(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例1】
【0011】
図1に示すように、実施例1の流体温度調整装置40は、熱交換器10と、温調器20と、貯留部22と、温度センサ24と、流量センサ26を備えている。流体温度調整装置40は、流体噴射装置30に接続され、流体噴射装置30から噴射される高圧の流体の流量を計測する。流体噴射装置30から噴射される流体の流量及び温度は周期的に変動する。流体噴射装置30から噴射される流体の圧力が高くなると、流体噴射装置30から噴射される単位時間当たりの流量が多くなる。流体噴射装置30は、噴射される流体の圧力を調整することで、噴射する流体の単位時間当たりの流量を調整する。流体噴射装置30としては、例えば、内燃機関(例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ロータリーエンジン等)に燃料を供給するインジェクタ等がある。
【0012】
熱交換器10は、流体噴射装置30と温調器20に接続されている。熱交換器10は、2重管式の熱交換器であり、内側に設けられた内側流路12と、内側流路12の外側に設けられた外側流路14を備えている。内側流路12の一端(
図1の左端)には流体噴射装置30が接続され、内側流路12の他端(
図1の右端)には貯留部22が接続される。流体噴射装置30から噴射される流体は、内側流路12の一端(
図1の左端)から他端(
図1の右端)に向かって流れる。一方、外側流路14の両端には温調器20が接続される。温調器20から供給される熱媒体は、外側流路14の他端(
図1の右端)の入口16より一端(
図1の左端)の出口18に向かって流れ、温調器20に戻るようになっている。したがって、流体噴射装置30から噴射される流体と温調器20から供給される熱媒体は、熱交換器10内を対向して流れる。これによって、流体噴射装置30から噴射される流体と温調器20から供給される熱媒体との熱交換効率が高められている。
【0013】
温調器20は、熱交換器10に接続され、熱交換器10と温調器20との間で循環する熱媒体の温度を調整する。温調器20には、温度センサ24が接続され、温度センサ24で検出された検出結果が入力される。温調器20は、温度センサ24から入力される検出結果に基づいて、熱交換器10に供給する熱媒体の流量及び/又は温度を制御する。これによって、貯留部22から流出する流体の温度を所望の温度に調整することができる。なお、温調器20には、公知の液温調整器(例えば、宏和工業株式会社製のリキッドチューナー等)を用いることができる。
【0014】
貯留部22(例えば、バッファタンク等)は、熱交換器10の内側流路12の他端(
図1の右端)に接続される。このため、貯留部22には、熱交換器10からの流体が流入する。貯留部22内に流入した流体は、貯留部22内で一時的に貯留される。流体噴射装置30は周期的に流体を噴射するため、貯留部22には熱交換器10からの流体が周期的に流入し、熱交換器10から流体が流入する分だけ貯留部22内に貯留されている流体が下流側に流れる。なお、貯留部22の容量は、流体噴射装置30から噴射される1周期分の流体の流量以上となることが好ましい。このような容量を貯留部22が有することで、熱交換器10から流入する流体が貯留部22内に留まることなく下流側に流出することを防止することができる。また、貯留部22から流出する流体の温度をより均一化することができる。
【0015】
貯留部22の下流側には、温度センサ24と流量センサ26が配されている。温度センサ24は、貯留部22から流出する流体の温度を検出する。温度センサ24で検出された流体の温度は温調器20に入力される。流量センサ26は、貯留部22から流出する流体の流量を検出する。
【0016】
上述した流体温度調整装置40の作用を説明する。流体噴射装置30から噴射される流体は、熱交換器10の内側流路12に流入する。熱交換器10の外側流路14には、温調器20で温度が調整された熱媒体が流入する。このため、熱交換器10では、流体噴射装置30から噴射される流体と熱媒体との間で熱交換が行われる。熱交換器10から流出する流体は、貯留部22に流入する。貯留部22は、流体噴射装置30から噴射される1周期分の流体流量より大きな容量を有している。このため、貯留部22内に流入した流体の温度の均一化が促進される。貯留部22から流出する流体は、温度センサ24でその温度が検出されると共に、流量センサ26によってその流量が検出される。なお、温度センサ24で検出された温度は、温調器20に入力される。温調器20は、温度センサ24から入力される温度に基づいて、熱交換器10に供給する熱媒体の温度及び/又は流量を調整する。これによって、貯留部22から流出される流体の温度が所望の温度に調整される。
【0017】
上述した説明から明らかなように、流体温度調整装置40においては、流体噴射装置30から噴射される流体は熱交換器10で熱交換が行われた後、貯留部22内で一時的に貯留される。これによって、貯留部22内の流体の温度の均一化が図られる。そして、貯留部22で温度の均一化が図られた流体に対して、温度センサ24と流量センサ26によって、その温度と流量が測定される。したがって、流体温度調整装置40によれば、流体噴射装置30から噴射される流体の流量を精度良く測定することができる。
【0018】
(実験例1) 上述した流体温度調整装置40を用いて行った実験について説明する。表1に示すように、実験例1では、流体噴射装置30から噴射される流体流量を0.6L/分、噴射される流体の温度を80℃、温調器20から供給される熱媒体の温度を6.0℃、貯留部22の容量を約170ccに設定した。なお、貯留部22の容量の170ccは、流体流量を1.0L/minとしたときに流体噴射装置30から噴射される1周期分の流体の流量である。このため、実験例1では、貯留部22は、流体噴射装置30から噴射される1周期分の流体の流量よりも大きな容量を有している。
【0019】
【表1】
【0020】
上記の設定条件で流体温度調整装置40を作動させ、流体温度調整装置40に設定した複数の測定点において流体又は熱媒体の温度を測定した。具体的には、熱交換器10の入口、熱交換器10の出口及び貯留部22の出口で流体の温度を測定し、温調器20の出口と入口で熱媒体の温度を測定した。なお、実験時に流体噴射装置30から噴射される流体の吐出周波数等の実測値は表2に示す通りであった。
【0021】
【表2】
【0022】
図2は、各測定点における流体又は熱媒体の温度の経時変化を示す。また、表3は、各測定点における温度変動の分析結果を示す。
図2及び表3から明らかなように、熱交換器10の入口では48.6℃あった温度変動幅が、熱交換器10の出口では0.7℃の温度変動幅となった。したがって、流体温度調整装置40によって流体の温度が均一にできることが確認された。また、流体噴射装置30から噴射される流体流量が少ない場合は、熱交換器10のみで十分に温度変動幅を小さくできることが分かった。
【0023】
【表3】
【0024】
(実験例2) 実験例2は、設定条件を変更しただけで、その他は実験例1と同様に行った。なお、以下の実験例においても、設定条件のみを変更している。表4に設定条件を示し、表5に実測値を示す。なお、実験例2では、流体噴射装置30から噴射される流体流量が1.0L/minであるため、貯留部22は、流体噴射装置30から噴射される1周期分の流体の流量と略同一の容量を有している。
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
図3は、各測定点における流体又は熱媒体の温度の経時変化を示す。また、表6は、各測定点における温度変動の分析結果を示す。
図3及び表6から明らかなように、熱交換器10の入口では50.5℃あった温度変動幅が、熱交換器10の出口では9.6℃の温度変動幅となり、貯留部22の出口では0.8℃の温度変動幅となった。したがって、熱交換器10と貯留部22を用いることで、流体の温度を均一にできることが確認された。
【0028】
【表6】
【0029】
(実験例3) 実験例3の設定条件を表7に示し、実測値を表8に示す。なお、貯留部22の容量である500ccは、流体流量を1.0L/minとしたときに流体噴射装置30から噴射される約3周期分の流体の流量である。
【0030】
【表7】
【0031】
【表8】
【0032】
図4は、各測定点における流体又は熱媒体の温度の経時変化を示す。また、表9は、各測定点における温度変動の分析結果を示す。
図4及び表9から明らかなように、熱交換器10の入口では50.5℃あった温度変動幅が、熱交換器10の出口では1.0℃の温度変動幅となった。したがって、熱交換器10のみで十分に温度変動幅を小さくすることができた。
【0033】
【表9】
【0034】
(実験例4) 実験例4の設定条件を表10に示し、実測値を表11に示す。
【0035】
【表10】
【0036】
【表11】
【0037】
図5は、各測定点における流体又は熱媒体の温度の経時変化を示す。また、表12は、各測定点における温度変動の分析結果を示す。
図5及び表12から明らかなように、熱交換器10の入口では51.0℃あった温度変動幅が、熱交換器10の出口では9.9℃の温度変動幅となり、貯留部22の出口では0.8℃の温度変動幅となった。したがって、熱交換器10と貯留部22を用いることで、流体の温度を均一にできることが確認された。
【0038】
【表12】
【0039】
(実験例5) 実験例5の設定条件を表13に示し、実測値を表14に示す。なお、貯留部22の容量である830ccは、流体流量を1.0L/minとしたときに流体噴射装置30から噴射される約5周期分の流体の流量である。
【0040】
【表13】
【0041】
【表14】
【0042】
図6は、各測定点における流体又は熱媒体の温度の経時変化を示す。また、表15は、各測定点における温度変動の分析結果を示す。
図6及び表15から明らかなように、熱交換器10の入口では50.5℃あった温度変動幅が、熱交換器10の出口では1.0℃の温度変動幅となった。したがって、熱交換器10のみで十分に温度変動幅を小さくできることができた。
【0043】
【表15】
【0044】
(実験例6) 実験例6の設定条件を表16に示し、実測値を表17に示す。
【0045】
【表16】
【0046】
【表17】
【0047】
図7は、各測定点における流体又は熱媒体の温度の経時変化を示す。また、表18は、各測定点における温度変動の分析結果を示す。
図7及び表18から明らかなように、熱交換器10の入口では50.7℃あった温度変動幅が、熱交換器10の出口では8.0℃の温度変動幅となり、貯留部22の出口では1.4℃の温度変動幅となった。したがって、熱交換器10と貯留部22を用いることで、流体の温度を均一にできることが確認された。
【0048】
【表18】
【0049】
上述した各実験例から明らかなように、流体噴射装置30から噴射される流体の流量が少ないときは、熱交換器10のみで流体の温度変動幅を十分に小さくすることができる。一方、流体噴射装置30から噴射される流体の流量が多くなると、熱交換器10と貯留部22を組合せることで、その温度変動幅を十分に小さくすることができる。特に、貯留部22は、流体噴射装置30から噴射される1周期分の流量以上の容量を有するため、流体の温度を効果的に均一化することができる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上述した実施例では、2重管式の熱交換器を用いたが、このような例に限られず、公知の種々の形式の熱交換器を用いることができる。また、上述した実施例では、流体噴射装置30から噴射される高温の流体を、温調器20から供給される低温の熱媒体で冷却する例であったが、これとは逆に、流体噴射装置30から噴射される低温の流体を、温調器20から供給される高温の熱媒体で加熱するようにしてもよい。また、上述した実施例では、熱交換器10の下流側に貯留部22を設けていたが、熱交換器の上流側(すなわち、流体噴射装置と熱交換器の間)に貯留部を設けてもよい。熱交換器の上流側に貯留部を設けても、流体噴射装置から供給される流体の温度を均一化することができる。
【0051】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。