(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5791211
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】太陽光パネル付高設棚養液栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20150917BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20150917BHJP
A01G 31/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
A01G9/14 Z
A01G7/00 601A
A01G31/00 612
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-133552(P2014-133552)
(22)【出願日】2014年6月30日
【審査請求日】2014年8月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314006880
【氏名又は名称】ファームランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 希望
(72)【発明者】
【氏名】岩井 雅之
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/043381(WO,A1)
【文献】
特表2013−535959(JP,A)
【文献】
特開2011−250774(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3172072(JP,U)
【文献】
特開2011−160789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 − 9/26
A01G 31/00 − 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が受光することで発電する太陽光パネルと、
前記太陽光パネルを所定の角度で支持するフレーム部と、
前記太陽光パネルの下方に地表面から所定の高さをとって設置され所定の作物を養液栽培するための栽培槽と、を有する太陽光パネル付高設棚養液栽培システムにおいて、
前記フレーム部の棟間に透光性の屋根部材を設けるとともに、前記屋根部材の下方に光反射性を有する反射シートを設置し、棟間に射し込む光をフレーム部内に導光するとともに、棟間にも前記栽培槽を設けたことを特徴とする太陽光パネル付高設棚養液栽培システム。
【請求項2】
フレーム部が、
太陽光パネルを所定の角度で保持する横フレームと、前記横フレームを支持する縦フレームと、を有し、
前記横フレームに反射板を設置して、前記反射シートで反射した光を栽培槽側に導光することを特徴とする請求項1記載の太陽光パネル付高設棚養液栽培システム。
【請求項3】
フレーム部の側面を開閉する巻上げが可能なカバー部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽光パネル付高設棚養液栽培システム。
【請求項4】
横フレームに雨樋を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の太陽光パネル付高設棚養液栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネル下で作物を養液栽培する太陽光パネル付高設棚養液栽培システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーへの関心の高まりから、太陽光を受光して電力を発電する太陽光パネルが一般家庭や一般企業に広く普及している。また、比較的大規模な敷地に太陽光パネルを配設した、メガソーラー発電所も各地に建設されている。しかしながら、太陽光パネルを地面に設置する場合、太陽光パネル下のエリアは活用されない場合が多い。この問題点に関し、下記[特許文献1]に記載の発明では、太陽光パネル下の地面で農作物を栽培する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−018082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、土による露地栽培は気候や土中細菌等によって作物の生育状態が左右され、収穫量や品質等にバラつきが生じるという問題点がある。また、農作業を行う人間にとって低い地面での農作業は腰を痛める他、生産性が低いという問題点がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、太陽光パネル下のエリアを有効活用するとともに、太陽光パネル下にて作物を安定的に生育することが可能な太陽光パネル付高設棚養液栽培システムを提供することを目的とする。また、作業者にとって、農作業の負担が軽く作業環境に優れた太陽光パネル付高設棚養液栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)光が受光することで発電する太陽光パネル10と、前記太陽光パネル10を所定の角度で支持するフレーム部と、前記太陽光パネル10の下方に地表面から所定の高さをとって設置され所定の作物を養液栽培するための栽培槽30と、を有す
る太陽光パネル付高設棚養液栽培システム
において、
前記フレーム部の棟間に透光性の屋根部材40を設けるとともに、前記屋根部材40の下方に光反射性を有する反射シート44を設置し、棟間に射し込む光をフレーム部内に導光するとともに、棟間にも前記栽培槽30を設けたことを特徴とする太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)フレーム部が、太陽光パネルを所定の角度で保持する横フレーム20aと、前記横フレーム20aを支持する縦フレーム20bと、を有し、
前記横フレーム20aに反射板42を設置して、前記反射シート44で反射した光を栽培槽30側に導光することを特徴とする上記(1)記載の太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)
フレーム部の側面を開閉する巻上げが可能なカバー部24を有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)
横フレーム20aに雨樋11を設けたことを特徴とする上記(1)乃至上記(3)のいずれか1項に記載の太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システムは、太陽光パネルの下で作物の養液栽培を行う。これにより、太陽光パネル下のエリアを有効活用することができる。また、本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システムは側面を適宜開閉することで作物の栽培環境を管理することができる。これにより、高品質な作物を効率良く安定的に栽培することができる。また、農業従事者は作物の販売収入と売電収入とを得ることができる。
【0008】
さらに、栽培槽を地表面から所定の高さをとって設置することで、作業者の負担を軽減することができる。また、上面の太陽光パネルと側面を適宜閉塞するカバー部とによって、作業者にとって快適な作業環境を形成することができる。これにより、作物の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システムを示す図である。
【
図2】本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80の実施の形態について図面に基づいて説明する。本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80は、光が受光することで発電する周知の太陽光パネル10と、太陽光パネル10を所定の角度に保持する横フレーム20aと、この横フレーム20aを支持する縦フレーム20bと、太陽光パネル10の下方、即ち横フレーム20aと縦フレーム20bとで構成されるフレーム部内に設置される栽培槽30と、を有している。
【0011】
太陽光パネル10を保持する横フレーム20aは、一般的に南方に向けられ太陽光パネル10に太陽光が最も効率よく照射される角度に固定される。尚、横フレーム20aには屋根等を設け、太陽光パネル10の間隙からフレーム部内へ雨水等が浸入することを防止する。また、横フレーム20aには雨樋11を設置して、太陽光パネル10(及び屋根)を流れる雨水等を所定の排水溝等へ導水することが好ましい。この構成によれば、太陽光パネル10を流れる雨水が地面に滴下せず、この滴下による泥はね等を防止することができる。
【0012】
また、栽培槽30には作物の栽培に適した養液が供給され、この栽培槽30内で作物P1、P2の養液栽培が行われる。尚、栽培槽30には脚部32を設け、栽培槽30を所定の高さに設置する。この栽培槽30の高さは養液の液面が地表から概ね70cm〜85cm程度の高さになるようにすることが好ましい。このような高さに栽培槽30を設置することで、作業者は腰をかがめなくとも農作業を行うことが可能となり、農作業の負担軽減と農作物の生産性の向上とを図ることができる。
【0013】
栽培槽30への養液の供給は、例えば
図1に示す循環式養液供給装置8を用いて行うことが好ましい。この循環式養液供給装置8は、養液を貯留する養液タンク14と、養液タンク14内の養液を栽培槽30に供給する養液供給配管12aと、養液タンク14に貯留した養液を養液供給配管12aを介して栽培槽30に送る液送ポンプ16と、栽培槽30へ供給された養液を養液タンク14に還流する排水管12bと、養液タンク14に還流する養液を濾過する濾過器15と、を有している。そして、養液タンク14には所定の肥料成分を所定の濃度で含有した養液が貯留され、液送ポンプ16の稼働により栽培槽30に供給されるとともに、排水管12bを通して養液タンク14に還流する。尚、養液タンク14には栽培槽30で栽培する作物P1、P2の一作分の養液を一括して貯留し、所定の栽培期間(約1ヶ月)循環させることが好ましい。この構成によれば、還流した養液を再利用できるため、肥料や水の節約とコスト削減、及び環境負荷の低減を図ることができる。
【0014】
また、作物P1、P2の栽培槽30中での保持方法は、従来から行われている周知の手法を用いることができる。例えば、作物を保持する栽培孔を備えたフタや発泡スチロール製の浮きベンチ34を栽培槽30に設置し、作物P1、P2の保持を行っても良いし、ロックウールや椰子殻、ウレタン等の培地を介して作物P1、P2の保持を行っても良い。尚、発泡スチロール製の浮きベンチ34を用いる場合、作物P1、P2を保持する栽培孔は2列もしくは5列で形成することが作業性の面から特に好ましい。
【0015】
また、作物P1、P2としては、日射量が自然状態よりも25%以下の比較的弱い光でも生育が可能な、例えば、ミツバ、ミョウガ、フキ、シソ、セリ等を選択することが好ましい。尚、栽培槽30内の各位置での光量を測定し、その受光光量に応じて栽培槽30を複数の区画に区分し、その区画の受光光量に応じて栽培する作物を変化させても良い。例えば、受光光量が低めの区画では、比較的弱い光で生育が可能な作物の中でもさらに弱い光で生育が可能な作物を選択し栽培する。また、受光光量が高めの区画では、比較的弱い光で生育が可能な作物の中でも比較的日照を好む作物を選択し栽培する。この構成によれば、栽培槽30の受光光量に応じて適切な作物を選択し栽培するため、効率的な作物の栽培を行うことができる。尚、受光光量が不十分な区画には、その区画の栽培槽30上に補助灯22を設置し、この補助灯22によって光量の不足を補うようにしても良い。尚、補助灯22としてはLED灯、蛍光灯等、周知の照明灯を用いることができる。また、
図2に示すように、太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80の棟間の屋根部分にフッ素フィルム等の透光性の屋根部材40を設けるとともに、光反射性を有する反射シート44を設置
する。さらに太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80の横フレーム20aに反射板42を設置して
も良い。そして、棟間に射し込む日光を
図2中の白抜き矢印で示すようにフレーム部内に導光する
。また、このエリアに栽培槽30を増設
する。尚、
図1、
図2の縦フレーム20bは光反射性を有する白色系の塗料で塗装することが好ましい。この構成によれば、棟間に射し込む日光をフレーム部内に導光してフレーム部内の光量を増加させるとともに、雨水のフレーム部内への浸入を更に防止し、フレーム部内の生育環境及び作業環境の改善と、栽培面積の増加による作物P1、P2の収量の向上とを図ることができる。
【0016】
また、フレーム部の全ての側面には透光性を有し開閉が自在なカバー部24が設置される。このカバー部24としては巻き上げが可能な合成樹脂製の透明シートを用いることが好ましい。ただし、カバー部24はこれに限定するものではなく、開閉可能なガラス板や扉等を用いても良い。そして、このカバー部24を天候や気温等に応じて適宜開閉することでフレーム部の側面を開放状態、閉塞状態、半開放状態とする。これにより、例えば雨天時にカバー部24を閉じることでフレーム部内への雨水の浸入を防止することができる。また、強風による被害を防止することができる。また、外気温に応じて、カバー部24を開放状態、閉塞状態、半開放状態とすることでフレーム部内の温度調節を行うことができる。これにより、フレーム部内の作物P1、P2の生育環境をある程度管理することができる。また、太陽光パネル10とともに雨や直射日光を遮って、作業者の作業環境を良好なものとすることができる。
【0017】
さらに、横フレーム20aには水を霧化して噴霧するミスト装置26を設けても良い。尚、ミスト装置26への給水配管は横フレーム20aに沿わせて設置しても良いし、横フレーム20a内に通しても良い。この構成によれば、ミストの蒸散によりフレーム部内の温度を下げることができる。また、フレーム部内の湿度を上げることができる。これにより、フレーム部内の作物P1、P2の生育環境の更なる管理と作業者の作業環境の改善とを図ることができる。
【0018】
以上のように、本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80は、太陽光パネル10の下に栽培槽30を設置して作物P1、P2の養液栽培を行う。これにより、太陽光パネル10下のエリアを有効活用することができる。また、本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80は、養液により作物P1、P2の栽培を行うため、施肥や水遣りの手間が省けるとともに施肥量の管理を容易に行うことができる。また、土中細菌による病弊害や連作障害等を防止することができる。これにより、高品質な作物P1、P2を効率良く安定的に栽培することができる。さらに、栽培槽30を地表面から所定の高さをとって設置することで、作業者の負担を軽減するとともに作物P1、P2の生産性の向上を図ることができる。
【0019】
また、本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80は、太陽光パネル10が雨や直射日光を遮るとともに、フレーム部の側面に開閉可能なカバー部24を有している。そして、カバー部24によりフレーム部の側面を閉塞することで、雨水の流入や風雪による弊害を防止することができる。また、カバー部24を適宜開閉することで、フレーム部内の温度、湿度をある程度調節することができる。これにより、フレーム部内の環境管理が可能となり、高品質な作物P1、P2をさらに効率良く安定的に栽培することができる。また、作業者にとって良好な作業環境を形成することができる。
【0020】
そして、農業従事者は栽培槽30で栽培した作物P1、P2の販売収入に加え、太陽光パネル10で発電した電力の売電収入等を得ることができる。これにより、農業従事者の収入を向上することができる。
【0021】
尚、本例で示した太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80の各部の形状、構成、寸法、栽培作物等は一例であり、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 太陽光パネル
30 栽培槽
80 太陽光パネル付高設棚養液栽培システム
20a 横フレーム
20b 縦フレーム
22 補助灯
24 カバー部
26 ミスト装置
8 循環式養液供給装置
【要約】
【課題】太陽光パネル下のエリアを有効活用するとともに、太陽光パネル下にて作物を安定的に生育することが可能な太陽光パネル付高設棚養液栽培システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80は、太陽光パネル10の下に栽培槽30を設置して作物P1、P2の養液栽培を行う。これにより、太陽光パネル10下のエリアを有効活用することができる。また、太陽光パネル付高設棚養液栽培システム80は、養液により作物P1、P2の栽培を行うため、高品質な作物P1、P2を効率良く安定的に栽培することができる。さらに、栽培槽30を地表面から所定の高さをとって設置することで、作業者の負担を軽減するとともに作物P1、P2の生産性の向上を図ることができる。
【選択図】
図1