特許第5791263号(P5791263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5791263電子部品収納用パッケージおよび実装構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791263
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】電子部品収納用パッケージおよび実装構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   H01L23/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-257747(P2010-257747)
(22)【出願日】2010年11月18日
(65)【公開番号】特開2012-109431(P2012-109431A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】向井 絵美
【審査官】 深沢 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−043889(JP,A)
【文献】 特開平11−145324(JP,A)
【文献】 特開2008−224941(JP,A)
【文献】 特開2004−310081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/54
H01L 23/00 − 23/26
H01L 31/00 − 31/0264
H01L 31/08 − 31/09
H01L 51/42
H01S 5/00 − 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に電子部品実装領域を有する基板と、
前記基板上であって前記電子部品実装領域の外周に沿って設けられた、前記基板の上面よりも上方に位置する取付け部を有する枠状の基体と、
前記取付け部に設けられた、平面視して前記基板と重なる領域から前記基板と重ならない領域にまで延在するとともに、平面方向に貫通孔を有する円筒部と、前記円筒部に接続された、平面視して前記基体の内側において前記基板の上面に接触するとともに接続されない、前記基体から間を空けた当接部を有する光ファイバ保持部材を備えたことを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品収納用パッケージであって、
前記当接部は、前記基板の上面と接する下面を有することを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子部品収納用パッケージであって、
前記貫通孔は、長さ方向から側面視して前記電子部品実装領域に設けられる電子部品と重なることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品収納用パッケージと、前記電子部品収納用パッケージの前記電子部品実装領域に実装された電子部品と、前記電子部品収納用パッケージ上に設けられた、前記電子部品を被覆する蓋体とを備えたことを特徴とする実装構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装することが可能な電子部品収納用パッケージおよびそれに電子部品を実装した実装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機器の小型化とともに、IC、発光ダイオード、圧電素子または水晶振動子などの電子部品を実装することが可能な小型の電子部品収納用パッケージが開発されている。
【0003】
また、レーザーダイオードまたはフォトダイオードなどの光半導体素子を実装することが可能な光半導体用の電子部品収納用パッケージが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。なお、特許文献1で提案されている電子部品収納用パッケージには、光ファイバを接続する窓部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−145317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1で提案された電子部品収納用パッケージでは、パッケージ内部に実装した電子部品の発する熱によって窓部に熱応力が加わり、パッケージの信頼性が損なわれる虞がある。
【0006】
本発明は、電子部品の発熱に対する信頼性に優れた電子部品収納用パッケージおよび実装構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る電子部品収納用パッケージは、上面に電子部品実装領域を有する基板と、前記基板上であって前記電子部品実装領域の外周に沿って設けられた、前記基板の上面よりも上方に位置する取付け部を有する枠状の基体と、前記取付け部に設けられた、平面視して前記基板と重なる領域から前記基板と重ならない領域にまで延在するとと
もに、平面方向に貫通孔を有する円筒部と、前記円筒部に接続された、平面視して前記基体の内側において前記基板の上面に接触するとともに接続されない、前記基体から間を空けた当接部を有する光ファイバ保持部材を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の実施形態に係る実装構造体は、前記電子部品収納用パッケージと、前記電子部品収納用パッケージの前記電子部品実装領域に実装された電子部品と、前記電子部品収納用パッケージ上に設けられた、前記電子部品を被覆する蓋体とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子部品の発熱に対する信頼性に優れた電子部品収納用パッケージおよび実装構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る実装構造体の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電子部品収納用パッケージの斜視図である。
図3】光ファイバ保持部材の斜視図であって、斜め上方から光ファイバ保持部材を見た図面である。
図4】基体に取り付けた状態の光ファイバ保持部材の断面図である。
図5】一変形例に係る光ファイバ保持部材の斜視図であって、斜め上方から光ファイバ保持部材を見た図面である。
図6】基体に取り付けた状態の一変形例に係る光ファイバ保持部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る電子部品収納用パッケージおよび実装構造体について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<実装構造体および電子部品収納用パッケージの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る実装構造体を示す斜視図であって、パッケージ内部を上方から見た斜視図である。図2は、図1に示す電子部品収納用パッケージの斜視図である。
【0013】
実装構造体1は、電子部品収納用パッケージ2と、電子部品収納用パッケージ2内に実装された電子部品3と、電子部品収納用パッケージ2上に設けられた、電子部品3を被覆する蓋体4とを備えている。なお、電子部品3は、複数の電子部品から構成されているものであっても構わない。
【0014】
電子部品収納用パッケージ2は、上面に電子部品実装領域Rを有する基板5と、基板5上であって電子部品実装領域Rの外周に沿って設けられた、基板5の上面よりも上方に位置する取付け部Mを有する基体6と、取付け部Mに設けられた、平面視して基板5と重なる領域F1から基板5と重ならない領域F2にまで延在するとともに、平面方向に貫通孔Tを有する光ファイバ保持部材7とを備えている。光ファイバ保持部材7は、平面視して基体6の内側において基板5の上面に当接する当接部8を有している。
【0015】
電子部品収納用パッケージ2は、例えば、半導体素子、光半導体素子、トランジスタ、ダイオードまたはサイリスタなどの能動部品、あるいは抵抗器、コンデンサ、太陽電池、圧電素子、水晶振動子、セラミック発振子またはペルチェ素子などの受動部品、あるいはリジッド基板、フレキシブル基板またはリジッドフレキシブル基板などのプリント基板、からなる電子部品3を実装するものである。
【0016】
また、本実施形態の電子部品収納用パッケージ2では、高耐圧化、大電流化または高速・高周波化に対応したものであって、電子部品実装領域Rには、台座3aと、台座3a上に設けられた光半導体素子3bを含む電子部品3が実装される。なお、台座3aの上面には、光半導体素子3bと電気的に接続される電極が設けられている。
【0017】
基板5は、平面視したとき四角形状に形成された部材である。基板5は、例えば、銅、鉄、タングステン、モリブデン、ニッケルまたはコバルトなどの金属材料、あるいはこれらの金属材料を含有する合金から成る。基板5は、熱伝導率を良好にして、電子部品実装領域に実装した電子部品3から発生する熱を効率良く基板5を介して外部に放散させる機能を備えている。なお、基板5の熱伝導率は、例えば15W/(m・K)以上450W/(m・K)以下に設定されている。
【0018】
また、基板5は、溶融した金属材料を型枠に鋳込んで固化させたインゴットに対して、従来周知の圧延加工または打ち抜き加工などの金属加工法を用いることで、所定形状に製作される。なお、基板5の一辺の長さは、例えば3mm以上50mm以下に設定されてい
る。また、基板5の上下方向の厚みは、例えば0.3mm以上5mm以下に設定されている。
【0019】
また、基板5の表面は、酸化腐食の防止または電子部品実装領域Rに電子部品3の台座3aを実装するために、電気めっき法または無電解めっき法を用いて、ニッケルまたは金等の鍍金(めっき)層が形成されている。基板5の電子部品実装領域Rは、基板5の上面に基体6を接続したときに、基体6と接続されない領域である。なお、本実施形態では、基板5の形状を四角形状としているが、電子部品3の台座3aを実装することが可能であれば、四角形状に限られず、四角形状以外の多角形状または楕円形状などであってもよい。
【0020】
基体6は、基板5の電子部品実装領域Rの外周に沿って接続された、電子部品実装領域Rに実装する電子部品3を基板5とともに外部から保護するための部材である。基体6には、光ファイバ保持部材7を取り付ける取付け部Mが設けられている。また、基体6には、パッケージ内部とパッケージ外部とを電気的に接続する一対の入出力端子9が設けられている。基体6は、ろう材を介して基板5にろう付けされる。なお、ろう材は、例えば、銀、銅、金、アルミ二ウムまたはマグネシウムなどからなり、ニッケル、カドミウムまたは燐などの添加物を含有させてもよい。
【0021】
また、基体6は、例えば、銅、鉄、タングステン、モリブデン、ニッケルまたはコバルトなどの金属材料、あるいはこれらの金属材料を含有する合金から成る。基体6は、電子部品実装領域Rに電子部品3を実装されている状態で、電子部品3の光半導体素子3bから発生する熱を効率良く基体6の外部に発散させる機能を備えている。なお、基体6の熱伝導率は、例えば15W/(m・K)以上450W/(m・K)以下に設定されている。
【0022】
また、基体6は、平面視したときに基板5内に収まる大きさであって、一辺の長さが、例えば3mm以上50mm以下に設定されている。また、基体6の取付け部Mが設けられていない箇所の上下方向の厚みは、例えば1mm以上30mm以下に設定されている。また、基体6の取付け部Mが設けられた箇所は、基板5の上面から、例えば0.1mm以上20mm以下の範囲で上方に位置するように設定されている。また、基体6を平面視したときの基体6の枠縁の幅の厚みは、例えば0.1mm以上3mm以下に設定されている。
【0023】
入出力端子9は、基体6の対向する二辺に設ける部材である。入出力端子9には、基体6に設けた状態で、パッケージ内外を電気的に接続するための線路導体10が設けられている。
【0024】
入出力端子9は、複数の層を積層した積層体である。入出力端子9が、例えば、二層構造である場合は、下層の上面に複数の線路導体10が形成されている。そして、上層が下層の上面に線路導体10を跨いで設けられている。そして、パッケージ外部に位置する線路導体10の上面に、端子11が設けられる。なお、線路導体10は、例えば、タングステン、モリブデンまたはマンガンなどの高融点金属材料から成る。
【0025】
入出力端子9は、絶縁材料であって、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックス等のセラミックスから成る。なお、入出力端子9の熱膨張率は、例えば2×10−6/K以上10×10−6/K以下に設定されている。
【0026】
端子11は、外部の電子機器等と電子部品3とを電気的に接続するための部材である。端子11は、ろう材を介して、線路導体10上に接続される。そして、線路導体10と端子11とが電気的に接続される。また、隣接する線路導体10同士の間を空けて設けるこ
とで、隣接する線路導体10同士を電気的に絶縁する。そして、各端子11を各線路導体10に設けることで、隣接する端子11同士は、電気的に絶縁している。
【0027】
また、線路導体10は、台座3a上に設けられた電極と、例えば、ボンディングワイヤによって光半導体素子3aと電気的に接続される。
【0028】
図3は、光ファイバ保持部材の斜視図であって、上方から見たものである。また、図4は、光ファイバ保持部材の断面図である。
【0029】
基体6の取付け部Mに光ファイバ保持部材7が設けられる。また、基体6の取付け部Mは、外部に設ける光ファイバFから伝わる光を基体6内部にまで通すために設けられている。
【0030】
光ファイバ保持部材7は、例えば、サファイア、プラスチックまたはガラスなどの光透過性部材12を嵌めこむことが可能な貫通孔Tが設けられる。そして、光ファイバ保持部材7の貫通孔は、基体6に取り付けた状態では、基板5の上面に対して平行に開いている。また、光ファイバ保持部材7の貫通孔Tは、側面視して電子部品実装領域Rに設けられる電子部品3と重なるように設けられている。そして、光透過性部材12の光軸上に、電子部品3の光半導体素子3bが位置するように設定されている。そして、光半導体素子3bと光透過性部材12との間で光信号が入出力される。
【0031】
また、光ファイバ保持部材7は、基体6に取り付けた状態で、基体6の内側において基板5の上面に当接する当接部8を有している。当接部8は、光ファイバ保持部材7を支持するものである。当接部8は、光ファイバ保持部材7の一部であって、光ファイバ保持部材7の円筒部13に接合されている。円筒部13の内径は、例えば1.5mm以上8mm以下に設定されている。また、円筒部13の外径は、例えば3mm以上10mm以下に設定されている。また、円筒部13の長さは、例えば2mm以上25mm以下に設定されている。
【0032】
光ファイバ保持部材7は、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金、鉄−ニッケル合金、銅−クロム合金等の金属や、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックス等のセラミックスから成る。なお、光ファイバ保持部材7の熱膨張率は、例えば2×10−6/K以上15×10−6/K以下に設定されている。
【0033】
当接部8は、光ファイバ保持部材7の円筒部13の外側面の一部に沿って設けられている。そして、当接部8の上面が円筒部13の外側面に接合されている。そして、当接部8の下面が、基板5の上面と当接する。当接部8の下面は、基板5の上面に沿って平行に設定されている。そして、光ファイバ保持部材7が基体6に取り付けられた状態においては、光ファイバ保持部材7の貫通孔Tが平面方向に沿って一定の状態に維持するように、当接部8が光ファイバ保持部材7の円筒部13を支持する。なお、当接部8を平面透視したときは矩形状であって、その一辺の長さは、例えば0.5mm以上10mm以下に設定されている。また、当接部8の上下方向の長さは、例えば0.5mm以上5mm以下に設定されている。
【0034】
また、当接部8は、光ファイバ保持部材7と同様に、金属や絶縁材料であって、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金、鉄−ニッケル合金、銅−クロム合金等の金属や、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックス等のセラミックスから成る。なお、当接部8の熱膨張率は、例えば2×10−6/K以上15×10−6/K以下に設定されている
。なお、当接部8は、光ファイバ保持部材7と同一材料から構成することが好ましい。当接部8と光ファイバ保持部材7を同一材料によって構成することで、当接部8と光ファイバ保持部材7の円筒部13との熱膨張率の違いによる悪影響を低減することができる。
【0035】
当接部8は、基体6の内側において基板5の上面に当接するものである。当接部8が、基体6の内側に位置することで、光ファイバを基体6の内側にまで導くことができる。そのため、光ファイバの基体6の内側における先端部分の角度を、所望する角度に維持しやすくすることができ、光ファイバFの先端部分と光半導体素子3bとの間の光軸ずれを抑制することができる。
【0036】
当接部8は、基体6から間を空けて設けられている。当接部8と基体6との間の長さは、例えば5mm以上20mm以下に設定されている。仮に、当接部8と基体6とが接触している場合は、パッケージ内部において電子部品3から発生する熱が、パッケージ内部にこもって、基体6と当接部8との熱膨張率の違いによって、基体6と当接部8との接触箇所に熱応力が加わり、基体6の内壁面において当接部8が破壊される虞がある。当接部8と基体6の内壁面とに間を設けることで、基体6の内壁面から当接部8に加わる熱応力をなくし、当接部8が破壊されるのを抑制することができる。
【0037】
当接部8は、基板5の上面と接する下面を有している。当接部8の下面と基板5の上面とは、例えば樹脂などで接合されていない。当接部8の下面と基板5の上面とは、単に接触している状態であって、両者は接続されていない。仮に、当接部8と基板5とが接合された場合では、パッケージ内部において電子部品3から発生する熱が、パッケージ内部にこもって、基板5、基体6および光ファイバ保持部材7の熱膨張率の違いによって、基板5と光ファイバ保持部材7との接続箇所に熱応力が集中する虞がある。そして、基板5から光ファイバ保持部材7の接続箇所である当接部8の下面が基板5の上面から離れようとする。しかし、当接部8と基板5とが接合されていると、当接部8に熱応力が集中し、光ファイバ保持部材7が破壊される虞がある。
【0038】
当接部8と基板5とが接合されずに、当接部8の下面が基板5の上面に接しているだけであれば、当接部8が基板5の上面に沿って平面方向に移動して、当接部8の下面と基板5の上面との間に熱応力が加わるのを抑制することができる。
【0039】
光ファイバ保持部材7は、基体6の取付け部Mが形成されている箇所に設けられ、基板5と距離を空けて設けられる。そのため、仮に、光ファイバ保持部材7に当接部が存在しない場合は、パッケージ内部において電子部品3から発生する熱が、パッケージ内部にこもって、基板5、基体6および光ファイバ保持部材7に多くの熱が伝わり、基板5、基体6および光ファイバ保持部材7の熱膨張係率の違いに起因した熱応力がパッケージに加わって、光ファイバ保持部材7の位置ずれが発生する虞がある。そして、光ファイバ保持部材7が所望する位置からずれることによって、電子部品3との電気的接続状態が悪化することがある。特に、電子部品3が光半導体素子3bを有している場合は、光ファイバ保持部材7の貫通孔Tに設ける光透過性部材12と光半導体素子3bとの間の光軸がずれることがあり、光透過性部材12と光半導体素子3bとの間で光信号の入出力ができなくなる虞がある。
【0040】
一方、光ファイバ保持部材7に当接部8を設けた場合は、光ファイバ保持部材7が基体6の取り付け部Mに固定された状態で、基板5上の当接部8が光ファイバ保持部材7の円筒部13を支持する。当接部8が基板5の上面と当接することで、光ファイバ保持部材7の円筒部13が傾くのを抑制することができ、光ファイバ保持部材7に設ける光透過性部材12と光半導体素子3bとの光軸ずれを効果的に抑制することができる。
【0041】
ここで、光ファイバ保持部材7の作製方法について説明する。光ファイバ保持部材7が金属から成る場合は、光ファイバ保持部材7となる金属のインゴットに切削加工を施したり、圧延加工とプレス加工とを施したりすることによって、光ファイバ保持部材7を得ることができる。光ファイバ保持部材7が絶縁体から成る場合は、円筒部13と当接部8とを別々に準備する。まず、円筒部13と当接部8とについて、それぞれ型枠を用いて焼成前の成形体を得る。そして、両者を接合した状態で、同時焼成する。このようにして、光ファイバ保持部材7を得ることができる。
【0042】
基体6の枠縁上には、蓋体4が設けられる。蓋体4は、基板5および基体6とともにパッケージ内部の気密性を保つための機能を備えている。蓋体4は、例えば、銅、タングステン、鉄、ニッケルまたはコバルト等の金属、あるいはこれらの金属を複数種含む合金、あるいは酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックス等のセラミックスから成る。また、蓋体4は、基体6の上面に、例えば半田またはろう材等の接合部材を介して接合される。
【0043】
本実施形態に係る実装構造体1および電子部品収納用パッケージ2は、電子部品3が発熱して、パッケージ内部が高温になったとしても、光ファイバ保持部材7の当接部8が基板5の上面に対して接触した状態で光ファイバ保持部材7を位置決めすることができる。そして、光ファイバ保持部材7の貫通孔Tが傾かないようにすることで、光ファイバ保持部材7の貫通孔Tに設ける光透過性部材12と電子部品実装領域Rに設ける光半導体素子3bとの光軸ずれを抑制することができ、電子部品3の発熱に対する信頼性の優れた実装構造体1および電子部品収納用パッケージ2を提供することができる。
【0044】
<実装構造体および電子部品収納用パッケージの製造方法>
ここで、図1または図2に示す電子部品収納用パッケージの製造方法を説明する。まず、基板5、基体6、光ファイバ保持部材7、入出力端子9および蓋体4のそれぞれを準備する。
【0045】
基板5、基体6および蓋体4のそれぞれは、溶融した金属材料を型枠に鋳込んで固化させたインゴットに対して、金属加工法を用いることで、所定形状に製作される。
【0046】
光ファイバ保持部材7は、円筒部13および当接部8をそれぞれ準備する。光ファイバ保持部材7は、上述した実施形態における光ファイバ保持部材7の作製方法によって準備することができる。光ファイバ保持部材7の貫通孔Tには、光透過性部材12を、ろう材を介して嵌めて接続する。
【0047】
また、入出力端子9は、下層および上層に対応するグリーンシートを準備する。そして、各グリーンシートを所定の形状となるように、レーザー、パンチまたはカッターなどの工具を用いて加工して、焼成前の下層および上層を得る。次に、焼成前の未硬化の下層および上層に対して、例えば、蒸着法、スクリーン印刷法またはスパッタリング法などの薄膜形成技術を用いて、下層の上面に複数の線路導体10を形成する。その後、入出力端子9の下層および上層を圧着して、積層した状態で同時焼成する。このようにして、入出力端子9を作製することができる。なお、線路導体10は、例えば、タングステン、モリブデンまたはマンガンなどの高融点金属材料から成る。
【0048】
次に、準備した基板5、基体6、光ファイバ保持部材7および入出力端子9のそれぞれを、ろう材を介して接続する。具体的には、基板5の外周に沿って基体6をろう材を介して接続する。そして、基体6の取付け部Mが設けられている箇所に、光ファイバ保持部材7を、ろう材を介して接続する。そして、基体6に入出力端子9を嵌めて接続する。この
ようにして、電子部品収納用パッケージ2を作製することができる。
【0049】
次に、作製した電子部品収納用パッケージ2の電子部品実装領域Rに半田を介して電子部品3を実装し、基体6上に電子部品3を被覆するように蓋体4を設けて気密に封止することで、実装構造体1を作製することができる。
【0050】
<変形例>
本発明は上述した実施形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、複数の光ファイバ保持部材を基体に取り付けてもよい。以下、本実施形態の変形例について説明する。なお、本実施形態の変形例に係る実装構造体および電子部品収納用パッケージのうち、本実施形態に係る実装構造体1および電子部品収納用パッケージ2と同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。なお、図5は、一変形例に係る光ファイバ保持部材7aの斜視図である。また、図6は、図5に示す光ファイバ保持部材7aの断面図である。
【0051】
上記一実施形態に係る光ファイバ保持部材7は、図4に示すように、断面視して光透過性部材12の直下に当接部8が設けられていたが、これに限られない。
【0052】
例えば図6に示すように、一変形例に係る光ファイバ保持部材7aは、光ファイバ保持部材7aの当接部8を、断面視して光透過性部材12の直下に設けず、基体6と当接部8との間の距離を大きくし、当接部8と円筒部13との間に両者を接続する接続部14を設けた構造であってもよい。
【0053】
光ファイバ保持部材7aは、当接部8の直上に光透過性部材12を設けずに、当接部8と光透過性部材12の間の距離を離すように形成する。電子部品3が高温になってパッケージ内部に熱がこもり、パッケージ内部が高温になると、基板5と当接部8との熱膨張率の違いによって当接部8の下面に対して熱応力が加わる。当接部8の直上に光透過性部材12を配置しないことで、光透過性部材12が当接部8から応力を受けて変形するのを抑制することができる。また、光ファイバ保持部材7aの一部の接続部14が、当接部8から円筒部13に加わる応力を接続部14内にて緩和することができ、光ファイバ保持部材7aの円筒部13が位置ずれを起こすのを抑制することができる。その結果、光ファイバ保持部材7aの貫通孔Tに設ける光透過性部材12と電子部品実装領域Rに設ける光半導体素子3bとの光軸ずれを抑制することができ、信頼性の優れた実装構造体1および電子部品収納用パッケージ2を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 実装構造体
2 電子部品収納用パッケージ
3 電子部品
3a 台座
3b 光半導体素子
4 蓋体
5 基板
6 基体
7 光ファイバ保持部材
8 当接部
9 入出力端子
10 線路導体
11 端子
12 光透過性部材
13 円筒部
14 接続部
R 電子部品実装領域
M 取付け部
F1 基板と重なる領域
F2 基板と重ならない領域
T 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6