(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原色バックライトを有する表示装置は、通常、バックライト各色の光出力を変化させることで白点の色度調節を行う。このような原色バックライトを有する表示装置では、広い色域が得られる反面、バックライトによる色度調節範囲を拡大した際、表示色域が変動したり、縮小したりする課題がある。
図9は、バックライト白点色度設定による色域変化の例を表す図である。この図に示すように、白点の設定によっては、色域が異なる。
【0006】
この課題は、バックライト各色の駆動レベル差が大きい白点設定時に顕著である。また、駆動レベルを一定に維持していた場合でも,温度変化や経年劣化に伴うバックライトの色度シフトが生じるため、表示色域の変動や縮小が発生する。
【0007】
また、この課題は原色バックライト固有の課題である。従来の一般的な表示装置、すなわち白色バックライトを持つ表示装置では、表示色域は白色設定に依存しない表示装置固有値であった。
上述の課題は、カラーマッチング精度低下など画質劣化を招くが、表示パネル面で発生しているため(表示装置内部の)バックライトセンサでは検出できない。そこで予めバックライト色度の調節範囲を狭めておく必要がある。
すなわち、白点色度の自由度と、表示精度(色域安定)の両立は困難であった。
【0008】
一方、上述の特許文献1では、クロストークを考慮したものであるが、表示装置の測定に基づき当該変換行列の係数を算出するための具体的な手順について開示されていない。
また、バックライトと、サブ画素カラーフィルタの波長分布に関わるデータとを、表示パネルからパソコンに伝達しなければ、クロストーク補正処理等の波長分布に関わる信号処理を行うことはできない(特許文献1段落0086参照)。
このように、引用文献1では、分光測定機を用いた表示装置の波長分布測定または演算が必要となる。しかし分光測定機は、一般に高価・低速度であり、実用製品に適用するのは困難である。
【0009】
そこで、本願発明は、簡易な構成で、色度補正を行うことができる表示装置、表示方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の問題を解決するために、異なる原色のバックライトが複数設けられ、当該バックライトによって液晶パネルを表示背面から照射してカラー画像を表示する表示装置であって、前記原色バックライトのそれぞれの色のバックライトを個別に制御して駆動させる駆動部と、目標とする色域を表す情報である目標色域を記憶する目標色域記憶部と、バックライトの白点色度を検出する検出部と、前記白点色度に基づいて、表示装置の色域を推定する推定部
であって、各バックライトの色毎に各色画素を透過する光量を計算し、透過したバックライト光量を色画素ごとに合計し、合計された光量の比であって、透過対象の色の画素を透過するそれぞれの原色の光の量の比である光量の比を元に画素の色度を推定することで、前記色域を推定する推定部と、前記推定された色域と、前記目標色域とを比較して映像信号を補正する色補正部と、前記色補正部から出力される映像信号に基づいて画像を表示する表示部と、を有
し、前記複数の原色には、第1の原色と、第2の原色と、第3の原色とが含まれ、前記推定部は、前記第1の原色の画素を透過した前記第1の原色の光量と、前記第1の原色の画素を透過した前記第2の原色の光量と、前記第1の原色の画素を透過した前記第3の原色の光量との比に基づいて、前記第1の原色の画素を透過する光の色度を推定し、前記第2の原色の画素を透過した前記第1の原色の光量と、前記第2の原色の画素を透過した前記第2の原色の光量と、前記第2の原色の画素を透過した前記第3の原色の光量との比に基づいて、前記第2の原色の画素を透過する光の色度を推定し、前記第3の原色の画素を透過した前記第1の原色の光量と、前記第3の原色の画素を透過した前記第2の原色の光量と、前記第3の原色の画素を透過した前記第3の原色の光量との比に基づいて、前記第3の原色の画素を透過する光の色度を推定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、異なる原色のバックライトが複数設けられ、当該バックライトによって液晶パネルを表示背面から照射してカラー画像を表示する表示装置における表示方法であって、前記原色
のバックライトのそれぞれの色のバックライトを個別に制御して駆動させ、バックライトの白点色度を検出し、前記白点色度に基づいて、表示装置の色域を推定
する推定過程であって、各バックライトの色毎に各色画素を透過する光量を計算し、透過したバックライト光量を色画素ごとに合計し、合計された光量の比であって、透過対象の色の画素を透過するそれぞれの原色の光の量の比である光量の比を元に画素の色度を推定することで、前記色域を推定する推定過程を実行し、前記推定された色域と、目標とする色域を表す情報である目標色域とを比較して映像信号を補正し、前記補正された映像信号に基づいて画像を表示
し、前記複数の原色には、第1の原色と、第2の原色と、第3の原色とが含まれ、前記推定過程では、前記第1の原色の画素を透過した前記第1の原色の光量と、前記第1の原色の画素を透過した前記第2の原色の光量と、前記第1の原色の画素を透過した前記第3の原色の光量との比に基づいて、前記第1の原色の画素を透過する光の色度を推定し、前記第2の原色の画素を透過した前記第1の原色の光量と、前記第2の原色の画素を透過した前記第2の原色の光量と、前記第2の原色の画素を透過した前記第3の原色の光量との比に基づいて、前記第2の原色の画素を透過する光の色度を推定し、前記第3の原色の画素を透過した前記第1の原色の光量と、前記第3の原色の画素を透過した前記第2の原色の光量と、前記第3の原色の画素を透過した前記第3の原色の光量との比に基づいて、前記第3の原色の画素を透過する光の色度を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、簡易な構成で、色域に基づく色度補正を行うことができる。また、この発明によれば、原色バックライトを持つ表示装置において、バックライト色度変化時に発生する液晶パネルの色域変動を、映像信号を補正して抑制し、色表示精度を改善することができ、広範な白点設定と高い色域安定性を両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明における表示装置について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明における表示装置1の機能を表す概略ブロック図である。
この図において、表示装置1は、異なる原色のバックライトが複数設けられ、当該バックライトによって液晶パネルを表示背面から照射してカラー画像を表示する。
【0015】
ここで、バックライト白点に対する色域変動の原因は、カラーフィルタ特性(
図2)と、表示装置の画素構造(
図3;1画素分の断面図)に起因する。詳細は以下に述べる。
図2は、カラーフィルタ特性の一例を表す図である。縦軸は光透過率であり、横軸は波長である。この図において、符号201は、波長が青色である光の透過率を表し、符号202は、波長が緑色である光の透過率を表し、符号203は、波長が赤色である光の透過率を表す。ここで、各色(青色、緑色、赤色)は、それぞれ透過させる対象の色のみが透過することが望ましいが、必ずしも透過対象の色のみではなく、他の色の一部が透過する。
【0016】
図3は、液晶パネルの1画素分の断面を表す図である。この図に示すように、背面板300に設けられた赤色バックライト301、緑色バックライト302、青色バックライト303の各光源(LED)から出射された光が、光学拡散板304及びTFT(薄膜トランジスタ)素子を透過した光が液晶パネルを背面から照明する。また、この図においては、白色を表示する場合が図示されており、赤色画素305、緑色画素306、青色画素307を透過した光は、それぞれ同じ量である。ここでは、1画素に対し、赤色バックライト301、緑色バックライト302、青色バックライト303が1組設けられ、赤色画素305、緑色画素306、青色画素307が1組設けられ、これにより、1画素を構成している。
【0017】
図4は、液晶パネルの1画素分の断面を表し、パネル色域のうち緑色を表示する際の理想特性を説明する図である。この図に示すように、理想的な状態としては、緑色画素402からは、緑色光のみ透過する。なお、赤色画素401、青色画素303からは、光が透過しない。
【0018】
図5は、緑色を表示する実際の場合における表示特性を表す図である。緑色画素501からは、緑色光に加え、本来遮断されるべき赤色及び青色の光の一部が透過する。これは、
図2に示すカラーフィルタ特性より、遮断波長の漏れ光がゼロではないことが原因である。
【0019】
図6は、バックライトの色度を変化させた場合を表す図である。バックライトの色度を変えることにより、緑色画素を透過する赤色、緑色、青色のそれぞれの光のバランスが変化し、すなわち緑色の色度(色域)が変化する。
そこで本発明では、この漏れ光特性を利用してパネル色域を算出し、色域特性が目標を維持するよう映像信号を補正する。
【0020】
図1に戻り、白点設定情報記憶部10は、目標とする輝度及び色度を記憶する。ここでは、輝度が70cd/m
2であり、色度が9300Kである。
バックライト駆動回路11は、原色バックライト12を駆動する。このバックライト駆動回路11は、原色バックライト12のそれぞれの色のバックライトを個別に制御して駆動させる。この駆動方式としては、種々あるが、例えば、バックライトに供給する電力をPWM(パルス幅変調)によって駆動する方式がある。
【0021】
原色バックライト12は、バックライト駆動回路11からの駆動信号に応じて駆動し、発光する。この原色バックライト12は、例えば、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)のそれぞれの色に応じたLED(発光ダイオード)である。
【0022】
バックライト発光色検出部13は、例えば、バックライトセンサであり、原色バックライト12から出射される光を検出し、検出された光からバックライトの白点色度を検出する。なお、バックライトセンサを利用しない場合には、白色設定情報記憶部10に記憶された情報を用いることができる。
【0023】
バックライト単色輝度計算部14は、バックライト発光色検出部13が検出した検出結果に基づいて、バックライトの色毎の、輝度を計算する。ここでは、例えば、バックライト駆動回路11によって、原色バックライト12の赤色のみを点灯させた状態で、バックライト発光色検出部13によって光を検出し、バックライト単色輝度計算部14が、その検出結果を用いてバックライトの赤色についての輝度が得る。そして、バックライト単色輝度計算部14が、赤カラーフィルタ透過光量計算部15、緑カラーフィルタ透過光量計算部16、青カラーフィルタ透過光量計算部17へ出力する。また、バックライト単色輝度計算部14は、原色バックライト12の緑色のみを点灯させた状態で、バックライト発光色検出部13によって光を検出し、バックライトの緑色についての輝度を得て、赤カラーフィルタ透過光量計算部15、緑カラーフィルタ透過光量計算部16、青カラーフィルタ透過光量計算部17へ出力する。
【0024】
また、バックライト単色輝度計算部14は、原色バックライト12の青色のみを点灯させた状態で、バックライト発光色検出部13によって光を検出し、バックライトの青色についての輝度を得て、赤カラーフィルタ透過光量計算部15、緑カラーフィルタ透過光量計算部16、青カラーフィルタ透過光量計算部17へ出力する。
【0025】
赤カラーフィルタ透過光量計算部15は、バックライト輝度選択部14から入力される、バックライトの赤色を点灯させた際の輝度と、バックライトの緑色を点灯させた際の輝度と、バックライトの青色を点灯させた際の輝度と、に基づいて、バックライトの赤色画素を透過する光量を計算し、色画素毎に合計する。
【0026】
緑カラーフィルタ透過光量計算部16は、バックライト輝度選択部14から入力される、バックライトの赤色を点灯させた際の輝度と、バックライトの緑色を点灯させた際の輝度と、バックライトの青色を点灯させた際の輝度と、に基づいて、バックライトの緑色画素を透過する光量を計算し、色画素毎に合計する。
【0027】
青カラーフィルタ透過光量計算部17は、バックライト輝度選択部14から入力される、バックライトの赤色を点灯させた際の輝度と、バックライトの緑色を点灯させた際の輝度と、バックライトの青色を点灯させた際の輝度と、に基づいて、バックライトの青色画素を透過する光量を計算し、色画素毎に合計する。
【0028】
ここで、赤カラーフィルタ透過光量計算部15、緑カラーフィルタ透過光量計算部16、青カラーフィルタ透過光量計算部17は、予め決められた式に、バックライトの赤色を点灯させた際の輝度と、バックライトの緑色を点灯させた際の輝度と、バックライトの青色を点灯させた際の輝度と、を代入してバックライトの各色の画素を透過する光量を計算するようにしてもよい。また、バックライトの赤色を点灯させた際の輝度と、バックライトの緑色を点灯させた際の輝度と、バックライトの青色を点灯させた際の輝度と、各色の画素を透過する光量との関係を表すテーブルを記憶しておき、このテーブルを参照することで、各色画素を透過する光量を計算するようにしてもよい。
【0029】
赤原色パネル色度推定部18は、赤カラーフィルタ透過光量計算部15によって合計された光量の比を元に画素の色度を推定する。光量の比とは、ここでは、赤色画素を透過した赤色の光の量と、赤色画素を透過した緑色の光の量と、赤色画素を透過した青色の光の量と、の比である。この比と光量を用いることで、赤色画素を透過する光の色度を特定する。
【0030】
緑原色パネル色度推定部19は、緑カラーフィルタ透過光量計算部16によって合計された光量の比を元に画素の色度を推定する。この緑原色パネル色度推定部19は、上述と同様に、緑色画素を透過した赤色の光の量と、緑色画素を透過した緑色の光の量と、緑色画素を透過した青色の光の量と、の比と、光量を用いることで、緑色画素を透過する光の色度を特定する。
【0031】
青原色パネル色度推定部20は、青カラーフィルタ透過光量計算部17によって合計された光量の比を元に画素の色度を推定する。この青原色パネル色度推定部20は、上述と同様に、青色画素を透過した赤色の光の量と、青色画素を透過した緑色の光の量と、青色画素を透過した青色の光の量と、の比と、光量を用いることで、青色画素を透過する光の色度を特定する。
【0032】
色域設定情報記憶部21は、目標とする色域を表す情報である目標色域を記憶する。
【0033】
LCDパネル色補正回路22は、赤原色パネル色度推定部18、緑原色パネル色度推定部19、青原色パネル色度推定部20によってそれぞれ推定された色域と、色域設定情報記憶部21に記憶された目標色域とを比較して表示部23へ出力する映像信号を補正する。
【0034】
表示部23は、LCDパネルドライバとLCDパネルとを含んで構成され、LCDパネル色補正回路22から出力される映像信号に基づいて画像をLCDパネルに表示する。
【0035】
上述の構成において、バックライト発光色に基づくパネル色域の予測についてさらに説明する。まず基準状態で、LCDパネル特性を算出する。このとき、バックライト単色を点灯させ、パネル表面で測定される白色及び原色輝度を元に各セルにおける各バックライトの漏れ光を求める。
例えば
図7、
図8に示すように、青色を表示した場合における光量をGBL_Bcell、白色を表示させた場合における光量をGBL_RGBcellとした場合、(GBL_Bcell)/(GBL_RGBcell)なる式に従って計算することにより、青色セルにおける緑色バックライトの漏れ光量を求めることができる。これら漏れ光は、通常、透過させたい色の光の量に対し、2〜3%である。
このようにして、全バックライト色(赤色、緑色、青色)を全画素について行う。
【0036】
次に随時、目標または現在のバックライト各色の発光量を検出し、漏れ光成分を元にRGB画素の色度を求める。このとき、色度は基準特性を用いた演算値であるため、パネル表面の実測は必要ない。
なお、算出されたパネル色域に基づく映像補正は、一般的な補正手法を用いることができる。例えば、LUT(LookUpTable)を用いて補正を行う。
【0037】
以上説明した実施形態によれば、補正特性は、個体差・経年劣化による光学特性変化を検出して自動的に追従する。このため個体差が少なく,長期間安定した画質劣化抑制効果が期待できる、また、ユーザ利用時にはパネル色域の実測値を要しないため、ユーザは煩雑な手動測定なく表示装置を操作できる。
【0038】
また、上述した実施形態によれば、波長分布の測定や演算を行わずに、補正を行うことができる。例えば、映像信号にRGB行列式を乗算し、LCDとのバックライトのクロストークを補正することができる。すなわち、安価な色彩輝度計を用いた短時間の測定(最大でも数十秒程度)で行列係数を算出できるため、大量生産時に個体ごとの調整を実施することも可能である。
【0039】
また、
図1における表示装置1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより色度補正を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0040】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、サーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記のプログラムを所定のサーバに記憶させておき、他の装置からの要求に応じて、当該プログラムを通信回線を介して配信(ダウンロード等)させるようにしてもよい。
【0041】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。