特許第5791195号(P5791195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791195
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ナノ繊維構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/728 20120101AFI20150917BHJP
   D04H 1/4291 20120101ALI20150917BHJP
   D01F 6/30 20060101ALI20150917BHJP
   D01F 6/46 20060101ALI20150917BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20150917BHJP
   D01D 10/02 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   D04H1/728
   D04H1/4291
   D01F6/30
   D01F6/46 C
   D01D5/04
   D01D10/02
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-18592(P2012-18592)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-155469(P2013-155469A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越紀州製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正
(72)【発明者】
【氏名】目黒 栄子
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−531860(JP,A)
【文献】 特開2011−168935(JP,A)
【文献】 特開2011−132633(JP,A)
【文献】 特開2010−248665(JP,A)
【文献】 特表平08−502080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D01D 5/04
D01D 10/02
D01F 6/30
D01F 6/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物と、ポリエチレンオキシド又はポリビニルピロリドンの何れか1種又はこれら2種の混合物からなる水溶性ポリマーとを含有し、水分散液中における前記水溶性ポリマーの含有比率が、前記水分散液中の全ポリマーに対し、固形分で0.1質量%〜50質量%である水分散液を静電紡糸することにより繊維化した後、更に40〜120℃で加熱処理を行うことを特徴とするナノ繊維構造体の製造方法。
【請求項2】
オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物と、ポリエチレンオキシド又はポリビニルピロリドンの何れか1種又はこれら2種の混合物からなる水溶性ポリマーとを含有し、水分散液中における前記水溶性ポリマーの含有比率が、前記水分散液中の全ポリマーに対し、固形分で0.5質量%〜40質量%である水分散液を静電紡糸することにより繊維化した後、更に40〜80℃で加熱処理を行うことを特徴とするナノ繊維構造体の製造方法。
【請求項3】
オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物と、ポリエチレンオキシド又はポリビニルピロリドンの何れか1種又はこれら2種の混合物からなる水溶性ポリマーとを含有し、水分散液中における前記水溶性ポリマーの含有比率が、前記水分散液中の全ポリマーに対し、固形分で0.5質量%〜50質量%である水分散液を静電紡糸することにより繊維化した後、更に60〜80℃で加熱処理を行うことを特徴とするナノ繊維構造体の製造方法。
【請求項4】
前記水分散液中における水溶性ポリマーの含有比率を、前記水分散液中の全ポリマーに対し、固形分で0.5質量%〜25質量%とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のナノ繊維構造体の製造方法。
【請求項5】
前記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物が、エチレン−アクリル酸共重合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載のナノ繊維構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電紡糸されたオレフィン−不飽和カルボン酸共重合物からなるナノ繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
静電紡糸法は、エレクトロスピニング法とも呼ばれ、ポリマーの溶液に高電圧をかけて紡糸することにより、繊維径が1μm未満のナノオーダーのサイズにある繊維、すなわちナノ繊維を容易に作成することができる方法である。この方法により得られたナノ繊維は、非常に大きな表面積を有していることから、フィルタ、電池セパレータ、細胞培養基材、イオン交換膜などの素材としての利用が期待されている。
【0003】
静電紡糸法を用いて作成されるナノ繊維において、最も広く用いられているポリマーの1つとしてポリビニルアルコールがある。ポリビニルアルコールが広く用いられている理由としては、ポリマーの結晶性が高く紡糸しやすいことと、水に可溶であるため、環境負荷が少なく溶剤回収設備を必要としない水系での静電紡糸が可能であるということ挙げられる。しかしながら、こうして得られたポリビニルアルコールからなるナノ繊維は、耐水性が非常に弱いという欠点を有している。そのため、この欠点を解決するために、不溶化成分の添加(特許文献1)や、加熱処理(非特許文献1)などの方法が提案されている。
【0004】
一方、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物は、カルボキシル基がイオン化された形のオレフィン系アイオノマー樹脂として一般的に知られており、種々の材料に対する混和性および接着性、透明性、耐薬品性、耐摩耗性、柔軟性、成型性、ヒートシール性などの特徴を有していることから、包装材料、コーティング材料、接着剤、分散剤などの幅広い用途に用いられているポリマー材料である。また、このオレフィン−不飽和カルボン酸共重合物は、分子内にカルボキシル基が存在していることから、イオン交換特性を付与したり、カルボキシル基との反応よる化学修飾を行うことが可能である。さらに、アルカリを添加することにより水に分散させることができ、一方では、乾燥後の固形物はある程度の耐水性を有している。したがって、当該オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物は、アルカリとして揮発性成分(例えば、アンモニア)を用いた場合には、乾燥後の耐水性をさらに向上させることができる特徴を有している。
【0005】
オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物を繊維化した例としては、エチレン−アクリル酸共重合物を溶融押出により繊維化し、イオン交換材料とした例(非特許文献2)や、エチレン−アクリル酸共重合物を他成分との混合物として溶融押出した後に、他成分を抽出除去することにより繊維化し、さらにこれを化学修飾することにより、バイオメディカル材料とした例(非特許文献3)などがある。しかしながら、エチレン−アクリル酸共重合物は、ポリマーの結晶性が低いためか、この溶液を静電紡糸法により繊維化することが難しく、これまでに、静電紡糸法により繊維化した例は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−266804 公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Materials Science,45(9),2456−2465,2010
【非特許文献2】Journal of Applied Polymer Science,48(9),1501−1513,1993
【非特許文献3】Journal of Biomedical Materials Research Part A,95A(1),245−255,2010
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第一の課題は、静電紡糸法によりオレフィン−不飽和カルボン酸共重合物を含有する、ナノ繊維構造体を得ることである。
【0009】
本発明の第二の課題は、耐水性を有するオレフィン−不飽和カルボン酸共重合物を含有するナノ繊維構造体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の課題は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物の水分散液に、紡糸安定性を付与する水溶性ポリマーを含有させることにより解決される。すなわち、本発明に係るナノ繊維構造体は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物の水分散液を静電紡糸することにより形成されるナノ繊維構造体であり、前記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物の水分散液が、ポリエチレンオキシド又はポリビニルピロリドンの何れか1種又はこれら2種を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第二の課題は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物と水溶性ポリマーとを含む全ポリマー固形分に対する水溶性ポリマー固形分の質量比率を、一定量以下とすることにより解決される。すなわち、本発明に係るナノ繊維構造体は、好ましくは、全ポリマー固形分に対する水溶性ポリマーの固形分の質量比率が、50%以下であることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の第二の課題は、ナノ繊維構造体を加熱処理することによっても解決される。すなわち、本発明に係るナノ繊維構造体の製造方法は、好ましくは、静電紡糸することにより形成されたナノ繊維構造体を加熱処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、環境負荷が少なく溶剤回収設備を必要としない水系での静電紡糸により、オレフィン−不飽和カルボン酸を繊維化してなるナノ繊維構造体を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明によれば、耐水性を有するオレフィン−不飽和カルボン酸を含むナノ繊維構造体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における静電紡糸法とは、エレクトロスピニング法とも呼ばれ、繊維となるポリマーの溶液に高電圧を印加し、ポリマー溶液がターゲットに向かってスプレーされる過程において繊維化を起こさせる方法であり、近年、ナノオーダーの繊維径を有するナノ繊維を製造する有効な方法として利用されている。静電紡糸法における製造装置の設定条件は一般に使用される条件で良いが、例えば、支持体上に坪量0.1〜10g/m、さらには坪量1〜5g/mとなるように設定すればよい。
【0016】
本発明において用いられるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合物の水分散液は、オレフィンに対して数〜数十モル%程度の不飽和カルボン酸を共重合させたオレフィン−不飽和カルボン酸共重合物を、ナトリウムやカリウムなどの金属塩、又は、アンモニアやアルキルアミン、アルカノールアミンなどのアミン塩の形として水に分散させたものである。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物を構成するオレフィン成分としては、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。オレフィンと共重合させる不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物の水分散液の市販品の例としては、例えば、ザイクセンシリーズ(住友精化株式会社製)、ケミパールシリーズ(三井化学株式会社製)、アローベースシリーズ(ユニチカ株式会社製)などがある。
【0017】
本発明において用いられる水溶性ポリマーは、ポリエチレンオキシド又はポリビニルピロリドンのうちの少なくともいずれか1つであり、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物の水分散液に静電紡糸における紡糸安定性(ターゲットに捕集された際に、安定した形状の繊維を形成する特性)を付与するために添加されるものである。これらの水溶性ポリマーは、静電紡糸における紡糸安定性が非常に高く、紡糸安定性の低いオレフィン−不飽和カルボン酸に添加することにより、紡糸安定性を高めることが可能である。
【0018】
本発明において用いられる水溶性ポリマーの添加量は、全ポリマー固形分に対する水溶性ポリマー固形分の質量比率で、50%以下であると良い。水溶性ポリマー固形分の質量比率が50%を超えると、ナノ繊維構造体の耐水性が低くなることがある。好ましくは、全ポリマー固形分に対する水溶性ポリマー固形分の質量比率は、0.1%以上50%以下である。水溶性ポリマー固形分の質量比率が0.1%未満となると紡糸が不安定になる場合がある。さらに好ましくは、全ポリマー固形分に対する水溶性ポリマー固形分の質量比率は、0.5%以上50%以下であり、さらに0.5%以上40%以下である。もっとも好ましくは、全ポリマー固形分に対する水溶性ポリマー固形分の質量比率は、10%以上30%以下であり、さらに、15%以上25%以下である。
【0019】
本発明のナノ繊維構造体は、加熱処理することにより、耐水性を向上させることができる。加熱温度は、例えば、30℃〜140℃であり、さらに、40℃〜120℃である。好ましくは、50℃以上である。処理温度が50℃未満であると、加熱による耐水性の向上効果が得られ難い。また、さらに好ましくは、50℃〜140℃であり、さらに50℃〜120℃である。加熱処理の温度が高すぎると、繊維が溶融することがあるからである。もっとも好ましくは、60℃〜80℃である。
【0020】
本発明のナノ繊維構造体は、その用途に応じて、強度や加工適性を付与するための支持体の上に形成させることができる。支持体としては、紙、不織布、織布、フィルムなどのさまざまな材料を用いることができる。例えば、支持体として不織布を使用することができる。また、不織布の種類としては、合成繊維、再生繊維、無機繊維、及び/または半合成繊維などがあげられる。具体的には、セルロース繊維、ポリアミド系合成繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリオレフィン系合成繊維、レーヨン繊維、ガラス繊維などを用途に応じて使用することができる。例えば、本発明のナノ繊維構造体をエアフィルタとして使用する場合、ポリエステル系合成繊維を使用することができる。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
(支持体用不織布の作成)
繊維径1.7dtx、繊維長5mmのポリエステル繊維(商品名:テピルスTT04N、製造元:帝人ファイバー株式会社)70質量部と、繊維径1.7dtx、繊維長5mmのポリエステル芯鞘複合型繊維(商品名:テピルスTJ04CN、製造元:帝人ファイバー株式会社)30質量部に水道水を加えて、固形分濃度が0.4質量%である繊維スラリーを得た。得られた繊維スラリーを、標準離解機(JIS P 8220:1998)を用いて離解し、原料スラリーを得た。次いで、得られた原料スラリーを固形分濃度0.1質量%となるように水道水で希釈し、手抄装置を用いて抄紙し、湿紙を得た。次いで、この湿紙を、温度120℃のロータリー乾燥機で乾燥して、坪量70g/mの支持体用不織布を得た。
【0023】
(ナノ繊維構造体の作成)
前記の支持体用不織布を、静電紡糸法シート製造装置(商品名:NUEナノファイバーエレクトロスピニングユニット、製造元:カトーテック株式会社)のターゲットドラムに設置した。次いで、エチレン−アクリル酸共重合物水分散液(商品名:ザイクセンA、製造元:住友精化株式会社)と、ポリエチレンオキシド(商品名:アルコックスE−30、製造元:明成化学工業株式会社)とを、固形分質量比率がエチレン−アクリル酸共重合物:ポリエチレンオキシド=99:1となるように混合し、更に蒸留水を添加して固形分濃度が20質量%の紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液をノズルを取り付けたシリンジに入れ、前記支持体用不織布の上に静電紡糸を行い、静電紡糸ナノ繊維構造体を作成した。この際の静電紡糸法シート製造装置の設定条件は、印加電圧20kV、ターゲットドラム回転速度6m/分、ノズル−ターゲット間距離15cmとした。こうして、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0024】
(実施例2)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリエチレンオキシドとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリエチレンオキシド=80:20とした以外は、実施例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0025】
(実施例3)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリエチレンオキシドとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリエチレンオキシド=50:50とした以外は、実施例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0026】
参考例4)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリエチレンオキシドとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリエチレンオキシド=40:60とした以外は、実施例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0027】
(実施例5)
紡糸溶液として、エチレン−アクリル酸共重合物水分散液(商品名:ザイクセンA、製造元:住友精化株式会社)と、ポリビニルピロリドン水溶液(商品名:ピッツコールK−90L、製造元:第一工業製薬株式会社)とを、固形分質量比率がエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルピロリドン=95:5となるように混合し、更に蒸留水を添加して固形分濃度が20質量%の紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液を用い、実施例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0028】
(実施例6)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルピロリドンとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルピロリドン=80:20とした以外は、実施例5と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0029】
(実施例7)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルピロリドンとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルピロリドン=50:50とした以外は、実施例5と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0030】
参考例8)
紡糸溶液中のエチレン−アクリル酸共重合物とポリビニルピロリドンとの固形分質量比率をエチレン−アクリル酸共重合物:ポリビニルピロリドン=40:60とした以外は、実施例5と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0031】
(実施例9)
紡糸溶液として、エチレン−アクリル酸共重合物水分散液(商品名:ザイクセンA、製造元:住友精化株式会社)と、ポリエチレンオキシド(商品名:アルコックスE−30、製造元:明成化学工業株式会社)と、ポリビニルピロリドン水溶液(商品名:ピッツコールK−90L、製造元:第一工業製薬株式会社)とを、固形分質量比率がエチレン−アクリル酸共重合物:ポリエチレンオキシド:ポリビニルピロリドン=80:10:10となるように混合し、更に蒸留水を添加して固形分濃度が20質量%の紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液を用い、実施例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0032】
(比較例1)
紡糸溶液として、エチレン−アクリル酸共重合物水分散液(商品名:ザイクセンA、製造元:住友精化株式会社)と蒸留水とを混合して固形分濃度を20質量%とした液を紡糸溶液として用いた以外は、実施例1と同じ方法により静電紡糸を行ったが、紡糸溶液がジェット流を形成せず、繊維化できなかった。
【0033】
(比較例2)
紡糸溶液として、ポリエチレンオキシド(商品名:アルコックスE−30、製造元:明成化学工業株式会社)と蒸留水とを混合して固形分濃度を10質量%とした液を紡糸溶液として用いた以外は、実施例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0034】
(比較例3)
紡糸溶液として、ポリビニルピロリドン水溶液(商品名:ピッツコールK−90L、製造元:第一工業製薬株式会社)と蒸留水とを混合して固形分濃度を10質量%とした液を紡糸溶液として用いた以外は、実施例1と同じ方法により、支持体上に坪量2.0g/mのナノ繊維構造体を得た。
【0035】
実施例および比較例において得られたナノ繊維構造体の評価は、以下に示す方法によって行った。
【0036】
ナノ繊維の紡糸安定性は、静電紡糸時の紡糸状態の目視観察、および、支持体上に付着させたナノ繊維構造体の走査型電子顕微鏡観察により評価した。評価基準は以下の通りとした。
○ : 安定した繊維形状のナノ繊維が紡糸された。合格。
△ : 紡糸はできたが、繊維形状が不安定で、ナノ繊維と球状物(ビーズ)が混在していた。合格。
× : 紡糸溶液がジェット流を形成せず、繊維化できなかった。不合格。
【0037】
ナノ繊維の平均繊維径は、走査型電子顕微鏡写真より測定した。
【0038】
ナノ繊維構造体の耐水性は、加熱処理前後の支持体上に付着させた状態のナノ繊維構造体を、23℃の蒸留水に5分間浸漬し、これを風乾した後、走査型電子顕微鏡により観察して評価した。評価基準は以下の通りとした。
○ : 繊維の形状をそのまま維持している。
△ : わずかな繊維の溶解が見られるが、形状をほぼ維持している
× : 大きな繊維の溶解が見られ、形状が大きく変化している。
※ : 加熱処理により繊維が溶融し形状が変化したため、耐水性評価を行わなかった。
【0039】
上記の耐水性の評価における加熱処理は、支持体上に付着させた状態のナノ繊維構造体を、循環乾燥機で5分間加熱することにより行った。加熱温度は、40℃、60℃、80℃、100℃、120℃とした。
【0040】
実施例1〜8および比較例1〜3の評価結果は、表1の通りとなった。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示した結果の通り、紡糸安定性を付与する水溶性ポリマーとしてポリエチレンオキシドまたはポリビニルピロリドンを用い、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物の水分散液を静電紡糸することにより、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合物を含むナノ繊維構造体を得ることができた。
【0043】
さらに、全ポリマー固形分に対する水溶性ポリマー固形分の質量比率の制御と、加熱処理を組み合わせることにより、耐水性を有するオレフィン−不飽和カルボン酸共重合物を含むナノ繊維構造体を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により得られるナノ繊維構造体は、フィルタ、電池セパレータ、細胞培養基材、イオン交換膜などの素材としての利用可能性を有している。