【実施例】
【0021】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0022】
(
参考例1)
(支持体用不織布の作成)
繊維径1.7dtx、繊維長5mmのポリエステル繊維(商品名:テピルスTT04N、製造元:帝人ファイバー株式会社)70質量部と、繊維径1.7dtx、繊維長5mmのポリエステル芯鞘複合型繊維(商品名:テピルスTJ04CN、製造元:帝人ファイバー株式会社)30質量部に水道水を加えて、固形分濃度が0.4質量%である繊維スラリーを得た。得られた繊維スラリーを、標準離解機(JIS P 8220:1998)を用いて離解し、原料スラリーを得た。次いで、得られた原料スラリーを固形分濃度0.1質量%となるように水道水で希釈し、手抄装置を用いて抄紙し、湿紙を得た。次いで、この湿紙を、温度120℃のロータリー乾燥機で乾燥して、坪量70g/m
2の支持体用不織布を得た。
【0023】
(ナノ繊維構造体の作成)
前記の支持体用不織布を、静電紡糸法シート製造装置(商品名:NUEナノファイバーエレクトロスピニングユニット、製造元:カトーテック株式会社)のターゲットドラムに設置した。次いで、エチレン−アクリル酸共重合物水分散液(商品名:ザイクセンA、製造元:住友精化株式会社)と、ポリビニルアルコール(商品名:PVA124、製造元:株式会社クラレ)を蒸留水に熱溶解させた溶液とを、固形分重量比率が、エチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルアルコール=95:5となるように混合させた後、更に蒸留水を添加して固形分濃度が15質量%の紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液をノズルを取り付けたシリンジに入れ、前記支持体用不織布の上に静電紡糸を行い、静電紡糸ナノ繊維構造体を作成した。この際の静電紡糸法シート製造装置の設定条件は、印加電圧20kV、ターゲットドラム回転速度6m/分、ノズル−ターゲット間距離15cmとした。こうして、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0024】
(実施例2)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルアルコールとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルアルコール=90:10とした以外は、
参考例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0025】
(実施例3)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルアルコールとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルアルコール=80:20とした以外は、
参考例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0026】
(実施例4)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルアルコールとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルアルコール=70:30とした以外は、
参考例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0027】
(実施例5)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルアルコールとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルアルコール=60:40とした以外は、
参考例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0028】
(実施例6)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルアルコールとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルアルコール=50:50とした以外は、
参考例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0029】
(実施例7)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルアルコールとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルアルコール=40:60とした以外は、
参考例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0030】
(
参考例8)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルアルコールとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルアルコール=30:70とした以外は、
参考例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0031】
(
参考例9)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルアルコールとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルアルコール=20:80とした以外は、
参考例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0032】
(比較例1)
紡糸溶液として、エチレン−アクリル酸共重合物水分散液(商品名:ザイクセンA、製造元:住友精化株式会社)と蒸留水とを混合して固形分濃度を15質量%とした液を紡糸溶液として用いた以外は、
参考例1と同じ方法により静電紡糸を行ったが、紡糸溶液がジェット流を形成せず、繊維化できなかった。
【0033】
(比較例2)
紡糸溶液として、ポリビニルアルコール(商品名:PVA124、製造元:株式会社クラレ)を蒸留水に熱溶解させた水溶液と蒸留水とを混合して固形分濃度を10質量%とした液を紡糸溶液として用いた以外は、
参考例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/m
2のナノ繊維構造体を得た。
【0034】
実施例および比較例において得られたナノ繊維構造体の評価は、以下に示す方法によって行った。
【0035】
ナノ繊維の紡糸安定性は、静電紡糸時の紡糸状態の目視観察、および、支持体上に付着させたナノ繊維構造体の走査型電子顕微鏡観察により評価した。評価基準は以下の通りとした。
○ : 安定した繊維形状のナノ繊維が紡糸された。合格。
△ : 紡糸はできたが、繊維形状が不安定で、ナノ繊維と球状物(ビーズ)とが混在していた。合格。
× : 紡糸溶液がジェット流を形成せず、繊維化できなかった。不合格。
【0036】
ナノ繊維の平均繊維径は、走査型電子顕微鏡写真より測定した。
【0037】
ナノ繊維構造体の耐水性は、加熱処理前後の支持体上に付着させた状態のナノ繊維構造体を、23℃の蒸留水に5分間浸漬し、これを風乾した後、走査型電子顕微鏡により観察して評価した。評価基準は以下の通りとした。
○ : 繊維の形状をそのまま維持している。
△ : わずかな繊維の溶解が見られるが、形状をほぼ維持している。
× : 大きな繊維の溶解が見られ、形状が大きく変化している。
※ : 加熱処理により繊維が溶融し形状が変化したため、耐水性評価を行わなかった。
【0038】
上記の耐水性の評価における加熱処理は、支持体上に付着させた状態のナノ繊維構造体を、循環乾燥機で5分間加熱することにより行った。加熱温度は、40℃、60℃、80℃、100℃、120℃とした。
【0039】
実施例1〜9および比較例1〜3の評価結果は、表1の通りとなった。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示した結果の通り、紡糸安定性を付与する水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコールを用いて、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物の水分散液を静電紡糸することにより、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物を含むナノ繊維構造体を得ることができた。
【0042】
さらに、全ポリマー固形分に対するポリビニルアルコール固形分の質量比率の制御と、加熱処理を組み合わせることにより、耐水性を有するオレフィン−不飽和カルボン酸共重合物を含むナノ繊維構造体を得ることができた。