(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5791210
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 29/00 20060101AFI20150917BHJP
B66B 23/22 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
B66B29/00 Z
B66B23/22 G
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-127178(P2014-127178)
(22)【出願日】2014年6月20日
【審査請求日】2014年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】鈴間 正憲
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−124667(JP,U)
【文献】
特開2006−112128(JP,A)
【文献】
特開2006−112058(JP,A)
【文献】
特開平09−143946(JP,A)
【文献】
特開平10−316349(JP,A)
【文献】
実開平04−007384(JP,U)
【文献】
特開2012−092529(JP,A)
【文献】
特開昭56−014139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/00−31/02
E01H 3/04
E01H 5/10
G01W 1/14
G01N 21/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段の両側に設けられた左右一対の欄干と、
左右一対の前記欄干の下部にそれぞれ設けられたスカートガードと、
前記スカートガードの乗降口に設けられ、乗降板、コム、又は、前記踏段に向かって水を吹き出すノズルと、
前記乗降口の積雪の有無を測定する積雪センサーと、
前記踏段の運転開始前に前記積雪センサーが積雪を測定したときに、前記ノズルから前記水を吹き出す制御部と、
前記乗降口にある前記スカートガードに設けられ、前記ノズルから吹き出した前記水を乾燥させるヒータと、
を有する乗客コンベア。
【請求項2】
前記ノズルと前記ヒータを前記コム近傍にある前記スカートガードに設ける、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記制御部は、前記積雪センサーが測定した積雪量が多いほど前記ノズルから水を吹き出す動作時間を長くする、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記乗降口に外気温を測定する温度センサーを有し、
前記制御部は、前記温度センサーが測定した外気温が設定温度以下で、かつ、前記積雪センサーが積雪を測定したときに、前記ノズルから前記水を吹き出す、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記乗降口に外気温を測定する温度センサーが有し、
前記制御部は、前記温度センサーが測定した外気温が氷点下のときに、前記ヒータを動作させる、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記水が温水である、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記積雪センサーが赤外線センサーである、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記ヒータが遠赤外線ヒータである、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記ノズルから吹き出した前記水を乾燥させるヒータを、前記乗降板に有する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアを、寒冷地の野外に設ける場合がある。この場合に乗客コンベアの乗降口付近に雪が積もっていると乗客が滑って危険であるため、従来より乗降口付近の床の除雪装置が提案されている。例えば、乗降板の先端に設けられているコムを平熱伝導性の優れた素材により形成し、コムに熱体を直接取り付けてこのコムを暖め、乗降口付近の雪を取り除いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−182044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなコムを暖めて除雪を行う装置であると、コムの部分は雪を溶かすことができるが、その周辺の踏段や乗降板に積もった雪まで溶かすことができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は上記問題点に鑑み、乗客コンベアの乗降口付近の雪を確実に溶かすことができる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、踏段の両側に設けられた左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の下部にそれぞれ設けられたスカートガードと、前記スカートガードの乗降口に設けられ、乗降板、コム、又は、前記踏段に向かって水を吹き出すノズルと、前記乗降口の積雪の有無を測定する積雪センサーと、前記踏段の運転開始前に前記積雪センサーが積雪を測定したときに、前記ノズルから前記水を吹き出す制御部と、
前記乗降口にある前記スカートガードに設けられ、前記ノズルから吹き出した前記水を乾燥させるヒータと、を有する乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】エスカレータの電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態の乗客コンベアについて図面に基づいて説明する。本実施形態では、エスカレータ10に関して
図1〜
図5に基づいて説明する。
【0009】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、
図1に基づいて説明する。
図1はエスカレータ10を側面から見た説明図である。
【0010】
エスカレータ10のトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0011】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、駆動装置18が設けられている。この駆動装置18は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータ20と、このモータ20により動作する駆動チェーン22を有し、この駆動チェーン22により駆動スプロケット24が回転する。また、上階側の機械室14内部には、制御装置50が設けられている。
【0012】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット26が設けられ、駆動スプロケット24と従動スプロケット26との間に左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡され、左右一対の踏段チェーン28,28には複数の踏段30が等間隔で取り付けられ、踏段30の車輪30aが不図示の案内レールを走行し、後輪30bが案内レール25を走行する。
【0013】
トラス12の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部を手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部を覆う正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には、下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から、手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48が突出している。欄干36の側面下部には、スカートガード44が設けられている。
【0014】
上階側の機械室14の天井面の乗降口には上階側の乗降板32が設けられ、乗降板32の先端にはコム33が設けられ、下階側の機械室16の天井面の乗降口には下階側の乗降板34が設けられ、乗降板34の先端にはコム35が設けられている。
【0015】
(2)乗降口の構造
次に、乗降口にあるスカートガード44について、上階の右側のスカートガード44を例にして
図2と
図3に基づいて説明する。
【0016】
上階側における乗降板32とコム33の両側に位置するスカートガード44には、操作盤52、赤外線センサー60、複数のノズル62を有する放水部64、遠赤外線ヒータ66、スピーカ54が設けられている。なお、上階の右側のスカートガード44には、これら装置が設けられていない。
【0017】
操作盤52は、正面スカートガード40に最も近いスカートガード44に設けられている。操作盤52には、運転キー68、停止キー70、照明キー72、温度センサー74が設けられている。運転キー68は管理者が持つ鍵を差し込んで右に回すとエスカレータ10の踏段30が上昇し、左側に回すと下降する。停止キー70は、管理者が持つ鍵を差し込んで回転させるとエスカレータ10が停止すると共に、停止前にブザーが鳴る。照明キー72は、管理者が鍵を差し込んで回転させると欄干36内部に設けられている照明装置73(
図4参照)が点灯する。温度センサー74は、操作盤52が位置する乗降口付近の外気温を測定する。
【0018】
赤外線センサー14は、操作盤56よりも踏段側30に位置するスカートガード44に設けられ、縦長の長方形をなしている。赤外線センサー14は、縦方向に赤外線を連続して発光し、その反射光によって、積雪の有無を検出し、また、どの高さまで積雪があるかを測定する。
【0019】
放水部64は、赤外線センサー60よりも踏段側30に位置するスカートガード44に設けられている。放水部64には、複数個(例えば、8個)のノズル62が設けられ、雪を溶かすための水をそれぞれ吹き出す。ノズル62から水を吹き出す場合にはシャワー状で吹き出し、水を散布する。これにより、左右一対のスカートガード44の間の床面に水を吹き出し、雪を溶かすことができる。
【0020】
遠赤外線ヒータ66は、放水部64の下方に設けられ、横長の長方形をなしている。遠赤外線ヒータ66は、左右一対のスカートガード44,44の間の空間を暖める。
【0021】
スピーカ54は、放水部64よりも踏段側30に位置するスカートガード44に設けられている。
【0022】
下階側の左側における乗降口のスカートガード44にも、上階側と同様に温度センサー74を有する操作盤56、赤外線センサー60、ノズル62を有する放水部64、遠赤外線ヒータ66、スピーカ58が設けられている。
【0023】
(3)エスカレータ10の電気的構成
次に、
図4に基づいてエスカレータ10の電気的構成について説明する。
【0024】
機械室14にある制御装置50には、モータ20を駆動させるためのインバータ装置21、非常時にエスカレータ10を停止させるための安全装置23、操作盤52,56にそれぞれ設けられた運転キー68、停止キー70、照明キー72、温度センサー74、スピーカ54,58が接続されている。また、ノズル62から水を吹き出すためのポンプ63、遠赤外線ヒータ66、赤外線センサー60、欄干36などに設けられた照明装置73が接続されている。
【0025】
制御装置50は、ノズル62から水を吹き出す場合には、水道水又はタンクに接続されたポンプ63から水を取水し、ポンプ63を用いてノズル62から水を吹き出す。
【0026】
安全装置23としては、スカートガード44に設けられたスカートガード挟まれ測定装置、インレット部46,48に設けられたインレット挟まれ測定装置、乗降板32,34に設けられた踏段浮き上がり測定装置、非常停止ボタンなどである。
【0027】
(4)除雪制御方法
エスカレータ10を雪が降る寒冷地であって、かつ、野外に設置した場合における除雪制御方法について
図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0028】
ステップS1において、エスカレータ10の運転開始前に制御装置50は、温度センサー74を用いて上階側と下階側のそれぞれ乗降口付近の外気温を測定し、外気温が設定温度(例えば、2℃)以下の場合はステップS2に進み、設定温度より高い場合にはステップS8に移動する。
【0029】
ステップS2において、制御装置50は、赤外線センサー60を用いて、上階側と下階側の乗降口付近に積雪が有るか否かの検出と、雪がある場合にはその積雪量を測定する。積雪がある場合には、ステップS3に進み(Yの場合)、積雪がない場合にはステップS8に進む(Nの場合)。
【0030】
ステップS3において、制御装置50は、積雪量に対応してノズル62から水を吹き出す動作時間と遠赤外線ヒータ66で乾燥させる動作時間をそれぞれ設定する。例えば、制御装置50は、積雪量が多いほどこれら動作時間を長くするものであり、積雪量が3cm以下の場合には、ノズル62から水を吹き出す動作時間を1分、遠赤外線ヒータ66で乾燥させる動作時間を5分と設定し、積雪量が10cmの場合は、ノズル62から水を吹き出す時間を3分、遠赤外線ヒータ66で乾燥させる時間を15分と設定する。そしてステップS4に進む。
【0031】
ステップS4において、制御装置50は、ノズル62から水を放水し、ステップS5に進む。このノズル62から水が吹き出すことにより左右一対のスカートガード44,44の間の乗降板32、コム33、踏段30に積もった雪を溶かすことができる。
【0032】
ステップS5において、制御装置50は、ステップS3で設定した動作時間だけ放水を行い、その後に停止し、ステップS6に進む。
【0033】
ステップS6において、制御装置50は、遠赤外線ヒータ66から放熱を開始し、残った雪と融雪水を乾燥させる。そしてステップS7に進む。
【0034】
ステップS7において、制御装置50は、予め設定した動作時間だけ遠赤外線ヒータ66から放熱を行い、その後に停止し、ステップS8に進む。この状態で乗降口付近の雪が無くなり、かつ、融雪水は乾燥し乗客が滑ったりしない。
【0035】
ステップS8において、制御装置50は、エスカレータの通常運転を開始する。そしてステップS9に進む。
【0036】
ステップS9において、制御装置50は、エスカレータの通常運転中に温度センサー74を用いて乗降口付近の外気温を常に測定し、この外気温が氷点下となった場合には、ステップS10に進み(Yの場合)、そうでない場合にはステップS8に戻って通常運転を続ける(Nの場合)。
【0037】
ステップS10において、制御装置50は、外気温が氷点下であるため遠赤外線ヒータ66を放熱し、乗降板32のコム33と乗降板34のコム35の凍結を防止し、ステップS6に戻る。
【0038】
(5)効果
本実施形態によれば、乗降口付近の雪を運転開始前に除去できるため、乗客が乗降する際に足を滑らせて転倒する危険を未然に防ぐことができる。特に、遠赤外線ヒータ66により乗降口付近の乗降板32,34、コム33,35、踏段30は乾燥状態になるためより足の滑りを防止できる。
【0039】
また、赤外線センサー60により積雪量を測定し、その積雪量が多いほど水を吹き出す動作時間と遠赤外線ヒータ66の動作時間を長くし、積雪量が少ないときにはこれら動作時間を短くすることにより確実に積雪を除去でき、かつ、省エネルギーの効果も得ることができる。
【0040】
また、エスカレータ10の通常運転中でも、温度センサー74によって外気温を測定し、氷点下のときには遠赤外線ヒータ66を動作させるため、乗客が最も滑り易く転倒し易いコム33,35の凍結を防止できる。
【0041】
(6)変更例
上記実施形態では、ノズル62から吹き出す水は、水道水をそのまま使ったが、これに代えて水道水を30℃以上に暖めて温水で吹き出してもよい。温水を吹き出すことにより、より雪が溶け易くなる。
【0042】
上記実施形態では、スカートガード44に遠赤外線ヒータ66を設けて乗降口付近を乾燥させたが、これに代えて乗降板32,34にヒータを設けて加熱させ乾燥させてもよい。また、より効率的に乾燥させるためにヒータを設けた位置まで送風機により水を送風して、より確実に乾燥させてもよい。
【0043】
上記実施形態では、放水部64、遠赤外線ヒータ66は左右一対のスカートガード44,44の一方にのみ設けたが、左右一対のスカートガード44,44の両方に放水部64と遠赤外線ヒータ66を設けてもよい。
【0044】
上記実施形態では、エスカレータ10で説明したが、これに代えて動く歩道でも適用してもよい。
【0045】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
10・・・エスカレータ、32・・・乗降板、33・・・コム、34・・・乗降板、35・・・コム、44・・・スカートガード、60・・・赤外線センサー、62・・・ノズル、66・・・遠赤外線ヒータ、74・・・温度センサー
【要約】
【課題】乗客コンベアの乗降口付近の雪を確実に溶かすことができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】スカートガード44の乗降口に設けられ、乗降板32、コム33などに水を吹き出すノズル62と、乗降口の積雪の有無を測定する赤外線センサー60と、踏段30の運転開始前に赤外線センサー60が積雪を測定したときにノズル62から水を吹き出す制御装置50とを有する。
【選択図】
図2