や鼻の症状が悪化することが知られている。
【0005】
大気中に含まれる黄砂等の飛来物質の成分は飛来経路により異なり、また、大気中に含まれる成分の種類により人体に与える影響も異なる。よって、大気中の飛来物質の飛来状況(種類や量)が把握できれば、例えば、マスクの装着、窓閉め、空気清浄機の活用、外出の回避等の手段をとることができ、飛来物質に由来する症状の発症や悪化を防止することができる。
【0006】
従来、大気中の黄砂等を測定する装置として特許文献1、2に開示のものがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、大気中に含まれる黄砂や汚染物質等の飛来状態を判定できる判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る大気中の物質の飛来状態判定装置は、大気中に飛来する物質を付着させたフィルタの画像情報を取得する取得部と、取得した画像情報から色情報を抽出する色抽出部と、抽出した色情報に基づき、大気中における物質の飛来状態を判定する判定部と、判定部による判定結果に基づき飛来状態を示す情報を表示する表示部とを備える。
【0009】
飛来状態判定装置において、判定部は、抽出した色情報から所定の判定式に基づき算出した値に基づいて、判定を行った日が、大気中の黄砂に関する成分が他の飛来物質の成分に対して比較的多いと考えられる黄砂日であるか否かを判定してもよい。その際、表示部は、黄砂日であることを示す情報を表示してもよい。
【0010】
または、判定部は、抽出した色情報から所定の判定式に基づき算出した値に基づいて、大気中において黄砂及び/または汚染物質が飛来しているか否かを判定してもよい。その際、表示部は、黄砂及び/または汚染物質が飛来していることを示す情報を表示してもよい。
【0011】
上記の大気状態判定装置に使用される本発明に係るフィルタは、大気中の飛来物質の採取用フィルタである。本発明に係る第1のフィルタは、複数の分割された領域を有し、複数の分割領域の少なくとも一部の領域において、特定の物質のみが反応する薬剤が塗布されている。本発明に係る第2のフィルタは、所定の基準色を含むカラーチャートを備える。
【0012】
本発明に係るプログラムは、コンピュータ読み取り可能な、大気中の物質の飛来状態を判定するプログラムである。そのプログラムは、コンピュータに、大気中に飛来する物質を付着させたフィルタの画像情報を取得するステップと、取得した画像情報から色情報を抽出するステップと、抽出した色情報に基づき、大気中における物質の飛来状態を判定するステップと、判定結果に基づき飛来状態を示す情報を表示手段に表示させるステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大気中を飛来する黄砂等を付着したフィルタの色に基づいて、黄砂等の飛来状況を判定し、判定結果に基づき飛来状態を示す情報を表示できる。これにより、使用者は、大気中における黄砂等の飛来状況を容易に認識でき、飛来物質に由来する症状の発症や悪化を防止するための適切な対応をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1、2における大気中の飛来物質の採取装置の構成を示す図
図2】(a)汚染物質が付着していないフィルタの拡大図、(b)汚染物質が付着したフィルタの拡大図
図3】黄砂日/汚染日/きれいな日における、フィルタの画像情報から抽出した色情報(輝度Luminance)の度数分布を示した図
図4】黄砂日/汚染日/きれいな日における、フィルタの画像情報から抽出した色情報(Y値)の度数分布を示した図
図5】黄砂日/汚染日/きれいな日における、フィルタの画像情報から抽出した色情報(C値)の度数分布を示した図
図6】黄砂日/汚染日/きれいな日における、フィルタの画像情報から抽出した色情報(R値)の度数分布を示した図
図7】黄砂日/汚染日/きれいな日における、フィルタの画像情報から抽出した色情報(S値(彩度))の度数分布を示した図
図8】微量飛来日/黄砂日/汚染日における、APC値の度数分布を示した図
図9】APC値に基づく測定日の分類を説明した図
図10】実施形態1、2における大気中の物質の飛来状態を判定する飛来状態判定装置の構成を示す図
図11】カラーチャートとともに撮影されるフィルタを説明した図
図12】実施形態1における飛来状態判定装置による黄砂日判定の動作を示すフローチャート
図13】実施形態1における表示部に表示される判定結果の表示例を示した図
図14】実施形態2における飛来状態判定装置による黄砂等の飛来判定の動作を示すフローチャート
図15】実施形態2における表示部に表示される判定結果の表示例を示した図
図16】その他の実施形態における、飛来状態判定装置による黄砂日判定の別の動作を示すフローチャート
図17】実施形態3における飛来状態判定装置の構成を示す図
図18】その他の実施形態における、飛来物質の採取用のフィルタの種々の変形例を説明した図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明に至った経緯)
本発明の発明者は、白色のフィルタを用いて所定時間(24時間)毎に大気中に含まれる飛来物質を測定(採取)したところ、測定後のフィルタの色が、飛来物質の種類に応じて異なることを発見した。そして、この知見に基づき、発明者は、フィルタの色を分析することで、大気中に含まれる黄砂や汚染物質等の飛来物質の飛来状況(飛来した粒子の成分の種類や量)を判定できると考えた。
【0016】
図1は、飛来物質(黄砂、汚染物質)の測定(採取)に用いた採取装置の構成の概略を示した図である。採取装置50は内部にエアーポンプ51を備え、このエアーポンプ51で気流を発生させ、装置外部から内部へ大気を取り込めるようになっている。その際、取り込まれた外気はフィルタ52を通過する。これにより、大気中に含まれる飛来物質をフィルタ52により採取できる。
【0017】
フィルタ52は白色をした紙フィルタである。図2(a)は採取開始前のフィルタ52の拡大図であり、図2(b)は採取終了後のフィルタ52の拡大図である。図2(b)より、フィルタ52の繊維に種々の飛来物質(汚染物質、黄砂)が付着している様子がわかる。
【0018】
本発明者は、採取したフィルタを画像解析してフィルタの色成分を抽出し、抽出した各色成分の度合いと、飛来状態との関連性を調査した。
【0019】
下記表1は、本発明者が大気中に含まれる飛来物質成分の主成分分析を行った結果を示したものである。ここでは、飛来物質の代表成分濃度の分析(ICP-MS法)を行った後に、統計的にその濃度数値を用いて主成分分析を行った。表1において各数値は各成分の係数(割合)を示す。例えば、土壌成分=0.959×Fe+0.94×Ca+0.93×Mn+0.895×Al・・・と表される。係数が高い成分(Fe, Ca, Mn, Al等)ほど、土壌成分の主成分に貢献していることがわかる。本発明者は、表1の結果を考察し、大気中に含まれる飛来物質の主成分の傾向を、Fe, Ca, Mn, Al, Cr, Ni, Dust(塵埃)のような土壌成分が比較的多く含まれるタイプ1と、Spherical(球状粒子), Pb, Cd, Zn, SO2のような汚染物質の成分が比較的多く含まれるタイプ2と、それ以外のタイプ3の3種類に分類した。
【表1】
【0020】
そして、本発明者は、タイプ1のような主成分の傾向を示す日を「黄砂日」とし、タイプ2のような主成分の傾向を示す日を「汚染日」と分類した。すなわち、「黄砂日」とは、黄砂粒子が他の飛来物質の成分に対して比較的多く飛来していると考えられる日である。例えば、大気の視程(水平方向の見通し)が所定距離(例えば、10km)以下のときに黄砂日と判定される。「汚染日」とは、汚染由来成分が他の飛来物質の成分に対して比較的多く飛来していると考えられる日である。「黄砂日」や「汚染日」以外の、飛来した粒子が比較的少ない日は「きれいな日」とする。
【0021】
本発明者は、2007年〜2011年に採取した279個のフィルタの検体を、色基準を与えるカラーチャートとともに撮影を行い、CMYK、RGB、H(色相)S(彩度)B(明度)値の色情報を正確に記録した。さらに本発明者は、RGB値から下記式を用いて輝度luminanceも求めた。
輝度luminance = ( 0.298912 × R + 0.586611 × G + 0.114478 × B )・・・(1)
【0022】
図3図7は、記録した色情報及び算出した輝度に基づき、黄砂日/汚染日/きれいな日における色成分(輝度、Y,C,R,S)についての度数分布を示した図である。
【0023】
図3〜7を参照し、黄砂や汚染物質が飛んで来ている日において、本発明者は下記の知見を得た。
1)黄砂や汚染物質が飛んで来ている日における各値の傾向
図3を参照し、黄砂日および汚染日には、輝度luminanceは約200以下になっている。
図4を参照し、黄砂日および汚染日には、Y値が約20以上になる。
図5を参照し、C値は、汚染日の方が黄砂日より高い値を示す傾向がある。
図6を参照し、R値は、黄砂日の方が汚染日より高い値を示す傾向にある。
図7を参照し、S値は、黄砂日には高く、汚染日には低くなる傾向にある。
【0024】
なお、大気中において黄砂等の飛来量が多いと、フィルタ52に多くの黄砂等が付着することから、輝度(luminance)の値は低くなる。よって、輝度(luminance)が所定値(例えば200)以下であるときは、所定量以上の黄砂等が飛来していると考えられる。
【0025】
2)黄砂日と汚染日の区別
本発明者は、上述した色情報及び黄砂日/汚染日の分類に基づき、黄砂日と汚染日の区別の判定のために、判別分析の手法を用いて判別関数を求めた。その結果、下記の判定式(黄砂判定式)が得られた。下記の判定式は、色情報に基づく大気中の飛来物質の飛来状態の指標としてAPC(Air Pollution Color)値を求める。
APC = 0.871 × C - 0.551 × M+0.463×Y - 0.289×H+0.175×S
+ 0.325 × Bright+0.265 × Luminance - 90.656 …(2)
【0026】
図8に、微量飛来日/黄砂日/汚染日におけるAPC値の度数分布を示す。図8から、黄砂日のときは、APC値は正の領域に分布し、汚染日のときは、APC値は負の領域に分布していることが分かる。このことから、APC値に基づき黄砂日と汚染日を区別できることが分かる。
【0027】
図9は、APC値に基づく分類を示した図である。図9において、横軸はAPC値であり、縦軸は、そのAPC値を有する観測日の度数を示す。APC値が正の値の時は黄砂日と判定し(APC値の絶対値が大きいとき明らかな黄砂日)、APC値が負の値の時は、汚染日(APC値の絶対値が大きいとき明らかな汚染日)と判定している。APC値が0付近となる観測日では、黄砂日または汚染日よりは、飛来物質の量は少ないが、自覚症状を上昇させるには十分な量の飛来物質が観測される。よって、APC値が0付近となる場合でも、黄砂日または汚染日のいずれかであると判定することは、使用者に、症状の悪化を防止する対策の要否の判断基準を提供することになり有用である。
【0028】
なお、本発明者は、フィルタによる飛来物質の採取を鳥取にて行った。鳥取は工業地帯がほとんどないため、フィルタの高濃度汚染は越境由来の黄砂、汚染物質と見なすことが可能である(図9におけるグループ(1)、(4))。図9におけるグループ(2)、(3)は、地元の土壌の舞い上がり、地元の車の排気ガス等の汚染が考えられるが、このような日でも自覚症状の悪化は観察される。
【0029】
以上の知見に基づき、本発明者は、大気中の飛来物質を採取したフィルタの色に基づき、大気中における黄砂や汚染物質等の飛来物質の飛来状態を判定する方法を考案した。
【0030】
(実施の形態1)
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態である大気中の物質の飛来状態判定装置(以下「飛来状態判定装置」という)を説明する。
【0031】
1.飛来状態判定装置の構成
図10は、本発明に係る大気状態判定装置の一実施形態の構成を示した図である。本実施形態の飛来状態判定装置1は、大気中の飛来物質を採取したフィルタの色に基づき、判定した日が黄砂日であるか汚染日であるかを判別する装置である。
【0032】
飛来状態判定装置1は、その全体動作を制御するコントローラ11と、画面表示を行う表示部17と、ユーザが操作を行う操作部19と、データやプログラムを記憶するデータ格納部21とを備える。
【0033】
コントローラ11はCPUやMPUで構成されることができ、所定の制御プログラムを実行することにより、後述する汚染日/黄砂日の判定機能を実現する。コントローラ11はソフトウェアと協働して所定の機能を実現してもよいし、ハードウェアのみで所定の機能を実現してもよい。
【0034】
表示部17は、液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ等で構成される。操作部19は、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成される。
【0035】
データ格納部21は画像情報や制御プログラムを格納する記録媒体であり、ハードディスク(HDD)、半導体メモリ、光ディスク等の記録媒体で構成することができる。データ格納部21は、コントローラ11で実行される制御プログラム、制御に必要なパラメータ、画像情報等、種々の情報を格納する。
【0036】
さらに、飛来状態判定装置1は、外部機器やインターネット等のネットワークと接続するためのインタフェース25a、25bを含む。インタフェース25a、25bは例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High Definition Multimedia Interface)、LAN、IEEE1394等のインタフェース規格、PCIやISA等のバスインタフェース、等に準拠した通信を行う。飛来状態判定装置1はさらに、3G回線やLTE(Long Term Evolution)規格にしたがった通信インタフェースを有してもよく、それらの通信インタフェースを介して、インターネット等のネットワークに接続してもよい。
【0037】
飛来状態判定装置1は、画像を撮影する撮像装置31と接続される。撮像装置31は、レンズを含む光学系、CCD等の画像センサ及び制御回路を含む。撮像装置31は、光学系を介して入射した被写体像を画像センサにより撮影して画像情報を生成する。撮像装置31は、生成した画像情報を内部の記録媒体(HDDやメモリカード等)に保持してもよいし、外部に出力してもよい。撮像装置31の全体動作は制御回路により制御される。撮像装置31により撮像された画像情報は飛来状態判定装置1に送信される。
【0038】
2.飛来状態判定装置の動作
飛来状態判定装置1の動作を説明する。飛来状態判定装置1は、大気中の飛来物質が付着したフィルタ52を用いて、黄砂日/汚染日の判定を行う。最初に、フィルタ52による大気中の飛来物質の採取について説明する。
【0039】
フィルタ52による大気中の飛来物質の採取は、図1に示す採取装置50を用いて行われる。具体的には、採取装置50内にフィルタ52を設置し、エアーポンプ51を作動させる。これにより、採取装置50内に気流を発生させて、装置外部から大気を取り込み、取り込んだ大気をフィルタ52を通過させる。これにより大気中に含まれる飛来物質がフィルタ52に付着する。この付着した飛来物質の成分や量に応じて、フィルタ52の色が変化する。本実施形態では、フィルタ52を所定時間毎に交換する。すなわち、所定時間毎に飛来物質を採取(測定)している。所定時間は、飛来物質の採取が可能な適切な一定の時間(例えば、1時間〜24時間)に設定される。
【0040】
以上のようにして飛来物質を付着させた(採取した)フィルタ52が得られると、次に、そのフィルタ52を撮像装置31で撮像し、フィルタ52の画像情報を得る。その際、撮像装置31において、同じ撮像条件(絞り、シャッタスピード、ISO感度、光源等)でフィルタ52の画像を撮像することが好ましい。また、フィルタ52は、図11に示すように、基準となる色情報を提供するカラーチャート20とともに撮像する。カラーチャート20は基準となる複数の色を含んでいる。このカラーチャート20の色情報を用いることにより、フィルタ52の色の補正が可能となる。そして、撮像装置31で得られた画像情報を用いて、飛来状態判定装置1により黄砂日の判定動作が実行される。
【0041】
図12のフローチャートを用いて飛来状態判定装置1の動作を説明する。飛来状態判定装置1のコントローラ11は、まず、撮像装置31から、カラーチャート20とフィルタ52を含む画像の画像情報を取得する(S11)。
【0042】
コントローラ11は、取得した画像情報の色を分析し、フィルタ52の画像に含まれる色情報を取得する。すなわち、コントローラ11は、フィルタ52の画像の情報から、RGB、CMYK、HSBに関する色情報を取得する。この際、カラーチャート20に含まれる色の色情報を基準としてフィルタ52の色の色補正を行う。これにより、撮影条件が異なった場合であっても、同じ基準で色情報の取得が可能となる。
【0043】
コントローラ11は、取得した色情報から前述の判定式(2)を用いてAPC値を算出する(S13)。
APC = 0.871 × C - 0.551 × M+0.463×Y - 0.289×H+0.175×S
+ 0.325 × Bright+0.265 × Luminance - 90.656 …(2)
【0044】
コントローラ11は、算出したAPC値に基づき観測日が黄砂日か汚染日かを判定する(S14)。具体的には、コントローラ11は、APC値が正の場合は黄砂日であると判定し(S15)、負の場合は汚染日であると判定する(S16)。コントローラ11は、その判定結果を示す情報を表示部17に表示する(S17)。その際、同時に、黄砂または汚染物質の量を示す情報を表示部17に併せて表示してもよい。黄砂または汚染物質の量は、APC値の絶対値に比例して求めることができる。
【0045】
図13に、表示部17における判定結果の表示例を示す。図13では、黄砂日である旨の判定結果21が表示されており、併せて、飛来した黄砂の量もバー形式23で表示されている。なお、飛来した黄砂の量の表示(バーの長さ)はAPC値の値に応じて変化させる。使用者は、このような表示を参照することで、容易に黄砂日か汚染日かを認識でき、飛来物質に起因する症状を予防するための適切な対策をとることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、APC値の符号に応じて、黄砂日か汚染日かのいずれかに判定した。前述のように、APC値が0付近となる観測日でも、自覚症状を上昇させるには十分な量の飛来物質が観測されるため、黄砂日または汚染日のいずれかであると判定することは、使用者に、症状の悪化を防止する対策の要否の判断基準を提供することができ、有意義である。
【0047】
3.まとめ
以上のように、本実施形態の飛来状態判定装置1は、測定日において大気中に飛来する物質を付着させたフィルタ52の画像情報を取得するインタフェース25bと、取得した画像情報から色情報を抽出し、抽出した色情報に基づき、大気中に含まれる物質の飛来状況を判定するコントローラ11と、判定結果に基づき飛来状況を示す情報を表示する表示部17とを備える。この構成により、フィルタ52の色に基づいて、大気中に含まれる物質の飛来状況を判定できる。例えば、本実施形態では、色情報から所定の判定式(2)に基づき算出したAPC値に基づいて、判定した日が、黄砂に関する成分が他の成分に対して比較的多く飛来していると考えられる黄砂日か否かを判定する。これにより、判定した日が黄砂日であるか汚染日であるかを警告することができる。使用者は、警告を参照して飛来物質に起因する症状を予防するための適切な対策をとることができる。
【0048】
(実施の形態2)
実施の形態1では、APC値に基づき黄砂日か汚染日かの判定を行った。本実施形態では、黄砂等が飛来しているか否かの判定を行う、飛来状態判定装置の別の例を開示する。なお、黄砂等が「飛来している」とは、飛来物質に起因する症状が発症または悪化することが予想される程度の量の飛来を意味する。
【0049】
本実施形態の飛来状態判定装置の構成は実施の形態1と同様であり、図1に示すとおりであるので、ここでの詳細な説明は省略する。図14のフローチャートを参照して、本実施形態の飛来状態判定装置の動作を説明する。
【0050】
飛来状態判定装置1のコントローラ11は、まず、撮像装置31から、カラーチャート20とフィルタ52を含む画像の画像情報を取得する(S21)。
【0051】
コントローラ11は、取得した画像情報の色を分析し、フィルタ52の画像に含まれる色情報を取得する。すなわち、コントローラ11は、フィルタ52の画像の情報から、RGB、CMYK、HSBに関する色情報を取得する。この際、カラーチャート20に含まれる色の色情報を基準としてフィルタ52の色の色補正を行う。
【0052】
コントローラ11は、取得した色情報から前述の式(1)を用いて輝度(luminance)を算出する(S23)。
輝度luminance = ( 0.298912 × R + 0.586611 × G + 0.114478 × B ) ・・・(1)
【0053】
コントローラ11は、算出した輝度(luminance)値及びY値に基づき観測日での粒子の飛来状況を判定する(S24)。具体的には、コントローラ11は、輝度(luminance)値が第1の所定値(例えば200)以下であり、かつ、Y値が第2の所定値(例えば20)以上であるか否かを判定する(S24)。輝度(luminance)値が第1の所定値以下であり、かつ、Y値が第2の所定値以上である場合、黄砂等が飛来していると判定する(S25)。そうでない場合(S24でNO)、コントローラ11は、黄砂等が飛来していないと判定する(S26)。そして、コントローラ11は、その判定結果を示す情報を表示部17に表示する(S27)。その際、同時に、飛来物質の量を示す情報を表示部17に併せて表示してもよい。黄砂または汚染物質の飛来量は輝度(luminance)値の大きさに基づき求めることができる。
【0054】
図15に、表示部17に表示される判定結果の表示例を示す。図15の例では、飛来した粒子の量もバー形式23bで表示されている。使用者は、このような表示を参照することで、大気中に飛来する黄砂等が多いか否かを容易に認識でき、飛来物質による症状を予防するための適切な対策をとることができる。
【0055】
本実施形態では、ステップS24において、輝度(luminance)値およびY値の双方に基づいて、黄砂等が所定量より多く飛来しているか否かの判定を行ったが、輝度(luminance)値及びY値のいずれか一方に基づいて同様の判定を行っても良い。
【0056】
以上のように、本実施形態では、色情報から所定の判定式(1)に基づき算出した輝度(luminance)値に基づいて、黄砂や汚染物質が飛来しているか否かを判定する。このため、黄砂や汚染物質が飛来しているおそれがある場合に使用者に警告することができる。
【0057】
(実施の形態3)
本実施形態では、飛来物質の採取と飛来状態の判定とを1つの装置で行うことを可能とする飛来状態判定装置の構成例を説明する。図17に、本実施形態の飛来判定装置の構成を示す。本実施形態の飛来状態判定装置1bは、大気中の飛来物質の状態等を判定する飛来状態判定部10と、撮像装置31と、空気流を生成するファン71と、ファン71を駆動するファン駆動部73とを備える。
【0058】
飛来状態判定部10は、前述の実施の形態で示した飛来判定装置1と同様の構成を有し、同様の機能を実現する。
【0059】
飛来状態判定装置1bはケース80内に各構成要素10、31、…を収納している。ケース80には、大気を装置100内に取り込むための吸気口81と、取り込んだ大気を装置100の外に排出するための排出口83とが設けられている。さらに、飛来状態判定装置100は、フィルタ52を保持するための保持部85を有している。
【0060】
以上の構成を有する本実施形態の飛来状態判定装置1bの動作を以下に説明する。ファン駆動部73により駆動されたファン71は、装置1b内に気流を生じさせる。この気流によって、吸気口81を介して装置1bの外部から内部へ大気が取り込まれる。取り込まれた大気は保持部85に保持されたフィルタ52を通過し、排出口83から装置1bの外部へ排出される。大気がフィルタ52を通過することで、フィルタ52に大気中に含まれる汚染物質等が付着する。
【0061】
撮像装置31は光源を備え、光源から照明光をフィルタに照射し、フィルタ52表面の画像を撮影する。撮像装置31は、撮影した画像情報を飛来状態判定部10に送信する。飛来状態判定部10は、前述の実施の形態で示した判定処理を実施し、判定結果が表示部17に表示される。
【0062】
以上のように、本実施形態の飛来状態判定装置1bは、吸気口81から大気をケース80内に取り込むための空気流を生成するファン71と、大気に含まれる物質を付着させるフィルタ52を保持する保持部85と、フィルタ52の表面の画像を撮影し、画像情報を生成する撮像装置31とを備える。この構成によって、実施の形態1では、飛物質の測定(採取)と飛来状態の判定とを別々の装置で行っていたが、本実施形態の飛来状態判定装置1bでは、それらの処理を1つの装置で行うことが可能となる。このような飛来状態判定装置の構成を、例えば、空気清浄機や空気調和機など、空気を循環させる機能を有する電気機器に組み込むことができる。この場合、空気清浄機や空気調和機は、飛来状態の判定結果にしたがい、それらの機器の機能(空気清浄機能、温度制御機能等)を制御してもよい。
【0063】
(他の実施形態)
上記の実施の形態は、本発明を実現するための構成の例示である。本発明の思想は上記の実施の形態に限定されるものではなく、他の実施形態に対しても適用可能である。以下の本発明の思想が適用可能な他の実施形態の例を示す。
【0064】
(1)実施の形態1、2では、飛来状態判定装置1、1bは、外部の撮像装置31からフィルタ52の画像情報を取得した。しかし、飛来状態判定装置1、1b自体が撮像手段を備えてもよく、撮像手段により、飛来状態判定装置1内部で、判定のためのフィルタ52の画像情報を生成しても良い。
(2)実施の形態1では、APC値に基づき黄砂日か汚染日かの二択の判定を行った(S13〜S16)。しかしながら、黄砂日/汚染日/きれいな日の三択の判定を行うようにしてもよい。
【0065】
例えば、APC値の絶対値が所定値より小さい範囲内にあるときは、黄砂日及び汚染日のいずれにも該当しない日(きれいな日)であると判定するようにしてもよい。この所定値は、実際の大気の状況と健康被害の発症状況との関係を考慮して決定する。
【0066】
または、APC値による判定(S14)を行う前に、まず輝度luminanceの値に基づき、APC値による判定を行うか否かを決定してもよい。すなわち、飛来物質の濃度が高い日は輝度luminanceが所定値(約200)以下になるという知見(図3参照)に基づき、輝度luminanceを所定値と比較し、その比較結果に基づきAPC値による判定を行うか否かを決定してもよい。例えば、図16のフローチャートに示すように、輝度luminanceを所定値と比較し(S12b)、輝度が所定値より大きいときは、きれいな日であると判定する(S15b)。一方、輝度が所定値以下のときは、APC値に基づく黄砂日か汚染日の判定(S13〜S16)を行うようにしてもよい。
【0067】
(3)上記の実施の形態では、輝度(Luminance)値, C値、M値、Y値, H値、S値、Bright値の各値を用いてAPC値を算出した。しかし、APC値の算出において、必ずしもそれらのパラメータの全てを用いる必要はない。APC値の算出においては、少なくとも、輝度(Luminance)値、C値、Y値、S値を用いればよい。
【0068】
(4)上記の実施の形態では、大気中の飛来物質を採取するためのフィルタ52の材質は紙としたが、これに限定されない。大気中を飛来する物質が付着し、付着した成分に応じて色が変化する材料であれば、紙に限定されず、任意の材質でフィルタを作製することができる。
【0069】
(5)図18は、フィルタ52の変形例を示した図である。図18(a)のフィルタ52bは複数の領域を有する。各領域には、それぞれ固有の元素、ウイルス、物質に反応して発色するように薬剤が塗布されている。例えば、領域53には、Mnと反応して化学反応を起こし、紫に変色する薬剤が塗布されている。他の領域にも、各領域固有の物質(イオン、重金属等)に反応し、変色する薬剤が塗布されている。このようなフィルタ52bを用いた場合、コントローラ11が画像解析によって、各領域について、領域毎に定まる所定の色(化学反応により定まる色)を抽出して、その輝度を抽出することで、大気中に含まれる物質の種類、量を測定することができる。
【0070】
また、図18(b)に示すように、予めフィルタにカラーチャート20bを印刷しておいてもよい。このようなフィルタ52cを用いることで、撮像装置31によるフィルタの撮影時においてカラーフィルタを準備する手間が省略でき、使用者の利便性を向上できる。
【0071】
(6)表示部17に表示される飛来状況を示す情報は図13図15に示す情報に限定されず、種々の情報が考えられる。例えば、黄砂や汚染物質の量を示す情報や、健康へ与える悪影響の程度を示す情報でもよい。情報の種類やテキストや画像情報いずれでもよい。
【0072】
また、APC値に対する閾値を複数設け、「黄砂日」または「汚染日」と判定された場合に、表示させるメッセージをAPC値に応じて異ならせるようにしても良い。例えば、「黄砂」または「汚染物質」に対して、「非常に多い」、「やや多い」、「感受性の高い人は要注意」、「普通」、「ほどほど」等のメッセージをAPC値に応じて切り替えて表示させてもよい。
【0073】
(7)フィルタに付着する物質には、黄砂のみならず、大気中に含まれる種々の物質が含まれる。例えば、汚染物質、ウイルス、花粉、ハウスダスト、微生物等が含まれる。それぞれの物質(黄砂、汚染物質、ウイルス、花粉、ハウスダスト、微生物等)を判定対象とする場合、各物質に応じた色情報の特性を事前に測定して、その特性に基づき、判定に用いる計算式、係数、閾値等を設定しておくことで、大気中に含まれる種々の物質の判定が可能となる。このとき、汚染物質、ウイルス、花粉、ハウスダスト、微生物等の各物質に反応して色が変化する薬剤を塗布したフィルタを用いても良い。
【0074】
(8)上記の実施の形態において、飛来状態判定装置の機能を実現するためにコントローラ11が実行する制御プログラム(アプリケーション)は、ネットワークを介したダウンロードにより、又はCD−ROM等の記録媒体により、飛来状態判定装置1に提供されることができる。
【0075】
(9)上記の実施の形態において、飛来状態判定装置は、大気中の飛来物質の状態を判定するための専用の装置として構成することもできるし、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータやスマートフォンのような種々の汎用の情報処理装置で構成することもできる。または、飛来状態判定装置の機能を空気清浄機や空気調和機、サーキュレータのような空気を循環させる装置に組み込んでも良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18